JP6641724B2 - 中空樹脂粒子およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、内部に複数の空間部が形成され、球面に沿って伸びる扁平な凹所が多数形成された球状の中空樹脂粒子およびその製造方法に関する。
断熱性や軽量性や光の散乱による隠蔽性などを付与するための機能部材として、例えば外殻を有し、その内部に単一の球状空間を有する中空樹脂粒子や、多孔質樹脂粒子と呼ばれる、複数の微小空間が連続した空間が形成された中空樹脂粒子など、様々な中空樹脂粒子が開発されている(特許文献1〜4参照。)。
中空樹脂粒子においては、また、各種の薬品、例えば香料などを担持させて、香料を徐放することによって香気を持続的に得る、徐放性担持剤としての利用も提案されている。
また、外殻と内部空間との屈折率差により可視光の散乱が生じることを利用して、光拡散性や隠蔽性による白色性などを付与する機能部材として活用することも知られている。例えばシートや板に加工して照明カバーや各種ディスプレー、半透明パーティション、看板などとして利用することや、バインダー中に分散させ、これを紙上に塗工して光沢紙、ラミネート紙などとして利用すること、さらに、紫外線吸収剤などの他の添加剤と共に乳液やクリームなどに加工してサンスクリーン製品などの化粧品として利用することなどが提案されている。
しかしながら、例えば特許文献1に開示されるような、内部に単一の球状空間を有するいわゆるマイクロバルーンは、平均粒径が数10μm以上と大きく、内部に単一の大きな空間を有し、表面は滑らかであり、さらに、外殻の厚みがμmオーダーであって厚いなどの性状を有するので、薬品に係る徐放性担持剤として好適に用いることが困難である。
また、例えば特許文献2に開示されるような、表面に小突起形状を有する中空樹脂粒子は、外殻が厚く、特許文献3に開示されるような、懸濁重合法を用いて作製される複合エマルジョンによる多孔質樹脂粒子は、平均粒径が数10μm以上と大きく、特許文献4に開示されるような、アルカリ膨潤法を用いて作製される多孔質樹脂粒子は、平均粒径は小さいが、外殻の厚みは相対的に厚く、これらの理由により、同様に薬品に係る徐放性担持剤として用いることが難しい。
また、中空樹脂粒子を適用する分野の中には、流動性が高いこと、すなわち粉体の滑り性が良好であって凝集固着しにくいことなどの特性が求められる分野もある。例えば、良好な滑り性が求められる乳液やクリームなどの化粧品に添加する場合や、ブロッキングを防止するためにフィルムや紙の表面層に導入する場合などが挙げられる。
しかしながら、上記の中空樹脂粒子においては十分に高い流動性が得られるとは言えない。
特開昭60−19033号公報 特開2014−162920号公報 特許4183603号公報 特開平1−185311号公報
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、流動性が高く、また、徐放性担持剤としての機能が良好に発揮される中空樹脂粒子およびその製造方法を提供することにある。
本発明の中空樹脂粒子は、内部に複数の空間部を有する略球状の中空樹脂粒子であって、
平均粒径が0.5〜10μmであり、
球面に沿って伸びる扁平な凹所が多数形成されてなることを特徴とする。
本発明の中空樹脂粒子においては、前記扁平な凹所のうち、中空樹脂粒子のSEM写真画像から測定される周縁長が同一である真円の直径で表される周縁径が0.01〜0.5μmの範囲にあるものの、当該中空樹脂粒子の表面における単位面積当たりに存在する平均個数(平均密度)が、5〜200個/μm2 であることが好ましい。
本発明の中空樹脂粒子においては、中空率が30〜70体積%であることが好ましい。
本発明の中空樹脂粒子の製造方法は、上記の中空樹脂粒子を製造する方法であって、
疎水性溶媒に重合性単量体および油溶性重合開始剤を溶解または分散させた油相液を、水溶性重合開始剤が含有された水系媒体中において分散させて油滴を形成させ、前記重合性単量体に前記油溶性重合開始剤および前記水溶性重合開始剤を同時に作用させて当該重合性単量体を重合することによって、内部に複数の空間部を有する中空樹脂粒子を製造することを特徴とする。
本発明の中空樹脂粒子によれば、内部に複数の空間部を有し、さらに、球面に沿って伸びる扁平な凹所が多数形成されてなるものであるので、流動性が高く、また、徐放性担持剤としての機能が良好に発揮される。
本発明の中空樹脂粒子の製造方法によれば、上記の中空樹脂粒子を確実に製造することができる。
本発明の中空樹脂粒子を模式的に示す正面図である。 本発明の中空樹脂粒子を模式的に示す断面図である。 実施例1に係る中空樹脂粒子の断面を示すTEM写真である。 実施例1に係る中空樹脂粒子の表面を示すSEM写真である。 比較例1に係る中空樹脂粒子の表面を示すSEM写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔中空樹脂粒子〕
図1は、本発明の中空樹脂粒子を模式的に示す正面図であり、図2は、本発明の中空樹脂粒子を模式的に示す断面図である。
