JP6636248B2 - 核種変換反応膜の再生方法及び膜再生システム - Google Patents

核種変換反応膜の再生方法及び膜再生システム Download PDF

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Description

本発明は、核種変換反応膜の再生方法及び膜再生システムに関し、例えば、放射性廃棄物元素の分離装置などから放射性廃棄物元素を抽出した核種変換反応膜を再生する核種変換反応膜の再生方法及び膜再生システムに関する。
従来、パラジウムからなる基材上に、酸化カルシウム層とパラジウム層とが交互に積層された多層構造体の核種変換反応膜を備えた核種変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この核種変換装置においては、核種変換反応膜の最表層に設けられたパラジウム層に核種変換が施される核種変換物質が添加されて結晶格子中に取り込まれる。そして、核種変換物質を添加した核種変換反応膜に重水素を透過させることにより、核種変換物質であるセシウム(133Cs)が、別核種であるプラセオジム(141Pr)に核種変換される核種変換反応がパラジウム層の結晶格子中で生じる。
特許第4346838号公報
ところで、特許文献1に記載された核種変換装置においては、核種変換反応後の核種変換反応膜の最表層のパラジウム層を酸で溶解して別核種に変換された核種変換物質を取り出す必要があり、最表層に設けられた高価なパラジウム層を溶解除去した核種変換反応膜を再利用できていない実情がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、核種変換反応後の核種変換反応膜の再生が可能な核種変換反応膜の再生方法及び膜再生システムを提供することを目的とする。
本発明の核種変換反応膜の再生方法は、Pdを含む基材と、前記基材上に設けられ、CaOを含む第1層と前記金属を含む第2層とが交互に積層された中間層と、前記中間層上に設けられ、Pdを含む表面層と、を備えた核種変換反応膜の再生方法であって、前記核種変換反応膜を酸溶液で処理して前記中間層及び前記表面層の全てを溶解除去して核種変換反応後の被変換物質を回収する酸洗浄工程と、前記中間層及び前記表面層が溶解除去された前記基材を純水によって洗浄する純水洗浄工程と、純水によって洗浄された前記基材上に、前記中間層及び前記表面層を積層して核種変換反応膜を再生する積層工程と、を含むことを特徴とする。
この方法によれば、核種変換反応によって核種変換された被変換物質を含有する最表層の表面層だけでなく、中間層も酸洗浄によって全て溶解除去するので、洗浄後に基材上に中間層が残存することがない。これにより、核種変換反応膜の再生方法は、洗浄後に残存した一部の中間層上に最表層の表面層を積層して核種変換反応膜を再生する場合と比較して、平滑な基材の表面上に順次中間層及び表面層を積層できるので、核種変換反応後の核種変換反応膜の再生が可能となる。
本発明の核種変換反応膜の再生方法は、Pdを含む基材と、前記基材上に設けられ、CaOを含む第1層とPdを含む第2層とが交互に積層された中間層と、前記中間層上に設けられ、Pdを含む表面層と、を備えた核種変換反応膜の再生方法であって、前記核種変換反応膜を酸溶液で処理して前記表面層のみを溶解除去して核種変換反応後の被変換物質を回収する酸洗浄工程と、前記表面層が溶解除去された前記核種変換反応膜を純水によって洗浄する純水洗浄工程と、純水によって洗浄された前記核種変換反応膜上に、前記表面層を積層して核種変換反応膜を再生する積層工程と、を含むことを特徴とする。
この方法によれば、核種変換反応によって核種変換された被変換物質を含有する最表層の表面層のみを選択的に除去するので、洗浄後に残存した一部の中間層上に最表層の表面層を積層して核種変換反応膜を再生する場合と比較して、平滑な中間層の表面上に表面層を積層でき、核種変換反応後の核種変換反応膜の再生が可能となる。しかも、最表層の表面層以外の中間層を再利用することが可能となるので、核種変換反応膜の再生に要する時間の短縮及びコストの低減が可能となる。
本発明の核種変換反応膜の再生方法においては、前記積層工程において、核種変換物質と共に前記表面層を電着により積層することが好ましい。この方法により、核種変換物質を含有する表面層を最表層に設けることができるので、表面層に対する核種変換物質の添加工程を省略することが可能となると共に、スパッタリング法と比較して真空装置などが不要となるので、核種変換反応膜を安価に再生することが可能となる。
本発明の中間層および表面層を溶解除去する核種変換反応膜の再生方法においては、前記酸溶液が、硝酸、王水、及びフッ化水素酸からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。また、本発明の表面層のみを溶解除去する核種変換反応膜の再生方法においては、前記酸溶液が硝酸であることが好ましい。この方法により、表面層を効率良く溶解除去することが可能となる。
