以下、添付の図面を参照して、本願発明に係る飲料用容器の栓体の実施の形態について説明する。
まず図1および図2には、本願発明の実施の形態に係る飲料用容器の栓体のボトル本体を含む全体的な構成が、また図3〜図25には、同栓体の全体および要部の構成がそれぞれ示されている。
この実施の形態では、飲料容器の一例として、保温機能の高い真空二重容器よりなるステンレスボトルが採用されている。
このステンレスボトルのボトル本体1は、例えば図1および図2に示すように、有底筒状構造のステンレス製の内容器1aと同じく有底筒状構造で、内容器1aよりも大径のステンレス製の外ケース1bとからなり、それら各容器1a、1bの上端側開口縁部2a、2b同士を相互に接合一体化することによって、上端側に開口部3を有する真空断熱構造のボトルが形成されている。 このボトル本体1の開口部3には、外周側に位置して段部構造の肩部3cが、また内周側に位置して螺合溝部3d及び小径のネック部3eが設けられている。そして、同開口部3に対して、次に述べるような、栓本体4、栓カバー5、蓋6、蓋カバー7よりなる栓体10が着脱自在に取り付けられている。
栓本体4は、栓パッキンの嵌合部41a、上記ボトル本体1の開口部3の螺合溝部3dへの螺合溝部41bを備え、栓パッキンの嵌合部41aの外周に嵌合された栓パッキン41c、ボトル本体1の開口部3の螺合溝部3dへの螺合溝部41bを介して上記ボトル本体1の開口部3に螺合される注出口形成用の筒体部41と、この筒体部41の上部側に一体に設けられた皿状の飲み口部42とからなり、上記筒体部41の上端と飲み口部42の底部との間には蓋6側に取り付けられた飲み口パッキン66第1のゴム製パッキン66aのシール用座面を形成する水平方向の仕切り壁43が設けられ、同仕切り壁43の中央部に飲料注出用の楕円形上の開口43aが開口されている。
飲み口部42は、口付け部となる開口縁部が略垂直であるが、全体に亘って同一の高さの筒状壁ではなく、口付け部となる前部側が高く、後端側に行くにしたがって水平壁面に近くなるテーパー面形状の開口面を有する筒部壁となっている。そして、上記飲み口部42の高さの高い前端部の下部位置には、後述する蓋6側に設けられたロックレバー84の鉤状の係合片84aが着脱可能に係合する係合溝56が設けられている。また、この飲み口部42内の注出口43aは、例えば図10に示されるように、栓本体4の略中央部にあり、飲み口部42は、同注出口43aを囲む形で設けられているが、該飲み口部42の平面形状は、後端側で口径が少し拡大され、かつ略半円形状にカットされて、後端側に後述するヒンジブラケット53,53を設置できるスペースを形成している。
この栓本体4の上記筒体部41と飲み口部42との間の外周には、上記飲み口部42の形状に対応した所定の外径の栓カバー嵌合用のフランジ部44が設けられており、このフランジ部44に対して、栓本体4の筒体部41外周を覆う栓カバー5が上方側から嵌合一体化されている。この栓カバー5は、上記栓本体4の筒体部41のフランジ部44外周に嵌合される外径寸法を有した円形の水平壁部51と、該水平壁部51の外周端から下方に筒状に延びた側壁部52と、上記飲み口部42の後部形状に対応して上記水平壁部51の上部後端に位置して左右に一対設けられたヒンジブラケット53,53とからなり、上記栓本体4に固定された状態で後述するヒンジ軸54を介して蓋6及び蓋カバー7が前後方向に弧回動開閉可能に軸支されるようになっている。上記筒状の側壁部52は、上記栓本体4がボトル本体1の開口部3に螺合固定された状態においては、その下部が上記ボトル本体開口部3の肩部に対応して嵌合され、ボトル本体1の開口部3をもカバーするようになっている。
ヒンジブラケット53,53は、上記飲み口部42の後部カット形状に対応して、全体として円形の水平壁部51の後端より所定寸法前側に位置して設けられており、それによって上記栓カバー5の外周円範囲内に収まる状態で斜め後方に所定の高さ起立せしめられている。