本発明の中空樹脂粒子10は、内部に複数の空間部を有する略球状のものである。そして、中空樹脂粒子10の表面には、球面に沿って伸びる扁平な凹所(以下、「扁平凹所」ともいう。)11が多数形成されている。
中空樹脂粒子10は、具体的には、表面に露出する表面壁12aと、複数の空間部を区画する隔壁12bとからなる外殻12を有する。外殻12に囲繞された内部空間13は、通常、空気によって満たされている。
中空樹脂粒子10の内部の断面構造は、例えば、中空樹脂粒子10をUV硬化樹脂中に包埋して液体窒素に浸漬して割った断面を走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの公知の手段によって観察することなどによって確認することができる。
中空樹脂粒子10の表面には、球面に沿って伸びる扁平凹所11が多数形成されている。扁平凹所11は、例えばひだ状の稜線11aによって囲われてなるクレーター状のものであり、この扁平凹所11が中空樹脂粒子10の表面の全面に連続して形成されていることにより、中空樹脂粒子10の表面に特定の凹凸構造が形成される。
中空樹脂粒子10の表面に形成された特定の凹凸構造は、中空樹脂粒子10の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することによって確認することができる。
本発明の中空樹脂粒子10の表面の特定の凹凸構造においては、扁平凹所11のうち、周縁径が0.01〜0.5μmの範囲にあるものの単位面積当たりに存在する平均個数(平均密度)が、5〜200個/μm2 であることが好ましく、より好ましくは20〜100個/μm2 である。
特に、周縁径が0.05〜0.2μmの範囲にあるものの平均密度が上記の範囲にあることがより好ましい。
扁平凹所11の周縁径は、中空樹脂粒子10の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したときのSEM写真画像における各扁平凹所を周縁長が同一である真円となるよう近似し、その近似円の直径とする。
また、扁平凹所11の平均密度は、SEM写真画像に存在する扁平凹所11の個数と、SEM写真画像から算出した粒径(最大径および最小径の平均値)から得られる、中空樹脂粒子10を真球体と仮定したときの表面積との比を求めることにより、算出されるものである。
〔中空樹脂粒子の平均粒径〕
本発明の中空樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で0.5〜10μmであり、好ましくは1〜5μmである。この粒径は、油滴の大きさを調整することによって制御することができる。
中空樹脂粒子の体積基準のメジアン径は「LA−750」(HORIBA社製)を用いて測定することができる。例えば具体的には、中空樹脂粒子0.2gを、界面活性剤水溶液(中空樹脂粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)20mlに添加し、超音波分散を3分間行った分散液を試料にして測定することができる。
〔外殻樹脂〕
外殻12を構成する樹脂(以下、「外殻樹脂」ともいう。)は、例えば重合性単量体を重合することによって得られる重合体からなる。
外殻樹脂としては、例えばスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレンアクリル樹脂などが挙げられる。
外殻樹脂は、架橋構造を含むものであることが好ましい。
〔単官能重合性単量体〕
外殻樹脂を形成するための重合性単量体としては、例えば外殻樹脂としてビニル樹脂を用いる場合、外殻樹脂を形成するべき重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
・スチレン系単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレンなど。
・(メタ)アクリル酸エステル系単量体
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなど。
・ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
・ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
・ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
・N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
・その他
ブタジエン、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体、無水マレイン酸、クロロエチレン、1,1−ジクロロエチレンのハロゲン化ビニル類など。
これらの中では、スチレン系単量体および/または(メタ)アクリル酸エステル系単量体を用いることが好ましい。
これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔多官能重合性単量体〕
