冷却貯蔵庫の運転時には、上記当接部材は、その庫内側が冷気の影響を受け易いことから、庫外側に比べて庫内側が収縮することになる。これにより、当接部材は、庫外側に突き出す形で湾曲する事態が懸念される。当接部材が庫外側に突き出す形で湾曲すると、当接部材によって押圧された断熱扉がわずかに開くことになる。この結果、断熱扉の周端部と貯蔵庫本体の間に隙間が生じ、貯蔵庫本体内部の冷気が外部に漏れる場合がある。これにより、冷却効率が低下する事態や、結露が発生する事態が懸念される。また、このような隙間から、外気が貯蔵庫本体内部に侵入することで、霜が発生する事態が懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、冷却貯蔵庫の運転時において、断熱扉に対して当接する当接部材が、庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、冷却貯蔵庫の貯蔵庫本体に設けられている開口を開閉可能な断熱扉と、長手方向の両端部において前記貯蔵庫本体に取り付けられ、前記断熱扉の周端部に対して庫内側から当接する長手状の当接部材と、を備え、前記当接部材は、庫外側を向く面を有する長手状の庫外側構成部材と、前記庫外側構成部材に対して庫内側に配される長手状の庫内側構成部材と、前記庫外側構成部材と前記庫内側構成部材の間に配される長手状の断熱材と、前記庫外側構成部材に形成された庫外側挿通孔、及び前記庫内側構成部材に形成された庫内側挿通孔の双方に挿通されることで、前記庫外側構成部材及び前記庫内側構成部材を互いに締結する締結部材と、を備え、前記庫外側挿通孔及び前記庫内側挿通孔は、前記当接部材の長手方向に沿って配列する形でそれぞれ複数設けられ、さらに、前記庫外側挿通孔及び前記庫内側挿通孔は、前記庫内側構成部材がその長手方向に収縮した際に、前記庫外側構成部材が長手方向の中央部を庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することが可能な構成であることに特徴を有する。
このような構成とすれば、冷却貯蔵庫の運転時において、貯蔵庫本体内部の冷気によって庫内側構成部材が冷却され、長手方向に収縮した際に、庫外側構成部材が庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができる。これにより、断熱扉が庫外側構成部材によって押圧され、断熱扉が開く事態を抑制することができる。
また、前記庫内側挿通孔は、前記当接部材の長手方向に沿って直線状に少なくとも3つ配列され、前記庫外側挿通孔は、前記庫内側挿通孔に対応して少なくとも3つ設けられ、前記庫外側構成部材及び前記庫内側構成部材が前記締結部材によって締結されていない状態では、3つの前記庫外側挿通孔のうち、中央側に配された前記庫外側挿通孔は、その両側に配された2つの前記庫外側挿通孔よりも庫外側に配されているものとすることができる。
このような構成とすれば、締結部材によって庫外側構成部材と庫内側構成部材とを締結した際に、庫外側構成部材を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。これにより、貯蔵庫本体内部の冷気によって、庫内側構成部材が長手方向に収縮した際には、湾曲されている庫外側構成部材が直線状に近づくように変形する。この結果、庫外側構成部材が庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができる。
また、前記庫外側挿通孔は、前記当接部材の長手方向に沿って直線状に少なくとも3つ配列され、前記庫内側挿通孔は、前記庫外側挿通孔に対応して少なくとも3つ設けられ、前記庫外側構成部材及び前記庫内側構成部材が前記締結部材によって締結されていない状態では、3つの前記庫内側挿通孔のうち、中央側に配された前記庫内側挿通孔は、その両側に配された2つの前記庫内側挿通孔よりも庫内側に配されているものとすることができる。
このような構成とすれば、締結部材によって庫外側構成部材と庫内側構成部材とを締結した際に、庫外側構成部材を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。これにより、貯蔵庫本体内部の冷気によって、庫内側構成部材が長手方向に収縮した際には、湾曲されている庫外側構成部材が直線状に近づくように変形する。この結果、庫外側構成部材が庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができる。
