JP6625910B2 - 可動ブラケット調整装置およびそれを用いた流れ調整方法 - Google Patents
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Description
一般に、トロリ線と吊架線はそれぞれ異なる金属材料すなわち線膨張率の異なる材料で構成されているため、年間を通して変動する気温の影響を受けて伸び縮みする。自動張力調整装置は電車線が伸び縮みしても一定の張力を付与することができるが、自動張力調整装置からの張力によってトロリ線と吊架線の相対位置がずれ、これらの電車線を支持する可動ブラケットに線路と平行方向への力が作用して、可動ブラケットを変形させるような力が働くこととなるため、電車線の伸び縮みに応じて可動ブラケットにおける電車線固定部の位置調整が必要になる。
そこで、トロリ線や吊架線の支持位置の調整作業を行う際に、トロリ線や吊架線を一時的に引き留める支持位置調整作業用の電車線仮引き装置に関する発明が提案されている(例えば、特許文献1)。
一方、特許文献1に記載されている電車線仮引き装置によれば、トロリ線や吊架線を一時的に引き留めることで、可動ブラケットにかかるトロリ線や吊架線の張力を仮受けすることができるため、流れ調整作業を行うこともできる。しかし、その場合、可動ブラケットを手押しで横移動させる必要があるとともに、可動ブラケット全体にかかるトロリ線や吊架線の張力を完全に開放できるものではないため、正確な流れ調整は困難であるという課題がある。
ところで、可動ブラケットの調整作業を行う際には、仮受けしている張力が誤って解放された場合、弓矢を引いた状態で矢を離すと弦が急激に元に戻るように、電車線が仮受けしていた張力の方向とは反対側へ、作業者の想定しない位置へ急激に電車線が移動してしまう恐れがある。そのため、具体的には、仮受けしている張力が誤って解放された際に電車線が移動する側と反対の側に張力の仮受け金具を設ける等の工夫が必要である。
本発明の他の目的は、O形可動ブラケットに使用した場合に、仮受けが何かの拍子に外れて電車線が作業者の想定外の方向へ移動してしまう事態に陥ることなく調整作業を行うことができる可動ブラケット調整装置およびそれを用いた流れ調整方法を提供することにある。
支持構造物に支持され吊架線の延設方向と直交する方向へ延びる可動ブラケットに固定され、当該可動ブラケットの位置を調整する作業の間、当該可動ブラケットの吊架線支持手段に代わって前記吊架線をその張力に抗して一時的に引き留めておくことが可能な可動ブラケット調整装置であって、
前記可動ブラケットを構成し前記吊架線支持手段が設けられているブラケット構成部材に着脱可能に固定するためのクランプ手段を有する本体フレーム部材と、
前記吊架線を挟持可能な吊架線挟持手段を有し、前記本体フレーム部材により互いに平行な状態を保ったまま移動可能に支持された一対の棒状部材と、
前記一対の棒状部材をそれぞれ個別に軸方向へ移動させる一対の偏位調整手段と、
前記本体フレーム部材に保持され前記一対の棒状部材の移動方向と直交する方向へ移動可能な摺動ブロックと、
前記本体フレーム部材により支承され前記摺動ブロックを移動させることが可能な摺動ブロック送り手段と、を備えるようにしたものである。
前記本体フレーム部材は、前記一対の棒状部材の移動方向と直交する方向に長い矩形枠状に形成され、
前記摺動ブロックは、前記本体フレーム部材の前壁と後壁との間に摺動可能に保持され、
前記摺動ブロック送り手段は、前記本体フレーム部材の対向する側壁間に回転可能に支承された送りネジであり、
前記送りネジの前記本体フレーム部材の側壁から突出した部位にそれぞれボルトヘッドを設けるようにする。
かかる構成によれば、送りネジの端部のボルトヘッドを工具で操作して送りネジを回してやるだけで、可動ブラケットを吊架線に対して相対的に移動させて可動ブラケットの流れ調整を行うことができるため、調整結果にバラツキが生じにくく、精度の高い流れ調整が可能になる。