外殻樹脂を形成するための重合性単量体としては、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができるが、架橋構造を含む外殻樹脂を得るために、単官能重合性単量体と多官能重合性単量体とを併用することが好ましい。
例えば外殻樹脂がビニル樹脂である場合は、上記のスチレン系単量体や(メタ)アクリル酸エステル系単量体などの単官能ビニル単量体と共に、多官能重合性単量体として以下の多官能ビニル単量体を使用することが好ましい。
・多官能ビニル単量体
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキシレングリコールジメタクリレート、ヘキシレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの3級以上のアルコールのジメタクリレートおよびトリメタクリレートなど。
これらの中では、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートを用いることが好ましい。
これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような多官能重合性単量体を使用することによって、水系媒体からの濾別時に中空樹脂粒子同士が融着することを抑止することができる。
外殻樹脂を形成するための重合性単量体全体における多官能重合性単量体の割合(共重合比)は、20〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%である。
多官能重合性単量体の共重合比が20質量%以上であることによって、外殻樹脂に柔軟で強靭な高分子物性が得られ、また、高い耐溶剤性も得られ、従って、徐放性担持剤として用いた場合に徐放すべき薬品などの液体を確実に内包することができる。一方、多官能重合性単量体の共重合比が80質量%を超える場合は、多量になるに従って外殻樹脂の靱性、柔軟さが徐々に失われてしまい、徐放すべき薬品などの液体を内包することが困難となるおそれがある。
中空樹脂粒子の中空率は、30〜70体積%であることが好ましく、より好ましくは40〜55体積%である。
中空率が30体積%以上であることにより、徐放性担持剤として用いた場合に徐放すべき薬品などの液体の担持量を大きくすることができ、また、光散乱剤として用いた場合に光散乱を大きなものとすることができる。また、中空率が70体積%以下であることにより、製造時および使用時における外殻(表面壁および隔壁)の損傷や破壊などの弊害が発生することを抑制することができる。
中空樹脂粒子の中空率は、以下の通りに測定されるものである。
すなわち、まず、中空樹脂粒子10.0gを、水性ウレタンエマルジョン「WBR016U」(大成ファインケミカル社製)2.4g(固形分換算)および純水2.0gの混合物に添加し、自転公転型ミキサー「ARE310」(シンキー社製)にて分散させて分散液を得る。この分散液を、幅80mm×長さ120mm×厚み2mmの型枠に充填し、常温で乾燥させて固化させた後、型より取り出すことによって試料板を作製する。この試料板は、中空樹脂粒子がウレタン樹脂よりなるバインダー樹脂中においてほぼ最密充填された構成となる。そして、この試料板の体積および質量を測定することにより、下記式(1)に従って中空樹脂粒子の中空率を算出することができる。
式(1):中空率(体積%)=
{中空樹脂粒子の内部空間の体積/中空樹脂粒子の全体積}×100
ここで、
・中空樹脂粒子の内部空間の体積=試料板における空隙の体積
・中空樹脂粒子の全体積=試料板における空隙の体積+中空樹脂粒子の外殻樹脂の体積
である。また、
・試料板における空隙の体積=
{試料板の体積−(バインダー樹脂部分の体積+中空樹脂粒子の外殻樹脂の体積)}
・バインダー樹脂部分の体積=
{(試料板におけるバインダー樹脂の質量)/(バインダー樹脂の密度)}
・試料板におけるバインダー樹脂の質量=試料板の質量×0.1935
・バインダー樹脂の密度=1.07
・中空樹脂粒子の外殻樹脂の体積=
{(試料板における中空樹脂粒子の質量)/(中空樹脂粒子の外殻樹脂の密度)}
・試料板における中空樹脂粒子の質量=試料板の質量×0.8065
であり、中空樹脂粒子の外殻樹脂の密度は1.05と仮定する。
以上のような中空樹脂粒子は、断熱材や軽量化材、防音材として使用することができ、外殻と内部空間との屈折率差により可視光の散乱が生じることを利用して、光拡散性や隠蔽性による白色性などを付与する機能部材として使用することもできる。
本発明の中空樹脂粒子は、特に、例えば香料などの各種の薬品を担持させて、香料を徐放することによって香気を持続的に得る、徐放性担持剤として好適に使用することができる。また、例えば乳液やクリームなどの化粧品に添加する流動性剤、フィルムや紙の表面層に導入するブロッキング防止剤などとしても好適に使用することができる。
以上のような中空樹脂粒子10によれば、平均粒径が小さく、内部に複数の空間部を有し、さらに、扁平凹所11が多数形成されてなる特定の凹凸構造を有するものであるので、流動性が高く、また、徐放性担持剤としての機能が発揮される。
具体的には、平均粒径が小さく、表面に特定の凹凸構造を有することによる中空樹脂粒子の比表面積の大きさと、内部に有する複数の空間部の存在によって、徐放性担持剤としての機能が良好に発揮されるものと考えられる。