また、前記庫内側挿通孔は、前記当接部材の長手方向に沿って直線状に少なくとも5つ配列され、前記庫外側挿通孔は、前記庫内側挿通孔に対応して少なくとも5つ設けられ、前記庫外側構成部材及び前記庫内側構成部材が前記締結部材によって締結されていない状態では、5つの前記庫外側挿通孔は、中央側に配されるもの程、庫外側に配されているものとすることができる。
上記構成によれば、庫内側挿通孔及び庫外側挿通孔に締結部材を挿通することで、庫外側構成部材を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。ここで、作業者が、庫内側挿通孔と庫外側挿通孔に締結部材を挿通する際には、庫外側構成部材を湾曲させ、庫内側挿通孔と庫外側挿通孔とを位置合わせする必要がある。そして、庫外側構成部材を庫内側に突き出す形で湾曲させるためには、庫外側構成部材の中心に近づくにつれて、庫内側挿通孔と庫外側挿通孔の距離を大きく設定する必要がある。
上記構成によれば、少なくとも5つの庫内側挿通孔に対して、少なくとも5つの庫外側挿通孔をそれぞれ位置合わせする。この場合、まず、両端側の庫内側挿通孔及び庫外側挿通孔を位置合わせした後、締結部材を挿通し、続いて、その内側の庫内側挿通孔及び庫外側挿通孔を位置合わせした後、締結部材を挿通する。仮に、庫内側挿通孔及び庫外側挿通孔が3つずつ設けられている構成では、両側の挿通孔同士を位置合わせした後、中央側の挿通孔同士を位置合わせすることになり、庫外側構成部材を一度で湾曲させる必要があるから、湾曲させるために必要な力が大きくなる。これに対して、上記構成では、庫内側挿通孔及び庫外側挿通孔が5つずつ設けられているから、庫外側構成部材を段階的に湾曲させればよく、湾曲させるために必要な力をより小さくすることができ、作業性が良好となる。
また、前記庫外側挿通孔は、前記当接部材の長手方向に沿って直線状に少なくとも5つ配列され、前記庫内側挿通孔は、前記庫外側挿通孔に対応して少なくとも5つ設けられ、前記庫外側構成部材及び前記庫内側構成部材が前記締結部材によって締結されていない状態では、5つの前記庫内側挿通孔は、中央側に配されるもの程、庫内側に配されているものとすることができる。
このような構成とすれば、庫外側挿通孔と庫内側挿通孔を位置合わせする際に、庫外側構成部材を段階的に湾曲させればよく、庫内側挿通孔及び庫外側挿通孔が3つずつ設けられている構成と比べて湾曲させるために必要な力をより小さくすることができ、作業性が良好となる。
また、複数の前記庫外側挿通孔のうち少なくとも一つの前記庫外側挿通孔は、前記当接部材の長手方向の長さが、前記一つの前記庫外側挿通孔と重なる一つの前記庫内側挿通孔よりも大きい値で設定された長孔とされ、前記一つの前記庫外側挿通孔の一端部は、前記一つの前記庫内側挿通孔よりも前記当接部材の長手方向の中心に近い位置に配されるものとすることができる。
このような構成とすれば、庫内側構成部材が長手方向に収縮した際に、締結部材が庫外側挿通孔の内面を押圧する事態を抑制することができる。つまり、庫内側構成部材の収縮に起因して庫外側構成部材に応力が作用する事態を抑制することができ、庫外側構成部材が湾曲する事態を抑制することができる。
また、複数の前記庫内側挿通孔のうち少なくとも一つの前記庫内側挿通孔は、前記当接部材の長手方向の長さが、前記一つの前記庫内側挿通孔と重なる一つの前記庫外側挿通孔よりも大きい値で設定された長孔とされ、前記一つの前記庫内側挿通孔の一端部は、前記一つの前記庫外側挿通孔よりも前記当接部材の長手方向の中心から遠い位置に配されるものとすることができる。
このような構成とすれば、庫内側構成部材が長手方向に収縮した際に、庫内側挿通孔の内面が締結部材を押圧する事態を抑制することができる。つまり、庫内側構成部材の収縮に起因して庫外側構成部材に応力が作用する事態を抑制することができ、庫外側構成部材が湾曲する事態を抑制することができる。
また、前記庫外側構成部材における庫内側の面には、コードヒータが配されているものとすることができる。コードヒータによって庫外側構成部材を温めることで、庫外側構成部材と外気との温度差を少なくすることができ、結露の発生を抑制することができる。しかしながら、コードヒータを使用した際には、庫外側構成部材が熱によって膨張し、長手方向に伸びる。一方、貯蔵庫本体内部の冷気によって庫内側構成部材は、長手方向に収縮する。この結果、コードヒータを備えていない構成と比べて、庫外側構成部材に生じる熱応力がより大きくなり、庫外側構成部材の中央部が庫外側に突き出す形で湾曲する事態がより起こり易くなる。本発明では、庫外側構成部材がその中央部を庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができるので、コードヒータを備えた構成において、より好適である。
