本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。図1は、本発明の第1実施形態に係る振動型ジャイロセンサの概略構成を示すブロック図である。図2は、本発明の振動型ジャイロセンサの振動子の斜視図である。図3は、本発明の振動型ジャイロセンサの振動子の電極構造を示す断面図である。図4は、本発明の振動型ジャイロセンサの駆動信号と電気漏れ信号成分の関係及びモニタ信号と機械漏れ信号成分の関係を示す複素平面図である。図5は、本発明の振動型ジャイロセンサの補正回路の動作を説明するための図である。図6は、本発明の振動型ジャイロセンサの補正調整作業を説明するフローチャートである。図7は、本発明の第2実施形態に係る振動型ジャイロセンサの概略構成を示すブロック図である。図8は、本発明の実施形態に係る振動型ジャイロセンサを搭載した電子機器の一例としてのスマートフォンの構成を示す斜視図である。図9は、本発明の実施形態に係る振動型ジャイロセンサを搭載した移動体の一例としての自動車の車両安定電子制御システムの概略構成を示すブロック図である。
(第1実施形態)
まず、図1に基づいて本発明の振動型ジャイロセンサの第1実施形態の構成を説明する。図1において、本発明の振動型ジャイロセンサは、圧電振動子等によって成る振動子1と、この振動子1を駆動して角速度を検出する制御IC10とによって構成される。
ここで、振動子1は対となる駆動電極3、4と、検出電極5、6を備えているが、詳細な構造は後述する。制御IC10は、振動子1を発振させる発振回路20と、振動子1に印加された角速度に起因して発生する検出信号S10a、S10bを入力して角速度に相当する出力信号を外部に出力する検出回路30と、漏れ信号成分を補正する補正回路40と、情報を記録するメモリを含む制御回路11等によって構成される。
制御IC10の発振回路20は、電流電圧変換回路21(以下、I/V変換回路21と略す)、移相回路22、振幅検出回路23、利得可変増幅回路24等によって構成される。ここで、I/V変換回路21は、振動子1の振動に応じてモニタ電極7から流れ出すモニタ信号S1を受け、電流電圧変換を行ってモニタ電圧信号S2を出力する。I/V変換後の信号のモニタ電圧信号S2は、モニタ信号S1に対して同位相の信号となる。
移相回路22はモニタ電圧信号S2を入力して、振動子1が発振するための条件に合うようにモニタ電圧信号S2の位相を移動させて、移相信号S3を出力する。振幅検出回路23はモニタ電圧信号S2を入力し、モニタ電圧信号S2の振幅に応じたAGC(Auto Gain Control)信号S4を出力する。利得可変増幅回路24はAGC信号S4に応じて利得を可変し、入力する移相信号S3を可変増幅して振動子1の駆動電極3a、4aに駆動信号S5を印加し、駆動電極3b、4bに駆動信号S5を反転回路25により180度位相反転させた駆動反転信号S6を印加する。これにより、発振回路20は振動子1を発振させ、モニタ信号S1に応じて駆動信号S5の大きさを調整し、振動子1の振動振幅を常に一定状態に保持することができる。
次に、制御IC10の検出回路30の構成を説明する。検出回路30は二つの変位検出回路31、32、差動増幅回路33、同期検波回路34、増幅回路35、ローパスフィルタ36(以下、LPF36と略す)等によって構成される。ここで、二つの変位検出回路31、32は、それぞれ振動子1の検出電極5、6に接続され、検出信号S10a、S10bを入力して、電圧値である検出電圧信号S11a、S11bを出力する。差動増幅回路33は検出電圧信号S11a、S11bを入力して差動増幅を行い、差動出力S12を出力する。
また、同期検波回路34は後述する検出信号の補正後信号S25を入力し、発振回路20から出力される検波参照信号S13に基づいて同期検波を行い、検波出力S14を出力する。増幅回路35は、検波出力S14を入力して増幅し、LPF36は増幅された信号の高周波成分をカットして振動子1に印加された角速度に応じた角速度出力S15を出力する。これにより、検出回路30は、振動子1からの検出信号S10a、S10bを入力して振動子1に印加され角速度の大きさを電気信号として出力することができる。また、差動出力S12は、検出モニタ端子12から検出モニタ信号S16として外部に出力される。