〔中空樹脂粒子の製造方法〕
本発明の中空樹脂粒子の製造方法は、上述の表面に特定の凹凸構造を有すると共に内部に複数の空間部からなる内部空間を有する中空樹脂粒子を製造するための方法であって、疎水性溶媒に上述の重合性単量体および当該重合性単量体に対する重合開始能を有する油溶性重合開始剤を溶解または分散させた油相液を、当該重合性単量体に対する重合開始能を有する水溶性重合開始剤が含有された水系媒体中において分散させて油滴を形成させ、当該油滴に油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤を同時に作用させる方法である。
本発明の中空樹脂粒子の製造方法の一例を具体的に示すと、
(1)疎水性溶媒に外殻樹脂を形成するための重合性単量体と油溶性重合開始剤とを溶解または分散させた油相液を調製する油相液調製工程、
(2)水溶性重合開始剤や界面活性剤を溶解させた水系媒体中に油相液を分散させて油滴を形成する油滴形成工程、
(3)重合性単量体に油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤を同時に作用させて当該重合性単量体を重合することにより中空樹脂粒子の外殻12を形成する重合工程、
(4)水系媒体から中空樹脂粒子を濾別し、当該中空樹脂粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程、
(5)洗浄処理された中空樹脂粒子を乾燥して当該中空樹脂粒子の内部空間13に充填された疎水性溶媒を除去する乾燥工程
から構成される。
(1)油相液調製工程
油相液は、疎水性溶媒中に外殻樹脂を形成するための重合性単量体を溶解または分散させ、さらに油溶性重合開始剤を添加することによって調製される。
〔疎水性溶媒〕
疎水性溶媒としては、水への溶解性が極めて低く、従って水系媒体中において油滴を形成することができ、さらに、沸点が外殻樹脂を形成するための重合性単量体の重合温度よりも高いものであればよく、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、などの炭化水素系化合物;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどの塩素化炭化水素系化合物などを用いることができる。これらは1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
疎水性溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素系化合物を用いることが好ましく、炭素数5〜8の飽和脂肪族炭化水素系化合物を用いることがより好ましい。
また、疎水性溶媒としては、当該疎水性溶媒を容易に除去することができる観点から、水よりも沸点が低いものを用いることが好ましい。
油相液において、外殻樹脂を形成するための疎水性溶媒の含有割合は、重合性単量体100質量部に対して100〜300質量部であることが好ましく、より好ましくは120〜200質量部である。
重合性単量体100質量部に対して疎水性溶媒が100質量部以上であることによって、得られる中空樹脂粒子の表面に特定の凹凸構造を形成することができる。一方、重合性単量体100質量部に対して疎水性溶媒が300質量部を超える場合は、重合中の重合粒子中に疎水性溶媒の多くを内包させるよう留めておくことが早期に困難となって、得られる中空樹脂粒子の中空率が大きく低下することや、得られる中空樹脂粒子が疎水性溶媒の抜けた陥没痕が不規則に形成された不定形粒子となってしまうことなどのおそれがある。
〔油溶性重合開始剤〕
油溶性重合開始剤としては、疎水性溶媒の沸点よりも低い温度で重合開始能を発揮することができるものであればよく、例えば、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを用いることができる。
これらの油溶性重合開始剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
油溶性重合開始剤の使用量は、重合性単量体に対して例えば0.1〜2.0モル%とされ、好ましくは0.3〜0.7モル%である。
(2)油滴形成工程
油滴形成工程は、例えば具体的には、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有し、さらに水溶性重合開始剤が添加された水系媒体中に、外殻樹脂を形成するための重合性単量体を含有する油相液を添加し、機械的エネルギーを加えて油滴を形成させることによって行われる。
油滴の形成は、油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤においてラジカルを発生させない程度の低い温度で行われることが必要とされ、例えば室温で行われることが好ましい。
