JP6636600B2 - キャニスタ - Google Patents

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Description

この発明は、自動車の蒸発燃料処理装置に用いられるキャニスタに関し、特に、DBL(Diurnal Breathing Loss)性能の向上を図ったキャニスタに関する。
周知のように、内燃機関を用いた自動車では、燃料タンク内の蒸発燃料が大気に放出されるのを抑制するために、キャニスタを主体とした蒸発燃料処理装置を備えている。
キャニスタは、ケーシング内に活性炭等の吸着材を充填したものであって、停車時等に燃料タンク内から発生する蒸発燃料を吸着材に吸着させる一方、内燃機関稼働時にドレンポートから導入した大気により吸着材から燃料成分を脱離(パージ)させて、内燃機関の吸気系に吸入させる構成となっている。
特許文献1,2には、このような吸着材を利用したキャニスタにおいて、吸着した燃料成分の脱離を促進するために、吸着材を加熱するヒータを設けた構成が開示されている。特に、特許文献1では、ドレンポート付近の吸着材に吸着している燃料成分の量を少なくするために、ヒータにより加熱したときにドレンポート付近の温度がパージポート寄りの部分の温度よりも高温となるように、ヒータによる発熱量に勾配を与えた構成となっている。また特許文献2には、活性炭を40℃〜100℃に加熱することが開示されている。
特開2013−249797号公報 実開昭61−118956号公報
自動車用内燃機関に関連した排気規制は年々厳しくなる傾向にあり、蒸発燃料処理装置におけるキャニスタにあっては、より高いDBL性能が要求されている。なお、DBL試験は、1昼夜のような長時間の駐車を想定し、その間の外気温の温度変化に伴ってキャニスタから排出される燃料成分の量を測定するものである。
一方、内燃機関が一時的に稼動されるハイブリッド車両などにあっては、キャニスタをパージできる機会ならびにパージに利用できるガス量(ドレンポートからの大気導入量)の双方が少なくなる傾向となり、キャニスタに要求される条件はますます厳しいものとなっている。
このような種々の要求に対し、特許文献1,2のような従来のヒータを備えたキャニスタにおいては、必ずしも十分な性能を得ることができず、なお改善の余地がある。例えば、特許文献1のようにドレンポート側を高温とするものでは、特許文献2に開示されているように、活性炭が過度に高温となることで逆にドレンポート付近での吸着能力が低下してしまい、例えばDBL試験において比較的希薄な燃料ベーパがドレンポートから排出されやすい。また、特許文献2は、100℃未満に加熱することが望ましいことを開示しているが、所定の容量を有する活性炭をヒータにより均一な温度に加熱することは不可能であり、例えばヒータに隣接する部分は局部的に高温となるので、やはり部分的な吸着能力の低下は免れない。
この発明に係るキャニスタは、
活性炭が充填される内部容積の流れ方向の一端部にチャージポートおよびパージポートを備えるとともに、流れ方向の他端部に連結ポートを備えてなる相対的に容量の大きなメインキャニスタと、
独立した筒状のハウジングを有し、一端部に上記メインキャニスタの上記連結ポートに接続される連結ポートを備えるとともに、他端部にドレンポートを備えてなる相対的に容量の小さなバッファキャニスタと、
を備え、
上記バッファキャニスタの内部容積が、上記ドレンポート側の第1の領域と上記連結ポート側の第2の領域とに区分されており、
上記第1の領域には、ブタンワーキングキャパシティが6g/dL以上で10g/dL未満の第1の活性炭が充填されており、
上記第2の領域には、ブタンワーキングキャパシティが13g/dL以上の第2の活性炭が充填されており、
上記バッファキャニスタの上記ハウジングの中に、上記第1の領域と上記第2の領域の両者に亘って電熱ヒータが配設されており、この電熱ヒータは、上記第1の活性炭および上記第2の活性炭の中に埋設されており、
