JP6636225B1 - 多結晶シリコン破砕塊およびその製造方法 - Google Patents

多結晶シリコン破砕塊およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 多結晶シリコン破砕塊において、破壊具の材質に由来して不可避的に汚染を生じせしめる、タングステンやコバルトについて共に高度に除去させたものを得ること。【解決手段】 表面金属濃度が15.0pptw以下、好適には7.0〜13.0pptwであり、該表面金属濃度のうち、表面タングステン濃度が0.9pptw以下、好適には0.40〜0.85pptwであり、且つ表面コバルト濃度が0.3pptw以下、好適には0.04〜0.08pptwである、ことを特徴とする多結晶シリコン破砕塊。【選択図】 なし

Description

本発明は、多結晶シリコン破砕塊に関し、詳しくは多結晶シリコンロッドを破砕して得られる、表面が清浄な多結晶シリコン破砕塊に関する。また、本発明は多結晶シリコン破砕塊の製造方法に関する。
高密度集積電子回路は高純度の単結晶シリコンウェーハが必要である。通常において、単結晶シリコンウェーハは、CZ法〔Czochralski(チョクラルスキー)法〕により製造した単結晶シリコンロッドから切り出すことで得られる。このCZ法単結晶シリコンロッドを製造するための原料として、ポリシリコンとも呼ばれる多結晶シリコンが用いられている。
こうした多結晶シリコンの製造方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法は、ベルジャー型の反応容器内部に配置されたシリコン芯線を通電によってシリコンの析出温度に加熱し、反応容器に、トリクロロシラン(SiHCl)やモノシラン(SiH)等のシラン化合物のガスと水素を供給し、化学気相析出法によりシリコン芯線上に多結晶シリコンを析出させ、高純度の多結晶シリコンロッドを得る。
得られた多結晶シリコンロッドは、次工程に使用する装置または次工程での製造対象物の製造に適した大きさに破砕、選別され、次工程へと搬送される。具体的には多結晶シリコンロッドを、硬質金属から構成されるハンマーなどにより砕き多結晶シリコン粗破砕塊を得る。その後、該多結晶シリコン粗破砕塊を、硬質金属からなる破砕装置により所望の粒子サイズに破砕し、次いで必要に応じ分級装置により所望のサイズに分級し、粒子サイズごとに分けられた多結晶シリコン破砕塊が得られる。而して、この多結晶シリコン破砕塊が、前記CZ法単結晶シリコンロッドの原料として用いられる。
多結晶シリコンロッドから多結晶シリコン破砕塊を得るまでの各破砕処理において、ハンマーやジョークラッシャー等の破壊具の打撃部に用いられている硬質金属は、通常、炭化タングステン/コバルト合金(WC/Co合金)である。即ち、WC/Co合金は、炭化タングステン(WC)と結合剤(バインダ)であるコバルト(Co)との焼結体からなる超硬合金である(例えば、特許文献1〔0016〕、特許文献2〔0009〕、特許文献3〔0022〕参照)。
従って、多結晶シリコン破砕塊の表面は、これらWC/Co合金を主とした、金属不純物により汚染されることが避けられない。而して、金属不純物は、少量であっても、高密度集積電子回路等に用いられる単結晶シリコンウェーハにおいて欠陥部位を生じさせ、それが最終的にデバイスの性能を劣化させると共に回路密度を制限させてしまう。
このため多結晶シリコン破砕塊において、前記表面の金属不純物濃度は可能な限り低減させる必要性があり、洗浄などを行い、これを除去し表面清浄度を高くすることが行われている。シリコンからなる半導体基板の表面を洗浄する方法として、フッ硝酸水溶液によるエッチング処理が行われている(例えば、特許文献4参照)。フッ硝酸水溶液によるエッチング処理は、多結晶シリコン破砕塊の洗浄にも適用され、多結晶シリコン破砕塊の表面に形成される酸化膜を良好に溶解させ、これに付着する種々の金属やその酸化物も溶解させる。また、フッ硝酸水溶液は、酸化膜だけでなくシリコンの溶解性にも優れるため、シリコン表面に埋入している前記金属不純物についても相当に除去できる。
しかしながら、回路の高密度化が進む半導体分野において、ウェーハの欠陥防止の要求は益々に高まり、多結晶シリコン破砕塊の表面はさらに金属不純物濃度を低減させる必要があった。特に、不純物金属が炭化物の場合、前記フッ硝酸水溶液に対する溶解性が極度に低いため、前記破壊具の材質に含まれる、炭化タングステン(WC)の除去効果は満足いくものではなく、タングステンの濃度を2pptw以下にはできていなかった(例えば、特許文献5の比較例参照)。このため、前記フッ硝酸水溶液による洗浄だけでなく、他の洗浄液による洗浄工程とも組合せて、金属不純物の除去性を向上させることが種々提案されている。