次に、補正回路40の構成を説明する。補正回路40は振動子1の漏れ信号成分である電気漏れ信号成分及び機械漏れ信号成分を補正する回路である。
補正回路40の構成を説明する。補正回路40は、振動子1の漏れ信号成分の補正に用いる補正信号S24を生成し、補正信号S24と検出電圧信号の差動出力S12との差動増幅を行い、補正を行うため、振幅調整回路41、反転回路42、切替回路43、移相回路44、差動増幅回路45によって構成される。
ここで、振幅調整回路41はラダー抵抗とスイッチ等(図示せず)から成り、モニタ信号S1を電流電圧変換した、発振回路20からのモニタ電圧信号S2を入力し、制御回路11からの振幅調整信号S26に応じてモニタ電圧信号S2の振幅を調整し、補正信号S21を出力する。
また、反転回路42は補正信号S21を入力し、補正信号S21の位相を180度反転した補正反転信号S22を出力する。これにより、補正信号S21は、モニタ電圧信号S2と逆位相、つまりモニタ信号S1と逆位相の信号である補正反転信号S22となる。切替回路43は、非反転信号である補正信号S21と反転信号である補正反転信号S22とを入力し、制御回路11からの切替制御信号S27によって切替動作Aと切替動作Bが選択され、補正信号S21と補正反転信号S22を切り替え、選択された信号として補正信号S23を移相回路44に入力する。なお、切替動作についての詳細は後述する。
また、移相回路44はラダー抵抗とコンデンサとスイッチ等(図示せず)から成り、切替回路43によって選択された信号の補正信号S21、または、補正反転信号S22を入力し、制御回路11からの位相調整信号S28に応じて入力信号の位相を±90度の範囲で調整し、補正信号S24を出力する。なお、この移相回路44は入力信号の位相の調整範囲が±90度であるが、振動子1の漏れ信号成分の位相が限定される場合には位相の調整範囲を狭めても良い。
ここで、切替回路43の切替動作について説明する。ここでは、移相回路44の位相調整範囲がモニタ電圧信号S2に対して±90度の範囲であるため、この位相調整可能範囲で補正信号S24を生成するため切替回路43により切替動作が必要となる。切替動作Aは、モニタ電圧信号S2に対して同位相の補正信号S21を移相回路44に入力する。一方、切替動作Bは、モニタ電圧信号S2に対して逆位相の補正反転信号S22を移相回路44に入力する。つまり、切替動作Aにおいては、モニタ信号S1に対して同位相の補正信号S21を移相回路44に入力し、切替動作Bにおいては、モニタ信号S1に対して逆位相の補正反転信号S22を移相回路44に入力する。
また、差動増幅回路45は生成した補正信号S24と検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12とを入力し、差動増幅を行い、補正後信号S25を出力する。従、漏れ信号成分を補正するには、差動出力S12と同振幅、かつ、同位相の補正信号S24を入力する必要がある。なお、補正後信号S25を取得する手段として差動増幅回路45に限定されず、加算回路(図示せず)を用いても良い。この場合、生成した補正信号S24と検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12とを入力し、加算回路により加算し、補正信号S24と差動出力S12との加算信号として補正後信号S25を出力する。従、漏れ信号成分を補正するには、差動出力S12と同振幅、かつ、逆位相の補正信号S24を入力する必要がある。
また、制御回路11は、外部との情報を入出力するI/F端子13に接続され、このI/F端子13を介して外部からの制御情報を内部のメモリに記憶し、必要に応じて振幅調整信号S26、切替制御信号S27、位相調整信号S28を出力して、補正回路40の動作を制御する。なお、制御回路11に内蔵されるメモリは、不揮発性メモリが好ましい。