本発明において、水系媒体とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる水系媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、水と混合して水系媒体としたときに外殻樹脂、当該外殻樹脂を形成するための重合性単量体および油溶性重合開始剤を溶解しないものであれば限定されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。
水系媒体としては、環境適性や安全性に優れていることから、有機溶媒を含有しない水が好ましく用いられる。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2,000質量部であることが好ましい。
水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
〔界面活性剤〕
水系媒体中に界面活性剤を含有させる場合において、界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩;オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどの脂肪酸塩などが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドなどとの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステルなどを挙げることができる。
これらの界面活性剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記界面活性剤の代わりに、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの保護コロイド能を有する物質を用いることができる。
〔水溶性重合開始剤〕
水溶性重合開始剤としては、疎水性溶媒の沸点よりも低い温度で重合開始能を発揮することができるものであればよく、具体的には、過硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などを用いることができる。
水溶性重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス−[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、過硫酸カリウムを用いることが好ましい。
これらの水溶性重合開始剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性重合開始剤の使用量は、重合性単量体に対して例えば0.1〜2.0モル%とされ、好ましくは0.3〜0.7モル%である。
機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、マントンゴーリンなどの強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この油滴形成工程において得られる油滴の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば10nm〜数百μmの範囲にあることが好ましい。
(3)重合工程
この工程は、外殻樹脂を形成するための重合性単量体に油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤を同時に作用させて当該重合性単量体を重合する工程である。
本発明において、「油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤を同時に作用させる」とは、油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤のそれぞれのラジカル発生時間帯に重複の時間帯があることをいう。
この工程においては、反応系を昇温して油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤においてラジカルを発生させる。このとき、重合性単量体に対して油溶性重合開始剤および水溶性重合開始剤を同時に作用させて重合することによって、油滴内部の多点と油滴表面から重合反応が行われることになって表面壁および隔壁が共に形成され、内部に疎水性溶媒が充填された複数の空間部を有する外殻が形成される。
得られた内部空間に疎水性溶媒が充填された中空樹脂粒子の分散液における当該中空樹脂粒子の平均粒子径は、体積基準のメジアン径で例えば10nm〜200μmであることが好ましい。
なお、体積基準のメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(HORIBA社製)を用いて測定したものである。
(4)洗浄工程
この工程においては、内部空間に疎水性溶媒が充填された中空樹脂粒子の分散液を固液分離する固液分離処理を行い、固液分離して形成された、ウェット状態にある中空樹脂粒子を凝集させた集合物より界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理が行われる。固液分離処理の代表的なものとしてはろ過処理が挙げられるが、ろ過処理の具体的な方法としては、例えば遠心分離法やヌッチェなどの使用による減圧ろ過法、フィルタープレスなどを使用するろ過法などを用いることができる。