例えば、フッ硝酸水溶液による洗浄の前後に特定の酸化性溶液(予備洗浄:フッ硝酸とヘキサフルオロケイ酸との水溶液、後洗浄:オゾン水溶液)で洗浄する方法などが知られている(前記特許文献5〔0024〕参照)。また、前記フッ硝酸水溶液によるエッチング処理の前に、酸性液やアルカリ性液で予備洗浄し、且つ該フッ硝酸水溶液よるエッチング処理の後に、オゾン水による親水化処理を施す方法などが知られている(特許文献6〔0065〕〔0080〕参照)。ここで、上記フッ硝酸水溶液によるエッチング処理の前に施すアルカリ性液としては、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液が示されている。
特開2006−192423号公報 特表2009−531172号公報 国際公開第15/122455号パンフレット 特開平06−21034号公報 特表2010−536698号公報 特開2014−31309号公報
これらのフッ硝酸水溶液と他の洗浄液による洗浄工程とを組合せた場合、多結晶シリコン破砕塊のシリコン表面の溶解性をさらに高め、例えば、前記特許文献6の実施例1〜3であれば、破砕塊の表面を30μm以上も深くにエッチング除去することで、前記炭化物の形態で存在して溶解除去し難いタングステンを始め、種々の金属不純物について、検出限界以下から数pptwの低さで清浄化することを実現できている。
しかしながら、不純物として着目される主要金属元素(Na,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Ni,Co,Cu,Zn,W,Ti,Mo)を合計しての表面金属濃度で示すと、依然として15pptwを遙かに超える多さであり、また、前記破壊具の材質として不可避的な汚染金属である、タングステンやコバルトも、8回の測定の平均値では1pptwを下回る測定結果は得られていない(〔表2〕〔表4〕〔表6〕)。また、特許文献6の洗浄法では、エッチング代が30μmであり、エッチング液の消費量が多く、コスト増の原因となっている。なお、エッチング代とは、洗浄工程で除去される多結晶シリコン破砕塊の表面の厚みをいう。
以上から、多結晶シリコン破砕塊において、その表面金属汚染をさらに低減させ、特に、前記破壊具の材質に由来して不可避的に汚染を生じせしめる、タングステンやコバルトについて共に高度に除去させたものを得ることが大きな課題であった。また、本発明は少ないエッチング代であっても、表面金属不純物を低減させ得る技術の提供を目的としている。
上記課題に鑑み、本発明者等は鋭意検討を続けてきた。その結果、多結晶シリコン破砕塊の洗浄において、フッ硝酸水溶液による洗浄に加えて、過酸化水素を含むアルカリ水溶液による洗浄を、特定の態様で組合せることにより、エッチング代が少なくても、金属不純物濃度を大きく低減でき、タングステンもコバルトも共に高度に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、表面金属濃度が15.0pptw以下であり、該表面金属濃度のうち、表面タングステン濃度が0.9pptw以下であり、且つ表面コバルト濃度が0.3pptw以下である、ことを特徴とする多結晶シリコン破砕塊である。
また、本発明は、上記多結晶シリコン破砕塊が、樹脂製袋に収納されてなる、多結晶シリコン破砕塊梱包体も提供する。
さらに、本発明は、上記多結晶シリコン破砕塊の製造方法として、
a)多結晶シリコンロッドの破砕工程、
b)得られた多結晶シリコンロッドの破砕塊をフッ硝酸水溶液と接触させる第一洗浄工程、
c)第一洗浄工程を経た多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、過酸化水素を含むアルカリ水溶液と接触させる第二洗浄工程
d)第二洗浄工程を経た多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、フッ硝酸水溶液と接触させる第三洗浄工程
を含んでなる方法も提供する。
本発明の多結晶シリコン破砕塊は、表面が高度に清浄化されており、金属不純物濃度が15.0pptw以下、さらに、多結晶シリコン破砕塊を得るための破壊具の材質に由来する不可避的な汚染金属である、タングステンやコバルトについても、前者は0.9pptw以下、後者も0.3pptw以下である。従って、斯様に表面が清浄な多結晶シリコン破砕塊は、回路の高密度化が進む半導体分野において、欠陥の少ない単結晶シリコンウェーハを切り出すためのCZ法単結晶シリコンロッド製造原料として、極めて有用である。
