以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
図1は、光電変換装置の構造例を示す断面模式図である。図1に示す光電変換装置は、面1aと面1aに対向する面1bとを備える透光性基板1と、透光性基板1上に設けられた素子部2と、素子部2を封止する封止部3と、凹部40を有する面4aと面4aに対向する面4bとを備える透光性樹脂部材4と、面1bと面4aとの間に設けられた光学調整層5と、凹部40および光学調整層5に囲まれた空間部を有する導光部6aと、透光性樹脂部材4と光電変換モジュールとの間の固定を補助する支持基板8と、光電変換モジュールの端部を支持する固定具9と、を具備する。なお、少なくとも透光性基板1と、素子部2と、封止部3と、を備える構造体を光電変換モジュールともいう。なお、必ずしも支持基板8と固定具9が設けられなくてもよい。
透光性基板1の線膨張係数は、透光性樹脂部材4の線膨張係数よりも低い。透光性基板1としては、例えば酸化ケイ素化合物を主成分とする一般的なガラス、またはサファイアガラス等の材料を用いることができる。透光性基板1は、リジッド基板、またはフレキシブル基板であってもよい。透光性基板1としては、単一な材料による単一構造の他、例えば樹脂フィルムの片面あるいは両面に薄いガラスを貼り合わせた複合フィルムを用いることができる。
図2は、素子部2の構造例を説明するための断面模式図である。素子部2は、図2に示すように複数の光電変換セル20を有する。複数の光電変換セル20のそれぞれは、離間しつつ、例えば透光性基板1上に短冊状に並置されていてもよい。光電変換モジュールにおける複数の光電変換セル20を有する領域を発電部ともいう。また、2以上の光電変換セル20間の領域を非発電部ともいう。
複数の光電変換セル20は、互いに直列接続で電気的に接続されている。仮に、一つの光電変換セル20の面積を大きくすると発生電荷の取り出し効率が低下しやすい。これに対し、複数の光電変換セル20を直列に電気的に接続することにより取り出し効率の低下を抑制することができ、また、出力電圧を大きくすることもできる。なお、光電変換セル20の数は、図2に示す数に限定されない。
光電変換セル20は、面1aに順に積層された透光性電極21と、光電変換層22と、対向電極23と、を有する。対向電極23は、光電変換層22を挟んで透光性電極21に重畳する。図2では、面1aを下側に図示している。このとき、光電変換層22が透光性電極22の下面に接し、対向電極23が光電変換層22の下面に接しているとみなすことができる。これに対し、面1aを上側に図示する場合には光電変換層22が透光性電極22の上面に接し、対向電極23が光電変換層22の上面に接しているとみなすことができる。
隣り合う2以上の光電変換セル20の間隔D1(非発電部の幅)は、例えば数mm以下、さらには1mm以下であることが好ましい。また、パターニング精度によっては、100μm程度まで狭めることができる。
光電変換セル20に光が入射すると、光電変換層22により電荷分離が生じ、電子とそれと対になる正孔とが生成される。光電変換層22で生成された電子と正孔のうち、例えば電子は透光性電極21で捕集され、正孔は対向電極23で捕集される(逆構成型)。透光性電極21と対向電極23の機能は、反対(順構成型)であってもよい。
透光性電極21としては、例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素を含む酸化錫(FTO)、ガリウムを含む酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムを含む酸化亜鉛(AZO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、インジウム、ガリウム、亜鉛酸化物(IGZO)等の導電性金属酸化物や、導電性金属酸化物層と金、白金、銀、銅、チタン、ジルコニウム、コバルト、ニッケル、インジウム、アルミニウム等の金属やそれら金属を含む合金からなる金属層との積層膜、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)のような導電性高分子等が挙げられる。透光性電極21は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等により上記材料の膜を成膜することにより形成される。
例えばITOの場合、その後熱処理を行うことで導電性や透光性を向上させることができる。これにより、光電変換効率が向上する。このときの熱処理温度は例えば150℃以上であるため、透光性基板1としては、上記酸化ケイ素化合物を主成分とする一般的なガラス、またはサファイアガラス等のガラス基板を用いる。
透光性電極21の厚さは、例えば導電性金属酸化物の場合、10nm以上1000nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上300nm以下である。透光性電極21が10nm未満であると、シート抵抗が高くなる。透光性電極21のシート抵抗は、特に限定されないが、通常1000Ω/□以下であり、500Ω/□以下が好ましく、より好ましくは200Ω/□以下である。透光性電極21が1000nm超であると、光透過率が低下すると共に、可撓性が低くなることで応力により割れ等が生じやすくなる。透光性電極21の厚さは、高い光透過率と低いシート抵抗との両方を得るように調整されることが好ましい。
透光性電極21の幅は5mm以上20mm以下であることが好ましい。透光性電極21の幅が20mm超であると、透光性電極21の電気抵抗が高くなって発電損失の影響が無視できなくなる。透光性電極21の幅が5mm未満であると、光電変換セル20の領域(発電部)に対する光電変換セル20間の領域(非発電部)の比率が高くなり、開口率が低下し、発電効率が低下する。
光電変換層22としては、公知の光電変換層のいずれを用いても良い。例えば、シリコン系材料、CIGS系、CdTe系、GaAs系のような化合物系材料、色素増感系材料、有機薄膜系材料、有機/無機ハイブリッド系材料などを用いることができる。光電変換層22の具体的な構造例については後述する。
対向電極23は、隣接する次段の光電変換セルの透光性電極21に電気的に接続される。対向電極23としては、例えば金属、金属酸化物、導電性高分子等を用いることができる。対向電極23を介して光を入射する場合、対向電極23は透光性を有する。
対向電極23は、例えば白金、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、タングステン、チタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、サマリウム、テルビウム等の金属、それらを含む合金、IZOのような導電性金属酸化物、PEDOT/PSS等の導電性高分子、グラフェン等の炭素材料が用いられる。銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、カーボンナノチューブ等のナノ導電材料を前述の材料に混入させて用いることもできる。対向電極23は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等で上記材料の膜を成膜することにより形成される。
