JP3711670B2 - 投射型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空間光変調素子(ライトバルブ)を使用した投射型表示装置に関し、特に応力の影響に対して光学的に安定な性能を確保し、投射像の画質劣化を効果的に抑える構造を備えた投射型表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、投射型表示装置用に用いられる空間光変調素子(ライトバルブ)としては、偏光を利用して空間的に変調する位相差変調型(偏光変調型)の空間光変調素子が知られている。そして、この位相差変調型の空間光変調素子として、例えば液晶を用いて構成されたもの(位相差変調型液晶ライトバルブ)が実用化されている。
【0003】
このような位相差変調型の空間光変調素子を用いた従来の投射型表示装置では、偏光子及び検光子となる偏光ビームスプリッタが用いられる。従来の投射型表示装置においては、偏光ビームスプリッタに入射された光(照明用の光源から直接入射された光又は入射前に色分解された光等)がこの偏光ビームスプリッタにより透過するP偏光成分と当該偏光ビームスプリッタにて反射されるS偏光成分の光に分離される。通常、反射分離されたS偏光成分が空間光変調素子に対して照射される。そして、この空間光変調素子の液晶層によって変調され、かつ当該素子の反射層によって反射された光は、再び偏光ビームスプリッタに戻る。この際、当該空間光変調素子からの反射光は上述の偏光ビームスプリッタによって検光される。前述の偏光ビームスプリッタはS偏光光は反射されるために空間光変調素子によって変調されてP偏光光となった光のみ当該偏光ビームスプリッタを透過することとなり、検光が達成される。この透過したP偏光光(すなわち、検光光)が投射光学系を介して投射画像としてスクリーン上に投射される。
【0004】
このような投射型表示装置としては、例えば、ヒューズエアクラフト社の米国特許第4,687,301号公報に開示されている装置が知られている。この従来の投射型表示装置では、偏光ビームスプリッタとして、屈折率が調整された液体中に偏光ビームスプリッタ用のコーティングが施された透光性材料板を浸漬させた構成の液体浸漬型の偏光ビームスプリッタが用いられている。なお、上記液体の屈折率は、所定の液温において浸漬された透光性材料板の屈折率と同一になるように調整されている。このように液体中に浸漬する理由は、空気中では、コーティングの界面が空気対透光性材料となり、屈折率が異なるために偏光ビームスプリッタとして機能しないためである。そして、この従来の投射型表示装置では、当該偏光ビームスプリッタの近傍には前記位相差変調型の空間光変調素子が配置されている。偏光ビームスプリッタに入射した光は当該偏光ビームスプリッタによってP偏光成分光とS偏光成分光とに偏光分離され、このうちのS偏光成分光が前記空間光変調素子に照射される。照射されたS偏光性分光は前述のとおり液晶層によって変調され、かつ反射層によって反射出射される。この変調光光は、偏光ビームスプリッタに再度入射されて検光される。この検光光は、投射光学系によって投射画像としてスクリーン上に投射される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタを採用した投射型表示装置には以下のような課題がある。
【0006】
第1に、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタでは、透光性材料板が浸漬される液体の屈折率の変化は、該液温の変化に依存する。すなわち、ある液温で屈折率が調整されている液体でも、該液体自体の温度変化によって、該液体の屈折率と該透光性材料板の屈折率との間に差を生じる。これにより、当該偏光ビームスプリッタ全体の性能が変化する。例えば、あるサンプル(上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタ用の液体)の場合、1℃の温度上昇につき、屈折率は0.000349程度変化するが、この変化率は一般の透光性材料板の基板材料のそれより2桁大きい。通常、投射型表示装置の使用環境(例えば温度)は約20℃〜60℃程度変化する可能性があり、この屈折率の差は無視できないものとなる。また、分散も変化するため、投射画像において色ズレや色ムラの原因となる。
【0007】
第2に、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタでは、液温が該液体全体にわたって均一でない場合、上述した液体の屈折率の温度特性により、該液体の屈折率の均一性が損なわれ、該液体中に屈折率分布が生じてしまう。現実的な投射型表示装置においては、液温が該液体全体に渡って均一に変化することはなく(液体全体の屈折率は均一にはならない)、したがって、投射画像の均一性が損なわれる大きな原因となる。
【0008】
第3に、液体浸漬型偏光ビームスプリッタでは、上記液体の不均一な温度変化に伴い、上述した該液体の屈折率とともに該液体の密度の均一性も損なわれ、結果的に該液体中に対流が生じる。この対流は、上述した液体中の不均一な屈折率の分布の時間変動をもたらすので、該対流の発生は投射型表示装置における画質の不均一性が時間とともに変動する原因となる。
【0009】
第4に、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタでは、液温変化に伴い上記液体自身の体積も変化する。上述のサンプルの場合、1℃の液温変化に対し、その体積は1cc当たり0.00073cc変化する。投射型表示装置の使用環境(例えば温度)としては40℃程度の温度差であるが、それの輸送や倉庫での保管を考慮した場合、−10℃〜80℃ほどの温度範囲を考慮する必要がある。該液体の体積変化自体は投射画像への影響は小さいが、当該装置の構造上、液体の体積変化を吸収するためのなんらかの機構を設ける必要がなる。
【0010】
第5に、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタの液体中にゴミがある場合、該液体浸漬型偏光ビームスプリッタを採用した投射型表示装置では、該液体中のゴミが焦点位置の近辺でなくても、該液体中のゴミが数十〜数百倍に拡大された投射画像中に写ってしまう。このような状況を考慮すると、決して該液体中にはゴミがあってはならない。したがって、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタの組立にはクリーンルームが必要となる上、該液体のゴミや異物を除去する作業が必要となる。
【0011】
第6に、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタでは、その液体中に気泡があると、該気泡が投射された画像に現れてしまうので、これもあらかじめ取り除いておく必要がある。
【0012】
第7に、上記液体浸漬型偏光ビームスプリッタでは、構造上、液体を使用するために、該液体を収容するケースにOリングを設けるなど、液漏れ防止の対策を施す必要がある。
【0013】
以上のように、液体浸漬型偏光ビームスプリッタは、その構造的特徴等から課題も多く、これを採用した投射型表示装置は、必然的に製作に非常に手間がかかり、コストアップにつながっている。特に、該液体の液温変化による、屈折率等の特性変化に関しては、本質的に避け難い問題である。
【0014】