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明に係る多結晶シリコン破砕塊は、多結晶シリコンロッドを破砕して得られる多結晶シリコンの破砕塊である。上記多結晶シリコンロッドは、製造方法が制限されるものではないが、通常は、シーメンス法によって製造されたものが対象になる。ここで、シーメンス法とは、トリクロロシランやモノシラン等のシラン原料ガスを加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法により気相成長(析出)させる方法である。得られた多結晶シリコンロッドを破砕し、多結晶シリコン破砕塊を得る。多結晶シリコン破砕塊の大きさは、少なくとも90質量%が、長径の長さが2〜160mmの範囲内であるのが好ましい。この範囲において、粒度に応じて分けられるのが一般的で、具体的には、少なくとも90質量%が、長径の長さが90〜160mmの範囲内のもの、少なくとも90質量%が、長径の長さが10〜120mmの範囲内のもの、少なくとも90質量%が、長径の長さが10〜60mmの範囲内のもの、又は少なくとも90質量%が、長径の長さが2〜10mmの範囲内のもの等に分けられる。
多結晶シリコンロッドには、原材料や周辺装置由来の不純物が多結晶シリコンロッドの製造時に混入する。これはバルク汚染と呼ばれる。多結晶シリコン破砕塊は、バルク汚染に加えて、多結晶シリコンロッドを製造後、該破砕塊に破砕し、これを包装するまでの後処理工程、例えば、破砕、分級、洗浄、搬送、包装等の各工程において、装置や取扱い部材との接触により、さらなる種々の金属汚染を受ける。この汚染は、多結晶シリコン破砕塊の表面に付着し、表面金属汚染と呼ばれる。多結晶シリコン破砕塊の表面を汚染する主要な金属として、表面金属濃度の対象とする元素は、Na,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Ni,Co,Cu,Zn,W,Ti,Moの14元素である。
なお、本発明において、上記多結晶シリコン破砕塊の表面金属濃度は、多結晶シリコン破砕塊に含まれる各金属の質量を、多結晶シリコン破砕塊の単位質量当りの含有量(pptw)として示した値であり、以下の方法により測定される値を言う。即ち、測定対象の多結晶シリコン破砕塊表面の金属濃度分析は、多結晶シリコン破砕塊の表面を溶解除去し、得られたサンプル液中の各金属元素を誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)にて分析定量する。具体的には、多結晶シリコン破砕塊約40gを500mlの清浄なポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに移し、溶解液100ml(50質量%−HF:10ml、70質量%−硝酸:90ml)を加えて25℃で15分間の抽出を行う。上記ビーカー中の液分及び多結晶シリコン破砕塊の表面を超純水100mlを用いて洗った洗浄液を、清浄なポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに移し多結晶シリコン破砕塊の表面抽出液とする。そうして、この表面抽出液を蒸発乾固させ、残滓に3.5質量%−硝酸水溶液を加え20.0ml定容化しサンプル液とし、前記ICP―MS測定を行い、Na,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Ni,Co,Cu,Zn,W,Ti,Moの各表面金属質量を測定する。多結晶シリコン破砕塊の表面金属濃度は、この各表面金属質量の測定値を、抽出前の多結晶シリコン破砕塊の質量で除することにより、多結晶シリコン破砕塊の単位質量当たりの含有量(pptw)として求める。
本発明に係る多結晶シリコン破砕塊は、上記表面金属濃度が15.0pptw以下である。表面金属濃度は、7.0〜13.0pptwであるのがより好ましい。表面金属濃度が、斯様に少ないため、欠陥の少ない単結晶シリコンウェーハを切り出すためのCZ法単結晶シリコンロッド製造原料として有用である。これら表面金属濃度のうち、表面タングステン濃度と表面コバルト濃度は後述するとおりの含有濃度であるが、その他金属の各表面濃度は、高いものでも5pptw以下、より好ましくは3pptw以下に抑えられているのが好ましい。
