JP6636300B2 - すべり支承装置 - Google Patents

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本発明は、地震等による下部構造に対する上部構造の振動を低減するすべり支承装置に関する。
近年、マンション等の集合住宅や戸建住宅等の構造物に対する地震等による地盤振動の影響を低減するための免震装置が開発され、実用化されている。免震装置は、剛性層と弾性層とが交互に積層された積層ゴム体を住宅等の上部構造と地盤等の下部構造との間に設置し、地震等によって下部構造が振動した際に、上部構造への振動の伝達を低減すると共に、伝達された振動を減衰させることができる。
このような免震装置としては、上端部及び下端部の各々を上部構造及び下部構造に固定して用いられるRB(Rubber Bearing;積層ゴム型免震装置)やLRB(Lead Rubber Bearing;鉛プラグ入り積層ゴム型免震装置)と称される積層ゴム支承装置や、上端部及び下端部のいずれか一方を上部構造及び下部構造のいずれか一方に固定し、他方を上部構造及び下部構造のいずれか他方に対して滑るようにして用いられるSSR(Sliding Support with Rubber-pad;滑り積層ゴム型免震装置)と称されるすべり支承装置とが存在する。
積層ゴム支承装置は、上部構造及び下部構造の各々に一体的に取り付けられる上部材及び下部材と、これら上部材及び下部材の間に設けられ、薄い鋼板等の剛性層とゴム板等の弾性層とが鉛直方向に交互に積層された積層ゴム体とで構成される。
すべり支承装置は、上部材及び下部材と、これら上部材及び下部材のいずれか一方に設けられたすべり板と、上部材及び下部材のいずれか他方とすべり板との間に設けられた積層ゴム体と、この積層ゴム体とすべり板との間に設けられるすべり材とで構成される。
一方、上記積層ゴム支承装置において、特許文献1〜3には、積層ゴム体を製造する際に、剛性層の鋼板の表面処理と、鋼板と弾性層との加硫接着処理とを省略し、剛性層と弾性層を接着しない技術が開示されている。
特開平6−50025号公報 特開平6−158910号公報 特開平11−153190号公報
すべり支承装置に用いる積層ゴム体は、通常積層ゴム支承装置に用いる積層ゴム体と同一の品質で製造されている。しかし、すべり支承装置は、上述のように、上端部又は下端部が滑るように構成され、積層ゴム支承装置よりも積層ゴム体の変形量が小さいため、積層ゴム支承装置のように大きくせん断変形しても接着剥離が生じないように剛性層と弾性層とを強固に接着する必要はなく、すべり支承装置の機能及び製造コストの面で改善の余地があった。
一方、上記特許文献1〜3に記載の技術のように、剛性層と弾性層を接着せずに当接させるだけでは、製造コストを低減することはできるものの、積層ゴム体が弾性変形する際に剛性層と弾性層が水平方向に相対的に移動し、所望の免震効果が得られない虞がある。
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、十分な免震効果を確保しながら、製造コストの低いすべり支承装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、すべり支承装置であって、上部構造に固定される上部材と、下部構造に固定される下部材と、前記上部材及び前記下部材のいずれか一方に固定されたすべり板と、前記上部材及び前記下部材のいずれか他方に固定され、剛性層と弾性層とが鉛直方向に交互に積層された積層ゴム体と、該積層ゴム体の前記上部材及び前記下部材のいずれか一方側に固定され、前記すべり板に対して摺動可能に当接する摺動部材とを備えるすべり支承装置であって、前記剛性層と前記弾性層とは互いに接着されず、前記剛性層は、該剛性層の上面から下面に貫通する複数の貫通孔を備え、該剛性層に形成された複数の貫通孔の各々は、該剛性層に隣接する他の剛性層に形成された複数の貫通孔の各々と上面視で重なり合わないことを特徴とする。