上記メインキャニスタの内部容積に充填された活性炭のブタンワーキングキャパシティは、上記第1の活性炭のブタンワーキングキャパシティよりも高く、かつ上記第2の活性炭のブタンワーキングキャパシティよりも低い、
ことを特徴としている。
上記の構成においては、電熱ヒータを具備した相対的に容量の小さなバッファキャニスタがメインキャニスタの下流側つまりドレンポート側に配置されているので、パージの際に、バッファキャニスタ内の活性炭(第1の活性炭および第2の活性炭)に吸着していた燃料成分が積極的に脱離される。例えばDBL試験においては、メインキャニスタに残存していた燃料成分が車両放置中にドレンポートへ向けて拡散移動するが、その多くは、バッファキャニスタで吸着される。このようにドレンポート側のバッファキャニスタを局部的に加熱することにより、相対的に少ない熱量(換言すれば少ない電力)でもって、車両放置中のドレンポートからの燃料成分の漏洩いわゆる微小破過を効果的に抑制できる。特に、バッファキャニスタが独立したハウジングを備えているので、その内部を第1の領域と第2の領域の双方に亘る電熱ヒータでもって効果的に加熱することができる。
そして、車両放置中に拡散移動する燃料成分(主にブタン)は、メインキャニスタおよびバッファキャニスタの内部でドレンポートへ向かって徐々に吸着されることから、ドレンポートへ近付くほど燃料ベーパの濃度は徐々に希薄となる。特に、バッファキャニスタ内での拡散移動に関して相対的に上流側となる第2の領域の第2の活性炭が高いブタンワーキングキャパシティ(BWC)を有するので、第1の領域に達する前に十分な吸着がされる。さらに、第1の領域に充填されるBWCが6g/dL〜10g/dLの第1の活性炭と第2の領域に充填されるBWCが13g/dL以上の第2の活性炭とを比較すると、第1の活性炭の方が希薄ベーパに対する吸着特性に優れたものとなる。従って、最終的にドレンポート寄りの第1の領域において、希薄となった燃料ベーパをより効果的に吸着でき、希薄ベーパによる微小破過を抑制できる。
しかも、第1の活性炭は第2の活性炭に比較して水分吸着性が低いので、電熱ヒータにより過度に加熱されて活性炭上に安定化していた炭化水素成分までが脱離してしまったときでも、燃料ベーパに対する吸着性能の低下が生じない。つまり電熱ヒータによる活性炭の加熱の際に不可避的に生じる局部的な過度の高温化があったとしても、希薄ベーパに対する吸着特性が安定的に得られ、車両放置中のドレンポート近傍での希薄ベーパの確実な吸着が可能である。
なお、本発明においては、上記電熱ヒータによりバッファキャニスタ内の活性炭を100℃未満の温度に加熱することが好ましい。さらには、50℃〜90℃の温度に加熱することが好ましい。
このような温度に加熱することで、吸着した燃料成分の脱離促進が図れる一方で、過度の加熱に起因する活性炭への水分の吸着を防止でき、水分吸着に伴う燃料成分の吸着能力の低下を回避できる。
本発明の好ましい一つの態様では、上記第1の領域の容積は上記第2の領域の容積よりも小さい。
また好ましくは、上記第1の領域と上記第2の領域とがスクリーン部材によって区画されており、上記電熱ヒータは上記スクリーン部材を貫通している。
お、本発明における活性炭のBWCは、ASTM D5228に基づく値である。
この発明によれば、メインキャニスタのドレンポート側に独立したハウジングの中に電熱ヒータを備えたバッファキャニスタを接続するとともに、このバッファキャニスタのドレンポート側にBWCが6g/dL〜10g/dLの活性炭を配置し、メインキャニスタ側に13g/dL以上の活性炭を配置したことにより、高いDBL性能を得ることができる。
この発明に係るキャニスタの一実施例の全体構成を示す構成説明図。 バッファキャニスタの一実施例の断面図。 60℃加熱の有無に関して、DBL試験におけるキャニスタ吸着量と破過量との関係を示した特性図。 活性炭の組み合わせに関して、DBL試験におけるキャニスタ吸着量と破過量との関係を示した特性図。 破過時の吸着量と加熱温度との関係を示した特性図。
