JP2954271B2 - クラック注入工法 - Google Patents

クラック注入工法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、地下コンクリート構造物等に発生したクラ
ックからの漏水の補修のために注入剤を前記クラック部
分に注入して止水を図る工法に関する。
〔従来の技術〕
たとえば道路トンネル、地下鉄、地下商店街、地下通
路等の地下コンクリート構造物は地下空間の開発ととも
に年々増加している。
また、近年都市等においては、地上利用の過密化に伴
い、大深度地下開発構想が提唱されている。
一般に、地下構造物は地下水位以下に構築される場合
が普通であるため、古い地下構造物の維持管理上の問題
として地下水による漏水の問題がある。
この漏水は、地下構造物のコンクリート部材に発生し
たクラック等によるものであり、クラックの発生原因と
しては過大応力の他、コンクリートの中性化、アルカリ
骨材反応、地下水中の酸の影響による劣化または地震等
による異常発生外力等が挙げられる。
クラックの発生は、コンクリート構造物設計・施工時
において、発生応力の低減、あるいはコンクリート配合
等に対する配慮により、ある程度は防止することはでき
るが、完全にその発生を防止することはできない。その
ため、有効なクラック補修工法の開発が望まれている。
従来、地下構造物のコンクリート部材におけるクラッ
ク補修方法としては、主に裏込め注入工法およびクラッ
ク注入工法がある。
前者の裏込め注入工法は、第6図のように、コンクリ
ート部材50に発生したクラック51部分に、コンクリート
部材50を貫通して形成した注入孔52内に配設した注入管
53により通常は薬液系の裏込め材54をかなり広い範囲に
わたって注入し、この裏込め材54により、そのコンクリ
ート部材50の補強とともに、クラック51の背面(コンク
リート部材の背面)を裏込め材54により覆うことで止水
を図る工法である。
一方、後者のクラック注入工法は、第7図および第8
図に示されるように、漏水クラック51に沿って、Vカッ
ト55を施し、次に漏水クラック51部分に注入がなされる
ように注入管56を所定の間隔を置いて取付けて、Vカッ
ト55部分を急結セメントなどからなる止水セメント57等
によりシールした後、注入管56より止水剤を注入する工
法である。
他方、クラック注入工法における止水剤としては、エ
ポキシ系やウレタン系などの有機系の他、無機系など多
種のものがあるが、たとえばエポキシ系タイプの2液型
を使用した場合には、図示されているように主剤と硬化
剤とをY字型注入管路を用い、中間で合流させて注入を
行う1.5ショット方式が用いられる。
また、管内に混合室を有する二重管からなる注入管を
用いて注入を行う2ショット方式がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
前記の2ショット方式では、1.5ショット方式に比較
した限りにおいては、より短いゲルタイムの注入剤を注
入することができる利点を有するものの、いずれも注入
管内で薬液が混合されるのでゲルタイムが短い5分以内
の速硬性注入剤を用いると、注入管内において固形物に
よる詰まりを生じたり、度々注入管を分解して清掃する
ことが必要になりメンテナンスの点でも問題が多いの
で、ゲルタイムの短い注入剤を用いることができない。
また、ゲルタイムが長い注入剤を用いると、迅速な止
水が困難である。
したがって、本発明の主たる課題は、ゲルタイムが短
い2液硬化性注入剤を使用して迅速な止水を行うことが
できるようにすることである。
〔課題を解決するための手段〕
上記課題は、地下コンクリート構造物に発生したクラ
ックに連通するように、コンクリート部材にこれを貫通
することなく前面から削孔して注入孔を形成し、先端の
注入口まで独立する少なくとも2つの流路を有する注入
管を、その先端を前記注入孔底より後退させた挿入状態
で、かつ前記注入孔壁と注入壁との間隙を液密とした状
態で、前記注入管の少なくとも一つの流路に2液硬化性
注入剤の主剤を、また、他の少なくとも一つの流路に硬
化剤を供給し、注入管先端と注入孔底との間の空間にお
いて、注入管の先端の注入口から吐出させた主剤と硬化
剤とを混合させながらクラック中に注入することで解決
できる。
〔作用〕
本発明においては、地下コンクリート構造物に発生し
たクラックに連通するように、コンクリート部材にこれ
を貫通することなく前面から削孔して注入孔を形成し、
先端の注入口まで少なくとも2つの流路を独立して有す
る注入管を、その先端を前記注入孔底より後退させた挿
入状態で、かつ前記注入孔壁と注入管との間隙を液密と
した状態で、前記注入管の流路に2液硬化性注入剤の主
剤と硬化剤とを供給して、注入管先端の注入口から吐出
させると、注入孔底と注入管先端との間の空隙部分が混
合室となり、この混合室において主剤と硬化剤とが確実
に混合され、混合液がクラック中に浸透する。
