JP6642560B2 - ワイヤーグリッド偏光素子、ワイヤーグリッド偏光素子の製造方法、および電子機器 - Google Patents
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Description
N=n+i・k
n=屈折率
k=消衰係数
で表した際、代表波長550nmにおいて、純ゲルマニウムでは、屈折率nおよび消衰係数kが以下の条件
(n,k)=(4.9,2.0)
である。これに対して、屈折率nおよび消衰係数kが以下の適正条件
(n,k)=(5,1)
(n,k)=(4,1)
(n,k)=(3,1)
を満たせば、ワイヤーグリッド偏光素子の可視光の反射率が著しく低減できるという知見を得た。また、ゲルマニウムに酸素および窒素のうちの少なくとも一方を適正に含有させたとき、屈折率nおよび消衰係数kが上記の適正条件を満たすという知見を得た。かかる知見に基づいて、本発明では、酸素および窒素のうちの少なくとも一方を含有させたゲルマニウム膜を光吸収層として用いため、反射率を低減することができる。
図1は、本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1の説明図である。図2は、図1に示すワイヤーグリッド偏光素子1の断面図である。図1および図2に示すワイヤーグリッド偏光素子1は、透光性の基板2と、基板2の一方面2aに形成された金属製のワイヤーグリッド4とを有している。ワイヤーグリッド4は、等ピッチで平行に並列した複数の金属細線41からなる。
ワイヤーグリッド偏光素子1において、本形態では、詳細な説明については後述するように、光吸収層51を構成する材料の複素屈折率Nを以下の式で表したとき、屈折率n、および消衰係数kを適正化することによって、第2直線偏光に対する反射率Rsを3.0%以下とする。
N=n+ik
n=屈折率
k=消衰係数
図3は、図2に示す光吸収層51を構成する材料の複素屈折率を変化させた場合における波長と偏光特性との関係を示すグラフであり、図3には、第1直線偏光の透過率(Tp)、第2直線偏光の透過率(Ts)、第1直線偏光の反射率(Rp)、および第2直線偏光の反射率(Rs)を示す実線にTs、Tp、Rp、Rsを付してある。なお、図3(a)、(b)、(c)、(d)には、光吸収層51を構成する材料の屈折率nおよび消衰係数kを各々、(n,k)=(4.9,2.0)、(n,k)=(5,1)、(n,k)=(4,1)、および(n,k)=(3,1)に設定した場合の偏光特性を、シミュレーション解析した結果を示してある。シミュレーション解析には、Grating Solver Development社製の解析ソフトであるG−Solverを用いた。また、光吸収層51を構成する材料の屈折率nおよび消衰係数kを変えるにあたって、光吸収層51の膜厚は、反射率Rsが最も低くなる膜厚とした。
物性値(n,k)=(5,1)
物性値(n,k)=(4,1)
物性値(n,k)=(3,1)
図4は、反応性スパッタ法により、ゲルマニウム膜を成膜する条件(酸素ガス流量)を変えた場合における波長と複素屈折率との関係を示すグラフであり、図4(a)、(b)には、各酸素ガス流量における波長と屈折率nとの関係、および波長と消衰係数kとの関係を示してある。図4には、光吸収層51を構成するためのゲルマニウム膜を成膜する際、成膜条件として、40sccm(standard cubic centimeter perminute)のアルゴンガス中に加える酸素ガスの流量を0sccm、2sccm、5sccm、10sccmに変えた場合におけるゲルマニウム膜の物性値(n,k)をエリプソメーターで測定した結果を示してある。また、図4では、流量が0sccmの場合の結果を実線L0で示し、流量が2sccmの場合の結果を実線L2で示し、流量が5sccmの場合の結果を実線L5で示し、流量が10sccmの場合の結果を実線L10で示してある。なお、反応性スパッタを行う際、アルゴンガスの流量(40sccm)、スパッタ圧力(0.2Pa)、ターゲットサイズ(120mm)の条件は、酸素ガスの流量にかかわらず、一定である。
そこで、成膜条件と各波長における反射率等の関係を検討した結果を図6に示す。図6は、反応性スパッタ法により、ゲルマニウム膜を成膜する際の酸素ガス流量を変えた場合における反射率Rs等の変化を示すグラフであり、図6には、アルゴンガスと混合される酸素ガスの流量を0sccmから10sccmまで変化させた場合の第1直線偏光の透過率(Tp)、第2直線偏光の透過率(Ts)、第2直線偏光の反射率(Rs)を各々、実線Tp、Ts、Rsで示してある。なお、図6(a)には、500nmから590nmまでの波長域における平均値を示し、図6(b)には、610nmから680nmまでの波長域における平均値を示してある。また、図6には、透過率Tpおよび反射率Rsについては、酸素ガスの流量が0sccm、2sccm、5sccm、10sccmの場合の値も示してある。
上記実施形態では、反応性スパッタ法により、ゲルマニウム膜を成膜する際、酸素ガスを導入したが、図8および図9を参照して以下に説明するように、窒素ガスを導入した場合も同様な結果を得ることができる。図8は、反応性スパッタ法により、ゲルマニウム膜を成膜する条件(窒素ガス流量)を変えた場合における波長と複素屈折率との関係を示すグラフであり、図8(a)、(b)には、各窒素ガス流量における波長と屈折率nとの関係、および波長と消衰係数kとの関係を示してある。図8には、光吸収層51を構成するためのゲルマニウム膜を成膜する際、成膜条件として、40sccmのアルゴンガス中に加える窒素ガスの流量を0sccm、2sccm、5sccm、10sccmに変えた場合におけるゲルマニウム膜の物性値(n,k)をエリプソメーターで測定した結果を示してある。また、図8では、流量が0sccmの場合の結果を実線L0で示し、流量が2sccmの場合の結果を実線L2で示し、流量が5sccmの場合の結果を実線L5で示し、流量が10sccmの場合の結果を実線L10で示してある。
