JP6628023B2 - 研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、シリコンウェーハの仕上げ研磨等において、研磨用濡れ剤として用いられる水溶性重合体の製造方法に関する。
パソコン及び携帯電話等の情報通信機器、並びに、デジタルカメラ及びテレビ等のデジタル家電製品では、シリコンウェーハを基板とする半導体デバイスが広く用いられている。近年の半導体チップの高集積化、大容量化に伴い、半導体デバイスの加工精度は微細化の一途をたどっており、デバイス形成前のウェーハに対しては、その平滑性、及びキズ等の欠陥を有さないいわゆる無傷性の要求がますます厳しいものとなっている。
ウェーハの平滑化技術としては、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング:化学機械研磨)と呼ばれる研磨プロセスがよく用いられている。CMPによる平滑化処理では、微細な砥粒と塩基性化合物を含有した研磨液組成物が使用される。この研磨液組成物を研磨パッド表面に供給しながら、圧接した研磨パッドと被研磨物であるウェーハとを相対移動させて表面を研磨する。このとき、砥粒によるメカニカル研磨と、塩基性化合物によるケミカル研磨とが同時に進行することにより、広範囲にわたりウェーハ表面を高精度に平滑化することができる。
表面平滑性の高いウェーハを得るために、一般的には研磨液組成物中に水溶性高分子化合物を加える方法が採用されている。水溶性高分子化合物は、濡れ剤として機能し、砥粒やウェーハの表面に吸着することによって応力緩和効果を発揮し、砥粒や異物によるウェーハへのダメージを低下させる。また、ウェーハ表面に親水性を付与し、砥粒や異物の付着を防止する効果も期待できる。結果として、水溶性高分子化合物を加えない場合に比べてウェーハ表面の高度な平滑化を可能にする。
このような状況の下、水溶性高分子化合物を含む研磨液組成物が提案されている。特許文献1には、水溶性高分子としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)を含有する研磨液組成物が開示されている。また、特許文献2には、分子量10万以上の水溶解性の高分子化合物及び水溶解性の塩類等を含有してなる研磨液組成物が記載されている。特許文献3には、重量平均分子量1000000以下かつ分子量分布が5.0未満である各種水溶性高分子を含有する研磨液組成物が開示されている。
特開2004−128089号公報 特開平2−158684号公報 国際公開第2014/034425号
しかし、特許文献1に記載されたHECは、天然物に由来するポリマーであるため、化学構造の制御が制限され、品質のばらつきが大きいという問題があった。また、HECの原料である天然セルロース中にはセルロース由来の水不溶物が含まれており、当該水不溶物自体や、当該水不溶物が核となって凝集したシリカ粒子などが、研磨後の表面欠陥数を増大させることがあった。
また、特許文献2には各種の合成系水溶解性高分子化合物が記載されているものの、構造単位の差異に基づく効果の違いや、分子量分布に関する記載がなく、被研磨体の種類や使用条件によっては十分な研磨性能が得られない虞があった。
一方、特許文献3には、水溶性高分子の分子量分布が研摩後の表面欠陥の低減と相関がある旨が示されており、分子量分布の狭い水溶性高分子を用いることによりLPD(Light Point Defect)と呼ばれる表面欠陥の低減が容易となることが記載されている。しかしながら、実施例において具体的に開示された合成水溶性高分子の分子量分布は3程度のものが多く、上述した半導体デバイス精度向上等の背景から、分子量分布のさらなる狭小化への要望は高い。さらに分子量分布の狭い水溶性高分子として、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを構造単位とするものも開示されているが、これらは一般的にはアニオン重合法により製造されるものであり、同法では適用可能なモノマーや製造操作上の制限があった。いずれにしても、分子量分布が十分狭い(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分散度(PDI)が2.0以下)合成高分子の製造方法に関しては、具体的な開示がなされていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、シリコンウェーハ等の表面研磨に有用な合成系の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法であって、分子量分布が十分狭く、工業的にも広く適用可能な研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、リビングラジカル法を利用することにより分子量分布が十分狭い研磨液組成物用水溶性重合体を簡便に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の通りである。
〔1〕研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法であって、
数平均分子量(Mn)が5,000〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分散度(PDI)が2.0以下である重合体を、リビングラジカル重合法により製造することを特徴とする研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔2〕上記リビングラジカル重合法が、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT法)である上記〔1〕に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔3〕上記RAFT法における重合制御剤(RAFT剤)として、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いる上記〔2〕に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔4〕多官能性のRAFT剤を用いる上記〔2〕又は〔3〕に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔5〕上記RAFT剤1molに対し、ラジカル重合開始剤を0.5mol以下使用する上記〔2〕〜〔4〕のいずれか一に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔6〕リビングラジカル重合により水溶性重合体を得た後、RAFT剤残基の不活性化処理を行う後処理工程を備える上記〔2〕〜〔5〕のいずれか一に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔7〕上記リビングラジカル重合法が、ニトロキシラジカル法(NMP法)である上記〔1〕に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔8〕上記NMP法において、ニトロキシド化合物として以下の一般式(1)で表される化合物を用いる請求項7に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
Figure 0006628023
{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、R3は−(CH2)m−、mは0〜2であり、R4、R5は炭素数1〜4のアルキル基である}
〔9〕上記一般式(1)で表されるニトロキシド化合物と、2以上のビニル基を有するビニル系単量体との反応により重合前駆体を得た後、該重合前駆体の存在下、さらにビニル系単量体の重合を行う上記〔7〕又は〔8〕に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔10〕上記一般式(1)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、以下の一般式(2)で表されるニトロキシドラジカル0.001〜0.2molを使用する上記〔8〕又は〔9〕に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