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明に係るキャニスタ1を蒸発燃料処理装置の概略的な構成とともに示している。燃料成分を一時的に蓄えるキャニスタ1は、非加熱領域となる相対的に容量の大きなメインキャニスタ2と、加熱領域となる相対的に容量の小さなバッファキャニスタ3と、から構成されており、両者が可撓性を有するチューブ4を介して接続されている。
メインキャニスタ2は、合成樹脂製のハウジング5を有する。このハウジング5は、端部にパージポート6とチャージポート7とが隣接して設けられた細長い角筒状の第1筒状部8と、端部に連結ポート9が設けられた細長い角筒状の第2筒状部10と、を有し、これら2つの筒状部8,10が僅かな間隙を介して互いに隣接して配置されているとともに、互いに一体に連結されている。第1筒状部8および第2筒状部10の他方の端部は、接続路11を介して互いに連通しており、これによって、ハウジング5内部にU字形に連続した内部容積つまり流路が構成されている。
第1筒状部8の内部および第2筒状部10の内部には、燃料成分(例えばガソリンベーパ)の吸着・脱離が可能な吸着材として粒状の活性炭12が充填されている。詳しくは、第1筒状部8の一端部に、パージポート6ならびにチャージポート7との間をそれぞれ仕切る通気性を有するスクリーン部材14,15が設けられているとともに、他端部に、接続路11との間を仕切る通気性を有するスクリーン部材16が設けられており、これらのスクリーン部材14,15とスクリーン部材16との間の容積内に活性炭12が充填されている。第2筒状部10においても、同様に両端部に通気性を有するスクリーン部材17,18がそれぞれ設けられており、これらのスクリーン部材17,18の間の容積内に活性炭12が充填されている。なお、第1筒状部8および第2筒状部10の接続路11側のスクリーン部材16,18は、それぞれ図示せぬ多孔板によって支持されており、圧縮状態で配設されたスプリング19,20でもって付勢されることにより、活性炭12を適宜に圧縮している。
本発明においては、メインキャニスタ2に使用される吸着材は特に限定されるものではなく、いかなる種類の吸着材であってもよいが、一実施例としては、BWCが11.0g/dLの一般的な活性炭12が用いられている。なお、第1筒状部8と第2筒状部10とで異なる特性の活性炭を用いるようにしてもよい。また、メインキャニスタ2の活性炭12が収容される空間の容積は、例えば2300ccである。
一方、バッファキャニスタ3は、合成樹脂製の独立したハウジング21を有する。このハウジング21は、相対的に径が大きな大径部22と相対的に径が小さな小径部23とが直列に接続された略円筒形をなし、大径部22側の端部側面に連結ポート24が設けられているとともに、小径部23側の端部側面にドレンポート25が設けられている。このバッファキャニスタ3の連結ポート24は、前述したチューブ4を介して、メインキャニスタ2の連結ポート9に接続されている。
従って、キャニスタ1全体としては、流路一端のパージポート6ならびチャージポート7から流路他端のドレンポート25へと続く一連の流路を構成するように、第1筒状部8、第2筒状部10およびバッファキャニスタ3の三者の内部容積が実質的に直列に連続して構成されている。
上記チャージポート7は、チャージ通路31を介して車両の燃料タンク32の上部空間に接続され、上記パージポート6は、パージ通路33を介して内燃機関34の吸気通路35(詳しくはスロットル弁36下流側)に接続される。上記パージ通路33には、パージ制御弁37が介装され、エンジンコントロールユニット38によってパージ制御弁37の開度が制御される。また、ドレンポート25は、大気に開放されるものであるが、必要に応じてドレンポート25の大気への開放を遮断するように、バッファキャニスタ3の端部に電磁弁39が付加されている。