かかる構成によれば、左右一対の棒状部材をそれぞれ適切な量だけ移動させることで、線条のなりに合わせて左右均等に吊架線を引くことが可能となり、可動ブラケット調整装置に無理な力がかかるのを回避することができる。
かかる構成によれば、目盛りを見ながらナットを回して所望の量だけネジを締め込むことで吊架線の偏位調整を正確に行うことができる。
前記吊架線支持手段が設けられている前記ブラケット構成部材の先端側の位置に、前記クランプ手段によって当該可動ブラケット調整装置を固定する工程と、
前記一対の棒状部材に設けられている前記吊架線挟持手段によってそれぞれ吊架線を挟持させる工程と、
可動ブラケットに設けられている前記吊架線支持手段を操作して吊架線の支持状態を解除する工程と、
前記一対の棒状部材を前記吊架線の横張力が作用する方向と反対方向へ移動させて、前記吊架線支持手段から前記吊架線の横張力を解放させる工程と、
前記摺動ブロック送り手段を操作して前記摺動ブロックを所望の方向へ所望の量だけ移動させる工程と、
前記一対の棒状部材を前記ブラケット構成部材の基部側の方向へ移動させて前記吊架線挟持手段による吊架線の挟持状態を解除させる工程と、
前記吊架線支持手段を操作して吊架線を支持する状態に変換させる工程と、
前記クランプ手段のクランプ状態を解除して前記可動ブラケット調整装置を可動ブラケットから取り外す工程と、を有するようにしたものである。
図1には、本実施形態に係る可動ブラケット調整装置が使用される電車線支持装置としてのO形可動ブラケットの一例が示されている。このうち、図1(A)は可動ブラケットの全体図、(B)は可動ブラケットのほぼ中央にある吊架線固定部の拡大図である。なお、以下の説明では、図1(A)における矢印Aの方向から見た図を正面図と称する。従って、図1(A)は可動ブラケットの側面図に当たる。
主パイプ11は、基端側において電柱Pに取付バンドB1で固定され、碍子G1を介して水平方向に延び、先端部は下方へ向かって湾曲しながら下り傾斜するように形成されている。傾斜パイプ12は、同じく基端側において電柱Pに取付バンドB2で固定され、碍子G2を介して斜め上方に延び、先端が主パイプ11の中央よりも先端寄り位置に結合され、主パイプ11と協働してトラスを形成する。なお、主パイプ11と傾斜パイプ12は、それぞれその基部がヒンジ11H,12Hによって電柱Pに対して左右に回動可能となるように結合されている。
吊架線固定手段18は、図2に拡大して示すように、上部が開口した断面ほぼC字状の受け金具81と、該受け金具81の下面に垂設された一対の連結部81aを介して一体的に設けられ当該吊架線固定手段18を主パイプ11の上面に固定するための半円筒状の固定金具82と、受け金具81の底壁に形成されたスリット81bと側壁に形成された孔81cに挿通されたJボルト83と、図1(B)に示すように、Jボルト83の側壁突出側端部に形成されている雄ネジ部83aに螺合する締付けナット84とを有する。
また、図2に示すように、Jボルト83には鍔部83bが設けられており、締付けナット84を締め付けると該鍔部83bの上面が受け金具81の底壁のスリット81bの周縁に接触しながらJボルト83はスリット81bに沿って移動してJボルト83の曲り部と受け金具81の曲り部との間に吊架線Mを挟持して固定するように構成されている。また、締付けナット84を緩めるとJボルト83が受け金具81の側壁から離れ、吊架線Mが解放されて移動可能となる。
図3(A)に示すように、本実施形態の可動ブラケット調整装置20は、左右に細長い矩形枠状の本体フレーム21と、該本体フレーム21の下面に設けられ可動ブラケットの主パイプ11を把持することで主パイプに着脱可能に固定するためのクランプ手段を有する摺動ブロック22と、本体フレーム21の前後壁間に水平に横架され先端に吊架線Mを挟持するグリップ部を有する一対のグリップロッド23A,23Bと、本体フレーム21の左右側壁間に上記グリップロッド23A,23Bと直交する向きで横架され摺動ブロック22を本体フレーム21に対して相対的に移動させる流れ調整ネジ24(図4参照)を備える。