本発明の参考態様における核種変換反応膜の再生方法においては、前記第1層は、酸化イットリウム及びチタン酸ストロンチウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。この方法により、核種変換反応の反応効率が向上する。
本発明の膜再生システムは、Pdを含む基材と、前記基材上に設けられ、Pd及びCaOを含む中間層と、Pdを含む表面層と、を備えた核種変換反応膜が配置され、前記核種変換反応膜による核種変換反応及び前記表面層が除去された前記核種変換反応膜への電着を行う反応装置と、前記反応装置に核種変換物質を含有する電着液を供給する電着液供給部と、前記反応装置に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記反応装置に酸溶液を供給する酸溶液供給部とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、反応装置内に配置した核種変換反応膜の表面に、電着によって核種変換物質を含む電着層を設けて核種変換反応を行うので、核種変換反応後の被変換物質を含む核種変換反応膜の最表層の表面層を、酸溶液供給部から反応装置内に供給した酸溶液によって溶解除去できる。そして、最表層の表面層の溶解除去後の核種変換反応膜の表面を洗浄水供給部から反応装置内に供給した洗浄水によって洗浄した後、再び電着液供給部から反応装置内に電着液を供給して核種変換反応膜の表面上に核種変換物質を含む表面層を設けることが可能となる。これらにより、膜再生システムは、反応装置から核種変換反応膜を取り外すことなく容易に再生することが可能となると共に、連続的に核種変換物質を被変換物質に変換して回収することが可能となる。
本発明によれば、核種変換反応後の核種変換反応膜の再生が可能な核種変換反応膜の再生方法及び膜再生システムを実現することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法を示すフロー図である。 図2は、本発明の第1の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法に用いられる核種変換反応膜の断面模式図である。 図3は、本発明の第1の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法の説明図である。 図4は、本発明の第2の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法のフロー図である。 図5は、本発明の第2の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法の説明図である。 図6は、本発明の第2の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法の他の例の説明図である。 図7は、本発明の第3の実施の形態に係る膜再生システムの概略図である。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。また、以下の各実施の形態は適宜組み合わせて実施可能である。また、各実施の形態において共通する構成要素には同一の符号を付し、説明の重複を避ける。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法を示すフロー図である。図1に示すように、本実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法は、水素吸蔵金属及び水素吸蔵合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む基材と、基材上に設けられ、金属に対して相対的に仕事関数が低い低仕事関数物質を含む第1層と前記金属を含む第2層とが交互に積層された中間層と、中間層上に設けられ、金属を含む表面層と、を備えた核種変換反応膜の再生方法である。この核種変換反応膜の再生方法は、核種変換反応膜を酸溶液で処理して基材上に設けられた中間層及び表面層の全てを溶解除去して核種変換反応後の被変換物質を回収する酸洗浄工程ST11と、中間層及び表面層が溶解除去された基材を純水によって洗浄する純水洗浄工程ST12と、純水によって洗浄された基材上に、中間層及び表面層を積層して核種変換反応膜を再生する積層工程ST13と、を含む。
図2は、本実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法に用いられる核種変換反応膜1の断面模式図である。図2に示すように、本実施の形態に係る核種変換反応膜1は、パラジウムを含む基材10と、この基材10上に設けられた酸化カルシウム層(第1層:中間層)11と、この酸化カルシウム(CaO)層11上に設けられたパラジウム(Pd)層(第2層:中間層)12とを備える。酸化カルシウム層11とパラジウム層12とは交互に複数層(本実施の形態では、酸化カルシウム層11が5層、パラジウム層12が4層)が積層されている。核種変換反応膜1の最表層には、別核種に核種変換された被変換物質13を含有したパラジウム層(表面層)12Aが設けられている。
