JP6632937B2 - ガスクラスタービーム装置 - Google Patents
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Description
ここで、GCIの生成時には、モノマーイオン(気体の原子・分子がクラスター化されず、そのままイオン化したもの)も生成されるのが通例である。すなわち、GCIとモノマーイオンの混合体が生成される。このため、この混合体からモノマーイオンを除外する(逆に言えば、GCIを選択する)必要がある。処理対象にモノマーイオンが照射されると、その表面及び表面深さ方向の浅い領域に多量の欠陥(結晶欠陥等)が発生し、その表面品質が低下する。
この結果、ガスクラスタービーム装置では、一般に、モノマーイオン除外(GCI選択)のための機構やビーム収束のための機構およびビーム走査のための機構等が直列に配置され、そのコンパクト化は必ずしも容易ではない。特に、100μAを越える大電流のGCIBを照射できるコンパクトなガスクラスタービーム装置の実現は困難であった。
図1は,第1の実施形態に係るガスクラスタービーム装置10を示す。ガスクラスタービーム装置10は、ガスクラスター生成部20,イオン化部30、加速部40,選択・収束部50,照射部60を有する。
ノズル21には、圧力調整弁26,ガス配管27を介して、高圧ガスボンベ25が接続される。
圧力調整弁26は、ノズル21でのガス圧を調節し、例えば、1気圧以上とできる。
ガスクラスターは、数100〜数1000個のガス分子(または原子)の集合体であり、単分子の質量に集合分子数(クラスターサイズ)を乗じた全質量を有する。
円筒陽極32は、熱フィラメント31からの熱電子を加速して、ガスクラスター生成部20から出射されるガスクラスターと衝突させる。円筒陽極32は、例えば、メッシュ(網)状の円筒導体から構成できる。円筒陽極32の内部(イオン化室)をガスクラスターが通過する。円筒陽極32の外部に熱フィラメント31が配置される。円筒陽極32は、ビームが通過する内部空間を有するメッシュ状の第4の電極として機能する。
ここで、イオン化部30には、ガスクラスター以外にガス分子も存在するため、このガス分子もイオン化され、モノマーイオンとなる。
ここで、加速部40には、GCI以外に、モノマーイオンも存在するため、このモノマーイオンも加速される。後述のように、このモノマーイオンは、選択・収束部50で除去される。
加速電極41と引出電極42間の電界によって、GCIが加速され、引出電極42の開口からビーム15として引き出される。
なお、ガスボンベ45と高圧ガスボンベ25のガス種を同一とする場合、ガスボンベ45を省略して、高圧ガスボンベ25をノズル21と加速部40の双方へのガスの供給に利用できる。
圧力調節弁47および流量調節器48は、加速部40に供給するガスの圧力、流量を調節する。一般に、加速部40に供給するガス量は、ノズル21に供給するガス量と比べて小さい。ガスのクラスター化に必要なガスの圧力、流量に比べて、GCIとの衝突に必要なガスの圧力、流量は小さいからである。
このとき、ガスボンベ45からのガスの供給によって、加速部40内でのガスの圧力(GCIに対するガスの割合(個数比))が大きくなると、加速されたGCIがガス分子と衝突して、解離し、電荷を持たない中性粒子(中性の原子や分子のガス粒子(以下、「中性原子・分子」という)およびガスクラスター(GC)粒子(以下、「中性GC」という))が発生する。
この中性粒子は、例えば、GCIを構成するガス分子(中性原子・分子、例えば、モノマー分子)や細分化されたガスクラスター(中性GC)である。
このため、基板Sに衝突した場合、中性GCは、中性原子・分子より、基板Sの表面との相互作用が大きい。
ガスボンベ45からガスを供給しなければ、加速されたGCIとガスの衝突の確率は低く、生成される中性粒子は極めて少ない可能性がある。
一方、ガスボンベ45からのガスの供給量が多ければ、加速されたGCIとガスの衝突の確率が非常に高くなり、加速されたGCIの大部分がガス分子と衝突し、大量の中性粒子が生成される可能性がある。
以上のように、ガスボンベ45からのガスの供給によって、加速部40での中性粒子の生成の有無(および生成量)を切り替えることができる。
ステージ移動機構61は、基板S(例えば、半導体基板)を載置するステージ、およびそのステージを2次元方向(X,Y方向)に機械的に移動する駆動機構を有する。ステージに載置された基板Sに収束したビーム15を照射し、ステージ(基板S)を2次元的に移動することで、基板S全面にビーム15を均一に照射できる。
以下、ビーム15からモノマーイオン(ガス分子(または原子)自体のイオン)を除去する必要性を説明する。
