以下、インピーダンス測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
まず、インピーダンス測定装置の一例である図1に示すインピーダンス測定装置1(以下、単に測定装置1ともいう)の構成について説明する。この測定装置1は、図1に示すように、信号源2、電流検出器3、電流用アンプ4、電圧用アンプ5、ローカル発振器6、信号切替回路7、混合器(ミキサ)8、A/D変換器9、フィルタ部10、処理部11、記憶部12、操作部13および出力部14を備え、測定対象51(DUT:Device Under Test )のインピーダンスZを測定可能に構成されている。
信号源2は、測定対象51に測定用交流信号S1を印加する。本例では、信号源2は、一例として処理部11によって周波数が制御される周波数可変型の交流定電圧電源で構成されて、処理部11が指定した周波数(測定周波数)fMで測定用交流信号S1を生成して測定対象51に印加する。この測定周波数fM は、予め規定された測定周波数範囲(例えば、数十Hz以上数百MHz以下の範囲。本例では一例として80kHz以上500MHz以下の範囲)に含まれる任意の周波数である。なお、信号源2は、処理部11によって制御される周波数可変型の交流定電流電源で構成することもできる。
電流検出器3は、例えば、電流検出抵抗(抵抗値が十分に小さな抵抗)や磁気センサなどで構成されて、測定用交流信号S1の印加時に測定対象51に流れる電流I(以下、測定用電流Iともいう)を検出すると共に電気信号Siに変換して出力する。電流用アンプ4は、電気信号Siを入力すると共に所定の増幅率で増幅することにより、測定用電流Iを示す電圧信号(第1電圧信号)Vi1を出力する。
電圧用アンプ5は、例えば演算増幅器などを用いて構成されて、測定用交流信号S1の印加時に測定対象51に測定用電流Iが流れることによって測定対象51の両端間に発生する電圧V(以下、両端間電圧Vともいう)を検出すると共に所定の増幅率で増幅することにより、両端間電圧Vを示す電圧信号(第2電圧信号)Vv1を出力する。
ローカル発振器6は、一例として処理部11によって周波数が制御される周波数可変型の交流信号源で構成されて、処理部11が指定した周波数(ローカル周波数)fLOのローカル信号SLOを一定の振幅で生成して混合器8に出力する。
信号切替回路7は、例えば切替スイッチやマルチプレクサなどで構成されて、入力される電圧信号Vi1および電圧信号Vv1のうちの処理部11によって選択(指定)された一方を選択信号Vsとして出力する。混合器8は、選択信号Vsとローカル信号SLOを乗算することにより、その周波数が変換周波数に変換された変換電圧信号Vcvを生成して出力する。具体的には、変換電圧信号Vcvは、選択信号Vsおよびローカル信号SLOの両信号の周波数fM,fLOの差周波数(fLO−fM)である変換周波数の信号成分、および和周波数(fLO+fM)である変換周波数の信号成分で主として構成されている。A/D変換器9は、変換電圧信号Vcvを入力すると共に予め規定されたサンプリング周波数(少なくとも測定周波数範囲の上限値の2倍以上の周波数)のクロックに同期してサンプリングすることにより、変換電圧信号Vcvの瞬時値を示す波形データD1に変換して出力する。
フィルタ部10は、例えばDSP(Digital Signal Processor )などを用いて構成されて、処理部11が指定した周波数範囲を通過帯域とする通過帯域可変型のバンドパスフィルタ(デジタルフィルタ)として機能する。本例ではフィルタ部10は、通過帯域が処理部11によって指定された状態において、波形データD1を入力すると共にこの波形データD1に対してデジタル処理(フィルタリング処理)を実行することにより、変換電圧信号Vcvに含まれる変換周波数の信号成分(差周波数(fLO−fM)の信号成分および和周波数(fLO+fM)の信号成分)のうちの差周波数(fLO−fM)の信号成分を通過させ(抽出し)、この差周波数(fLO−fM)以外の周波数の信号成分(和周波数(fLO+fM)の信号成分を含む)については減衰させる。これにより、フィルタ部10は、差周波数(fLO−fM)の信号成分についての波形データD1aを、最終的な変換周波数の変換電圧信号として出力する。
