JP6641801B2 - シール材 - Google Patents
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Description
水素は、単位体積当たりのエネルギー密度が小さいため、効率良くエネルギー源として使用するためには、高圧貯蔵(例えば、水素ステーションでは100Mpa)が必要とされる。そのため、水素を貯蔵するための容器や、貯蔵された水素を供給するための装置には、シール材が必要である。
例えば、水素ステーションから車両に水素を供給する場合、車両が備えるレセプタクルに使用されるOリングは、温度が−40〜50℃程度、圧力が大気圧〜90MPa程度の水素に繰り返し曝されることとなるが、従来のOリングは、このような水素雰囲気下で長期間に渡って使用し続けることは困難であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高圧水素に曝される環境下で使用した際の耐久性に優れ、長期間に渡って、高圧水素をシールすることができるシール材を提供することを目的とする。
本発明のシール材では、ゴム中に繊維及びカーボンブラックが配合されている。そして、繊維を含有することにより繊維とゴムとの間に隙間が形成されることとなり、この隙間はシール材が高圧水素に曝され、シール材中の水素ガスが過飽和となった際の水素ガスの逃げ道となる。また、カーボンブラックを含有することにより水素ガスはカーボンブラックの表面に付着することとなり、急減圧時にシール材から放出される水素ガス量を減少させることができる。
そのため、本発明のシール材は、上述した特性を満足することができ、高圧水素による破壊が発生しにくく、長期間に渡って、高圧水素をシールすることができる。
このようなシール材は、高圧水素に曝された際に、体積変化が小さく、かつ水素含有量が少ない点で特に優れている。
この条件で繊維を含有する場合、上記シール材におけるゴムと繊維との間の隙間を適度に形成することができる。
このような条件でカーボンブラックを含有することにより、使用時にシール材が破壊されてしまうことをより確実に回避することができる。
上記ゴム組成物が補強材を含有する場合、高圧水素に曝された際により確実にシール材の変形を防止することができ、耐久性、及び、高圧水素に対するシール性能をより確実に確保することができる。
上記補強剤はシリカであることが好ましい。上記した補強剤としての機能を確保するのに適しており、また、安価に入手することができるからである。
また、上記補強剤の配合量は、上記ゴム成分100重量部に対して60〜80重量部であることが好ましい。この場合、シール材の強度と柔軟性とを両立するのに特に適している。
上記可塑剤は、アジピン酸エーテルエステル系の可塑剤であることが好ましい。アジピン酸エーテルエステル系可塑剤は、低温下でも可塑剤の機能を確実に発揮することができるため、上記シール材を低温下で使用する場合にも優れたシール性能を確実に確保することができる。
上記可塑剤の配合量は、上記ゴム成分100重量部に対して40〜60重量部であることが好ましい。この場合、シール材に柔軟性を確実に付与することができ、かつ、高温下においてシール材が大きく変形しシール性が損なわれることをより確実に回避することができる。
まず、上記ゴム組成物について説明する。
上記ゴム組成物は、少なくとも、ゴム成分と、繊維及びカーボンブラックとを含有する。
また、上記ゴム成分としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
これらのなかでは、エピクロロヒドリンゴムが好ましい。低温下での使用でも高い性能を確保するのに適しているからである。
上記ゴム成分は、2種類以上のゴム成分をブレンドして使用してもよい。
上記架橋剤としては、従来公知の架橋剤を用いることができ、上記ゴム成分の種類に応じて適宜選択すれば良い。上記架橋剤としては、例えば、硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、過酸化物系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤等が挙げられる。
上記無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維、炭素繊維等が挙げられる。上記有機繊維としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、アクリル樹脂、木綿、セルロース等からなる繊維が挙げられる。
