JP6643146B2 - 車両用駆動制御装置及び車両用駆動制御装置の制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用駆動制御装置及び車両用駆動制御装置の制御方法に関する。
特許文献1には、運転者のブレーキペダルの踏み込みに基づき、ベルト式無段変速機構のベルトの伝達容量を増大させる技術が開示されている。この技術は、ブレーキペダルの踏み込みに応じた入力トルクによるベルト滑りを防止する技術となっている。
特開2010−210059号公報
ブレーキペダルの踏み込みは予測困難である一方、ブレーキペダルの踏み込みを検知してからベルトの伝達容量を増大させるのでは、ベルトの滑りを十分に防止することができない虞がある。このため、ブレーキペダルの踏み込みに備えて、アクセルペダルが解放状態にある場合に、ベルトの伝達容量を増大させておくことが考えられる。
ところが、ベルトの伝達容量は、アクセルペダルが踏み込まれている際には、ベルトへの入力トルクを伝達可能な容量の最小値である最小伝達容量に設定されることがある。燃費の悪化を防止しつつ、ベルト滑りを防止するためである。
このため、このようにベルトの伝達容量を設定するための設定値を第1伝達容量とし、ブレーキペダルの踏み込みに備えて増大させた伝達容量の設定値を第2伝達容量とすると、第2伝達容量を設定した場合には、次のようにしてベルトの滑りが発生する虞がある。
すなわち、アクセルペダルが解放状態から踏込状態に移行すると、ベルトへの入力トルクが小さいアクセルペダルの踏込初期に、ベルトの伝達容量が第2伝達容量から第1伝達容量に向かって低下する。そしてその後、設定値が第1伝達容量に切り替えられると、入力トルクの増大に応じて、ベルトの伝達容量が増大させられることになる。
このためこの場合には、ベルトの伝達容量の変化を低下から増大に転じさせることに起因して、ベルトの伝達容量が第1伝達容量をアンダーシュートするようにして下回る結果、ベルトの滑りが発生する虞がある。
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、加速要求がない状態で伝達容量を増大させても、加速要求が発生した際に伝達容量可変要素の滑りを防止或いは抑制可能な車両用駆動制御装置及び車両用駆動制御装置の制御方法を提供することを目的とする。
本発明のある態様の車両用駆動制御装置は、車両の走行用駆動源から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられる伝達容量可変要素と、前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定する伝達容量設定部と、を備え、前記伝達容量設定部は、加速要求がない状態では、ブレーキペダルの踏み込みによって前記伝達容量可変要素で滑りが生じない所定の伝達容量を設定する、車両用駆動制御装置であって、前記加速要求が発生した場合に、前記伝達容量可変要素の伝達容量が前記所定の伝達容量よりも低下することを禁止する禁止部、を備える。
本発明の別の態様によれば、車両の走行用駆動源から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられる伝達容量可変要素を備え、前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定するとともに、前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定するにあたり、加速要求がない状態では、ブレーキペダルの踏み込みによって前記伝達容量可変要素で滑りが生じない所定の伝達容量を設定する車両用駆動制御装置の制御方法であって、前記加速要求が発生した場合に、前記伝達容量可変要素の伝達容量が前記所定の伝達容量よりも低下することを禁止すること、を含む車両用駆動制御装置の制御方法が提供される。
これらの態様によれば、加速要求が発生した際に伝達容量の変化が低下から増大に転じることがなくなるため、加速要求が発生した際に伝達容量可変要素の滑りを防止或いは抑制することができる。