さらに、本発明に係る多結晶シリコン破砕塊は、上記表面金属濃度のうち、表面タングステン濃度が0.9pptw以下であり、且つ表面コバルト濃度が0.3pptw以下である。好適には、表面タングステン濃度は0.30〜0.90pptwであり、特に好適には0.40〜0.85pptwであり、表面コバルト濃度は0.03〜0.10pptwであり、特に好適には0.04〜0.08pptwである。前記したように多結晶シリコン破砕塊を得るための、多結晶シリコンロッドの破砕で使用される破壊具の打撃部材質は、通常、WC/Co合金である。しかし、タングステン炭化物は、多結晶シリコン破砕塊の洗浄で通常使用されるフッ硝酸水溶液では溶解性が極めて低く、除去しがたい。従って、前記低い表面金属濃度を達成し、しかも表面タングステン濃度及び表面コバルト濃度も低い値として達成していることは、本発明における大きな特徴である。
斯様に表面が清浄な多結晶シリコン破砕塊は、その製造方法が制限されるものではないが、好適な製造方法を示せば、以下の方法になる。即ち、
a)多結晶シリコンロッドの破砕工程、
b)得られた多結晶シリコンロッドの破砕塊をフッ硝酸水溶液と接触させる第一洗浄工程、
c)第一洗浄工程を経た多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、過酸化水素を含むアルカリ水溶液と接触させる第二洗浄工程
d)第二洗浄工程を経た多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、フッ硝酸水溶液と接触させる第三洗浄工程
を含んでなる方法である。この方法によれば、a)多結晶シリコンロッドの破砕工程で、破壊具の打撃部材質が通常、WC/Co合金であることにより生じる、炭化タングステン(WC)やコバルト(Co)による表面汚染が、続くb)〜d)の洗浄工程で、前記範囲にまで、高度に清浄化させることが可能になる。
これは、次の作用によるものと推測される。即ち、前記a)工程での破壊具による打撃により、多結晶シリコン破砕塊表面は、該WC/Co合金粒子により局部的に汚染される。ここで、WC/Co合金粒子は、炭化タングステン粒子がコバルトマトリックス中に分散した凝集体構造であり、該炭化タングステン粒子は高剛性の粒子であるため、これらは多結晶シリコン破砕塊表面に形成された酸化膜に付着するだけでなく、その表層部内に打ち込まれるものも存在する。そして、この中にはシリコン表層部において、表面から30μmを超えて深くに侵入しているものも散在する。
斯様に多結晶シリコン破砕塊表面を汚染した金属不純物は、続くb)第一洗浄工程での、フッ硝酸水溶液による洗浄で、その多くは溶解除去される。即ち、酸化膜はフッ硝酸水溶液に溶解し、これに付着するWC/Co合金粒子も破砕塊表面から離脱し除去される。また、その他の付着金属も溶解除去される。また、破砕塊への打撃に伴って、シリコン表層部に埋入している金属も、フッ硝酸水溶液は多結晶シリコンの溶解性にも優れるため、浅く侵入しているものについては表面に露出し、良好に溶解除去される。また、前記WC/Co合金粒子も、コバルトマトリックスは良好に溶解除去され、さらに、炭化タングステン粒子も、前記フッ硝酸水溶液への溶解性は低いものの、これが前記浅い侵入であれば、コバルトマトリックスの溶解により完全露出し、破砕塊表面から離脱して除去される。
しかしながら、WC/Co合金粒子でも、その下端が、シリコン表層部に深くに侵入しているものは、除去が困難になる。すなわち、上記b)工程のフッ硝酸水溶液によるエッチング処理では、上部はシリコンの溶解により露出させることができても、溶解部を粒子の下端まで完全に及ばせることができなかったものは残る。具体的には、30μmの深さまでエッチング処理しても、その下端まで完全に露出させることができない粒子が散在する。
そして、こうして残存したWC/Co合金粒子では、露出する上部のコバルトマトリックス部分について、前記と同様に溶解除去できても、WC/Co合金粒子の下端がシリコン内部に埋入しているままでは、炭化タングステン粒子部分を破砕塊表面から離脱除去させることは困難になる。そして、当然に、シリコン内部に埋入したままのWC/Co合金粒子下端では、上記炭化タングステンだけでなく、コバルトマトリックスも残存する。この場合、該WC/Co合金粒子下端の侵入に付帯して埋入したその他の金属不純物も残る。即ち、これが前記特許文献6の実施例1〜3において、多結晶シリコン破砕塊の表面を30μmの深くにエッチング除去しているにも関わらず、タングステン濃度を始め、金属不純物の総濃度を、満足できるほどには低減できていない原因と推察できる。