この測定装置1では、上記の信号切替回路7、混合器8、A/D変換器9およびフィルタ部10により、信号変換回路が構成されている。この信号変換回路は、この構成により、信号切替回路7が電圧信号Vi1を選択信号Vsとして出力しているときには、選択信号Vsとしての電圧信号Vi1とローカル信号SLOとを乗算することにより、測定用交流信号S1の印加時に測定対象51に流れる測定用電流Iを示す差周波数(fLO−fM)の信号成分についての波形データD1aを最終的な変換周波数(つまり、fLO−fM)の変換電圧信号(第1変換電圧信号)として出力する。また、この信号変換回路は、信号切替回路7が電圧信号Vv1を選択信号Vsとして出力しているときには、選択信号Vsとしての電圧信号Vv1とローカル信号SLOとを乗算することにより、測定用交流信号S1の印加時に測定対象51の両端間に発生する両端間電圧Vを示す差周波数(fLO−fM)の信号成分についての波形データD1aを最終的な変換周波数(つまり、fLO−fM)の変換電圧信号(第2変換電圧信号)として出力する。
処理部11は、例えばコンピュータで構成されて、信号源2に対する制御処理、ローカル発振器6に対する制御処理、信号切替回路7に対する制御処理、フィルタ部10に対する制御処理、およびインピーダンス算出処理を実行する。また、処理部11は、測定装置1のオペレータによる操作部13に対する操作によって操作部13から出力される測定周波数fMを示す情報DMを取得する処理、およびインピーダンス算出処理の結果(インピーダンスZ)を出力部14に出力する処理についても実行する。
記憶部12は、ROMやRAMなどの半導体メモリやハードディスク装置などで構成されて、処理部11のための動作プログラムおよび周波数情報Dfが記憶されている。測定装置1では、上記した最終的な変換周波数(波形データD1aで示される信号成分の差周波数(fLO−fM))の候補となる複数の候補周波数が上記の測定周波数範囲(80kHz以上500MHz以下の範囲)内に予め規定されると共に、この測定周波数範囲は、この複数の候補周波数のうちのいずれか1つに対応する複数の個別周波数範囲に連続状態で分割されている。記憶部12には、この測定周波数範囲を示す情報(測定周波数範囲の下限値および上限値を示す情報)と、複数の候補周波数を示す情報と複数の個別周波数範囲を示す情報(各個別周波数範囲の下限値および上限値を示す情報)とを関連付ける情報とが周波数情報Dfとして記憶されている。この周波数情報Dfは、この複数の候補周波数のすべてと複数の個別周波数範囲のすべてとを、同一の個別周波数範囲が2つ以上の候補周波数に関連付けられることなく(つまり、1つの個別周波数範囲は1つの候補周波数だけに関連付けられるように)、関連付けるためのものである。
本例では一例として、図2に示すように、測定周波数範囲(80kHz(下限値)以上500MHz(上限値)以下の範囲)内に、複数の候補周波数として第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHzの2つの候補周波数が規定されている。また、測定周波数範囲(80kHz以上500MHz以下の範囲)は、第1候補周波数666.67kHzに対応する4つの個別周波数範囲(80kHz以上303kHz未満の個別周波数範囲、363kHz以上637kHz未満の個別周波数範囲、697kHz以上1303kHz未満の個別周波数範囲、1363kHz以上500000kHz(500MHz)以下の個別周波数範囲)と、第2候補周波数769.23kHzに対応する3つの個別周波数範囲(303kHz以上363kHz未満の個別周波数範囲、637kHz以上697kHz未満の個別周波数範囲、1303kHz以上1363kHz未満の個別周波数範囲)とに、連続状態(隣接する個別周波数範囲同士が連続する状態)で分割されている。このため、記憶部12には、図3に示すように、測定周波数範囲を示す情報(測定周波数範囲の下限値(80kHz)および上限値(500MHz=500000kHz)を示す情報(周波数値))と共に、この複数の個別周波数範囲を示す情報(各個別周波数範囲の下限値および上限値を示す情報(周波数値))が第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHzに関連付けられて周波数情報Dfとして記憶されている。
