以下、図1〜図7を用いて本実施の形態に係る吸着式ヒートポンプを備えた車両用エアコン装置10(以下、車両用エアコン装置10という)について説明する。図1及び図2に示されるように、車両用エアコン装置10は、吸着式ヒートポンプ20を備えたエアコン装置として構成されている。この車両用エアコン装置10は、エンジン80と吸着式ヒートポンプ20(詳しくは、後述する脱離工程側の吸着脱離部)との間において冷却液を循環させるための第1循環回路40を備えている。また、車両用エアコン装置10は、吸着式ヒートポンプ20内の熱源(詳しくは、後述する吸着工程側の吸着脱離部及び脱離工程側の蒸発凝縮部)と第1の熱交換器との間において冷却液を循環させるための第2循環回路90を備えている。さらに、車両用エアコン装置10は、吸着式ヒートポンプ20(詳しくは、後述する吸着工程側の蒸発凝縮部)と第2の熱交換器との間において冷却液を循環させるための第3循環回路92を備えている。
そして、第1循環回路40では「高温」の冷却液が循環し、第2循環回路90では「低温」の冷却液が循環し、第3循環回路92では「冷温」の冷却液が循環する。ここで、「高温」とは、後述する吸着脱離部における脱離工程を促す温度(例えば、90°C程度)が該当する。本実施の形態では、エンジン80から排出される冷却液は「高温」に温められている。また、「冷温」とは、車内温度より低い温度(例えば、10°C程度)が該当する。本実施の形態では、蒸発凝縮部における冷媒の蒸発潜熱によって、冷却液は「冷温」に冷却される。さらに、「低温」とは、大気温度より高く、「冷温」と「高温」の間の温度(例えば、40°C程度)が該当する。本実施の形態では、吸着式ヒートポンプ20の内部において発生する熱(吸着熱、凝縮熱)によって、冷却液は「低温」に温められる。
そして、冷房要求時においては、第1の熱交換器は室外熱交換器62が、第2の熱交換器は室内熱交換器52がそれぞれ対応する。また、暖房要求時においては、第1の熱交換器は室内熱交換器52が、第2の熱交換器は室外熱交換器62がそれぞれ対応する。
以下、車両用エアコン装置10の構成について説明する。
(吸着式ヒートポンプ)
本実施の形態の車両用エアコン装置10は、吸着式ヒートポンプ20を含んで構成されている。吸着式ヒートポンプ20は、複数(本実施の形態では2つ)の容器を備えており、一方の容器において吸着工程が行われ、他方の容器において脱離工程が行われるようになっている。すなわち、一方の容器において、吸着剤32によって冷媒(水)を吸着し、吸着剤32による冷媒の吸着に伴って冷媒が蒸発することで生じる蒸発潜熱を利用して、「冷温」に冷却された冷却液を得るようになっている。また、他方の容器において、冷媒(水)を吸着した吸着剤32を加熱することで、吸着剤32から冷媒(水)を脱離するようになっている。そして、吸着式ヒートポンプ20では、各容器内において吸着工程及び脱離工程が繰り返し行われる。
以下、具体的に説明する。
吸着式ヒートポンプ20は、「吸着脱離部」としての第1吸着脱離部22A及び第2吸着脱離部24Aと、「蒸発凝縮部」としての第1蒸発凝縮部22B及び第2蒸発凝縮部24Bと、を含んで構成されている。そして、第1吸着脱離部22A及び第1蒸発凝縮部22Bが対を成して「容器」としての第1容器22を構成している。第1容器22の内部は密閉されている。また、第2吸着脱離部24A及び第2蒸発凝縮部24Bが対を成して「容器」としての第2容器24を構成している。第2容器24の内部は密閉されている。
第1吸着脱離部22A及び第2吸着脱離部24Aの内部には、それぞれ吸着剤32が収容されており、吸着剤32は、シリカゲルやゼオライト等(本実施の形態では、ゼオライト)で構成されている。また、第1吸着脱離部22Aの内部には、第1吸着コア22C(熱交換器)が配置されており、第1吸着コア22Cは、4方弁26A,26Bに接続されている。この4方弁26A,26Bには、制御部30(図1参照、図2では図示省略)が電気的に接続されており、4方弁26A,26Bの切替制御を制御部30によって行う構成になっている。そして、第1吸着コア22Cは、4方弁26A,26Bによって、後述する第1循環回路40又は第2循環回路90に接続される。
さらに、第1吸着脱離部22Aと同様に、第2吸着脱離部24Aの内部には、第2吸着コア24C(熱交換器)が配置されており、第2吸着コア24Cは、4方弁26A,26Bに接続されて、4方弁26A,26Bによって、後述する第1循環回路40又は第2循環回路90に接続される構成となっている。そして、第1吸着コア22C及び第2吸着コア24C内には、第1循環回路40内又は第2循環回路90内を流れる冷却液が循環されるようになっている。
