JP6643001B2 - アンカー工法 - Google Patents
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Description
また、従来のアンカー工法においては、図6の(a)〜(d)に示すように、接着剤の節約のため、孔に充填される接着剤の量V10と、アンカー筋を施工した後の接着剤の量V11とが同一となるように、最初に孔に充填される接着剤の量が調整される。
このため、アンカー筋Pを挿入する際、水が接着剤に混入したとしても、その接着剤は、アンカー筋Pを孔内に更に侵入させることにより、孔外に排出される。
また、図5の(d)に示すように、多くの接着剤が孔外に排出されるため、接着剤の一部が、孔の開口部周縁のコンクリート構造物と、アンカー筋Pとの間に付着することになる。このため、当該接着剤を硬化させることにより、経時的にも、水が孔内に侵入することを防止することが可能となる。
なお、孔の全体が埋まるまで該孔に接着剤を注入するため、水の層が形成されることはない。
その結果、本発明のアンカー工法においては、水中で施工した場合であっても、孔内の接着剤が包含する水は極めて少なく、アンカー筋Pの引き抜き強度が優れるものとなる。
図1は、本発明に係るアンカー工法の一実施形態を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係るアンカー工法は、水中において、コンクリート構造物に孔を設ける削孔工程S1と、該孔に、注入具を用いて接着剤を注入する注入工程S2と、接着剤が注入された孔にアンカー筋を挿入して固定する挿入工程S3と、を備える。
当該アンカー工法によれば、アンカー筋の引き抜き強度が極めて優れるものとなる。
(削孔工程)
削孔工程S1は、コンクリート構造物に一定の深さを有する孔10を設ける工程である。
孔10を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、公知の削孔機等により、コンクリート構造物に孔10を設ければよい。
孔10の形状は、特に限定されないが、一般的には円柱状である。
また、孔10のサイズは、挿入工程S3で挿入されるアンカー筋のサイズに対応するものであり、アンカー筋が挿入可能となるように、当該アンカー筋のサイズよりやや大きめとなっている。
注入工程S2は、削孔工程S1後、孔10に、注入具を用いて接着剤を注入する工程である。
ここで、接着剤としては、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、無機系モルタル又はポリマーセメントモルタルが好適に用いられる。
これらは、水中で分離しないため、接着剤を孔10内に十分に充填させることが可能となる。
この場合、孔10内に接着剤を密に充填することが可能となり、水が接着剤内に混入し難くなるという利点がある。
図2に示すように、注入具1は、接着剤が充填されたシリンダ部14と、該シリンダ部14を摺動するピストン部11と、シリンダ部14に取り付けられたノズル部12と、ノズル部12の先端に設けられた封止部15と、ピストン部11に取り付けられた支持棒16と、該支持棒16を前方へ移動させる送り装置部13とからなる。
なお、送り装置部13は、トリガー13aを引き込むことで支持棒16を前方に送り出す装置である。
ここで、注入具1においては、接着剤は、封止部15の前方(孔10の奥側)にノズル部12から吐出される。このとき、後述するように、封止部15は、接着剤が後方(封止部より手前側)に漏れないように封止することになる。
図3の(a)に示すように、注入工程S2においては、最初に、封止部15を孔10の奥に当接させる。
次に、図3の(b)に示すように、注入具1を用いて、封止部15と孔10の奥との間に接着剤を注入していく。このとき、封止部15を後退させる。
また、接着剤が封止部15を超えて、手前側に移行することを防止し、水が封止部15を超えて、孔10の奥側に移行することを防止することができる。
このとき、孔10の開口部10aよりも外側に盛り上がった盛部18の体積V30は、孔10の体積V31の5%〜10%であることが好ましい。
挿入工程S3は、注入工程S2後、接着剤が注入された孔10にアンカー筋を挿入して固定する工程である。
用いられるアンカー筋としては、特に限定されないが、好適には、異形棒鋼又はボルトが挙げられる。