他方、蓋6は、例えば図11に示されるように、上記飲み口部42の略半円形状の円筒形状(後部カット形状)に対応して、その後端側にヒンジ部63,63の形成スペースおよび栓カバー側ヒンジブラケット53,53の嵌合スペース(連結用開口部)を形成した形状及び構造となっており、上記飲み口部42の外周に嵌合し得る外径の天壁部61および筒状の側壁部62を備えた浅い円筒形状に形成されている。そして、その後端側左右のヒンジブラケット部63,63を上述したヒンジ軸54を介して上記栓カバー5のヒンジブラケット53,53の両側に弧回転可能に軸支されている。
この場合、上記栓カバー5側のヒンジブラケット53,53の外周には、当該蓋6を、例えば図9および図10のように、後端側水平状態より下方に大きく開放させるためのコイルバネが各々巻装されており、蓋6は、後述する開閉レバー81により、ロックレバー84を介した栓本体4側係合溝56との係合が解除されると、自動的に図9および図10のように開放される。
上記コイルバネを巻装したヒンジブラケット53,53部分およびそれらの間の全体には、例えば図5、図8、図10に示されるように、それらの全体が見えないようにカバーするヒンジカバーがヒンジブラケット53,53と同様に栓カバー5の水平壁51部分に一体成型されている。このヒンジカバー部分は、例えば図6の平面図から明らかなように、栓本体4に対して蓋6を閉じたロック状態において、後述する蓋外周面の蓋カバー7の天壁部71および側壁部72外周面と略同一の円形で連続する外周面を形成するように、左右方向および前後方向共に柔らかな曲面に形成されている。
なお、説明を簡単にするために、以下では、これらヒンジブラケット53,53及びヒンジカバーを機能上一体として考える場合には、ヒンジ部55と表現することにする。
また、上記蓋6の天壁部61の中央部下面には、下方に延びる小径筒状の飲み口パッキン取り付け部64が設けられており、この飲み口パッキン取り付け部64に対して、上記飲み口部42の飲料注出口43aをシールする有底筒状の第1のゴム製パッキン部66aと飲み口部42の上端側上記テーパー面形状の開口面全体をシールするフラットな第2のゴム製パッキン66bとからなるゴム製の飲み口パッキン66が下方側から着脱可能に嵌合されている。蓋6の平面形状は、上記覆うべき飲み口部42の形状に対応して後方に向けて外径を拡大した略半円状の形状となっている。
また、この蓋6の筒状の側壁部62の下端外周には、所定の幅のフランジ部62aが周方向に亘って一体に成型されており、このフランジ部62aを利用して、このフランジ部62aの外周に、次に述べる外装体である蓋カバー7が一体に嵌合されるようになっている。なお、蓋カバー7は、閉状態において、上記栓カバー5と等径の連続感のある正円筒を形成するように、正円形状となっている。したがって、該蓋カバー7を嵌合一体化する上記フランジ部62aの外径は、後端側のヒンジカバー55(ヒンジブラケット53,53)との対応部(コの字状の切り欠き部を形成)を除いて、基本的に正円形状となっている。そして、その前端側所定幅部分は、例えば図10、図17に示すように、上方側に高くなっており、同部分には、後述するロックレバー84の下端側係合片84aを下方に臨ませ、上記飲み口部42の下部に設けた係合溝56に係合させるための開口67が設けられている。
このため、同開口67の前後方向の開口幅は、当該ロックレバー84の係合片84aが栓体前方に回動して、係合溝56内に係合し、また栓体後方に回動して、ロック解除されて係合溝56外部にリリースできるに十分なものとなっている。
すなわち、この蓋6の前端部には、例えば図18から明らかなように、左右に所定の間隔を置いて、レバーピン挿通孔68a,68aを備えたレバーピン軸支ブラケット68,68が設けられており、これらレバーピン軸支ブラケット68,68間にレバーピン90を挿通支持することによって上記ロックレバー84が前後方向に弧回転可能に軸支されるようになっている。そして、このロックレバー84の下端側係合片84aが、図10、図17のように、上記フランジ部62aの前端部側の開口67から下方に臨まされるようになっている。
また、該蓋6の側壁部62前端の上記レバーピン軸支ブラケット68,68間中央部位置には、後述するロックレバーレバースプリング85の一端(後端)を前後方向に支持する筒状のボス部69が設けられており、該ボス部69とロックレバー84の上端側押圧片84b背面側凸状のボス部84dとの間に所定の付勢強度のロックレバーレバースプリング85を設けることにより、ロックレバー84の係合片84aが常時上記飲み口部材42側のロックレバー係合溝56内に係合する方向に付勢している(図17の構成を参照)。