一方、第1蒸発凝縮部22B及び第2蒸発凝縮部24Bの内部には、冷媒(本実施の形態では、冷却水)が注入されている。また、第1蒸発凝縮部22Bの内部には、第1蒸発凝縮コア22D(熱交換器)が配置されており、第1蒸発凝縮コア22Dは、4方弁28A,28Bに接続されている。この4方弁28A,28Bには、前述した制御部30が電気的に接続されており、4方弁28A,28Bの切替制御を制御部30によって行う構成になっている。そして、第1蒸発凝縮コア22Dが、4方弁28A,28Bによって、後述する第2循環回路90又は第3循環回路92に接続される。
さらに、第1蒸発凝縮部22Bと同様に、第2蒸発凝縮部24Bの内部には、第2蒸発凝縮コア24D(熱交換器)が配置されている。第2蒸発凝縮コア24Dは、4方弁28A,28Bに接続されており、4方弁28A,28Bによって後述する第2循環回路90又は第3循環回路92に接続される構成となっている。そして、第1蒸発凝縮コア22D及び第2蒸発凝縮コア24D内には、第2循環回路90内又は第3循環回路92内を流れる冷却液が循環されるようになっている。
また、図1に示すように、第1容器22において、第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bとの間には、連通部99Aが設けられている。連通部99Aは、図4(A)に示すように、第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bとを連通させる一対の第1蒸気通路100Aと第2蒸気通路102Aとを有している。また、連通部99Aは、第1蒸気通路100Aの途中の第1分岐点104Aと第2蒸気通路102Aの途中の第2分岐点106Aとを連通させる第3蒸気通路108を有している。なお、第1蒸気通路100Aにおいて、第1吸着脱離部22Aから第1分岐点104Aまでを「第1上蒸気通路110A」といい、第1分岐点104Aから第1蒸発凝縮部22Bまでを「第1下蒸気通路112A」という。また、第2蒸気通路102Aにおいて、第1吸着脱離部22Aから第2分岐点106Aまでを「第2上蒸気通路114A」といい、第2分岐点106Aから第1蒸発凝縮部22Bまでを「第2下蒸気通路116A」という。
第1上蒸気通路110A、第1下蒸気通路112A、第2上蒸気通路114A、第2下蒸気通路116Aのそれぞれに、弁体の開閉により各通路を連通又は遮断させる第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aが配設されている。
また、第3蒸気通路108Aには、第1圧縮機126Aが配設されている。第1圧縮機126Aは、第1分岐点104A側から吸引し、第2分岐点106A側に圧送するものである。
なお、図1において煩雑さを回避するために図示を省略しているが、第1開閉弁118A〜第4開閉弁124A及び第1圧縮機126Aは制御部30と電気的に接続されており、第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aの切替制御、第1圧縮機126Aの駆動制御は制御部30によって行われる。
さらに、第2容器24の内部には、第1容器22の連通部99Aと同様な連通部99Bが形成されている。したがって、図4(B)に示すように、連通部99Bにおいて連通部99Aの構成要素と略同一の構成要素には、連通部99Aの構成要素と同一の参照番号にBを付してその詳細な説明を省略する。
一方、車両用エアコン装置10は、図1に示すように、第1の熱交換器を室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれか一方に、第2の熱交換器を室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれか他方に切り替え可能な「切替弁」として、4方弁94A,94Bを備えている。この4方弁94A,94Bには制御部30が電気的に接続されており、4方弁94A,94Bの切替制御を制御部30によって行う構成になっている。4方弁94Aは、連結配管27Aによって4方弁26Aに、連結配管96Aによって4方弁28Aに、それぞれ連結されている。そして、連結配管27Aの中間部には冷却液を循環させるための第2ポンプ29Bが設けられている。また、4方弁94Bは、連結配管27Bによって、4方弁26Bに、連結配管96Bによって4方弁28Bに、それぞれ連結されている。そして、連結配管96Bの中間部には冷却液を循環させるための第4ポンプ98が設けられている。