図2は、加熱領域となるバッファキャニスタ3の内部構成を示している。このバッファキャニスタ3の内部容積は、小径部23側の端部に設けられた通気性を有するスクリーン部材41と、大径部22側の端部に設けられた同様のスクリーン部材42と、中間部に設けられた同様のスクリーン部材43と、によって2つの領域44,45に区画されている。そして、2つの領域44,45の中で、ドレンポート25側となる第1の領域44には粒状をなす第1の活性炭46が充填され、連結ポート24側となる第2の領域45には同じく粒状をなす第2の活性炭47が充填されている。また、第1の領域44と第2の領域45の両者に亘って加熱手段となる電熱ヒータ48が配設されている。この電熱ヒータ48は、中間部のスクリーン部材43を貫通しており、かつ充填された活性炭46,47の中に埋設されている。
ここで、ドレンポート25側の第1の領域44に充填される第1の活性炭46としては、BWCが6g/dL以上でかつ10g/dL未満の活性炭が用いられる。例えば、BWCが8.0g/dLの活性炭が用いられる。この活性炭は、例えば、細孔径が比較的大きな細孔(マクロポーラス)の割合が多くなるように細孔分布をコントロールした活性炭である。また連結ポート24側つまりメインキャニスタ2寄りの第2の領域45に充填される第2の活性炭47としては、BWCが13g/dL以上の活性炭が用いられる。例えば、BWCが15.3g/dLの活性炭が用いられる。この活性炭は、例えば、マクロポーラスの割合を特にコントロールしていない一般的な活性炭である。なお、一例として、第1の領域44の容積は40cc、第2の領域45の容積は160ccである。
上記のように構成されたキャニスタ1においては、第1筒状部8、第2筒状部10およびバッファキャニスタ3の三者が実質的に1本の流路として連続したものとなっており、その流路の流れ方向の一端にパージポート6およびチャージポート7が位置し、かつ他端にドレンポート25が位置する。そして、当業者には自明なように、車両の停車中や給油中に燃料タンク32で生じた燃料蒸気は、チャージポート7からキャニスタ1内に導入され、第1筒状部8からバッファキャニスタ3の第1の領域44まで流れる間に、各部の活性炭12,46,47に吸着される。このように吸着された燃料成分は、内燃機関の運転中に吸気系で生じる負圧によってドレンポート25を通して大気が取り込まれることにより、活性炭12,46,47から脱離し、パージガスとなってパージポート6から内燃機関34の吸気通路35に流入して、最終的には内燃機関34において燃焼される。
このようにしてキャニスタ1は蒸発燃料の吸着および脱離を繰り返すことになるが、上記キャニスタ1においては、内燃機関34運転中の燃料成分の脱離を促進するために、電熱ヒータ48によってバッファキャニスタ3の内部容積が加熱される。この加熱は、好ましくは、第1の活性炭46および第2の活性炭47が、その平均温度として50℃〜90℃の温度となるように行われる。活性炭が100℃以上に加熱されると、活性炭の細孔表面などに安定化して存在していた炭化水素成分までが脱離し、これに代わって水分が吸着される結果、燃料成分に対する吸着特性が低下してしまう。50℃〜90℃の範囲内に加熱することで、このような現象を回避しつつ脱離促進が図れる。なお、電熱ヒータ48への通電は、車両のイグニッションキーON後直ちに開始することが望ましいが、内燃機関34の運転(換言すれば吸着燃料成分のパージ)がある程度の期間行われた時点で電熱ヒータ48を停止するようにしてもよく、あるいは、車両の運転中、加熱を継続するようにしてもよい。
DBL試験においては、車両の走行によりある程度のパージを行った後に、例えば1昼夜ないし3昼夜のような長時間、車両を停止状態とし、その間の外気温の変化に伴ってドレンポート25から流出した燃料成分(いわゆる微小破過)の量が評価されるが、上記のキャニスタ1では、メインキャニスタ2の後段(つまりドレンポート25側)に付加された相対的に小容量のバッファキャニスタ3のみが電熱ヒータ48によって加熱されるので、少ない電力でもってDBL性能が効果的に向上する。特に上記実施例では加熱領域がバッファキャニスタ3として独立したハウジング21により囲まれているため、その内部の活性炭46,47のみを効率よく加熱することができる。
