JP2004257055A - 鋼矢板の打設方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】鋼矢板を打設するにあたって継手の嵌合部にシール材を均一かつ十分に充填して止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる鋼矢板の打設方法を提供する。
【解決手段】フランジの先端にラルゼン型継手を有し、ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設し、次いで止水材を嵌合部に注入する注入管と止水材を注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を凹溝に装入し、供給管を介して注入管から止水材を嵌合部に注入して、嵌合部の下部から上部へ止水材を充填する。
【選択図】 図1
【解決手段】フランジの先端にラルゼン型継手を有し、ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設し、次いで止水材を嵌合部に注入する注入管と止水材を注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を凹溝に装入し、供給管を介して注入管から止水材を嵌合部に注入して、嵌合部の下部から上部へ止水材を充填する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木工事,建築工事等で使用される鋼矢板を地盤に打ち込む(以下、打設という)方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
港湾や河川の土木工事あるいは建築物の基礎工事等で使用される鋼矢板は、その幅方向の両端部に継手が設けられており、隣接する鋼矢板の継手を互いに嵌合させて地盤に打設することによって壁面を形成する。鋼矢板の継手は、ラルゼン型継手や直線型継手等の種々の形状のものが実用化されている。特にラルゼン型継手は、互いに嵌合させた部位(以下、嵌合部という)の強度が高く、しかも容易に地盤に打設できるので広く使用されている。
【0003】
近年の土木工事,建築工事等では建造物が大型化する傾向にあり、鋼矢板を打設するにあたって、鋼矢板を地盤中に打ち込む深度が大きくなっている。その結果、鋼矢板に加わる荷重が増加するばかりでなく、地下水の水圧も増大する。したがって、鋼矢板の強度の向上はもとより、嵌合部の漏水を防止する機能(以下、止水性という)の向上が求められている。
【0004】
なお、ここで嵌合部の漏水とは、鋼矢板を打設して形成した壁面の一方の側から他方の側へ、地下水が嵌合部を通って漏れることを指す。
そこで、嵌合部の止水性を向上するために種々の技術が検討されている。たとえば特開昭64−62511号公報には、遮断板継手のシール方法が開示されている。この技術は、継手にシール材を順次挿入しながら鋼矢板を打設することによって嵌合部の止水性を向上させるものである。しかしながら、この技術は、作業者が嵌合部にシール材を挿入しながら打設するので、シール材を均一に充填するのは困難であり、シール材が損傷を受けて十分な止水性が得られない。しかも嵌合部に充填したシール材が時間の経過とともに劣化した場合に、シール材を補充できない。
【0005】
また特開平1−207520号公報には、鋼矢板継手部の土砂浸入防止方法が開示されている。この技術は、継手部に発泡性樹脂を充填して硬化させた後、鋼矢板を打設することによって嵌合部の止水性を向上させるものである。しかしながら、この技術は、あらかじめ継手部に発泡性樹脂を充填した鋼矢板を打設するので、打設にともなって生じる嵌合部の摩擦や衝撃によって、シール材が損傷を受けて部分的に剥離するので十分な止水性を得るのは困難である。しかも嵌合部に充填したシール材が時間の経過とともに劣化した場合に、シール材を補充できない。
【0006】
実公平7−6179号公報には、鋼矢板が開示されている。この技術は、継手部に凹条溝を設けてシール材を充填した後、鋼矢板を打設することによって嵌合部の止水性を向上させるものである。しかしながら、この技術は、あらかじめ凹条溝にシール材を充填した鋼矢板を打設するので、打設にともなって生じる嵌合部の摩擦や衝撃によって、シール材が損傷を受けて部分的に剥離するので十分な止水性を得るのは困難である。しかも嵌合部に充填したシール材が時間の経過とともに劣化した場合に、シール材を補充できない。
【0007】
つまり鋼矢板を打設するにあたって、継手の嵌合部の止水性を向上するためには、防水性とシール性を併せもつ材質の充填材(以下、止水材という)を嵌合部に均一かつ十分に充填して、その止水材の損傷や剥離を防止する必要がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭64−62511号公報
【特許文献2】
特開平1−207520号公報
【特許文献3】