一方、透光性材料ブロックにより構成された従来の偏光ビームスプリッタでは、種々の原因で生じるガラスの光学的異方性が複屈折を誘発し、該偏光ビームスプリッタの偏光特性を乱して不均一にしまい、投射画像の画質劣化を十分に抑制することができず、均一で色ムラのない投射像を得ることができない。ここで、種々の原因とは、主に、透光性材料の加工工程(切断、他の材料との接合、表面への成膜)や、透光性材料を光学系に組み込む操作(治具での保持、接着など)の際い生じる外部応力や、透光性材料内部の発熱(光エネルギーの吸収など)あるいは外部の発熱(周辺機器の発熱など)などにより生じる熱応力、さらに発熱の際に、透光性材料と熱膨張率の異なる材料を接触接合した場合に生じる応力などである。このように、これら種々の熱応力や外部応力が生じる時期は、透光性材料ブロックの作製、偏光ビームスプリッタ加工から、投射型表示装置使用中に至っており、全てを排除することは非常に難しい。
【0015】
本発明は以上の課題を解決すべくなされたものであり、透光性材料ブロックで構成された偏光ビームスプリッタを採用することにより、上述した液体浸漬型偏光ビームスプリッタの採用に伴う種々の課題を除去するとともに、しかも、該透光性材料ブロックにおける種々の熱応力、外部応力の影響に対して光学的に安定な性能を確保でき画質の劣化の少ない投射型表示装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様による投射型表示装置は、入射されたR光に基づく第1の偏光光を出射する第1の偏光ビームスプリッタと、入射されたG光に基づく第2の偏光光を出射する第2の偏光ビームスプリッタと、入射されたB光に基づく第3の偏光光を出射する第3の偏光ビームスプリッタと、前記第1、第2及び第3の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、を備え、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタが、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する投射型表示装置において、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0017】
本発明の第2の態様による投射型表示装置は、入射されたR光に基づく第1の偏光光を出射する第1の偏光ビームスプリッタと、入射されたG光に基づく第2の偏光光を出射する第2の偏光ビームスプリッタと、入射されたB光に基づく第3の偏光光を出射する第3の偏光ビームスプリッタと、前記第1、第2及び第3の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、を備え、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタが、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する投射型表示装置において、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0018】
なお、前記第1及び第2の態様においては、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタにそれぞれ入射されるR光、G光、B光は既に偏光されたものでもよいし未だ偏光されていないものでもよい。前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタに偏光光が入射される場合には、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタは、前記第1、第2及び第3のライトバルブに入射させる光を偏光させる偏光光学系としては実質的に作用せずに、前記第1、第2及び第3のライトバルブからの変調光を検光する検光光学系としてのみ作用することになる。一方、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタに偏光されていない光が入射される場合には、前記偏光光学系及び前記検光光学系として作用することになる。
【0019】
また、前記第1及び第2の態様による投射型表示装置は、各色光R,G,Bを予め色合成して1本の投射レンズで画像を投射する1投射レンズタイプの投射型表示装置であってもよいし、各色光R,G,Bを予め色合成することなく3本の投射レンズでそれぞれスクリーン上に投射してスクリーン上で色合成を行う3投射レンズタイプの投射型表示装置であってもよい。
【0020】
本発明の第3の態様による投射型表示装置は、光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1の偏光分離光学系及び前記第1の検光光学系が同一の第1の偏光ビームスプリッタで共用され、前記第2の偏光分離光学系及び前記第2の検光光学系が同一の第2の偏光ビームスプリッタで共用され、前記第3の偏光分離光学系及び前記第3の検光光学系が同一の第3の偏光ビームスプリッタで共用され、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0021】
本発明の第4の態様による投射型表示装置は、光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1の偏光分離光学系及び前記第1の検光光学系が同一の第1の偏光ビームスプリッタで共用され、前記第2の偏光分離光学系及び前記第2の検光光学系が同一の第2の偏光ビームスプリッタで共用され、前記第3の偏光分離光学系及び前記第3の検光光学系が同一の第3の偏光ビームスプリッタで共用され、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0022】
本発明の第5の態様による投射型表示装置は、光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0023】
本発明の第6の態様による投射型表示装置は、光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0024】
本発明の第7の態様による投射型表示装置は、光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0025】
本発明の第8の態様による投射型表示装置は、光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0026】
本発明の第9の態様による投射型表示装置は、光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記偏光分離光学系は偏光ビームスプリッタからなり、前記偏光ビームスプリッタは、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0027】
本発明の第10の態様による投射型表示装置は、光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記偏光分離光学系は偏光ビームスプリッタからなり、前記偏光ビームスプリッタは、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0028】
本発明の第11の態様による投射型表示装置は、光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0029】
本発明の第12の態様による投射型表示装置は、光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、を備え、前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたものである。
【0030】
なお、前記第1乃至第12の態様において、前記透光性材料は、R光に対する光弾性定数が+1.5×10-8cm2/N以下の材料であることが好ましい。