基材10としては、水素吸蔵金属及び水素吸蔵合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属ものを用いる。基材10としては、例えば、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素吸蔵金属、及びパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。基材10の厚さは、例えば、0.1mmである。
酸化カルシウム層11は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素吸蔵金属、及びパラジウム合金以外の水素吸蔵合金に対して相対的に仕事関数が低い低仕事関数物質である酸化カルシウムを含有する。なお、酸化カルシウム層11に代えて、低仕事関数物質を含有する低仕事関数物質層を設けてもよい。このような低仕事関数物質としては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化イットリウム(Y)及びチタン酸ストロンチウム(SrTiO)などが挙げられる。低仕事関数物質層としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化イットリウム(Y)及びチタン酸ストロンチウム(SrTiO)からなる群から選択された少なくとも1種を含有するものを用いることができる。これらの中でも、低仕事関数物質層としては、被変換物質13の変換効率の観点から、酸化カルシウムを含有する酸化カルシウム層11が好ましい。酸化カルシウム層11の厚さは、例えば、2nmである。
パラジウム層12は、水素吸蔵金属及び水素吸蔵合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有するものを用いる。なお、パラジウム層12に代えて、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素吸蔵金属、及びパラジウム合金以外の水素吸蔵合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含有する金属層を設けてもよい。パラジウム層12の厚さは、核種変換反応膜1の内部のパラジウム層12の厚さが例えば、20nmであり、核種変換反応膜1の最表層のパラジウム層12Aの厚さが例えば、40nmである。
被変換物質13は、例えば、セシウム(Cs)が、核種変換反応によってプラセオジム(Pr)に核種変換されたものである。
図3は、本実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法の説明図である。図3に示すように、まず、酸洗浄工程では、核種変換反応膜1を酸溶液で処理して基材10上に設けられた酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を全て溶解除去して最表層のパラジウム層12Aから被変換物質13を回収する。この酸洗浄工程では、核種変換反応膜1の側面及び裏面をマスクした状態で酸溶液を滴下して酸化カルシウム層11及びパラジウム層12,12Aを溶解除去する。
酸溶液としては、硝酸、王水及びフッ化水素酸からなる群から選択された少なくとも1種を用いる。硝酸としては、酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を溶解除去できるものであれば特に制限はなく、例えば、市販の8%硝酸、35%硝酸、60%硝酸(比重1.38)、90%硝酸、0.1mol/L硝酸、1mol/L硝酸などを用いることができる。
酸洗浄工程における洗浄条件としては、酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を溶解除去できる範囲であれば、特に制限はなく、例えば、20℃以上30℃以下の温度範囲で、1分以上5分以内で実施することができる。酸洗浄工程では、例えば、エッチングレートを測定することにより、酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を精度良く除去することが可能となる。エッチングレートの測定方法としては、核種変換反応膜1の表面を所定時間酸溶液で処理したエッチング後の膜厚の変化を測定して算出する。膜厚は、例えば、断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真から求めてもよく、核種変換反応膜1のエッチング前後の質量変化に基づいて、核種変換反応膜1の密度(g/m)及び面積(m)に基づいて下記式(1)に基づいて求めてもよい。
膜厚(m)=質量変化(g)/反応膜の密度(g/m)/面積(m) ・・・式(1)