本発明によれば、冷却貯蔵庫の運転時において、断熱扉に対して当接する当接部材が庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができる。
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1から図14によって説明する。まず、本実施形態に係る冷却貯蔵庫の全体構成について説明する。ここでは冷却貯蔵庫としてセンターピラーレスの4ドア式の冷蔵庫1を例に説明する。図1に示すように、冷蔵庫1は貯蔵庫本体10と、貯蔵庫本体10の前面(図1において紙面手前側の面)に上下に設けられている二組の扉装置11と、貯蔵庫本体10の上に設けられている機械室12と、貯蔵庫本体10の底面の四隅に設けられている脚体13と、を備える。
貯蔵庫本体10は、図2に示すように、前側(紙面手前側)に開口する断熱箱によって構成されており、その開口10Aが長手状のフレーム部材21によって上下に分割されている。なお、各貯蔵室14には左右方向の中央において上下方向に延びる柱状の部材(所謂センターピラー)は設けられていない。機械室12には冷却サイクルを構成する冷却装置(図示せず)が収容されている。冷却装置は蒸発器や循環ファンなどを備えており、冷却装置が稼働すると蒸発器によって空気が冷却され、冷却された空気(冷気)が循環ファンによって貯蔵室14内に循環供給されることによって貯蔵室14内が冷却される。
次に、扉装置11について説明する。図1及び図2に示すように、各扉装置11は左右一対の観音開き式の断熱扉15A,15Bと、断熱扉15A,15Bの各開閉側端部の略全高に亘って装着されているセンターシール40,40と、フレーム部材21と、を備えている。一対の断熱扉15A,15Bは左右対称に形成されている。左側の断熱扉15Aは左側端部の上下がヒンジ16Aによって貯蔵庫本体10に開閉可能に軸支されている。同様に、右側の断熱扉15Bは右側端部の上下がヒンジ16Bによって貯蔵庫本体10に軸支されている。これにより、一対の断熱扉15A,15Bは、対応するヒンジ16A,16Bを回動軸として回動することで、開口10Aを開閉可能な構成となっている。また、各断熱扉15の正面において互いに隣接した位置には開閉操作用の把手17が設けられている。
以降の説明では各断熱扉15A,15Bにおいて左右方向の両側のうちヒンジ16が設けられている側のことを開閉軸側というものとする。また、断熱扉15A,15Bの左右方向の端部のうちヒンジ16が設けられていない方の端部、言い換えると相手側の断熱扉と対向する端部のことを開閉側端部というものとする。例えば右側の断熱扉15Bの場合は右側が開閉軸側であり、左側の端部が開閉側端部である。一対の断熱扉15A,15Bが閉じた状態では、一対の断熱扉15A,15Bの各々に設けられたセンターシール40が互いに当接することで、一対の断熱扉15A,15B間がシールされる構成となっている。
一対の断熱扉15A,15Bは左右対称な形状をなしているものの、それ以外は同じ構成とされる。断熱扉15A,15Bは、それぞれ、ステンレス鋼板等の金属製の外装板18(図1参照)と、合成樹脂製の内装板19(図4参照)と、矩形枠状に形成されているパッキン20(図4参照)と、を備えている。また、断熱扉15A(又は断熱扉15B)は外装板18と内装板19とによって箱状に構成されており、内側の中空部に硬質ポリウレタンなどの発泡樹脂からなる図示しない断熱材が発泡充填されている。また、断熱扉15A,15Bには、それぞれ結露防止用のヒータ(図示しない)が内蔵されており、このヒータのリード線52(図4参照)がヒンジ16を取り付けるための穴から外に延びている。
フレーム部材21(当接部材)は、図2に示すように、その両端部において貯蔵庫本体10に対して固定されている。フレーム部材21は、その長手方向が左右方向と一致する形で設けられている。本実施形態では一対の断熱扉15A,15Bが、上下に2組並ぶ形で設けられている。上側の一対の断熱扉15A,15Bは、閉じた状態では、その上端部において貯蔵庫本体10の開口10Aの開口端部10Bに当接し、下端部においてフレーム部材21に当接する構成となっている。