【0031】
本発明者らの研究の結果、ガラス等の透光性材料の光弾性定数は波長の関数として右上がり(波長が大きくなるほど光弾性定数も大きくなる)でかつ上に凸の形状となる特性を有することが判明した。そして、当該透光性材料の組成を変えることにより、このような形状の特性を維持したまま光弾性定数の絶対値が最小値となる波長を変えることができることが判明した。さらに、透光性材料の光弾性定数の絶対値が小さいほど種々の熱応力、外部応力の影響に対して複屈折の発生が少なくなって光学的に安定な性能を確保でき、光弾性定数の絶対値の小さい透光性材料を用いて構成した偏光ビームスプリッタを投射型表示装置において使用すれば投射像の画質の劣化を抑えることができるが、当該画質の劣化を抑制する上で、短波長の光に対する光弾性定数の絶対値ほど小さくすることが好ましいのに対し長波長の光に対する光弾性定数の絶対値はさほど小さくする必要がないことが判明した。これは、透光性材料が光を吸収して発熱し、当該透光性材料が自身の線熱膨張係数によって膨張して内部応力を発生させてしまうが、その吸収が短波長の光ほど大きく長波長の光ほど小さいので、光吸収による内部応力の発生が短波長の光ほど大きく長波長の光ほど小さいからである。
【0032】
本発明は、このような本発明者らによる新たな知見に基づいてなされたものである。
【0033】
前述した本発明の第1乃至第12の態様によれば、透光性材料からなる部材を用いて構成された偏光ビームスプリッタが用いられており、前記従来の液体浸漬型の偏光ビームスプリッターを用いていない。したがって、前記第1乃至第12の態様によれば、先に述べたような対流やゴミや気泡などの、前記従来の液体浸漬型の偏光ビームスプリッターを採用することに伴う種々の問題点を除去することができ、製造が容易になる等の利点が得られる。
【0034】
また、前記第1、第3、第5、第7、第9及び第11の態様によれば、R光、G光、B光の各色光用の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長、すなわち、当該光弾性定数が実質的にゼロとなる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されている。したがって、前述したように透光性材料は光弾性定数が波長の関数として右上がりでかつ上に凸の形状となる特性を有しているので、R光及びG光に関してはB光に比べると光弾性定数が比較的大きくなるものの、いずれの色光に対しても光弾性定数を十分に小さくすることができる。そして、前述したように短波長の光ほどその吸収が大きいことからB光に対しては光吸収が最も多く光吸収による内部応力の発生量が最も大きいが、B光領域において光弾性定数が最小値となるので、B光に対する光吸収による複屈折の発生を十分に抑えることができる。一方、R光及びG光に対しては、そもそも光吸収が少ないので、B光の場合と比べて光弾性定数が大きくても光吸収による複屈折の発生を十分に抑えることができる。
【0035】
このため、前記第1、第3、第5、第7、第9及び第11の態様によれば、各色光用の偏光ビームスプリッタとして同じ透光性材料を用いたものを使用しつつ、種々の熱応力、外部応力の影響に対して複屈折の発生を軽減して光学的に安定な性能を確保でき、画質の劣化を抑えることができる。さらに、このように、各色光用の偏光ビームスプリッタとして同じ透光性材料を用いたものを使用することができるので、各色光用の偏光ビームスプリッタとして互いに異なる透光性材料を用いたものを使用する場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0036】
また、前記第2、第4、第6、第8、第10及び第12の態様によれば、R光、G光、B光の各色光用の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されている。この場合、前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料を用いると、結局、光吸収が最も多く光吸収による内部応力の発生量が最も大きいB光に対して平均的な光弾性定数の絶対値を最も小さくすることになるので、前述した第1、第3、第5、第7、第9及び第11の態様と同様に、B光に対する光吸収による複屈折の発生を十分に抑えることができ、また、R光及びG光に対しては、そもそも光吸収が少ないので、B光の場合と比べて平均的な光弾性定数が大きくても光吸収による複屈折の発生を十分に抑えることができる。一方、前記第2の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料を用いると、結局、G光に対して平均的な光弾性定数の絶対値を最も小さくすることになる。この場合、前述したように透光性材料は光弾性定数が波長の関数として右上がりの形状となる特性を有しているので、B光に対する光弾性定数は比較的大きくなるものの当該B光に対する光弾性定数はかなり小さく抑えることができる。また、R光に対しては、そもそも光吸収が少ないので、平均的な光弾性定数が大きくても光吸収による複屈折の発生を十分に抑えることができる。したがって、前記第2の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料を用いた場合であっても、入射光量の比較的少ない投射型表示装置であれば、各色光に対して、光吸収による複屈折の発生を十分に抑えることができる。なお、前記第1の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料を用いると、B光に対する光弾性定数がかなり大きくなってしまい、B光に対する光弾性定数を小さく抑えることができなくなってしまう。
【0037】
したがって、前記第2、第4、第6、第8、第10及び第12の態様によっても、各色光用の偏光ビームスプリッタとして同じ透光性材料を用いたものを使用しつつ、種々の熱応力、外部応力の影響に対して複屈折の発生を軽減して光学的に安定な性能を確保でき、画質の劣化を抑えることができる。また、このように、各色光用の偏光ビームスプリッタとして同じ透光性材料を用いたものを使用することができるので、各色光用の偏光ビームスプリッタとして互いに異なる透光性材料を用いたものを使用する場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の種々の実施例による投射型表示装置について、図面を参照して説明する。
【0039】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態による投射型表示装置について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0040】
図1は、本実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。説明の便宜上、図に示すように互いに直交するX軸、Y軸、Z軸をそれぞれ定義する(後述する図4乃至図8についても同様)。
【0041】