次に、純水洗浄工程では、純水を用いて酸化カルシウム層11及びパラジウム層12が除去された基材10の表面の硝酸などの酸成分を洗浄する。純水としては、基材10の表面から酸成分を除去できるものであれば特に制限はなく、例えば、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などを用いることができる。純水としては、基材10の酸成分の除去効率の観点から、超純水が好ましい。純水洗浄工程では、例えば、25mm四方の核種変換反応膜1を洗浄する場合には、20℃以上30℃以下の条件で、20ml以上の純水を用いた3回以上の洗浄又は流水での基材10の表面の洗浄により、酸成分を除去することができる。
積層工程ST13では、純水によって酸成分が除去された基材10上にスパッタリング法により酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を交互に積層した後、最表層のパラジウム層12Aを積層する。スパッタリング法は、例えば、アルゴンイオンビームによるスパッタリング法を用いることができる。積層工程では、例えば、酸化カルシウム層11を2nm、パラジウム層12を20nm、最表層のパラジウム層12Aを40nm積層する。これにより、最表層のパラジウム層12Aに核種変換物質を抽出可能な核種変換反応膜2が得られる。得られた核種変換反応膜2に電着又はイオン注入によって最表層のパラジウム層12Aにセシウム(Cs)などの所望の核種変換物質を添加することにより、核種変換反応膜を再生することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、被変換物質13を含有する最表層のパラジウム層12Aだけでなく、中間層の酸化カルシウム層11及びパラジウム層12も酸洗浄によって全て溶解除去するので、洗浄後に基材10上に中間層の酸化カルシウム層11及びパラジウム層12が残存することがない。これにより、核種変換反応膜の再生方法は、洗浄後に残存した中間層の酸化カルシウム層11及びパラジウム層12上に最表層のパラジウム層12Aなどを積層して核種変換反応膜1を再生する場合と比較して、平滑な基材10の表面上に順次酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を積層できるので、核種変換反応後の核種変換反応膜1の再生が可能となる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る複合材料の製造方法について説明する。なお、以下において、上述した実施の形態との相違点について重点的に説明し、説明の重複を避ける。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法のフロー図である。図4に示すように、本実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法は、核種変換反応膜を酸溶液で処理して基材上に設けられた表面層のみを溶解除去して核種変換反応後の被変換物質を回収する酸洗浄工程ST21と、表面層が溶解除去された核種変換反応膜を純水によって洗浄する純水洗浄工程ST22と、純水によって洗浄された核種変換反応膜上に、表面層を積層して核種変換反応膜を再生する積層工程ST23と、を含む。
図5は、本実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法の説明図である。図5に示すように、本実施の形態においては、酸洗浄工程ST21では、酸溶液により最表層のパラジウム層12Aのみを選択的に溶解除去する。この酸洗浄工程ST21では、最表層のパラジウム層12Aの全てを溶解除去してもよく、最表層のパラジウム層12Aの表面から所定厚さの被変換物質13を吸着した範囲のパラジウム層12Aのみを溶解除去してもよい。酸洗浄工程ST21では、上述した第1の実施の形態で説明したエッチングレートの測定方法によって予め求めたエッチング速度に基づいて、酸洗浄の条件を制御して最表層のパラジウム層12Aのみを選択的に溶解除去して最表層のパラジウム層12Aが選択的に除去された核種変換反応膜3を得る。例えば、最表層のパラジウム層12Aの厚さが40nmである場合において、25℃における60%硝酸(比重1.38)を用いたエッチングレートが1.5nm/sである場合には、酸洗浄を20秒間実施することにより、最表層のパラジウム層12Aの表面から30nmの領域を溶解除去することが可能となる。
純水洗浄工程ST22では、一部が除去された最表層のパラジウム層12A又は最表層のパラジウム層12Aの下層の酸化カルシウム層11の表面を純水によって洗浄して硝酸などの酸成分を洗浄する。純水洗浄の条件としては、上述した第1の実施の形態と同様の条件を用いることが可能である。