次に、各候補周波数およびこの各候補周波数に対応する個別周波数範囲の設定手法について説明する。まず、各候補周波数の設定手法について説明する。この場合、通過帯域可変型のバンドパスフィルタとして機能するフィルタ部10での遅延時間を短くするためには測定周波数範囲(80kHz以上500MHz以下の範囲)内のより高域側に規定すべきであるが、A/D変換器9でのクロックのサンプリング周波数を低い周波数に抑えることも必要である。このため、各候補周波数は、フィルタ部10での遅延時間について許容し得る範囲内でより低周波側とするのが好ましい。また、フィルタ部10は、混合器8から出力される変換電圧信号Vcvに含まれる差周波数(fLO−fM)の信号成分についてのデータと和周波数(fLO+fM)の信号成分についてのデータのうちの候補周波数としての差周波数(fLO−fM)の信号成分(設定された通過帯域に含まれる周波数の信号成分)についてのデータを波形データD1aとして選択的に通過させ、処理部11は、後述するように、この波形データD1aに対して信号処理を実行することにより、測定周波数fMの信号成分(上記の変換電圧信号)に復調する。
この場合、測定周波数fMが候補周波数と同じか若しくはその近傍の周波数(以下、「第1周波数範囲FR1内の周波数」ともいう)のとき、測定周波数fMが候補周波数の整数倍(具体的には、2倍まで)の周波数と同じか若しくはその近傍の周波数(以下、「第2周波数範囲FR2内の周波数」ともいう)のとき、および測定周波数fMが候補周波数の1/2の周波数と同じか若しくはその近傍の周波数(以下、「第3周波数範囲FR3内の周波数」ともいう)のときには、復調して得られる測定周波数fMの信号成分は候補周波数に関連するこれらの周波数の信号成分の影響を受けることから、この測定周波数fMの信号成分(変換電圧信号)に基づくインピーダンスZの算出が正確に行えないことが実験的に確認されている。
具体的に、候補周波数を第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHzの2つとする本例について説明すると、図2に示すように、候補周波数を第1候補周波数666.67kHzとしたときには、測定周波数fMが第1候補周波数666.67kHzと同じか若しくはその近傍の周波数(第1候補周波数666.67kHzを含む第1周波数範囲FR1内の周波数)のとき、測定周波数fMが第1候補周波数666.67kHzの2倍の周波数(1333.34kHz)と同じか若しくはその近傍の周波数(1333.34kHzを含む第2周波数範囲FR2内の周波数)のとき、および測定周波数fMが第1候補周波数666.67kHzの1/2の周波数(333.34kHz)と同じか若しくはその近傍の周波数(333.34kHzを含む第3周波数範囲FR3内の周波数)のときには、復調して得られる測定周波数fMの信号成分は、第1候補周波数666.67kHzに関連するこれらの周波数(666.67kHz、1333.34kHzおよび333.34kHz)の信号成分の影響を受ける。
このため、本例では、図2に示すように、候補周波数を第1候補周波数666.67kHzとしたときには、第1周波数範囲FR1を含むより広い第1特定周波数範囲FR11(本例では一例として、637kHz以上697kHz未満の範囲)、第2周波数範囲FR2を含むより広い第2特定周波数範囲FR12(本例では一例として、1303kHz以上1363kHz未満の範囲)、および第3周波数範囲FR3を含むより広い第3特定周波数範囲FR13(本例では一例として、303kHz以上363kHz未満)を規定すると共に、測定周波数範囲(80kHz以上500MHz以下の範囲)からこれらの特定周波数範囲FR11,FR12,FR13を除いた残りの範囲(同図中において右上がりの斜線を付した範囲)を、第1候補周波数666.67kHzについての個別周波数範囲として規定している。本例では、第1候補周波数666.67kHzについての個別周波数範囲は、図3に示すように、80kHz以上303kHz未満の範囲、363kHz以上637kHz未満の範囲、697kHz以上1303kHz未満の範囲、および1363kHz以上500000kHz(500MHz)以下の範囲の4つ規定される。