この場合、上記ロックレバー84の上端側押圧片84bの後端は、蓋6のロック状態では、図17および図21から明らかなように、後述する蓋体の開閉レバー81の前面(内面)に当接して後方側への移動が規制されており、開閉レバー81も上方側から垂直方向下方に押圧操作されないので、ロックレバー84は安定したロック状態に維持される。
また、上記蓋6の側壁部62前端の上記レバーピン軸支ブラケット68,68の両側には、後述するスライド部材82をスライド自在に遊嵌するための上下方向のスライド溝60a,60aを備えたスライド部材指示ブラケット60,60が設けられている。
さらに、上記蓋カバー7は、上記蓋6の外周をカバーする平面視正円形の天壁部71および同天壁部71外周から下方に延びた筒状の側壁部72を備えた浅い筒状体よりなり、その前端側には、その天壁部71から側壁部72にかけて後述する開閉レバー嵌合口71a,72a、後端側には、その天壁部71から側壁部72にかけてヒンジ部嵌合口71b,72bが、それぞれ設けられている。また、開閉レバー嵌合口72aの両側壁部の裏面側には、たとえば図14〜図16に示すように、上下方向に延びる開閉レバー81のガイド溝73,73が設けられている。
そして、上記開閉レバー嵌合口71a,72aには、たとえば蓋カバー7の蓋6への組み付け前の段階で、開閉レバー81が上記ガイド溝73,73を利用して上下方向に摺動可能な状態で嵌合される。この嵌合は、上記天壁部71側の嵌合口71a側に押圧部81aが嵌り込み、上記側壁部72側の嵌合口72a側にカバー部81b両側の回動軸81c,81cおよびガイドリブ81d,81dが沿わされる形で嵌合される。
そして、このように開閉レバー81を嵌合した蓋カバー7が、図18に示す、スライド部材82、スライドスプリング83,83、ロックレバー84、ロックレバースプリング85、ヒンジピン90、ヒンジ軸54、ヒンジバネ(図示省略)等が組み付けられた蓋6の上部側に対して、その外周側のフランジ部62aを利用して嵌合され、一体化される。これによって、後述するような有益な作用を果たすオートロック機構を備えた蓋体が形成される。
この蓋カバー7も、やはり上記蓋6の場合と同様に、全体として前端側の高さが高く、後端側に行くに従って高さが低くなるテーパー面構造の筒状体に形成されている。そして、その筒状の側壁部72の前端部と上記内側の蓋6の側壁部62の前端部との間には、上記蓋6の後方に向けて外径を拡大した略半円状の形状(飲み口部42に対応した形状)と上記蓋カバー7の正円形状との形状差から、左右および前後に亘って所定の大きさの隙間が形成されており、この隙間を利用して蓋6を開閉するための操作方向を異にする2段モーション型のオートロック機構が設けられている。
このロック機構は、図17および図18に詳細に示されるように、上方から下方に押圧操作される開閉レバー81と、該開閉レバー81の押圧操作に応じて上下方向にスライド(昇降)する左右方向に長いスライド部材82と、このスライド部材82を常時上昇方向に付勢支持する左右一対のスライドスプリング83,83と、蓋6を閉状態にロックするとともに必要に応じてロック状態を解除するロックレバー84と、このロックレバーを常時ロック方向に付勢するロックレバースプリング85とから構成されている。
開閉レバー81は、図6、図7、図17〜図19に示すように、上記蓋カバー7の天壁部71の前端部の円弧部の一部を形成する少し前方に向けてアール面上に膨らんだ上方から下方への押圧部(押圧操作部)81aおよび側壁部72の前端部の円弧部の一部を形成するカバー部81bからなり、カバー部81bの左右両側部には回動軸(下側)81c,81cおよびガイドリブ(上側)81d,81dが設けられている。そして、それら回動軸81c,81cおよびガイドリブ81d,81dを介して、次に述べるスライド部材82に対して前後方向に弧回転可能な状態で係合支持され、かつ同状態で、上記蓋カバー7の天壁部71前端部から側壁部72前端部の下部側にかけて所定の幅で上下に長く開口された開閉レバー嵌合口71a,72a部分に略同一面状態で遊嵌され、上記ガイドリブ81d,81dによりガイドされながら、次に述べるスライド部材82と共に上下に昇降するとともに、上方から下方に押圧されて下降した位置で上記押圧部81a部分が栓体後方に押圧されると、上記回動軸81c,81cを回動軸として所定角後方に回動し、上記ロックレバースプリング85の付勢力に抗して、後述するロックレバー84のロック解除片84bを後方に押圧傾動させて上記ロックレバー84の係合片84aと上記飲み口部42側の係合溝56との係合を解除し、図9、図10に示すように蓋6を開放するようになっている。