対向電極23の厚さは、例えば1nm以上1000nm以下であることが好ましい。対向電極23の厚さが1nm未満であると、シート抵抗が大きく、発生した電荷を外部に十分に伝達できないおそれがある。対向電極23のシート抵抗は特に制限されないが、例えば500Ω/□以下が好ましく、より好ましくは200Ω/□以下である。対向電極23が1000nm超であると、成膜に時間がかかり、材料温度が上昇して光電変換層22にダメージを与えるおそれがある。
光電変換セル20は、例えば以下に示す方法により形成される。透光性基板1上に各セルの透光性電極21を形成する。複数の透光性電極21上に光電変換層22を全面に塗布して形成する。光電変換層22の一部をスクライブして透光性電極21を露出させる溝を形成する。スクライブ溝を有する光電変換層22上に各セルに対応させて対向電極23を形成する。この際、隣接するセルの対向電極23をスクライブ溝内に充填することによって、隣接するセルの対向電極23とスクライブ溝内に露出させた透光性電極21とを電気的に接続する。
透光性電極21の一部を露出させる他の方法として、スクライブ法のかわりにパターン成膜法を用いることができる。パターン成膜法では、例えば透光性電極21の一部に膜が形成されないように選択的に成膜することにより透光性電極21の一部を露出させる。パターン成膜法にもいくつかの方法があり、例えば遮蔽マスクを用いて真空蒸着を行う方法や、詳細は後述するが、メニスカス塗布法を用いたパターン塗布法等が挙げられる。
図3は、光電変換層22の構造例を説明するための断面模式図である。図3に示す光電変換層22は、光活性層221と、透光性電極21と光活性層221との間に設けられた中間層222と、光活性層221と対向電極23との間に設けられた中間層223と、を有する。なお、光電変換層22は、中間層222および中間層223の少なくとも一つを具備していなくてもよい。
光活性層221は、中間層222を挟んで透光性電極21上に設けられている。光活性層221は、照射された太陽光等の光のエネルギーにより電荷分離を行う機能を有する。光活性層221としては、例えばバルクへテロ接合型の光活性層を用いることができる。バルクヘテロ接合型の光活性層は、光活性層中で混合されたp型半導体とn型半導体とのミクロ層分離構造を有する。光電変換モジュールでは、混合されたp型半導体とn型半導体が光活性層内でナノオーダーのサイズのpn接合を形成し、光が入射することにより接合面で生じる光電荷分離を利用して電流を得ることができる。p型半導体およびn型半導体の少なくとも一方は、有機半導体であってよい。光活性層221の厚さは、例えば10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
p型半導体は、電子供与性の性質を有する材料で構成される。p型半導体としては、例えばポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体等を用いることができる。また、これらの共重合体を使用してもよく、例えば、チオフェン−フルオレン共重合体、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体等が用いてもよい。
p型半導体としては、例えばπ共役を有する導電性高分子であるポリチオフェンおよびその誘導体を用いることができる。ポリチオフェンおよびその誘導体は、優れた立体規則性を確保することができ、溶媒への溶解性が比較的高い。ポリチオフェンおよびその誘導体は、チオフェン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
ポリチオフェンおよびその誘導体の具体例としては、ポリ3−メチルチオフェン、ポリ3−ブチルチオフェン、ポリ3−ヘキシルチオフェン、ポリ3−オクチルチオフェン、ポリ3−デシルチオフェン、ポリ3−ドデシルチオフェン等のポリアルキルチオフェン、ポリ3−フェニルチオフェン、ポリ3−(p−アルキルフェニルチオフェン)等のポリアリールチオフェン、ポリ3−ブチルイソチオナフテン、ポリ3−ヘキシルイソチオナフテン、ポリ3−オクチルイソチオナフテン、ポリ3−デシルイソチオナフテン等のポリアルキルイソチオナフテン、ポリエチレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
また、カルバゾール、ベンゾチアジアゾールおよびチオフェンからなる共重合体であるPCDTBT(ポリ[N−9’−ヘプタ−デカニル−2,7−カルバゾール−アルト−5,5−(4’,7’−ジ−2−チエニル−2’,1’,3’−ベンゾチアジアゾール)])などの誘導体を用いてもよい。上記誘導体を用いることにより、光電変換効率を高めることができる。また、PTB7([ポリ{4,8−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル−lt−alt−3−フルオロ−2−[(2−エチルへキシル)カルボニル]チエノ[3,4−b]チオフェン−4,6−ジイル}])を用いてもよい。
これらの導電性高分子は、溶媒に分散させた分散液を塗布することにより成膜される。従って、塗布法等により、安価な設備を用いて低コストでかつ大面積の光電変換モジュールを製造することができる。
n型半導体は、電子受容性の性質を有する材料で構成される。n型半導体としては、例えばフラーレンおよびその誘導体が好適に使用される。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格を有する誘導体であれば特に限定されない。フラーレン誘導体としては、例えばC60、C70、C76、C78、C84等を基本骨格として構成される誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格における炭素原子が任意の官能基で修飾されていてもよく、この官能基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。フラーレン誘導体には、フラーレン結合ポリマーも含まれる。溶剤に親和性の高い官能基を有し、溶媒への可溶性が高いフラーレン誘導体が好ましい。
フラーレン誘導体における官能基としては、例えば、水素原子、水酸基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、チエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基等が挙げられる。具体的には、C60H36、C70H36等の水素化フラーレン、C60、C70等のオキサイドフラーレン、フラーレン金属錯体等が挙げられる。上述した中でも、フラーレン誘導体として、PCB60M([6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)またはPC70BM([6,6]−フェニルC71酪酸メチルエステル)、60ICBA(ビスインデンC60)を使用することが特に好ましい。
未修飾のフラーレンを使用する場合、C70を使用することが好ましい。フラーレンC70は、光キャリアの発生効率が高く、有機薄膜太陽電池に適している。
光活性層221におけるn型半導体とp型半導体の混合比率(n:p)は、p型半導体がP3HT系の場合、およそ1:1であることが好ましい。またp型半導体がPCDTBT系の場合、およそ4:1であることが好ましい。
有機半導体を塗布するためには、例えば溶媒に分散させて分散液を作製する。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられる。特に、ハロゲン系の芳香族溶剤が好ましい。これらの溶剤を単独、もしくは混合して使用することが可能である。