これらの繊維は、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
上記繊維としては、有機繊維が好ましく、セルロース繊維がより好ましい。相溶性の違いにより、ゴムと繊維との界面に微小な隙間を形成するのに特に適しているからである。
上記繊維の配合量の下限は、上記ゴム成分100重量部に対して7重量部がより好ましい。
一方、上記繊維の配合量の好ましい上限は、上記ゴム成分100重量部に対して15重量部である。上記繊維の配合量が多すぎると、シール材内部を水素が通り抜けやすくなりすぎて、シール材としての本来の性能が不充分になることがある。
上記繊維の配合量の上限は、上記ゴム成分100重量部に対して13重量部がより好ましく、11重量部がさらに好ましく、9重量部が特に好ましい。
上記ファーネスブラックとしては、例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、IISAF−HS(Intermediate ISAF−High Structure)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、HCF(High Colour Furnace)、MCF(Midium Colour Furnace)等が挙げられる。
また、上記サーマルブラックとしては、例えば、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)が挙げられる。
これらのなかでは、粒状のHCFが好ましい。その理由は、平均粒子径が小さく、水素を適度に吸着させる効果をもつからである。
本発明では、カーボンブラックとして、1種類のカーボンブラックを単独で使用してもよいし、2種類以上のカーボンブラックを併用してもよい。
一方、上記平均粒子径の好ましい上限は、70nmである。上記カーボンブラックの平均粒子径が大きすぎると、カーボンブラックの表面に付着する水素ガスの量が多くなりすぎてゴム組成物中に水素が残存し、急減圧時に水素の過飽和によって、シール材が破壊されてしまうことがある。
上記カーボンブラックの配合量の下限は、上記ゴム成分100重量部に対して8重量部がより好ましい。
一方、上記カーボンブラックの配合量の好ましい上限は、上記ゴム成分100重量部に対して20重量部である。カーボンブラックの配合量が多すぎると、急減圧時にトラップされる水素の量が多くなりすぎ、急減圧時の水素の過飽和によって、シール材が破壊されてしまうことがある。
上記カーボンブラックの配合量の上限は、上記ゴム成分100重量部に対して17重量部がより好ましく、14重量部がさらに好ましく、11重量部が特に好ましい。
上記可塑剤としては、従来公知の可塑剤を用いることができ、上記ゴム成分の種類に応じて適宜選択すればよい。一方、シール材を低温下で使用する場合にもその性能を確実に確保すべく、上記可塑剤としては、低温下でも可塑剤としての機能を充分に発揮することができる耐寒性可塑剤が好ましい。
上記可塑剤の具体例としては、例えば、フタル酸誘導体(フタル酸エーテルエステル系も含む)、アジピン酸誘導体(アジピン酸エーテルエステル系も含む)、セバシン酸誘導体(セバシン酸エーテルエステル系も含む)等が挙げられる。
上記可塑剤としては、アジピン酸エーテルエステル系が好ましい。低温下でも可塑剤の機能を発揮するのに特に適しているからである。
上記可塑剤の配合量の下限は、上記ゴム成分100重量部に対して40重量部がより好ましく、50重量部がさらに好ましい。
一方、上記可塑剤の配合量の好ましい上限は、上記ゴム成分100重量部に対して70重量部である。可塑剤の配合量が多すぎると、シール材の硬度が低くなりすぎ、高圧時にシール材が大きく変形してシール性能を維持することができない場合がある。
上記可塑剤の配合量の上限は、上記ゴム成分100重量部に対して60重量部がより好ましい。
上記補強剤は、その表面がカップリング剤等で処理されていても良い。これにより、ゴム成分との密着性が向上するため、シール材の強度が上がり、高圧時のシール材の変形が抑止され、その結果、シール材のシール性能をより向上させることができる。
上記補強剤の配合量の下限は、上記ゴム成分100重量部に対して60重量部がより好ましく、70重量部がさらに好ましい。
一方、上記補強剤の配合量の好ましい上限は、上記ゴム成分100重量部に対して90重量部である。補強剤の配合量が多すぎると、シール材の柔軟性が低下し、シール材としての機能が損なわれることがある。
上記補強剤の配合量の上限は、上記ゴム成分100重量部に対して80重量部がより好ましい。