既述のように、加速部40から引き出されたビーム15には、ガスクラスターイオン以外にモノマーイオンが含まれるのが通例である。
以上のように、ビーム15による加工品質を向上するためには、ビーム15中に含まれるモノマーイオンを除去することが好ましい。
以下、ビーム15を収束する必要性を説明する。
荷電体(GCI、イオン)のビームは、互いの電荷により反発、発散する(ビームが広がる)。特に、GCIのビームは、イオンビームに比べて、発散し易い。
また、大口径のビーム15を照射すると、基板S以外への照射量が大きくなり、ビームの利用効率は下がる(照射処理能力(スループット)低下)。
なお、ビーム15中にGCIが解離してできた中性粒子が含まれていても、この中性粒子は、ビームの発散の原因となる電荷自体を有しないことから、収束の必要性はない。
以下、選択・収束部50の詳細を説明する。
選択・収束部50は、磁場フィルター51、エンドガード電極55a,55b、絶縁碍子56a,56bを有し、ビーム15中のモノマーイオンを除去する(GCIを選択する)と共に、ビーム15を収束する。
これは、磁場フィルター51からの磁場をシールドするためである。磁場フィルター51から磁場が漏れると、他の箇所(例えば、イオン化部30、後述の中和部70)での動作(電子の軌道)に影響を与え、機能を低下させる可能性がある。例えば、イオン化部30に磁場が漏れると、クラスタービームのイオン化の効率や引出し電流量に影響を与える可能性がある。
絶縁碍子56a,56bには、磁器材料(例えば、アルミナ磁器)を使用できる。
外筒54内に内筒53が配置され、その両側が一対の円孔付きの円板で閉じられ、全体として、略円筒形状の容器を構成する。この容器中に複数の永久磁石52が配置される。内筒53の内周の径は、円板の円孔と対応する。内筒53および外筒54は、これら一対の円板にネジ等により機械的に取付け固定される。
なお、略円筒形状の容器を構成する外筒54および円板は、非磁性材料であることが好ましいが、永久磁石52の磁場への影響が比較的小さいため、磁性材料も使用できる。
内筒53の中心軸は、エンドガード電極55a,55bの貫通孔の中心と一致していることが好ましい。
内筒53の内径は、エンドガード電極55a,55bの貫通孔の径と対応し、例えば、略同一とできる。
内筒53の内径をエンドガード電極55a,55bの貫通孔の径より大きくしてもよい。ビーム15の有効な利用が図れる。すなわち、GCIが内筒53の内壁に衝突して、基板Sに照射されなくなることが防止される。
内筒53の内周内をビーム15が通過する。
この結果、モノマーイオンは、磁場フィルター51(内筒53)内で曲げられ、その内壁に衝突し、中性化してガスとして排気される。一方、GCIは、内筒53内での偏向が少なく、ほぼ直進運動し、内筒53を通過する。
なお、モノマーイオンのエネルギーに対応して、磁場フィルター51の磁場強度を大きくすることによって、偏向半径を小さくし、円筒53内でモノマーイオンを除去してもよい。このようにすると、アパーチャ電極62は不要となる。
また、内筒53の長さは、その内径以上であることが好ましい。モノマーイオンの効率的な除去が可能となる。
この結果、アパーチャ電極62を通過するビーム15の電流量は大きくなる。例えば、ビーム電流が100μAを超える、小孔径のビーム15を基板Sに照射できる。このとき、アパーチャ電極62を不使用とできる。
電圧VPを加速電圧VAより小さくすると、GCIが照射される。加速電極41の電位が内筒53(磁場フィルター51)の電位よりも小さいため、加速電圧VAで加速されたGCIは、内筒53を通過し、基板Sに到達する。
図3は,第2の実施形態に係るガスクラスタービーム装置10aを示す。ガスクラスタービーム装置10aは、ガスクラスター生成部20,イオン化部30、加速部40,選択・収束部50,照射部60、中和部70を有する。
電子抑制電極73によって、十分に長い負電位領域を形成することによって、中和部70の電子が内筒53内に流れ込むことを防止できる。
ここでは、中和部70をビーム15の輸送経路上に配置しているため、その分、ガスクラスタービーム装置10aが大型化する可能性はある。これを防止するために、中和部70をビーム15の輸送経路外に配置してもよい。例えば、基板Sの横に中和部70を配置し、熱電子を基板Sに直接照射する。アパーチャ電極62と基板S間の距離を大きくしたり、アパーチャ電極62を取り除いたりすることで、このような配置が可能となる。
図4は,第3の実施形態に係るガスクラスタービーム装置10bを示す。ガスクラスタービーム装置10bは、ガスクラスター生成部20,イオン化部30、加速部40,選択・収束部50,照射部60、収束部80を有する。