連結配管27Aは第2ポンプ29Bの下流側の分岐部95Aにおいて分岐されており、分岐部95Aと4方弁28Aとが連結配管27Cによって連結されている。一方、連結配管27Bは中間の分岐部95Bにおいて分岐されており、分岐部95Bと4方弁28Bとが連結配管27Dによって連結されている。そして、連結配管27Dの中間部には冷却液を循環させるための第3ポンプ29Cが設けられている。
(第1循環回路)
第1循環回路40は、エンジン80と、吸着式ヒートポンプ20、詳しくは脱離工程側の吸着脱離部(第1吸着脱離部22A又は第2吸着脱離部24A)とを接続し、両者間において冷却液を循環させるための回路として構成されている。第1循環回路40は、第1循環回路40の上流側の部分を構成する上流側配管40Aと、第1循環回路40の下流側の部分を構成する下流側配管40Bと、を有している。上流側配管40Aは4方弁26Bに接続されており、下流側配管40Bは4方弁26Aに接続されている。また、上流側配管40Aにはヒータコア44が設けられている。このヒータコア44は、後述する室内空調ユニット70の一部を構成している。
以上、第1循環回路40は、エンジン80からヒータコア44を経由して脱離工程側の吸着脱離部に至り、第1ポンプ29Aを経由して再びエンジン80に至る回路とされている。すなわち、第1循環回路40は、エンジン80から排出された「高温」の冷却液が循環する回路とされている。第1循環回路40では、第1吸着脱離部22A(第1吸着コア22C)又は第2吸着脱離部24A(第2吸着コア24C)に「高温」の冷却液が供給されることにより、第1吸着脱離部22A又は第2吸着脱離部24Aにおいて、脱離工程が行われる。
(第2循環回路)
第2循環回路90は、吸着式ヒートポンプ20内の熱源と、第1の熱交換器(室内熱交換器52又は室外熱交換器62)と、を接続し、両者間において冷却液を循環させるための回路として構成されている。ここで、「吸着式ヒートポンプ20内の熱源」とは、吸着熱が発生する吸着工程側の吸着脱離部(第1吸着脱離部22A、第2吸着脱離部24A)と、凝縮熱が発生する脱離工程側の蒸発凝縮部(第1蒸発凝縮部22B、第2蒸発凝縮部24B)とが該当する。また、「吸着熱」とは、吸着工程側の容器において吸着剤32が冷媒を吸着することによって生じる熱である。また、「凝縮熱」とは、脱離工程側の容器において冷媒が凝縮することで生じる熱である。
以上、第2循環回路90は、吸着工程側の吸着脱離部から第2ポンプ29Bを経由して第1の熱交換器に至り、再び吸着工程側の吸着脱離部に至る回路と、脱離工程側の蒸発凝縮部から第1の熱交換器に至り、第3ポンプ29Cを経由して再び脱離工程側の蒸発凝縮部に至る回路と、を合わせた回路とされている。すなわち、第2循環回路90は、吸着熱及び凝縮熱により温められた「低温」の冷却液が循環する回路とされている。
ここで、第1の熱交換器は、室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれかが対応する。詳しくは、冷房要求時においては室外熱交換器62が、暖房要求時においては室内熱交換器52が対応する。室内熱交換器52は、後述する室内空調ユニット70の一部を構成しており、車室内に設けられた熱交換器として構成されている。また、室内熱交換器52は、その上流側では上流側配管50Aによって4方弁94Aに連結され、その下流側では下流側配管50Bによって4方弁94Bに連結されている。一方、室外熱交換器62は、車両のエンジンルームの前端部に配置されており、エンジン冷却用のラジエータとは別の熱交換器として構成されている。また、室外熱交換器62は、その上流側では上流側配管60Aによって4方弁94Aに連結され、その下流側では下流側配管60Bによって4方弁94Bに連結されている。さらに、室外熱交換器62には、ファン66が設けられている。このファン66を回転駆動させることで、強制的に熱交換を行うことができる。なお、第1の熱交換器を室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれに対応させるか、換言すると第2循環回路90に室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれを接続させるかの切り替えは、4方弁94A,94Bにより行われる。
以上、本実施の形態の車両用エアコン装置10では、冷房要求時は第1の熱交換器としての室外熱交換器62において温熱が放熱され、暖房要求時は第1の熱交換器としての室内熱交換器52において温熱が放熱される。
(第3循環回路)