積層工程ST23では、純水洗浄によって酸成分が除去された最表層のパラジウム層12Aの表面上又は最表層のパラジウム層12Aの下層の酸化カルシウム層11の表面上に、スパッタリング法によって最表層のパラジウム層12Aを積層して核種変換物質を抽出可能な核種変換反応膜2を得る。得られた核種変換反応膜2に電着又はイオン注入によって最表層のパラジウム層12Aにセシウム(Cs)などの所望の核種変換物質を添加することにより、核種変換反応膜を再生することが可能となる。
また、積層工程ST23では、図6に示すように、最表層のパラジウム層12Aとセシウム(Cs)などの所望の核種変換物質14とを電着によって積層してもよい。電着の条件としては、例えば、市販のパラジウム電着液(PALLADEX APD−700、田中金属工業社製)に硝酸セシウム(CsNO133Cs))を添加して電着液を用いて、電流密度0.11〜10mA/cm、電着液温度45℃以上55℃以下で電着することにより、核種変換物質14を含有する最表層のパラジウム層12Aが設けられた核種変換反応膜4を得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、予め測定したエッチングレートに基づいて、被変換物質13を含有する最表層のパラジウム層12Aのみを選択的に除去するので、最表層のパラジウム層12Aのみを容易に除去することが可能となる。そして、最表層のパラジウム層12Aのみを除去するので、洗浄後に残存した一部の酸化カルシウム層11上に最表層のパラジウム層12Aを積層して核種変換反応膜1を再生する場合と比較して、平滑な酸化カルシウム層11の表面上に最表層のパラジウム層12を積層できるので、核種変換反応後の核種変換反応膜1の再生が可能となる。しかも、最表層のパラジウム層12Aのみを除去するので、核種変換反応膜1の再生に要する時間の短縮及びコストの低減が可能となると共に、最表層のパラジウム層12A以外の酸化カルシウム層11及びパラジウム層12を再利用することが可能となる。そして、最表層のパラジウム層12Aと共に核種反応物質14を電着によって設けることにより、核種変換物質14の添加工程を省略することが可能となると共に、スパッタリング法と比較して真空装置などが不要となるので、核種変換反応膜を安価に再生することが可能となる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態に係る膜再生システムの概略図である。図7に示すように、本実施の形態に係る膜再生システム5は、核種変換反応を行う反応装置100と、反応装置100に電着液を供給する電着液供給部50と、反応装置100に電解質溶液を供給する電解質溶液供給部60とを備える。
反応装置100は、電解質溶液などを貯留する貯留部101と、重水素低濃度部102と、貯留部101と重水素低濃度部102とを隔てる核種変換反応膜103と、貯留部101内に核種変換反応膜103と離間して対向配置された電極104とを備える。この核種変換反応膜103としては、上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態に係る核種変換反応膜1,2が用いられる。電極104は、白金(Pt)などからなるスパイラル状または網目状の電極である。核種変換反応膜103及び電極104は、反応装置100の外部に設けられた電源105に接続される。
反応装置100の貯留部101と外部との接続する流路には、逆止弁106が設けられている。この逆止弁106は、外部の気圧が貯留部101に貯留される気体の気圧より大きいときに閉止する。また、逆止弁106は、外部の気圧が貯留部101に貯留される気体の気圧より小さいときに開放して貯留部101内の気体を外部に排出する。
重水素低濃度部102には、減圧装置107が接続される。減圧装置107は、ターボ分子ポンプ及びドライポンプなどの真空ポンプ108と、重水素低濃度部102内の気体を排気する排気配管109とを備える。減圧装置107は、重水素低濃度部102内部の気体を排出して重水素低濃度部102内の圧力を低下させる。また、重水素低濃度部102内の核種変換反応膜103の近傍には、核種変換反応膜103を加熱するヒータ20が配置される。
また、膜再生システム5は、反応装置100の貯留部101内の液体を循環させる循環部30を備える。この循環部30は、抜出配管31と、熱交換器32と、フィルタ33と、ポンプ34と、再供給配管35と、再供給配管35に設けられたバルブV1とを備える。熱交換器32は、抜出配管31から供給された液体を冷却する。フィルタ33は、抜出配管31から供給された液体をろ過して不純物を除去する。ポンプ34は、フィルタ33によりろ過された液体を、再供給配管35を介して貯留部101に供給する。再供給配管35のバルブV1の上流側には、貯留部101から抜き出された液体を外部に排出する排出部40が設けられている。この排出部40は、貯留部101から抜き出された液体を排出する排出配管41と、この排出配管41に設けられたバルブV2とを備える。