アインツエルレンズ円筒81は、薄い円筒状導電部材(略円筒形状の円筒電極)であり、第3の電極と対向して配置され、前記ビームが通過する略円柱状の内部空間を有する第6の電極として機能する。
アース電極82は、薄い中空円板状の導電部材であり、円形の貫通孔を有し、第5の電極と対向して配置され、前記ビームが通過する略円形の貫通孔を有する、第7の電極として機能する。
1段目のアインツエルレンズは、エンドガード電極55a,55b、内筒53から構成され、2段目のアインツエルレンズは、エンドガード電極55b、アインツエルレンズ円筒81、アース電極82から構成される。エンドガード電極55bは、第1段、第2段のアインツエルレンズで共用される。
この場合、第1段目のアインツエルレンズ、特に、内筒53とエンドガード電極55bの間での収束作用は、エンドガード電極55bを負電位とする場合に比べて、やや低減する。
しかし、2段のアインツエルレンズによって、十分な収束作用が得られる。また、この構成では、アインツエルレンズ用の電源の個数の低減が可能となり、よりコンパクトな構成となる。
以上のように、本実施形態では、選択・収束部50のコンパクト化に加えて、収束部80によって、GCIのビーム15をさらに絞り、処理効率を向上できる。
中和部70を設置する場合、アース電極82に電子抑制電極73(と同様の部材)を配置し、アース電位とせず、これに負の高電圧を印加することが好ましい。中和部70からの中和用の電子が正高電圧のアインツエルレンズ円筒81内に吸い込まれることを防止できる。このとき、電子抑制電極73と同様、アース電極82に負の高電圧を印加してよい。
図5は,第4の実施形態に係るガスクラスタービーム装置10cを示す。ガスクラスタービーム装置10cは、ガスクラスター生成部20,イオン化部30、選択・収束部90、照射部60を有する。
導電部材92は、円筒部(略円筒形状の導電部材であり、略円筒形状の円筒電極として機能する)と、その両側に配置される一対の円板部(略円板形状の導電部材)を有する。円板部は、円筒部の内径に対応する円孔を有する。
導電部材92は、絶縁部材112,113間に、配置される。
磁場フィルター91は、電磁石93、導電部材92(特に、円筒部(略円筒形状の導電部材))を有し、ビームが通過する略円柱状の内部空間を有する第1の電極として機能する。
導電部材92は、真空容器11d、磁場フィルター91で共用される。導電部材92は、電磁石93からの磁場を乱さないために、非磁性材料(例えば、非磁性のステンレススチール)であることが好ましい。
ヨーク94は、高透磁率材料(特に、軟磁性材料、例えば、純鉄あるいは軟鉄)からなり、導電部材92の円筒部を挟んで、互いに対向する一対の端部を有する。
一対の空芯コイル95a,95bが、ヨーク94の端部を包むように配置される。空芯コイル95a,95bに電流を流して励磁することにより、ヨーク94の両端にN極、S極の磁場を発生し、導電部材92の円筒部内にダイポール磁場を形成できる。このダイポール磁場により、モノマーイオンは偏向し、導電部材92の円筒部の内壁に衝突し除去される。
これに対して、第1の実施形態のような選択・収束部50では、永久磁石52を用いているため、設計時の設定より低いエネルギーのビーム15に対しては、モノマーイオン、クラスターイオン共に、過度に偏向を受け、ビーム損失を起こすことがあり得る。
第1の実施形態に対する実施例を述べる。
装置寸法として、イオン発生部側の真空容器11aとビーム輸送部側の真空容器11bを合わせた長さを1m以下とした。
この結果、磁場フィルター51によって、モノマーイオンが除去され、基板Sに到達しないことを確認できた。具体的には、飛行時間型質量分析計(図示せず)によって、磁場フィルター51がある場合、無い場合それぞれのクラスターサイズの分布を測定した。磁場フィルター51を設置すると、低サイズの荷電粒子が著しく低減し、事実上、モノマーイオンが除去されることを確認できた。
第2の実施形態に対する実施例を説明する。
エンドガード電極55bおよび電子抑制電極73に負の電圧VNを印加し、円筒陽極72に正の電圧Vcを印加する。この結果、基板Sに熱フィラメント71からの電子を効率的に供給できた。
第3の実施形態に対する実施形態に対する実施例を説明する。
アインツエルレンズ円筒81の内径は磁場フィルター51の内径より大きくした。また、エンドガード電極55bを接地電位とした。
選択・収束部50、収束部80により2段のアインツエルレンズとしたことから、電流が100μA以上で、基板Sでのビーム15の径を1cm以下とできた。
第4の実施形態に対する実施例を説明する。