有機半導体を塗布し成膜する方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、スプレー法、スクリーン印刷、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア・オフセット印刷、ディスペンサ塗布、ノズルコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法等が挙げられ、これらの塗布法を単独で、もしくは組み合わせて用いることができる。
光活性層221の他の成膜法としては、メニスカス塗布法を用いることができる。メニスカス塗布法では、複数の塗布領域を有する塗布ヘッドと塗布対象物の塗布面との間に塗布材料を供給することによりメニスカス柱を形成する。その後塗布ヘッドと塗布対象物とを相対的に移動させることにより、塗布面に塗布材料を塗布する。メニスカス塗布法により、複数の光電変換セル20における光活性層221を一度に形成することができる。
光電変換モジュールを例えば有機/無機ハイブリッド太陽電池等の光電変換装置に適用する場合、光活性層221は例えば有機/無機混成ペロブスカイト化合物を含む。有機/無機混成ペロブスカイト化合物としては、例えばCH3NH4MX3(Mは鉛および錫から選ばれる少なくとも1つの元素、Xはヨウ素、臭素、および塩素から選ばれる少なくとも1つの元素である)で表される組成を有する化合物が挙げられる。
ペロブスカイト化合物を含む光活性層221の形成方法としては、上記したペロブスカイト化合物またはその前駆体を真空蒸着する方法、ペロブスカイト化合物またはその前駆体を溶媒に溶かした溶液を塗布して加熱・乾燥させる方法が挙げられる。ペロブスカイト化合物の前駆体としては、例えばハロゲン化メチルアンモニウムとハロゲン化鉛またはハロゲン化錫との混合物が挙げられる。
中間層222は、透光性電極21上に設けられている。中間層222は、電子輸送層または正孔輸送層の一方としての機能等を有する。塗布法や蒸着法等を用いて透光性電極21上に中間層222を形成することができる。中間層222の厚さは、例えば0.1nm以上50nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層は、正孔を効率的に輸送する機能や、光活性層221の界面近傍で発生した励起子の消滅を防ぐ機能等を有する。正孔輸送層としては、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート))等のポリチオフェン系ポリマー、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミンポリピロール、ポリアニリン、またはそれらの誘導体等の有機導電性ポリマーを使用することができる。また、正孔輸送層として、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化モリブデン等の無機材料を用いてもよい。正孔輸送層は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、メッキ法や塗布法等を用いて形成される。また、前駆体の塗布液を塗布した後、加熱等によって反応させることにより無機材料の膜を形成することができる。
有機導電性ポリマーは、例えば塗布法等を用いて形成される。例えば、メニスカス塗布法により正孔輸送層に適用可能な材料からなる所望の厚さの塗布層を形成した後、ホットプレート等で加熱乾燥することにより正孔輸送層を形成することができる。
電子輸送層は、正孔をブロックして電子のみを効率的に輸送する機能、および光活性層221との界面で生じた励起子(エキシトン)の消滅を防ぐ機能等を有する。電子輸送層としては、例えば金属酸化物や有機材料等を用いることができる。金属酸化物としては、例えばゾルゲル法を用いてチタンアルコキシドを加水分解して得られるアモルファスの酸化チタンや、酸化タンタル、酸化モリブデン等が挙げられる。有機材料としてはポリエチレンイミンやその誘導体等が用いられる。電子輸送層は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、ゾルゲル法、メッキ法や塗布法等を用いて形成される。
中間層223は、光活性層221上に設けられる。中間層223は、光活性層221を挟んで中間層222に重畳する。中間層223は、電子輸送層または正孔輸送層の他方としての機能等を有する。中間層223は、例えば塗布法や蒸着法等を用いて形成される。中間層223の厚さは、例えば0.1nm以上50nm以下であることが好ましい。
封止部3は、複数の光電変換セル20を封止する。封止部3は、例えば対向基板31を有する。また、例えばガラスフリットや熱硬化性、熱可塑性、または光硬化性の樹脂等を用いて封止部3を形成してもよい。
対向基板31としては、水や酸素などのバリア性が高い材料が用いられる。対向基板31としては、例えばガラス基板、金属基板の他、高いガスバリア性を有する樹脂基板等を用いることができる。
対向基板31は、素子部2の輪郭部に設けられるシール材30を介して透光性基板1と貼り合わされている。これにより、外部から光電変換セル20への水や酸素等の侵入を抑制することができる。よって、光電変換セル20の劣化を低減することができる。
シール材30は、光電変換モジュールの輪郭部を囲むように設けられていてもよい。このとき、透光性基板1、対向基板31、およびシール材30に囲まれた領域に窒素などの不活性ガスを充填する、または当該領域を略真空状態にしてもよい(中空封止)。さらに、上記領域に水分や酸素などのガスを吸着する吸着材を封入してもよい。なお、シール材30は、例えば光電変換モジュール全面を覆うように設けられていてもよい。
支持基板8は、光電変換モジュールを支持する機能を有する。支持基板8としては、例えば透光性樹脂部材4に適用可能な樹脂材料が用いられる。支持基板8は透光性を有していてもよい。なお、必ずしも支持基板8が設けられなくてもよい。また、支持基板8と対向基板31との間に空気などの気体層を設けてもよい、または樹脂材料等を充填してもよい。
透光性樹脂部材4は、面1b上に設けられている。面4bから入射された光10は、透光性樹脂部材4内を透過して光電変換セル20に入射する。透光性樹脂部材4の面4aは、面1b側に凹部40を有する。透光性樹脂部材4の屈折率は、例えば1.3以上1.7以下、さらには1.4以上1.6以下であることが好ましい。
凹部40の形状は、例えば面4aの一方向に沿って延在するスリット状であってもよい。このとき、凹部40の延在方向に垂直な方向の断面(図1、2に示す面)は、例えばV字形状、V字形状の直線部を湾曲させた形状、またはU字形状を有していてもよい。V字形状やV字形状の直線部を湾曲させた形状は、入射光を全反射させやすい形状であるため好適である。V字形状の頂角が小さいと全反射条件が緩和されるが、V字状の凹部を形成するときに頂角にラウンド形状ができやすい。ラウンド形状部は全反射条件が崩れるというデメリットが生じやすい。よって、凹部40の頂角は、30度以上70度以下、さらには40度以上60度以下であることが好ましい。凹部40を形成することにより、透光性樹脂部材4の可撓性を高めることができる。凹部40の間隔は、発電部の幅と同様に約5mm以上20mmであることが好ましい。詳細は後述するが、上記間隔は、気泡を自然に逃がすためにおいても好適である。