一方、下側の一対の断熱扉15A,15Bは、閉じた状態では、その上端部においてフレーム部材21に当接し、下端部において貯蔵庫本体10の開口10Aの開口端部10Dに当接する構成となっている。なお、一対の断熱扉15A,15Bの上端部(周端部)とは、断熱扉15Aの上端部及び断熱扉15Bの上端部のことであり、より具体的には、パッキン20の上辺である。また、一対の断熱扉15A,15Bの下端部(周端部)とは、断熱扉15Aの下端部及び断熱扉15Bの下端部のことであり、より具体的には、パッキン20の下辺である。なお、パッキン20には、マグネットが内蔵されている。これにより、パッキン20は、金属製である貯蔵庫本体10の開口10Aの開口端部、又はフレーム部材21のフロントフレーム31(後述)に対して吸着可能となっている。
フレーム部材21は、図5及び図6に示すように、フロントフレーム31と、断熱材50と、ホルダ61と、カバー70と、結露防止用のコードヒータ23と、を備えている。フロントフレーム31(庫外側構成部材)は、金属製(例えばステンレス鋼)とされ、長手状をなしている。また、フロントフレーム31は、側面視において庫内側に開口された略コの字状をなしている。具体的には、フロントフレーム31は、パッキン20に対する当接面32A(庫外側を向く面)を有する壁部32と、壁部32の周端から庫内側に向かう一対の壁部33,33と、を有している。
一対の壁部33,33は、上下方向に間隔を空けて対向配置されている。つまり、一対の壁部33,33のうち、一方の壁部33は上壁部であり、他方の壁部33は下壁部である。また、壁部33における長手方向の両端部には、取付片34が形成されている。取付片34は、締結部材(ビスなど)によって貯蔵庫本体10に対して固定される。また、コードヒータ23は、壁部32における庫内側の面に貼り付けられており、壁部32の全長に亘って配されている。つまり、コードヒータ23は、フロントフレーム31と断熱材50の間に配されている。なお、図6においては、コードヒータ23のうち、壁部32における庫内側の面に配されている部分23Aを鎖線で図示してある。
断熱材50は、発泡樹脂(例えば発泡ポリスチレン)によって構成され、長方形状をなしている。ホルダ61(庫内側構成部材)は、金属製(例えばステンレス鋼)とされ、長手状をなしている。また、ホルダ61は、側面視において庫外側に開口された略コの字状をなしている。具体的には、ホルダ61は、庫内側を向く面を有する壁部62と、壁部62の周端から庫外側に向かう一対の壁部63,63と、を有している。一対の壁部63,63は、上下方向に間隔を空けて対向配置されている。つまり、一対の壁部63,63のうち、一方の壁部63は上壁部であり、他方の壁部63は下壁部である。
図7に示すように、ホルダ61は、フロントフレーム31に対して庫内側(図7の右側)に配されており、断熱材50は、フロントフレーム31とホルダ61の間に設けられた収容空間に収容されている。また、フロントフレーム31の壁部33における庫内側の端部は、ホルダ61の壁部63を外側から覆う形で配されている。なお、ホルダ61の壁部63がフロントフレーム31の壁部33を外側から覆う形で配されていてもよい。
フロントフレーム31の壁部33には、複数(本実施形態では3つ)の庫外側挿通孔33Aが形成されている。また、ホルダ61の壁部63には、庫外側挿通孔33Aと同数の庫内側挿通孔63Aが形成されている。庫外側挿通孔33A及び庫内側挿通孔63Aの双方には、リベット22(締結部材)が挿通されている。これにより、リベット22によってフロントフレーム31及びホルダ61が互いに締結されている。
また、ホルダ61は、フロントフレーム31に比べて、庫内外方向の曲げに対する剛性が高いものとされる。なお、ホルダ61の剛性をフロントフレーム31の剛性より高くするためには、例えば、ホルダ61の板厚をフロントフレーム31の板厚よりも大きくしたり、ホルダ61の材質をフロントフレーム31の材質よりも剛性の高いもので構成したりすればよい。また、ホルダ61にリブを形成することで剛性を高くしてもよい。