Figure 0006628023
{式中、R4、R5は炭素数1〜4のアルキル基である。}
〔11〕重合終了時点の反応液において、重合溶媒/ビニル系単量体の質量比が、0〜80/20〜100である上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔12〕上記水溶性重合体に対する金属の含有量が各々100ppm以下である上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
〔13〕水溶性重合体が、分子内に窒素原子を有する単量体に由来する構造単位を10〜100mol%含む上記〔1〕〜〔12〕のいずれか一に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
本発明の製造方法によれば、十分に狭い分子量分布を有する研磨液組成物用水溶性重合体を簡便に得ることができる。本発明の製造方法により得られた水溶性重合体は、ウェーハ等の被研磨体表面への吸脱着、及び研磨液組成物中の砥粒の分散安定性等の観点から望ましい分子量を有する重合体からなる研磨用濡れ剤として機能する。これにより、研磨後のウェーハ表面の平滑性を高め、LPD等の表面欠陥の抑制力をさらに向上させることが可能となる。加えて、シリカの分散性も良好であることから、凝集したシリカ砥粒による擦傷や表面荒れも少なく、無傷性に優れたウェーハ表面を得ることができる。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を意味する。
<水溶性重合体>
本発明の水溶性重合体の数平均分子量(Mn)は5,000〜1,000,000の範囲である。数平均分子量(Mn)の好ましい範囲は30,000〜800,000であり、より好ましい範囲は50,000〜600,000である。数平均分子量(Mn)が5,000未満の場合はウェーハ等への濡れ性が不十分となる虞があり、1,000,000を超える場合は研磨砥粒の分散安定性が劣る傾向がある。
尚、本発明では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリメタクリル酸メチル換算値として上記数平均分子量(Mn)を得た。また、重量平均分子量(Mw)も同様の方法により得られるものである。
研磨液組成物における水溶性重合体の分子量の大小は、ウェーハ等の被研磨体への吸脱着速度に影響を与える。一般に、ウェーハ等に対する吸脱着速度は、低分子量体であるほど高いと考えられる。そのため、常に研磨液組成物が供給されている研磨工程においては、低分子量の水溶性重合体ほど素早くウェーハ等に吸着して研磨を阻害し、研磨レートの低下(生産性の低下)をもたらす。一方で研磨後の洗浄工程においては、ウェーハ等の表面から素早く脱着するために、ウェーハ等の表面の親水性が低下して濡れ性が低下する。この場合、最終的にパーティクル等がむき出しのウェーハ表面等に付着することで表面欠陥の悪化に繋がる虞がある。
一方、水溶性重合体の分子量が高すぎる場合は、研磨液組成物中に含まれるシリカ等の砥粒の分散性を悪化させ、砥粒の凝集を引き起こすことがある。この場合、凝集した砥粒によるスクラッチ傷や砥粒凝集物自体の付着などに起因するウェーハ上の表面欠陥数を増大させることがある。また、上記水溶性重合体の水溶液粘度が高くなるためそのろ過性が悪化し、研磨液組成物を製造する際の生産性が低下する虞がある。
このため、水溶性重合体には用途等に応じて好適な分子量が存在し、目標とする分子量領域に対して大きく異なる低分子量体または高分子量体を含まないことが好ましい。すなわち、水溶性重合体の分子量分布は狭い方が好ましく、本発明においては、水溶性重合体の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値により表される分散度(PDI)は2.0以下である。PDIは、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。PDIの下限は通常1.0である。
PDIが2.0以下であれば、研磨工程における良好な吸着性および研磨後の被研磨体表面への濡れ性の確保、並びに、良好な砥粒分散安定性をバランス良く発揮することが可能となる。このため、ウェーハの研磨工程に用いた場合にはウェーハ全体をムラなく均一に研磨することが可能となる。また、著しく分子量の高い重合体を含まないために良好な砥粒分散性を示し、凝集した研磨砥粒によるスクラッチや表面荒れ、並びに、砥粒凝集体そのものがパーティクルとしてウェーハ表面に付着する表面汚染等が抑制される。その結果、ウェーハ表面の仕上げ研磨における、表面平滑性と無傷性のさらなる向上が期待される。
本発明の水溶性重合体は、後記するリビングラジカル重合法により得られるものであればよく、その構成等について特段制限されるものではない。
本発明の水溶性重合体は、公知の各種ビニル系単量体を重合することにより得ることができる。ビニル系単量体は特に限定されるものではないが、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸及びフマル酸等の不飽和酸並びにこれらの塩類;無水マレイン酸等の不飽和酸無水物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類等のスルホン酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド;N−(メタ)アクリロイルモルホリン;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物;メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(ジ)アルキルアミノアルキルアミド化合物;メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(ジ)アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム化合物;スチレン、ビニルトルエン及びビニルキシレン等の芳香族ビニル化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル及びn−デシルビニルエーテル等の炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル類;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピパリン酸ビニル及びバーサチック酸ビニル等のビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、ブチレン等のα―オレフィン類等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記の内でも、ウェーハや研磨砥粒に対して適度な吸着性を有し、アルカリ条件下における加水分解性に優れる点から、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物、(ジ)アルキルアミノアルキルアミド化合物、N−ビニルラクタム化合物等の分子内に窒素原子を有する単量体が好ましく、さらにはN−(メタ)アクリロイルモルホリンが特に好ましい。
本発明の水溶性重合体は、上記の分子内に窒素原子を有する単量体に由来する構造単位を水溶性重合体の全構造単位に対して10〜100mol%の範囲有することが好ましく、30〜100mol%の範囲有することがより好ましく、50〜100mol%の範囲有することがさらに好ましく、70〜100mol%の範囲有することが一層好ましい。分子内に窒素原子を有する単量体に由来する構造単位が10〜100mol%の範囲である場合、水に対する溶解性を悪化させることなく、前述したウェーハや研磨砥粒に対する吸着性を適度に付与できるため、好ましい。