また、上記のように測定周波数範囲(80kHz以上500MHz以下の範囲)から除いた3つの特定周波数範囲FR11,FR12,FR13については、図2において右下がりの斜線で示すように、候補周波数を第2候補周波数769.23kHzとしたときの第2候補周波数769.23kHzについての個別周波数範囲として規定する。このため、本例では、第2候補周波数769.23kHzについての個別周波数範囲は、図3に示すように、303kHz以上363kHz未満の範囲、637kHz以上697kHz未満の範囲、および1303kHz以上1363kHz未満の範囲の3つ規定される。
なお、候補周波数を第2候補周波数769.23kHzとした場合にも、上記した候補周波数を第1候補周波数666.67kHzとしたときと同様にして、測定周波数fMが第2候補周波数769.23kHzと同じか若しくはその近傍の周波数(第2候補周波数769.23kHzを含む図2中の第4周波数範囲FR4内の周波数)のとき、測定周波数fMが第2候補周波数769.23kHzの2倍の周波数(1538.46kHz)と同じか若しくはその近傍の周波数(1538.46kHzを含む図2中の第5周波数範囲FR5内の周波数)のとき、および測定周波数fMが第2候補周波数769.23kHzの1/2の周波数(384.62kHz)と同じか若しくはその近傍の周波数(384.62kHzを含む第6周波数範囲FR6内の周波数)のときには、復調して得られる測定周波数fMの信号成分は、第2候補周波数769.23kHzに関連するこれらの周波数(769.23kHz、1538.46kHzおよび384.62kHz)の信号成分の影響を受けることから、この測定周波数fMの信号成分(変換電圧信号)に基づくインピーダンスZの算出が正確に行えないことが実験的に確認されている。
しかしながら、この測定装置1では、このように第1候補周波数666.67kHzからある程度離れた周波数769.23kHzを第2候補周波数に規定したことにより、第2候補周波数769.23kHzを候補周波数としたときの上記の第4周波数範囲FR4、第5周波数範囲FR5および第6周波数範囲FR6は、図2に示すように、特定周波数範囲FR11,FR12,FR13のいずれにも重ならない構成となっている。したがって、測定装置1では、上記したように、3つの特定周波数範囲FR11,FR12,FR13を、候補周波数を第2候補周波数769.23kHzとしたときの第2候補周波数769.23kHzについての個別周波数範囲として規定して、各特定周波数範囲FR11,FR12,FR13に含まれる各測定周波数fMの信号成分(変換電圧信号)に基づくインピーダンスZの算出を正確に行うことが可能となっている。
操作部13は、例えば、測定装置1に配設されたテンキーを含む操作キーで構成されて、操作キーに対する操作によって入力(指定)された測定モードを指定するための情報や測定開始指示を示す情報や測定周波数fMを示す情報DMを処理部11に対して出力可能に構成されている。出力部14は、例えば、測定装置1に配設されたディスプレイ装置(液晶ディスプレイなど)で構成されて、測定された測定対象51のインピーダンスZを出力(表示)可能に構成されている。
次に、測定装置1の動作について説明する。なお、信号源2、電流検出器3および電圧用アンプ5については、図1に示すように、不図示のプローブを介して測定対象51に接続されているものとする。
最初に、操作キーを操作することにより、測定モードとしてスイープ測定モード(測定周波数範囲の全域に亘って周波数を掃引しつつ各周波数でのインピーダンスZを測定する測定モード)を指定する情報が処理部11に入力されたときの動作について説明する。
この場合、処理部11は、記憶部12から測定周波数範囲およびすべての個別周波数範囲を示す周波数情報Dfを読み出して、読み出した測定周波数範囲の下限周波数(本例では80kHz)および上限周波数(本例では500MHz)のいずれか一方側から予め規定された周波数ステップで測定周波数fMを設定(変更)しながら(掃引しながら)、各測定周波数fMでのインピーダンスZを測定するインピーダンス測定処理を、測定周波数fMが下限周波数および上限周波数のいずれか他方側に達するまで実行する。
このスイープ測定モードでのインピーダンス測定処理では、処理部11は、1つの測定周波数fMを新たに設定したときには、信号源2に対して測定用交流信号S1の周波数としてこの測定周波数fMを指定する制御処理を実行する。これにより、信号源2は、この測定周波数fMで測定用交流信号S1を生成すると共に測定対象51に印加する動作を実行する。