上記成形物は、TR10が−65℃以下であることが好ましい。この場合、低温下でのシール性(弾性及びガス非透過性)により優れるからである。
上記TR10は、JIS K 6261(2006)に準拠した方法で測定すればよい。
具体的には、例えば、水素ステーションレセプタクル用のOリング等のパッキンやガスケット;水素ステーションコンプレッサ用のOリング等のパッキンやガスケット;水素ステーション蓄圧機用のOリング等のパッキンやガスケット;水素ステーション緊急離脱カップリング用のOリング等のパッキンやガスケット;水素貯蔵システム(電力系統安定化)向け高圧バルブ用のOリング等のパッキンやガスケット;水素貯蔵システム(電力系統安定化)向けレギュレータ用のOリング等のパッキンやガスケット;水素貯蔵システム(電力系統安定化)向け水素タンク用のOリング等のパッキンやガスケット;宇宙ロケットエンジン液体水素燃料供給ポンプ用のOリング等のパッキンやガスケット;メタンハイドレート掘削装置用のOリング等のパッキンやガスケット等として好適に使用することができる。
図1は、オンサイト型水素ステーションの模式図である。
図2は、水素ステーション側の水素供給プラグと車両側のレセプタクルとの接続を説明するための断面図である。
オンサイト型の水素ステーション1では、外部から燃料(ナフサ又は灯油)が供給され、この燃料を用いて、燃料改質装置11Aと水素の高純度化を図る水素精製装置11Bとを備えた水素製造装置11で水素が製造される。
水素製造装置11で製造された水素は、水素圧縮機12で所定の圧力(例えば、95MPa)の高圧水素とされ、昇圧された水素は、高圧水素を一時的に蓄えるための蓄圧器13と、蓄圧器13に蓄えられた高圧水素を車両20に供給するためのディスペンサー14とを介して、水素タンク(図示せず)を備えた車両20に供給される。
このとき、ディスペンサー14から車両20への水素の供給は、水素の差圧により行う。例えば、蓄圧器13内の圧力を95MPa、ディスペンサー14での圧力を82MPaとしておき、差圧により車両20内の水素タンクに水素を充填する。
また、水素供給ホース15の途中には、緊急離脱カップリング17が配設されている。よって、緊急時(例えば、車両20が誤発進した場合)には、この緊急離脱カップリング17を作動させることで、水素ステーション1側から車両20側への水素の供給を停止することができる。
一方、水素供給プラグ16は、先端部16aがレセプタクル21の差込口25と嵌合する形状を有している。
水素供給プラグ16とレセプタクル21との接続は、水素供給プラグ16の先端部16aをレセプタクル21の差込口25から挿入することにより行う。これにより水素の供給を行うことができる。
ここで、第1〜第3のOリング22〜24として、本発明のシール材からなるOリングが使用される。そして、水素ステーション1から車両20への水素の供給では、第1〜第3のOリング22〜24の存在により、水素供給時の水素の漏出を防止することができる。
これらの高圧水素貯蔵容器にも本発明のシール材を使用することができる。
図3に示すように、高圧水素(H2)を貯蔵する高圧水素貯蔵容器30は、全体として円筒形を有し、容器本体であるライナー31と、ライナー31の周囲全体を覆うように設けられた外装32と、ライナー31と外装32とを貫通し水素の流路となる貫通孔33と、水素を流出入させるためのバルブ35を備えている。バルブ35には、水素の漏出を防止すべく、Oリング34が装着されている。ここで、Oリング34として、本発明のシール材からなるOリングが使用される。
ライナー31は、例えば、アルミニウムや、高密度ポリエチレン等の樹脂などのライニング材で形成されている。また、外装32は、クロムモリブデン鋼などの金属や、炭素繊維で強化したプラスチック(CFRP)を材料として形成されている。
なお、高圧水素貯蔵容器30は、高圧水素を貯蔵することができるもののみならず、水素の吸着(又は貯蔵)及び放出が可能な水素吸着剤が、ライナー内部に収容されたものであっても良い。
例えば、配合原料を計量後、混練してゴム組成物を調製し、得られたゴム組成物を金型に投入し、熱加硫圧縮成形することにより製造することができる。勿論、他の方法を用いて製造してもよい。
下記配合原料を使用して、後述する(1)〜(5)の工程を行うことにより、シート状のシール材を作製した。
(配合原料:配合量)
ゴム成分(エピクロロヒドリンゴム/ダイソー製、EPION301):100重量部
繊維(セルロース繊維/日本製紙ケミカル製、KCフロック100):8重量部
