以下に、本発明の一実施形態に係る太陽電池素子および太陽電池モジュールについて図面を参照しながら説明する。なお、各図は模式的に示している。また、図1〜3、図10および図11に記載されたX,Y,Zは左手系の座標軸を示している。また、図3は断面図であるが主要な構成のみにハッチングを施している。
<<第1の実施形態>>
<太陽電池素子>
図1〜3に示すように、太陽電池素子1は半導体基板2を備えている。半導体基板2は主として光が入射する第1主面である受光面2aと、その反対側に位置する第2主面である裏面2bとを有する。
半導体基板2は、導電型がp型の第1半導体領域(p型半導体領域)2pと、第1半導
体領域2p上に設けられて、第1半導体領域2pに対して逆の導電型であるn型の第2半導体領域(n型半導体領域)2nとを有する。半導体基板2には、例えば、ボロンまたはガリウムなどの所定のドーパント元素を有している、p型の単結晶または多結晶のシリコン基板が用いられる。また、半導体基板2の厚みは、例えば150〜250μm程度である。また、半導体基板2の平面形状は、特に限定されるものではないが、例えば1辺の長さが150〜180mm程度の長方形状(正方形状を含む)などの四角形状などであればよい。
第2半導体領域2nは、半導体基板2の受光面2a側に設けられている。第2半導体領域2nは、半導体基板2の受光面2a側にリン等のドーパント元素を拡散させることによって形成できる。
受光面2a側には、図1および図3に示すように、第2半導体領域2n上に接続電極3および集電電極4等が配置されている。そして、集電電極4の両端部または一端部には、接続電極3が接続されている。なお、図示されているように、受光面2a側の電極として、太陽電池素子1の両端部にある集電電極4の外側端部を結ぶように補助集電電極5をさらに設けてもよい。
接続電極3は帯状であり、太陽電池モジュールの製造工程においてリード部材が接続される。接続電極3は、図1のY軸方向に例えば2〜4本程度設けられて、1〜3mm程度の幅を有している。また、集電電極4および補助集電電極5は、光生成キャリアを集める線状電極である。集電電極4は、その線幅が50〜200μm程度であり、互いに1〜3mm程度の間隔を空けて複数配置されている。また、補助集電電極5も50〜200μm程度の線幅であればよい。
接続電極3、集電電極4および補助集電電極5のそれぞれの厚みは、10〜40μm程度である。また、これら電極は銀(または銅もしくは銀銅合金)を主成分とし、ガラスフリットおよび有機ビヒクルなどからなる導電性ペーストを、スクリーン印刷等によって所望の形状に塗布した後、焼成することによって形成できる。
裏面2b側の電極は、図2に示すように、バスバー電極7、第1フィンガー電極8、補助バスバー電極9および第2フィンガー電極10を有する。
バスバー電極7は、接続電極3と対向するように、裏面2b側のY軸方向に延びる線上に配置されている。バスバー電極7は例えば2〜4本程度設けられている。各バスバー電極7は、例えば帯状に連続または不連続に設けられた形状でもよいし、図2に示すように、島状部7aと線状部7bとから構成されてもよいし、島状部分7aのみでもよい。
バスバー電極7が島状部7aおよび線状部7bから構成される場合には、島状部7aは、線状部7bからX軸方向に突出するように、互いに離隔して5〜20個程度設けられる。この島状部7aには、太陽電池モジュールの製造工程において、帯状のリード部材が接続される。この場合、線状部7bは島状部7aを互いに接続する。このため、多数の島状部7aのどれか1つにおいて、リード部材との接続が不十分でも、太陽電池モジュールの抵抗成分は低下しにくい。
バスバー電極7が島状部7aおよび線状部7bからなる場合には、島状部7aの大きさは幅方向(X軸方向)が3〜10mm程度、縦方向(Y軸方向)が1〜5mm程度であり、線状部7bは、幅方向(X軸方向)が0.1〜3mm程度である。バスバー電極7(島状部7aおよび線状部7b)の厚みは2〜20μm程度である。また、バスバー電極7は、例えば銀(または銅もしくは銀銅合金)を主成分とし、ガラスフリットおよび有機ビヒクルなどからなる導電性ペーストを、スクリーン印刷等によって所望の形状に塗布した後、焼成することによって形成できる。
第1フィンガー電極8および第2フィンガー電極10は、いずれも光生成キャリアを集める。第1フィンガー電極8は、X軸方向に延びて配置されており、その線幅は100〜500μm程度であり、その厚みは15〜40μm程度である。第1フィンガー電極8は互いに1〜6mm程度の間隔を空けて複数設けられている。第1フィンガー電極8の両端または一端部には、補助バスバー電極9に接続されており、さらに、太陽電池素子1の両側にある第1フィンガー電極8の外側端部を結ぶように第2フィンガー電極10が設けられている。第2フィンガー電極10は、100〜500μm程度の線幅であり、その厚みは15〜40μm程度である。第2フィンガー電極10はY軸方向に沿って設けられる。
第1フィンガー電極8および第2フィンガー電極10は、例えばアルミニウムを主成分とし、ガラスフリットおよび有機ビヒクルなどからなる導電性ペーストを、スクリーン印刷等によって所望の形状に塗布した後、焼成することによって形成できる。第1フィンガー電極8および第2フィンガー電極10が同一材質からなることによって、これらをスクリーン印刷法などで同時に形成できて、工程の簡略化が可能となる。
補助バスバー電極9は、バスバー電極7に沿ってY軸方向に延びるように、バスバー電極7の幅方向の両側に0.5〜3mm程度の線幅を有して、30〜60μm程度の厚みで帯状に設けられる。補助バスバー電極9は、第1フィンガー電極8を接続するものであり、バスバー電極7の島状部7aの幅方向の両端部において積重することによってバスバー電極7にも接続されている。これにより、補助バスバー電極9は、第1フィンガー電極8と第2フィンガー電極10によって集められた光生成キャリアをさらに集めて、それらをバスバー電極7に伝える役目を果たす。このような補助バスバー電極9を設けることによって、バスバー電極7の島状部7aに無駄なく光生成キャリアを伝えることができる。さらに、バスバー電極7を帯状にする必要が無いので、例えば銀の使用量を削減できる。