さらに、膜再生システム5は、循環部30の再供給配管35に接続された電着液供給部50を備える。この電着液供給部50は、内部に電着液が貯留された電着液タンク51と、電着液タンク51と再供給配管35との間に設けられる電着液供給用配管52と、不活性ガス供給用配管53と、除湿装置54と、乾燥不活性ガス供給配管55と、電着液タンク51の外周に配置され電着液タンク51内の電解液所定温度に加熱するヒータ56とを備える。
電着液タンク51内に貯留される電着液としては、パラジウムなどの水素吸蔵金属の塩と、核種変換が施される核種変換物質、核種変換物質の塩及び137Csなどの放射性物質などとを含有する。核種変換物質としては、例えば、Cs、Sr、Na、Baなどが挙げられる。電着液供給用配管52には、電着液の流量を制御するバルブV3が設けられている。
不活性ガス供給用配管53は、ガス源(不図示)と除湿装置54との間に設けられている。不活性ガス供給用配管53は、ガス源から供給されるCE(Cold Evaporator)_N及びアルゴン(Ar)などの不活性ガスを供給する。
除湿装置54は、シリカゲルなどの除湿機能付フィルタを備える。除湿装置54は、不活性ガス供給用配管53から供給された不活性ガスから不純物を除去して乾燥させる。乾燥不活性ガス供給配管55は、除湿装置54と電着液タンク51との間に設けられている。乾燥不活性ガス供給配管55は、除湿装置54によって乾燥された不活性ガスを電着液タンク51に供給する。これにより、電着液が電着液供給用配管52を介して反応装置100の貯留部101に送液される。
電解質溶液供給部60は、電解質溶液タンク61と、電解質溶液供給用配管62と、重水供給部65と、不活性ガス供給部71とを備える。重水供給部65は、不活性ガス供給用配管66と、除湿装置67と、乾燥不活性ガス供給配管68と、内部に重水を貯留する重水タンク69と、重水供給用配管70とを備える。不活性ガス供給用配管66は、ガス源(不図示)と除湿装置67との間に設けられている。乾燥不活性ガス供給配管68は、除湿装置67と重水タンク69との間に設けられている。重水供給用配管70は、重水タンク69と電解質溶液タンク61との間に設けられている。
電解質溶液供給部60では、ガス源(不図示)から供給された不活性ガスが、不活性ガス供給用配管66、除湿装置67、及び乾燥不活性ガス供給配管68を介して重水タンク69に供給される。これにより、重水タンク69が加圧され、重水が重水供給用配管70を介して電解質溶液タンク61に供給される。重水の供給量は、重水供給用配管70に設けられたバルブV5によって制御される。
不活性ガス供給部71は、不活性ガス供給用配管72と、除湿装置73と、乾燥不活性ガス供給配管74とを備える。不活性ガス供給用配管72は、ガス源(不図示)と除湿装置73との間に設けられている。乾燥不活性ガス供給配管74は、除湿装置73と電解質溶液タンク61との間に設けられている。
不活性ガス供給部71では、ガス源(不図示)から供給された不活性ガスを、乾燥不活性ガス供給配管74を介して電解質溶液タンク61に供給する。これにより、電解質溶液タンク61内が加圧される。
電解質溶液タンク61の底部には、電解質塩63が配置される。電解質塩63としては、特に制限はなく、例えば、硝酸セシウム(CsNO)、水酸化セシウム(CsOH)、硝酸ナトリウム(NaNO)、及び硝酸ストロンチウム(SrNO)などの上述した核種変換物質と同一の元素を含む電解質塩を用いることができる。これらの電解質塩63は、重水に浸漬されることにより溶解して電解質溶液となる。
電解質溶液タンク61の外周部には、電解質溶液タンク61内の電解質溶液を所定温度に加熱するヒータ64が配置される。電解質溶液中の電解質濃度は、電解質溶液の温度と重水供給部65からの重水供給量とを制御することにより調整される。電解質溶液の濃度としては、例えば、0.001mol/lから飽和濃度の間の濃度である。
電解質溶液供給用配管62は、電解質溶液タンク61と反応装置100の貯留部101との間に設けられている。電解質溶液タンク61内が加圧されることにより、電解質溶液が電解質溶液供給用配管62を介して貯留部101に共有される。電解質溶液の供給量は、電解質溶液供給用配管62に設けられたバルブV4によって制御される。
貯留部101には、重水補充部80が接続されている。この重水補充部80は、不活性ガス供給用配管81と、除湿装置82と、乾燥不活性ガス供給配管83と、内部に重水を貯留する重水タンク84と、重水補充用配管85とを備える。不活性ガス供給用配管81は、ガス源(不図示)と除湿装置82との間に設けられている。乾燥不活性ガス供給配管83は、除湿装置82と重水タンク84との間に設けられている。重水補充用配管85は、重水タンク84と貯留部101との間に設けられている。
重水補充部80では、ガス源(不図示)から供給された不活性ガスが、不活性ガス供給用配管81、除湿装置82、及び乾燥不活性ガス供給配管83を介して重水タンク84に供給される。これにより、重水タンク84内が加圧され、重水が重水補充用配管85を介して貯留部101に供給される。重水の供給量は、重水補充用配管85に設けられたバルブV6によって制御される。