これに対して、本洗浄方法では、上記b)第一洗浄工程での、フッ硝酸水溶液による洗浄に続けて、さらにc)第二洗浄工程で、過酸化水素を含むアルカリ水溶液による洗浄を施す。この場合、c)第二洗浄工程の洗浄液と接触した、炭化タングステン粒子は、まず、該洗浄液に含まれる過酸化水素の作用により酸化される。そうして、斯様に酸化タングステンに変われば、これはアルカリ水溶液に高い溶解性を示すようになる。よって、本洗浄工程によれば、前記b)第一洗浄工程での洗浄では除去できず、多結晶シリコン破砕塊の表面上に露出する炭化タングステン粒子上部は、酸化タングステンに変化させて、アルカリ水溶液に良好に溶解除去させることができる。そして、斯様に炭化タングステン粒子の露出部が除去できれば、その溶解面から、シリコン内部に埋入する、WC/Co合金粒子下端における、炭化タングステンにも、アルカリ水溶液の溶解除去作用を及ばせることができる。この結果、該WC/Co合金粒子下端は、炭化タングステン部分が溶解除去され、WC/Co合金の凝集体構造が壊れる。すなわち、第ニ洗浄工程では、過酸化水素による炭化タングステンの酸化と、アルカリによる酸化タングステンの溶解が起こり、結果として炭化タングステンが除去される。
そしてさらに、本発明での洗浄方法では、d)第三洗浄工程で、再度フッ硝酸水溶液による洗浄を施す。c)第二洗浄工程において、上記シリコン内部に深く侵入しているWC/Co合金粒子下端も、その炭化タングステン部分は溶解除去され、凝集体構造が壊れている。このため、d)第三洗浄工程でフッ硝酸水溶液を、破砕塊の内部まで深く浸透させることができ、残存するコバルトマトリックスやその他、付帯して汚染していた金属不純物を高度に溶解除去できる。斯くして、前記b)〜d)の各洗浄工程を組合せて施せば、得られる多結晶シリコン破砕塊は、前記範囲にまで、高度に清浄化されたものになる。
この洗浄方法において、a)多結晶シリコンロッドの破砕工程は、CZ法多結晶シリコンロッドを、破壊具を用いて常法に従い、前記破砕塊の大きさに破砕すれば良い。これら破壊具は、手動式のハンマーの他、ジョークラッシャー、ロールクラッシャー、ハンマーミル等の機械式衝撃工具が挙げられる。
これら破壊具の材質が、通常、WC/Co合金であることは前述のとおりである。WC/Co合金において、炭化タングステンの含有量は好適には78〜90質量%、より好適には80〜88質量%で、コバルトの含有量は好適には10〜22質量%、より好適には12〜20質量%である。
また、b)第一洗浄工程において、洗浄液のフッ硝酸水溶液は、フッ化水素、硝酸、及び水を含むものである。各成分の配合割合は、多結晶シリコン破砕塊の状態や前処理条件等により、適宜最適な割合を決定すればよいが、以下の配合割合とすることが好ましい。具体的には、水100質量部に対して、フッ化水素を1〜20質量部、硝酸を150〜250質量部含むことが好ましい。フッ化水素は、1.5〜16質量部であることがより好ましく、14〜16質量部であることがさらに好ましい。
フッ硝酸水溶液に用いる水は、当然に、金属含有量の少ない水を使用するのが好ましく、通常、超純水が使用される。
また、フッ硝酸水溶液には、必要により、多結晶シリコン破砕塊に対する濡れ性等を向上させるため、界面活性剤を配合しても良い。界面活性剤は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸塩等のアニオン性界面活性剤が好ましく、その含有量は水100質量部に対して0.01〜1質量部である。これらの界面活性についても、金属イオンの含有量が少ないものが好ましい。
洗浄方法は、多結晶シリコン破砕塊をb)第一洗浄工程の前記洗浄液と接触させればよい。具体的な方法としては、多結晶シリコン破砕塊に該洗浄液を吹付ける等であっても良いが、通常は、該洗浄液に浸漬する方法が採用される。浸漬槽は、箱型の構造のものなどを適宜に用いれば良い。
フッ硝酸水溶液による洗浄は多段階で実施することもできる。各段階でのフッ硝酸水溶液の濃度は、同じであっても、異なっていてもよい。
洗浄液の温度は、特に制限されるものではないが、0〜70℃が好ましく、さらには5〜40℃が好ましく、特に10〜30℃が好ましい。
また、洗浄によるエッチング代、洗浄時間は、破砕塊の大きさ、形状、金属不純物量、洗浄時の温度、および洗浄液のフッ硝酸濃度等に応じて適宜決定すればよい。エッチング代として破砕塊が表面から1.5〜10μmエッチングされることが好ましく、さらに3〜7.5μmエッチングされることが好ましい。具体的な洗浄時間は、0.8〜25分が好ましく、特には3.5〜20分である。
なお、本発明において、多結晶シリコン破砕塊のエッチング代は、質量および表面積を測定した多結晶シリコン小片群を、多結晶シリコン破砕塊と共にエッチング処理し、多結晶シリコン小片群のエッチング前後の質量差によって求めた値をいう。