補助バスバー電極9は、第1フィンガー電極8と同一材質にすることによって、工程の簡略化を図ることができる。補助バスバー電極9も、アルミニウムを主成分とし、ガラスフリットおよび有機ビヒクルなどからなる導電性ペーストを用いる。この導電性ペーストを、第1フィンガー電極8および第2フィンガー電極10の形成時に、スクリーン印刷などによって所望の形状に塗布した後、焼成することによって補助バスバー電極9を形成できる。
第1フィンガー電極8、補助バスバー電極9および第2フィンガー電極10が、アルミニウムを主成分として含むことによって、電極形成時の焼成で、半導体基板2内部にアルミニウムが高濃度に拡散したBSF層12が同時に形成される。
このように、裏面2b側の電極は、バスバー電極7、第1フィンガー電極8、補助バスバー電極9および第2フィンガー電極10からなるので、裏面2b側に設けられるパッシベーション膜(後記する第2パッシベーション膜13)の劣化を最小限にして、太陽電池素子1の光電変換効率の向上を図ることができる。
さらに、半導体基板2の受光面2aにおいて、電極を配置した領域以外の部位には、反射防止膜6が配置される。この反射防止膜6は、受光面2aにおける光の反射率を低減させて、半導体基板2に吸収される光の量を増大させる。そして、反射防止膜6は、光吸収によって生成する電子正孔対を増大させることで、太陽電池素子1の変換効率の向上に寄
与する。
また、反射防止膜6は、受光面2a表面におけるパッシベーション膜も兼ねる。反射防止膜6は、その成膜時に発生する水素によって結晶欠陥の不活性化を行う。さらに、反射防止膜6は正の固定電荷を有し、n型を有する第2半導体領域2n上に設けられる。このため、反射防止膜6と半導体基板2の界面に固定電荷を導入して、界面付近に電界を印加する電界効果によって、少数キャリアの再結合を低減する。
反射防止膜6は、例えば、正の固定電荷を有する窒化シリコン膜または酸化シリコン膜を用いることができる。反射防止膜6は、パッシベーション効果の大きい窒化シリコン膜(SiNx膜;Si3N4ストイキオメトリを中心にして組成比(x)には幅がある)を用いるとよい。窒化シリコン膜からなる反射防止膜6では、PECVD(plasma enhanced chemical vapor deposition)装置を用いて、受光面2a表面での光反射がより小さくな
るように、屈折率が2.0〜2.3程度、厚み75〜120nm程度に設けることが好ましい。
さらに、反射防止膜6の上には、図3および図4に示すように、負の固定電荷を有する第1パッシベーション膜11が設けられている。第1パッシベーション膜11としては、酸化チタンまたは酸化アルミニウムなどが使用できるが、パッシベーション効果が大きい酸化アルミニウムを用いるとよい。第1パッシベーション膜11の厚みは、10〜200n
m程度であり、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層蒸着)法などを用いて形成す
ればよい。
このように、本実施形態の太陽電池素子1は、n型の第2半導体領域2n上に配置された正の固定電荷を有する反射防止膜6と、反射防止膜6の上に配置された負の固定電荷を有する第1パッシベーション膜11とを備えている。これにより、太陽電池素子1を用いた太陽電池モジュールを大規模太陽光発電に用いた場合には、太陽電池モジュールの基板と太陽電池素子1の間に600〜1000Vの大きな電圧差が生じても、第1パッシベーション膜11の存在によって、この電位差が反射防止膜6に影響しにくいので、反射防止膜6に負の固定電荷が溜まりにくい。これは正に帯電した基板と正の固定電荷を有する反射防止膜6との間に負の固定電荷を有する第1パッシベーション膜11が介在しているからである。これにより、反射防止膜6と第2半導体領域2nとの界面において、光生成キャリアの動きが反射防止膜6によって大きく妨げられることがなく、PID現象の発生を低減することができる。
さらに、半導体基板2の裏面2b側電極を配置した領域以外の部位にも、第2パッシベーション膜13が配置されているので、太陽電池素子1の光電変換効率をさらに向上させることができる。第2パッシベーション膜13は、負の固定電荷を有し、p型を有する第1半導体領域2p上に設けられる。このため、裏面2bにおいて半導体基板2の界面に固定電荷を導入することによって、界面付近に電界を印加する電界効果によって少数キャリアの再結合を低減する効果を有する。
このように、本実施形態ではn型の第2半導体領域2nに当接するように正の固定電荷を有する反射防止膜6を配置し、さらにp型を有する第1半導体領域2pに当接するように負の固定電荷を有する第2パッシベーション膜13を配置している。これにより、各半導体領域にパッシベーション膜を配置することができて、太陽電池素子1の光電変換効率をより向上させることができる。
また、第1パッシベーション膜11および第2パッシベーション膜13は、両者とも負の固定電荷を有している。このため、これらの膜を同一材料(例えば酸化アルミニウムなど)によって形成することで工程の簡略化を図ることができる。
さらに、半導体基板2の側面2cを覆うように負の固定電荷を有する第3パッシベーション膜14をさらに備えていることによって、側面2cでの少数キャリアの再結合を低減できて、太陽電池素子1のさらなる高効率化を図ることができるのでよい。第3パッシベーション膜14は、第1パッシベーション膜11および第2パッシベーション膜13と同様に、負の固定電荷を有しているため、同一材料(例えば酸化アルミニウムなど)によって形成することが工程の簡略化を図ることができる。
上述の反射防止膜6、第1パッシベーション膜11、第2パッシベーション膜13および第3パッシベーション膜14の固定電荷の極性は、膜の容量電圧特性を測定することによって、決定することが可能である。
<太陽電池素子の製造方法>
次に、太陽電池素子1の製造方法について説明する。
まず、図5(a)に示すように、一導電型の半導体基板2を準備する。半導体基板2としては、第1導電型を呈するもので、ドーパントとして例えばボロンなどがドープされた
p型のシリコン基板である。このシリコン基板は、シリコンインゴットから切り出された単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板を用いればよく、比抵抗は0.2〜2Ω・
