JP6634800B2 - 関節機構及び該関節機構を用いたマニピュレーター - Google Patents
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Description
SPS(Single-Port Surgery)では、患者の身体に形成された一つのポートに対し複数の作業ツール部(鉗子等)を挿入するが、患者の身体への悪影響を極力減らすために、前記一つのポートの径をなるべく小さくすることが求められている。そのため、ポートに挿入する鉗子のサイズは、少なくとも外径8mm以下、好ましくは外径5mm以下にすることが要求される。
さらに、前記一つのポートに挿入した鉗子を身体内で複雑に移動させる必要があるため、前記作業ツール部を支持するリンク部分は、少なくとも3以上の関節で屈曲することが望ましい。
また、低侵襲手術の中でも、縫合(運針)は最も技量を要し、前端側の前記作業ツール部を回転させる操作(リンク延設方向を軸にした回転操作)が要求される。
第1のリンクと、第1のリンクの一端側に、該リンクの延設方向に対し交差するように支持された支持軸と、前記支持軸に対し回転するように支持された回動基部と、同支持軸に対しそれぞれ回転するように支持された二つの中間歯車と、前記二つの中間歯車に対しそれぞれ軸方向を交差させて噛み合うとともに第1のリンクによって回転可能に支持された二つの入力歯車と、前記二つの中間歯車に対しそれぞれ軸方向を交差させて噛み合うとともに前記回動基部によって回転可能に支持された二つの出力歯車と、前記二つの出力歯車を内歯に噛み合わせて回転するように前記回動基部によって回転可能に支持された内歯車と、前記内歯車に対し一体回転可能に接続された第2のリンクと、を備えた関節機構。
この構成によれば、二つの入力歯車を逆方向へ回転させることで、二つの中間歯車を同方向へ回転させれば、第1のリンクに対し第2のリンクが屈曲運動する(図11参照)。また、二つの入力歯車を同方向へ回転させることで、二つの中間歯車を逆方向へ回転させれば、第1のリンクに対し第2のリンクが回転運動する(図12参照)。
この構成によれば、各電動モータによって、二つの入力歯車の回転をきめ細かく制御することができる。したがって、二つの入力歯車を、互いに逆方向へ同速度で同角度回転させることで行う関節屈曲動作或いは、同方向に同速度で同角度回転させることで行う回転動作といった基本動作はもちろん、二つの入力歯車に速度差を設けることにより、関節屈曲動作と回転動作を混合した多彩な動作を行える。
この構成によれば、細身で小型化可能且つ多彩な動作で複雑な作業を行えるマニピュレーターとなっている。
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るマニピュレーターの簡略化して示す側面図である。
尚、本実施態様の説明に関する記述において、「前側」或いは「前方」の語句に対する「後側」或いは「後方」の語句の記述における位置関係は、基本的に、関節機構10における出力歯車17側を「前側」或いは「前方」として捉えたときに、入力歯車16側が「後側」或いは「後方」となる位置関係である。この位置関係は、例えば、マニピュレーター1の作業ツール部30側を「前側」として捉えたときに、第1及び第2の関節機構10,20側が「後側」となる位置関係でもある。
後側のリンク11(第1のリンク)には、二つの入力歯車16を回転させるための二つの回転駆動源16aが設けられる。
各回転駆動源16aは、歯車機構及び回転式モータ(例えば、ブラシレスDCモータやステッピングモータ等)を内蔵したφ2のサーボモータである。この回転駆動源16aは、前方(リンク19側)へ向けた出力軸に、入力歯車16を固定している。
入力歯車16は、前方側を徐々に縮径した形状のかさ歯車である。
この支持軸13の長手方向の中央側には、二つの中間歯車15が環状に装着され、さらに、これら中間歯車15を間に置くようにして、回動基部14が環状に装着される。