次に、本発明の振動型ジャイロセンサに用いられる振動子の一例を図2及び図3に基づいて説明する。図2aは、本発明の振動型ジャイロセンサの振動子を駆動電極3、4及びモニタ電極7側から見た斜視図である。図2bは、本発明の振動型ジャイロセンサの振動子を検出電極5、6側から見た斜視図である。図3のA−A断面図は図2aにおける切断線A−Aに沿う電極構造を示し、B−B断面図は図2aにおける切断線B−Bに沿う電極構造を示している。図2a、b及び図3において、振動子1はシリコン(Si)から形成され、振動腕2a、2b上の上部電極51と下部電極52は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等から成る圧電薄膜53の上下にそれぞれAu/Ti、Pt/Ti等を設けて成り、二つの振動腕2a、2b及び基部8と支持部9を有する音叉型振動子である。
また、振動腕2a、2bには、それぞれ対となる駆動電極3、4が形成されており、駆動電極3、4は、それぞれの振動腕2a、2bの表面に振動腕2の長手方向に沿って形成される二つの駆動電極3a、3bと、駆動電極4a、4bによって成る。さらに、これらの駆動電極3a、4aは、それぞれ電気的に接続されて外部と接続され、また、駆動電極3b、4bも、それぞれ電気的に接続されて外部と接続される。また、振動腕2の根本近傍の基部8の表面の振動腕2の長手方向に略直交方向に沿ってモニタ電極7が形成されており、モニタ電極7も外部に接続される。
また、振動腕2a、2bには、検出電極5、6が形成されており、検出電極5、6はそれぞれ振動腕2a、2bの裏面に振動腕2の長手方向に沿って形成され、それぞれ外部に接続される。また、駆動電極3、4、検出電極5、6及びモニタ電極7に対向する下部電極は、回路のGNDに接続される。また、振動子1の構造は、図2、図3で示すような音叉型振動子には限定されず、例えば、三脚の音叉型振動子でも良い。
次に、本発明の振動型ジャイロセンサの角速度検出動作を図1及び図3に基づいて説明する。ここで、前述した如く、振動子1は制御IC10の発振回路20によって一定振幅での発振が継続されているが、この時、振動子1が角速度ωで回転したとすると、図3で示す矢印X方向の振動に対して直角なZ方向に角速度ωに比例したコリオリの力Fが働く。このコリオリの力Fは、F=2・m・ω・V:式1で表され、mは振動腕2a、2bの等価質量であり、Vは共振周波数f0(Hz)で振動する速度である。このコリオリの力Fによる応力によって振動子1は、図3で示すZ方向に共振周波数に等しい周波数で振動が励起され、この振動によって振動腕2a、2bに形成された検出電極5、6に圧電歪効果による電荷が発生する。
この発生した電荷により、検出電極5、6に微小な逆位相の検出信号S10a、S10bが発生する。検出回路30の変位検出回路31、32は、この検出信号S10a、S10b、それぞれを電流電圧変換して検出電圧信号S11a、S11bを出力し、差動増幅回路33は、検出電圧信号S11a、S11bの差分を増幅して差動出力S12を出力する。同期検波回路34は、差動出力S12を入力して発振回路20から出力される検波参照信号S13のタイミングに合わせて同期検波を行い、直流に変換された検波出力S14を出力する。増幅回路35とLPF36は、検波出力S14を増幅すると共に交流成分をカットし、角速度に応じた直流電圧である角速度出力S15を出力する。
次に、図4に基づいて、角速度検出の誤差となる振動型ジャイロセンサの電気漏れ信号成分L1a、L1bと機械漏れ信号成分L2a、L2bについて説明する。図4aはX軸を実部、Y軸を虚部とした複素平面によって、モニタ電圧信号S2、駆動信号S5に対する電気漏れ信号成分L1a、L1bと機械漏れ信号成分L2a、L2bを示している。図4bはX軸を実部、Y軸を虚部とした複素平面によって、モニタ電圧信号S2、駆動信号S5に対する電気漏れ信号成分L1a、L1bの差分である電気漏れ差動信号L1と機械漏れ信号成分L2a、L2bの差分である機械漏れ差動信号L2を示している。さらに、電気漏れ差動信号L1と機械漏れ差動信号L2の合成信号を合成漏れ信号L3として図示している。
図4aにおいて、駆動信号S5を+X軸上に示す。振動子1からのモニタ信号S1をI/V変換回路21で電流電圧変換したモニタ電圧信号S2は、駆動信号S5に対して位相が90度遅れるため移相回路22により位相をさらに90度遅らせ、利得可変増幅回路24によって位相が180度反転することにより駆動信号S5に正帰還している。実際は、振動子1の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動による影響があるため、駆動信号S5に対するモニタ電圧信号S2の位相差は数度程度異なる場合がある。一例として、駆動信号S5に対してモニタ電圧信号S2の位相が約85度遅れるとすると、図示するように第4象限のベクトルとして示される。