cm程度が好適である。また、シリコン基板の大きさは、例えば一辺140〜180mm程度の長方形(正方形を含む)であり、その厚みは150〜250μm程度にすればよい。半導体基板2が単結晶シリコン基板の場合は、例えばFZ(フローティングゾーン)法またはCZ(チョクラルスキー)法などによって形成される。半導体基板2が多結晶シリコン基板の場合は、例えば鋳造法によって多結晶シリコンのインゴットを作製する。このインゴットを例えば所定の厚みにスライスして、半導体基板2を作製する。なお、以下では、p型の多結晶シリコンを用いた例によって説明する。
半導体基板2は、スライス面の機械的ダメージ層および汚染層を除去するために、NaOH、KOH、またはフッ硝酸などの水溶液を用いて、表面をごく微量エッチングするとよい。このエッチング工程後に、ウエットエッチング法、またはRIE(Reactive Ion Etching)法などのドライエッチング法を用いて、半導体基板2の受光面2a側に微小な凹凸構造(テクスチャ)を形成するとよい。テクスチャの形成によって、受光面2a側における光の反射率が低減することで、太陽電池素子1の光電変換効率が向上する。
次に、図5(b)に示すように、半導体基板2の第1半導体領域2pの受光面2a側に
n型の第2半導体領域2nを形成する。第2半導体領域2nは、n型不純物(例えばリン)を受光面2a側の表層内に拡散させることによって形成される。この拡散方法として、例えば、ペースト状態にした五酸化二リン(P2O5)を半導体基板2の表面に塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたオキシ塩化リン(POCl3)を拡散源とした気相熱拡散法、または、リンイオンを直接拡散させるイオン打ち込み法などが挙げられる。この第2半導体領域2nは、例えば0.1〜1μm程度の厚みで、40〜150Ω/□程度のシート抵抗に形成される。また、第2半導体領域2n形成時に、裏面2b側および側面2c側に逆導電型層を形成した場合には、裏面2b側、側面2c側のみをエッチングによって除去して、p型の導電型領域を露出させる。例えば、フッ硝酸溶液に半導体基板2の裏面2b側、側面2c側のみを浸して裏面2b側、側面2c側の第2半導体領域2nを除去する。また、予め裏面2b側、側面2c側に酸化シリコンなどからなる拡散防止用マスクを形成しておき、気相熱拡散法等によって第2半導体領域2nを形成して、続いて拡散マスクを除去するプロセスによっても、同様の構造を形成することが可能である。
次に、図5(c)に示すように、半導体基板2の受光面2a表面上に反射防止膜6を形成する。反射防止膜6は、窒化シリコンからなる膜を、例えばPECVD装置を用いて形成する。例えば、窒化シリコン膜からなる反射防止膜6をPECVD装置で形成する場合には、反応室内を400〜500℃程度として、シラン(SiH4)とアンモニア(NH3)との混合ガスを窒素(N2)で希釈しながら、反応室内の電極間に高周波電圧を印加して、これらのガスをグロー放電分解でプラズマ化させて、堆積させることで反射防止膜6が形成される。
次に、図5(d)に示すように、半導体基板2の受光面2a側および裏面2b側の両主面側の略全面に、第1パッシベーション膜11、第2パッシベーション膜13、第3パッシベーション膜14を形成する。これらのパッシベーション膜は、例えばALD法を用いることによって、半導体基板2の全表面に同時に形成できる。次に、ALD法によって、酸化アルミニウムから成る第1〜3パッシベーション膜11、13、14を形成する方法について説明する。
まず、成膜室内に上述の半導体基板2を載置して、基板温度を100〜300℃に加熱する。次に、トリメチルアルミニウム等のアルミニウム原料を、アルゴンガス、窒素ガス等のキャリアガスとともに0.1〜3秒間、半導体基板2上に供給して、半導体基板2の全周囲にアルミニウム原料を吸着させる(工程1)。
次に、窒素ガスによって成膜室内を0.5〜5秒間パージすることによって、空間中のアルミニウム原料を除去するとともに、半導体基板2に吸着したアルミニウム原料のうち、原子層レベルで吸着した成分以外を除去する(工程2)。
次に、水またはオゾンガス等の酸化剤を、成膜室内に1〜10秒間供給する。そして、酸化剤によって、アルミニウム原料であるトリメチルアルミニウムのアルキル基であるCH3を除去するとともに、アルミニウムの未結合手を酸化させ、半導体基板2に酸化アルミニウムの原子層を形成する(工程3)。
次に、窒素ガスによって成膜室内を0.5〜5秒間パージすることによって、空間中の酸化剤を除去するとともに、原子層レベルの酸化アルミニウム以外、例えば反応に寄与しなかった酸化剤等を除去する(工程4)。
そして、上記の成膜工程1から工程4を繰り返すことによって、所定厚みを有する、酸化アルミニウムからなる第1〜3パッシベーション膜11、13、14を形成できる。また、工程3で用いる酸化剤に水素を含有させることによって、酸化アルミニウム層に水素が含有されやすくなり、水素パッシベーション効果を増大させることもできる。
次に、図5(e)に示すように、受光面2a側の電極(接続電極3、集電電極4および補助集電電極5)を形成するための導電性ペースト20aの塗布を行う。これらの電極は、銀(または銅もしくは銀銅合金)などの導電成分、ガラスフリットおよび有機ビヒクル等を含有する導電性ペーストを用いて作製される。この導電性ペースト20aは、銀(または銅もしくは銀銅合金)を主成分として、有機ビヒクルは、例えばバインダとして使用される樹脂成分を有機溶媒に溶解して得られる。バインダとしては、エチルセルロース等のセルロース系樹脂のほか、アクリル樹脂またはアルキッド樹脂等が使用される。また、有機溶媒としては、例えばターピネオールまたはジエチレングリコールモノブチルエーテル等が使用される。有機ビヒクルの含有質量は、銀などの導電成分の合計質量(100質量部)に対して、6質量部以上20質量部以下であることが好ましい。また、ガラスフリットの成分は、ガラス材料として例えばSiO2−Bi2O3−PbO系またはAl2O3−SiO2−PbO系などの鉛系ガラスを用いることができる他、B2O3−SiO2−Bi2O3系またはB2O3−SiO2−ZnO系などの非鉛系ガラスも用いることができる。ガラスフリットの含有質量は、銀などの導電成分の合計質量(100質量部)に対して、2質量部以上13量部以下であることが好ましい。この導電性ペースト20aは、スクリーン印刷法などを用いて半導体基板2の受光面2aの第1パッシベーション膜11上に所定の電極パターン形状に塗布し、その後乾燥する。