本発明の水溶性重合体は、主鎖部分が炭素−炭素結合のみからなる繰り返し単位により構成されたものであることが好ましい。ここで、「主鎖部分が炭素−炭素結合のみからなる」とは、ポリエーテル、ポリエステル及びポリアミド等のように主鎖自身に炭素−酸素結合、炭素−窒素結合等を含むものを除くという意味で用いられる。従って、例えばアクリル系単量体を重合した場合に導入されるアクリロイル基由来の炭素−水素結合やペンダント基等、構成単量体の重合性官能基が有する置換基に由来する結合種類については考慮しない。また、主鎖部分に炭素−炭素不飽和結合を有する水溶性重合体も含まれる。
主鎖部分が炭素−炭素結合のみからなる繰り返し単位により構成される水溶性重合体を用いた場合は、安定性に優れた研磨液組成物を得ることができる。これに対し、主鎖部分に、炭素−酸素結合又は炭素−窒素結合を有する水溶性重合体は、アルカリ加水分解又は自動酸化等に起因する主鎖切断を生じる場合があり、研磨条件及び保存条件等によっては濡れ剤としての性能が安定的に発揮されない虞がある。
また、研磨液組成物はアルカリ化合物が配合された条件で調製され、保管及び使用されるのが一般的である。このため、研磨液組成物に含まれる水溶性重合体としては、耐アルカリ加水分解性の良好なものが好ましい。
本発明における水溶性重合体は十分に小さいPDIを有するため、シリカ等の砥粒やウェーハ等の被研磨体表面に対する吸着力や吸着速度の均一性が高いものである。従って、本発明の水溶性重合体は濡れ剤として有効に作用し、該水溶性重合体を含む研磨液組成物では、被研磨体表面をムラなく均一に研磨することが可能となる。また、著しく分子量の高い成分を含まないことから砥粒分散性にも優れ、砥粒凝集体に起因する被研磨体表面の傷や表面汚染等が抑制される。
<水溶性重合体の製造方法>
上記の通り、本発明の水溶性重合体はリビングラジカル重合法により製造される。リビングラジカル重合法によればPDIの小さな重合体を容易に得ることが可能であり、適用可能な単量体の範囲も広くすることができる。
本発明に用いるリビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらの内でも、金属又は半金属化合物の混入によるウェーハ汚染の虞がない点から、RAFT法及びNMP法が好ましい。
例えば、シリコンウェーハ等の表面研磨においてウェーハ表面が金属により汚染された場合には、該金属とシリコン又はシリコン酸化膜との化学反応により、ウェーハ上に隆起、陥没、ピット形成、樹枝状異物形成などの平坦性異常を生じる結果、トランジスタの配線パターンを阻害する虞がある。また、トランジスタのシリコン酸化膜(絶縁膜)の絶縁耐性を劣化させてトランジスタの電気的な破壊を誘発したり、シリコン酸化膜中の余分な電荷単体となってトランジスタの動作不良を起こす場合がある。
このため、研磨液組成物用水溶性重合体への金属混入を防止することが好ましい。尚、本発明において上記水溶性重合体への混入を防止する金属とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及びその他の金属等の金属のみならず、Te等の半金属も含まれるものとする。上記アルカリ金属としては、Na、K等が挙げられる。上記アルカリ土類金属としては、Ca等が挙げられる。上記遷移金属としては、Ni、Cu、Fe、Cr、Zn、Ti、W、Co等が挙げられる。上記その他の金属としては、Al等が挙げられる。本発明では、水溶性重合体に対する上記の各金属(半金属を含む)の含有量を100ppm以下とすることが好ましい。
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行し、一般的にはポリマーの分子量は単量体とRAFT剤の仕込み比により調整することが可能である。
上記RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。これらの内でも、PDIがより小さい重合体を得ることができる点で、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物が好ましい。
上記RAFT剤には通常チオカルボニルチオ基(S=C−S)が存在し、これが活性点として作用する。本発明では、用いるRAFT剤が有する活性点の数は特に限定されないが、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる点から、1分子中に2以上の活性点を有する多官能性のRAFT剤を用いることが好ましい。ここで、二官能性のRAFT剤を用いた場合には、リビング重合により直鎖状の重合体を得ることができ、三官能以上のRAFT剤を用いた場合には、スター構造等の分岐状の重合体を得ることができる。
RAFT剤の使用割合は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整されるものであるが、水溶性重合体全体を構成する全単量体の合計重量に基づいて、0.01〜5.0質量%の割合で使用することが好ましく、0.05〜3.0質量%の割合がより好ましく、0.1〜2.0質量%の割合がさらに好ましい。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。
上記アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、水溶性重合体全体を構成する全単量体の合計重量に基づいて、0.01〜1.0質量%の割合で使用することが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合がより好ましく、0.01〜0.1質量%の割合がさらに好ましい。
また、PDIがより小さい重合体を得る点から、上記RAFT剤1molに対する上記ラジカル重合開始剤の使用量を0.5mol以下とすることが好ましく、0.2mol以下とするのがより好ましい。また、重合反応を安定的に行う観点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量の下限は、0.01molである。よって、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量は、0.01〜0.5molの範囲が好ましく、0.05〜0.2molの範囲がより好ましい。
通常、RAFT法により重合体を得た場合には、RAFT剤に由来する残基を末端に有する重合体が含まれる。本発明では、得られた水溶性重合体の安定性の観点から、RAFT法によるリビングラジカル重合により水溶性重合体を得た後、該重合体末端に導入されたRAFT残基を不活性化処理する後処理工程を備えることが好ましい。
RAFT残基は加熱条件下、求核反応により容易に分解することが知られており、チオール基に変換することが出来る。チオール基はα、β−不飽和カルボニル化合物、カルボニル化合物、イソシアネート、エポキシ化合物と容易に反応するため、これらの化合物との反応によりRAFT残基を不活性化処理することが可能である。操作の簡便性の観点から、RAFT残基の分解にはアミン化合物を用いた求核反応が好ましい。また、生成したチオール基との反応については、反応性の観点からα、β−不飽和カルボニル化合物との反応が好ましい。
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは45〜90℃であり、さらに好ましくは50〜80℃である。反応温度が40℃未満であると、反応速度が著しく遅くなる場合がある。一方、反応温度が100℃より高いと使用できる開始剤や溶剤が制限される他、ラジカル連鎖移動等の副反応が起きやすくなるため重合体のPDIが増大する虞がある。
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、これに由来するニトロキシドラジカルを介して重合が進行する。本発明では、用いるニトロキシドラジカルの種類に特に制限はないが、アクリレート及びアクリルアミドを含むアクリルアミド誘導体等の単量体を重合する際の重合制御性の観点から、ニトロキシド化合物として一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 0006628023
{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、R3は−(CH2)m−、mは0〜2であり、R4、R5は炭素数1〜4のアルキル基である}