本実施の形態による投射型表示装置では、図面には示していないが、前記光源は、ランプと、該ランプの背部に配置された楕円鏡等の凹面鏡とから構成されている。前記光源から出射された光源光は、図示しない赤外線カットフィルタ及び紫外線カットフィルタを経由し、更に図示しない整形光学系によって略平行光束に変換されてX方向に進行し、色分解光学系としてのクロスダイクロイックミラー11に入射される。クロスダイクロイックミラー11は、B光反射の特性を有するダイクロイックミラー11BとR光反射の特性を有するダイクロイックミラー11Rとを互いに直交するようにX型に配置した構成を有している。クロスダイクロイックミラー11に入射された光は、ダイクロイックミラー11Bにて反射されて−Y方向に進行するB光(青色光)と、ダイクロイックミラー11Rにて反射されてY方向に進行するR光(赤色光)と、ダイクロイックミラー11B,11Rを透過してそのままX方向に進行するG光(緑色光)とに色分解される。色分解された各色光は、折り曲げミラー12R,12G,12Bによってそれぞれ光軸を−Z方向に変え、各々が各色光用の偏光分離光学系及び検光光学系を兼用する第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bにそれぞれ入射される。偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bは、透光性材料としてのガラス組成部材にて形成された2つの直角プリズムを誘電体多層膜等からなる偏光分離膜を挟み込んで貼り合わせた構造を有している。いずれの偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bの偏光分離膜も同じ方向を向いており、前記色分解されたR光、G光、B光とも各偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bに−Z方向にそれぞれ入射され、各色光は前記偏光分離膜を透過して−Y方向に廃棄されるP偏光光と反射してX方向に出射されるS偏光とにそれぞれ偏光分離される。すなわち、偏光ビームスプリッタ14Rは入射したR光に基づく第1の偏光光(S偏光光)をX方向に出射し、偏光ビームスプリッタ14Gは入射したG光に基づく第2の偏光光(S偏光光)をX方向に出射し、偏光ビームスプリッタ14Bは入射したB光に基づく第3の偏光光(S偏光光)をX方向に出射する。
【0042】
各色光用偏光ビームスプリッタ14R,14G,14BのS偏光光の出射面近傍には、空間光変調素子としてライトバルブ13R,13G,13Bがそれぞれ配置されており、各色光用偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bからそれぞれ出射された各色光のS偏光光がライトバルブ13R,13G,13Bにそれぞれ入射される。本実施の形態では、ライトバルブ13R,13G,13Bとして、位相差変調型の空間光変調素子である光書き込み式の反射型液晶ライトバルブが用いられている。
【0043】
ここで、光書き込み式の反射型液晶ライトバルブの構造及び機能について説明する。図面には示していないが、このライトバルブは、例えば、入射光側から順に配置された、透明ガラス基板、ITO透明電極膜、液晶配向層、TN液晶層、液晶配向層、誘電体反射ミラー層、遮光層、水素化非晶質シリコン層等からなる光導電体層、ITO透明電極層及び透明ガラス基板から構成されている。すなわち、入射光と反対側から書き込み光信号が入射すると、当該箇所の前記光導電体層はそのインピーダンスを減らすこととなり、前記両ITO電極間に常時交流を印加させて当該素子を作動させることから、印加電圧が前記液晶間に印加され、液晶分子が電界方向に配列することによって液晶層自体が1/4波長板としての機能を有することとなる。一方、書き込み光信号がない場合は、当該箇所の前記光導電体層が高インピーダンスを有するために両ITO電極間に印加された電圧は有効に液晶に印加されないこととなり、液晶層中の液晶分子は配列せず、液晶配向層に倣って配向し、ねじれ構造を構成する。以上の機能を有するために、書き込み光信号が入射された箇所においては、入射した直線偏光光(読み出し光)は液晶層を通過して円偏光となってミラー層により反射され、再度液晶層を通過して入射時と偏光方向が90度変換されて出射される。つまり、入射光(読み出し光)がS偏光光である場合、P偏光光として出射される。書き込み光信号が入射されない箇所では、入射偏光光は液晶分子のねじれに倣って旋光し、反射層にて反射されて、再度ねじれに倣って旋光されて出射するので、入射光と同じ偏光で出射する。つまり、入射光(読み出し光)がS偏光光である場合、S偏光光として出射される。
【0044】
以上が光書き込み式の反射型ライトバルブの構造及び機能である。なお、本発明で用いることができるライトバルブは、このような光書き込み式の反射型ライトバルブに限定されるものではなく、例えば電気書き込み式の反射型ライトバルブを使用することができることは言うまでもない。この場合には、光書き込み光学系が不要となり、装置の小型化に寄与することができる。
【0045】
各空間光変調素子13R,13G,13Bに入射された各色光のS偏光光は、ライトバルブ13R,13G,13Bによって書き込み光信号に従って変調され、当該各色光の変調光は、それぞれ−X方向に出射され、再度偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bにそれぞれ入射される。前述した光書き込み式反射型ライトバルブの原理からわかるように、前記各色の変調光には、書き込み光信号により選択された箇所のP偏光光(信号成分)と選択されない箇所のS偏光光とが混在している。ライトバルブ13R,13G,13Bから偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bに入射した各色の変調光のうち、P偏光光(信号成分)のみが偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bの偏光分離膜をそれぞれ透過して偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bからそれぞれ−X方向に出射され、S偏光光は当該偏光分離膜にてそれぞれ−Z方向に反射されて廃棄される。すなわち、ライトバルブ13R,13G,13Bにより変調された各色の変調光は、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bによってそれぞれ検光され、各色の変調光のうちのP偏光光のみが偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bから各色の検光光としてそれぞれ−X方向に出射されることになる。
【0046】
R光の検光光及びB光の検光光は、折り曲げミラー16R,16Bによってそれぞれ光軸を−Y方向及びY方向に変え、色合成光学系を構成するクロスダイクロイックプリズム17にそれぞれ入射される。G光の検光光は、そのまま−X方向にクロスダイクロイックプリズム17に入射される。クロスダイクロイックプリズム17は、直角二等辺三角柱の光学透明プリズム4個を互いに直角部を合わせて、当該合わせ面にはR光反射ダイクロイック膜17R又はB光反射ダイクロイック膜17Bを挟みこんで貼り合わせ、当該R光反射ダイクロイック膜17RとB光反射ダイクロイック膜17Bが互いにX型に配置された構造を有する。
【0047】
当該クロスダイクロイックプリズム17に−X方向に入射したG光の検光光はダイクロイック膜17R,17Bを透過してそのまま−X方向に出射され、クロスダイクロイックプリズム17に−Y方向に入射されたR光の検光光はR光反射ダイクロイック膜17Rによって反射されて同じく−X方向に出射され、クロスダイクロイックプリズム17にY方向に入射されたB光の検光光はB光反射ダイクロイック膜17Bによって反射されて同じく−X方向に出射される。
【0048】
前記各色の検光光は、このようにしてクロスダイクロイックプリズム17により色合成されて−X方向に出射され、投射光学系としての投射レンズ18によってスクリーン(図示せず)上にフルカラーの投射像として投射される。
【0049】