次に、図5(f)に示すように、第2パッシベーション膜13上に裏面2b側の電極である、バスバー電極7、第1フィンガー電極8、補助バスバー電極9、第2フィンガー電極10および端部電極11を形成するための導電性ペースト20b、22cを塗布する。まず、バスバー電極7(島状部7aおよび線状部7b)を形成するための導電性ペースト20bの塗布を行う。この導電性ペースト20bは、上述の受光面2a側の電極形成時に用いたものと同様の材料が使用可能であり、スクリーン印刷法を用いて塗布し、その後、乾燥する。
次に、第1フィンガー電極8、補助バスバー電極9および第2フィンガー電極10を形成するための導電性ペースト20cを塗布する。これらの電極を形成するための導電性ペースト20cとしては、アルミニウムを主成分とする金属粉末(アルミニウム粉末)、ガラスフリットおよび有機ビヒクルを含有するアルミニウムペーストを用いる。アルミニウム粉末は、平均粒径が3〜20μm程度である。また、有機ビヒクルは、上述のようにバインダが有機溶媒に溶解したものである。ガラスフリットは、例えば、SiO2−Pb系、SiO2−B2O3−PbO系またはBi2O3−SiO2−B2O3系のガラスフリットが使用可能である。アルミニウムペーストの組成は、アルミニウムペーストの総質量の60〜85質量%がアルミニウム粉末であり、5〜25質量%が有機ビヒクルであり、0.1〜10質量%のガラスフリットである。さらに、焼成後の半導体基板2に生じる反りの低減および抵抗率低減のために、酸化亜鉛(ZnO)、酸化シリコン(SiO2)、酸化アル
ミニウム(Al2O3)などから選択される材料を添加してもよい。
その後、導電性ペースト20a、20bおよび20cを塗布した半導体基板2を、ピーク温度600〜900℃で数十秒〜数分程度焼成することによって、電極を形成し、太陽電池素子1が完成する。
<太陽電池モジュール>
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール21は、図6(a)に示すように、主として光を受ける面である第1面21aを有し、図6(b)に示すように、第1面21aの裏面に相当する第2面21bを有する。また太陽電池モジュール21は、複数の太陽電池素子1を有する太陽電池パネル22と、この太陽電池パネル22の外周部に配置されたフレーム23とを有して、第2面21b側に端子箱24等をさらに有している。端子箱24には、太陽電池モジュール21によって発生した電気を外部回路に供給するための出力ケーブル25が接続されている。なお、太陽電池モジュール21は、太陽電池素子1が1つの場合でもよい。
また、太陽電池モジュール21において、隣り合う太陽電池素子1同士は、太陽電池素子1の電極に半田付けなどによって接続されたリード部材15によって、電気的に接続されている。このため、図7(a)に示すように、太陽電池素子1に対してリード部材15の半田付けを行う。このリード部材15の半田付けでは、太陽電池素子1の受光面2aのバスバー電極3にリード部材15aを接続して、裏面2bのバスバー電極7にリード部材15bを接続する。
リード部材15は、例えば、厚さが0.1〜0.3mm程度の銅またはアルミニウムなどから成る帯状の金属箔で構成されている。この金属箔には、表面に半田がコーティングされている。半田はメッキまたはディピング等によって、例えば、10〜50μm程度の厚みに設けられる。リード部材15の幅は、バスバー電極3の幅と同等またはバスバー電極3の幅よりも小さくしてもよい。これにより、リード部材15によって太陽電池素子1の受光を妨げにくくできる。また、リード部材15は、バスバー電極3およびバスバー電極7の略全表面に接続してもよい。これにより、太陽電池素子1の電気抵抗成分を小さくできる。ここで、リード部材15で150mm角程度の2つの太陽電池素子1同士を接続する場合、リード部材15の幅は、1〜3mm程度、その長さは260〜300mm程度であればよい。
また、図7(b)に示すように、隣り合う太陽電池素子1(太陽電池素子1S、1T)は、太陽電池素子1Sの受光面2aのバスバー電極3に接続したリード部材15の他端部を太陽電池素子1Tの裏面2bのバスバー電極7に半田付けされることによって接続される。このような接続を複数(例えば5〜10個程度)の太陽電池素子1に対して繰り返すことによって、複数の太陽電池素子1(複数の太陽電池16)が直線状に直列接続されてなる太陽電池ストリングが形成される。
なお、半田は、例えば主として錫と鉛とから成るもので、例えば錫が60〜63%で残部が実質的に鉛から成る共晶半田とする。または半田として実質的に鉛を含まぬものでもよい。この場合の半田は、錫が90〜97%で残部が銀または銅などから成る半田としたり、錫に対して、亜鉛、ビスマス、またはインジウムを含む半田も使用可能である。また
、この接続は半田付けに限られるものではなく、例えば、銀または銅などの導電性フィラーを混合したエポキシ樹脂などの接着力のある導電性接着剤などを使用してもよい。
このように形成された太陽電池ストリングを、1〜10mm程度の所定間隔を空けて略平行に複数配列させて、太陽電池ストリングの各端部に位置する太陽電池素子1同士を横方向配線35で半田等を用いて接続する。また、太陽電池モジュール21の両端に位置する各太陽電池ストリングの横方向配線35を接続していない太陽電池素子1には、外部導出配線36が接続される。
太陽電池パネル22は、図8に示すように、複数の太陽電池素子1、透光性基板31、表面側充填材32、裏面側充填材33、裏面材34、横方向配線35および外部導出配線36を有する。
透光性基板31としては、ガラスまたはポリカーボネート樹脂などからなる基板が用いられる。ここでガラスとしては、例えば白板強化ガラス、倍強化ガラスまたは熱線反射ガラスなどが用いられる。また、透光性基板31は、樹脂であればポリカーボネート樹脂などの厚さ3〜7mm程度合成樹脂が用いられ、白板強化ガラスであれば厚さ3〜5mm程度であればよい。