上述した実施形態に係るワイヤーグリッド偏光素子1を用いた電子機器の一例として、投射型表示装置を説明する。図10は、透過型の液晶ライトバルブ(電気光学装置)を用いた投射型表示装置の説明図である。図10に示す投射型表示装置800は、光源部810、ダイクロイックミラー813、814、反射ミラー815、816、817、入射レンズ818、リレーレンズ819、出射レンズ820、光変調部(第1光変調部821、第2光変調部822、および第3光変調部823)、クロスダイクロイックプリズム825、および投射レンズ826(投射光学系)を有している。
上記実施形態では、第1光変調部821、第2光変調部822および第3光変調部823の各々において、出射側偏光素子850に、本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1を用いたが、緑色光(第1波長域の第1光)に対応する第1光変調部821、および赤色光(第2波長域の第2光)に対応する第2光変調部822の出射側偏光素子850に本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1を用い、青色光(第3波長域の第3光)に対応する第3光変調部823の出射側偏光素子850には、本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1以外のワイヤーグリッド偏光素子を用いてもよい。青色光に対応する第3光変調部823の出射側偏光素子850については、本発明を適用しなくても、光反射層51の材質を適正に選択することによって、反射率Rsが低いワイヤーグリッド偏光素子を構成できる可能があるためである。
本形態では、少なくとも、第1光変調部821および第2光変調部822に、本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1を用いる際、図6および図7を参照して説明した理由から、第1光変調部821に用いるワイヤーグリッド偏光素子1(第1ワイヤーグリッド偏光素子)では、第2光変調部822に用いるワイヤーグリッド偏光素子1(第2ワイヤーグリッド偏光素子)より、酸素ガスの流量を多くして、光吸収層51を構成するゲルマニウムの酸素含有量や窒素含有量を多くすることが好ましい。かかる構成によれば、第1光変調部821に用いるワイヤーグリッド偏光素子1(第1ワイヤーグリッド偏光素子)、および第2光変調部822に用いるワイヤーグリッド偏光素子1(第2ワイヤーグリッド偏光素子)のいずれにおいても、反射率Rsを3.0%以下とすることができる。
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。また、本発明を適用したワイヤーグリッド偏光素子1は、上記の投射型表示装置800の他にも、ヘッドマウントディスプレイ、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、カーナビゲーション装置等の電子機器において光変調部を構成する場合に用いてもよい。
Claims (9)
- 基板の一方面に複数の金属細線が並列したワイヤーグリッドを備えたワイヤーグリッド偏光素子において、
前記金属細線の前記基板とは反対側に、酸素を含有しつつ二酸化ゲルマニウムよりゲルマニウムリッチな組成、または窒素を含有しつつ四窒化三ゲルマニウムよりゲルマニウムリッチな組成からなる単層の光吸収層と、
前記光吸収層と接する保護層とが設けられていることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。 - 請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記保護層は、前記光吸収層とは異なる材料からなることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。 - 請求項1に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記ワイヤーグリッドは、前記金属細線の延在方向に振動する直線偏光に対する反射率が3.0%以下であることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。 - 請求項1または2に記載のワイヤーグリッド偏光素子において、
前記光吸収層は、ゲルマニウムと酸素とを含む酸化ゲルマニウムから構成され、前記ゲルマニウムと前記酸素との組成比が、ゲルマニウム:酸素=1:0.64〜1.68であることを特徴とするワイヤーグリッド偏光素子。 - 基板の一方面に複数の金属細線が並列したワイヤーグリッドを備えた第1ワイヤーグリッド偏光素子、および電気光学装置を備え、第1波長域の第1光が入射する第1光変調部と、
基板の一方面に複数の金属細線が並列したワイヤーグリッドを備えた第2ワイヤーグリッド偏光素子、および電気光学装置を備え、前記第1波長域より長波長の第2光が入射する第2光変調部と、
を有し、
前記第1ワイヤーグリッド偏光素子および前記第2ワイヤーグリッド偏光素子の各々では、前記金属細線の前記基板とは反対側に、酸素を含有しつつ二酸化ゲルマニウムよりゲルマニウムリッチな組成、または窒素を含有しつつ四窒化三ゲルマニウムよりゲルマニウムリッチな組成からなる単層の光吸収層と、
前記光吸収層と接する保護層とが設けられていることを特徴とする電子機器。 - 請求項5に記載の電子機器において、
前記保護層は、前記光吸収層とは異なる材料からなることを特徴とする電子機器。 - 請求項5または6に記載の電子機器において、
前記第1ワイヤーグリッド偏光素子は、前記第2ワイヤーグリッド偏光素子より、前記光吸収層における酸素または窒素の含有量が多いことを特徴とする電子機器。 - 請求項5に記載の電子機器において、
前記第1ワイヤーグリッド偏光素子は、前記第1光の前記金属細線の延在方向に振動する直線偏光に対する反射率が3.0%以下であり、
前記第1ワイヤーグリッド偏光素子は、前記第2光の前記金属細線の延在方向に振動する直線偏光に対する反射率が3.0%以下であることを特徴とする電子機器。 - 請求項5から8までの何れか一項に記載の電子機器において、
前記第1光は、緑色光であり、
前記第2光は、赤色光であることを特徴とする電子機器。
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