実公平7−6179号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、鋼矢板を打設するにあたってラルゼン型継手の嵌合部に止水材を均一かつ十分に充填するとともに、止水材の損傷や剥離を防止して止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる鋼矢板の打設方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フランジの先端にラルゼン型継手を有し、ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設し、次いで止水材を嵌合部に注入する注入管と止水材を注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を凹溝に装入し、供給管を介して注入管から止水材を嵌合部に注入して、嵌合部の下部から上部へ止水材を充填する鋼矢板の打設方法である。
【0011】
また本発明は、フランジの先端にラルゼン型継手を有し、ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、止水材を嵌合部に注入する注入管と止水材を注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を凹溝に装入し、次いで互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設し、供給管を介して注入管から止水材を嵌合部に注入して、嵌合部の下部から上部へ止水材を充填する鋼矢板の打設方法である。
【0012】
前記した発明においては、好適態様として、嵌合部に止水材を充填した後、止水材充填装置を凹溝に残置することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、ラルゼン型継手の爪底部に凹溝を有する鋼矢板を用いて、互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設する。このとき、ラルゼン型継手を嵌合して打設した後で止水材充填装置を凹溝に装入しても良いし、あるいは止水材充填装置を凹溝に装入した後でラルゼン型継手を嵌合して打設しても良い。次いで止水材充填装置を用いて、ラルゼン型継手の嵌合部に止水材を充填する。したがって、いずれの場合も鋼矢板を打設した後、止水材を充填する。
【0014】
本発明では、止水材の種類は特定の材質に限定しないが、後述するような止水材充填装置を用いることを考慮すると、嵌合部に充填するときには止水材が流体であることが好ましい。ただし、嵌合部に充填した後、硬化する必要があることを考慮すると、止水材として樹脂系の吸水膨張性シール材等を使用するのが好ましい。
【0015】
図1は、本発明を適用する止水材充填装置の例を模式的に示す断面図である。止水材充填装置は供給管2と注入管3からなっており、図1の例では供給管2と注入管3はU字状に連結される。
ラルゼン型継手の嵌合部に止水材1を充填するにあたって、供給管2の上方から止水材1を供給する。止水材1は、供給管2内を下方へ流下し、連結部を通って注入管3へ供給される。このとき止水材1は注入管3内を下部から上部へ上昇していく。注入管3の側壁には多数の貫通孔が設けられており、止水材1は注入管3内を上昇しながら貫通孔を通って注入管3外へ流出する。
【0016】
なお、注入管3の側壁に設ける貫通孔の形状や個数は、止水材1の材質や使用量,凹溝の形状や大きさ等に応じて適宜設定する。また注入管3の製造方法も、特定の手段を用いたものに限定せず、既存のパイプに加工を施して貫通孔を設けても良いし、あるいはメッシユ状のブレード(たとえばホース等の保護に使用されるもの等)をパイプに成形しても良い。
【0017】
図2は、図1の止水材充填装置を用いて止水材1を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。すなわち、ラルゼン型継手4の爪底部には凹溝5が設けられており、その凹溝5内に止水材充填装置を装入する。次いで、止水材1を供給管2から注入管3に供給し、注入管3の側壁に設けられた多数の貫通孔から嵌合部に止水材1を注入する。
【0018】
止水材1は注入管3内を下部から上昇していくので、嵌合部の下部から止水材1の充填が開始され、徐々に上部へ均一に充填されていく。したがって地面に露出している嵌合部が止水材1で充填されるのを確認すれば、地盤中の嵌合部が止水材1で均一に充填されていることが判明する。地面に露出している嵌合部の充填状況を観察するのは極めて容易である。しかも、鋼矢板を打設した後で止水材1を充填するので、止水材1の損傷や剥離は生じない。
【0019】
なお嵌合部に充填するときの止水材1の粘性が高い場合には、供給管2から止水材1を注入管3に供給する際にポンプ等を使用して加圧するのが好ましい。ただし、必ずしもポンプを常時使用する必要はない。止水材1を単に流込むだけで、供給管2から止水材1を注入管3に供給し、注入管3の側壁に設けられた多数の貫通孔から嵌合部に止水材1を注入することは可能である。
【0020】
このようにして、ラルゼン型継手の嵌合部にシール材を均一かつ十分に充填して止水性を向上することができる。しかも、鋼矢板を打設した後で止水材1を嵌合部に充填するので、嵌合部の摩擦や衝撃による止水材1の損傷あるいは剥離を防止できる。したがって、優れた止水性を長時間にわたって維持できる。