すなわち、同構成では、まず開閉レバー81が、上記蓋カバー7の天壁部71の前端部の円弧部の一部を形成する少し前方に向けてアール面上に膨らんだ上方から下方への押圧部(押圧操作部)81aと側壁部72の前端部の円弧部の一部を形成するカバー部81bとからなっており、同押圧部81aが垂直方向下方に押圧操作されていない蓋ロック状態では、例えば図21のように蓋カバー7の天壁部71および側壁部72の前端部の相互に連続する一部を形成している。
ところが、この状態から開閉レバー81の前方に向けてアール面上に膨らんだ上方から下方への押圧部(押圧操作部)81aが押圧されて、たとえば図22に示すように、同開閉レバー81が上記開閉レバー嵌合口72aの下端まで下降すると、該開閉レバー81の押圧部81a後端の上記蓋カバー7の天壁部71の開閉レバー嵌合口71aの開口端部との隣接状態が解かれ、ロックレバー84をロック状態に付勢しているロックレバースプリング85の付勢力に抗して、ロックレバー84のロック解除片84b部分を、例えば図23に示すように、栓体の後方に押すことができ、上記ロックレバー84の係合片84aと上記飲み口部42側係合溝56との係合を解除して、上記図9、図10に示すように蓋6を開放することができる。
そして、一旦蓋6が開放されると、上記開閉レバー81は、上記ロックレバースプリング85およびスライドスプリング83,83の付勢作用で元の状態に戻り、蓋6が閉められると、再び図21の蓋ロック状態を実現する。
なお、この開閉レバー81が遊嵌されている上記蓋カバー7の側壁部72側の開閉レバー嵌合口72a下部部分は、たとえば蓋6がロック状態にある時には、図1、図3、図4、図17に示すように、上記開閉レバー81が上端側にあるため、所定上下幅(下降ストローク寸法分)だけ開口していて、内側のスライド部材82の本体前面82aが外から見えるようになっている。したがって、同スライド部材82の本体前面82a部分の色を赤くするなどすると、同部分の色からロック状態であることが分かるようになる。
ところで、上記スライド部材82は、例えば図18および図20の(a)〜(c)に示すように、左右に所定の長さを有する円弧状の本体部材82aからなり、その左右両端部82b,82bの上部には、上記開閉レバー81両側の回動軸81c,81cを回動可能に嵌合支持する軸受部82c,82cが、また同外端部には、上記蓋6に設けられたスライド部材指示ブラケット60,60のスライド溝60a,60a内に遊嵌されるスライドリブ82d,82dが設けられている。
そして、上記軸受部82c,82cに上記開閉レバー81両側の回動軸81c,81cを嵌合することによって、上記開閉レバー81が昇降可能、かつ後方に弧回動可能に支持され、さらに、上記スライド部材82は、下部側に上記左右一対のスライドスプリング83,83を介して、それらスライドリブ82d,82dが上記スライド部材指示ブラケット60,60のスライド溝60a,60a内に遊嵌され、常時上方に付勢された状態、すなわち、図7、図17、図21の上記開閉レバー81の押圧部81a上端が上記蓋カバー7の天壁部71の外周部と同一面を形成する非押圧状態(ロックレバー84のロック状態)に維持されるようになっている。
また、同スライド部材82の下面側には、上記スライドスプリング83,83の上端側が嵌合される第1のボス部82f,82fが、また蓋6のフランジ部62a側には、上記スライドスプリング83,83の下端側が嵌合される第2のボス部(図示省略)が設けられ、それらの間に上記スライドスプリング83,83が保持されている。