ここで、電気漏れ信号成分L1a、L1bは、主に駆動信号S5が振動子1の電極間の容量結合によってそれぞれ検出電極5、6に伝達され発生する信号成分であり、容量結合のために駆動信号S5に対して位相が90度進んだ信号成分として検出電極5、6に発生する。ただし、電極間のインピーダンスの相違により電気漏れ信号成分L1a、L1bの振幅及び位相が等しいとは限らない。従、図4aで示すように、電気漏れ信号成分L1a、L1bは、駆動信号S5に対して90度位相進みを基準に位相差を含む信号成分となり、一例として図示するようにそれぞれ第2象限、第1象限のベクトルとして示すことができる。
次に、機械漏れ信号成分L2a、L2bは、振動子1の振動のアンバランスによって生じる信号成分であり、その位相は理想的には振動子1の振動と同位相(位相差ゼロ)、または逆位相(位相差180度)であるが、実際は振動子1の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動による影響があるため、振動子1の振動と同位相、または逆位相とは限らない。また、振動腕2aと2bの振動のアンバランスによって両振動腕の振動は逆位相とは限らない。従、振動子1の振動はモニタ電圧信号S2と同位相にはならず、位相差が発生し、機械漏れ信号成分L2a、L2bは、このモニタ電圧信号S2に対して同位相、または逆位相を基準に位相差を含む信号成分として発生する。
具体的には、機械漏れ信号成分L2a、L2bは振動子1の二つの検出電極5、6に発生するが、一例として一方の検出電極5から発生する機械漏れ信号成分L2aがモニタ電圧信号S2に対して逆位相を基準に位相進みであり、他方の検出電極6から発生する機械漏れ信号成分L2bは、モニタ電圧信号S2に対して同位相を基準に位相進みである。すなわち、機械漏れ信号成分L2a、L2bは、振動子1の駆動方向の振動により駆動方向に対し略直交方向の漏れ振動が発生し、その振動の振幅及び位相は振動腕2a、2bの製造ばらつきや形状等に大きく影響し、これに起因する振動子1の二つの検出電極5、6から発生する機械漏れ信号成分L2a、L2bは、互いに同振幅及びモニタ電圧信号S2に対して同位相、または逆位相になるとは限らない。
従、図4aに示すように、機械漏れ信号成分L2a、L2bは、モニタ電圧信号S2に対して逆位相を基準に位相進みの機械漏れ信号成分L2aの第2象限のベクトルと、モニタ電圧信号S2に対して同位相を基準に位相進みの機械漏れ信号成分L2bの第4象限のベクトルとして示すことができる。なお、それぞれのベクトルの長さは一例であり、限定されない。
図4bにおいて、図4aと同様に駆動信号S5を+X軸上に示す。そして、モニタ電圧信号S2は駆動信号S5に対して位相が約85度遅れた信号であり、図示するように第4象限のベクトルとして示される。図4aで示した第2象限のベクトルの電気漏れ信号成分L1a、第1象限のベクトルの電気漏れ信号成分L1bの差分を電気漏れ差動信号L1と、第2象限のベクトルの機械漏れ信号成分L2aと第4象限のベクトルの機械漏れ信号成分L2bの差分を機械漏れ差動信号L2を図4bに示している。そして、図4bには電気漏れ差動信号L1の第1象限のベクトルと機械漏れ差動信号L2の第4象限のベクトルの合成ベクトルを合成漏れ信号L3の第4象限のベクトルとして示される。
このように、振動型ジャイロセンサは、角速度が印加されない状態で、電気漏れ信号成分と機械漏れ信号成分が発生して角速度の検出精度を低下させるが、本発明は、振動子の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動によりモニタ信号と位相が異なる機械漏れ信号成分と電気漏れ信号成分を同時に補正することで高精度な角速度検出を実現することが大きな特徴である。