第3循環回路92は、吸着式ヒートポンプ20、詳しくは吸着工程側の蒸発凝縮部(第1蒸発凝縮部22B又は第2蒸発凝縮部24B)と、第2の熱交換器(室内熱交換器52又は室外熱交換器62)と、を接続し、両者間において冷却液を循環させるための回路として構成されている。詳しくは、第3循環回路92は、吸着工程側の蒸発凝縮部から第2の熱交換器に至り、第4ポンプ98を経由して再び吸着工程側の蒸発凝縮部に至る回路とされている。すなわち、第3循環回路92は、吸着工程側の蒸発凝縮部において「冷温」とされた冷却液が循環する回路とされている。
ここで、第2の熱交換器は、室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれかが対応する。詳しくは、冷房要求時においては室内熱交換器52が、暖房要求時においては室外熱交換器62が対応する。第2の熱交換器を室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれに対応させるか、換言すると第3循環回路92に室内熱交換器52及び室外熱交換器62のいずれを接続させるかの切り替えは、4方弁94A,94Bにより行われる。
以上、本実施の形態の車両用エアコン装置10では、冷房要求時は第2の熱交換器としての室内熱交換器52において吸熱され、暖房要求時は第1の熱交換器としての室外熱交換器62において吸熱される。
(室内空調ユニット)
図3に示されるように、室内空調ユニット70は、通風ダクト72を有している。通風ダクト72の上流側には、図示しない外気導入用の空気取入口、内気導入用の空気取入口、が設けられている。また、通風ダクト72内には、その上流側において、ブロワファンを備えたブロワ74が設けられており、空気取入口又は空気取入口から通風ダクト72内に導入された空気をブロワ74によって通風ダクト72の下流側へ送風するように構成されている。
また、通風ダクト72内には、ブロワ74に対して下流側において、導入空気を除湿冷却するための室内熱交換器52、導入空気を加熱するためのヒータコア44、導入空気のヒータコア44への送風量を調節するためのエアミックスダンパ76がそれぞれ設けられている。エアミックスダンパ76は、図示しないアクチュエータにより回動するように形成されている。ここで、エアミックスダンパ76を図3において2点鎖線で示される状態に回動させることで、通風ダクト72を、室内熱交換器52を通過した空気を流す第1通路とすることができる。一方、エアミックスダンパ76を図3において実線で示される状態に回動させることで、通風ダクト72を、室内熱交換器52及びヒータコア44を通過した空気を流す第2通路とすることができる。このように、室内空調ユニット70では、エアミックスダンパ76の回転位置を調整することにより第1通路を通過する空気と第2通路を通過する空気との割合を変更することができる。エアミックスダンパ76により調温された空気が通風ダクト72の下流側へ流れて、車室内に送風される。
次に、車両用エアコン装置10の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。なお、以下の動作説明図(図5及び図6)では、第1開閉弁118A〜第4開閉弁124A、第1開閉弁118B〜第4開閉弁124Bを白丸で表した場合には弁の開放を意味し、白丸の内側に×を記入したもので表した場合には弁の閉塞を意味するものである。
(冷房要求時)
冷房要求時には、制御部30が4方弁26A,26B、4方弁28A,28B、及び4方弁94A,94Bを制御することで、吸着工程側の吸着脱離部を第2循環回路90に接続させ、吸着工程側の蒸発凝縮部を第3循環回路92に接続させる。一方、脱離工程側の吸着脱離部を第1循環回路40に接続させ、脱離工程側の蒸発凝縮部を第2循環回路90に接続させる。そして、制御部30が4方弁26A,26B、及び4方弁28A,28Bを繰り返し切替制御することで、吸着式ヒートポンプ20では、各容器内において吸着工程及び脱離工程が繰り返し行われる。
具体的には、図1に示されるように、室外熱交換器62が4方弁94A,94Bによって、第2循環回路90に接続され、室内熱交換器52が4方弁94A,94Bによって、第3循環回路92に接続される。