ラルゼン型継手4の嵌合部に止水材1を充填した後、止水材充填装置を凹溝5に残置する。嵌合部に充填した止水材1が時間の経過にともなって劣化した場合は、凹溝5に残置した止水材充填装置を用いて止水材1を嵌合部に補充する。
【0021】
止水材1を嵌合部に適宜補充することによって、優れた止水性を維持する期間をさらに延長することができる。
図3は、本発明を適用する止水材充填装置の他の例を模式的に示す断面図である。止水材充填装置は供給管2と注入管3からなっており、図3の例では注入管3の下端を閉塞し、その注入管3内に供給管2を挿入して2重管構造とする。
【0022】
図4は、図3の止水材充填装置を用いて止水材1を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。
図3の止水材充填装置を用いてラルゼン型継手4の嵌合部に止水材1を充填する場合には、鋼矢板を打設した後、ラルゼン型継手4の凹溝5に止水材充填装置を装入し、供給管2の上方から止水材1を供給する。そして止水材1は注入管3内を下部から上昇していくので、嵌合部の下部から止水材1の充填が開始され、徐々に上部へ均一に充填されていく。止水材1を充填した後、止水材充填装置を凹溝5に残置する。
【0023】
図3の止水材充填装置による止水材1の充填を含めた一連の鋼矢板の打設方法は、図1の止水材充填装置を用いた場合と同じであるから、詳細な説明は省略する。
このようにして、図3の止水材充填装置を用いても、ラルゼン型継手の嵌合部の止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる。
【0024】
なお、ここでは図1のU字管形状の止水材充填装置、および図3の2重管構造の止水材充填装置について説明したが、本発明を適用する止水材充填装置はこれらの構成に限定するものではない。図1あるいは図3に示す止水材充填装置の他にも、種々の装置を用いて本発明を適用することは可能である。
凹溝5の寸法は特定の数値に限定しないが、止水材充填装置を装入できる大きさとする必要がある。供給管2や注入管3の直径および止水材1の充填量等を考慮すると幅24mm以上,深さ12mm以上とするのが好ましい。
【0025】
【実施例】
図2に示すようにラルゼン型継手4を嵌合して鋼矢板を打設し、図1に示すU字管形状の止水材充填装置を凹溝5に装入し、嵌合部の下部から上部へ止水材1を充填した。止水材1は樹脂系の吸水膨張性シール材を使用した。凹溝5の寸法は、幅10mm,深さ12mmとした。これを発明例とする。
【0026】
一方、 比較例1として、従来から知られているように、ラルゼン型継手4の凹溝5にあらかじめ止水材1を充填した鋼矢板を打設した。止水材1の材質や凹溝5の寸法は、発明例と同一である。なお、比較例1の嵌合部を模式的に図5に示す。
また比較例2として、止水材1を使用せず、単にラルゼン型継手4を嵌合させて鋼矢板を打設した。なお比較例2については図示を省略する。
【0027】
発明例および比較例1,2について透水係数(cm/sec )を測定して、嵌合部の止水性を評価した。透水係数(cm/sec )は、実験水槽内に鋼矢板を設置して透水試験を実施し、壁幅(透水長)50cm換算の透水係数に変換した。その結果は図6に示す通りである。
図6から明らかなように、発明例と比較例1が厚生省令の基準値を満足している。とりわけ発明例は、比較例1に比べて、止水性が大幅に向上していることが分かる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼矢板を打設するにあたってラルゼン型継手の嵌合部にシール材を均一かつ十分に充填するとともに、止水材の損傷や剥離を防止して止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する止水材充填装置の例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の止水材充填装置を用いて止水材を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明を適用する止水材充填装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【図4】図2の止水材充填装置を用いて止水材を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の嵌合部の例を模式的に示す断面図である。
【図6】透水係数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 止水材
2 供給管
3 注入管
4 ラルゼン型継手
5 凹溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木工事,建築工事等で使用される鋼矢板を地盤に打ち込む(以下、打設という)方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
港湾や河川の土木工事あるいは建築物の基礎工事等で使用される鋼矢板は、その幅方向の両端部に継手が設けられており、隣接する鋼矢板の継手を互いに嵌合させて地盤に打設することによって壁面を形成する。鋼矢板の継手は、ラルゼン型継手や直線型継手等の種々の形状のものが実用化されている。特にラルゼン型継手は、互いに嵌合させた部位(以下、嵌合部という)の強度が高く、しかも容易に地盤に打設できるので広く使用されている。