また、処理部11は、1つの測定周波数fMを新たに設定したときには、記憶部12から読み出した周波数情報Dfを参照することにより、この測定周波数fMがいずれの個別周波数範囲に含まれるのかを特定する。この場合、各個別周波数範囲は、測定周波数範囲の全域に亘って隙間のない状態で、かつ互いに重ならない状態(連続状態)で規定されている。このため、処理部11は、測定周波数fMが含まれる個別周波数範囲を1つだけ特定する。また、処理部11は、この個別周波数範囲を特定したときには、この特定した個別周波数範囲が複数の候補周波数(この例では、第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHzの2つの候補周波数)のいずれに対応付けられているかを特定する。
また、処理部11は、この候補周波数を特定したときには、信号源2に対して指定している現在の測定周波数fMにこの特定した候補周波数を加算してローカル周波数fLOを算出して、ローカル発振器6に対してローカル信号SLOの周波数としてこのローカル周波数fLOを指定する制御処理を実行する。これにより、ローカル発振器6は、このローカル周波数fLOでローカル信号SLOを生成して混合器8に出力する。なお、本例の測定装置1では、ローカル発振器6は、このローカル信号SLOを予め規定された一定の振幅で生成して出力するが、操作部13に対する操作によって操作部13から処理部11に対してローカル信号SLOの振幅を設定するための情報を出力可能とし、処理部11がこの情報に基づいてローカル発振器6に対してこの設定された振幅でローカル信号SLOを生成させる構成(ローカル信号SLOの振幅を変更可能とする構成)にすることもできる。
また、処理部11は、この候補周波数を特定したときには、フィルタ部10に対して、差周波数(fLO−fM)の信号成分および和周波数(fLO+fM)の信号成分のうちの差周波数(fLO−fM)の信号成分を通過させ、和周波数(fLO+fM)の信号成分については減衰させる通過帯域(具体的には、差周波数(fLO−fM)およびその近傍の周波数を含む狭い通過帯域。例えば、第1周波数範囲FR1)を指定する処理を実行する。この場合、ローカル周波数fLOは、上記したように測定周波数fMに特定した候補周波数を加算した周波数のため、フィルタ部10は、特定した候補周波数の信号成分を通過させ、この候補周波数以外の周波数の信号成分については減衰させることにより、主として特定した候補周波数の信号成分を示す波形データD1aを最終的な変換周波数の変換電圧信号として出力し得る構成となる。これにより、本例では、フィルタ部10は、処理部11が特定した候補周波数が第1候補周波数666.67kHzのときには、主としてこの第1候補周波数666.67kHzの信号成分を示す波形データD1aを最終的な変換周波数の変換電圧信号として出力し、処理部11が特定した候補周波数が第2候補周波数769.23kHzのときには、主としてこの第2候補周波数769.23kHzの信号成分を示す波形データD1aを最終的な変換周波数の変換電圧信号として出力する構成となる。
このように信号源2からの測定用交流信号S1(測定周波数fM)が測定対象51に印加されている状態では、測定対象51には、測定用電流I(測定周波数fM)が流れている。このため、電流検出器3はこの測定用電流Iを検出して電気信号Siを出力し、電流用アンプ4はこの電気信号Siを増幅して測定用電流Iを示す電圧信号Vi1を信号切替回路7に出力する。また、電圧用アンプ5は測定用電流Iが流れることによって測定対象51の両端間に発生する両端間電圧V(測定周波数fM)を検出して増幅することにより、両端間電圧Vを示す電圧信号Vv1を信号切替回路7に出力する。