支持軸13は、固定基部12の支持孔12b1に圧入固定される。なお、他例としては、支持軸13を支持孔12b1に対し回転可能且つ軸方向移動不能に挿通した態様とすることも可能である。
二つの中間歯車15は、それぞれ、その後半部側を二つの入力歯車16に噛み合わせるとともに、前半部側を二つの出力歯車17に噛み合わせている。
かさ歯車部17aは、後方(リンク11側)へ向かって徐々に縮径されたかさ歯車状に形成され、中間歯車15に対し直交するように噛み合っている。
平歯車17bは、かさ歯車部17aの前方側に同芯状に連結され、内歯車18の内歯18aに噛み合っている(図3参照)。
二つの出力歯車17は、リンク19の径方向へ間隔を置いて略平行に配設され、回動基部14によって回転自在に支持されている(図3及び図5参照)。
環状部14bは、略円盤状の部材であり、その径方向の両側に、それぞれ、軸受部材14cを介して出力歯車17を回転自在に支持している(図5参照)。
内歯車18aには、二つの出力歯車17(詳細には平歯車部17b)が噛み合わせられている(図4参照)。
支持面18bの後寄りには、環状部14bの外周面が摺接可能に嵌り合っている(図3参照)。すなわち、内歯車18は、支持面18bを環状部14bの外周面に摺接させて回転することが可能である。
また、支持面18bにおける前側には、環状のスペーサ18cや、後述する作業ツール部30の基部36等が嵌合されている。
そして、内歯車18の外周面には、円筒状のリンク19が進退不能且つ回転不能に固定されている。
詳細に説明すれば、この第2の関節機構20は、リンク21内で出力軸を後方へ向けた回転駆動源22と、該回転駆動源22の回転力を伝達する伝動歯車23と、伝動歯車23の回転力を受けて動作する送りねじ機構24と、前側のリンク11と一体的に回転するように設けられた二つの第1の滑車部25と、後側のリンク21の後端側に設けられた第2の滑車部26と、送りねじ機構24、第1の滑車部25及び第2の滑車部26に掛け回された二本のワイヤー27とを具備している。
なお、図示例の第2の関節機構20は、第1の関節機構10の後側に、二つ連結されるが、他例としては、第2の関節機構20を単数とした態様や、第2の関節機構20を三以上連結した態様とすることも可能である。
基部28は、リンク21内の後端側に圧入された円柱状の部材であり、その後部側に、二つの第1の滑車部25をそれぞれ支持する二つの支持片部28aを有する。伝動歯車23は、軸状部材を介して、基部28の前端面に支持されている。
なお、図示例によれば、この基部28は、リンク11の後端側にも設けられている(図8参照)。
直動部材24bは、ねじ軸24aに螺合したナット状の部材であり、後述するワイヤー27の一端側と他端側が止着されている。
詳細に説明すれば、各第1の滑車部25は、リンク11の後端側に固定された基部28の各支持片部28aに対し、一体回転可能に連結されている。これら第1の滑車部25及び支持片部28aは、リンク21前端側の基部29に支持された軸部材29cにより回転自在に支持されている。
環状部29aは、その後端部に、上述した回転駆動源22や軸受部材24c等を支持している。
二つの支持片部29bは、リンク21の中心軸に対し直交するように軸部材29cを圧入している。なお、軸部材29cは、回転不能に固定されているが、軸方向へ移動しないようにすれば回転可能であってもよい。
この第2の滑車部26は、図示例によれば、円柱軸状の部材であり、その外周面の後半部側にワイヤー27を掛け、該ワイヤー27をその長手方向へ滑らせる。第2の滑車部26の他例としては、リンク21に対し回転自在に支持された円柱状部材等とすることも可能である。
各ワイヤー27の一端側と他端側は、直動部材24bに止着されている。そして、各ワイヤー27の一端側と他端側の間の部分は、第1の滑車部25に一周だけ巻き付けられ、第2の滑車部26の後半部側に掛けられている。
なお、本実施態様によれば、ワイヤー27、第1の滑車部25及び第2の滑車部26をリンク径方向に並ぶように二組設けているが、単数組や三組以上とすることも可能である。