透光性樹脂部材4は、高い透光性と高い耐衝撃性とを有する材料により構成される。透光性樹脂部材4としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料が用いられる。耐候性の観点では例えばポリカーボネート樹脂が好ましい。透光性樹脂部材4は単一の材料による単層構造の他、複数の材料を用いた複合材料により構成されていてもよい。例えば透光性がより高いアクリル樹脂板の光入射側の面上に、耐衝撃性がより高いポリカーボネート樹脂を積層させてもよい。これらの材料で形成された透光性樹脂部材4は、透光性基板1よりも比重が軽い。
凹部40を有する透光性樹脂部材4の製造方法としては、例えば押出成形や射出成型の他、平面の板に切削加工を施す方法等が挙げられる。例えば、透光性樹脂部材4の代わりにガラスを用いる場合、樹脂に比べて押出成形や射出成型の他、平面の板に切削加工を施す方法で凹部40を形成することは難しい。よって、コストが高くなりやすい。
光学調整層5は、面1bと面4aとを固定するとともに、透光性基板1と透光性樹脂部材4との間の光の屈折を調整する機能を有する。仮に透光性基板1と透光性樹脂部材4との間に空気層がある場合、フレネルの法則により、透光性樹脂部材4と空気との界面で入射光の一部が反射し、さらに空気と透光性基板1との界面でも反射する。よって、光電変換セル20に入射する光量が減少し、光電変換効率が低下してしまう。これに対し、透光性基板1の屈折率や透光性樹脂部材4の屈折率に近い屈折率を有する光学調整層5を設けることにより、フレネル反射が低減され、光電変換セル20に入射する光量が増加し、光電変換効率が向上する。光学調整層5の屈折率は、例えば透光性基板1の屈折率と透光性樹脂部材4の屈折率との中間の値であると、一般的に最もフレネル反射を低減できるため好ましい。
光学調整層5としては、硬度が低い材料が用いられる。光学調整層5は、例えばシリコーン材料、アクリル材料、ウレタン材料等を主成分として含む。またこれらの複合材料を用いてもよい。主成分としてシロキサン化合物を含む材料は、高温環境、低温環境、高湿環境、光照射によって光透過率、機械的特性、耐衝撃性が低下しにくい特性を有するため好適である。シロキサン化合物を主成分とした材料の屈折率は一般に1.4前半であり、透光性樹脂部材4に用いるポリカーボネートやアクリル等の1.5程度や透光性基板1に用いるガラス等の1.5程度に比べてやや差がある。この場合、屈折率を1.5程度に近づけるために、公知の屈折率調整材を加えるとより好ましい。
光学調整層5の硬度を示すパラメータとして例えば針入度(単位:1/10mm)が挙げられる。針入度は、JIS K 6249により規定されたパラメータであり、値が大きいほど硬度が低いことを表す。光電変換装置の耐久性試験の規格の一つとしてJIS C 8938がある。この中の耐熱サイクル試験の試験温度範囲は−40〜90℃であり、この温度範囲で反りや剥がれが生じないようにするために、光学調整層5の針入度は、例えば50以上であることが好ましい。一方、針入度が200超であると、例えば流動しやすくなり、透光性基板1と透光性樹脂部材4とを機械的に貼り合わせて固定することが困難になる。この針入度の好適範囲は、例えば透光性樹脂部材4としてポリカーボネート樹脂を用い、透光性基板1にガラスを用い、貼り合わせ時の温度が25℃の場合の好適範囲である。これらの条件が異なる場合は、その条件によるが、針入度の範囲が65以上であればより広い条件で反りや剥がれの問題を改善させることができる。
針入度の調整方法としては、例えば材料の架橋密度を調整する方法や、フィラー材を添加する方法などが挙げられる。これらを任意に組み合わせることにより、光学調整層5の針入度が上記数値範囲内に制御される。
架橋密度を調整する方法では、例えば2液を混合させて硬化することによって固形材料を得る方法の場合、2液の混合比率を変えることによって架橋密度を調整することができる。その他、架橋前の主成分の架橋部位の密度を調整する方法や、架橋剤の架橋部位の密度を調整する方法、あるいは架橋剤の添加量を調整する方法などが挙げられる。架橋密度を高くすることによって硬度は高くなり針入度の値は小さくなる。
フィラー材を添加する方法の場合、主成分よりも硬度の硬い材料を添加することによって硬度を高めることができ、主成分よりも硬度の低い材料を添加することによって硬度を低下させることができる。フィラー材は固体粉末や液体やゲル材料等やこれらを組み合わせて用いることができる。フィラー材の形状は球状、針状、板状、無定形状など任意であり、大きさは10nm以上から1mm以下である。固体粉末としてはアルミナや炭酸カルシウム等の金属酸化物、鉄やアルミニウムなどの金属の他、樹脂、ガラス、黒鉛など任意の材料が用いられる。光学調整層5の透光性が失われないよう、フィラー材の材質や大きさ、添加量を適宜調整する。
光学調整層5の厚さDに対する透光性基板1の対角線長さLの比が300以下(L/D≦300)であり、且つDが5mm以下であってもよい。詳細は後述するが、光電変換装置が高温環境や低温環境に晒されたときに生じる光学調整層5のひずみ量を小さくするためには、光学調整層5を厚くする方法と、透光性樹脂部材4の長さや光電変換モジュールの長さを短くする方法がある。光学調整層5が厚すぎると光吸収の影響が無視できなくなって光電変換効率が低下しやすい。このため光学調整層5の厚さは、5mm以下であることが好ましい。
導光部6aは、入射される光を所定の方向に屈折または反射させる機能を有する。導光部6aは、例えば光電変換セル20の間の領域に重畳するように設けられていてもよい。導光部6aの空間部に入射される光10は、屈折または反射して例えば光電変換セル20に入射する。透光性樹脂部材4の材料と空間部との界面の方向と光の入射方向に差があれば任意の形状にて導光効果が得られる。特に空間部がいわゆる全反射条件を満たす界面を形成する形状であると導光効果が高い。
空間部は、透光性樹脂部材4の屈折率よりも低い屈折率を有する材料で満たされていることが好ましい。これにより、全反射条件が緩和され、より多くの光を導光させることができる。屈折率が低い材料としては気体が好適で、例えば空気が好ましい。
全反射現象は、屈折率の差がある界面の付近において、その屈折率の差がある領域が数百ナノメートル程度あればよい。したがって、空間部の全部を屈折率が低い材料で満たす必要はない。例えば、固体の粉体やビーズで空間部を満たしてもよい。固体の粉体を満たしても、透光性樹脂部材4と粉体の間にはほとんどの領域で数百ナノメートルの空気層が介在するため、全反射する光の量はほとんど変化しない。粉体で満たすことにより、透光性樹脂部材4の機械的強度を高めることができる。
空間部の幅は、光電変換セル20間の幅と同等にすることが好ましい。光電変換セル20間の幅より狭いと導光効果が得られずに光電変換セル20の間の領域(非発電部)に光が入射しやすい。光電変換セル20間の幅より広くすると、空間部が光電変換セル20の一部に重畳するため、光電変換セル20(発電部)に光が入射せず、発電効率が低下する。複数の空間部の間隔D2は、例えば5mm以上20mm以下であることが好ましい。空間部の断面(図1、図2に示す面)は、例えばV字形状、V字形状の直線部を湾曲させた形状、またはU字形状を有していてもよい。
本実施形態の光電変換装置は、上記構成を備えることにより、複数の特性を同時に向上させることができる。向上する特性について以下に説明する。