処理部11は、信号切替回路7に対する制御を実行して、例えば、電圧信号Vi1および電圧信号Vv1を所定の時間ずつ選択して選択信号Vsとして混合器8に順次出力させる。これにより、混合器8は、選択信号Vsとしての電圧信号Vi1とローカル信号SLOとの乗算によって生成されるた変換電圧信号Vcv(電圧信号Vi1およびローカル信号SLOの両信号の周波数fM,fLOの差周波数(fLO−fM)である変換周波数の信号成分(つまり、特定した候補周波数の信号成分)、および和周波数(fLO+fM)である変換周波数の信号成分で主として構成される測定用電流Iについての変換電圧信号)と、選択信号Vsとしての電圧信号Vv1とローカル信号SLOとの乗算によって生成されるた変換電圧信号Vcv(電圧信号Vv1およびローカル信号SLOの両信号の周波数fM,fLOの差周波数(fLO−fM)である変換周波数の信号成分(つまり、特定した候補周波数の信号成分)、および和周波数(fLO+fM)である変換周波数の信号成分で主として構成される両端間電圧Vについての変換電圧信号)とを、所定の時間ずつA/D変換器9に順次出力する。
A/D変換器9は、この測定用電流Iについての変換電圧信号Vcvとこの両端間電圧Vについての変換電圧信号Vcvとを順次入力して、測定用電流Iについての変換電圧信号Vcvの瞬時値を示す波形データD1と、両端間電圧Vについての変換電圧信号Vcvの瞬時値を示す波形データD1とに順次変換して所定の時間ずつフィルタ部10に順次出力する。フィルタ部10は、この測定用電流Iについての波形データD1と両端間電圧Vについての波形データD1とを順次入力して、上記したように、測定用電流Iについての波形データD1に含まれる信号成分のうちの特定した候補周波数の信号成分を示す波形データと、両端間電圧Vについての波形データD1に含まれる信号成分のうちの特定した候補周波数の信号成分を示す波形データをそれぞれ波形データD1aとして(最終的な変換周波数の変換電圧信号として)処理部11に順次出力する。
処理部11は、このようにしてフィルタ部10から順次出力される測定用電流Iについての波形データD1a(特定した候補周波数の信号成分を示す波形データ)と、両端間電圧Vについての波形データD1a(特定した候補周波数の信号成分を示す波形データ)とを入力して、この各波形データD1aに対して信号処理を実行することにより、測定周波数fMの測定用電流Iについての波形データと、測定周波数fMの両端間電圧Vについての波形データとに復調すると共に、この復調した各波形データに基づいて現在の測定周波数fMでのインピーダンスZを測定(算出)する。また、処理部11は、算出したインピーダンスZを現在の測定周波数fMに対応させて記憶部12に記憶させる。
その後、処理部11は、1つの測定周波数fMを新たに設定したときの上記の各処理(信号源2に対して測定用交流信号S1の周波数としてこの測定周波数fMを指定する制御処理から、インピーダンスZを算出して記憶部12に記憶させる処理までの各処理)を、測定周波数fMを変更しながら(掃引しながら)、測定周波数範囲の下限周波数および上限周波数の他方側に達するまで実行する。これにより、測定周波数範囲の全域に亘って測定周波数fMを変更したとき(掃引したとき)の各測定周波数fMでのインピーダンスZの測定が完了する。
この場合、各候補周波数666.67kHz,769.23kHzに対応する個別周波数範囲が図3に示すように規定されているため、処理部11は、新たに設定した測定周波数fMが4つの個別周波数範囲(80kHz以上303kHz未満の個別周波数範囲、363kHz以上637kHz未満の個別周波数範囲、697kHz以上1303kHz未満の個別周波数範囲、1363kHz以上500000kHz(500MHz)以下の個別周波数範囲)のいずれかに含まれるときには、各候補周波数666.67kHz,769.23kHzのうちの第1候補周波数666.67kHzを新たに設定した測定周波数fMでの候補周波数として特定して、信号源2に対する上記した処理やフィルタ部10に対する上記した処理を実行する。また、処理部11は、新たに設定した測定周波数fMが3つの個別周波数範囲(303kHz以上363kHz未満の個別周波数範囲、637kHz以上697kHz未満の個別周波数範囲、1303kHz以上1363kHz未満の個別周波数範囲)のいずれかに含まれるときには、各候補周波数666.67kHz,769.23kHzのうちの第2候補周波数769.23kHzを新たに設定した測定周波数fMでの候補周波数として特定して、信号源2に対する上記した処理やフィルタ部10に対する上記した処理を実行する。
最後に、処理部11は、測定した測定周波数範囲の全域に亘る各測定周波数fMでのインピーダンスZを出力部14に出力して表示させる。