カバー70は、例えば、硬質樹脂製とされ、長手状をなしている。カバー70は、図6に示すように、側面視において庫外側に開口された略コの字状をなしている。カバー70は、図7に示すように、フロントフレーム31の当接面32A以外の面を外側から覆う形で配されている。フロントフレーム31の壁部33に形成された取付片35には、カバー70の内面に形成されたリブ71が庫外側から係止されている。これにより、カバー70がフロントフレーム31に対して取り付けられている。なお、フレーム部材21の組立手順の一例としては、まず、フロントフレーム31にコードヒータ23を貼り付け、フロントフレーム31内部に断熱材50を嵌合させる。次に、断熱材50にホルダ61を被せた後、リベット22によってフロントフレーム31とホルダ61とを締結する。その後、カバー70をフロントフレーム31に対して取り付ける。
本実施形態のフレーム部材21においては、フロントフレーム31が庫外側に配され、ホルダ61が庫内側に配されている。このため、冷蔵庫1の運転時には、ホルダ61が、貯蔵室14内の冷気によって冷却され、その長手方向について収縮する。そして、フロントフレーム31は、庫内側から断熱扉15A,15Bの周端部(上端部又は下端部、より詳しくはパッキン20)に当接する構成となっている。このため、図8の比較例に示すように、仮に、ホルダ61が収縮することで、フロントフレーム31が庫外側に突き出す形で湾曲すると、当接面32Aによって押圧された断熱扉15A,15Bがわずかに開くことになる。仮に、フロントフレーム31が湾曲した場合であっても、弾性部材であるパッキン20はフロントフレーム31(当接面32A)の形状に倣う形で変形するため、パッキン20とフロントフレーム31との間に隙間が生じる事態は起こり難い。
しかしながら、断熱扉15A,15Bのパッキン20は、フロントフレーム31以外に開口10Aの開口端部10B(又は開口端部10D、図3参照)に当接されている。開口端部10B,10Dは、貯蔵庫本体10の一部であるから、フロントフレーム31に比べて剛性が高い。また、開口端部10B,10Dは、フレーム部材21と比べて、貯蔵室14内の冷気が直接的に当たり難い。このため、開口端部10B,10Dは、冷蔵庫1の運転時に湾曲することはない。
これにより、仮に、フロントフレーム31が湾曲することで、断熱扉15A,15Bがわずかに開くと、図9に示すように、パッキン20と開口端部10D(又は開口端部10B)との間に隙間S1が生じる事態が懸念される。また、フロントフレーム31の庫内側の面には、コードヒータ23が設けられているから、コードヒータ23動作時には、フロントフレーム31は、温められて長手方向に伸長する。これにより、フロントフレーム31がより庫外側に湾曲し易くなる。なお、ここで言う「庫外側に湾曲する」とは、長手方向の中央部が両端部に比べて庫外側に配される形で湾曲することである。
また、センターシール40,40は、図8及び図9では図示省略してある。なお、センターシール40,40は、左右方向にある程度の変形が許容されており、マグネットによって互いに吸着される構成となっている。このため、断熱扉15A,15Bがわずかに開いた場合であっても、センターシール40,40同士は、密着した状態が維持される。
パッキン20と開口端部10D(又は開口端部10B)との間に隙間S1が生じる事態を抑制するために、本実施形態では、冷蔵庫1の運転時に、フロントフレーム31が庫外側に湾曲する事態を抑制する構成となっている。具体的には、本実施形態では、庫外側挿通孔33A及び庫内側挿通孔63Aの位置関係を適宜設定することで、フロントフレーム31が庫外側に湾曲する事態を抑制する構成となっている。次に、庫外側挿通孔33A及び庫内側挿通孔63Aの位置関係について図10から図14を用いて説明する。なお、図10から図14の各図においては、図の上側が庫内側であり、図の下側が庫外側である。なお、図12から図14は、平面視におけるフロントフレーム31及びホルダ61を示す模式図である。
図10及び図12に示すように、フロントフレーム31の庫外側挿通孔33Aは、フロントフレーム31の長手方向(フレーム部材21の長手方向)に沿って3つ配列されている。3つの庫外側挿通孔33Aのうち、中央側の庫外側挿通孔33Aは、フロントフレーム31の長手方向の中心に配されている。両側の庫外側挿通孔33Aは、中央側の庫外側挿通孔33Aを中心として左右対称に配されている。
そして、フロントフレーム31とホルダ61とをリベット22によって締結する前の状態では、中央側の庫外側挿通孔33Aは、両端側の庫外側挿通孔33Aに対して、庫外側に配されている。言い換えると、中央側の庫外側挿通孔33Aとフロントフレーム31の庫内側端面との距離Y2は、両側の庫外側挿通孔33Aとフロントフレーム31の庫内側端面との距離Y1よりも大きい値で設定されている。これに対して、ホルダ61の庫内側挿通孔63Aは、図11に示すように、ホルダ61の長手方向(フレーム部材21の長手方向)に沿って直線状に3つ配列されている。つまり、3つの庫内側挿通孔63Aは、庫内外方向において同じ位置に配されている。