再供給配管35には、洗浄水供給部90が接続されている。この酸溶液供給部90は、不活性ガス供給用配管91と、除湿装置92と、乾燥不活性ガス供給配管93と、内部に洗浄水を貯留する洗浄水タンク94と、洗浄水供給用配管95とを備える。不活性ガス供給用配管91は、ガス源(不図示)と除湿装置92との間に設けられている。乾燥不活性ガス供給配管93は、除湿装置92と洗浄水タンク94との間に設けられている。洗浄水供給用配管95は、洗浄水タンク94と再供給配管35との間に設けられている。洗浄水供給用配管95には、洗浄水の流量を調整するバルブV7が設けられている。洗浄水としては、重水及び上述した第1の実施の形態と同様の純水を用いることができる。
洗浄水供給部90では、ガス源(不図示)から供給された不活性ガスが、不活性ガス供給用配管91、除湿装置92、及び乾燥不活性ガス供給用配管93を介して洗浄水タンク94に供給される。これにより、洗浄水タンク94内が加圧され、洗浄水が洗浄水供給用配管95を介して貯留部101に供給される。
また、再供給配管35には、酸溶液供給部200が接続されている。この洗浄液供給部200は、不活性ガス供給用配管201と、除湿装置202と、乾燥不活性ガス供給配管203と、内部に酸溶液を貯留する酸溶液タンク204と、酸溶液供給用配管205とを備える。不活性ガス供給用配管201は、ガス源(不図示)と除湿装置202との間に設けられている。乾燥不活性ガス供給配管203は、除湿装置202と酸溶液タンク204との間に設けられている。酸溶液供給用配管205は、酸溶液タンク204と再供給配管35との間に設けられている。酸溶液供給用配管205には、酸溶液の流量を調整するバルブV202が設けられている。酸溶液としては、重水及び上述した第1の実施の形態と同様の酸溶液を用いることができる。
酸溶液供給部200では、ガス源(不図示)から供給された不活性ガスが、不活性ガス供給用配管201、除湿装置202、及び乾燥不活性ガス供給用配管203を介して酸溶液タンク204に供給される。これにより、酸溶液タンク204内が加圧され、酸溶液が酸溶液供給用配管205を介して貯留部101に供給される。
次に、本実施の形態に係る核種変換反応膜の再生方法について説明する。まず反応装置100に核種変換反応膜103を設置した後、電着液供給部50の不活性ガス供給用配管53のバルブV13、乾燥不活性ガス供給配管55のバルブV23、及び電着液供給用配管52のバルブV3が開放される。これにより、電着液タンク51内の電着液が電着液供給用配管52及び再供給配管35を介して貯留部101に供給され、所定量の電着液が貯留部101に貯留されるとバルブV1、V3、V13及びV23が閉止されてポンプ34が停止される。そして、電源105が電極104に電圧を印加することにより、電着液中のパラジウムなどの水素吸蔵金属が核種変換物質と共に核種変換反応膜103の表面に電着された電着層が形成される。
次に、バルブV2を開放すると共にポンプ34を起動して貯留部101内の電着液を抜出配管31及び排出部40を介して外部に排出した後、貯留部101などの残留する電着液を必要に応じて洗浄する。次に、電解質溶液供給部60の不活性ガス供給用配管72のバルブV14、乾燥不活性ガス供給配管74のバルブV24、及び電解質溶液供給用配管62のバルブV4が開放される。これにより、電解質溶液タンク61内の電解質溶液が電解質溶液供給用配管62を介して貯留部101に供給され、貯留部101に供給された電解質溶液は循環部30で循環されながら熱交換器32によって所定温度(例えば、20℃以上40℃以下)に調整される。次に、減圧装置107によって重水素低濃度部102内が減圧されると共に、核種変換反応膜103がヒータ20によって所定温度(例えば、70℃)に加熱される。
次に、電源105が電極104に電圧を印加することにより、核種変換反応膜103の表面で重水(DO)が電気分解されて重水素(D)が発生する。これにより、発生した重水素が核種変換反応膜103を透過して重水素低濃度部102側に流れるので、核種変換反応膜103の電着層内で核種変換反応が進行して核種変換物質(例えば、Cs)が他の元素の被変換物質(例えば、Pr)に変換される。ここでは、必要に応じて電解質溶液供給部60及び重水補充部80から貯留部101に電解質溶液及び重水が供給されると共に、重水供給部65から電解質溶液タンク61に重水が供給される。
次に、電源105が、電極104への電圧の印加を停止した後、排出部40を介して電解質溶液を排出する。次に、酸溶液供給部200の不活性ガス供給用配管201のバルブV200、乾燥不活性ガス供給配管203のバルブV201、及び酸溶液供給用配管205のバルブV202が開放される。これにより、酸溶液タンク204内の酸溶液が酸溶液供給用配管205及び再供給配管35を介して貯留部101に供給され、所定量の酸溶液が貯留部101に貯留されるとバルブV200、V201、及びV202が閉止される。そして、ポンプ34を駆動して貯留部101内の酸溶液を再供給配管35を介して循環することにより、核種変換反応膜103の最表層のパラジウム層12Aが当該パラジウム層12内の被変換物質13と共に溶解する。これにより、核種変換反応膜103によって核種変換された核種変換物質を回収することが可能となる。