次に、図5に基づいて、漏れ信号成分である電気漏れ信号成分L1a、L1bと機械漏れ信号成分L2a、L2bを補正して減少させる補正回路40の動作を説明する。図5a〜図5dは、本発明の振動型ジャイロセンサの補正回路の動作を説明するための図である。図5aは、駆動電圧S5とモニタ電圧信号S2と電気漏れ信号成分L1a、L1bの関係を示し、図5bは、駆動電圧S5とモニタ電圧信号S2と機械漏れ信号成分L2a、L2bの関係を示し、図5c及び図5dは、駆動電圧S5とモニタ電圧信号S2と差動出力S12における電気漏れ差動信号L1と機械漏れ差動信号L2の関係を示す。振動型ジャイロセンサの構成は図1のブロック図を参照する。
ここで前提として図4aに示すように、電気漏れ信号成分L1a、L1bは、駆動信号S5が振動子1の電極間の容量結合によってそれぞれ検出電極5、6に伝達され発生する信号成分であり、容量結合のために駆動信号S5より位相が約90度進んだ信号成分として検出電極5、6からの検出信号S10a、S10bに発生するとし、電極間のインピーダンスの相違により異なる振幅及び位相となっている。さらに、機械漏れ信号成分L2aは振動子1の一方の検出電極5からの検出信号S10aに発生し、モニタ電圧信号S2に対して逆位相を基準に位相進みの信号成分であり、機械漏れ信号成分L2bは振動子1の他方の検出電極6からの検出信号S10bに発生し、モニタ電圧信号S2に対して同位相を基準に位相進みの信号成分であるとする。
次に、図5a〜図5cに基づいて、補正回路40のモニタ電圧信号S2の非反転信号による漏れ信号成分の補正動作を説明する。図5aにおいて、振動子1の電極間の容量結合により、振動腕2aの検出電極5に伝達され発生する電気漏れ信号成分L1aは電気漏れ信号SL1aとして駆動信号S5に対して90度の位相進みを基準に位相進みの信号成分であり、振動腕2bの検出電極6に伝達され発生する電気漏れ信号成分L1bは電気漏れ信号SL1bとして駆動信号S5に対して90度位相進みを基準に位相遅れの信号成分で、二つの信号成分の振幅は異なっている。すなわち、図4aに図示するように、駆動信号S5はモニタ電圧信号S2に対し位相が約85度進んでいるため、モニタ電圧信号S2に対し電気漏れ信号成分L1a、L1bは約175度の位相進みを基準に位相差を含む信号である。
さらに図4b、図5aに図示するように、電気漏れ信号SL1aの電気漏れ信号成分L1aを含む検出電圧信号S11aと電気漏れ信号SL1bの電気漏れ信号成分L1bを含む検出電圧信号S11bを差動増幅回路33に入力し、差動増幅を行い、電気漏れ差動信号L1が差動出力S12として出力される。
図5bにおいて、振動子の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動により、振動腕2aの検出電極5からの検出信号S10aに発生する機械漏れ信号成分L2aは機械漏れ信号SL2aとしてモニタ電圧信号S2に対して逆位相を基準に位相進みの信号成分であり、振動腕2bの検出電極6からの検出信号S10bに発生する機械漏れ信号成分L2bは機械漏れ信号SL2bとしてモニタ電圧信号S2に対して同位相を基準に位相進みの信号成分である。
さらに図4b、図5aに図示するように、機械漏れ信号SL2aの機械漏れ信号成分L2aを含む検出電圧信号S11aと機械漏れ信号SL2bの機械漏れ信号成分L2bを含む検出電圧信号S11bを差動増幅回路33に入力し、差動増幅を行い、機械漏れ差動信号L2が差動出力S12として出力される。
振動腕2aの検出電極5に生じる検出電圧信号S11aに含まれる電気漏れ信号成分L1a及び機械漏れ信号成分L2aと、振動腕2bの検出電極6に生じる検出電圧信号S11bに含まれる電気漏れ信号成分L1b及び機械漏れ信号成分L2bを差動増幅回路33に入力し、差動増幅を行い、その差動出力を成分別に電気漏れ差動信号L1と機械漏れ差動信号L2を図5cに示している。
電気漏れ差動信号L1は、電気漏れ信号成分L1aとL1bが同位相に近いため差動増幅回路33の入力信号に比べ振幅は小さくなる。また、振動子1の電極間の容量結合による影響は電極配線によるものであるため、振動子1の電極配線を対称に行うことにより電極間のインピーダンスの差が小さくなるため、二つの検出電極5、6に伝達される電気漏れ信号成分の電気漏れ差動信号L1は、実際は非常に小さく、第1の実施形態では極端に電気漏れ信号成分が大きい場合を想定している。