【0003】
近年の土木工事,建築工事等では建造物が大型化する傾向にあり、鋼矢板を打設するにあたって、鋼矢板を地盤中に打ち込む深度が大きくなっている。その結果、鋼矢板に加わる荷重が増加するばかりでなく、地下水の水圧も増大する。したがって、鋼矢板の強度の向上はもとより、嵌合部の漏水を防止する機能(以下、止水性という)の向上が求められている。
【0004】
なお、ここで嵌合部の漏水とは、鋼矢板を打設して形成した壁面の一方の側から他方の側へ、地下水が嵌合部を通って漏れることを指す。
そこで、嵌合部の止水性を向上するために種々の技術が検討されている。たとえば特開昭64−62511号公報には、遮断板継手のシール方法が開示されている。この技術は、継手にシール材を順次挿入しながら鋼矢板を打設することによって嵌合部の止水性を向上させるものである。しかしながら、この技術は、作業者が嵌合部にシール材を挿入しながら打設するので、シール材を均一に充填するのは困難であり、シール材が損傷を受けて十分な止水性が得られない。しかも嵌合部に充填したシール材が時間の経過とともに劣化した場合に、シール材を補充できない。
【0005】
また特開平1−207520号公報には、鋼矢板継手部の土砂浸入防止方法が開示されている。この技術は、継手部に発泡性樹脂を充填して硬化させた後、鋼矢板を打設することによって嵌合部の止水性を向上させるものである。しかしながら、この技術は、あらかじめ継手部に発泡性樹脂を充填した鋼矢板を打設するので、打設にともなって生じる嵌合部の摩擦や衝撃によって、シール材が損傷を受けて部分的に剥離するので十分な止水性を得るのは困難である。しかも嵌合部に充填したシール材が時間の経過とともに劣化した場合に、シール材を補充できない。
【0006】
実公平7−6179号公報には、鋼矢板が開示されている。この技術は、継手部に凹条溝を設けてシール材を充填した後、鋼矢板を打設することによって嵌合部の止水性を向上させるものである。しかしながら、この技術は、あらかじめ凹条溝にシール材を充填した鋼矢板を打設するので、打設にともなって生じる嵌合部の摩擦や衝撃によって、シール材が損傷を受けて部分的に剥離するので十分な止水性を得るのは困難である。しかも嵌合部に充填したシール材が時間の経過とともに劣化した場合に、シール材を補充できない。
【0007】
つまり鋼矢板を打設するにあたって、継手の嵌合部の止水性を向上するためには、防水性とシール性を併せもつ材質の充填材(以下、止水材という)を嵌合部に均一かつ十分に充填して、その止水材の損傷や剥離を防止する必要がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭64−62511号公報
【特許文献2】
特開平1−207520号公報
【特許文献3】
実公平7−6179号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題を解消し、鋼矢板を打設するにあたってラルゼン型継手の嵌合部に止水材を均一かつ十分に充填するとともに、止水材の損傷や剥離を防止して止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる鋼矢板の打設方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フランジの先端にラルゼン型継手を有し、ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設し、次いで止水材を嵌合部に注入する注入管と止水材を注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を凹溝に装入し、供給管を介して注入管から止水材を嵌合部に注入して、嵌合部の下部から上部へ止水材を充填する鋼矢板の打設方法である。
【0011】
また本発明は、フランジの先端にラルゼン型継手を有し、ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、止水材を嵌合部に注入する注入管と止水材を注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を凹溝に装入し、次いで互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設し、供給管を介して注入管から止水材を嵌合部に注入して、嵌合部の下部から上部へ止水材を充填する鋼矢板の打設方法である。
【0012】
前記した発明においては、好適態様として、嵌合部に止水材を充填した後、止水材充填装置を凹溝に残置することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、ラルゼン型継手の爪底部に凹溝を有する鋼矢板を用いて、互いに隣合う鋼矢板のラルゼン型継手を嵌合して打設する。このとき、ラルゼン型継手を嵌合して打設した後で止水材充填装置を凹溝に装入しても良いし、あるいは止水材充填装置を凹溝に装入した後でラルゼン型継手を嵌合して打設しても良い。次いで止水材充填装置を用いて、ラルゼン型継手の嵌合部に止水材を充填する。したがって、いずれの場合も鋼矢板を打設した後、止水材を充填する。