次に、操作キーを操作することにより、測定モードとして周波数指定測定モード(測定周波数範囲内の任意の1つの周波数を測定周波数fMとして指定して、この測定周波数fMでのインピーダンスZを測定する測定モード)を指定する情報と共に、この指定された測定周波数fMを示す情報が処理部11に入力されたときの動作について説明する。
この場合、処理部11は、操作キーから入力される情報に基づいて周波数指定測定モードでのインピーダンス測定処理を実行する。このインピーダンス測定処理では、処理部11は、まず、記憶部12に記憶されている個別周波数範囲を示す周波数情報Dfを参照して、指定された測定周波数fMがいずれの個別周波数範囲に含まれているかを特定することにより、この測定周波数fMでの候補周波数を特定する。
次いで、処理部11は、スイープ測定モードでのインピーダンス測定処理のときと同様にして、信号源2、ローカル発振器6およびフィルタ部10に対する処理を実行する。具体的には、処理部11は、信号源2に対して測定用交流信号S1の周波数としてこの測定周波数fMを指定する制御処理を実行することにより、信号源2にこの測定周波数fMでの測定用交流信号S1の生成を開始させると共に測定対象51に対する印加を開始させる。また、処理部11は、この測定周波数fMにこの特定した候補周波数を加算してローカル周波数fLOを算出すると共に、ローカル発振器6に対してローカル信号SLOの周波数としてこのローカル周波数fLOを指定する制御処理を実行することにより、ローカル発振器6にこのローカル周波数fLOでのローカル信号SLOの生成を開始させると共に混合器8への出力を開始させる。また、処理部11は、フィルタ部10に対して、差周波数(fLO−fM)およびその近傍の周波数を含む狭い通過帯域を指定する処理を実行することにより、主として特定した候補周波数の信号成分を示す波形データD1aを最終的な変換周波数の変換電圧信号として処理部11に出力させる。
このように測定対象51に信号源2から測定用交流信号S1(測定周波数fM)が印加されている状態では、測定対象51には、測定用電流I(測定周波数fM)が流れている。このため、電流検出器3はこの測定用電流Iを検出して電気信号Siを出力し、電流用アンプ4はこの電気信号Siを増幅して測定用電流Iを示す電圧信号Vi1を信号切替回路7に出力する。また、電圧用アンプ5は測定用電流Iが流れることによって測定対象51の両端間に発生する両端間電圧V(測定周波数fM)を検出して増幅することにより、両端間電圧Vを示す電圧信号Vv1を信号切替回路7に出力する。
続いて、処理部11は、スイープ測定モードでのインピーダンス測定処理のときと同様にして、信号切替回路7に対する制御を実行して、電圧信号Vi1および電圧信号Vv1を所定の時間ずつ選択して選択信号Vsとして混合器8に順次出力させる。これにより、スイープ測定モードでのインピーダンス測定処理のときと同様にして、フィルタ部10から、測定用電流Iについての波形データD1に含まれる信号成分のうちの特定した候補周波数の信号成分を示す波形データと、両端間電圧Vについての波形データD1に含まれる信号成分のうちの特定した候補周波数の信号成分を示す波形データとが、波形データD1aとして(最終的な変換周波数の変換電圧信号として)処理部11に順次出力される。
処理部11は、スイープ測定モードでのインピーダンス測定処理のときと同様にして、このようにしてフィルタ部10から順次出力される測定用電流Iについての波形データD1a(特定した候補周波数の信号成分を示す波形データ)と、両端間電圧Vについての波形データD1a(特定した候補周波数の信号成分を示す波形データ)とを入力して、この各波形データD1aに対して信号処理を実行することにより、測定周波数fMの測定用電流Iについての波形データと、測定周波数fMの両端間電圧Vについての波形データとに復調すると共に、この復調した各波形データに基づいて現在の測定周波数fMでのインピーダンスZを測定(算出)する。また、処理部11は、算出したインピーダンスZを現在の測定周波数fMに対応させて記憶部12に記憶させる。これにより、指定された測定周波数fMでのインピーダンスZの測定が完了する。
最後に、処理部11は、測定した測定周波数fMでのインピーダンスZを出力部14に出力して表示させる。