本発明の方法においては、コンクリート部材に形成し
た注入孔を混合室として利用するものであるため、注入
管内に混合室を形成する必要がなく、したがって注入管
構造として簡単なものとなり、さらに注入管内における
固化がなくなるので、ゲルタイムの短い注入剤であって
も用いることができ、もって迅速な止水が可能となる。
〔発明の具体的な構成〕
以下、本発明を図面を参照しながら具体例に基づき詳
説する。
第1図〜第4図は第1実施例を示したものである。
本発明においては、第2図および第3図のように、コ
ンクリート部材1にクラック2が発生しているとき、ク
ラック2またその近傍にクラック2に連通するように、
ハンマードリルなどによりコンクリート部材1にこれを
貫通することなく前面から削孔して注入孔3を形成す
る。
更に、本発明では、先端に形成された注入口まで少な
くとも1つの流路を独立して有する注入管4を用いる。
そして、注入管4の先端を注入孔3底より後退させた
挿入状態で、かつ注入孔3壁と注入管4との間隙をパッ
カー33などにより液密とした状態で、注入管4の一つの
流路に2液硬化性注入剤の主剤Aを、そして他の一つの
流路に硬化剤Bを供給し、注入管4先端と注入孔3底と
の間の空間Sにおいて、注入管4先端の注入口32aおよ
び注入口32bからそれぞれ吐出させた主剤Aと硬化剤B
とを混合させながらクラック2中に注入する。
用いる注入管4の一例を第5図に示した。注入管4は
内管30と外管31との2重管構造であり、先端に注入口32
a,32bを有する。また外管31の先端部周囲には、可撓性
材料、たとえば強化ゴム製のスリーブパッカー33が包着
されており、その基部側には金属製作動スリーブ34が遊
嵌されている。35は作動スリーブ34の基部側において、
外管31のネジ部に螺合された作動ナットである。さら
に、内管30および外管31には内継手36、および外継手3
7、38が連結され、内管30内は主剤Aの流路として、内
管30と外管31との間隙は硬化剤Bの流路として形成され
ている。これら主剤Aの流路と硬化剤Bの流路とは注入
管4の先端まで独立している。
注入に際しては、第1図のように、注入管4を適宜の
距離後退させて、注入孔3の底と注入管4の先端との間
に空間部Sを形成する。注入管4を後退させる距離は、
たとえば注入孔3の径とほぼ同じ長さとすることが好ま
しい。後退させる距離が過少であると、空間部Sの容積
が不足して注入剤の混合が充分でなく止水硬化が低減す
る。一方、後退させる距離が過大であると、注入された
止水剤がクラック2に到達する前に、注入孔3の途中で
硬化してしまい、クラック2中への注入が不十分とな
る。したがって、注入孔3の径に応じて後退距離を適宜
選定する。一般には、1〜50cm程度が好ましい。
次いで、作動ナット35を前方に螺進させて作動スリー
ブ34を前方に押出し、これによりパッカー33を膨出させ
て注入孔3の孔壁に密着させ液密状態とする。
この状態で、主剤Aを内管30内に供給し、内管30と外
管31との間隙流路に硬化剤Bを供給し、空間部S中に吐
出させる。吐出された主剤Aと硬化剤Bとは、クラック
2の隙間が小さいこともあって、直ちにはクラック2中
に入ることなく、空間部Sにおいて激しく混合されなが
ら、注入圧力に応じてクラック2中に浸透するようにな
る。
なお、予め空間部S内に注入剤の混合を助ける部材を
装入充填することができる。
混合を助ける部材としては内管、外管から流出した液
を層流から乱流に変え、主剤Aと硬化剤Bが混合し易く
できるもので、空間部Sに挿入でき、注入を妨げないも
のであれば何でもよく、例えば砂利、鉄球、屈曲鉄板、
プラスチック片等を例示できる。
かかる注入作業が終了したならば、注入管4を引き抜
き、適宜の充填材を用いて注入孔3を充填する。
パッカー33の作動手段としては、上記のネジ作動式の
ほか、2重管に代えて3重管を用い最外側の流路をパッ
カーの作動流体路として、この作動流体の圧力によりパ
ッカーを膨張させることができる。また、液密手段とし
て、パッカー33に代えて、注入管4の基部において注入
管4と注入孔3との間を、従来例のように、急結セメン
トなどを充填して液密を図ることもできる。しかし、上
記例のパッカー33を有する注入管4を用いると、パッカ
ー33の膨出による注入孔3内壁面への密着により、コン
クリート部材1に対する注入管4の保持手段が不要にな
るとともに、急結セメントなどによる場合に比較して、
液密作業時間および撤去作業が迅速になるなどの利点を
有する。
注入剤としては、2液硬化型のものであれば、従来の
クラック注入剤をそのまま用いることができる。その例
としては、セメント系材料、水ガラス系材料などを挙げ
ることができる。
他に用いることができる注入剤としては、天然ゴムラ
テックス:スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリ
ル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレン、メタクリ