車両用駆動制御装置を含む車両の要部を示す図である。 本実施形態の制御の一例をフローチャートで示す図である。 本実施形態の制御に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。 本実施形態の制御の変形例の一例をフローチャートで示す図である。 第2所定勾配の設定の変形例をタイミングチャートで示す図である。 比較例の説明図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、車両用駆動制御装置100を含む車両の要部を示す図である。車両は、エンジン1と、トルクコンバータ2と、バリエータ20と、副変速機構30と、車軸部4と、駆動輪5と、を備える。以下では、車両用駆動制御装置100を単に駆動制御装置100と称す。
エンジン1は、車両の走行用駆動源を構成する。トルクコンバータ2は、流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータ2では、ロックアップクラッチ2aを締結することで、動力伝達効率を高めることができる。バリエータ20と副変速機構30とは、入力された回転速度を変速比に応じた回転速度で出力する。車軸部4は、減速ギヤや差動装置や駆動車軸を有して構成される。エンジン1の動力は、トルクコンバータ2、バリエータ20、副変速機構30及び車軸部4を介して駆動輪5に伝達される。
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、ベルト23と、を備える。バリエータ20は、プライマリプーリ21とセカンダリプーリ22との溝幅をそれぞれ変更することで、ベルト23の巻掛け径を変更して変速を行うベルト式の無段変速機構を構成している。以下では、プライマリをPRIと称し、セカンダリをSECと称す。
PRIプーリ21は、固定プーリ21aと、可動プーリ21bと、PRI室21cと、を有する。PRIプーリ21では、PRI室21cにPRI圧が供給される。PRI圧を制御することにより、可動プーリ21bが作動し、PRIプーリ21の溝幅が変更される。
SECプーリ22は、固定プーリ22aと、可動プーリ22bと、SEC室22cと、を有する。SECプーリ22では、SEC室22cにSEC圧が供給される。SEC圧を制御することにより、可動プーリ22bが作動し、SECプーリ22の溝幅が変更される。
ベルト23は、PRIプーリ21の固定プーリ21aと可動プーリ21bとにより形成されるV字形状をなすシーブ面と、SECプーリ22の固定プーリ22aと可動プーリ22bとにより形成されるV字形状をなすシーブ面に巻き掛けられる。
ベルト23には、エンジン1からの入力トルクが入力される。ベルト23の支持は、SEC室22cに供給されるSEC圧によって発生する油圧支持力であるベルト挟持力により確保される。ベルト23は、伝達容量可変要素を構成する。
副変速機構30は有段変速機構であり、前進2段、後進1段の変速段を有する。副変速機構30は、前進用変速段として、1速と、1速よりも変速比が小さい2速を有する。副変速機構30は、エンジン1から駆動輪5に至る動力伝達経路において、バリエータ20の出力側に直列に設けられる。副変速機構30は、バリエータ20に直接接続されてもよく、ギヤ列など他の構成を介してバリエータ20に間接的に接続されてもよい。
副変速機構30はバリエータ20とともに、自動変速機構3を構成する。バリエータ20と副変速機構30とは構造上、個別の変速機構として構成されてもよい。
車両は、オイルポンプ10と、油圧制御回路11と、コントローラ12と、をさらに備える。
オイルポンプ10は、エンジン1により駆動されてオイルを吐出する。バリエータ20や副変速機構30には、オイルポンプ10を油圧源として油圧が供給される。
油圧制御回路11は、オイルポンプ10が吐出したオイルの圧力を調整してバリエータ20や副変速機構30の各部位に伝達する。油圧制御回路11では、ライン圧PL、PRI圧、SEC圧の調整が行われる。
コントローラ12は、電子制御装置であり、油圧制御回路11を制御する。コントローラ12には、バリエータ20の入力側の回転速度を検出するための回転センサ41、バリエータ20の出力側の回転速度を検出するためのバリエータ出力側回転センサ42、副変速機構30の出力側の回転速度を検出する回転センサ43からの信号が入力される。
コントローラ12にはこのほか、アクセル開度センサ44、ブレーキセンサ45、圧力センサ46、インヒビタスイッチ47、エンジン回転センサ48、油温センサ49等からの信号も入力される。