(5)乾燥工程
この工程においては、洗浄処理された中空樹脂粒子の乾燥処理が行われる。乾燥処理することによって、形成された中空樹脂粒子の内部空間に充填された疎水性溶媒を除去することができる。
乾燥処理は、減圧乾燥であってもよい。
なお、重合工程の後であって洗浄工程の前に、形成された中空樹脂粒子の内部空間に充填された疎水性溶媒を除去して水系媒体に置換する疎水性溶媒除去工程を行ってもよい。
疎水性溶媒の除去は、内部空間に疎水性溶媒が充填された中空樹脂粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、気流下において撹拌することによって行うことができる。また、当該分散液全体を疎水性溶媒の沸点未満まで昇温してもよい。また、減圧状態において分散液全体を撹拌してもよい。
この工程において使用することのできる乾燥機としては、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などの公知の乾燥処理機や、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられる。乾燥処理された中空樹脂粒子の含水量は5質量%以下とされることが好ましく、2質量%以下とされることがより好ましい。
また、乾燥処理された中空樹脂粒子同士が弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合は、当該凝集体を解砕処理することが好ましい。解砕処理装置の具体例としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式解砕処理装置が挙げられる。
以上のような中空樹脂粒子の製造方法によれば、上記の本発明の中空樹脂粒子10を製造することができる。
中空樹脂粒子10の表面に特定の凹凸構造を形成させることができる理由としては、定かではないが、重合工程のおそらく後期に、重合中の重合粒子において樹脂成分が内包された疎水性溶媒を膨潤により包含しきれなくなることによって、当該疎水性溶媒のごく僅かな一部が外部に放出され、外殻を構成する隔壁および表面壁に多数の貫通孔または厚みが極めて薄い箇所を形成しながら、重合粒子の表面に放出の足跡が残ることにより、形成されるものと考えられる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:中空樹脂粒子の製造例1〕
スチレン(St)60質量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NPG)40質量部およびシクロヘキサン(沸点81℃)120質量部に、油溶性重合開始剤「V−65」(和光純薬工業社製)を、重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた。この溶液に、0.5質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液800質量部を加え、これを乳化分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)にて分散することにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、水溶性重合開始剤「VA−57」(和光純薬工業社製)を重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた後、撹拌下、窒素気流を導入し、次いで昇温し、重合温度60℃を維持して8時間加熱撹拌して重合反応を行って樹脂粒子を生成させた。
その後、生成された樹脂粒子を吸引濾過によって濾取し、イオン交換水にて洗浄した後、バットに広げて40℃で乾燥し、白色の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子を、UV硬化樹脂中に包埋して液体窒素に浸漬して割った断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、内部に白く抜けた空隙が多数観察されたことから、内部に複数の空間部を有することが確認された。これを図3のTEM写真に示す。以下、この樹脂粒子を中空樹脂粒子〔1〕とする。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面の観察は、透過型電子顕微鏡「2000FX」(日本電子社製)を用いて行った。具体的には、まず、中空樹脂粒子を光硬化型樹脂に包埋後、ウルトラミクロトームにより設定厚50nmの超薄切片を作製し、当該切片について観察を行った。
中空樹脂粒子〔1〕の体積基準のメジアン径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(HORIBA社製)を用いて測定したところ、1.8μmであった。
得られた中空樹脂粒子〔1〕そのままを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、多数の扁平凹所を有する凹凸構造が形成された外殻を有する粒子が観察された。これを図4のSEM写真に示す。