次に、図1に示されるように、第1容器22では吸着工程、第2容器24では脱離工程が行われるとする。まず、第1吸着コア22Cが4方弁26A,26Bによって第2循環回路90に接続される。これにより、第1吸着コア22C及び室外熱交換器62を循環する経路が形成される(図1、矢印Aを参照)。また、第1蒸発凝縮コア22Dが4方弁28A,28Bによって第3循環回路92に接続される。これにより、第1蒸発凝縮コア22D及び室内熱交換器52を循環する経路が形成される(図1、矢印Bを参照)。また、第2吸着コア24Cが4方弁26A,26Bによって第1循環回路40に接続される。これにより、第2吸着コア24C及び第1循環回路40(エンジン80)を循環する経路が形成される(図1、矢印Cを参照)。さらに、第2蒸発凝縮コア24Dが4方弁28A,28Bによって第2循環回路90に接続される。これにより、第2蒸発凝縮コア24D及び室外熱交換器62を循環する経路が形成される(図1、矢印Dを参照)。なお、室外熱交換器62では、第1吸着コア22Cの循環(図1、矢印Aを参照)と、第2蒸発凝縮コア24Dの循環(図1、矢印Dを参照)とが合流している。
第1容器22では、図5(A)に示すように、吸着開始時に、制御部30によって第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aが全て開放されることにより、第1容器22の第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bが第1蒸気通路100A(第1上蒸気通路110A及び第1下蒸気通路112A)と第2蒸気通路102A(第2上蒸気通路114A及び第2下蒸気通路116A)で連通される。
また、第2容器24では、図5(B)に示すように、凝縮工程開始時に、制御部30によって第1開閉弁118B〜第4開閉弁124Bが全て開放されることにより、第2容器24の吸着脱離部24Aと蒸発凝縮部24Bが第1蒸気通路100B(第1上蒸気通路110B及び第1下蒸気通路112B)と第2蒸気通路102B(第2上蒸気通路114B及び第2下蒸気通路116B)で連通される。
そして、第1容器22において吸着工程が行われる。すなわち、第1容器22では、吸着脱離部22A内で乾燥された吸着剤32が冷媒を吸着することで、第1吸着脱離部22Aと第1蒸気通路100Aと第2蒸気通路102Aで連通された第1蒸発凝縮部22Bが減圧される。第1蒸発凝縮部22B内が減圧することで、第1蒸発凝縮部22Bの冷媒が蒸発する。蒸発した冷媒が第1蒸気通路100A、第2蒸気通路102Aを介して吸着脱離部22Aに供給される(図5(A)、矢印E参照)。このとき、冷媒の蒸発潜熱によって第1蒸発凝縮コア22D内の冷却液が冷却される。これにより、第3循環回路92内を流れる冷却液が「冷温」に冷却されて、室内熱交換器52に供給される。また、第1吸着脱離部22Aでは、吸着剤32が冷媒を吸着することによって生じる吸着熱によって第1吸着コア22C内の冷却液が「低温」に温められる。そして、第1吸着コア22C内で温められた冷却液が第2循環回路90によって室外熱交換器62に供給される。
この際、吸着脱離部22Aと蒸発凝縮部22Bは第1蒸気通路100Aと第2蒸気通路102Aで連通されているため、連通部99Aの流路に十分な流路断面積が確保されている。したがって、連通部99Aの通気抵抗が高くなって、吸着工程初期に発生する大量の冷媒蒸気の移動が抑制されることを防止できる。
一方、第2容器24において脱離工程が行われる。すなわち、第2吸着コア24Cは4方弁26A,26Bによって第1循環回路40に接続されているため、「高温」の冷却液が第2吸着コア24Cを介して第2吸着脱離部24A内の吸着剤32を加熱する。これにより、第2吸着脱離部24A内の吸着剤32が乾燥して、吸着剤32から冷媒が脱離される。そして、吸着剤32から脱離された冷媒は第1吸着脱離部24Aから第1蒸気通路100B、第2蒸気通路102Bを介して第2蒸発凝縮部24Bに供給される(図5(B)、矢印F参照)。これにより、第2循環回路90に接続されている第2蒸発凝縮部24B(第2蒸発凝縮コア24D)では、吸着剤32から脱離された冷媒が凝縮されて水として復元される。そして、このとき生成される凝縮熱によって第2蒸発凝縮コア24D内の冷却液が「低温」に温められる。そして、第2蒸発凝縮コア24D内で温められた冷却液が第2循環回路90によって室外熱交換器62に供給される。
この際、第2吸着脱離部24Aと第2蒸発凝縮部24Bは第1蒸気通路100Bと第2蒸気通路102Bで連通されているため、連通部99Bの流路に十分な流路断面積が確保されている。したがって、連通部99Bの通気抵抗が高くなって、脱離工程初期に発生する大量の冷媒蒸気の移動が抑制されることを防止できる。