アクセル開度センサ44は、アクセルペダルの操作量を表すアクセル開度APOを検出する。アクセル開度APOは、運転者による加速要求を指標する。ブレーキセンサ45は、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検知する。ブレーキペダルの踏み込みは、運転者による減速要求を指標する。ブレーキセンサ45は、ブレーキペダルの踏力を表すブレーキ踏力を検出するものであってもよい。圧力センサ46は、SEC圧の実圧を検出する。インヒビタスイッチ47は、セレクトレバーの位置を検出する。エンジン回転センサ48は、エンジン1の回転速度Neを検出する。油温センサ49は、自動変速機構3の油温を検出する。
コントローラ12は、これらの信号に基づき変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を油圧制御回路11に出力する。油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、ライン圧PL、PRI圧、SEC圧を制御したり、油圧経路の切り換えを行ったりする。
これにより、油圧制御回路11からバリエータ20及び副変速機構30の各部位に変速制御信号に応じた油圧の伝達が行われる。結果、バリエータ20及び副変速機構30の変速比が、変速制御信号に応じた変速比すなわち目標変速比に変更される。変速制御信号は、ライン圧PL、PRI圧、SEC圧を制御するための各指示圧の情報を含む。以下では、SEC圧の指示圧を指示圧Pseciと称し、SEC圧の実圧を実圧Psecと称す。
ベルト23の伝達容量Cは、実圧Psecに応じて変化する。したがって、実圧Psecは、伝達容量Cに対応する。伝達容量Cは、指示圧Pseciを制御することで、可変に制御される。
伝達容量Cには、第1伝達容量C1及び第2伝達容量C2のうち大きいほうの伝達容量が設定される。換言すれば、実圧Psecには、第1伝達容量C1に対応する指示圧Pseciである第1指示圧Pseci1と、第2伝達容量C2に対応する指示圧Pseciである第2指示圧Pseci2とのうち大きいほうの指示圧Pseciが設定される。
第1伝達容量C1は、加速要求がない状態、したがってアクセルペダルの解放状態で設定される伝達容量C11を含む。第1伝達容量C1は、伝達容量C11から変更される伝達容量C12をさらに含む。第1伝達容量C1は、ベルト23への入力トルクに応じてベルト23で滑りが生じないように設定される。以下では、伝達容量C11、伝達容量C12に対応する指示圧Pseciそれぞれを指示圧Pseci11、指示圧Pseci12と称す。
第2伝達容量C2は、第1伝達容量C1とは別に設定される伝達容量であり、アクセルペダルの解放状態で設定される伝達容量C21を含む。伝達容量C21は、伝達容量C11に対して高く設定される。伝達容量C21は、ブレーキペダルの踏み込みによってベルト23で滑りが生じないように、ブレーキペダルの踏み込みに備えて設定される。伝達容量C21は具体的には、ブレーキペダルの踏み込みによりベルト23で滑りが生じることがない伝達容量の最小値に設定される。
第2伝達容量C2は、伝達容量C21から変更される伝達容量C22をさらに含む。したがって、伝達容量C21は、アクセルペダルの踏込状態においても変更されるまでの間、そのまま設定され続けることもできる。伝達容量C11についても同様である。以下では、伝達容量C21、伝達容量C22に対応する指示圧Pseciそれぞれを指示圧Pseci21、指示圧Pseci22と称す。第2伝達容量C2は、所定の伝達容量に相当する。
駆動制御装置100は、エンジン1から駆動輪5への動力の伝達を制御するための装置であり、ベルト23を含むバリエータ20及びコントローラ12のほか、トルクコンバータ2、副変速機構30、オイルポンプ10、油圧制御回路11、上述したような各種のセンサ、スイッチ類を有して構成されている。コントローラ12は、伝達容量C、換言すれば指示圧Pseciを設定するように構成されることで、伝達容量設定部を有した構成とされる。伝達容量につき、以下では主にSEC圧を用いた説明を行い、SEC圧と伝達容量との対応関係については適宜説明する。
ところで、第1指示圧Pseci1の指示圧Pseci12は、ベルト23への入力トルクを伝達可能な指示圧Pseciの最小値に設定することができる。これにより、燃費の悪化を防止しつつ、ベルト23の滑りを防止することができる。