そして、本実施の形態では、前記偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材(前述した直角プリズムに相当)を用いて構成されている。前記偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材(前述した直角プリズムに相当)を用いて構成されてもよい。
【0050】
以下に、この透光性材料について説明する。
【0051】
一般に、ガラスのような等方等質な透光性材料に力を加えて応力を生じさせると、この透光性材料に光学的な異方性が生じ、ある種の結晶体と同じように複屈折性を持つようになる。このような現象は、光弾性効果と呼ばれている。応力が生じたときの透光性材料の屈折率は屈折率楕円体で表すことができ、この屈折率楕円体の主屈折率軸は主応力軸に一致する。一般に、主屈折率をn1,n2,n3、主応力をσ1,σ2,σ3(それぞれ添字が共通なものは同一方向にある)とすると、これらの間には次式のような関係が成立する。
【0052】
【数1】
n1=n0+C1σ1+C2(σ2+σ3) ・・・(1)
【0053】
【数2】
n2=n0+C1σ2+C2(σ3+σ1) ・・・(2)
【0054】
【数3】
n3=n0+C1σ3+C2(σ1+σ2) ・・・(3)
【0055】
ここで、C1,C2は光の波長及び透光性材料の物質に固有の定数である。なお、n0は無応力の時の屈折率である。
【0056】
このような透光性材料に光を入射させた場合、その方向がσ3と同一な方向となるように座標をとれば、入射光はそれぞれσ1,σ2方向の、すなわち互いに振動面が直交する2つの直線偏光成分に分かれる。当該透光性材料から光が出射する際には、各主応力方向の屈折率(n1,n2)が異なるため、これら2つの直線偏光成分の間には次式で表されるような光路差(位相差)Δφが生じる。
【0057】
【数4】
【0058】
ここで、λは光の波長、lは透光性材料の光透過厚である。C=(C1−C2)は光弾性定数と呼ばれ、応力によって生じる複屈折の大きさを示す係数(単位応力当たりの複屈折量)である。
【0059】
本発明者らは、偏光ビームスプリッタ用の透光性材料として種々の組成のガラスを作製し、直線偏光の種々の波長の単色光を用いて、当該試料にσ2=σ3=0となる方向に既知の応力をかけた状態で当該試料の複屈折を測定し、上述の数1〜数4から当該試料の光弾性定数Cを算出した。作製したガラスの組成の範囲は、酸化物換算の重量%で以下に示すようにした。
【0060】
SiO2 17.0〜29.0%
LiO2+Na2O+K2O 0.5〜 5.0%
PbO 70.0〜75.0%
As2O3+Sb2O3 0 〜 3.0%
【0061】
各成分の組成範囲をこのように設定した理由は、次の通りである。
【0062】
上記組成成分のうちのPbO(酸化鉛)は、PbOを含有する組成系のガラスにおいては、光弾性定数Cの値がPbOの含有量に大きく依存することを利用し、光弾性定数Cの値制御するために用いられたものである。PbOの含有量により光弾性定数Cの値が変化するのは、鉛イオンの配位状態がその含有量の増加とともに変化するためと考えられる。
【0063】
SiO2は、このガラスの光学用ガラス形成酸化物であり、17重量%以上含有されることが望ましい。ただし、当該SiO2の含有量は上記PbOの含有量を上記重量%としたことにより29重量%がその上限となる。
【0064】
LiO2+Na2O+K2Oといったアルカリ金属成分は、ガラスの熔解温度及びガラス転移温度を下げ、ガラスの失透に対する安定性を高める効果を有するため、0.5重量%以上含有されることが望ましい。ただし、その含有量が5重量%を越えると当該ガラスの化学的耐久性が損なわれることとなるために好ましくない。
【0065】
脱泡剤として使用すべきAs2O3、Sb2O3あるいは(As2O3+Sb2O3)は必要に応じて、ガラス原料中に混入させることが可能であるが、その含有量が3重量%を越えると当該ガラスの耐失透性、分光透過性が損なわれるので好ましくない。
【0066】
前述したようにして行った測定結果の一部を表1に示す。表1には、各ガラス試料No.1〜No.8の組成と、当該ガラス試料の光弾性定数Cの絶対値が最小になる(すなわち、実質的にゼロになる)波長とを示している。
【0067】
【表1】
【0068】
なお、ここで製造したガラスは、表1に示す各成分に対応する原料として酸化物、フッ化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩などを用意し、それらを所定の割合に秤量、混合して調合原料とし、900℃〜1300℃に加熱して電気炉中で熔解、清澄、撹拌を行って均質化した後に、予熱された金型に鋳込み徐冷することによって製造したものである。そして、光弾性定数Cの測定サンプルとしてのガラス試料No.1〜No.8はこのようにして製造した各組成のガラスを研削、研磨して作製したものである。
【0069】
表1に示す測定結果、すなわち、光弾性定数Cの絶対値が最小になる光の波長の測定結果から、上述の組成範囲のガラスでは、当該ガラスの組成中のPbO含有量と光弾性定数の絶対値が最小となる波長との間に図2に示す相関関係があることが判明した。ただし、図2中の曲線は、PbOの含有量を71重量%〜75重量%の間で、3次多項式にフィッティングしたものである。これにより、図2中の範囲の組成では、PbO含有量を制御することにより、光弾性定数Cの絶対値が最小値となる光の波長を制御することができることが判明した。図2から、例えば、B光波長領域380nm〜500nmにおいて光弾性定数Cの絶対値を最小値とするには、PbO含有量を71.0重量%〜73.7重量%にすればよいことがわかる。
【0070】
一方、本発明者らは、3種類の偏光ビームスプリッタを用意し、当該偏光ビームスプリッタの評価結果から、偏光ビームスプリッタにおいて用いる透光性材料部材は入射光の波長に対して光弾性定数の絶対値が1.5×10-8cm2/N以下であることが好ましいとの結論を得た。すなわち、前記3種類の偏光ビームスプリッタとしては、(1)前述した組成範囲内の組成を有し前述した工程により製造したガラスであって、所定波長の緑色単色光に対する光弾性定数の絶対値が0.01×10-8cm2/N以下であるガラスからなる部材を用いて構成されたもの、(2)前記緑色単色光に対する光弾性定数の絶対値が1.33×10-8cm2/Nのガラスからなる部材を用いて構成されたもの、(3)前記緑色単色光に対する光弾性定数の絶対値が2.0×10-8cm2/Nのガラスからなる部材を用いて構成されたもの、を用意した。そして、各偏光ビームスプリッタにS偏光の緑色光を入射させ、当該偏光ビームスプリッタにて反射して出射した光をミラーにて反射させて再度当該偏光ビームスプリッタに入射させ、前記ミラーにて反射されて当該偏光ビームスプリッタを透過した光をスクリーン上に投射させ、スクリーン上の照度ムラを評価した。その結果、前記(1)の偏光ビームスプリッタの場合には照度ムラの発生は非常に少なく、前記(2)の偏光ビームスプリッタの場合には照度ムラは観察できるものの実際の使用に耐える程度であり、前記(3)の偏光ビームスプリッタの場合には顕著な照度ムラが観察された。この評価結果から、投射型表示装置に採用する偏光ビームスプリッタとして、入射光に対する光弾性定数の絶対値が1.5以下(すなわち、光弾性定数が−1.5×10-8cm2/N以上で+1.5×10-8cm2/N以下)の透光性材料からなる部材を用いれば、従来の透光性材料部材(例えば、その光弾性定数が2.78×10-8cm2/NのBK7)に比べて十分に光学的に安定な性能を確保でき、かつ投射画像の画質劣化が十分に抑制される投射型表示装置が得られることがわかる。
【0071】