すなわち、作業ツール部30の駆動源側機構は、円筒状のリンク19内で出力軸を後方へ向けた回転駆動源33と、該回転駆動源33の回転力を伝達する伝動歯車35と、伝動歯車35の回転力を入力歯車34bにより受けて動作する送りねじ機構34とをリンク径方向に並ぶように線対象に二組備え、各送りねじ機構34におけるねじ軸34aに螺合した直動部材(図示せず)によって前方側の対応する挟み片31に、動力を伝達するようにしている。
基部36は、リンク19内の後端側に圧入された円柱状の部材であり、その前端面に支持された軸部材よって、伝動歯車35及びねじ軸34a等をそれぞれ回転自在に支持している。
詳細に説明すれば、各挟み片31の後端側には、リンク19の前端側に支持された軸部材32が挿通され、各挟み片31は軸部材32を回転中心にして回転する。軸部材32の外周部には、二つの挟み片31を開方向へ付勢するように、ねじりバネ状の付勢部材32aが環状に装着されている。
また、挟み片31における軸部材32よりも後側の部分は、略L字状に外側へ曲げられ、その後端側が、リンク部材32b等を介して、送りねじ機構34の前記直動部材(図示せず)に接続されている。したがって、回転駆動源33の駆動により前記直動部材を前進させれば、挟み片31が付勢部材32aの付勢力に抗して閉鎖方向へ回動する。
先ず、第1の関節機構10の動作について説明する。
図11〜図12は、第1の関節機構10を模式的に示している。
二つの回転駆動源16aの回転力により二つの入力歯車16を同じ回転速度で逆方向(換言すれば時計方向と反時計方向)に回転させれば(図11(a)参照)、これらに噛み合っている二つの中間歯車15は、同一方向へ回転する(図11(b)参照)。
すると、二つの中間歯車15に噛み合っている二つの出力歯車17(かさ歯車部17a及び平歯車部17b)には、互いに逆方向の回転力が作用する。
このため、内歯車18は、図11(c)に示すように回転できず、支持軸13を支点にして回動基部14が回動し、これに伴ってリンク19も一体的に回動する。すなわち、図10(b)(c)に示すように、リンク11に対しリンク19が屈曲運動することになる。
なお、図示を省略するが、二つの回転駆動源16aを、それぞれ前記と逆に回転させれば、リンク11に対しリンク19が逆方向へ屈曲することになる。
すると、二つの中間歯車15に噛み合っている二つの出力歯車17(かさ歯車部17a及び平歯車部17b)は、同回転方向となるように回転する。
このため、内歯車18は、二つの出力歯車17から回転力を受け、回動基部14における環状部14bの外周面に摺接して、一方向へ回転運動(自転)することになり、この回転に伴って内歯車18と一体のリンク19も同方向へ回転運動する。
なお、図示を省略するが、二つの回転駆動源16aを、それぞれ前記と逆に回転させれば、回動基部14及びリンク19の自転方向が逆になる。
回転駆動源22への電力供給により駆動歯車22aが回転すると、その回転力は、伝動歯車23及び入力歯車24d等を介して、送りねじ機構24のねじ軸24aに伝達される。そして、ねじ軸24aの回転により直動部材24bがリンク21中心線と平行に直進運動する。すると、直動部材24bに止着されているワイヤー27が長手方向へ移動するため、該ワイヤー27が巻かれた第1の滑車部25が回転し、該第1の滑車部25と一体的に基部28及びリンク11が回動する。すなわち、リンク21に対しリンク11が屈曲運動する。リンク11の屈曲方向を逆にする場合は、回転駆動源22への供給電力を制御して、回転駆動源22の回転方向を逆にすればよい。
また、リンク11が作業ツール部30側から過剰な力を受けた場合には、支持片部28aと第1の滑車部25の間のトルクリミッター(図示せず)の作用により、基部28及びリンク11が、第1の滑車部25に対し回転するため、マニピュレーター1の各部及びマニピュレーター1が接する周囲の物体の損傷を防ぐことができる。