また、中空樹脂粒子〔1〕の任意の1個につき、粒径、扁平凹所の数および各扁平凹所の周縁径を測定し、平均密度を算出した。表1に示す。
また、中空樹脂粒子〔1〕について、上記と同様の方法によって中空率を測定したところ、40体積%であった。
この中空樹脂粒子の特性を表1に示す。
〔実施例2:中空樹脂粒子の製造例2〕
スチレン70質量部、ジビニルベンゼン(DVB)30質量部およびシクロヘキサン(沸点81℃)200質量部に、油溶性重合開始剤「V−65」(和光純薬工業社製)を、重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた。この溶液に、0.2質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液800質量部を加え、これを乳化分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)にて分散することにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、水溶性重合開始剤「VA−57」(和光純薬工業社製)を重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた後、撹拌下、窒素気流を導入し、次いで昇温し、重合温度60℃を維持して8時間加熱撹拌して重合反応を行って樹脂粒子を生成させた。
その後、生成された樹脂粒子を吸引濾過によって濾取し、イオン交換水にて洗浄した後、バットに広げて40℃で乾燥し、白色の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の断面を実施例1と同様にして観察したところ、内部に白く抜けた空隙が多数観察されたことから、内部に複数の空間部を有することが確認された。以下、この樹脂粒子を中空樹脂粒子〔2〕とする。
中空樹脂粒子〔2〕の体積基準のメジアン径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(HORIBA社製)を用いて測定したところ、2.6μmであった。
また、中空樹脂粒子〔2〕の任意の1個につき、粒径、扁平凹所の数および各扁平凹所の周縁径を測定し、平均密度を算出した。表1に示す。
また、中空樹脂粒子〔2〕について、上記と同様の方法によって中空率を測定したところ、44体積%であった。
この中空樹脂粒子の特性を表1に示す。
〔実施例3:中空樹脂粒子の製造例3〕
スチレン45質量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート55質量部およびシクロヘキサン(沸点81℃)150質量部に、油溶性重合開始剤「V−65」(和光純薬工業社製)を、重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた。この溶液に、1.0質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液800質量部を加え、これを乳化分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)にて分散することにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、水溶性重合開始剤「VA−57」(和光純薬工業社製)を重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた後、撹拌下、窒素気流を導入し、次いで昇温し、重合温度60℃を維持して8時間加熱撹拌して重合反応を行って樹脂粒子を生成させた。
その後、生成された樹脂粒子を吸引濾過によって濾取し、イオン交換水にて洗浄した後、バットに広げて40℃で乾燥し、白色の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の断面を実施例1と同様にして観察したところ、内部に白く抜けた空隙が多数観察されたことから、内部に複数の空間部を有することが確認された。以下、この樹脂粒子を中空樹脂粒子〔3〕とする。
中空樹脂粒子〔3〕の体積基準のメジアン径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(HORIBA社製)を用いて測定したところ、1.9μmであった。
また、中空樹脂粒子〔3〕の任意の1個につき、粒径、扁平凹所の数および各扁平凹所の周縁径を測定し、平均密度を算出した。表1に示す。
また、中空樹脂粒子〔3〕について、上記と同様の方法によって中空率を測定したところ、39体積%であった。
この中空樹脂粒子の特性を表1に示す。
〔比較例1:中空樹脂粒子の製造例4〕
スチレン75質量部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート25質量部およびシクロヘキサン(沸点81℃)75質量部に、油溶性重合開始剤「V−65」(和光純薬工業社製)を、重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた。この溶液に、0.5質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液800質量部を加え、これを乳化分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)にて分散することにより、乳化分散液を調製した。