ところが、例えばこのような場合には、ベルト23への入力トルクが小さいアクセルペダルの踏み込み初期に、指示圧Pseci12が第2指示圧Pseci2の指示圧Pseci21よりも小さく設定されることがある。
図6は、比較例の説明図である。比較例では、タイミングT11でアクセルペダルが解放状態から踏込状態に移行し、その際に第2指示圧Pseci2を低下させる。
このため、タイミングT11からは、実圧Psecが第2指示圧Pseci2の指示圧Pseci22に追従して低下することで、指示圧Pseci21から第1指示圧Pseci1に向かって低下する。そしてその後、タイミングT12で指示圧Pseciが第1指示圧Pseci1に切り替えられると、実圧Psecは入力トルクの増大に応じて増大させられることになる。
結果、実圧Psecの変化が低下から増大に転じることに起因し、実圧Psecが指示圧Pseci12をアンダーシュートするようにして下回り、ベルト23の滑りが発生する。
このような実圧Psecの低下は具体的には、実圧Psecを調整する調圧弁の弁体の動作方向が絞り側から供給側に変化することで、指示圧Pseciに対する実圧Psecの応答性が悪化することに起因する。
また、タイミングT12で指示圧Pseciが切り替えられる頃には、アクセルペダルの踏み込みに応じたバリエータ20のダウンシフトが始まっており、バリエータ20の変速でライン圧PLが減少する一方で、指示圧Pseciを上昇させることになる。このため、比較例の場合、油量の供給不足が発生することでも、指示圧Pseciに対する実圧Psecの応答性が悪化する。
このような事情に鑑み、本実施形態ではコントローラ12が次に説明する制御を行う。
図2は、コントローラ12が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。
ステップS1で、コントローラ12は、アクセルペダルがOFFからONになったか、すなわちアクセルペダルが解放状態から踏込状態に移行したか否かを判定する。これにより、加速要求が発生したか否かが判定される。アクセルペダルが解放状態であることは、車両がコースト走行中であることと、停車中であることを含む。ステップS1で否定判定であれば、処理は一旦終了する。ステップS1で肯定判定であれば、処理はステップS2に進む。
ステップS2で、コントローラ12は、アクセル開度APOに基づき、目標圧Psectを推定する。目標圧Psectは、アクセル開度APOに応じた実圧Psecの到達先、したがって指示圧Pseciの到達先として推定される。目標圧Psectは、目標伝達容量に対応する。
ステップS3で、コントローラ12は、目標圧Psectが現在の実圧Psecよりも高いか否かを判定する。ステップS3で肯定判定であれば、踏み込み後のアクセル開度APOに応じた第1指示圧Pseci1は、現在の実圧Psec以上になる、と判断される。踏み込み後のアクセル開度APOは換言すれば、アクセルペダルの踏み込みに応じて過渡状態から定常状態になったアクセル開度APOである。現在の実圧Psecは具体的には、指示圧Pseci21に設定されている。
ステップS3で否定判定であれば、処理はステップS10に進む。ステップS10で、コントローラ12は、時間に応じた変化を示す傾きを制限しながら、第2指示圧Pseci2を目標圧Psectまで減少させる。ステップS10の後には、処理は一旦終了する。
ステップS3で肯定判定であれば、処理はステップS4Aに進む。ステップS4Aで、コントローラ12は、第2指示圧Pseci2の低下を制限する。具体的にはコントローラ12は、ステップ的に増大させるのではなく、傾きを制限しながら第2指示圧Pseci2を増大させることで、第2指示圧Pseci2の低下を禁止する。これにより、オイルポンプ10の吐出量が高まっていない状態でも、実圧Psecを適切に制御することができる。
ステップS4Aで、コントローラ12はさらに具体的には、第1所定勾配αで第2指示圧Pseci2を増大させる。第1所定勾配αは、オイルポンプ10からの供給油量に対し、油量収支のバランスが確保される範囲内の勾配であればよく、実験等により予め設定することができる。ステップS4Aの後には、処理はステップS5に進む。