NMP法によれば、全く副反応が起こらないと仮定した場合には、上記リビングラジカル重合開始剤と用いるビニル系単量体とのモル比がそのまま得られる重合体の重合度となる。本発明では、リビングラジカル重合開始剤1モルに対して該ビニル系単量体60〜6,000モルを反応させることが好ましく、より好ましくは150〜5,000モルであり、特に好ましくは300〜4,000モルである。
上記一般式(1)で表されるニトロキシド化合物は、70〜80℃程度の加熱により一次解離し、ビニル系単量体と付加反応を起こす。この際、2以上のビニル基を有するビニル系単量体にニトロキシド化合物を付加することにより多官能性の重合前駆体を得ることが可能である。次いで、上記重合前駆体を加熱下で二次解離することにより、ビニル系単量体をリビング重合することができる。重合前駆体を二次解離する際の加熱条件は、一次解離よりも高い温度で行うことが一般的であり、具体的には100〜120℃程度の温度条件下で行うことができる。
この場合、重合前駆体は分子内に2以上の活性点を有するため、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。尚、重合前駆体が二官能のビニル系単量体及びニトロキシド化合物から得られたものである場合には、リビング重合により直鎖状の重合体を得ることができ、三官能以上のビニル系単量体に由来する重合前駆体の場合には、スター構造等の分岐状の重合体を得ることができる。また、上記2以上のビニル基を有するビニル系単量体が有する当該ビニル基は、重合前駆体を高い収率で得ることができる点からアクリロイル基であることが好ましい。
本発明の水溶性重合体をNMP法により製造する場合、上記一般式(1)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、一般式(2)で表されるニトロキシドラジカルを0.001〜0.2molの範囲で添加して重合を行ってもよい。
Figure 0006628023
{式中、R4、R5は炭素数1〜4のアルキル基である。}
上記一般式(2)で表されるニトロキシドラジカルを0.001mol以上添加することにより、ニトロキシドラジカルの濃度が定常状態に達する時間が短縮される。これにより、重合をより高度に制御することが可能となり、よりPDIが小さい重合体を得ることができる。一方、上記ニトロキシドラジカルの添加量が多すぎると重合が進行しない場合がある。上記ニトロキシド化合物1molに対する上記ニトロキシドラジカルのより好ましい添加量は0.01〜0.5molの範囲であり、さらに好ましい添加量は0.05〜0.2molの範囲である。
NMP法におけるリビングラジカル重合開始剤と、用いるビニル系単量体との反応温度は、好ましくは50〜140℃であり、より好ましくは60〜130℃であり、さらに好ましくは70〜120℃であり、特に好ましくは80〜120℃である。反応温度が50℃未満であると、反応速度が著しく遅くなる場合がある。一方、反応温度が140℃より高いとラジカル連鎖移動等の副反応が起きやすくなるため重合体のPDIが増大する虞がある。
本発明では、水溶性重合体の重合は、その重合方法によらず、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。
連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、2−メチルヘプタン−2−チオール、2−ブチルブタン−1−チオール、1,1−ジメチル−1−ペンタンチオール、1−オクタンチオール、2−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、2−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、3−メチル−3−ウンデカンチオール、5−エチル−5−デカンチオール、tert−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール及び1−オクタデカンチオール等の炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
連鎖移動剤の中でも、ウェーハへの吸着性が良好となる点から炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物が好ましく、炭素数4〜20のアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数6〜20のアルキル基を有するものがさらに好ましい。
連鎖移動剤を用いる際、その好ましい使用量は、全単量体の量に対して0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
リビングラジカル重合では、重合時のモノマー濃度が低い場合には特に重合後期における副反応の割合が高まり、得られる重合体のPDIが増大する虞がある。この観点から、リビングラジカル重合終了時点における反応液の全量に対し、該重合に使用したビニル系単量体の総量の割合が20質量%以上であることが好ましい。また、上記の通り、本発明の製造方法はバルク重合にも適用してもよく、重合時のモノマー濃度の上限は100質量%である。よって、本発明では、リビングラジカル重合終了時点において、使用した重合溶媒及びビニル単量体の質量比が、0〜80/20〜100であることが好ましい。当該質量比は、より好ましくは10〜80/20〜90であり、さらに好ましくは30〜60/40〜70である。
本発明では、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
<研磨液組成物>
本発明の研磨液組成物は、上記水溶性重合体、水、砥粒及びアルカリ化合物を含んでなるものである。研磨液組成物中の水溶性重合体の割合は、特に限定されるものではないが、研磨液組成物がCMPにおける扱い上、又ウェーハ表面に吸着するにあたり適度な粘度とすることが好ましい。研磨液組成物の具体的な粘度は、0.1〜10mPa・sの範囲であることが好ましく、0.3〜8mPa・sの範囲であることがより好ましく、0.5〜5mPa・sの範囲であることがさらに好ましい。
また、上記水溶性重合体は、研磨液組成物全体の0.001〜10質量%の範囲となるよう用いることが好ましく、0.005〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
砥粒としてはコロイダルシリカ等を用いることができる。砥粒としてコロイダルシリカを用いる場合、研磨液組成物におけるその含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることがさらに好ましい。コロイダルシリカの使用量が0.1質量%以上であればメカニカル研磨の研磨速度が良好なものとなる。また、50質量%以下であれば、砥粒の分散性が保持され、ウェーハ表面の平滑性が良好なものとすることができる。
コリダルシリカの平均粒子径は、必要とする研磨速度と研磨後のウェーハ表面の平滑性から適宜選択されるが、一般的には、2〜500nmの範囲であり、5〜300nmの範囲が好ましく、5〜200nmの範囲がより好ましい。
アルカリ化合物としては、水溶性のアルカリ化合物であれば特に制限はなく、アルカリ金属水酸化物、アミン類又はアンモニア若しくは4級水酸化アンモニウム塩等を使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム等が挙げられる。アミン類としては、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルペンタミン及びテトラエチルペンタミン等が挙げられる。4級水酸化アンモニウム塩としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。これらの内では、半導体基板に対する汚染が少ないという点からアンモニア又は4級水酸化アンモニウム塩が好ましい。
本発明の研磨液組成物は、前記アルカリ化合物を添加することにより、そのpHが8〜13となるように調整されるのが好ましい。pHの範囲は8.5〜12に調整するのがより好ましい。