なお、図示例によれば、マニピュレーター1の後部側に第2の関節機構20を二つ直列状に設けているため、これら二つの関節部分について、それぞれ上記動作が可能である。
各回転駆動源33に対し電力が供給されて駆動歯車33aが回転すると、その回転力は、伝動歯車35及び入力歯車34bを介してねじ軸34aに伝達され、ねじ軸34aが一方向へ回転する。したがって、ねじ軸34aに螺合した直動部材(図示せず)が、リンク19中心線と平行に直進運動し、この直進運動が、リンク部材32b等を介して各挟み片31に伝達され、各挟み片31が回動することになる。
尚、駆動歯車33a、伝動歯車35、入力歯車34bの歯幅寸法は、リンク19の内部で送りねじ機構34の軸方向の位置がずれた場合にも、各歯車が互いに噛み合った状態を維持できるように設定されている。
二つの回転駆動源33は、それぞれ独立して制御することが可能になっている。したがって、二つの回転駆動源33を適宜に制御すれば、二つの挟み片31を付勢部材32aの付勢力に抗して閉鎖したり、逆に開放したり、あるいは、二つの挟み片31を閉じた状態まま一方へ傾けるように回動したり等、様々な動作を行うことができる。
したがって、このマニピュレーター1は、SPS(Single-Port Surgery)に用いる鉗子として特に有用である。
より具体的に説明すれば、作業ツール部30の他例としては、作業対象物を挟み切る装置や、作業対象物にドリルで孔をあける装置、作業対象物に塗装を行う装置等とすることも可能である。
10:第1の関節機構
11:リンク(第1のリンク)
13:支持軸
14:回動基部
15:中間歯車
16:入力歯車
17:出力歯車
17a:かさ歯車部
17b:平歯車部
18:内歯車
19:リンク(第2のリンク)
20:第2の関節機構
21:リンク
16a,22,33:回転駆動源(電動モータ)
24,34:送りねじ機構
23,35:伝動歯車
24:送りねじ機構
24a:ねじ軸
24b:直動部材
25:第1の滑車部
26:第2の滑車部
27:ワイヤー
29:基部
30:作業ツール部
31:挟み片
Claims (6)
- 第1のリンクと、
第1のリンクの一端側に、該リンクの延設方向に対し交差するように支持された支持軸と、
前記支持軸に対し回転するように支持された回動基部と、
同支持軸に対しそれぞれ回転するように支持された二つの中間歯車と、
前記二つの中間歯車に対しそれぞれ軸方向を交差させて噛み合うとともに第1のリンクによって回転可能に支持された二つの入力歯車と、
前記二つの中間歯車に対しそれぞれ軸方向を交差させて噛み合うとともに前記回動基部によって回転可能に支持された二つの出力歯車と、
前記二つの出力歯車を内歯に噛み合わせて回転するように前記回動基部によって回転可能に支持された内歯車と、
前記内歯車に対し一体回転可能に接続された第2のリンクと、
を備えた関節機構。 - 前記入力歯車及び前記中間歯車が、かさ歯車であることを特徴とする請求項1記載の関節機構。
- 前記出力歯車が、前記中間歯車に噛み合うかさ歯車部と、前記内歯車に噛み合う平歯車部とを一体に有することを特徴とする請求項2記載の関節機構。
- 前記二つの入力歯車及び/又は前記二つの出力歯車が、前記中間歯車の軸方向の両側に配置されていることを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載の関節機構。
- 前記二つの入力歯車をそれぞれ電動モータにより回転させるとともに、これら電動モータをそれぞれ個別に制御するようにしたことを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載の関節機構。
- 請求項1〜5何れか1項記載の関節機構を備えたマニピュレーターであって、
前記第1のリンク及び前記第2のリンクを含む複数のリンクが連結され、これらリンクのうち、最先端側のリンクが、作業対象物に対し作業を行う作業ツール部を構成していることを特徴とするマニピュレーター。
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