表面側充填材32および裏面側充填材33は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)またはポリビニルブチラール(PVB)から成り、Tダイと押し出し機とによって厚さ0.4〜1mm程度のシート状に成形されたものが用いられる。これらはラミネート装置によって減圧下にて加熱加圧を行うことで、軟化させて他の部材と一体化するものである。
裏面材34は、外部からの水分の浸入を低減する役割を有する。この裏面材34は、例えば、アルミ箔を挟持した耐候性を有するフッ素系樹脂シート、アルミナまたはシリカを蒸着したポリエチレンテレフタレ−ト(PET)シート等が用いられる。ただし、裏面材34は、太陽電池モジュール21の第2面21b側からの光入射を発電に用いる場合は、ガラスまたはポリカーボネート樹脂等を用いてもよい。
太陽電池パネル22は、以下のように作製される。まず、図8に示すように、透光性基板31上に表面側充填材32を配置した後、太陽電池ストリングを構成した太陽電池16、裏面側充填材33および裏面材34等を順次積層して積層体を作製する。次いで、この積層体をラミネート装置にセットし、減圧下にて加圧しながら100〜200℃で例えば15分〜1時間程度加熱することによって、太陽電池パネル22を作製できる。
次に、太陽電池パネル22の外周部にフレーム23を設ける。次いで、第2面21b側に端子箱24を取り付けることで、図6に示す太陽電池モジュール21が完成する。
このような太陽電池モジュール21においては、上述した太陽電池素子1を使用することによって、設置後の長期間の屋外環境下においてもPID現象が低減するため、信頼性の高い太陽電池モジュール21とすることができる。
<<第2の実施形態>>
次に、本発明をPERC(Passivated Emitter Rear Cell)型の太陽電池素子に適用した第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と共通する内容については説明を省略する。
<太陽電池素子>
図11および図12に示すように、第2の実施形態に係る太陽電池素子51も半導体基板2を備えている。
太陽電池素子51においても、反射防止膜6の上には、図11に示すように、負の固定電荷を有する第1パッシベーション膜11を配置している。この構造は第1の実施形態と
同一であるので、PID現象を低減できる。
また、本実施形態では、半導体基板2の裏面2b側には、第1半導体領域2pの略全面を覆う第2パッシベーション膜13aを配置している。第2パッシベーション膜13aは、半導体基板2の裏面2b(半導体基板2の第1半導体領域2pと第2パッシベーション膜13aとの界面)において、少数キャリアの再結合の原因となる欠陥凖位を低減する。第2パッシベーション膜13aは、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、もしくは酸化シリコン等の絶縁膜、またはこれらの積層膜からなる。第2パッシベーション膜13aの厚みは、10〜200nm程度である。本実施形態のように、第1半導体領域2pがp型層であれば、第2パッシベーション膜13aとして、ALD法で形成した酸化アルミニウム層等の負の固定電荷を有する膜を用いるとよい。これにより、少数キャリアである電子が電界効果によって半導体基板2と第2パッシベーション膜13aとの界面から遠ざけられるので、この界面での少数キャリアの再結合が低減する。
図11に示すように、保護膜40は第2パッシベーション膜13a上に配置される。保護膜40によって、湿度などの影響による第2パッシベーション膜13aの変質を低減できる。また、保護膜40は、後述する裏面2b側の電極の形成時において、第2パッシベーション膜13aを保護する機能も有する。保護膜40は、電極の形成時の熱等によって裏面2b側の電極の金属成分等が第2パッシベーション膜13aへ拡散することを低減できる。これにより、第2パッシベーション膜13aが劣化しにくなり、その膜特性を長期に亘って維持できる。保護膜40は、例えばALD法によって形成された酸化シリコンの他、PECVD法などで膜厚50〜800nm程度に形成された窒化シリコン膜を用いることができる。また、保護膜40として、ダイコーター、ロールコーターなどを用いて塗布され、膜厚1〜10μm程度に形成されたポリシロキサン膜、またはこれらの積層膜を用いることもできる。
また、太陽電池素子51は、第2パッシベーション膜13aおよび保護膜40を貫通して半導体基板2の裏面2bに達する貫通孔39を有する。貫通孔39が位置する領域には、半導体基板2の裏面2b上において、第2パッシベーション膜13aおよび保護膜40がない。貫通孔39の形状は、複数の孔状(またはドット状)であってもよいし、複数の溝状(またはライン状)であってもよい。貫通孔39の径(幅)は10〜150μm、ピッチは0.05〜2mm程度であればよい。また、貫通孔39は、例えば、レーザービーム照射またはフォトリソグラフィ法を用いたエッチングなどの方法で形成できる。特に、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)レーザーなどを用いたレーザービーム照射方法は簡便でよい。貫通孔39の内部には、後述する第2電極42が形成される。
半導体基板2の裏面2b側には、図10および図11に示すように、バスバー電極7a、第1電極41および第2電極42が配置される。
バスバー電極7aは、半導体基板2の裏面2bにおいて、光電変換によって得られた電気を太陽電池素子51の外部に取り出すための電極である。バスバー電極7aは、その外周部分において第1電極41と重畳することによって、第1電極41と接続されている。バスバー電極7aの厚みは10〜30μm程度であり、その幅は1〜7mm程度である。バスバー電極7aは、主成分として銀を含んでいる。このようなバスバー電極7aは、例えば、銀を主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷法等によって所望の形状に塗布し
た後、焼成することによって形成できる。
第1電極41は、バスバー電極7aと第2電極42とを電気的に接続するように配置する。これにより、第1電極41は、第2電極42で集めた電気をバスバー電極7aに伝えることができる。このため、第1電極41は、全ての第2電極42に電気的に接続され、さらに裏面2b上において第2電極42を覆うように配置される。それゆえ、第1電極41は、例えば半導体基板2の裏面2bのバスバー電極7aが形成された領域の一部を除く略全面に形成されてもよい。また、第1電極41の厚みは15〜50μm程度であればよい。