図3には、前述した測定の結果得られた、表1中の試料No.1〜No.7の光弾性定数Cの波長依存性を示す曲線が示されている。これらの曲線は、各試料について得られた測定点を3次多項式にフィッティングしたものである。
【0072】
図3から、以下のことが判明した。すなわち、光弾性定数は、波長を関数として、右上がりで上に凸の形状の特性を有しており、長波長にいくほど光弾性定数の大きくなる率は小さくなることである。
【0073】
図3からわかるように、試料No.2〜No.5のようにB光波長域において光弾性定数の絶対値が最小になるようにガラスを構成すれば、前記の特性からB光波長域(380nm〜500nm)は勿論のこと、G光波長領域(500nm〜600nm)、R光波長領域(600nm〜700nm)においても、前記光弾性定数の絶対値を1.5×10-8cm2/N以下に抑えることができるばかりでなく、前述のように光吸収量は短波長側で大きく長波長側で小さいことにより、この光吸収によって発生する熱の影響による複屈折の発生は、B光波長域において光弾性定数の絶対値が最小にするように作製されているために、B光吸収により発生する熱による複屈折の発生は極力少なくすることができる。さらに、G光波長領域及びR光波長領域においてはもともと光吸収による熱発生は少ない上に、G光波長領域及びR光波長領域においても光弾性定数の絶対値が1.5×10-8cm2/N以下であるために十分に複屈折の発生を抑えることができる。
【0074】
また、図3からわかるように、B光波長域において光弾性定数の絶対値が最小になる試料No.2〜No.5ほどではないが、試料No.1及び試料No.6の場合であっても、B光波長域、G光波長域及びR光波長域のいずれにおいても光弾性定数の絶対値を1.5×10-8cm2/N以下である上に、B光波長域における光弾性定数の絶対値はさほど大きくなく、B光吸収により発生する熱による複屈折の発生は十分に少なくすることができる。一方、試料No.7の場合には、B光波長域、G光波長域及びR光波長域のいずれにおいても光弾性定数の絶対値を1.5×10-8cm2/N以下であるものの、B光波長域における光弾性定数の絶対値はかなり大きくなってしまい、B光吸収により発生する熱による複屈折の発生がかなり大きくなり、本発明では許容できない。試料No.1〜No.4の場合には、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値(波長の関数である光弾性定数の絶対値を600nmから700nmまで定積分した積分値(図3において、光弾性定数がゼロの水平ラインと、波長が600nmの垂直ラインと、波長が700nmの垂直ラインと、光弾性定数を示す曲線とにより囲まれた部分の面積に相当)を、その波長幅100nmで除算した値。)、及び、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値(波長の関数である光弾性定数の絶対値を500nmから600nmまで定積分した積分値(図3において、光弾性定数がゼロの水平ラインと、波長が500nmの垂直ラインと、波長が600nmの垂直ラインと、光弾性定数を示す曲線とにより囲まれた部分の面積に相当)を、その波長幅100nmで除算した値。)、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値(図3において、光弾性定数がゼロの水平ラインと、波長が380nmの垂直ラインと、波長が500nmの垂直ラインと、光弾性定数を示す曲線とにより囲まれた部分の面積に相当)を、その波長幅120nmで除算した値。)のうち、B光波長域に関する前記第3の値が最も小さくなっている。試料No.5,No.6の場合には、前記第1、第2及び第3の値のうち、G光波長域に関する前記第2の値が最も小さくなっている。試料No.7の場合には、前記第1、第2及び第3の値のうち、R光波長域に関する前記第1の値が最も小さくなっている。したがって、前記第1、第2及び第3の値のうち、G光波長域に関する前記第2の値又はB光波長域に関する前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料部材を用いることができることがわかる。この場合、R光波長域の光弾性定数が+1.5×10-8cm2/N以下であれば、図3に示す特性が右上がりであるので、B光波長域の光弾性定数の値が十分に小さくなる。
【0075】
以上の説明からわかるように、前記試料No.1〜No.6が、本実施の形態において偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bを構成する透光性材料部材として用いることができる透光性材料の例であり、前記試料No.7が比較例である。
【0076】
なお、図2からわかるように、B光波長域において光弾性定数の絶対値が最小になるようにするためには、前述した組成範囲においてPbOの含有量を71重量%〜73.7重量%にすればよく、そのような組成範囲の透光性材料は、本実施の形態において偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bを構成する透光性材料部材として用いることができる透光性材料の例である。
【0077】
本実施の形態によれば、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bとして、透光性材料からなる部材を用いて構成された偏光ビームスプリッタが用いられており、前記従来の液体浸漬型の偏光ビームスプリッターを用いていない。したがって、本実施の形態によれば、先に述べたような対流やゴミや気泡などの、前記従来の液体浸漬型の偏光ビームスプリッターを採用することに伴う種々の問題点を除去することができ、製造が容易になる等の利点が得られる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bとして、前述した透光性材料からなる部材を用いて構成された偏光ビームスプリッタが用いられているので、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bとして同じ透光性材料を用いたものを使用しつつ、特に光吸収による熱応力を考慮した上で、種々の熱応力、外部応力の影響に対して複屈折の発生を軽減して光学的に安定な性能を確保でき、色ムラ等の画質の劣化を抑えることができる。さらにこのように、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bとして同じ透光性材料を用いたものを使用することができるので、コストダウンを図ることができる。
【0079】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態による投射型表示装置について、図4を参照して説明する。
【0080】
図4は、本実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。図4において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0081】