以上のb)第一洗浄工程による洗浄を経た多結晶シリコン破砕塊は、そのまま次工程のc)第二洗浄工程に供しても良いが、付着するフッ硝酸水溶液による、該第二洗浄工程の洗浄液の劣化を防止するため、水洗してからc)第二洗浄工程に供するのが好ましい。水洗に用いる水も超純水を使用することが好ましい。水洗した後の多結晶シリコン破砕塊は、送風乾燥(通気乾燥)により、乾燥させて次工程に供しても良い。
続くc)第二洗浄工程において、洗浄液は、過酸化水素、アルカリ化合物、及び水を含むものである。各成分の配合割合は、b)第一洗浄工程を経た、多結晶シリコン破砕塊の表面状態等により、適宜最適な割合を決定すればよいが、以下の配合割合とすることが好ましい。具体的には、アルカリ化合物は、水100質量部に対して、1〜10質量部、より好ましくは2〜5質量部溶解させるのが好ましい。
ここで、アルカリ化合物は、アミン系アルカリ化合物が通常使用され、アンモニアの他、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の脂肪族アンモニウム化合物や、フェニルアミン(アニリン)、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族アンモニウム化合物など挙げられる。
これらのアルカリ化合物の内、脂肪族アンモニウム化合物、特には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが、酸化タングステンの溶解除去効果に特に優れるため好ましい。
アルカリ水溶液に用いる水も、当然に、金属含有量の少ない水を使用するのが好ましく、通常、超純水が使用される。こうしたアルカリ水溶液に溶解させる過酸化水素の含有量は、水100質量部に対して1〜10質量部、より好ましくは2〜5質量部であるのが好ましい。また、c)第二洗浄工程における洗浄液のpHは、好ましくは8以上、さらに好ましくは9〜14の範囲にある。洗浄液のアルカリ化合物濃度およびpHを上記範囲とすることで、過酸化水素による炭化タングステンの酸化と、アルカリによる酸化タングステンの溶解がバランス良く起こり、炭化タングステンを高い効率で除去できる。
この他、c)第二洗浄工程において、洗浄液の温度は、特に制限されるものではないが、20〜100℃が好ましく、さらには40〜90℃が好ましく、特に50〜80℃が好ましい。なお、洗浄方法は前記したb)第一洗浄工程の場合と同様である。さらに、c)第二洗浄工程における洗浄時間は、タングステンの除去効果を勘案すれば1〜20分が好ましく、特には3〜6分である。
以上のc)第二洗浄工程による洗浄を経た多結晶シリコン破砕塊も、水洗や、さらには乾燥を施してから、次工程のd)第三洗浄工程に供するのが好ましい。
前記c)第二洗浄工程を経てから施す、d)第三洗浄工程のフッ硝酸水溶液による洗浄も、詳細は前記b)第一洗浄工程と同様に実施すれば良い。
d)第三洗浄工程でのエッチング代は、1.5〜10μmエッチングされることが好ましく、さらに3〜7.5μmエッチングされることが好ましい。また、b)第一洗浄工程でのエッチング代と併せて、その合計エッチング代が20μmを超えない範囲、さらに、15μmを超えない範囲とするのが好ましい。具体的な洗浄時間は、0.8〜25分が好ましく、特には3.5〜20分である。
以上のd)第三洗浄工程による洗浄を経た多結晶シリコン破砕塊も、これらは水洗や、さらには乾燥を施すのが好ましい。得られた本発明の多結晶シリコン破砕塊は、樹脂製袋に収納して多結晶シリコン破砕塊梱包体とするのが好ましい。上記樹脂製袋は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等の樹脂材質が使用できる。袋の形状は、多結晶シリコン破砕塊を収納し、密閉できる形状であれば特に制限されない。例えば、従来から多結晶シリコン破砕塊の包装に使用されているガゼット袋が一般に使用される。樹脂製袋への収納量は、袋の容量に対して25〜75体積%が好ましい。また、上記量で収納した後、減圧して多結晶シリコン破砕塊と密着させる態様としても良い。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、多結晶シリコン破砕塊のエッチング代および表面金属汚染量は、それぞれ以下のようにして求めた値である。
1)多結晶シリコン破砕塊のエッチング代