このとき、孔10の全体が埋まるまで該孔10に接着剤が注入されているため、水の層が形成されることはない。また、アンカー筋Pの挿入と同時に水が巻き込まれて接着剤に混入したとしても、その接着剤は、アンカー筋Pを孔内に更に侵入させることにより、孔外に排出される。最後には、アンカー筋Pは、孔10の底面に達する。
そして、接着剤が硬化することにより、アンカー筋が固定される。
なお、図5の(d)に示すように、多くの接着剤が孔10の外に排出されるため、接着剤の一部が、孔10の開口部周縁のコンクリート構造物と、アンカー筋Pとの境界に盛り上がって付着することになる。このため、当該接着剤を硬化させることにより、経時的にも、水が孔10内に侵入することを防止することが可能となる。
次に、図2に示す注入具を用い、接着剤として、ボルトメイトエポEP400(エポキシ樹脂、前田工繊株式会社製)又はタイトロックIITL−410(エポキシアクリレート樹脂、前田工繊株式会社製)を用いて、孔に注入した(注入工程)。
このときの孔への接着剤の注入量を、実施例1は、111ml(孔の体積の100%)とし、比較例1は、49.2ml(孔の体積の44%)とし、比較例2は、80.1ml(孔の体積の72%)とした。なお、49.2mlは従来用いられている樹脂量と同じである。
そして、アンカー筋として、異形棒鋼D22(材質:SD345)を用いて、孔に挿入し、樹脂を硬化させた。
実施例1及び比較例1,2において、孔に対する異形棒鋼の引き抜き強度(kN)を測定した。なお、これらの試験は3回繰り返した。得られた結果を表1に示す。
また、比較例2のアンカー工法においては、得られた結果のばらつきが大きいという欠点が認められた。
これらのことから、比較例1及び比較例2においては、異形棒鋼を挿入する際に、孔内にある水が層を作り、また、水が接着剤に混入されるため、引き抜き強度が悪くなると考えられる。
また、実施例1のアンカー工法は、異形棒鋼を挿入する際に、孔内に水が無いため、引き抜き強度が極めて優れるものとなる。
本発明に係るアンカー工法によれば、水中で施工した場合であっても、アンカー筋の引き抜き強度が優れる。
10・・・孔
10a・・・開口部
11・・・ピストン部
12・・・ノズル部
13・・・送り装置部
13a・・・トリガー
14・・・シリンダ部
15・・・封止部
16・・・支持棒
18・・・盛部
P・・・アンカー筋
S1・・・削孔工程
S2・・・注入工程
S3・・・挿入工程
W・・・水
Claims (6)
- 水中で行われるアンカー工法であって、
コンクリート構造物に一定の深さを有する孔を設ける削孔工程と、
該孔に、注入具を用いて接着剤を注入する注入工程と、
接着剤が注入された孔にアンカー筋を挿入すると共に、該接着剤の一部を前記孔の開口部周縁の前記コンクリート構造物と前記アンカー筋との間に付着させて前記アンカー筋を固定する挿入工程と、
を備え、
前記注入具が、前記接着剤が充填されたシリンダ部と、該シリンダ部を摺動するピスト ン部と、シリンダ部の先端に設けられた封止部とを有し、
前記注入工程が、前記封止部を前記孔の奥に当接させた状態から、前記封止部と前記孔 の奥との間に前記接着剤を注入して前記封止部を後退させることにより、前記孔の全体が埋まるまで該孔に接着剤を注入し、更に前記孔の開口部よりも外側に盛り上がるように前記接着剤を注入する工程であるアンカー工法。 - 前記孔の前記開口部よりも外側に盛り上がった盛部の体積が、前記孔の体積の5%〜10%である請求項1記載のアンカー工法。
- 注入具が、シリンダ部に取り付けられたノズル部を更に有し、
前記接着剤が、前記封止部の前方の前記ノズル部から吐出され、前記封止部より後方に漏れないように該封止部が封止する請求項1又は2に記載のアンカー工法。 - 前記接着剤が、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニ ルウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、無機系モルタル又はポリマーセメントモルタ ルであり、
前記接着剤の粘度が1000mPa・s以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載 のアンカー工法。 - 前記孔が水平方向に延びている請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンカー工法。
- 前記アンカー筋が異形棒鋼又はボルトである請求項1〜5のいずれか1項に記載のアン カー工法。
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