フロントフレーム31とホルダ61の組み付け作業を行う場合には、作業者は、図13に示すように、まず、両端側の庫内側挿通孔63Aと、庫外側挿通孔33Aとをそれぞれ位置合わせし、リベット22(図13では図示省略)を挿通する。この状態では、中央側の庫外側挿通孔33Aは、中央側の庫内側挿通孔63Aよりも庫外側に配されている。続いて、作業者は、図14に示すように、フロントフレーム31の中央部を庫内側に押圧し、フロントフレーム31を湾曲させることで、中央側の庫内側挿通孔63Aに中央側の庫外側挿通孔33Aを重ね、その状態でリベット22を挿通する。これにより、図14に示すように、フロントフレーム31が庫内側に湾曲した状態でホルダ61に組み付けられる。なお、図14では、リベット22の軸部(庫外側挿通孔33A及び庫内側挿通孔63Aに挿通される部分)のみを図示してある。
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、リベット22によってフロントフレーム31とホルダ61とを締結した際に、フロントフレーム31を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。これにより、貯蔵庫本体10内部の冷気によって、ホルダ61が長手方向に収縮した際には、湾曲されているフロントフレーム31が直線状に近づくように変形する。この結果、フロントフレーム31が庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができる。これにより、断熱扉15A,15Bの開閉側端部がフロントフレーム31によって押圧され、断熱扉15A,15Bが開く事態を抑制することができる。
また、本実施形態では、フロントフレーム31における庫内側の面には、コードヒータ23が配されている。コードヒータ23によってフロントフレーム31を温めることで、フロントフレーム31と外気との温度差を少なくすることができ、結露の発生を抑制することができる。しかしながら、コードヒータ23を使用した際には、フロントフレーム31が熱によって膨張し、長手方向に伸びる。一方、貯蔵庫本体内部の冷気によってホルダ61は、長手方向に収縮する。この結果、コードヒータ23を備えていない構成と比べて、フロントフレーム31に生じる熱応力が大きくなり、フロントフレーム31の中央部が庫外側に突き出す形で湾曲する事態がより起こり易くなる。本実施形態では、フロントフレーム31がその中央部を庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができるので、コードヒータ23を備えた構成において、より好適である。
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図15によって説明する。本実施形態では、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aの配置態様が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態において、フロントフレーム131とホルダ161とをリベット22によって締結する前の状態では、図15に示すように、3つの庫外側挿通孔33Aは、フロントフレーム131の長手方向に沿って直線状に配列されている。これに対して、庫内側挿通孔63Aは、庫外側挿通孔33Aに対応して3つ設けられ、3つの庫内側挿通孔63Aのうち、中央側に配された庫内側挿通孔63Aは、その両側に配された2つの庫内側挿通孔63Aよりも庫内側に配されている。
このようにすれば、リベット22によってフロントフレーム131とホルダ161とを締結した際に、フロントフレーム131を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。これにより、貯蔵庫本体10内部の冷気によって、ホルダ161が長手方向に収縮した際には、湾曲されているフロントフレーム131が直線状に近づくように変形する。この結果、フロントフレーム131が庫外側に突き出す形で湾曲する事態を抑制することができる。