【0014】
本発明では、止水材の種類は特定の材質に限定しないが、後述するような止水材充填装置を用いることを考慮すると、嵌合部に充填するときには止水材が流体であることが好ましい。ただし、嵌合部に充填した後、硬化する必要があることを考慮すると、止水材として樹脂系の吸水膨張性シール材等を使用するのが好ましい。
【0015】
図1は、本発明を適用する止水材充填装置の例を模式的に示す断面図である。止水材充填装置は供給管2と注入管3からなっており、図1の例では供給管2と注入管3はU字状に連結される。
ラルゼン型継手の嵌合部に止水材1を充填するにあたって、供給管2の上方から止水材1を供給する。止水材1は、供給管2内を下方へ流下し、連結部を通って注入管3へ供給される。このとき止水材1は注入管3内を下部から上部へ上昇していく。注入管3の側壁には多数の貫通孔が設けられており、止水材1は注入管3内を上昇しながら貫通孔を通って注入管3外へ流出する。
【0016】
なお、注入管3の側壁に設ける貫通孔の形状や個数は、止水材1の材質や使用量,凹溝の形状や大きさ等に応じて適宜設定する。また注入管3の製造方法も、特定の手段を用いたものに限定せず、既存のパイプに加工を施して貫通孔を設けても良いし、あるいはメッシユ状のブレード(たとえばホース等の保護に使用されるもの等)をパイプに成形しても良い。
【0017】
図2は、図1の止水材充填装置を用いて止水材1を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。すなわち、ラルゼン型継手4の爪底部には凹溝5が設けられており、その凹溝5内に止水材充填装置を装入する。次いで、止水材1を供給管2から注入管3に供給し、注入管3の側壁に設けられた多数の貫通孔から嵌合部に止水材1を注入する。
【0018】
止水材1は注入管3内を下部から上昇していくので、嵌合部の下部から止水材1の充填が開始され、徐々に上部へ均一に充填されていく。したがって地面に露出している嵌合部が止水材1で充填されるのを確認すれば、地盤中の嵌合部が止水材1で均一に充填されていることが判明する。地面に露出している嵌合部の充填状況を観察するのは極めて容易である。しかも、鋼矢板を打設した後で止水材1を充填するので、止水材1の損傷や剥離は生じない。
【0019】
なお嵌合部に充填するときの止水材1の粘性が高い場合には、供給管2から止水材1を注入管3に供給する際にポンプ等を使用して加圧するのが好ましい。ただし、必ずしもポンプを常時使用する必要はない。止水材1を単に流込むだけで、供給管2から止水材1を注入管3に供給し、注入管3の側壁に設けられた多数の貫通孔から嵌合部に止水材1を注入することは可能である。
【0020】
このようにして、ラルゼン型継手の嵌合部にシール材を均一かつ十分に充填して止水性を向上することができる。しかも、鋼矢板を打設した後で止水材1を嵌合部に充填するので、嵌合部の摩擦や衝撃による止水材1の損傷あるいは剥離を防止できる。したがって、優れた止水性を長時間にわたって維持できる。
ラルゼン型継手4の嵌合部に止水材1を充填した後、止水材充填装置を凹溝5に残置する。嵌合部に充填した止水材1が時間の経過にともなって劣化した場合は、凹溝5に残置した止水材充填装置を用いて止水材1を嵌合部に補充する。
【0021】
止水材1を嵌合部に適宜補充することによって、優れた止水性を維持する期間をさらに延長することができる。
図3は、本発明を適用する止水材充填装置の他の例を模式的に示す断面図である。止水材充填装置は供給管2と注入管3からなっており、図3の例では注入管3の下端を閉塞し、その注入管3内に供給管2を挿入して2重管構造とする。
【0022】
図4は、図3の止水材充填装置を用いて止水材1を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。
図3の止水材充填装置を用いてラルゼン型継手4の嵌合部に止水材1を充填する場合には、鋼矢板を打設した後、ラルゼン型継手4の凹溝5に止水材充填装置を装入し、供給管2の上方から止水材1を供給する。そして止水材1は注入管3内を下部から上昇していくので、嵌合部の下部から止水材1の充填が開始され、徐々に上部へ均一に充填されていく。止水材1を充填した後、止水材充填装置を凹溝5に残置する。
【0023】
図3の止水材充填装置による止水材1の充填を含めた一連の鋼矢板の打設方法は、図1の止水材充填装置を用いた場合と同じであるから、詳細な説明は省略する。
このようにして、図3の止水材充填装置を用いても、ラルゼン型継手の嵌合部の止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる。
【0024】
なお、ここでは図1のU字管形状の止水材充填装置、および図3の2重管構造の止水材充填装置について説明したが、本発明を適用する止水材充填装置はこれらの構成に限定するものではない。図1あるいは図3に示す止水材充填装置の他にも、種々の装置を用いて本発明を適用することは可能である。
凹溝5の寸法は特定の数値に限定しないが、止水材充填装置を装入できる大きさとする必要がある。供給管2や注入管3の直径および止水材1の充填量等を考慮すると幅24mm以上,深さ12mm以上とするのが好ましい。