第2電極42は、貫通孔39の内部を充填するように設けられる。第2電極42は、その一端部が半導体基板2の裏面2b上に設けられおり、他端部は、第1電極41と接続されている。これにより、半導体基板2で生成された光生成キャリアを取り出し、第1電極41を介してバスバー電極7aに伝えることができる。
また、第2電極42の形成にアルミニウムペーストを用いれば、貫通孔39の底部に位置する裏面2b(貫通孔39内に位置する裏面2b)にBSF層12を形成できる。BSF層12は、アルミニウムペーストをアルミニウムの融点以上の最高温度を有する所定の温度プロファイルで焼成することによって、アルミニウムペースト中のアルミニウムと半導体基板2との間で相互拡散が起こって形成される。これにより、貫通孔39の底部に位置する半導体基板2の裏面2bが、半導体基板2中の第1半導体領域2pよりもアルミニウム濃度が高くなり、BSF層12が形成される。アルミニウムは、p型ドーパントとなりうるので、BSF層12が含有するドーパントの濃度は、第1半導体領域2pが含有するドーパントの濃度よりも高くなる。そのため、BSF層12中には、第1半導体領域2pのドーパント元素の濃度よりも高い濃度でドーパント元素が存在する。BSF層12は、半導体基板2の裏面2b側において内部電界を形成して、半導体基板2における裏面2bの表面近傍で、少数キャリアの再結合による光電変換効率の低下を低減させる役割を有する。BSF層12は、例えば、半導体基板2の裏面2b側に、ボロンまたはアルミニウムなどのドーパント元素を拡散させることによって形成してもよい。第1半導体領域2pおよびBSF層12が含有するドーパント元素の濃度は、それぞれ5×1015〜1×1017atoms/cm3、1×1018〜5×1021atoms/cm3程度とすることができる。
なお、第1電極41および第2電極42は、同一の材質で構成すればよい。この場合、貫通孔39を形成後に、電極材料のアルミニウムを主成分とするアルミニウムペーストを、貫通孔39の内部に充填しつつ裏面2b上に塗布することができる。アルミニウムペーストの塗布後に所定の温度プロファイルで焼成することによって、第1電極41および第2電極42を同時に形成することができる。
以上のように、太陽電池素子51では、第2パッシベーション膜13aを保護膜40で覆う。このため、第2パッシベーション膜13aと、裏面2b側に設けられる、バスバー電極7a、第1電極41および第2電極42と接する面積を小さくすることができる。これにより、裏面2b側に設けられる電極の形成時に、アルミニウムなどの電極材料の拡散による第2パッシベーション膜13aの変質や劣化する面積も小さくすることができる。また、湿度などによる第2パッシベーション膜13aの変質もしにくくすることができる。これらのことから、太陽電池素子51の光電変換効率と長期的な信頼性とを向上させることができる。
<太陽電池素子の製造方法>
次に、太陽電池素子51の製造方法の各工程について説明する。図5(a)〜(d)の
工程については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
その後、図12(a)に示すように、裏面2bに形成された酸化アルミニウムなどから成る第2パッシベーション膜13aの上に保護膜40を形成する。保護膜40は、例えば膜厚が50〜800nm程度の窒化シリコン膜である。窒化シリコン膜から成る保護膜40は、例えばPECVD法またはスパッタリング法を用いて形成する。PECVD法を用いる場合であれば、半導体基板2にシラン(SiH4)とアンモニア(NH3)との混合ガスを窒素(N2)で希釈して供給する。そして、反応圧力を50〜200Paにしてグロー放電分解でプラズマ化させて反応させて、堆積させることで保護膜40を形成できる。また、グロー放電に必要な高周波電源の周波数としては10〜500kHzの周波数を使用する。また、ガス流量は反応室の大きさ等によって適宜決定されるが、例えばガスの流量としては、150〜6000sccmの範囲とすればよい。また、シランの流量Aとアンモニアの流量Bとの流量比B/Aは0.5〜15であればよい。
また、保護膜40は、ポリシロキサンから成るものでもよい。ポリシロキサンからなる保護膜40は、次の手順にて形成できる。
まず、一般式RnSiX(4−n)(Rはアルキル基、Xはアルコキシ基、nは0〜3までの整数)で示される珪素化合物材料を準備する。ここでアルキル基の炭素数は1〜20程度でよい。また、アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などでよい。珪素化合物材料は、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソポロプロポキシシランなどとすることができる。次に、この珪素化合物材料を加水分解の後、縮重合させることによって、ポリシロキサンオリゴマーを生成させる。
スプレー、ローラー、ダイコーター、ロールコ―ターまたはスピンコーターなどを用いて、パッシベーション層13a上の略全面にポリシロキサンオリゴマー溶液を塗布する。その後、塗布した基板1を温度100〜300℃程度、時間30秒〜20分程度で乾燥、硬化させることによって、アルキル基を有するポリシロキサンを含む保護膜40を形成できる。
このように、保護膜40の形成時に、パッシベーション層13aがプラズマダメージ(プラズマによって発生した電子の衝突による酸化アルミニウム膜のエッチングダメージ、、欠陥生成および酸化アルミニウム膜中への不純物混入など)を受けることが無い。さらに、熱の影響によるパッシベーション層13aの劣化が少なく、基板1との密着強度の低下が起こりにくい。