本実施の形態による投射型表示装置が前述した図1に示す第1の実施の形態による投射型表示装置と異なる所は、折り曲げミラー12R,12G,12Bと偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bとの間にそれぞれ偏光ビームスプリッタ15R,15G,15Bが追加された点のみである。前記第1の実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bが、色分解された各色光を偏光分離する偏光分離光学系及びライトバルブ13R,13G,13Bによって変調された各光をそれぞれ検光する検光光学系を兼ねていたのに対し、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bが検光光学系のみを構成し、偏光ビームスプリッタ15R,15G,15Bが偏光分離光学系を構成している。すなわち、本実施の形態では、クロスダイクロイックミラー11にて色分解された各色光は、折り曲げミラー12R,12G,12Bを経て偏光ビームスプリッタ15R,15G,15Bに入射し、各色光の一方の偏光光のみが偏光ビームスプリッタ15R,15G,15BをZ方向に透過して偏光ビームスプリッタ14R,14G,14BにS偏光光として入射し、この各色のS偏光光が各ライトバルブ13R,13G,13Bに入射され、以後は前記第1の実施の形態と同様である。
【0082】
本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14B,15R,15G,15Bの各々が、前記第1の実施の形態における偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bで用いられている透光性材料(以下、説明の便宜上、「第1の実施の形態材料」という。)からなる部材を用いて構成されている。したがって、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0083】
なお、本実施の形態のように、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14B,15R,15G,15Bのいずれもが第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成されていると、画質の劣化を防止する程度が高く好ましいが、本発明では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bのみを第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成して偏光ビームスプリッタ15R,15G,15Bを通常の透光性材料部材を用いて構成してもよし、逆に、偏光ビームスプリッタ15R,15G,15Bのみを第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成して偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bを通常の透光性材料からなる部材を用いて構成してもよい。
【0084】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態による投射型表示装置について、図5を参照して説明する。
【0085】
図5は、本実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。図5において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0086】
本実施の形態による投射型表示装置が前述した図1に示す第1の実施の形態による投射型表示装置と異なる所は、色分解光学系としてのクロスダイクロイックミラー11の前に、光源からの光を色分解前に2つの偏光光に偏光分離する偏光分離光学系として、偏光ビームスプリッタ20を配置した点のみである。前記第1の実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bが偏光分離光学系及び検光光学系を兼ねていたのに対し、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bは偏光分離光学系を兼ねていない。本実施の形態では、光源からの光が偏光ビームスプリッタ20にて2つの偏光光に偏光分離され、そのうちの一方の偏光光がクロスダイクロイックミラー11にて各色光に色分解され、色分解された各色光の当該偏光光(偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bに対するS偏光光)が偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bに入射し、この各色のS偏光光が各ライトバルブ13R,13G,13Bに入射され、以後は前記第1の実施の形態と同様である。
【0087】
本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14B,20の各々が、第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成されている。したがって、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0088】
なお、本実施の形態のように、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14B,20のいずれもが第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成されていると、画質の劣化を防止する程度が高く好ましいが、本発明では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bのみを第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成して偏光ビームスプリッタ20を通常の透光性材料部材を用いて構成してもよいし、逆に、偏光ビームスプリッタ20のみを第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成して偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bを通常の透光性材料部材を用いて構成してもよい。
【0089】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態による投射型表示装置について、図6を参照して説明する。
【0090】
図6は、本実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。図6において、図1中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0091】
本実施の形態による投射型表示装置が前述した図1に示す第1の実施の形態による投射型表示装置と異なる所は、色分解光学系としてのクロスダイクロイックミラー11の前に、光源からの光を色分解前に2つの偏光光に偏光分離する偏光分離光学系として、特開平5−157915号に開示されたような蛇腹状の偏光装置21を配置した点のみである。前記第1の実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bが偏光分離光学系及び検光光学系を兼ねていたのに対し、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bは偏光分離光学系を兼ねていない。本実施の形態では、光源からの光が偏光装置21にて2つの偏光光に偏光分離され、そのうちの一方の偏光光がクロスダイクロイックミラー11にて各色光に色分解され、色分解された各色光の当該偏光光(偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bに対するS偏光光)が偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bに入射し、この各色のS偏光光が各ライトバルブ13R,13G,13Bに入射され、以後は前記第1の実施の形態と同様である。
【0092】