エッチング代測定用として一辺が約7mmの立方体である多結晶シリコン50ケから成る多結晶シリコン小片群を用意した。多結晶シリコン小片群の乾燥状態の総質量を事前に測定しておき、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ネット内に収めた状態で、第一洗浄工程または第三洗浄工程において、多結晶シリコン破砕塊と共に洗浄に供した。次に、洗浄処理後の多結晶シリコン小片群の総質量を測定し、洗浄処理前後の質量差と該多結晶シリコン小片群の全表面積をもとに、除去された表面層の厚み(エッチング代)を算出した。
2)多結晶シリコン破砕塊の表面金属汚染量
多結晶シリコン破砕塊約40gを500mlの清浄なポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに移し、溶解液100ml(50質量%−HF:10ml、70質量%−硝酸:90ml)を加えて25℃で15分間の抽出を行った。上記ビーカー中の液分、及び多結晶シリコン破砕塊の表面を超純水100mlを用いて洗った洗浄液を、清浄なポリテトラフルオロエチレン製ビーカーに移し多結晶シリコン破砕塊の表面抽出液とした。係る多結晶シリコン破砕塊の表面抽出液を蒸発乾固させ、3.5質量%−硝酸水溶液を加え20.0ml定容化しICP―MS測定を行い、Na,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Ni,Co,Cu,Zn,W,Ti,Moの各表面金属質量を測定した。この各表面金属質量の測定値を、抽出前の多結晶シリコン破砕塊の質量で除することにより、多結晶シリコン破砕塊の単位質量当たりの含有量(pptw)として評価した。なお、ICP−MSの測定装置は、Agilent 社製、「7500 CS」を使用した。各実施例および比較例で、4回の測定を行い、平均値を算出した。
実施例1
還元反応炉内でシーメンス法により多結晶シリコンロッドを製造し、炉内に、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを通した空気を導入した後、炉を大気開放し、前記多結晶シリコンロッドを炉外に取り出した。取り出した多結晶シリコンロッドを、打撃部の材質が、炭化タングステン/コバルト合金(炭化タングステンの含有量82質量%、コバルトの含有量18質量%)からなるハンマーで、少なくとも90質量%が、長径の長さ10〜120mmの範囲である破砕塊であるように砕いた。
得られた多結晶シリコン破砕塊の約5kgを、b)フッ硝酸水溶液と接触させる第一洗浄工程に供した。即ち、多結晶シリコン破砕塊5kgを樹脂製のカゴに入れ、これを50wt%弗酸と70wt%硝酸を1:8の体積比で混合したフッ硝酸水溶液(水100質量部に対して、フッ化水素を14.6質量部含有し、硝酸を199質量部含有)が収容された洗浄槽に浸漬した。浸漬は20℃の液温下、多結晶シリコン破砕塊のエッチング代が約10μmに測定される時間で行われた。なお、このとき第一洗浄工程の洗浄槽には、エッチング代測定用の多結晶シリコン小片群も収容し、この洗浄でのエッチング代の測定を行った。第一洗浄工程後、洗浄槽より多結晶シリコン破砕塊を取り出し、超純水により水洗し送風乾燥した。
続いて、第一洗浄工程を経た前記多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、b)過酸化水素を含むアルカリ水溶液と接触させる第二洗浄工程に供した。即ち、多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を樹脂製のカゴに入れ、これを25質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液と30質量%過酸化水素水と超純水とを4:3:43の体積比で混合した洗浄液(水100質量部に対して、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを2.1質量部含有し、過酸化水素を2.1質量部含有)が収容された洗浄槽に浸漬した。浸漬は60℃の液温下、5分間の浸漬時間で実施された。第ニ洗浄工程後、洗浄槽より多結晶シリコン破砕塊を取り出し、超純水により水洗し送風乾燥した。
さらに、第二洗浄工程を経た前記多結晶シリコン破砕塊の洗浄物は、d)フッ硝酸水溶液と接触させる第三洗浄工程に供した。この第三洗浄工程において、フッ硝酸水溶液は前記第一洗浄工程で使用したもの同じ組成のものを用い、その他、洗浄の諸操作も該第一洗浄工程と同様に実施した。なお、洗浄時間は、多結晶シリコン破砕塊のエッチング代が5μmに測定される時間で行われた。なお、このとき第三洗浄工程でも洗浄槽には、エッチング代測定用の多結晶シリコン小片群も収容し、この洗浄でのエッチング代の測定を行った。第三洗浄工程後、洗浄槽より多結晶シリコン破砕塊を取り出し、超純水により水洗し送風乾燥した。