機械漏れ差動信号L2は、機械漏れ信号成分L2aとL2bが逆位相に近いため差動増幅回路33の入力信号に比べ振幅は大きくなる。また、振動子の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動により機械漏れ信号成分L2aとL2bは、同位相になる場合があり、この時二つの検出電極5、6から発生する機械漏れ信号成分の機械漏れ差動信号L2は逆位相の場合より小さく、第1の実施形態では極端に機械漏れ信号成分が大きい場合を想定している。
ここまで電気漏れ信号成分と機械漏れ信号成分を分けて考えてきたが、これらを漏れ信号成分として合成して考える。図4b、図5cには、電気漏れ差動信号L1と機械漏れ差動信号L2を合成した合成漏れ信号L3を示している。機械漏れ差動信号L2が電気漏れ差動信号L1に比べ振幅が大きいため、合成漏れ信号L3は機械漏れ差動信号L2の影響を受けやすい。次に図5cに基づいて、モニタ電圧信号S2の非反転信号による漏れ信号成分の補正動作を説明する。
まず、補正回路40により補正信号S24を生成する動作について説明する。振動子1からのモニタ信号S1は、I/V変換回路21によりモニタ電圧信号S2となる。次に、モニタ電圧信号S2を振幅調整回路41により検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12である合成漏れ信号L3と同振幅となるよう振幅調整を行う。ここで、移相回路44に補正信号S23を入力する前に、前述した如くこの移相回路44は入力信号の位相の調整範囲が±90度であり、合成漏れ信号L3の位相がモニタ電圧信号S2位相の調整範囲内に入っているため補正信号S21を移相回路44に入力する。そのため、切替回路43で切替動作Aを選択し補正信号S21を移相回路44に入力する。次に、補正信号S21を移相回路44により合成漏れ信号L3に対して同位相になるよう位相調整を行う。
次に、補正回路40により生成した補正信号S24に基づいて漏れ信号成分を補正する動作について説明する。補正回路40で生成した合成漏れ信号L3と同振幅かつ同位相の補正信号S24と検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12である合成漏れ信号L3とを入力し、差動増幅回路45により差動を取ることにより補正し、補正後信号S25を出力する。ここで、補正回路40を差動増幅回路45の代替として加算回路で構成する場合は、補正回路40で生成した合成漏れ信号L3と同振幅かつ逆位相の補正信号S24と検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12である合成漏れ信号L3とを入力し、加算回路により加算することで補正し、加算信号として補正後信号S25を出力する。従、補正信号S24は合成漏れ信号L3に対して逆位相の信号である必要があるため、切替回路43で切替動作Bを選択することになる。
次に、図5a、図5b、図5dに基づいて、補正回路40のモニタ電圧信号S2の反転信号による漏れ信号成分の補正動作を説明する。ここで前提として、便宜上検出電極5からの検出信号S10aと検出電極6からの検出信号S10bの信号成分のみを入れ替える。すなわち図5aにおいて、振動子1の電極間の容量結合により振動腕2aの検出電極5に伝達され発生する電気漏れ信号成分L1bは、電気漏れ信号SL1bとして駆動信号S5に対して90度位相進みを基準に位相遅れの信号成分であり、振動腕2bの検出電極6に伝達され発生する電気漏れ信号成分L1aは、電気漏れ信号SL1aとして駆動信号S5に対して90度位相進みを基準に位相進みの信号成分で、二つの信号成分の振幅は異なっている。
さらに、図示するように電気漏れ信号SL1aの電気漏れ信号成分L1aを含む検出電圧信号S11aと電気漏れ信号SL1bの電気漏れ信号成分L1bを含む検出電圧信号S11bを差動増幅回路33に入力し、差動増幅を行い、電気漏れ差動信号(図示しない)が差動出力S12として出力される。
図5bにおいて、振動子の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動により、振動腕2aの検出電極5からの検出信号S10aに発生する機械漏れ信号成分L2bは機械漏れ信号SL2bとしてモニタ電圧信号S2に対して逆位相を基準に位相進みの信号成分であり、振動腕2bの検出電極6からの検出信号S10bに発生する機械漏れ信号成分L2aは機械漏れ信号SL2aとしてモニタ電圧信号S2に対して同位相を基準に位相進みの信号成分である。