ル酸メチル−ブタンジエンゴムなどの合成ゴムラテック
ス:アクリル酸エステル系、酢酸ビニル系、エチレン−
酢酸ビニル共重合系、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重
合系などの合成樹脂エマルジョンなどの各種の水性ポリ
マーディスパージョン類:不飽和ポリエステル系、エポ
キシ系、ポリウレタン系、タールエポキシ系、タールウ
レタン系、エポキシアスファルト系、ゴムアスファルト
系、フッ素樹脂系などの各種の液またはペーストレジン
類:スチレン、アクリロニトリル、スチレン−アクリロ
ニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、メタクリル酸エス
テル、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパント
リメタクリレート、エポキシスチレン、アクリルアミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、ポリエチレングリ
コールジメタクリレート、メチルシリコネート、変成ア
ルキルシリコネートなどのシリコネート類、シラン化合
物系、メチルシリコン、変成アルキルシリコンなどのシ
リコン系などの各種のコンクリート含浸用モノマーまた
はポリマー類:鉄筋用防錆剤、界面活性剤などを挙げる
ことができ、これらは一種または二種以上を用いること
ができる。
注入剤のゲルタイムに限定はないが、本発明の目的と
の関連で、10分以内、好ましくは5分以内、より好まし
くは1分以内の場合において、本発明の効果が顕著に現
れる。
クラック2の長さが長い場合、注入孔をそのクラック
2に沿って複数形成しながら、同時または時間間隔を置
いて、前述の施工を複数個所で行うことができる。さら
に、前記例はクラック2の前面から注入孔3を削孔した
例であるが、クラック2の前面から削孔することなく、
他の個所から削孔してその注入孔をクラック2に連通さ
せるようにしてもよい。
なお、本発明において、主剤と硬化剤との供給流路は
前記例とは逆の場合も含む。
〔発明の効果〕
以上詳説したように、本発明によれば、地下コンクリ
ート構造物に発生したクラック中に確実に注入剤を注入
することができるとともに、硬化時間が短い2液硬化性
注入剤を確実に混合させつつ、かつ注入管内での内部詰
まりを防止しながら注入できる。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の第1実施例の注入段階の縦断面図、第
2図はそのコンクリート部材の前面からの視図、第3図
は施工開始前のクラック生成状態縦断面図、第4図は注
入孔の削孔状態縦断面図、第5図は用いる注入管の例の
半断面正面図、第6図は従来の裏込め注入工法の縦断面
図、第7図は従来のクラック注入工法の縦断面図、第8
図はそのコンクリート構造物の前面からの視図である。 1……コンクリート部材、2……クラック、3……注入
孔、4……注入管、30……内管、31……外管、32a,32b
……注入口、33……パッカー、A……主剤、B……硬化
剤、S……空間部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村田 峰雄 東京都足立区西新井本町2―30―18,1 ―410 (56)参考文献 特開 昭60−22962(JP,A) 特開 昭51−146730(JP,A) 実開 昭63−23441(JP,U) 特公 昭56−31429(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E04G 23/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】地下コンクリート構造物に発生したクラッ
    クに連通するように、コンクリート部材にこれを貫通す
    ることなく前面から削孔して注入孔を形成し、先端の注
    入口まで独立する少なくとも2つの流路を有する注入管
    を、その先端を前記注入孔底より後退させた挿入状態
    で、かつ前記注入孔壁と注入壁との間隙を液密とした状
    態で、前記注入管の少なくとも一つの流路に2液硬化性
    注入剤の主剤を、また、他の少なくとも一つの流路に硬
    化剤を供給し、注入管先端と注入孔底との間の空間にお
    いて、注入管の先端の注入口から吐出させた主剤と硬化
    剤とを混合させながらクラック中に注入することを特徴
    とする注入工法。
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JP6154432B2 (ja) * 2015-06-24 2017-06-28 大和ハウス工業株式会社 タイルの補修方法及び注入剤
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