研磨液組成物には、上記以外にも、必要に応じて有機溶剤、各種キレート剤、界面活性剤、有機酸化合物、無機酸化合物及び防腐剤等を更に含有することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
製造例で得られた水溶性重合体の分析方法並びに、実施例及び比較例における半導体用濡れ剤又は研磨液組成物の評価方法について以下に記載する。
<分子量測定>
各製造例で得られた重合体について、以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリメタクリル酸メチル換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分散度(PDI=Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperHM−M×3本
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(10mM LiBr含有)
温度:40℃
検出器:RI
流速:300μL/min
<含有金属分の定量>
各製造例で得られた水溶性重合体約100〜200mgをポリテトラフルオロエチレン(TPFE)製加圧容器に精密に秤量し、超高純度硫酸および超高純度硝酸を加えてマイクロウェーブ分解を行い、分解物を50mlに定容した。上記の溶液について、ICP質量分析器(Agilent7500cs、Agilent社製)を使用し、同時に実施したブランク試験値を減算し、水溶性重合体に対する各金属(半金属を含む)の含有量を決定した。
≪RAFT剤の合成≫
合成例1
(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチルベンゼンの合成)
ナス型フラスコに蒸留水(208ml)、水酸化カリウム(11.6g、208mmol)を加えて水酸化カリウム水溶液を調製し、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(aliquat336)(3.0g、7.6mmol)、1−ドデカンチオール(42.2g、50ml、208mmol)を加えて氷浴に浸漬した。ここへ、二硫化炭素(15.8g、208mmol)を滴下し、氷浴に浸漬したまま20分攪拌した。さらに、塩化ベンジル(24.0g、190mmol)を加えて室温で2時間攪拌した後、反応溶液を分液ロートに移し、クロロホルム(150ml)を加えて、食塩水(150ml)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ紙でろ過した後、エバポレーターで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製することにより、以下の式(3)で表されるn−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチルベンゼン(以下、「LBTTC」ともいう)を収率52%で得た。1H−NMR測定より7.2ppm、4.6ppm、3.4ppmに目的物のピークを確認した。
Figure 0006628023
合成例2
(1,4−ビス(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼンの合成)
ナス型フラスコに1−ドデカンチオール(42.2g)、20%KOH水溶液(63.8g)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(1.5g)を加えて氷浴で冷却し、二硫化炭素(15.9g)、テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう)(38ml)を加え20分攪拌した。α、α−ジクロロ−p−キシレン(16.6g)のTHF溶液(170ml)を30分かけて滴下した。室温で1時間反応させた後、クロロホルムから抽出し、純水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ロータリーエバポレータで濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した後、酢酸エチルから再結晶することにより、以下の式(4)で表される1,4−ビス(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(以下「DLBTTC」ともいう)を収率80%で得た。1H−NMR測定より7.2ppm、4.6ppm、3.4ppmに目的物のピークを確認した。
Figure 0006628023
合成例3
(S−(1−(メトキシカルボニル)エチル)キサントゲン酸O−エチルの合成)
ナス型フラスコにエタノール(40ml)、水酸化カリウム(5.6g、0.1mol)を加えて溶液とした後、二硫化炭素(20ml)を滴下し、室温下10時間攪拌した。ロータリーエバポレータで濃縮した後、残渣に2−クロロプロピオン酸メチルの20%エタノール溶液(30ml)を加え、60℃で5時間反応させた。反応溶液を分液ロートに移し、ジエチルエーテル(40ml)を加えて、食無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、以下の式(5)で表されるS−(1−(メトキシカルボニル)エチル)キサントゲン酸O−エチル(以下「MAEX」ともいう)を収率64%で得た。1H−NMR測定より3.7ppm、3.5ppm、1.6ppm、1.1ppmに目的物のピークを確認した。
Figure 0006628023
上記以外にも、市販のRAFT剤として、以下の式(6)で表されるベンジル1H−ピロール−1−カルボジチオエート(以下、「BPDTC」ともいう)及び式(7)で表されるS,S−ジベンジルトリチオカーボネート(以下、「DBTTC」ともいう)を準備した。
Figure 0006628023
Figure 0006628023
≪水溶性重合体の製造≫
実施例1(重合体Aの製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1Lフラスコに合成例1で得られたRAFT剤(LBTTC)(24.1g)、2,2´−アゾビス2−メチルブチロニトリル(以下「ABN−E」ともいう)(2.5g)、アクリロイルモルホリン(以下「ACMO」ともいう)(600g)およびアニソール(400g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、ドライアイス/メタノール浴で冷却し反応を停止した。この時点でのACMOの重合率をGC測定から決定したところ、約83%であった。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Aを得た。得られた重合体Aの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定より、Mn8500、Mw10600であり、PDIは1.25であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例2(重合体Bの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Bを得た。重合体Bの分子量はGPC測定より、Mn49600、Mw62500であり、PDIは1.26であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例3(重合体Cの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Cを得た。重合体Cの分子量はGPC測定より、Mn293000、Mw351000であり、PDIは1.20であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例4(重合体Dの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Dを得た。