本発明によれば、上部構造の荷重により剛性層に設けられた複数の貫通孔に隣接する弾性層の一部が入り込み、積層ゴム体の変形時において弾性層を剛性層に追従させることができるため、十分な免震効果を確保しながら、弾性層を剛性層に加硫接着することなく低コストですべり支承装置を製造することができる。
また、前記剛性層に形成された複数の貫通孔の各々を、該剛性層に隣接する他の剛性層に形成された複数の貫通孔の各々と上面視で重なり合わないようにすることで、積層ゴム体の鉛直支持能力の低下を回避することができる。
上記すべり支承装置において、前記貫通孔に弾性体を前記剛性層の直上及び直下の弾性層を一体化するように充填することができる。
以上のように、本発明によれば、十分な免震効果を確保しながら、製造コストの低いすべり支承装置を提供することが可能になる。
本発明に係るすべり支承装置の第1の実施形態を示し、(a)は概略断面図、(b)は(a)のA−A線断面図であって積層ゴム体のみの断面を示す。 図1に示す積層ゴム体のB部拡大図である。 本発明に係るすべり支承装置の第2の実施形態を説明するための積層ゴム体の断面図であって、図1に示す積層ゴム体のB部拡大図に相当する図である。
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係るすべり支承装置の第1の実施形態を示し、このすべり支承装置1は、上部構造11に固定された上部材2と、下部構造12に固定された下部材3と、下部材3に固定されたすべり板4と、積層ゴム体5と、積層ゴム体5の下端に固定された摺動部材としてのすべり材6とで構成される。
積層ゴム体5は、例えば、薄い鋼板等の剛性層5aとゴム板等の弾性層5bとが鉛直方向に交互に積層され、直方体状や円柱状等に形成される。この積層ゴム体5の剛性層5aと弾性層5bは、互いに当接するだけで接着されていない。
図1(b)に示すように、剛性層5aには、上面視円形の複数の貫通孔5cが形成され、剛性層5aの上下に隣接する弾性層5bの一部は、図2に示すように、上部構造11の荷重により剛性層5aの複数の貫通孔5cに入り込む。貫通孔5cの大きさや個数は、積層ゴム体5全体の大きさや、上部構造11の重量等によって適宜変更する。また、貫通孔5cの形状は、上面視で円形に限定されず、楕円形や矩形等であってもよい。さらに、貫通孔5cは、剛性層5aの上面から下面に貫通するものであれば、鉛直方向に限定されない。
これらの貫通孔5cは、隣接する2つの剛性層5aにおいて、上面視で重なり合わないようにすることで、弾性層5bに加わる応力を分散させ、積層ゴム体5の鉛直支持能力の低下を回避することができる。
次に、上記構成を有するすべり支承装置1の動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。
下部構造12に地震等によって水平方向の力(以下「水平力」という。)が付加され、この水平力がすべり板4とすべり材6との間の最大静摩擦力以下の場合には、積層ゴム体5が水平方向に弾性変形することにより、上部構造11への振動を抑制する。そして、水平力がすべり板4とすべり材6との間の最大静摩擦力を超えると、積層ゴム体5の下部に固定されたすべり材6がすべり板4上を滑ることにより上部構造11への振動を抑制する。
ここで、積層ゴム体5が弾性変形する際には、剛性層5aと弾性層5bは接着されていないが、上部構造11の荷重により剛性層5aに設けられた複数の貫通孔5cに隣接する弾性層5bの一部が入り込み、弾性層5bが貫通孔5cを介して剛性層5aに追従するため、両層5a、5bを接着したすべり支承装置のように両層5a、5bの水平方向のずれが生じることなく、十分な免震効果が得られると共に、従来のように接着剤を用いて剛性層5aと弾性層5bとを互いに加硫接着せずに、剛性層5aに貫通孔5cを形成するだけで済むため、製造コストを低減することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、積層ゴム体5の剛性層5aと弾性層5bを接着せず、簡単な構成で十分な免震効果を得、製造コストを低減することができる。