このように、この測定装置1では、測定周波数範囲内に変換周波数(混合器8において、選択信号Vsとローカル信号SLOを乗算することによって得られる変換電圧信号Vcvの周波数(差周波数:fLO−fM))の候補となる複数の候補周波数(第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHz)が予め規定されると共に、測定周波数範囲の全域はこれらの候補周波数に対応付けられた複数の個別周波数範囲に連続状態で複数に分割され、この複数の候補周波数とこの複数の個別周波数範囲とを関連付ける周波数情報Dfが記憶部12に記憶され、処理部11が、スイープ測定モードおよび周波数指定測定モードでのインピーダンス算出処理において、信号源2に対して生成させる測定用交流信号S1の測定周波数fMを指定すると共に、記憶部12に記憶されている周波数情報Dfを参照して指定した測定周波数fMが含まれる1つの個別周波数範囲に対応する1つの候補周波数を変換周波数として特定し、かつローカル発振器6に対してこの特定した変換周波数にこの指定した測定周波数fMを加算して得られる周波数をローカル周波数fLOとして指定してローカル信号SLOを生成させる。
したがって、この測定装置1によれば、混合器8から出力される変換電圧信号Vcvの周波数(差周波数:fLO−fM)を測定周波数範囲の下限値よりも低い周波数に規定する従来の構成とは異なり、変換電圧信号Vcvの周波数(差周波数:fLO−fM)を測定周波数範囲内に規定する構成(つまり、従来の構成よりも変換電圧信号Vcvの周波数をより高い周波数に規定し得る構成)のため、この周波数(差周波数:fLO−fM)の信号成分を抽出するフィルタリング処理での遅延時間を短縮することができ、これにより、インピーダンスZの測定に要する時間を短縮することができる。特に、スイープ測定モードでのインピーダンス算出処理においては、測定周波数範囲内に規定された多くの測定周波数fMでのインピーダンスZを個別に測定することになるため、1つの測定周波数fMでのインピーダンスZの測定において短縮し得る時間が僅かなものであっても、測定周波数範囲の全域に亘るインピーダンスZの測定に要する時間については大幅な短縮が可能となる。
また、この測定装置1によれば、このように変換電圧信号Vcvの周波数(差周波数:fLO−fM)を測定周波数範囲内に規定する構成のため、測定周波数範囲の下限値をより低くせざるを得ない状況下においても、インピーダンスZの測定に要する時間が長くなることを回避することができる。
なお、上記の測定装置1では、複数の候補周波数の一例として、第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHzの2つの候補周波数を規定する構成を採用しているが、各候補周波数は666.67kHzおよび769.23kHzに限定されない。つまり、各候補周波数のうちの一方を実際の候補周波数としたときに、この候補周波数の影響を受ける特定周波数範囲については、他方の候補周波数を実際の候補周波数としたときのこの候補周波数の個別周波数範囲として規定できる関係にある限り、各候補周波数は測定周波数範囲内の任意の周波数とすることができる。また、上記の測定装置1では、複数の候補周波数の一例として2つの候補周波数(第1候補周波数666.67kHzおよび第2候補周波数769.23kHz)を規定する構成を採用しているが、3つ以上の候補周波数を規定する構成を採用してもよいのは勿論である。
また、上記の測定装置1では、信号切替回路7を使用する構成を採用することにより、混合器8、A/D変換器9およびフィルタ部10の数をそれぞれ1つにして装置コストを低減しているが、図示はしないが、信号切替回路7を使用することなく、測定用電流Iを示す電圧信号Vi1専用の混合器、A/D変換器およびフィルタ部と、両端間電圧Vを示す電圧信号Vv1専用の混合器、A/D変換器およびフィルタ部とを配置して処理部11に接続する構成、つまり、測定用電流I用の信号変換回路(第1信号変換回路)と両端間電圧V用の信号変換回路(第2信号変換回路)とを別々に配置する構成を採用することもできる。この構成によれば、混合器、A/D変換器およびフィルタ部の組が2組となることから装置コストが上昇するものの、測定用電流Iを示す電圧信号Vi1および両端間電圧Vを示す電圧信号Vv1を並列的に処理して処理部11に出力することができるため、インピーダンスZの測定に要する時間をさらに短縮することができる。