なお、車両用エアコン装置10においてエンジン始動直後に室内温度が高い場合のクールダウン運転時等、高負荷運転時には圧縮機を用いて出力を増加させる。具体的には、図6(A)に示すように、吸着工程を開始してからヒートポンプ20の性能等により規定される所定時間経過後に第1容器22の(第2開閉弁120Aと第3開閉弁122Aを開放したまま)第1開閉弁118Aと第4開閉弁124Aを閉じると共に、第1圧縮機126Aを駆動する。これにより、第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bは、第1下蒸気通路112A、第3蒸気通路108A、第2上蒸気通路114Aを介して連通される。また、第1圧縮機126Aが駆動されることにより、第1蒸発凝縮部22Bの冷媒蒸気が吸引され、第1蒸発凝縮部22Bの冷媒蒸気密度が低下することにより、第1蒸発凝縮部22Bにおける冷媒の蒸発が一層促進される。また、第1蒸発凝縮部22Bから第1下蒸気通路112Aを介して第3蒸気通路108Bに供給された冷媒蒸気が、第1圧縮機126Aで圧縮され第2上蒸気通路114Aを介して第1吸着脱離部22Aに供給される(図6(A)、矢印G参照)。これにより、第1吸着脱離部22Aの冷媒蒸気密度が上昇し、第1吸着脱離部22Aにおける冷媒の吸着が一層促進される。
一方、図6(B)に示すように、脱離工程を開始してからヒートポンプ20の性能等により規定される所定時間経過後に第2容器24の(第1開閉弁118Bと第4開閉弁124Bを開放したまま)第2開閉弁120Bと第3開閉弁122Bを閉じると共に、第2圧縮機126Bを駆動する。これにより、第2吸着脱離部24Aと第2蒸発凝縮部24Bは、第1上蒸気通路110B、第3蒸気通路108B、第2下蒸気通路116Bを介して連通される。また、第2圧縮機126Bが駆動されることにより、第2吸着脱離部24Aの冷媒蒸気が吸引され、第2吸着脱離部24Aの冷媒蒸気密度が低下することにより、第2吸着脱離部24Aにおける冷媒の脱離が一層促進される。また、第2吸着脱離部24Aから第1上蒸気通路110Bを介して第3蒸気通路108Bに供給された冷媒蒸気が、第2圧縮機126Bで圧縮され第2下蒸気通路116Bを介して第2蒸発凝縮部24Bに供給される(図6(B)、矢印H参照)。これにより、第2蒸発凝縮部24Bの冷媒蒸気密度が上昇し、第2蒸発凝縮部24Bにおける冷媒の凝縮が一層促進される。
本実施の形態の車両用エアコン装置10では、第1容器22における吸着工程後及び第2容器24における脱離工程後に、制御部30の制御によって4方弁26A,26B及び4方弁28A,28Bを切り替える。これにより、第1容器22は吸着工程から脱離工程に切り替わると共に、第2容器24は脱離工程から吸着工程に切り替わる。具体的には、図示は省略するが、第1吸着コア22Cが4方弁26A,26Bによって第1循環回路40に接続され、第1蒸発凝縮コア22Dが4方弁28A,28Bによって第2循環回路90に接続される。一方、第2吸着コア24Cが4方弁26A,26Bによって第2循環回路90に接続され、第2蒸発凝縮コア24Dが4方弁28A,28Bによって第3循環回路92に接続される。
このように第1容器22と第2容器24とが吸着工程と脱離工程を切り替える場合には、図5(A)、(B)に示すように、それぞれの第1開閉弁118A、118B〜第4開閉弁124A、124Bを全て開放する。
その後、第1容器22で脱離工程が行われ、第2容器24で吸着工程が行われる。それぞれ第2容器24の脱離工程、第1容器22の吸着工程と同様なので説明を省略する。
以上、第1吸着脱離部22A及び第2吸着脱離部24Aにおいて、それぞれ吸着工程及び脱離工程が繰り返し行われて、「冷温」の冷却液が室内熱交換器52に供給される。
一方、室内空調ユニット70では、エアミックスダンパ76の回転位置が調整されることで、室内熱交換器52を通過した冷気と、ヒータコア44を通過した暖気の割合が調整される。すなわち、通風ダクト72を通過する空気が所望の温度に調整されて車室内に送風される。
なお、連通部99A、99Bの切替制御については、第1開閉弁〜第4開閉弁の連通状態及び圧縮機の駆動状態を図7に表として示す。
(暖房要求時)
暖房要求時には、制御部30が4方弁26A,26B、4方弁28A,28B、及び4方弁94A,94Bを制御することで、吸着工程側の吸着脱離部を第2循環回路90に接続させ、吸着工程側の蒸発凝縮部を第3循環回路92に接続させる。一方、脱離工程側の吸着脱離部を第1循環回路40に接続させ、脱離工程側の蒸発凝縮部を第2循環回路90に接続させる。そして、制御部30が4方弁26A,26B、及び4方弁28A,28Bを繰り返し切替制御することで、吸着式ヒートポンプ20では、各容器内において吸着工程及び脱離工程が繰り返し行われる。