図3は、加熱の有無によるDBL性能の差異を示したグラフであり、一般的なDBL試験に従ってキャニスタ1に破過状態まで燃料ベーパを吸着させた後、キャニスタ1の全活性炭容量の50倍の量(いわゆる50ベッドボリューム)の空気をドレンポート25から通流させてパージを行い、その後、3昼夜のDBL試験によりドレンポート25から流出した微小破過量を計測して、パージ後の吸着量(パージ終了時を0としたときの吸着量)との関係を示したものである。なお、3昼夜の間の温度変化の繰り返しによりキャニスタ1の吸着量は日ごとに徐々に増加する。線L1は、目標の破過量である。この図3において、実線は上述した実施例の構成においてパージ時に電熱ヒータ48により60℃への加熱を行った場合の特性を示しており、破線は比較例として加熱を行わない場合の特性を示している。
破線で示すように、加熱を行わない場合には、パージ直後の状態においても微小破過量が多く、目標値L1を満たすことができない。これは、加熱を行わない場合には、50ベッドボリュームのような少量の空気では、十分なパージを行えないことを示している。これに対し、実線で示す実施例では、電熱ヒータ48を用いた加熱によりドレンポート25寄りのバッファキャニスタ3内の第2の領域45および第1の領域44での脱離が促進されるため、50ベッドボリュームのような少量の空気によるパージであっても、DBL試験における微小破過が抑制される。なお、図示していないが、メインキャニスタ2を含むキャニスタ1全体を加熱したとしても、電力消費の増加に比べて、破過量の減少はそれほど大きなものとはならない。つまり、DBL性能としては、メインキャニスタ2に残存していた燃料成分がドレンポート25側へ徐々に拡散移動し、最終的にドレンポート25に到達すると微小破過が生じることとなるが、拡散移動する燃料成分はメインキャニスタ2内部さらにはバッファキャニスタ3内で活性炭47,46に徐々に吸着されていくので、小容量のバッファキャニスタ3の加熱によって高い効果が得られる。特に、バッファキャニスタ3内での拡散移動に関して相対的に上流側となる第2の領域45の第2の活性炭47が高いBWCを有するので、第1の領域44に達する前に十分な吸着がなされる。
また、上記のようにメインキャニスタ2内部やバッファキャニスタ3内部で徐々に吸着していく結果、ドレンポート25に近い領域での燃料ベーパは非常に希薄なものとなっている。このような希薄ベーパに対し、ドレンポート25側の第1の領域44に充填された第1の活性炭46は、第2の領域45における第2の活性炭47に比較して、希薄ベーパの吸着特性に優れている。従って、ドレンポート25へ向かう流れに関して第2の領域45よりも下流側に比較的少容量の第1の活性炭46を配置しておくことで、第2の領域45を通過した希薄ベーパを効果的に吸着することができる。
さらに、電熱ヒータ48を用いた加熱では、上記のように50℃〜90℃の範囲に加熱しようとしても、電熱ヒータ48に隣接している箇所などで局部的に100℃以上に加熱されてしまう活性炭が不可避的に発生する。このように過度に加熱された場合に、第1の活性炭46は、第2の活性炭47に比較して水分吸着性が低い。そのため、過度に加熱されて活性炭上に安定化していた炭化水素成分までが脱離してしまったときでも、燃料ベーパに対する吸着性能の低下が生じない。つまり第1の活性炭46では、不可避的に生じる局部的な過度の高温化があったとしても、希薄ベーパに対する吸着特性が安定的に得られ、車両放置中のドレンポート25近傍での希薄ベーパの確実な吸着が可能である。
従って、上記実施例のように第1の活性炭46と第2の活性炭47とを組み合わせることで高いDBL性能が得られる。