次に、排出部40を介して貯留部101内の溶出成分を含む電解質溶液を排出した後、洗浄水供給部90の不活性ガス供給用配管91のバルブV17、乾燥不活性ガス供給配管93のバルブV27、及び洗浄水供給用配管95のバルブV7が開放される。これにより、洗浄水タンク94内の洗浄水が洗浄水供給用配管95及び再供給配管35を介して貯留部101に供給され、所定量の洗浄水が貯留部101に貯留されるとバルブV17、V27、及びV7が閉止される。そして、ポンプ34を駆動して貯留部101内の洗浄水を再供給配管35を介して循環することにより、最表層のパラジウム層12Aが除去された核種変換反応膜103の表面を洗浄することが可能となる。次に、排出部40を介して貯留部101内の洗浄水を排出した後、再び電着液供給部50から電着液を供給して最表層のパラジウム層12Aが除去された核種変換反応膜103の表面に核種変換物質を含むパラジウム層12を設けることにより、核種変換反応膜103を再生することが可能となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、貯留部101内に設けた核種変換反応膜103の表面に、電着によって核種変換物質を含む電着層を設けて核種変換を行うと共に、核種変換反応後の被変換物質を含む核種変換反応膜103の最表層のパラジウム層12を酸溶液供給部200から貯留部101内に供給した酸溶液によって溶解除去する。そして、最表層のパラジウム層12Aの溶解除去後の核種変換反応膜103の表面を、洗浄水供給部90から貯留部101内に供給した洗浄水によって洗浄した後、再び電着液供給部50から電着液を供給して核種変換反応膜103の表面上に核種変換物質を含むパラジウム層12を設ける。これらにより、膜再生システム5は、反応装置100から核種変換反応膜103を取り外すことなく連続的に核種変換物質を被変換物質13に変換して回収することが可能となる。
1,2,3,4 核種変換反応膜
5 膜再生システム
10 基材
11 酸化カルシウム層(中間層)
12 パラジウム層(中間層)
12A パラジウム層(表面層)
13 被変換物質

Claims (6)

  1. Pdを含む基材と、前記基材上に設けられ、CaOを含む第1層とPdを含む第2層とが交互に積層された中間層と、前記中間層上に設けられ、Pdを含む表面層と、を備えた核種変換反応膜の再生方法であって、
    前記核種変換反応膜を酸溶液で処理して前記中間層及び前記表面層の全てを溶解除去して核種変換反応後の被変換物質を回収する酸洗浄工程と、
    前記中間層及び前記表面層が溶解除去された前記基材を純水によって洗浄する純水洗浄工程と、
    純水によって洗浄された前記基材上に、前記中間層及び前記表面層を積層して核種変換反応膜を再生する積層工程と、を含むことを特徴とする核種変換反応膜の再生方法。
  2. Pdを含む基材と、前記基材上に設けられ、CaOを含む第1層とPdを含む第2層とが交互に積層された中間層と、前記中間層上に設けられ、Pdを含む表面層と、を備えた核種変換反応膜の再生方法であって、
    前記核種変換反応膜を酸溶液で処理して前記表面層のみを溶解除去して核種変換反応後の被変換物質を回収する酸洗浄工程と、
    前記表面層が溶解除去された前記核種変換反応膜を純水によって洗浄する純水洗浄工程と、
    純水によって洗浄された前記核種変換反応膜上に、前記表面層を積層して核種変換反応膜を再生する積層工程と、を含むことを特徴とする核種変換反応膜の再生方法。
  3. 前記積層工程において、核種変換物質と共に前記表面層を電着により積層する請求項
    2に記載の核種変換反応膜の再生方法。
  4. 前記酸溶液が、硝酸、王水、及びフッ化水素酸からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の核種変換反応膜の再生方法。
  5. 前記酸溶液が硝酸である、請求項2または請求項3に記載の核種変換反応膜の再生方法。
  6. Pdを含む基材と、前記基材上に設けられ、CaOを含む第1層とPdを含む第2層とが交互に積層された中間層と、前記中間層上に設けられ、Pdを含む表面層と、を備えた核種変換反応膜が配置され、前記核種変換反応膜を用いた核種変換反応及び前記表面層が除去された前記核種変換反応膜への電着を行う反応装置と、
    前記反応装置に核種変換物質を含有する電着液を供給する電着液供給部と、
    前記反応装置に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、
    前記反応装置に酸溶液を供給する酸溶液供給部とを備えたことを特徴とする膜再生システム。
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