ステップS5で、コントローラ12は、バリエータ20の実変速比VRがハイシフトしているか否か、すなわち目標変速比よりもハイ側にシフトしているか否かを判定する。実変速比VRのハイシフトは、アクセルペダルの踏み込みに応じてバリエータ20をダウンシフトする際に、変速のためのPRI圧の低下が遅れた場合に発生する。ステップS5で否定判定であれば、処理は一旦終了する。ステップ5で肯定判定であれば、処理はステップS6に進む。
ステップS6で、コントローラ12は第2指示圧Pseci2の傾きを大きくする。具体的にはコントローラ12は、第2指示圧Pseci2の傾きを第2所定勾配βに設定する。
第2所定勾配βは、第1所定勾配αよりも大きな値に設定される。第2所定勾配βはここでは、第1指示圧Pseci1が第2指示圧Pseci2以上になる前に、第2指示圧Pseci2が目標圧Psectに到達するように設定される。第2所定勾配βは実験等により予め設定することができる。
ステップS7で、コントローラ12は、目標圧Psectから現在の第2指示圧Pseci2を引いて得られる差分Dが、第1所定値D1よりも小さいか否かを判定する。第1所定値D1は、第2指示圧Pseci2が目標圧Psectに到達する前に、次のステップS8の処理を実行するタイミングを図るための判定値であり、実験等により予め設定することができる。ステップS7で否定判定であれば、処理はステップS6に戻る。ステップS7で肯定判定であれば、処理はステップS8に進む。
ステップS8で、コントローラ12は、第2指示圧Pseci2の傾きを小さくする。また、ステップS9で、コントローラ12は、差分Dが第2所定値D2よりも小さいか否かを判定する。第2所定値D2は、第2指示圧Pseci2の目標圧Psectへの到達を判定するための判定値である。第2所定値D2は、誤差や応答性等を考慮して判定に余裕を持たせた値に設定することができる。
ステップS9で否定判定であれば、処理はステップS8に戻る。ステップS9で肯定判定であれば、第2指示圧Pseci2が目標圧Psectに到達したと判断される。ステップS9の後は、処理は終了する。
コントローラ12は、ステップS2で、踏み込み後のアクセル開度APOに基づき、目標圧Psectを推定してもよい。この場合、コントローラ12はステップS3で、踏み込み後のアクセル開度APOに応じた第1指示圧Pseci1が、現在の実圧Psecよりも高いか否かを直接判定することで、踏み込み後のアクセル開度APOに基づき、ステップS4Aの処理の実行可否を判断することができる。
本実施形態では、コントローラ12は、図2に示すフローチャートのステップS4A、ステップS6、ステップS8の処理を実行することで、禁止部を有した構成とされる。したがって、第2伝達容量C2の低下を禁止する禁止部は、低下を禁止した第2伝達容量C2のその後の設定も併せて行う構成として把握される。
図3は、図2に示すフローチャートに対応するタイミングチャートの一例を示す図である。タイミングT1前では、アクセルペダルは解放状態なので、アクセル開度APOはゼロである。このため、第2指示圧Pseci2は、第1指示圧Pseci1よりも高くなっている。目標圧Psectと実圧Psecとは、第2指示圧Pseci2に設定されている。
タイミングT1では、アクセルペダルが踏み込まれる。結果、アクセル開度APOが上昇し始め、これに応じて目標圧Psectも上昇し始める。目標圧Psectは、指示圧Pseci21よりも高くなる。このため、タイミングT1からは、アクセルペダルの踏み込みに基づき、第2指示圧Pseci2が第1所定勾配αで増大される。実圧Psecは、第2指示圧Pseci2に追従する。
タイミングT2では、アクセルペダルの踏み込みが完了する。結果、アクセル開度APOが過渡状態から定常状態になる。タイミングT2では、目標圧Psectとして、踏み込み後のアクセル開度APOに応じた目標圧Psect1が推定される。第1指示圧Pseci1は、目標圧Psect1が推定されたことに応じて上昇し始める。
タイミングT3では、実変速比VRのハイシフトが検出される。このため、タイミングT3からは、第2指示圧Pseci2は第2所定勾配βで増大される。実圧Psecは引き続き、第2指示圧Pseci2に追従する。実変速比VRのハイシフトが検出されない場合、第2指示圧Pseci2は破線で示すように、タイミングT3以降も第1所定勾配αで増大される。