そして、一方の半円筒状部材22Aは外周面が溶接等により摺動ブロック22の下面に固着され、他方の半円筒状部材22Bはヒンジ22Cによって半円筒状部材22Aに回動可能に結合されている。半円筒状部材22A,22Bのヒンジ22Cと反対側には、互いに所定の間隔をおいて平行姿勢にて対向可能な係合片22Aa,22Baが形成されているとともに、該係合片22Aa,22Baにはそれぞれボルト挿通孔(図示省略)が形成されている。
なお、本実施形態では、図4(B)に示されているように、係合片22Aa,22Baにはそれぞれ2本の固定用ボルト22Dを挿通させることができるように、2個のボルト挿通孔(図示省略)が形成されており、より強固に可動ブラケット調整装置20を可動ブラケットの主パイプ11に固定できるようになっている。
なお、グリップロッド23A,23Bの上面は平坦に形成されており、本体フレーム21の前壁21aと後壁21bに形成されているロッド挿入孔がロッドの断面に対応する形状に形成されることで、グリップロッド23A,23Bの空回りを防止できる。
また、引上箇所のように可動ブラケットを中心に左右で線条の距離が違う場合、前述の特許文献1に記載されている先行技術のように左右一対の滑車により一括で引く構造であると、線条のなりと滑車のなりが合わず均等に引くことができない。
さらに、本実施形態の可動ブラケット調整装置20では、グリップロッド23A,23Bの上面に、例えば1mm単位の目盛りが付されているスケール部23As,23Bsが設けられているため、ナット31A,31Bによるネジの締め込みに伴うグリップロッド23A,23Bの移動量を把握することができ、吊架線の偏位調整を正確に行うことができる。
なお、可動ブラケット調整装置20を使用するのは、吊架線の張力が、当該可動ブラケットが取り付けられている電柱の方向へ向いている箇所である。吊架線の張力が電柱から離れる方向へ働いている可動ブラケットに関しては、吊架線と電柱との間にワイヤを張架してシメラーで締め付けることで吊架線の張力を仮受けしてから、手押しで可動ブラケットを横へ移動させる作業を行うことで可動ブラケットの流れ調整をすることができる。
次に、作業者は、グリップロッド23A,23B先端の把持部材32A,32Bに吊架線を係合させてから、締付け用ボルト33を締め付けることによって吊架線を挟持させる(ステップS2)。
続いて、作業者は、吊架線固定手段18の締付けナット84を回してJボルト83を締め付けて、受け金具81によって吊架線を挟持させる(ステップS7)。その後、可動ブラケット調整装置20のクランプ手段(22A〜22E)を緩めて可動ブラケット10から可動ブラケット調整装置20を取り外して作業が終了する(ステップS8)。
また、従来は吊架線の張力をワイヤ等で仮受けしてから行う可動ブラケットの流れ調整を、可動ブラケットを手押しで横方向へ移動させることで実行していたため、調整結果にバラツキが生じ易いという欠点があった。これに対し、本実施形態の可動ブラケット調整装置20を使用すれば、流れ調整ネジ24を回すことで可動ブラケットの流れ調整を行うことができるため、調整結果にバラツキが生じにくく、精度の高い流れ調整が可能になるという利点がある。
そこで、図6(A)に示すように、互いに厚みの異なる複数の半割り可能な円筒状スペーサ40A,40B……を用意しておいて、可動ブラケット調整装置を使用する調整対象の可動ブラケットの主パイプの太さに応じてスペーサを使い分け、図6(B)に示すように半円筒状部材22A,22Bの内側へスペーサ40Aまたは40B……を介在させて主パイプに嵌合させるようにしても良い。
また、前記実施形態では、摺動ブロックの送り手段として送りネジ24を使用しているが、ラチェット機構等を利用した送り手段であっても良い。