図4は、前述した図3と同じく、3昼夜のDBL試験によりドレンポート25から流出した微小破過量とパージ後の吸着量との関係を示した特性図であり、実線は、上述した実施例の構成つまり第1の活性炭46と第2の活性炭47とを組み合わせた場合の特性を示している。これに対し、破線は、比較例として、バッファキャニスタ3の第2の領域45と第1の領域44の双方に第2の活性炭47を充填した場合の特性を示している。なお、いずれも電熱ヒータ48により60℃への加熱を行った場合の特性であり、またDBL試験の際のパージは、図3と同じく50ベッドボリュームの空気により行っている。この図4に示すように、第1の活性炭46と第2の活性炭47とを組み合わせることで、高いDBL性能が得られる。
次に図5は、DBL試験において微小破過量が目標値(図3,図4のL1相当)を超えてしまうときのパージ後の吸着量(図3,図4の横軸に相当)と電熱ヒータ48による加熱温度との相関を示している。なお、これも、50ベッドボリュームの空気によるパージを行った場合の特性を示す。この図5に示すように、バッファキャニスタ3内の活性炭46,47を60℃付近に加熱したときに、最も吸着量を多く得ることができる。つまり、最も効果的にパージが行われ、DBL試験での微小破過を抑制できることを意味する。図中の線L2は、パージ後の吸着量の目標値を示しており、このような目標値L2に対しては、50℃〜90℃の温度に加熱すればよい。なお、破線で示す低温の領域では、図3でも説明したように、パージ直後から微小破過量が目標値L1を超えてしまう。従って、本発明においては、電熱ヒータ48により50℃〜90℃の温度に加熱することが望ましく、60℃に加熱することが最も望ましい。
以上、本発明の一実施例を詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
1…キャニスタ
2…メインキャニスタ
3…バッファキャニスタ
5…ハウジング
6…パージポート
7…チャージポート
21…ハウジング
25…ドレンポート
44…第1の領域
45…第2の領域
46…第1の活性炭
47…第2の活性炭
48…電熱ヒータ

Claims (3)

  1. 活性炭が充填される内部容積の流れ方向の一端部にチャージポートおよびパージポートを備えるとともに、流れ方向の他端部に連結ポートを備えてなる相対的に容量の大きなメインキャニスタと、
    独立した筒状のハウジングを有し、一端部に上記メインキャニスタの上記連結ポートに接続される連結ポートを備えるとともに、他端部にドレンポートを備えてなる相対的に容量の小さなバッファキャニスタと、
    を備え、
    上記バッファキャニスタの内部容積が、上記ドレンポート側の第1の領域と上記連結ポート側の第2の領域とに区分されており、
    上記第1の領域には、ブタンワーキングキャパシティが6g/dL以上で10g/dL未満の第1の活性炭が充填されており、
    上記第2の領域には、ブタンワーキングキャパシティが13g/dL以上の第2の活性炭が充填されており、
    上記バッファキャニスタの上記ハウジングの中に、上記第1の領域と上記第2の領域の両者に亘って電熱ヒータが配設されており、この電熱ヒータは、上記第1の活性炭および上記第2の活性炭の中に埋設されており、
    上記メインキャニスタの内部容積に充填された活性炭のブタンワーキングキャパシティは、上記第1の活性炭のブタンワーキングキャパシティよりも高く、かつ上記第2の活性炭のブタンワーキングキャパシティよりも低い、
    ことを特徴とするキャニスタ。
  2. 上記第1の領域の容積は上記第2の領域の容積よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のキャニスタ。
  3. 上記第1の領域と上記第2の領域とがスクリーン部材によって区画されており、上記電熱ヒータは上記スクリーン部材を貫通している、ことを特徴とする請求項1または2に記載のキャニスタ。
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