タイミングT4では、差分Dが第1所定値D1よりも小さくなる。このため、タイミングT4では、第2指示圧Pseci2の傾きが小さくされる。そして、タイミングT5で差分Dが第2所定値D2よりも小さくなり、第2指示圧Pseci2が目標圧Psectに到達する。
次に、駆動制御装置100の主な作用効果について説明する。
駆動制御装置100は、ベルト23と、ベルト23の伝達容量C、換言すれば指示圧Pseciを設定する伝達容量設定部を有した構成とされるコントローラ12と、を備え、コントローラ12は、アクセルペダルの解放状態では、第2指示圧Pseci2を設定する構成とされる。駆動制御装置100では、コントローラ12は、アクセルペダルが解放状態から踏込状態になった場合に、実圧Psecが第2指示圧Pseci2、具体的には第2指示圧Pseci2の指示圧Pseci21よりも低下することを禁止する禁止部を有した構成とされる。
このような構成の駆動制御装置100によれば、アクセルペダルの解放状態から踏込状態への移行に際して、実圧Psecの変化が低下から増大に転じることがなくなるため、アクセルペダルの解放状態から踏込状態への移行の際に、ベルト23の滑りを防止或いは抑制することができる(請求項1、8に対応する効果)。
駆動制御装置100では、第1指示圧Pseci1に対して、第2指示圧Pseci2は高く設定される。駆動制御装置100は、このような構成である場合に、アクセルペダルの解放状態から踏込状態への移行の際に、ベルト23の滑りを防止或いは抑制することができる(請求項2に対応する効果)。
コントローラ12は、踏み込み後のアクセル開度APOに応じた第1指示圧Pseci1が、第2指示圧Pseci2の指示圧Pseci21以上になる場合に、指示圧Pseci21未満への実圧Psecの低下を禁止する。
このような構成の駆動制御装置100によれば、低下から増大への実圧Psecの変化が発生する場合にのみ、指示圧Pseci21未満への実圧Psecの低下を禁止するので、不要に実圧Psecを高くすることに起因して燃費が悪化することを防止できる(請求項3に対応する効果)。
コントローラ12は、アクセルペダルの踏み込みに基づき、第1所定勾配αで第2指示圧Pseci2を増大させる。
このような構成の駆動制御装置100によれば、第1指示圧Pseci1と第2指示圧Pseci2とをより平行に近づけた状態で合流させることができるので、実圧Psecが第1指示圧Pseci1をより下回り難くなるようにすることができる(請求項4に対応する効果)。
駆動制御装置100は、ベルト23を有して構成されるバリエータ20を備える。コントローラ12は、実変速比VRのハイシフトが発生した場合に、第2指示圧Pseci2の傾きを大きくする。
このような構成の駆動制御装置100によれば、アクセルペダルの踏み込みに応じてバリエータ20をダウンシフトする場合に変速性が悪化することを防止したり抑制したりすることができる(請求項5に対応する効果)。
コントローラ12は、ハイシフトに応じて第2指示圧Pseci2の傾きを大きくした後、第1指示圧Pseci1が第2指示圧Pseci2以上になる前に第2指示圧Pseci2が目標圧Psectに到達する場合に、傾きを小さくした上で第2指示圧Pseci2を目標圧Psectに到達させる。
このような構成の駆動制御装置100によれば、ハイシフトに応じて第2指示圧Pseci2の傾きを大きくした場合でも、目標圧Psectへの実圧Psecの収束性を高めることができるので、バリエータ20の変速精度の悪化を防止或いは抑制することができる(請求項6に対応する効果)。
第2指示圧Pseci2を目標圧Psectに到達させるにあたり、コントローラ12は、第2指示圧Pseci2の傾きを小さくする代わりに、第2指示圧Pseci2の傾きを維持、或いはさらに大きくした上で、第2指示圧Pseci2を目標圧Psectに到達させるように構成されてもよい。
このようにコントローラ12を構成した駆動制御装置100によれば、アクセルペダル操作が急激な場合に、バリエータ20の変速制御を早く完了させることができる(請求項7に対応する効果)。
次に、その他の変形例について説明する。