本実施形態の光電変換装置は、光学調整層5と、導光部6aとして機能する空間部を有する導光部と、具備する。空間部に入射される光は、屈折または反射して光電変換セル20に入射する。透光性樹脂部材4の屈折率と空間部の屈折率との間で差が生じ、且つ透光性樹脂部材4と空間部との界面の方向と光の入射方向に差が生じると、フレネルの法則によって光が屈折する。特に、いわゆる全反射条件を満たすことにより大部分の光を光電変換セル20に入射することができる。よって、例えば光電変換モジュールにおける複数の光電変換セル20の間の領域に光が入射する場合であっても光電変換セル20に光を集めることができる。よって、光電変換装置の開口率を100%に近づけることができ、光電変換効率を高めることができる。
本実施形態の光電変換装置では、透光性基板1には線膨張係数が相対的に低い材料が用いられる。一方、透光性樹脂部材4は線膨張係数が相対的に高い材料が用いられる。線膨張係数が異なる部材を従来のように接着剤や粘着剤を用いて貼り合わせて固定した場合、高温や低温に晒されたときに反りや剥がれ等の問題が発生する。
これに対し、光学調整層5としては、硬度が低い材料が用いられる。よって、透光性基板1と透光性樹脂部材4の熱膨張率が異なる場合であって、温度変化により膨張しても反りや剥がれが抑制される。従って光電変換装置の信頼性を高めることができる。
図4および図5は、温度変化による光学変換装置の変化を説明するための断面模式図である。図4および図5では、透光性基板1と、透光性樹脂部材4と、光学調整層5と、導光部6aが図示されている。透光性基板1は、ガラス(線膨張係数3.17×10−6[1/℃])である。透光性樹脂部材4は、ポリカーボネート樹脂(線膨張係数6.5×10−5[1/℃])である。透光性樹脂部材4の線膨張係数は、透光性基板1の線膨張係数よりも高いとする。
温度変化前(例えば25℃)では、図4に示すように透光性基板1および透光性樹脂部材4の幅は300mmである。これに対し、温度変化後(例えば90℃)では、例えば透光性基板1の中心部を基準とする熱膨張により透光性基板1の幅が300.06mmであるのに対し、透光性樹脂部材4の幅が透光性基板1の幅よりも広くなり301.27mmである。よって、光学調整層5の断面は、透光性樹脂部材4に近づくにつれて広がる放射状になる。すなわちひずみが生じている。光学調整層5のはみ出し幅は0.60mmである。透光性樹脂部材4や透光性基板1が正方形の場合、角部での光学調整層5のはみ出し幅はさらに広く、0.85mmである。上記変化を考慮すると光学調整層5の厚さDは、例えば1.4mm程度以上であることが好ましく、すなわちはみ出し幅の1.6倍程度以上が好ましい。光学調整層5として従来の接着剤や粘着剤のような硬度が高い材料を用いた場合、ひずみが生じると比較的大きな力が発生するため、光電変換モジュールが反ったり、光学調整層5が剥がれてしまう。これに対し、本実施形態の光電変換装置では、光学調整層5に硬度が低い材料を用いることにより、ひずみに伴って発生する力が小さいため、温度変化による反りや剥がれの発生を抑制することができる。
光学調整層5に硬度が低い材料を用いることで別の効果も発現する。透光性樹脂部材4に用いられる材料では、屋外の環境に暴露され、光照射を受けたり、温度の変化を受けることでガスが発生する。このため、光学調整層5の材料として、従来のように接着剤や粘着剤を用いた場合、透光性樹脂部材4から発生するガスによって、界面に気泡が発生する。気泡が発生した部分は、前述したように入射光のフレネル反射量が増えて光電変換セル20に入射する光量が減って光電変換効率が低下する。
また、光学調整層5と透光性樹脂部材4とを大気中で貼り合せると、光学調整層5と透光性樹脂部材4との間に気泡が生じやすい。よって、真空下で光学調整層5と透光性樹脂部材4とを貼り合わせなければならず、別途真空下にするための装置が必要である。
これに対し、本実施形態の光電変換装置では、光学調整層5と透光性樹脂部材4との間の空間部に気泡を逃がすことができる。この理由は、透光性樹脂部材4と光学調整層5との粘着力が適度に弱いために、発生した気泡が界面に沿って移動しやすくなるため、または発生した気泡の圧力と光学調整層5と透光性樹脂部材4との間の空間部の圧力との差によって、気泡中のガスが少しずつ界面に沿って抜けていくためであると考えられる。また、大気中で貼り合わせて一旦気泡が残ったとしても同様に自然に抜けていく。よって、真空中での光学調整層5と透光性樹脂部材4との貼り合わせが不要である。従って、製造工程を簡略にすることができる。また、光電変換セル20の封止に中空封止を用いた場合、光電変換モジュールを真空中に置くことで、基板の剥がれが生じる場合がある。これに対し、本実施形態では大気中で貼りあわせることができるため、この問題が発生しない。
本実施形態の光電変換装置では、光学調整層5に硬度が低い材料を用いることにより、透光性樹脂部材4との粘着力や光電変換モジュールとの粘着力が適度に弱まり光学調整層5が剥がしやすくなるため、廃棄時やリサイクル時のコストを低減し、ライフサイクルアセスメント性を高めることができる。結晶シリコン太陽電池に用いる封止材、特に熱硬化性封止材や、ガラス基板の太陽電池と保護材の貼り合わせに用いる接着剤や粘着剤は剥がしにくい。このため、廃棄やリサイクルの際に分解・分別に高いコストを要し、ライフサイクルアセスメント性が低い。
透光性樹脂部材4に凹部40を形成することにより、透光性樹脂部材4と光学調整層5が粘着されていない部分が複数生じるため、さらに光学調整層5が剥がしやすくなる。剥離の際に剥離液を用いる場合、透光性樹脂部材4に凹部40が形成されていることによって、剥離液を狭い間隔で形成された凹部40に注入することができるため、剥離液を早く効率よく浸透させることができるため、廃棄時やリサイクル時のコストを低減することができる。
透光性基板1としてガラス基板を用いることにより、ガスバリア性を高めることができる。また、透光性基板1にガラス基板を用いること透光性電極21に対して十分な熱処理を行い導電性や透光性等を高めることができる。よって、光電変換効率が向上する。透光性基板1の厚さは、その他の構成部材を支持するために十分な強度を有するのであれば特に限定されない。
光電変換層22として、有機薄膜系材料や有機/無機ハイブリッド材料を用いることにより、製造時に高温処理を必要とするプロセスを少なくすることができるため、製造コストを低減することができる。このとき、透光性基板1や対向基板31に上記ガスバリア性が高い材料を用いることによって、水分や酸素などの暴露による光電変換層22の劣化を抑制することができる。
透光性樹脂部材4を設けることにより、光電変換モジュールにかかる機械的な負荷の耐性を高めつつ、光電変換効率を向上させることができる。機械的な負荷とは例えば降雹である。透光性樹脂部材4により衝撃を低減することにより光電変換モジュールの破損を防止することができる。結晶シリコン太陽電池では光電変換モジュールを保護する部材として3mm以上の厚いガラス板が用いられているが、本実施形態の光電変換装置では、樹脂を用いることにより軽量化され、また設置自由度を向上させることができる。また、樹脂を用いることにより、例えば2mm以下の薄いガラス板などを用いた場合に比べて降雹などによる耐衝撃性が高くなる。
本実施形態の光電変換装置は、図1に示す構造に限定されない。図6は、光電変換装置の他の構造例を示す断面模式図である。図6に示す光電変換装置は、図1に示す光電変換装置の構成に加え、接着層7をさらに具備する。