さらに、図示するように機械漏れ信号SL2aの機械漏れ信号成分L2aを含む検出電圧信号S11aと機械漏れ信号SL2bの機械漏れ信号成分L2bを含む検出電圧信号S11bを差動増幅回路33に入力し、差動増幅を行い、機械漏れ差動信号(図示しない)が差動出力S12として出力される。
振動腕2aの検出電極5に生じる検出電圧信号S11aに含まれる電気漏れ信号成分L1b及び機械漏れ信号成分L2bと、振動腕2bの検出電極6に生じる検出電圧信号S11bに含まれる電気漏れ信号成分L1a及び機械漏れ信号成分L2aとを差動増幅回路33に入力し、差動増幅を行い、その差動出力を成分別に電気漏れ差動信号L1と機械漏れ差動信号L2を図5dに示している。電気漏れ差動信号L1は、電気漏れ信号成分L1aとL1bが同位相に近いため差動増幅回路33の入力信号に比べ振幅は小さくなる。機械漏れ差動信号L2は、機械漏れ信号成分L2aとL2bが逆位相に近いため差動増幅回路33の入力信号に比べ振幅は大きくなる。
ここまで電気漏れ信号成分と機械漏れ信号成分を分けて考えてきたが、これらを漏れ信号成分として合成して考える。図5dには、電気漏れ差動信号L1と機械漏れ差動信号L2を合成した合成漏れ信号L3を示している。次に図5dに基づいて、モニタ電圧信号S2の反転信号による漏れ信号成分の補正動作を説明する。
まず、補正回路40により補正信号S24を生成する動作について説明する。ここで、移相回路44に補正信号S23を入力する前に、前述した如くこの移相回路44は入力信号の位相の調整範囲が±90度であるため、合成漏れ信号L3の位相がモニタ電圧信号S2位相の調整範囲内に入っていないため補正反転信号S22を移相回路44に入力する。そのため、切替回路43で切替動作Bを選択し補正反転信号S22を移相回路44に入力する。次に、補正反転信号S22を移相回路44により合成漏れ信号L3に対して同位相になるよう位相調整を行う。
次に、補正回路40により生成した補正信号S24に基づいて漏れ信号成分を補正する動作について説明する。補正回路40で生成した合成漏れ信号L3と同振幅かつ同位相の補正信号S24と検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12である合成漏れ信号L3とを入力し、差動増幅回路45により差動を取ることにより補正し、補正後信号S25を出力する。ここで、補正回路40を差動増幅回路45の代替として加算回路で構成する場合は、補正回路40で生成した合成漏れ信号L3と同振幅かつ逆位相の補正信号S24と検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12である合成漏れ信号L3とを入力し、加算回路により加算することで補正し、加算信号として補正後信号S25を出力する。従、補正信号S24は合成漏れ信号L3に対して逆位相の信号である必要があるため、切替回路43で切替動作Aを選択することになる。
すなわち、補正信号S24は、検出電極5、6に発生する漏れ信号成分である電気漏れ信号成分L1a、L1b及び機械漏れ信号成分L2a、L2bを同時に正確に打ち消すことができる。また、補正回路40は、振動子の振動により生じる漏れ信号成分を補正するために、振動子の振動をモニタしているモニタ信号S1から補正信号S24を生成しているので、振動子1の振動が経時変化や温度特性によって変化しても補正信号S24はその変化に追従する。従、漏れ信号成分との位相関係がずれることがない。これにより、経時変化や温度特性等の影響を受けることなく、漏れ信号成分を高精度に補正することができる。
次に、本発明の振動型ジャイロセンサの補正調整作業について図6のフローチャートに基づいて説明する。振動型ジャイロセンサの構成は図1を参照する。また、説明の前提として、振動型ジャイロセンサの外部には、補正調整を制御する外部制御装置(図示せず)が接続されて補正調整作業が実施されるものとする。
図6において、まず、外部制御装置によって本発明の振動型ジャイロセンサに、角速度が発生していない環境下で電源が供給され、振動型ジャイロセンサは動作を開始する(ステップST1)。これにより、振動型ジャイロセンサの振動子1は発振を開始する。ここで、振動型ジャイロセンサに角速度が印加されていないので、検出信号S10a、S10bには角速度による成分は発生しないが、振動子1の検出電極5、6からは電気漏れ信号成分L1a、L1bと機械漏れ信号成分L2a、L2bが発生する。