保護膜40がポリシロキサンから成る場合、保護膜40は、アルキル基を有するポリシロキサンの膜中に複数のシリコン原子を有するシリカ粒子16が分散しているとよい。アルキル基を有するポリシロキサンの膜は、シリコン原子、酸素原子およびアルキル基によって構成された立体構造を持つ。これらの構造に囲まれた空隙部に、例えばコロイダルシリカのようなシリカ粒子が分散していることによって、保護膜40の透湿性をさらに低下させることができ、太陽電池素子51の信頼性をより向上させることができる。このように、アルキル基を有するポリシロキサンの膜中にシリカ粒子が分散している保護膜40を形成する場合には、上述の珪素化合物材料に、水または水とアルコールの混合液中にアモルファスシリカを5〜30質量%程度分散させた液を、珪素化合物材料の70〜500質量%程度添加させることによって、形成可能である。
次に図12(b)に示すように、貫通孔39を形成する。第2パッシベーション膜13
aおよび保護膜40を部分的に一部除去して、貫通孔39を形成する。この貫通孔39は、第2電極と半導体基板2との電気的接続を得るために設けられる。このような貫通孔39は、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーを用いたレーザービームの照射で形成できる。
次に、電極の形成について説明する。受光面2a側に配置される、接続電極3、集電電極4および補助集電電極5は、上述の第1の実施形態と同様に、導電ペースト20aを図12(a)に示すように塗布することで作製できる。
導電ペースト20aを塗布して乾燥した後に、裏面2b側の電極であるバスバー電極7a形成する。バスバー電極7aは、主成分として銀を含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリット等を含有する金属ペースト(第2導電ペースト17)をスクリーン印刷法によって、半導体基板2の第2半導体領域2n上に塗布する。この塗布後、第2導電ペースト17を所定温度で加熱して溶剤を蒸散させて乾燥させる。第2導電ペースト17は、導電ペースト20aと同じものを用いてもよい。
次に図12(d)に示すように、第1電極41および第2電極42は、主成分としてアルミニウムを含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリットを含有するアルミニウムペースト(第3導電ペースト18)を用いて作製できる。この第3導電ペースト18を、すでに塗布された第2導電ペースト17の一部に接触するように裏面2b側に塗布する。このとき第3導電ペースト18は、バスバー電極7aが形成されない部位のほぼ全面に塗布すれば、厳密な位置合わせをすることなく貫通孔39に第3導電ペースト18を充填させることができる。また、塗布法としては、スクリーン印刷法などを用いることができる。この塗布後、第3導電ペースト18を所定温度で溶剤を蒸散させて乾燥させてもよい。第3導電ペースト18は、上述の導電ペースト20cと同様のものでもよい。
導電ペースト20a、第2導電ペースト17および第3導電ペースト18が塗布された半導体基板2は、焼成炉にてピーク温度が600〜900℃程度で数秒〜数分間程度焼成する。この焼成によって、導電ペースト20aは反射防止膜6をファイアースルーして半導体基板2の第2半導体領域2nに接続されて、接続電極3、集電電極4および補助集電電極5が形成される。このとき、第2導電ペースト17も焼成され、バスバー電極7aが形成される。さらに、第3導電ペースト18も貫通孔39の端部において、裏面2b側のp型の第1半導体領域2pと接続され、第3電極8が形成される。また、第3電極8の形成に伴い、BSF層12も形成される。ただし、保護膜40上にある第3導電ペースト18は、保護膜40によってブロックされるので、第2パッシベーション膜13aにほとんど影響を及ぼすことが無い。
なお、銀を主成分として、成分が類似した、受光面2a側の電極(接続電極3、集電電極4および補助集電電極5)と、裏面2b側の電極(バスバー電極7a)とを形成するための焼成を行った後に、アルミニウムを主成分とする第1電極41および第2電極42を形成するための焼成を別途行ってもよい。
第2の実施形態に係る太陽電池モジュールおよび太陽電池モジュールの製造方法については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
<<その他>>
本発明に係る太陽電池素子およびその製造方法ならびに太陽電池モジュールは、上述した内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良は可能である。
例えば、第1パッシベーション膜11および第2パッシベーション膜13の少なくとも一方の表面を、例えばジルコニウム酸化物およびハフニウム酸化物のうち少なくとも1種を含む保護層で覆うようにしてもよい。このように、第1パッシベーション膜11および第2パッシベーション膜13の少なくとも一方の表面を保護することで、対PID耐性の向上を期待できるほか、長期信頼性に優れた太陽電池素子およびそれを用いた太陽電池モジュールを提供できる。特に第1パッシベーション膜11および第2パッシベーション膜13を酸化アルミニウムとして、これらの保護層がジルコニウム酸化物およびハフニウム酸化物のうち少なくとも1種を含む保護層とするとよい。この場合、第1パッシベーション膜11および第2パッシベーション膜13と保護層との間で生じる複合酸化物の存在によって、太陽電池素子の熱安定性および非透湿性が向上し得るからである。
以下に、第1の実施形態の実施例について説明する。
まず、太陽電池素子を以下のようにして作製した。図5(a)に示すように、半導体基板2として、比抵抗値が約1Ω・cm、一辺約156mmの正方形状の平面形状を有し、厚みが200μm程度のボロンがドープされたp型の多結晶シリコン基板を用意した。この半導体基板2は鋳造法によって作製した。
半導体基板2は、NaOH水溶液を用いて表面から10μm程度の深さをエッチングした後に、RIE法を用いて受光面2a側に微細なテクスチャを形成した。
その後、オキシ塩化リン(POCl3)を拡散源とした気相熱拡散法によって、半導体基板2の表面全面にn型領域を形成した。このn型領域は、50〜100Ω/□程度のシート抵抗になるように形成した。その後、半導体基板2の裏面2b側、側面2c側のみをフッ硝酸溶液に浸して裏面2b側、側面2c側のn型領域を除去した。これにより、図5(b)に示すように、半導体基板2の受光面2a側にn型の第2半導体領域2nを形成した。
次に、図5(c)に示すように、半導体基板2の受光面2a上に、PECVD装置を用いて、窒化シリコンからなる反射防止膜6を形成した。反射防止膜6は、屈折率が2.1〜2.2程度であり、厚みを80〜100nm程度とした。