具体的には、図2に示されるように、室外熱交換器62が4方弁94A,94Bによって、第3循環回路92に接続され、室内熱交換器52が4方弁94A,94Bによって、第2循環回路90に接続される。
次に、図2に示されるように、第1容器22では吸着工程、第2容器24では脱離工程が行われるとする。まず、第1吸着コア22Cが4方弁26A,26Bによって第2循環回路90に接続される。これにより、第1吸着コア22C及び室内熱交換器52を循環する経路が形成される(図2、矢印Aを参照)。また、第1蒸発凝縮コア22Dが4方弁28A,28Bによって第3循環回路92に接続される。これにより、第1蒸発凝縮コア22D及び室外熱交換器62を循環する経路が形成される(図2、矢印Bを参照)。また、第2吸着コア24Cが4方弁26A,26Bによって第1循環回路40に接続される。これにより、第2吸着コア24C及び第1循環回路40(エンジン80)を循環する経路が形成される(図2、矢印Cを参照)。さらに、第2蒸発凝縮コア24Dが4方弁28A,28Bによって第2循環回路90に接続される。これにより、第2蒸発凝縮コア24D及び室内熱交換器52を循環する経路が形成される(図2、矢印Dを参照)。なお、室内熱交換器52では、第1吸着コア22Cの循環(図2、矢印Aを参照)と、第2蒸発凝縮コア24Dの循環(図2、矢印Dを参照)とが合流している。
そして、第1容器22において吸着工程が行われる。すなわち、第1容器22では、乾燥された吸着剤32が冷媒を吸着し、第1容器22内が減圧することで、第1蒸発凝縮部22Bの冷媒が蒸発する。このとき、冷媒の蒸発潜熱によって第1蒸発凝縮コア22D内の冷却液が冷却される。これにより、第3循環回路92内を流れる冷却液が「冷温」に冷却されて、室外熱交換器62に供給される。また、第1吸着脱離部22Aでは、吸着剤32が冷媒を吸着することによって生じる吸着熱によって第1吸着コア22C内の冷却液が「低温」に温められる。そして、第1吸着コア22C内で温められた冷却液が第2循環回路90によって室内熱交換器52に供給される。
一方、第2容器24において脱離工程が行われる。すなわち、第2吸着コア24Cは4方弁26A,26Bによって第1循環回路40に接続されているため、「高温」の冷却液が第2吸着コア24Cを介して第2吸着脱離部24A内の吸着剤32を加熱する。これにより、第2吸着脱離部24A内の吸着剤32が乾燥して、吸着剤32から冷媒が脱離される。そして、第2循環回路90に接続されている第2蒸発凝縮部24B(第2蒸発凝縮コア24D)では、吸着剤32から脱離された冷媒が凝縮されて水として復元される。そして、このとき生成される凝縮熱によって第2蒸発凝縮コア24D内の冷却液が「低温」に温められる。そして、第2蒸発凝縮コア24D内で温められた冷却液が第2循環回路90によって室内熱交換器52に供給される。
本実施の形態の車両用エアコン装置10では、第1容器22における吸着工程後及び第2容器24における脱離工程後に、制御部30の制御によって4方弁26A,26B及び4方弁28A,28Bを切り替える。これにより、第1容器22は吸着工程から脱離工程に切り替わると共に、第2容器24は脱離工程から吸着工程に切り替わる。具体的には、図示は省略するが、第1吸着コア22Cが4方弁26A,26Bによって第1循環回路40に接続され、第1蒸発凝縮コア22Dが4方弁28A,28Bによって第2循環回路90に接続される。一方、第2吸着コア24Cが4方弁26A,26Bによって第2循環回路90に接続され、第2蒸発凝縮コア24Dが4方弁28A,28Bによって第3循環回路92に接続される。以上、第1吸着脱離部22A及び第2吸着脱離部24Aにおいて、それぞれ吸着工程及び脱離工程が繰り返し行われて、温められた冷却液が室内熱交換器52に供給される。
一方、室内空調ユニット70では、エアミックスダンパ76の回転位置が調整されることで、室内熱交換器52を通過した暖気と、ヒータコア44を通過した暖気の割合が調整される。ここで、通風ダクト72内の通路を、第2通路(図3の実線で示されるエアミックスダンパ76を参照)とすることで、エンジン80の排熱だけでなく、吸着熱及び凝縮熱を補助熱源として活用でき、暖房効率を向上させることができる。
なお、第1容器22、第2容器24内における連通部99A、99Bの切替制御については、車両用エアコン装置10の高負荷運転時に冷房時と略同様に行われるため、その詳細な説明は省略する。
(まとめ)
以下、車両用エアコン装置10の作用・効果について説明する。なお、以下の部分では、説明の都合上第1容器22についてのみ説明するが、第2容器24についても同様である。