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図16から図20によって説明する。本実施形態では、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aの配置態様が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のホルダ261においては、図16に示すように、庫内側挿通孔63Aが、ホルダ261の長手方向に沿って直線状に少なくとも5つ配列されており、フロントフレーム231においては、庫外側挿通孔33Aが庫内側挿通孔63Aに対応して5つ設けられている。
そして、フロントフレーム231とホルダ261とをリベット22によって締結する前の状態では、5つの庫外側挿通孔33Aは、配列方向の中央側に配されるもの程、庫外側(図16の下側)に配されている。具体的には、両端側に配された庫外側挿通孔33Aとフロントフレーム231の庫内側端面との距離Y1は、これと隣接する庫外側挿通孔33Aとフロントフレーム231の庫内側端面との距離Y3よりも小さい値で設定され、中央側の庫外側挿通孔33Aとフロントフレーム231の庫内側端面との距離Y2は、距離Y3よりも大きい値で設定されている。
本実施形態によれば、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aにリベット22を挿通することで、図18に示すように、フロントフレーム231を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。ここで、作業者が、庫内側挿通孔63Aと庫外側挿通孔33Aにリベット22を挿通する際には、フロントフレーム231を湾曲させ、庫内側挿通孔63Aと庫外側挿通孔33Aとを位置合わせする必要がある。そして、フロントフレーム231を庫内側に突き出す形で湾曲させるためには、フロントフレーム231の中心に近づくにつれて、庫内側挿通孔63Aと庫外側挿通孔33Aの距離を大きく設定する必要がある(図17参照)。
本実施形態によれば、5つの庫内側挿通孔63Aに対して、5つの庫外側挿通孔33Aをそれぞれ位置合わせする。この場合、図17に示すように、まず、両端側の庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aを位置合わせした後、これらにリベット22を挿通し、続いて、その内側の庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aを位置合わせした後、リベット22を挿通する。
仮に、図19の比較例に示すように、フロントフレーム3及びホルダ6において、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aが3つずつ設けられている構成では、両側の挿通孔63A,33A同士を位置合わせした後、中央側の挿通孔63A,33A同士を位置合わせすることになり、フロントフレーム3を一度で湾曲させる必要があるから、湾曲させるために必要な力が大きくなる。これに対して、本実施形態では、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aが5つずつ設けられているから、3つずつ設けられている構成と比べて、フロントフレーム3を段階的に湾曲させればよく、湾曲させるために必要な力をより小さくすることができ、作業性が良好となる。
また、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aが3つずつ設けられている構成では、フロントフレーム3の中央部のみに大きい荷重が掛かるため、図19に示すように、フロントフレーム3の中央部のみが庫内側に突き出す事態が起こり得る。フロントフレーム3が図19に示す形状に変形した状態で、ホルダ6が長手方向に収縮すると、図20に示すように、フロントフレーム3の両端部の各々が庫外側に突き出す形で湾曲し、断熱扉15A,15Bが庫外側に押圧される事態が懸念される。本実施形態では、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aが5つずつ設けられているから、フロントフレーム231全体を湾曲させることができ、このような事態を抑制することができる。
<実施形態4>