次に、図5(d)に示すように、半導体基板2の受光面2a側および裏面2b側の略全面に、第1パッシベーション膜11、第2パッシベーション膜13、第3パッシベーション膜14を形成した。これらのパッシベーション膜は、ALD法によって酸化アルミニウムを厚み約30〜50nmで成膜した。
次に、図5(e)に示すように、受光面2a側の電極(図1に示す接続電極3、集電電極4および補助集電電極5)を形成するための導電性ペースト20aの塗布を行った。導電性ペースト20aは、銀を主成分として、ガラスフリットおよび有機ビヒクル等を含有するものを用いた。そして、図1に示すような形状にスクリーン印刷法を用いて、約20〜30μmの厚さに塗布し、その後乾燥を行った。
次に、図5(f)に示すように、裏面2b側において、第2パッシベーション膜13上に図2に示すようなバスバー電極7を形成するための導電性ペースト20bを塗布した。この導電性ペースト20bは、銀を主成分として、ガラスフリットおよび有機ビヒクル等を含有するものを用いた。そして、導電性ペースト20bは、スクリーン印刷法を用いて、図2に示すような形状に約10〜20μmの厚さに塗布し、その後乾燥を行った。
その後、図2に示すような第1フィンガー電極8、補助バスバー電極9、第2フィンガー電極10および端部電極11を形成するための導電性ペースト20cを裏面2b側に塗布した。これらの電極を形成するための導電性ペースト20cは、アルミニウムを主成分として、ガラスフリットおよび有機ビヒクル等を含有するものを用いた。そして、図2に示すような形状にスクリーン印刷法を用いて、約40〜50μmの厚さに塗布し、その後乾燥を行った。
次に、導電性ペースト20a、20bおよび20cを塗布した半導体基板2を、ピーク温度約700℃で、10分程度焼成することによって電極を形成して、実施例の太陽電池素子1を作製した。
次に、比較例の太陽電池素子を作製した。半導体基板2の受光面2a側にn型の第2半導体領域2nを形成するところまで、上述の実施例の太陽電池素子の作製と同様の工程および条件で行った。
その後、半導体基板2の受光面2a側および裏面2b側の略全面に、受光面側パッシベーション膜、裏面側パッシベーション膜、側面側パッシベーション膜を形成した。これらのパッシベーション膜は、ALD法によって酸化アルミニウムを厚さ約30〜50nmで成膜した。
次に、半導体基板2の受光面2aに形成した受光面側パッシベーション膜上に、PECVD装置を用いて、窒化シリコンからなる反射防止膜を形成した。反射防止膜は、屈折率が2.1〜2.2程度であり、厚みを80〜100nm程度とした。
その後の受光面2a側の電極、裏面2b側電極の形成は、上述の実施例の太陽電池素子の作製と同様の工程および条件で行い、比較例の太陽電池素子を作製した。
次に、実施例および比較例の太陽電池素子を用いた2種類の太陽電池モジュールを作製した。まず、太陽電池モジュールを構成する太陽電池ストリングを次のように作製した。実施例および比較例の太陽電池素子を各7枚用意した。そして、図7(b)に示すように、リード部材15を用いて太陽電池素子同士を半田付けによって直列に接続して、実施例および比較例の太陽電池素子を用いた2種類の太陽電池ストリングを作製した。
さらに、このようにして作製した太陽電池ストリングを、実施例用および比較例用の太陽電池モジュールを作製するために各6本用意した。6本の太陽電池ストリングは、互いに略平行に整列させて、各々の太陽電池ストリングの端部にある太陽電池素子に対して、図8に示すような横方向配線35および外部導出配線36を半田付けによって接続した。
その後、図8に示すように、透光性基板31上に表面側充填材32を配置した後、互いに接続された6本の太陽電池ストリング、裏面側充填材33および裏面材34等を順次積層して積層体を作製した。そして、この積層体をラミネート装置にセットし、減圧下にて加圧しながら100〜160℃程度で約20分加熱、押圧することによって、太陽電池パネル22を作製した。
次に、太陽電池パネル22の外周部にアルミニウムから成るフレーム23を取り付けて、第2面21b側に端子箱24を配置して、実施例の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュール21と比較例の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールとを完成させた。
次に、これらの太陽電池モジュールに対して対PID耐性の試験を行った。2つの太陽電池モジュールは、温度約80℃、湿度約90%の恒温恒湿室内に配置した。また、各太
陽電池モジュールにおいて、端子箱24内のプラス側の電極端子とマイナス側の電極端子とを短絡させた状態で、電極端子と太陽電池パネル22の外周部に取り付けたフレーム23との間に約1000Vの電圧を印加した。そして、各太陽電池モジュールの出力特性を測定して、時間経過による短絡電流(Isc)と開放電圧(Voc)との劣化率の変化(初期の特性を100%とした場合に、時間の経過とともに何%劣化したかについて)を観察した。なお、この測定は、日本工業規格JIS C 8914に準拠して行った。
この結果を図9(a)、(b)に示す。図9(a)は時間経過による短絡電流の劣化率の変化であり、図9(b)は時間経過による開放電圧の時間変化である。
これらの結果から明らかなように、実施例の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールでは、短絡電流は120時間経過後も3%未満の劣化にすぎず、開放電圧ではほとんど劣化が認められなかった。一方、比較例の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールでは、短絡電流は50時間の経過後では3%以上の劣化が認められ、開放電圧では50時間経過後では2%以上の劣化が認められた。
以上により、実施例の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールでは、短絡電流および開放電圧ともに比較例の太陽電池素子を用いた太陽電池モジュールよりも劣化率が低く、対PID耐性が大きく向上したことを確認できた。