ビーム15の加速エネルギーに応じて、励磁する空芯コイル95a,95bの電流を変化させた。すなわち、モノマーイオンの除去に必要で、クラスターイオンを過度に偏向させない磁場強度を選択した。この結果、10kV以下の低エネルギーで、数10〜100μAの大電流のビーム15を基板Sに照射できた。
Claims (14)
- ガスクラスターを生成する生成部と、
前記ガスクラスターをイオン化して、ガスクラスターイオンを生成するイオン化部と、
前記ガスクラスターイオンを加速して、ガスクラスターイオンを含むビームを出射する加速部と、
前記ビームが通過する略円柱状の内部空間を有する第1の電極と、
前記内部空間内に磁場を印加する磁石と、
前記第1の電極の入口側、出口側にそれぞれ離間して配置され、前記ビームが通過する略円形の貫通孔をそれぞれ有する、第2、第3の電極と、
前記第1の電極と前記第2、第3の電極の間に直流電圧を印加する電源と、
前記第1〜第3の電極を通過したビームが照射される対象が配置される照射部と、
を具備するガスクラスタービーム装置。 - 前記第1の電極が、略円筒形状の円筒電極を有し、
前記磁石が、前記円筒電極の外周に配置される複数の永久磁石を有する、
請求項1記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第1の電極が、略円筒形状の円筒電極を有し、
前記磁石が、前記円筒電極をその外周から挟む第1、第2の端部を有するヨークと、前記第1、第2の端部それぞれに磁界を印加する第1、第2のコイルと、前記第1、第2のコイルを励磁する電源と、を有する、
請求項1記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第1の電極がその一部を構成する真空容器をさらに具備する
請求項2または3に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記ビームが、ガスクラスターイオンが解離して生成された中性粒子を含み、
前記円筒電極に印加する電圧を前記加速部での加速電圧より大きくして、前記ガスクラスターイオンの前記円筒電極の通過を阻害し、前記対象に前記中性粒子のビームを照射する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のガスクラスタービーム装置。 - 加速されたガスクラスターイオンとガス分子を衝突させて、前記中性粒子を生成する中性粒子生成部をさらに具備する
請求項5に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記ビームまたは前記対象に向かって電子を照射する電子照射部をさらに具備する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記電子照射部が、
前記ビームが通過する内部空間を有するメッシュ状の第4の電極と、
前記第4の電極の外部に配置され、熱電子を放出する発熱体と、
前記発熱体と前記第4の電極との間に電圧を印加し、前記熱電子を前記内部空間に向かって加速する第2の電源と、を有する、
請求項7に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第3の電極に接続され、前記ビームが通過する略円柱状の内部空間を有する第5の電極をさらに具備する
請求項7または8に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第3の電極と対向して配置され、前記ビームが通過する略円柱状の内部空間を有する第6の電極と、
前記第5の電極と対向して配置され、前記ビームが通過する略円形の貫通孔を有する、第7の電極と、
前記第6の電極と前記第3,第7の電極の間に直流電圧を印加する電源と、
をさらに具備する請求項9に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第1の電極は正電位であり、前記第2、第3の電極は負電位である、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第1の電極は正電位であり、前記第2の電極は負電位であり、前記第3の電極は接地電位である
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第2、第3の電極が、軟磁性材料を有する
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のガスクラスタービーム装置。 - 前記第2、第3の電極が、前記軟磁性材料を覆う耐食性コーティングをさらに有する
請求項13に記載のガスクラスタービーム装置。
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