重合体Dの分子量はGPC測定より、Mn622000、Mw796000であり、PDIは1.28であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例5(重合体Eの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Eを得た。重合体Eの分子量はGPC測定より、Mn282000、Mw352000であり、PDIは1.25であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例6(重合体Fの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Fを得た。重合体Fの分子量はGPC測定より、Mn288000、Mw362000であり、PDIは1.26であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例7(重合体Gの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Gを得た。重合体Gの分子量はGPC測定より、Mn274000、Mw348000であり、PDIは1.27であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例8(重合体Hの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Hを得た。得られた重合体Hの分子量はGPC測定より、Mn142000、Mw178000であり、PDIは1.25であった。
実施例9(重合体Iの製造)
製造例8で得られた重合体H(170g)、ABN−E(0.1g)、N,N−ジメチルアクリルアミド(以下、「DMAAm」ともいう)(200g)およびアニソール(630g)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、ポリアクリロイルモルホリンとポリN、N−ジメチルアクリルアミドのブロックポリマーである重合体Iを得た。重合体Iの分子量はGPC測定より、Mn289000、Mw346000であり、PDIは1.20であった。1H−NMR測定からアクリロイルモルホリンとN、N−ジメチルアクリルアミドの組成比を決定したところ、アクリロイルモルホリン/N、N−ジメチルアクリルアミド=53/47wt%であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例10(重合体Jの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Jを得た。重合体Jの分子量はGPC測定より、Mn278000、Mw356000であり、PDIは1.28であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例11(重合体Kの製造)
仕込み原料を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Kを得た。重合体Kの分子量はGPC測定より、Mn280000、Mw363000であり、PDIは1.30であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例12(重合体Lの製造)
仕込み原料を表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Lを得た。重合体Lの分子量はGPC測定より、Mn315000、Mw356000であり、PDIは1.13であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例13(重合体Mの製造)
仕込み原料を表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Mを得た。重合体Mの分子量はGPC測定より、Mn222000、Mw349000であり、PDIは1.57であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例14(重合体Nの製造)
仕込み原料を表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Nを得た。重合体Nの分子量はGPC測定より、Mn192000、Mw350000であり、PDIは1.82であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例15(重合体O2の製造)
LBTTCの使用量を0.7g、2,2´−アゾビス2−メチルブチロニトリルの使用量を0.1gに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体O−1を得た。重合体O−1の分子量はGPC測定より、Mn287000、Mw367000であり、PDIは1.28であった。
次いで、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1Lフラスコに、上記で得られた重合体O−1(600g)、アニソール(400g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気した後、n−プロピルアミン(0.1g)をシリンジで添加した。室温で30分アミン分解を行った後、ACMO(0.7g)をシリンジで添加し、室温で一晩撹拌することによりマイケル付加反応を行った。上記反応溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体O−2を得た。得られた重合体O−2の分子量はGPC測定より、Mn288000、Mw368000であり、PDIは1.28であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例16(重合体Pの製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1Lフラスコに2−メチル−2−[N−tert−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)−N−オキシル]プロピオン酸(0.7g)、ACMO(600g)およびアニソール(400g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、115℃の恒温槽で重合を開始した。7時間後、ドライアイス/メタノール浴で冷却し反応を停止した。この時点でのアクリロイルモルホリンの重合率をGC測定から決定したところ、約89%であった。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Pを得た。得られた重合体Pの分子量はGPC測定より、Mn238000、Mw371000であり、PDIは1.56であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例17(重合体Qの製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1Lフラスコに2−メチル−2−[N−tert−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)−N−オキシル]プロピオン酸(0.7g)、アニソール(50g)および1,4−ブタンジオールジアクリレート(0.2g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で反応を開始した。1時間後、予め窒素バブリングで十分脱気しておいたACMO(600g)およびアニソール(350g)を添加し、115℃の恒温槽で重合を開始した。7時間後、ドライアイス/メタノール浴で冷却し反応を停止した。この時点でのACMOの重合率をGC測定から決定したところ、約83%であった。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Qを得た。得られた重合体Qの分子量はGPC測定より、Mn252000、Mw339000であり、PDIは1.35であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例18(重合体Rの製造)