図4は、コントローラ12が行う制御の変形例をフローチャートで示す図である。この例では、コントローラ12は、ステップS3で肯定判定であった場合に、ステップS4Bで、第2指示圧Pseci2を維持することで、第2指示圧Pseci2の低下を禁止する。この場合、実圧Psecの変化を低下から増大に転じさせることなく、第2指示圧Pseci2から第1指示圧Pseci1への指示圧Pseciの切替を早めることができる。
このようにコントローラ12を構成するにあたり、コントローラ12は、アクセルペダル操作に応じて第2指示圧Pseci2の傾きを決定した上で、第2指示圧Pseci2を目標圧Psectに到達させるように構成されてもよい。
これにより、アクセルペダル操作に応じて第2指示圧Pseci2の傾きを適切に設定することもできる。アクセルペダル操作は、加速要求操作であり、踏み込み後のアクセル開度APOや、加速要求速度であるアクセルペダルの踏み込み速度を指標パラメータとして含む。
第2所定勾配βは、次のように設定されてもよい。
図5は、第2所定勾配βの設定の変形例を示すタイミングチャートの一例である。この例では、第2所定勾配βは、第2指示圧Pseci2が目標圧Psectに到達する前に、第1指示圧Pseci1が第2指示圧Pseci2以上になり目標圧Psectに到達するように設定されている。
このためこの例では、タイミングT3及びタイミングT5間のタイミングT4´で第1指示圧Pseci1が第2指示圧Pseci2以上になり、タイミングT5で第1指示圧Pseci1が目標圧Psectに到達している。このように第2所定勾配βを設定すれば、変速品質を悪化させない範囲内で第2指示圧Pseci2を増大させることもできる。
第2所定勾配βは、アクセルペダル操作が急激な場合には、図3に示すように大きく設定することができ、アクセルペダル操作が緩やかな場合には、図5に示すように小さく設定することができる。
このため、第2所定勾配βは、アクセルペダル操作に応じた可変値とされてもよい。これにより、アクセルペダル操作に応じて第2所定勾配βを適切に設定することもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上述した実施形態では、ベルト23が伝達容量可変要素を構成する場合について説明した。しかしながら、例えば副変速機構30のハイクラッチやローブレーキが、伝達容量可変要素とされてもよい。また、バリエータ20の代わりに有段の自動変速機が設けられる場合には、有段の自動変速機の摩擦締結要素が伝達容量可変要素とされてもよい。
上述した実施形態では、走行用駆動源がエンジン1である場合について説明した。しかしながら、走行用駆動源は例えば、モータや、エンジン1及びモータであってもよい。
1 エンジン(走行用駆動源)
12 コントローラ(伝達容量設定部、禁止部)
20 バリエータ
23 ベルト(伝達容量可変要素)
100 駆動制御装置

Claims (10)

  1. 車両の走行用駆動源から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられる伝達容量可変要素と、
    前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定する伝達容量設定部と、を備え、
    前記伝達容量設定部は、加速要求がない状態では、ブレーキペダルの踏み込みによって前記伝達容量可変要素で滑りが生じない所定の伝達容量を設定する、
    車両用駆動制御装置であって、
    前記加速要求が発生した場合に、前記伝達容量可変要素の伝達容量が前記所定の伝達容量よりも低下することを禁止する禁止部、
    を備えることを特徴とする車両用駆動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記走行用駆動源に対する加速要求がない状態における前記伝達容量可変要素への入力トルクに応じて、前記伝達容量可変要素で滑りが生じないように設定される第1伝達容量に対して、前記所定の伝達容量は高く設定される、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  3. 請求項2に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記禁止部は、前記加速要求に応じて過渡状態から定常状態になった前記第1伝達容量が、前記加速要求がない状態で設定される前記所定の伝達容量以上になる場合に、前記所定の伝達容量未満への前記伝達容量可変要素の伝達容量の低下を禁止する、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  4. 