接着層7は、光学調整層5を貫通するように面1bと面4aとを接着する機能を有する。接着層7は、例えば透光性基板1の中心および透光性樹脂部材4の中心に重畳するように設けられていることが好ましい。接着層7としては、任意の材料を用いることができ、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの有機系接着剤や、水ガラスやセメント等の無機系接着剤が用いられる。
接着層7は、例えば以下の方法により形成される。面1b上に光学調整層5を形成する。次に、光学調整層5における光電変換モジュールの中心となる位置に面1bの一部が露出するように開口部を形成する。開口部は例えばパンチング等により形成されてもよい。光学調整層5の開口部に接着剤を充填した後に透光性樹脂部材4を貼り付ける。その後接着層7を硬化させることにより接着層7を形成する。
仮に、接着層7を具備しない場合において、光学調整層5の製造時の粘着強度のむらや光学調整層5の貼り付け工程のむらなどの影響により、透光性樹脂部材4と透光性基板1が例えば右端部分で固定された場合、例えば90℃の環境下における熱膨張により生じる透光性基板1と透光性樹脂部材4との寸法差は全て左端部分に集中する。このため、光学調整層5に生じるひずみが大きく、反りや剥がれが生じやすい。また、導光部6aの位置と光電変換セル20間の領域との位置ずれが大きくなるため、温度が変化した場合に導光効果が小さくなる場合がある。
これに対し、接着層7を設けることにより、熱膨張により生じる透光性基板1と透光性樹脂部材4との寸法差が光電変換装置の左右に均等に割り振られる。よって、光学調整層5に生じるひずみが比較的小さく、反りや剥がれが生じにくい。また、導光部6aの位置と光電変換セル20間の領域との位置も左右均等にずれるため、温度変化による導光効果の低下が抑制され、発電量が向上する。
図7は、光電変換装置の他の構造例を示す断面模式図である。図7に示す光電変換装置は、図2に示す光電変換装置の導光部6aの代わりに導光部6bを具備する。
導光部6bは、入射される光を所定の方向に屈折または反射させる機能を有する。導光部6bは、透光性基板1の面1bに接触した光反射部材を有する。光反射部材は、透光性基板1の面1bに接着層を介して接着されているとさらに好ましい。光反射部材の断面は、例えば凹部40と同じ形状を有していてもよい。光反射部材としては、表面が光反射性を有していれば良く、光反射性を有する材料の単一構造の他、任意の材料の表面に光反射性を有する材料を含む複合構造でもよい。光反射性は金属反射の他、誘電多層膜による光反射性などを用いることができる。例えばアルミニウム等の単一構造や、任意の樹脂の芯材の表面に銀の薄膜を蒸着した複合構造等が用いられる。
光反射部材は、例えば光電変換モジュールの複数の光電変換セル20の間の領域に重畳するように設けられていてもよい。複数の導光部6bの間隔は、導光部6aと同じく例えば5mm以上20mm以下であることが好ましい。導光部6bの光反射部材に入射される光10の少なくとも一部は、反射して例えば光電変換セル20に入射する。
光学調整層5の厚さは、光反射部材の厚さ以上であることが好ましい。光学調整層5が光反射部材よりも薄い場合、光反射部材が透光性樹脂部材4に接触して温度変化により剥がれが生じやすくなる。さらに、光学調整層5の厚さは、光反射部材の高さの2倍以上であることが好ましい。2倍未満であると光反射部材の出っ張りに対して光学調整層5の変形が不足し、透光性樹脂部材4と光学調整層5との界面や光学調整層5と光反射部材との界面に空隙が生じる場合がある。
導光部6bは、透光性基板1に接触しており、すなわち導光部6aよりも透光性基板1に近い位置に設けられている。このため、熱膨張による位置ずれが生じにくい。よって、温度変化による導光効果の低下を抑制でき、光電変換効率の低下の抑制につながる。光反射部材を透光性基板1の面1bに接着層を介して接着させた場合は熱膨張による位置ずれが全く生じなくなる。よって、温度変化による導光効果の低下をほほ解決できる。
図8に示す光電変換装置は、図2に示す光電変換装置の導光部6aと図7に示す光電変換装置の導光部6bとを具備する。導光部6aおよび導光部6bの説明については、上記説明を適宜援用することができる。導光部6aおよび導光部6bの両方を設けることは、光電変換効率の低下を抑制することに好適である。
図9に示す光電変換装置は、単数の透光性樹脂部材4に複数の光学調整層5と複数の光電変換モジュール100を具備する。複数の光電変換モジュール100を具備する光電変換装置を光電変換アレイともいう。光電変換モジュール100の構造は、図2、図6ないし図8のいずれかの構造であってもよい。光電変換モジュール100の構造の説明については、上記光電変換モジュールの説明を適宜援用することができる。
複数の光電変換モジュールは、例えば配線等で直列接続で電気的に接続されていてもよい。これにより、市販の一般的なパワーコンディショナの適正入力電圧に合致する高電圧を得ることができる。また、並列接続で電気的に接続することにより大電流を得ることができる。メートルサイズの大きな光電変換装置を単数の透光性樹脂部材4と単数の光電変換モジュールで構成した場合、前述の通り、温度変化によって光電変換モジュールが反る、光学調整層5が剥がれやすくなるといった問題が発生する。一方、図9に示すように、光電変換モジュール毎に透光性基板1を比較的小さなサイズに分離することにより、反りや剥がれといった問題が改善され、かつ実用性の高い大きさと出力電圧を備える光電変換アレイを提供することができる。
図9において、光学調整層5は、光電変換モジュール100毎に分離されていなくても構わないが、分離されているとより好ましい。光学調整層5が光電変換モジュール100毎に分離されていない場合、光学調整層5における2つの光電変換モジュール100の間の領域において大きなひずみが生じやすい。よって、透光性樹脂部材4が剥がれやすくなる虞れがある。これに対し、光学調整層5が光電変換モジュール100毎に分離されている場合、光学調整層5の端部が自由端41であるため、ひずみが生じにくい。よって、透光性樹脂部材4の剥がれを抑制することができる。よって、光電変換アレイの信頼性を高めることができる。
光電変換モジュール毎に透光性基板1を分離することにより、2つの光電変換モジュール100の間の領域において光電変換装置を折り曲げることができ、例えばカーポートの屋根のような曲面上に光電変換装置を設置することができる。さらに、光電変換モジュール100間に凹部40を形成することにより折り曲げやすくすることができる。
光電変換モジュール100は1枚ずつ製造しても良いし、大きな1枚の透光性基板1に複数の光電変換モジュールを面付けし、後で透光性基板1を複数に切り分けることで複数の光電変換モジュールを製造しても良い。後者の場合、例えば刃物等を用いて切断を行うメカニカル法や、レーザ等を用いて切断を行う加熱法等により複数の光電変換モジュール100に切断する際に光学調整層5も切断することが好ましい。なお、封止部3を形成する前に切断し、その後に封止部3を形成してもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本実施例では、光電変換装置の一例として有機薄膜太陽電池を作製した。それぞれの構成および評価結果について表1に示す。
(実施例1)
厚み0.5mm、外寸100mm角のガラス基板上に、透光性電極として厚さが150nmのITO膜を形成した。ITO膜の形状は短冊状であり、短冊の寸法は長辺が50mmで短辺が12.6mmである。短冊はガラス基板上に4つ形成し、長辺が隣り合うように4つ並べて形成した。短冊のピッチは13mmである。ITO膜を成膜後、250℃で10分間加熱処理を行った。