【0025】
【実施例】
図2に示すようにラルゼン型継手4を嵌合して鋼矢板を打設し、図1に示すU字管形状の止水材充填装置を凹溝5に装入し、嵌合部の下部から上部へ止水材1を充填した。止水材1は樹脂系の吸水膨張性シール材を使用した。凹溝5の寸法は、幅10mm,深さ12mmとした。これを発明例とする。
【0026】
一方、 比較例1として、従来から知られているように、ラルゼン型継手4の凹溝5にあらかじめ止水材1を充填した鋼矢板を打設した。止水材1の材質や凹溝5の寸法は、発明例と同一である。なお、比較例1の嵌合部を模式的に図5に示す。
また比較例2として、止水材1を使用せず、単にラルゼン型継手4を嵌合させて鋼矢板を打設した。なお比較例2については図示を省略する。
【0027】
発明例および比較例1,2について透水係数(cm/sec )を測定して、嵌合部の止水性を評価した。透水係数(cm/sec )は、実験水槽内に鋼矢板を設置して透水試験を実施し、壁幅(透水長)50cm換算の透水係数に変換した。その結果は図6に示す通りである。
図6から明らかなように、発明例と比較例1が厚生省令の基準値を満足している。とりわけ発明例は、比較例1に比べて、止水性が大幅に向上していることが分かる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼矢板を打設するにあたってラルゼン型継手の嵌合部にシール材を均一かつ十分に充填するとともに、止水材の損傷や剥離を防止して止水性を向上し、しかもその優れた止水性を長時間にわたって維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する止水材充填装置の例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の止水材充填装置を用いて止水材を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明を適用する止水材充填装置の他の例を模式的に示す断面図である。
【図4】図2の止水材充填装置を用いて止水材を充填した嵌合部を模式的に示す断面図である。
【図5】従来の嵌合部の例を模式的に示す断面図である。
【図6】透水係数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 止水材
2 供給管
3 注入管
4 ラルゼン型継手
5 凹溝
Claims (3)
- フランジの先端にラルゼン型継手を有し、前記ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、互いに隣合う鋼矢板の前記ラルゼン型継手を嵌合して打設し、次いで止水材を嵌合部に注入する注入管と前記止水材を前記注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を前記凹溝に装入し、前記供給管を介して前記注入管から前記止水材を前記嵌合部に注入して、前記嵌合部の下部から上部へ前記止水材を充填することを特徴とする鋼矢板の打設方法。
- フランジの先端にラルゼン型継手を有し、前記ラルゼン型継手の爪底部の内面に凹溝を有する鋼矢板の打設方法において、止水材を嵌合部に注入する注入管と前記止水材を前記注入管に供給する供給管とからなる止水材充填装置を前記凹溝に装入し、次いで互いに隣合う鋼矢板の前記ラルゼン型継手を嵌合して打設し、前記供給管を介して前記注入管から前記止水材を前記嵌合部に注入して、前記嵌合部の下部から上部へ前記止水材を充填することを特徴とする鋼矢板の打設方法。
- 前記嵌合部に前記止水材を充填した後、前記止水材充填装置を前記凹溝に残置することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼矢板の打設方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009270361A (ja) * | 2008-05-08 | 2009-11-19 | Jfe Steel Corp | 鋼矢板の打設方法 |
JP2011006982A (ja) * | 2009-06-29 | 2011-01-13 | Jfe Steel Corp | 地盤に施工する壁構造及びその施工方法 |
JP2011032690A (ja) * | 2009-07-30 | 2011-02-17 | Jfe Steel Corp | 複合型堤防およびその施工方法 |
JP2015522109A (ja) * | 2012-07-03 | 2015-08-03 | アルセロールミッタル インヴェスティガシオン イ デサロージョ ソシエダッド リミターダArcelorMittal Investigacion y Desarrollo S.L. | 矢板 |
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2003
- 2003-02-25 JP JP2003047226A patent/JP2004257055A/ja active Pending
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