次に、本発明の実施形態4を図21によって説明する。本実施形態では、庫内側挿通孔63A及び庫外側挿通孔33Aの配置態様が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のフロントフレーム331においては、図21に示すように、庫外側挿通孔33Aがフロントフレーム331の長手方向に沿って直線状に5つ配列されている。一方、ホルダ361の庫内側挿通孔63Aは、庫外側挿通孔33Aに対応して5つ設けられている。そして、フロントフレーム331とホルダ361とをリベット22によって締結する前の状態では、5つの庫内側挿通孔63Aは、中央側に配されるもの程、庫内側に配されている。このようにすれば、リベット22によってフロントフレーム331とホルダ361とを締結した際に、フロントフレーム331を、その中央部が庫内側に突き出す形で湾曲させることができる。
<実施形態5>
次に、本発明の実施形態5を図22から図23によって説明する。本実施形態では、庫外側挿通孔の態様が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。図22に示すように、本実施形態のフロントフレーム431では、両端側の庫外側挿通孔433A(複数の庫外側挿通孔のうち少なくとも一つの庫外側挿通孔)がフロントフレーム431の長手方向に長い形状をなしている。より具体的には、庫外側挿通孔433Aは、長手方向の長さが、これと重なる庫内側挿通孔63Aよりも大きい値で設定された長孔とされる。
そして、庫外側挿通孔433Aの長手方向における一端部は、庫内側挿通孔63Aよりも、フロントフレーム431の長手方向の中心に近い位置に配されている。また、本実施形態では、複数の庫外側挿通孔433A,33Aは、フロントフレーム431の長手方向に沿う直線状に配列されており、複数の庫内側挿通孔63Aは、ホルダ461の長手方向に沿う直線状に配列されている。
この結果、本実施形態では、庫外側挿通孔433A及び庫内側挿通孔63Aに挿通されたリベット22がフロントフレーム431の長手方向の中心に向かって変位可能な構成となっている。このため、ホルダ461は、庫外側挿通孔433Aと庫内側挿通孔63Aの長さの差L1(図23参照)の分だけ、長手方向に収縮することが許容されている。このような構成とすれば、ホルダ461が長手方向に収縮した際に、リベット22が庫外側挿通孔433Aの内面を押圧する事態を抑制することができる。つまり、ホルダ461の収縮に起因してフロントフレーム431に応力が作用する事態を抑制することができ、フロントフレーム431が湾曲する事態を抑制することができる。
<実施形態6>
次に、本発明の実施形態6を図24によって説明する。本実施形態では、庫内側挿通孔の態様が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。図24に示すように、本実施形態のホルダ561では、両端側の庫内側挿通孔563A(複数の庫内側挿通孔のうち少なくとも一つの庫内側挿通孔)がホルダ561の長手方向に長い形状をなしている。より具体的には、庫内側挿通孔563Aは、長手方向の長さが、これと重なる庫外側挿通孔33Aよりも大きい値で設定された長孔とされる。
そして、庫内側挿通孔563Aの長手方向における一端部が、対応する庫外側挿通孔33Aよりも、フロントフレーム531の長手方向の中心から遠い位置に配されている。また、本実施形態では、複数の庫外側挿通孔33Aは、フロントフレーム531の長手方向に沿う直線状に配列されており、複数の庫内側挿通孔63A,563Aは、ホルダ561の長手方向に沿う直線状に配列されている。
この結果、本実施形態では、ホルダ561は、庫外側挿通孔33Aと庫内側挿通孔563Aの長さの差L2の分だけ、長手方向に収縮することが許容されている。このような構成とすれば、ホルダ561が長手方向に収縮した際に、庫内側挿通孔563Aの内面がリベット22(図7参照、図24では図示せず)を介して庫外側挿通孔33Aの内面を押圧する事態を抑制することができる。つまり、ホルダ561の収縮に起因してフロントフレーム531に応力が作用する事態を抑制することができ、フロントフレーム531が湾曲する事態を抑制することができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)庫外側挿通孔33A及び庫内側挿通孔63Aの個数は上記実施形態で例示した個数に限定されず適宜変更可能である。
(2)上記実施形態では、締結部材としてリベットを例示したが、これに限定されない。例えば、締結部材としてボルト及びナットからなるものやビスなどを用いてもよい。
(3)上記実施形態では、一対の観音開き式の断熱扉を例示したが、これに限定されない。一枚の断熱扉によって開口10Aを開閉可能な構成であってもよい。