以上の洗浄方法を経て得た多結晶シリコン破砕塊について、その表面金属汚染量を測定した後、樹脂製袋に収納した。表面金属汚染量の測定結果を表1に示した。
実施例2
実施例1において、第一洗浄工程における洗浄時間を、多結晶シリコン破砕塊のエッチング代が約5.0μmに測定される時間で行った以外は、前記実施例1と同様の方法により、多結晶シリコン破砕塊の洗浄を行った。得られた多結晶シリコン破砕塊について、表面金属汚染量を測定した結果を表1に併せて示した。
実施例3
実施例1において、第一洗浄工程における洗浄時間を、多結晶シリコン破砕塊のエッチング代が約1.5μmに測定される時間で行った以外は、前記実施例1と同様の方法により、多結晶シリコン破砕塊の洗浄を行った。得られた多結晶シリコン破砕塊について、表面金属汚染量を測定した結果を表1に併せて示した。
実施例4
実施例1において、第二洗浄工程で使用する、過酸化水素を含むアルカリ水溶液を、30質量%アンモニア水溶液と30質量%過酸化水素水と超純水とを12:9:79の体積比で混合した洗浄液(水100質量部に対して、アンモニアを3.5質量部含有し、過酸化水素を3.2質量部含有)に変更した以外は、前記実施例1と同様の方法により、多結晶シリコン破砕塊の洗浄を行った。得られた多結晶シリコン破砕塊について、表面金属汚染量を測定した結果を表1に併せて示した。
比較例1
実施例1において、第二洗浄工程およびその後の水洗を行わない以外は、前記実施例1と同様の方法により、多結晶シリコン破砕塊の洗浄を行った。得られた多結晶シリコン破砕塊について、表面金属汚染量を測定した結果を表1に併せて示した。
比較例2
実施例1において、第二洗浄工程で使用する洗浄液を、過酸化水素を含まない、2質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に変更した以外は、前記実施例1と同様の方法により、多結晶シリコン破砕塊の洗浄を行った。得られた多結晶シリコン破砕塊について、表面金属汚染量を測定した結果を表1に併せて示した。
Figure 0006636225

Claims (8)

  1. 表面金属濃度が15.0pptw以下であり、該表面金属濃度のうち、表面タングステン濃度が0.9pptw以下であり、且つ表面コバルト濃度が0.3pptw以下である、ことを特徴とする多結晶シリコン破砕塊。
  2. 表面金属濃度が7.0〜13.0pptwであり、該表面金属濃度のうち、表面タングステン濃度が0.40〜0.85pptwであり、且つ表面コバルト濃度が0.04〜0.08pptwである、請求項1記載の多結晶シリコン破砕塊。
  3. 前記表面金属濃度がNa,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Ni,Co,Cu,Zn,W,TiおよびMoの合計濃度である、請求項1または請求項2記載の多結晶シリコン破砕塊。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の多結晶シリコン破砕塊が、樹脂製袋に収納されてなる、多結晶シリコン破砕塊梱包体。
  5. a)多結晶シリコンロッドの破砕工程、
    b)得られた多結晶シリコンロッドの破砕塊をフッ硝酸水溶液と接触させる第一洗浄工程、
    c)第一洗浄工程を経た多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、過酸化水素を含むアルカリ水溶液と接触させる第二洗浄工程
    d)第二洗浄工程を経た多結晶シリコン破砕塊の洗浄物を、フッ硝酸水溶液と接触させる第三洗浄工程
    を含んでなる、請求項1記載の多結晶シリコン破砕塊の製造方法。
  6. c)第二洗浄工程において、過酸化水素を含むアルカリ水溶液に溶解されたアルカリ性物質が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである、請求項記載の多結晶シリコン破砕塊の製造方法。
  7. a)多結晶シリコンロッドの破砕工程において、その破砕に、打撃部の材質が、炭化タングステン/コバルト合金からなる破壊具が使用されてなる、請求項5または請求項記載の多結晶シリコン破砕塊の製造方法。
  8. b)第一洗浄工程における、各多結晶シリコン破砕塊表面のエッチング代が1.5〜10.0μmである、請求項のいずれか一項に記載の多結晶シリコン破砕塊の製造方法。
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