ITO電極側の第1中間層としてエトキシ化ポリエチレンイミン(80%エトキシレイテッド(PEIE))を約1nmの厚さで成膜した。次いで、モノクロロベンゼン1mLに8mgのPTB7([ポリ{4,8−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b']ジチオフェン−2,6−ジイル−lt−alt−3−フルオロ−2−[(2−エチルへキシル)カルボニル]チエノ[3,4−b]チオフェン−4,6−ジイル}])と12mgのPC70BM([6,6]フェニルC71ブチル酸メチルエスター)とを溶解させた塗布液(有機活性層の塗布液)を塗布した。有機活性層は短冊状のITO膜の形状に合わせて複数の短冊状にパターン塗布した。このとき、直列接続するための領域として、短冊状のITO膜の片側の端部の一部が露出するようにパターン塗布した。塗布条件は以下の通りである。第1中間層を成膜したガラス基板上に0.88mmのギャップで断面が円形の塗布ヘッドを配置した。ガラス基板と塗布ヘッドとの間に、シリンジポンプを用いて塗布液を供給した。ガラス基板を10mm/sの速度で移動させて塗布液を塗布した。塗布膜を60℃で30分間乾燥させて有機活性層を形成した。膜厚は約100nmである。
次に、有機活性層上に対向電極側の第2中間層として三酸化モリブデン膜を約5nmの厚さで成膜し、さらに対向電極として銀膜を約150nmの厚さで成膜した。引き続き封止を行った。厚みが0.5mmの封止ガラスの輪郭部にシール剤を塗布し、光電変換層が形成されたガラス基板を貼り合わせ、UV照射することでシール剤を硬化させた。
このようにして形成した有機薄膜太陽電池は、光電変換セルの面積が約50mm角で、直列数が4で、光電変換セル間の領域(光電変換セルの間の領域)の本数が3本で、1つの光電変換セルの幅が12mmで、光電変換セル間の領域1本の幅が1mmである。よって、いわゆる開口率は約94%である。
AM1.5G、1000W/m2のソーラーシミュレータを用いて作製した有機薄膜太陽電池の光電変換効率を測定したところ、7.2%であった。この値は後述する比較例に比べて高い値であった。後述する比較例は透光性基板として耐熱性が低いPEN樹脂を用いているため、ITO膜の加熱処理が不十分でITO膜のシート抵抗が高いが、本実施例では透光性基板として耐熱性が高いガラスを用いているため、ITO膜のシート抵抗を低くでき、高い光電変換効率が得られた。
次に、透光性樹脂部材を貼り付けた。材料には厚み2mmのポリカーボネートを用いた。凹部は断面形状をV字状とした。切削によりV字状の凹部を形成し、V字状の凹部の幅は光電変換セル間の領域の幅と同じ1mmとし、3本のV字状の凹部のピッチも光電変換セル間の領域と同じ13mmとした。V字状の凹部の頂角は50度とした。
光学調整層には針入度が55で厚みが約0.4mmのシリコーンシートを用いた。シリコーンシートは以下のようにして作製した。2成分シリコーンポッティングゲル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社のTSE3070)のA液とB液を所定の割合で混合、脱法処理を行い、離型剤を塗布した金型に注入した。その後50℃で1時間加熱して硬化させ、金型から外した。最後に離形剤を除去するためにエタノールで拭取ってシート状の光学調整層を得た。A液とB液の混合比を変えることで硬度を調整した。A液とB液の比率を100:100にすると針入度は約65となり、A液の比率を高くするほど柔らかくなり、例えばA液とB液の比率を100:80にすると針入度は約180になる。なお、針入度が220のサンプルは金型から外すときに千切れてしまったり、外した小片に圧力をかけて変形させると、数日経っても元の形状に戻らない状態となり、光学調整層として使えないほど柔らかくなってしまった。なお、針入度測定の際はシート状サンプルではなく、針入度測定用のサンプルを別途作製した。
大気圧中で光学調整層を有機薄膜太陽電池に貼り付けた。光学調整層をローラーに巻き付け、ローラーを押しあてながら貼り付けることで、大気中であっても気泡が発生することなく貼り付けることができた。次いで、透光性樹脂部材を貼り付けた。貼り合わせた直後は透光性樹脂部材と光学調整層の間に気泡が残ったが、透光性樹脂部材の上にローラーを押し当てて転がすことでほとんどの気泡が抜けた。さらに半日程度放置することで全ての気泡が自然に抜けた。
このようにして作製した有機薄膜太陽電池の光電変換効率を測定したところ、7.5%であった。前述したように、導光効果によって7.2%から7.5%に向上した。耐湿性試験(JIS C 8938)を行った後、光電変換効率を測定したところ、5.1%であった。試験前の効率7.6%に対する低下率は33%であり、後述する比較例に比べて耐久性に優れるものであった。後述する比較例は透光性基板としてPEN樹脂を用いたものであり、本実施例ではガスバリア性が高いガラス基板を用いたため、水分や酸素による光電変換層の劣化を抑制することができた。また、新たな気泡の発生は観察されなかった。
温度サイクル試験(JIS C 8938)を行った。温度サイクル試験では−40〜90℃の範囲で温度を変化させた。試験後にサンプルの反りや剥がれは発生しなかった。また、新たな気泡の発生は観察されなかった。
光照射試験(JIS C 8938)を行った。新たな気泡の発生は観察されなかった。降雹などによる耐衝撃性を評価するために、降雹試験(JIS C 8938)の簡易試験(JIS R 3212)を行ったところ、サンプルに割れは発生しなかった。
本実施例では透光性樹脂部材としてポリカーボネート樹脂を用いたため、後述する厚ガラスを用いた比較例に比べて軽量であった。透光性樹脂部材は、透光性樹脂部材の凹部の長辺方向と直角の方向に剥がすことで手作業で容易に剥がすことができた。剥離の前に透光性樹脂部材の凹部にドデカンを注入したところ、さらに剥がしやすくすることができた。
(比較例1)
光学調整層の硬度を高くし、針入度を45とした点以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。温度サイクル試験後、反りと、透光性樹脂部材と光学調整層の貼り合わせ面の端部の一部に剥がれが見られた。さらに光照射試験後、新しく気泡が発生していた。透光性樹脂部材を剥がそうとしたところ、光学調整層が引き裂かれ、一部透光性樹脂部材に残ってしまった。
(実施例2)
透光性樹脂部材の略中心部の一部と透光性基板の略中心部の一部を接着層を介して固定したこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。具体的には以下のようにして作製した。作製した光学調整層の略中心部にパンチング法を用いて直径5mmの貫通穴を空け、これを有機薄膜太陽電池に貼り付けた。貫通穴部分に2液混合常温硬化タイプのエポキシ接着剤を注入したのち、透光性樹脂部材を貼り付け、24時間放置してエポキシ接着剤を硬化させた。温度サイクル試験を行ったところ、300サイクルまで試験したのちでも反りや剥がれが発生しなかった。実施例1ではJIS C 8938の規格である200サイクルはクリアしたが、300サイクル後の観察では反りが観察された。
(実施例3)