本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ14R,14G,14Bの各々が、第1の実施の形態材料からなる部材を用いて構成されている。したがって、本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
【0093】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0094】
例えば、前述した各実施の形態による投射型表示装置は、各色光R,G,Bを予め色合成して1本の投射レンズで画像を投射する1投射レンズタイプの投射型表示装置の例であっが、本発明は、各色光R,G,Bを予め色合成することなく3本の投射レンズでそれぞれスクリーン上に投射してスクリーン上で色合成を行う3投射レンズタイプの投射型表示装置に適用することもできる。
【0095】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、液体を使用することなく、前記液体浸漬型の偏光ビームスプリッターを使用したことに伴う問題点を除去することができ、製造が容易になる等の利点が得られ、しかも、種々の熱応力、外部応力の影響に対して光学的に安定な性能を確保でき画質の劣化の少ない投射型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】偏光ビームスプリッタに使用するガラス組成のPbOの含有量と当該ガラスの光弾性定数の絶対値を最小にする波長との関係を示す図である。
【図3】ガラス試料の光弾性定数の波長依存性を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態による投射型表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
11 クロスダイクロイックミラー(色分解光学系)
12R,12B,12G 折り曲げミラー
13R,13G,13B 偏光ビームスプリッタ
14R,14G,14B ライトバルブ
15R,15G,15B 偏光ビームスプリッタ
16R,16B 折り曲げミラー
17 クロスダイクロイックプリズム(色合成光学系)
18 投射レンズ
20 偏光ビームスプリッタ
21 偏光装置
Claims (12)
- 入射されたR光に基づく第1の偏光光を出射する第1の偏光ビームスプリッタと、入射されたG光に基づく第2の偏光光を出射する第2の偏光ビームスプリッタと、入射されたB光に基づく第3の偏光光を出射する第3の偏光ビームスプリッタと、前記第1、第2及び第3の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、を備え、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタが、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する投射型表示装置において、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 入射されたR光に基づく第1の偏光光を出射する第1の偏光ビームスプリッタと、入射されたG光に基づく第2の偏光光を出射する第2の偏光ビームスプリッタと、入射されたB光に基づく第3の偏光光を出射する第3の偏光ビームスプリッタと、前記第1、第2及び第3の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、を備え、前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタが、前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する投射型表示装置において、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1の偏光分離光学系及び前記第1の検光光学系が同一の第1の偏光ビームスプリッタで共用され、
前記第2の偏光分離光学系及び前記第2の検光光学系が同一の第2の偏光ビームスプリッタで共用され、
前記第3の偏光分離光学系及び前記第3の検光光学系が同一の第3の偏光ビームスプリッタで共用され、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1の偏光分離光学系及び前記第1の検光光学系が同一の第1の偏光ビームスプリッタで共用され、
前記第2の偏光分離光学系及び前記第2の検光光学系が同一の第2の偏光ビームスプリッタで共用され、
前記第3の偏光分離光学系及び前記第3の検光光学系が同一の第3の偏光ビームスプリッタで共用され、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって分解された各色光をそれぞれ2つの偏光光に偏光分離する第1、第2及び第3の偏光分離光学系と、
前記第1、第2及び第3の偏光分離光学系によってそれぞれ偏光分離された各色光の一方の偏光光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、
前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記偏光分離光学系は偏光ビームスプリッタからなり、
前記偏光ビームスプリッタは、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、
前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記偏光分離光学系は偏光ビームスプリッタからなり、
前記偏光ビームスプリッタは、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、
前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、光弾性定数の絶対値が最小値となる波長がB光領域に存在する透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。 - 光源からの光を第1の偏光光と第2の偏光光とに偏光分離する偏光分離光学系と、
前記第1の偏光光をR光、G光、B光に色分解する色分解光学系と、
前記色分解光学系によって色分解された各色光をそれぞれ変調する第1、第2及び第3のライトバルブと、
前記第1、第2及び第3のライトバルブによってそれぞれ変調された各光をそれぞれ検光する第1、第2及び第3の検光光学系と、
前記第1、第2及び第3の検光光学系によってそれぞれ検光された各光を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系によって色合成された光を投射する投射光学系と、
を備え、
前記第1、第2及び第3の検光光学系はそれぞれ第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタからなり、
前記第1、第2及び第3の偏光ビームスプリッタの各々は、R光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第1の値、G光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第2の値、及び、B光領域における各波長に対する光弾性定数の絶対値の平均的な値である第3の値のうち、前記第2の値又は前記第3の値が他の値に比べて最も小さい透光性材料からなる部材を用いて構成されたことを特徴とする投射型表示装置。
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