尚、上記実施の形態においては、隣接する2つの剛性層5aで貫通孔5cを上面視で重なり合わないように構成したが、剛性層5aの厚さや貫通孔5cの大きさを考慮し、積層ゴム体5の鉛直支持能力に影響を与えない範囲内で、一部の貫通孔5c同士が上面視で多少重なり合ってもよい。また、積層ゴム体5が水平方向に弾性変形した際に貫通孔5c内に進入した弾性層5bの一部が損傷しないように、剛性層5aの貫通孔5cの上下方向の両開口端部に面取り等を施すことが好ましい。
また、すべり板4を下部材3に固定し、すべり材6を積層ゴム体5の下端に固定したが、この位置関係を逆にし、すべり板4を上部材2に固定し、すべり材6を積層ゴム体5の上端に固定することも可能であり、その場合にも上記と同様の作用効果を奏する。
次に、本発明に係るすべり支承装置の第2の実施形態について説明する。本実施の形態では、上記積層ゴム体5に代えて、図3に示した積層ゴム体15を用いる点のみが異なり、他の構成要素は図1に示したすべり支承装置1と同じである。
積層ゴム体15も、例えば、薄い鋼板等の剛性層15aとゴム板等の弾性層15bとが鉛直方向に交互に積層され、直方体状や円柱状等に形成される。この積層ゴム体15の剛性層15aと弾性層15bは、互いに当接するだけで接着されていない。
積層ゴム体15の剛性層15aには、上面視円形の複数の貫通孔15cが形成され、貫通孔15cに充填されたゴム等の弾性体15dによって剛性層15aを挟む2枚の弾性層15bが一体化される。貫通孔15cの大きさや個数は、積層ゴム体15全体の大きさや、上部構造11の重量等によって適宜変更する。また、貫通孔15cの形状は、上面視で円形に限定されず、楕円形や矩形等であってもよい。
これらの貫通孔15cも、隣接する2つの剛性層15aにおいて、上面視で重なり合わないようにすることで、弾性層15bに加わる応力を分散させ、積層ゴム体5の鉛直支持能力の低下を回避することができて好ましいが、剛性層15aの厚さや貫通孔15cの大きさを考慮し、積層ゴム体15の鉛直支持能力に影響を与えない範囲内で、一部の貫通孔15c同士が上面視で多少重なり合ってもよい。
この積層ゴム体15を用いた場合でも、上記すべり支承装置1と同様に機能し、剛性層15aと弾性層15bは接着されていないが、弾性体15によって隣接する剛性層15aの一部が一体化されているため、両層15a、15bを接着したすべり支承装置のように両層15a、15bの水平方向のずれが生じることなく、十分な免震効果が得られる。
上述のように、本実施の形態においても、従来のように積層ゴム体15の剛性層15aと弾性層15bを加硫接着せず、簡単な構成で十分な免震効果を得、製造コストを低減することができる。
1 すべり支承装置
2 上部材
3 下部材
4 すべり板
5 積層ゴム体
5a 剛性層
5b 弾性層
5c 貫通孔
6 すべり材
11 上部構造
12 下部構造
15 積層ゴム体
15a 剛性層
15b 弾性層
15c 貫通孔
15d 弾性体

Claims (2)

  1. 上部構造に固定される上部材と、
    下部構造に固定される下部材と、
    前記上部材及び前記下部材のいずれか一方に固定されたすべり板と、
    前記上部材及び前記下部材のいずれか他方に固定され、剛性層と弾性層とが鉛直方向に交互に積層された積層ゴム体と、
    該積層ゴム体の前記上部材及び前記下部材のいずれか一方側に固定され、前記すべり板に対して摺動可能に当接する摺動部材とを備えるすべり支承装置であって、
    前記剛性層と前記弾性層とは互いに接着されず、前記剛性層は、該剛性層の上面から下面に貫通する複数の貫通孔を備え
    該剛性層に形成された複数の貫通孔の各々は、該剛性層に隣接する他の剛性層に形成された複数の貫通孔の各々と上面視で重なり合わないことを特徴とするすべり支承装置。
  2. 前記貫通孔に弾性体が前記剛性層の直上及び直下の弾性層を一体化するように充填されることを特徴とする請求項1に記載のすべり支承装置。
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