請求項2又は3に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記禁止部は、前記加速要求の発生に基づき、時間に応じた変化を示す傾きを所定勾配として前記所定の伝達容量を増大させる、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  5. 請求項4に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記伝達容量可変要素を有して構成されるバリエータを備え、
    前記禁止部は、前記バリエータの実変速比のハイシフトが発生した場合に、前記所定の伝達容量の傾きを大きくする、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  6. 請求項5に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記禁止部は、前記ハイシフトに応じて前記所定の伝達容量の傾きを大きくした後、前記第1伝達容量が前記所定の伝達容量以上になる前に、前記所定の伝達容量が目標伝達容量に到達する場合に、傾きを小さくした上で前記所定の伝達容量を前記目標伝達容量に到達させる、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  7. 請求項5に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記禁止部は、前記ハイシフトに応じて前記所定の伝達容量の傾きを大きくした後、前記第1伝達容量が前記所定の伝達容量以上になる前に、前記所定の伝達容量が目標伝達容量に到達する場合に、傾きを維持、或いはさらに大きくした上で前記所定の伝達容量を前記目標伝達容量に到達させる、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  8. 車両の走行用駆動源から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられる伝達容量可変要素と、
    前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定する伝達容量設定部と、を備え、
    前記伝達容量設定部は、加速要求がない状態では、ブレーキペダルの踏み込みによって前記伝達容量可変要素で滑りが生じない所定の伝達容量を設定する、
    車両用駆動制御装置であって、
    前記加速要求が発生した場合に、前記伝達容量可変要素の伝達容量が前記所定の伝達容量よりも低下することを禁止する禁止部、
    を備え、
    前記禁止部は、前記加速要求の発生に基づき、時間に応じた変化を示す傾きを所定勾配として前記所定の伝達容量を増大させる、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  9. 請求項8に記載の車両用駆動制御装置であって、
    前記伝達容量可変要素を有して構成されるバリエータを備え、
    前記禁止部は、前記バリエータの実変速比のハイシフトが発生した場合に、前記所定の伝達容量の傾きを大きくする、
    ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
  10. 車両の走行用駆動源から駆動輪に至る動力伝達経路に設けられる伝達容量可変要素を備え、前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定するとともに、前記伝達容量可変要素の伝達容量を設定するにあたり、加速要求がない状態では、ブレーキペダルの踏み込みによって前記伝達容量可変要素で滑りが生じない所定の伝達容量を設定する車両用駆動制御装置の制御方法であって、
    前記加速要求が発生した場合に、前記伝達容量可変要素の伝達容量が前記所定の伝達容量よりも低下することを禁止すること、
    を含むことを特徴とする車両用駆動制御装置の制御方法。
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