11 主パイプ
12 傾斜パイプ
13 振止パイプ
14 支持金具
15 アーム
16 曲線引装置
18 吊架線固定手段
20 可動ブラケット調整装置
21 本体フレーム(本体フレーム部材)
22 摺動ブロック
23A,23B グリップロッド(棒状部材)
24 流れ調整ネジ(摺動ブロック送り手段,送りネジ)
25 締付け用ボルト
31A,31B 偏位調整用ナット(偏位調整手段)
Claims (4)
- 支持構造物に支持され吊架線の延設方向と直交する方向へ延びる可動ブラケットに固定され、当該可動ブラケットの位置を調整する作業の間、当該可動ブラケットの吊架線支持手段に代わって前記吊架線をその張力に抗して一時的に引き留めておくことが可能な可動ブラケット調整装置であって、
前記可動ブラケットを構成し前記吊架線支持手段が設けられているブラケット構成部材に着脱可能に固定するためのクランプ手段を有する本体フレーム部材と、
前記吊架線を挟持可能な吊架線挟持手段を有し、前記本体フレーム部材により互いに平行な状態を保ったまま移動可能に支持された一対の棒状部材と、
前記一対の棒状部材をそれぞれ個別に軸方向へ移動させる一対の偏位調整手段と、
前記本体フレーム部材に保持され前記一対の棒状部材の移動方向と直交する方向へ移動可能な摺動ブロックと、
前記本体フレーム部材により支承され前記摺動ブロックを移動させることが可能な摺動ブロック送り手段と、
を備えることを特徴とする可動ブラケット調整装置。 - 前記本体フレーム部材は、前記一対の棒状部材の移動方向と直交する方向に長い矩形枠状に形成され、
前記摺動ブロックは、前記本体フレーム部材の前壁と後壁との間に摺動可能に保持され、
前記摺動ブロック送り手段は、前記本体フレーム部材の対向する側壁間に回転可能に支承された送りネジであり、
前記送りネジの前記本体フレーム部材の側壁から突出した部位にそれぞれボルトヘッドが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可動ブラケット調整装置。 - 前記一対の棒状部材の外周の一部には雄ネジが形成され、該雄ネジにそれぞれナットが螺合されており、前記ナットを回すと前記一対の棒状部材が、軸方向へ移動されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の可動ブラケット調整装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の可動ブラケット調整装置を用いて、前記吊架線の横張力が前記支持構造物へ向かって作用している可動ブラケットの吊架線方向の位置を調整する可動ブラケットの流れ調整方法であって、
前記吊架線支持手段が設けられている前記ブラケット構成部材の先端側の位置に、前記クランプ手段によって当該可動ブラケット調整装置を固定する工程と、
前記一対の棒状部材に設けられている前記吊架線挟持手段によってそれぞれ吊架線を挟持させる工程と、
可動ブラケットに設けられている前記吊架線支持手段を操作して吊架線の支持状態を解除する工程と、
前記一対の棒状部材を前記吊架線の横張力が作用する方向と反対方向へ移動させて、前記吊架線支持手段から前記吊架線の横張力を解放させる工程と、
前記摺動ブロック送り手段を操作して前記摺動ブロックを所望の方向へ所望の量だけ移動させる工程と、
前記一対の棒状部材を前記ブラケット構成部材の基部側の方向へ移動させて前記吊架線挟持手段による吊架線の挟持状態を解除させる工程と、
前記吊架線支持手段を操作して吊架線を支持する状態に変換させる工程と、
前記クランプ手段のクランプ状態を解除して前記可動ブラケット調整装置を可動ブラケットから取り外す工程と、
を有することを特徴とする可動ブラケットの流れ調整方法。
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