光学調整層の厚みを約0.5mmに厚くしたこと以外は実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。温度サイクル試験を行ったところ、300サイクルまで試験したのちでも反りや剥がれが発生しなかった。実施例1ではJIS C 8938の規格である200サイクルはクリアしたが、300サイクル後の観察では反りが観察された。前述したように、光学調整層を厚くしたことにより、温度変化時に生じる光学調整層のひずみが小さくなり、ひずみによって発生する力が弱くなったものと解釈される。なお、透光性基板の対角線長さをL、光学調整層の厚みをDとすると、ひずみの大きさを表す指標となるL/Dの値は実施例1では354であるのに対し、実施例3では283であり、およそ300を下回ると特に反りや剥がれに対する耐性が向上するといえる。
(比較例2)
光電変換モジュールの保護材として透光性樹脂部材の代わりに同じ厚さのガラス板を用いたことと、光学調整層として針入度が45の材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池モジュールを作製・評価した。温度サイクル試験を行ったところ、少なくとも200サイクルはクリアすることを確認した。光学調整層に硬度が高い材料を用いているが、透光性樹脂部材の代わりにガラス板を用い、透光性基板にガラスを用いており、線膨張係数が同じであるため、反りや剥がれが発生しなかった。一方、降雹試験の簡易試験を行ったところ、ガラス板と有機薄膜太陽電池モジュールの両方が割れた。また、樹脂板を用いた実施例1に比べて重かった。
(比較例3)
透光性樹脂部材にV字状の凹部加工を施さないこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。透光性樹脂部材を貼り合わせる前の光電変換効率は実施例1と同じ7.2%であったが、透光性樹脂部材を貼り合わせた後の光電変換効率は7.1%であり、実施例1の7.5%より低い値であった。V字状の凹部加工を施していないため導光効果は得られなかった。また、透光性樹脂部材の光吸収や光学調整層の光吸収やフレネル反射によって低下したと考えられる。
(比較例4)
透光性基板と対向基板にガラスの替わりにPEN樹脂を用いたことと、光学調整層として針入度が45の材料を用い、透光性電極ITOの加熱処理温度を250℃から150℃に変えたこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。透光性樹脂部材を貼り合わせる前の光電変換効率は6.3%であり、実施例1の7.2%より低かった。直列抵抗の値の増加が主要因であったことから、ITOのシート抵抗が高いことが原因であると推測される。透光性樹脂部材を貼り合わせた後の光電変換効率は6.5%に向上した。導光効果によって実施例1と同等の向上率を示した。耐湿性試験を行った後の光電変換効率は1.5%であった。低下率は77%であった。このことから実施例1に比べて大きく耐久性が劣ることがわかる。透光性基板と対向基板にガスバリア性が低いPEN樹脂を用いたことが原因であると考えられる。温度サイクル試験を行ったところ、少なくとも200サイクルはクリアすることを確認した。光学調整層に硬度が高い材料を用いているが、透光性樹脂部材と透光性基板に樹脂を用いており、線膨張係数に大きな差がないため、反りや剥がれが発生しなかった。
(実施例4)
これまでの実施例と比較例は、1枚の透光性樹脂部材と光学調整層に1枚の有機薄膜太陽電池を貼り合わせたモジュール形態での結果であった。本実施例は1枚の大きな透光性樹脂部材と光学調整層に2枚の有機薄膜太陽電池モジュールを並べて配置して貼り合わせたアレイ形態での結果である。約220mm×100mmの透光性樹脂部材と光学調整層に、100mm角の有機薄膜太陽電池モジュールを2枚並べて配置して貼り合わせた。
2枚の有機薄膜太陽電池モジュールの間に約20mmの間隙が空いており、この領域は透光性樹脂部材と光学調整層により積層構造を構成している。2枚の有機薄膜太陽電池モジュールのうち、1枚の正極と残りの1枚の負極とを導電テープで接続することにより、8直列の大面積の太陽電池アレイとした。これ以外は実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。このように作製した有機薄膜太陽電池アレイは2枚の有機薄膜太陽電池が分断されている約20mmの間隙の部分で曲げることができた。またこれ以外の評価結果は全て実施例1と同様に良好な結果であった。
(実施例5)
透光性樹脂部材のV字状の凹部を形成せず、代わりに光反射部材を設けたことと光学調整層を厚くしたこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。光反射部材の断面形状は実施例1のV字状の凹部と同等に、幅が光電変換セル間の領域の幅と同じ1mmで、頂角は50度である。このような断面が三角形のポリエチレンの棒に銀を蒸着することで光反射部材を作製した。これを有機薄膜太陽電池の光電変換セル間の領域の位置に一致するように2液混合常温硬化タイプのエポキシ接着剤で固定した。その後、光反射部材による凸部がある有機薄膜太陽電池と平面の透光性樹脂部材を光学調整層で貼り合わせるが、高さが約1.07mmの凸部を吸収するために、これより約2倍の厚さの約2mmの光学調整層を用いた。
有機薄膜太陽電池と光学調整層の間には気泡は残らなかったが、光学調整層と透光性樹脂部材の間には気泡が残った。透光性樹脂部材にV字状の凹部を形成していないためである。光反射部材、光学調整層および透光性樹脂部材を取り付ける前の光電変換効率と、取り付けた後の光電変換効率はともに実施例1とほぼ同等であり、実施例1と同等の導光効果が得られた。貼り合わせ直後の気泡が自然に消えないことと、光照射試験によって新しく気泡が発生したこと以外は全て実施例1と同等の良好な評価結果が得られた。この有機薄膜太陽電池の光反射部材と光電変換セル間の領域のずれを顕微鏡で確認したところ、90℃に加熱した状態でも全くずれがないことが確認された。一方、実施例1の有機薄膜太陽電池ではV字状の凹部と光電変換セル間の領域にややずれが発生する。このことから屋外で使用することで高温や低温に晒された状態でも本実施例では導光効果の程度に変化がなく、発電量が高くなることが推測される。
(実施例6)
実施例4と同様に、1枚の大きな透光性樹脂部材と光学調整層に2枚の有機薄膜太陽電池モジュールを並べて配置して貼り合わせたアレイ形態としたこと以外は実施例5と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製・評価した。このように作製した有機薄膜太陽電池アレイは2枚の有機薄膜太陽電池モジュールが分断されている間隙の部分で曲げることができた。またこれ以外の評価結果は全て実施例5と同様に良好な結果であった。
(実施例7)
光反射部材を設けたことと光学調整層を厚くしたこと以外は、実施例1と同様にして有機薄膜太陽電池を作製・評価した。光反射部材や光学調整層の仕様や有機薄膜太陽電池の作製方法は実施例5と同じである。評価結果は全て実施例1と同じであり、さらに、実施例5と同様に光反射部材と光電変換セル間の領域のずれを顕微鏡で確認したところ、90℃に加熱した状態でも全くずれがないことから、実施例1よりもさらに発電量が高くなることが推測される。
(実施例8)
実施例4と同様に、1枚の大きな透光性樹脂部材と光学調整層に2枚の有機薄膜太陽電池モジュールを並べて配置して貼り合わせたアレイ形態としたこと以外は実施例7と同様にして、有機薄膜太陽電池を作製・評価した。このように作製した有機薄膜太陽電池アレイは2枚の有機薄膜太陽電池モジュールが分断されている間隙の部分で曲げることができた。またこれ以外の評価結果は全て実施例7と同様に良好な結果であった。