N−tert−ブチル−1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル ニトロキシドを表2に示す通り仕込んで使用した以外は実施例16と同様の操作を行い、重合体R得た。重合体Rの分子量はGPC測定より、Mn259000、Mw346000であり、PDIは1.34であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例19(重合体Sの製造)
N−tert−ブチル−1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル ニトロキシドを表2に示す通り仕込んで使用した以外は実施例16と同様の操作を行い、重合体Sを得た。重合体Sの分子量はGPC測定より、Mn268000、Mw335000であり、PDIは1.25であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例20(重合体Tの製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1Lフラスコに臭化銅(I)(0.2g)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.7g)、ACMO(600g)およびアニソール(400g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気した。エチレンビス(2−ブロモイソブチラート)(0.3g)を添加した後、70℃の恒温槽で重合を開始した。4時間後、ドライアイス/メタノール浴で冷却し反応を停止した。この時点でのACMOの重合率をGC測定から決定したところ、約71%であった。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Tを得た。得られた重合体Tの分子量はGPC測定より、Mn282000、Mw362000であり、PDIは1.28であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ、銅が1000ppm以上検出された。銅以外の金属分は何れも100ppm以下であった。
実施例21(重合体Uの製造)
仕込み原料を表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Uを得た。重合体Uの分子量はGPC測定より、Mn235000、Mw368000であり、PDIは1.57であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例22(重合体Vの製造)
仕込み原料を表2に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Vを得た。重合体Vの分子量はGPC測定より、Mn178000、Mw344000であり、PDIは1.93であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
比較例1(重合体Wの製造)
仕込み原料を表3に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Wを得た。重合体Wの分子量はGPC測定より、Mn4000、Mw5400であり、PDIは1.35であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
比較例2(重合体Xの製造)
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1Lフラスコに2,2´−アゾビス2−メチルブチロニトリル(6.3g)、ACMO(300g)およびアニソール(700g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、ドライアイス/メタノール浴で冷却し反応を停止した。この時点でのACMOの重合率をGC測定から決定したところ、約93%であった。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Xを得た。得られた重合体Xの分子量はGPC測定より、Mn264000、Mw753000であり、PDIは2.85であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
比較例3(重合体Yの製造)
仕込み原料を表3に示す通りに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、重合体Yを得た。重合体Yの分子量はGPC測定より、Mn132000、Mw325000であり、PDIは2.46であった。ICP質量分析器によって含有金属分を測定したところ何れの金属分も100ppm以下であった。
実施例1〜22及び比較例1〜3で得られた各重合体の内容及び物性値について表1〜表3に示す。
Figure 0006628023
Figure 0006628023
Figure 0006628023
表1〜表3に示された化合物の詳細は以下の通り。
ACMO:アクリロイルモルホリン
DMAAm:N,N−ジメチルアクリルアミド
NVP:N−ビニルピロリドン
BDDA:1,4−ブタンジオールジアクリレート
LBTTC:n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチルベンゼン(合成例1で得られたRAFT剤:トリチオカーボネート)
BPDTC:ベンジル1H−ピロール−1−カルボジチオエート(Aldrich社製RAFT剤:ジチオカーバメート)
DLBTTC:1,4−ビス(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(合成例2で得られたRAFT剤:トリチオカーボネート)
DBTTC:S,S−ジベンジルトリチオカーボネート(Aldrich社製RAFT剤:トリチオカーボネート)
MAEX:S−(1−(メトキシカルボニル)エチル)キサントゲン酸O−エチル(合成例3で得られたRAFT剤:ザンテート)
SG1−MAA:2−メチル−2−[N−tert−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)−N−オキシル]プロピオン酸(Arkema社製ニトロキシド化合物)
SG1:N−tert−ブチル−1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル ニトロキシド(Arkema社製ニトロキシドラジカル)
ABN−E:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
評価例1
実施例1で得られた重合体Aを用いて、研磨用濡れ剤及び研磨液組成物としての以下の評価を行った。得られた結果を表5に示す。
<シリカ分散性>
9ccのスクリュー瓶にコロイダルシリカ(1次粒子径:30〜50nm)5.0gに樹脂固形分20%の水溶性重合体水溶液を0.5g加えて、良く混合した。一晩静置後のシリカの粒子径(A)を動的光散乱法(ELSZ−1000、大塚電子製)により測定し、水溶性重合体を加えていないコロイダルシリカの粒子径(B)からの変化率を下式に従って算出し、以下の基準より判定した。
変化率(%)={(A−B)/B}×100
◎:変化率が3%未満
○:変化率が3%以上5%未満
△:変化率が5%以上10%未満
×:変化率が10%以上
<濡れ性>
ガラスカッターで3×6cmに切出したウェーハの重量を測定後、3%フッ酸水溶液に20秒間浸漬してウェーハ表面の酸化膜を除去し、その後純水で10秒間洗浄した。この工程をウェーハの表面が完全撥水になるまで繰り返した後、0.18%の水溶性重合体溶液中に5分間浸漬した。浸漬後、ピンセットを用いて、ウェーハの表面が液面に対して垂直になるように引き上げ、10秒経過時点におけるウェーハ端部からの撥水距離を目視で確認し、以下の基準により判定した。
◎:撥水距離 3mm未満
○:撥水距離 3mm以上5mm未満
△:撥水距離 5mm以上7mm未満
▲:撥水距離 7mm以上10mm未満
×:撥水距離 10mm以上
<耐アルカリ性>