カーボンブラック(旭カーボン製、SUNBLACK930):10重量部
可塑剤(アジピン酸エーテルエステル系/アデカ製、アデカサイザー107):50重量部
補強剤(シリカ/ダイソー製、カブラスSW―134):70重量部
受酸剤(酸化マグネシウム):3重量部
老化防止剤(大内新興化学製、ノクラックNBC):1重量部
加工助剤(ステアリン酸):2重量部
架橋剤(竹原ゴム加工製、TRマスターETU80E):4重量部(エチレンチオウレア(ETU)として)
(1)各配合原料をそれぞれ計量した。
(2)上記各配合原料のうち、架橋剤以外の配合原料をBBミキサー(神戸製鋼所製、MIXITRON BB―L1800、内容積1.6リットル)に投入し、回転数を徐々に上げつつ160℃に達したところでBBミキサーから取り出した。
(3)上記工程(2)で得られた混合物に、2軸ロール(関西ロール製、8インチテストロール)を用いてロール温度80℃で架橋剤を練り込み、シート状に成形して未加硫のシートを得た。
(5)上記工程(4)で得られたシートに、オーブン(光洋サーモ製、ラボオーブンKLOシリーズ)を用いて、170℃、4時間の条件で2次加硫を行い、シート状のシール材を完成した。
配合原料として、セルロース繊維及びカーボンブラックを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、シール材を作製した。
(1)断面観察
実施例1で作製したシール材を厚さ方向に切断し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した(倍率:100倍)。得られた観察画像を図4に示した。
図4に示したように、実施例1に係るシール材では、セルロース繊維を配合したことによる空隙(図4中、白くなっている部分の周辺の黒い部分(例えば、A領域内参照))が多数観察された。
実施例1及び比較例1で作製したシール材について、JIS7126−1(2006)に準拠した溶解係数・拡散係数測定装置(GTRテック社製、GTR−11X/11DF)を使用し、遅れ時間及び水素溶解度係数(拡散係数に対する透過係数の比(透過係数/拡散係数))を測定した。ここで、流体としては、圧力0.3MPa、温度30℃の水素を使用した。
結果、遅れ時間は、図5にも示したように、実施例1のシール材で2532秒であり、比較例1のシール材で4910秒であった。
また、水素溶解度係数は、図6にも示したように、実施例1のシール材で9.2×104cm3/cm3・cmHgであり、比較例1のシール材で5.5×104cm3/cm3・cmHgであった。
実施例1で作製したシール材について、圧力:90MPa、温度:30℃の水素に24時間暴露し、次いで減圧させた際の体積変化(膨張の有無)を観察したところ、体積変化はほとんど観察されなかった。
また、シール材中に繊維及びカーボンブラックを配合することにより、水素溶解度係数が大きくなっており、これは繊維とゴムとの間に隙間が形成されたためと考えられた。
Claims (10)
- 高圧水素のシールに用いられるシール材であって、
ゴム成分と、セルロース繊維及びカーボンブラックとを含有するゴム組成物の成形物からなることを特徴とするシール材。 - 前記ゴム成分はエピクロロヒドリンゴムである請求項1に記載のシール材。
- 前記繊維は、平均繊維長が30〜150μmであり、配合量が前記ゴム成分100重量部に対して7〜9重量部である請求項1又は2に記載のシール材。
- 前記カーボンブラックは、平均粒子径が10〜70nmであり、配合量が前記ゴム成分100重量部に対して8〜11重量部である請求項1〜3のいずれかに記載のシール材。
- 前記ゴム組成物は、更に補強剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のシール材。
- 前記補強剤は、シリカである請求項5に記載のシール材。
- 前記補強剤の配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して60〜80重量部である請求項6に記載のシール材。
- 前記ゴム組成物は、更に可塑剤を含有する請求項1〜7のいずれかに記載のシール材。
- 前記可塑剤は、アジピン酸エーテルエステル系の可塑剤である請求項8に記載のシール材。
- 前記可塑剤の配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して40〜60重量部である請求項9に記載のシール材。
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