このように、開閉レバー81は、常時上昇方向に付勢支持された昇降自在なスライド部材82に対して回動軸81c,81cを介して上下方向に昇降可能、かつ前後方向に回動可能に係合状態で支持されており、上記上方から垂直方向下方への押圧操作によってスライド部材82と共に下降し、該下降状態においては、スライド部材82とは関係なく独自に前方から後方に押圧回動して、ロッククレバー84のロックを解除するようになっている。
そして、ロック解除後、開閉レバー81がロックレバースプリング85により栓体後方に戻されると、同開閉レバー81は、スライドスプリング83,83により、スライド部材82と共に再び元の蓋6の最上端位置に自動的に戻されて、安全ロック設定状態となる。
このような構成によると、安全ロック解除、安全ロック設定のための開閉レバー81の上下方向の昇降動作と、メインロック解除、メインロック設定のための開閉レバー81の前後方向の回動動作との2つの異なる動作が、ロックレバー84のロック状態、ロック解除状態に関係なく実現される。
すなわち、上記開閉レバー81の上方から下方への押圧操作、前方から後方への押圧操作が、それぞれロックレバー84と機械的に連系することなく、独立した形で実現されている。
したがって、開閉レバー81は、スライドスプリング83,83により常時上昇方向に付勢支持されたスライド部材82により、ロックレバー84のロック状態、ロック解除状態と関係なく昇降可能となり、上記安全ロック解除のための上方から下方への第1の押圧操作により下降して安全ロックを解除し、さらに第2の押圧操作により栓体後方に回動してロックレバー84のロックを解除すると、その後はスライド部材82(スライドスプリング83,83)により自動的に元の上昇位置に復帰し、ロックレバー84のロック状態、ロック解除状態の如何に関係なく、安全ロックを設定した状態となる。そのため、より安全ロック機能が高くなる。
また、以上の構成では、そのような作用を果たすスライド部材82やスライドスプリング83,83、ロックレバー84、ロックレバースプリング85、ロックレバーピン90等のロック機構を構成する主要な部品およびヒンジ軸54、ヒンジバネ等を先ず蓋6側に組み付けておき、その上で同蓋6に対して開閉レバー81を嵌合した蓋カバー7を嵌合(無理嵌め)するだけで、ロック機構やヒンジバネを内装した蓋体を構成することができるので、組み付けが容易になる。
また、ヒンジ部には、ヒンジブラケット53,53およびヒンジ軸54、ヒンジバネを覆うヒンジカバー55が設けられ、ヒンジ軸54、ヒンジバネ等が外部から見えないように構成されている。したがって、蓋6との連続感、一体感がより高くなる。
ところで、上記のような飲料容器の蓋開閉用のヒンジ部の構造に関し、従来のヒンジ部の構造では、あくまでもヒンジ部はヒンジ部として蓋体の形状やデザインとは別の独立した存在として構成されており、孤立感が高く、蓋体および栓本体とのデザイン的な一体感に欠けるものとなっていた。
また、蓋開放位置での必要な制動機能、ストッパー機能を果たさせるために、ヒンジブラケットの後端側に大きな突出部を設ける構成が採用されていた。この突出部は、ヒンジ部上面側が円弧面で、この円弧面から連続し後端部側に欠けて曲率が大きく拡大する嘴形状の凸部となっており、外観的に違和感のあるものであった。
さらに、蓋の開放角を大きくして、飲み口部を利用した飲みやすさを向上させるために、蓋の後端側を階段状に窪ませ、栓本体側肩部との干渉(当接)時期を遅くするなどの構成も採用されていた。
これらは、何れも機能的には有益なものであるが、他方、蓋のデザインの自由度を大きく制約し、審美感のある蓋形状、蓋デザイン実現の妨げとなっていた。
そこで、この実施の形態では、まず図6に示すように、上記ヒンジブラケット53,53およびヒンジカバーよりなるヒンジ部55部分の全体の形状(外周面の形状)を蓋カバー7外周の円弧形状(曲率)に近い太鼓胴形状にするとともに、蓋カバー7側のヒンジ部嵌合口71bの平面視形状も同様の対応した凹型円弧形状のものに形成している。そして、それらにより蓋カバー7との連続感、一体感を効果的に実現している。
また、同ヒンジ部55は、平面方向に見て、完全に栓カバー5及び蓋カバー7の外径エリア内に収められる形でレイアウトされているとともに、左右両端側では、同様に両端側が円弧形状に形成された蓋6側ヒンジブラケット63,63ととともに、蓋カバー7の外周形状に沿う外形のものとなっている。