100ccのスクリュー瓶に、水溶性重合体0.5g、pH10の緩衝溶液49.5gを加えて溶解した。マグネチックスターラーを用いて、水溶液を25℃下1週間攪拌した。攪拌前後の重合体の分子量(Mw)を、GPCで測定し、攪拌前の分子量Aと攪拌後の分子量Bの比から、下式に従って変化率を算出し、以下の基準より判定した。
変化率(%)={(A−B)/A}×100
◎:変化率が1%未満
○:変化率が1%以上5%未満
×:変化率が5%以上
評価例2〜21及び比較評価例1〜3
水溶性重合体を表4に記載の通り変更した以外は評価例1と同様の操作により各種評価を行った。得られた結果を表4に示す。
Figure 0006628023
実施例1〜22は、本発明の製造方法により研磨液組成物用水溶性重合体を得たものである。水溶性重合体のPDIは1.13〜1.93と十分小さい値であり、これらを用いた評価例では、ウェーハへの濡れ性及び砥粒であるシリカ分散性ともに良好な性能を示した。
実施例1〜15、21及び22はRAFT法により研磨液用水溶性重合体を製造した例である。RAFT剤とラジカル重合開始剤の比率が同じ条件下において、RAFT剤の種類に着目すると、ザンテートを用いた実施例21に比較して、トリチオカーボネート又はジチオカーバメートを用いた実施例1〜12及び15では、より小さなPDI値の水溶性重合体が得られている。同様に、ザンテートを用いた実施例22に比較して、トリチオカーボネートを用いた実施例13における水溶性重合体のPDIは、小さな値となっている。
中でも、二官能性のRAFT剤を用いた実施例12では、得られた水溶性重合体(重合体K)のPDIは1.13と極めて小さく、より制御された重合が行われたことが分かる。
また、実施例3、13及び14の比較から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量が高い実施例14(重合体N)に比較して、該ラジカル重合開始剤の使用量が0.5mol以下である実施例3及び13の水溶性重合体(重合体C及びM)のPDI値はより小さいものであった。
実施例15は、重合制御剤の不活性化処理を行ったものであるが、水溶性重合体の安定性(耐アルカリ性)が大きく向上する評価結果が得られた(評価例14)。
実施例16〜19はNMP法により研磨液用水溶性重合体を製造した例である。二官能性の重合前駆体を合成後に重合を行った実施例17(重合体Q)では、実施例16(重合体P)に比較してよりPDIの小さい水溶性重合体が得られた。また、ニトロキシドラジカルを併用した実施例18及び19においてもPDIの低減が認められた(重合体R及び重合体S)。
これに対し、フリーラジカル重合法による比較例2では、得られた水溶性重合体のPDIは2.85と高い値であった。比較例2及び3で得られた水溶性重合体X(PDI:2.85)及び水溶性重合体Y(PDI:2.46)は、シリカ分散性及びウェーハへの濡れ性においてバランス化されたものではなかった(比較評価例2及び3)。また、比較例1で得られた水溶性重合体(重合体W)はMnが低く、濡れ性に極めて劣るものであった(比較評価例1)。
本発明の製造方法によれば、シリコンウェーハ等の表面研磨に有用な合成系の研磨液組成物用水溶性重合体であって、十分に小さいPDIを有する水溶性重合体を簡便に製造することができる。
本発明の製造方法により得られた水溶性重合体は、シリカ等の砥粒やウェーハ等の被研磨体表面に対する吸着力や吸着速度の均一性が高いものである。従って、上記水溶性重合体を含む研磨液組成物では、被研磨体表面をムラなく均一に研磨することが可能となる。また、著しく分子量の高い成分を含まないことから砥粒分散性にも優れ、砥粒凝集体に起因する被研磨体表面の傷や表面汚染等が抑制される。
本発明の製造方法による水溶性重合体を含む研磨液組成物は各種の被研磨体に対して良好な研磨性能を発揮するため、半導体材料としてのシリコンウェーハの仕上げ研磨液組成物として特に有用である。

Claims (9)

  1. 研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法であって、
    数平均分子量(Mn)が49,600〜600,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分散度(PDI)が1.57以下である重合体を、リビングラジカル重合法により製造することを特徴とし、当該リビングラジカル重合法が、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT法)であり、RAFT法における重合制御剤(RAFT剤)1molに対し、ラジカル重合開始剤を0.2mol以上0.5mol以下使用する研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  2. 記RAFT剤として、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いる請求項に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  3. 多官能性のRAFT剤を用いる請求項又はに記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  4. リビングラジカル重合により水溶性重合体を得た後、RAFT剤残基の不活性化処理を行う後処理工程を備える請求項のいずれか一項に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  5. 重合終了時点の反応液において、重合溶媒/ビニル系単量体の質量比が、0〜80/20〜100である請求項1〜のいずれか一項に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  6. 前記水溶性重合体に対する金属の含有量が各々100ppm以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  7. 水溶性重合体が、分子内に窒素原子を有する単量体に由来する構造単位を10〜100mol%含む請求項1〜のいずれか一項に記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
  8. 研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法であって、
    数平均分子量(Mn)が49,600〜1,000,000であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される分散度(PDI)が2.0以下である重合体を、リビングラジカル重合法により製造することを特徴とし、
    当該リビングラジカル重合法が、ニトロキシラジカル法(NMP法)であり、
    当該NMP法において、ニトロキシド化合物として以下の一般式(1)で表される化合物と、2以上のビニル基を有するビニル系単量体との反応により重合前駆体を得た後、該重合前駆体の存在下、さらにビニル系単量体の重合を行う研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
    Figure 0006628023
    {式中、R は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、R は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、R は−(CH )m−、mは0〜2であり、R 、R は炭素数1〜4のアルキル基である。}
  9. 前記一般式(1)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、以下の一般式(2)で表されるニトロキシドラジカル0.001〜0.2molを使用する請求項記載の研磨液組成物用水溶性重合体の製造方法。
    Figure 0006628023
    {式中、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。}
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