この乳化分散液を、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、水溶性重合開始剤「VA−57」(和光純薬工業社製)を重合性単量体に対して0.5モル%加えて溶解させた後、撹拌下、窒素気流を導入し、次いで昇温し、重合温度60℃を維持して8時間加熱撹拌して重合反応を行って樹脂粒子を生成させた。
その後、生成された樹脂粒子を吸引濾過によって濾取し、イオン交換水にて洗浄した後、バットに広げて40℃で乾燥し、白色の樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子の断面を実施例1と同様にして観察したところ、内部に白く抜けた空隙が多数観察されたことから、内部に複数の空間部を有することが確認された。以下、この樹脂粒子を中空樹脂粒子〔4〕とする。
中空樹脂粒子〔4〕の体積基準のメジアン径をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(HORIBA社製)を用いて測定したところ、1.8μmであった。
得られた中空樹脂粒子〔4〕そのままを、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、表面が滑らかな外殻を有する粒子が観察された。これを図5のSEM写真に示す。
また、中空樹脂粒子〔4〕について、上記と同様の方法によって中空率を測定したところ、38体積%であった。
この中空樹脂粒子の特性を表1に示す。
(1)徐放性の評価
中空樹脂粒子〔1〕〜〔4〕を、それぞれ、徐放薬品として液体香料「TF−17576」(アイエフエフ日本(株)社製)に含浸させ、転動させながら塗し処理を行い、当該液体香料を内包した担持粒子〔1〕〜〔4〕をそれぞれ作成した。この担持粒子〔1〕〜〔4〕の液体香料の担持量を測定した。結果を表2に示す。
また、得られた担持粒子〔1〕〜〔4〕について、担持処理を行った直後、および、シャーレに敷き詰めて恒温恒湿槽(温度40℃、湿度35%)に7日間放置した後に、それぞれ香りレベルを測定した。結果を表2に示す。
香りレベルの測定は、香り分析計「フラッシュGCノーズ HERACLES II(アルファ モス社製)を用いて行った。
(2)流動性の評価
中空樹脂粒子〔1〕〜〔4〕について、それぞれ、粉体流動性分析装置「パウダーレオメーターFT4」(フリーマンテクノロジー社製)を用いて下記の測定条件で基本流動性エネルギー(BFE)を測定した。結果を表2に示す。
基本流動性エネルギーとは、静置状態にある粉体を流動させるために要するエネルギーを示す値であり、この値が小さいほど、粉体の流動性、滑り性がよくなる。
−測定条件−
測定サイズ:標準25ml(カップ径25mm;ブレード径23.5mm)
ブレード速度:100mm/sec
以上の結果から明らかなように、表面に特定の凹凸構造を有する本発明に係る中空樹脂粒子〔1〕〜〔3〕は、表面が滑らかである比較用の中空樹脂粒子〔4〕に比べて薬品の担持量が多く、また、長期間にわたって安定して薬品を放出することができ、徐放性に優れることが確認された。
また、本発明に係る中空樹脂粒子〔1〕〜〔3〕は、比較用の中空樹脂粒子〔4〕に比べて粉体の流動性に優れることが確認された。
10 中空樹脂粒子
11 凹所
11a 稜線
12 外殻
12a 表面壁
12b 隔壁
13 内部空間

Claims (3)

  1. 疎水性溶媒に重合性単量体および油溶性重合開始剤を溶解または分散させた油相液を、水溶性重合開始剤が含有された水系媒体中において分散させて油滴を形成させ、前記重合性単量体に前記油溶性重合開始剤および前記水溶性重合開始剤を同時に作用させて当該重合性単量体を重合することによって、内部に複数の空間部を有する中空樹脂粒子を製造することを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記中空樹脂粒子は、内部に複数の空間部を有する略球状の中空樹脂粒子であり、
    平均粒径が0.5〜10μmであり、
    球面に沿って伸びる扁平な凹所が多数形成されてなり、
    中空率が30〜70体積%である、請求項1に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記扁平な凹所のうち、中空樹脂粒子のSEM写真画像から測定される周縁長が同一である真円の直径で表される周縁径が0.01〜0.5μmの範囲にあるものの、当該中空樹脂粒子の表面における単位面積当たりに存在する平均個数(平均密度)が、5〜200個/μm である、請求項2に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
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