このような構成によると、ヒンジ部55と蓋6が外観上一体となり、従来のようなヒンジ部の孤立感、デザイン疎外感が確実に解消される。
また、そのような構成に加えて、蓋6側の制動部材61aが圧接するヒンジ部55(ヒンジブラケット53,53およびヒンジカバー部分)の断面形状(外周面形状)を、たとえば図17の拡大断面図に示すように、ヒンジ部55のヒンジ軸54中心からの距離Rを、第1の面(前端面)53a側では小さく、第3の面(後端部面)53c側で所定寸法大きくしており(R1<R2)、それによって第3の面(後端部面)のみで十分な制動力(制動部材61aによる有効な圧接力)が作用するように構成している。しかも、この第3の面53cの上下幅は、蓋6及び蓋カバー7後端の上下幅に合わせた小さい上下幅のもの(部分的な制動用のアール面)となっている。
このような構成によると、ヒンジ部55の後端部に、従来のような、ヒンジ部上面側が円弧面で、この円弧面から連続し後端部側に欠けて曲率が大きく拡大する嘴形状の大きな凸部を設けることなく、上下幅の小さいヒンジ部55の後端部面全体(部分的なアール面全体)にわたって有効な制動効果を実現することができ、スムーズな蓋6の開放を実現することができる。したがって、従来の外観的な違和感を解消することができる。
なお、この実施の形態の場合、第2の面(上部面)53bである上面側は、特に蓋カバー7の上面に沿ったフラット面に形成されており、それによって、より蓋カバー7上面との連続感、一体感を実現している。上記のような構成の場合、このような効果も実現しやすくなる。
また、上記制動機能を果たす第3の面(後端部面)53cも、従来のような上部側円弧面から次第に曲率を大きくして後方に長く延びる嘴形状の凸部ではなく、上部側第2の面53bがフラットで、上下幅を含めた全体として、上記蓋カバー7の側壁部72の形状に沿う形状のものに形成されており、それによって同側壁部72との連続感、一体感を実現している。これにより、背面側からの見栄えが大きく向上している(図8参照)。この場合、上記R1、R2は、以上のような上下に幅の狭い部分的なアール面でも、有効に制動効果をあげられるような寸法関係に設定される。
また、停止面である第4の面53dも、側面から見て、蓋6および蓋カバー7の前方への傾斜角に沿った傾斜角の傾斜面に形成されている。そのため、この点でも、より蓋6および蓋カバー7との連続感、一体感が実現されている。
一方、ヒンジ部55とは別に、上記栓本体4側栓カバー5天壁部51の後端側は、ヒンジ部55の設置位置より後面側が、後方に向けて下降傾斜する傾斜面50に形成されている。
このような構成によると、上記のように、第3の面(制動面)53cの作用により、ヒンジ部55の後端側に従来のような曲率の異なる大きな突出部を設けることなく、ヒンジ部55の上下幅の狭い後端部面のみで有効な制動効果を実現することができることと相俟って、たとえば図25に示すように、より大きな蓋開放角を得ることができる。その結果、栓本体に飲み口部42を設けた場合にも鼻が当たりにくく、使用感が良くなる。
また、そのように水平状態よりも下方に大きく開放されるようにしたとしても、上記最も制動力が大きくなる第3の面(制動弧面)53cが直前にあり、しかも、そこでは、それまでに比べてヒンジ軸54中心からの距離Rが有効に大きくなり、十分に制動された形で最終開放角位置に停止するので、同最終開放角位置に到達した時のヒンジ部55部分に作用する慣性負荷も小さくて済む。そのため、ヒンジ部55の耐久性を向上させることができ、また作動性の良いヒンジバネの採用が可能となる。
これらの結果、同構成によれば、従来のものに比べて遥かにデザイン性に優れた栓体を提供することが可能となる。また、開閉機能、制動機能をも向上させることができる。
なお、以上の説明では、ヒンジ部55の外周面形状の前端部面側を第1の面53a、上部面側を第2の面53b、後端部面側を第3の面53c、後端部面側下部を第4の面53dとし、後端部面側第3の面53cのみを制動部材61aによる制動面としている。
このため、第1、第2、第4の各面53a、53b、53dでは、制動部材61aとヒンジ部55とを圧接させなくても済む様になり、制動部材61aに常時圧接負荷がかからず、耐久性が向上する。