このように車両用エアコン装置10においては、第1容器22内の第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bとを連通する第1蒸気通路100A、第2蒸気通路102Aを設けると共に、第1蒸気通路100Aの第1分岐点104Aと第2蒸気通路102Aの第2分岐点106Aとを連通する第3蒸気通路108Aを設けている。
また、第1上蒸気通路110A、第1下蒸気通路112A、第2上蒸気通路114A、第2下蒸気通路116Aにそれぞれ第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aを設けると共に、第3蒸気通路108Aに第1圧縮機126Aを配設している。
これにより、吸着工程又は脱離工程を第1圧縮機126Aで補助しない(吸着脱離の駆動力のみで運転する)場合(この場合を以下、「通常吸着工程」、「通常脱離工程」という)には、第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aを開放することにより、第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bとの間に十分な流路断面積を確保して吸着工程又は脱離工程の初期に発生する大量の冷媒蒸気の移動を良好に(スムーズ)行うことができる。
また、第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bとの間を第1圧縮機126Aを介してのみ接続していると、連通部99Aの通気抵抗を低減させるために流路断面積を大型化せざるを得ない。この場合には、差圧を確保するために第1圧縮機126Aも大型化するという不都合があるが、大量の冷媒蒸気が移動する通常吸着工程時又は通常脱離工程時には第1圧縮機126Aを介せずに第1蒸気通路100Aと第2蒸気通路102Aを介して第1吸着脱離部22Aと第1蒸発凝縮部22Bとを連通できるため、第1圧縮機126Aの大型化を防止することができる。したがって、車両用エアコン装置10の車両への搭載性に優れる。
さらに、吸着工程又は脱離工程を第1圧縮機126Aで補助する場合(この場合を以下、「補助吸着工程」、「補助脱離工程」という)には、第1開閉弁118Aと第4開閉弁124A又は第2開閉弁120Aと第3開閉弁122Aを選択的に閉塞することにより、第1圧縮機126Aによって第1吸着脱離部22Aから第1蒸発凝縮部22Bに、又は第1蒸発凝縮部22Bから第1吸着脱離部22Aに冷媒蒸気を圧送することができ、冷媒の吸着・脱離を促進することができる。すなわち、吸着工程、脱離工程をそれぞれ通常通常吸着工程、通常脱離工程と補助吸着工程、補助脱離工程の組み合わせとすることによって、1吸着工程、1脱離工程内における冷媒蒸気の移動量を増加させることができる。この結果、車両用エアコン装置10の出力を向上させることができる。
また、連通部99Aでは、第1上蒸気通路110A、第1下蒸気通路112A、第2上蒸気通路114Aと第2下蒸気通路116Aのそれぞれに、第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aを配設している。したがって、制御部30が第1開閉弁118A〜第4開閉弁124Aの切替を行うことにより、第1吸着脱離部22Aから第1蒸発凝縮部22Bに到る流路(第1上蒸気通路110Aから第3蒸気通路108Aを介して第2下蒸気通路116Aに到る流路)又は第1蒸発凝縮部22Bから第1吸着脱離部22Aに到る流路(第1下蒸気通路112Aから第3蒸気通路108Aを介して第2上蒸気通路114Aに到る流路)を形成することができる。
したがって、第1圧縮機126Aを駆動することによって第1吸着脱離部22Aから第1蒸発凝縮部22Bあるいは第1蒸発凝縮部22Bから第1吸着脱離部22Aに冷媒蒸気を圧送することより、吸着工程及び脱離工程のいずれでも車両用エアコン装置10の出力を一層向上させることができる。
また、補助吸着工程・補助脱離工程(第1圧縮機126Aの駆動)を吸着工程・脱離工程の最初からではなく、通常吸着工程・通常脱離工程が十分に行える所定時間経過後から第1圧縮機126Aを駆動することによって第1圧縮機126Aの負荷を軽減することができる。
また、エンジン80の始動直後のクールダウン運転や渋滞時の冷房運転のように車両用エアコン装置10の冷却負担が高くなる場合のみ補助吸着工程、補助脱離工程を行い、他の場合には通常吸着工程、通常脱離工程のみ行うことで、車両用エアコン装置10の動力消費量を低減することができると共に、自動車の燃費の悪化を抑制することができる。