次に外部制御装置は、補正回路40を制御して補正信号S24の出力レベルをゼロとした後、振動型ジャイロセンサの検出モニタ端子12から、検出モニタ信号S16として差動出力S12を入力し、漏れ信号成分を検出して、その振幅及びモニタ電圧信号S2に対する位相差を測定する(ステップST2)。
図6において、外部制御装置は、ステップST2で漏れ信号成分の差分となる合成漏れ信号L3を検出したならば、その差分の漏れ信号成分の位相が、モニタ電圧信号S2に対して±90度の位相差の範囲内であるか、範囲外であるかを判定し、I/F端子13を介して制御回路11に制御信号を送信し、制御回路11からの切替制御信号S27によって切替回路43を制御し、切替動作Aまたは切替動作Bを選択する(ステップST3)。なお、補正回路40において加算回路を用いる場合は、合成漏れ信号L3の逆位相がモニタ電圧信号S2に対して±90度の位相差の範囲内であるか、範囲外であるかを判定することになる。
これにより、振動子1の検出電極5、6からの検出信号S10a、S10bに発生する漏れ信号成分の位相関係が、モニタ電圧信号S2に対して反転したとしても、漏れ信号成分を打ち消すように補正信号S21と補正反転信号S22を切り替えて補正処理を行うことができる。この結果、振動子の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動により漏れ信号成分の位相が定まらない場合等、どのような振動子に対しても漏れ信号成分が最小となるように補正することができる。
次に外部制御装置は、測定した漏れ信号成分のモニタ電圧信号S2に対する位相差に基づいて補正回路40の移相回路44を制御するための制御データを生成し、振動型ジャイロセンサのI/F端子13から、制御回路11に制御データを転送する(ステップST4)。これにより、振動型ジャイロセンサの制御回路11は、送信されてきた制御データに基づいて位相調整信号S28を出力し、移相回路44は位相調整信号S28によって補正信号S24の位相を調整する。
次に外部制御装置は、測定した漏れ信号成分の振幅の大きさに基づいて補正回路40の移相回路44を制御するための制御データを生成し、振動型ジャイロセンサのI/F端子13から、制御回路11に制御データを転送する(ステップST5)。これにより、振動型ジャイロセンサの制御回路11は、送信されてきた制御データに基づいて振幅調整信号S26を出力し、振幅調整回路41は振幅調整信号S26によって補正信号S21の振幅を調整する。
次に外部制御装置は、再び検出モニタ端子12から漏れ信号成分を検出して、その振幅を測定し、漏れ成分が規定値以下であるかを判定する(ステップST6)。ここで、肯定判定(漏れ成分が規定値以下)であれば次のステップへ進み、否定判定(規定値以上)であればステップST4に戻って制御データを更新し、漏れ信号成分が規定値以下になるまで、ステップST4〜ST6を繰り返し実行する。
次に外部制御装置は、ステップST6で肯定判定がなされたならば、振動型ジャイロセンサのI/F端子13に書き込み制御信号を送信し、補正回路40の制御データを制御回路11に内蔵する不揮発性メモリに記憶させ、補正調整作業を終了する(ステップST7)。以上の調整作業によって、本発明の振動型ジャイロセンサは、電気漏れ信号成分と機械漏れ信号成分を合成した漏れ信号成分として扱い、漏れ信号成分が最小となるように調整され、製品として出荷される。なお、上述した振動型ジャイロセンサの補正調整作業は、外部制御装置を用いずに、測定装置、データ入力装置等を用いて人手作業により実施しても良い。
(第2実施形態)
次に、図7に基づいて本発明の振動型ジャイロセンサの第2実施形態の構成を説明する。なお、第2実施形態の構成は、検出信号S10a、S10bのそれぞれに発生する漏れ信号成分を補正するため第1実施形態に対して補正回路40の一部が異なるだけであるので、第2実施形態の説明は異なる箇所の構成と動作だけに限定する。
図7において補正回路40は、検出電極5、6の二つの検出信号S10a、S10bに対して並行して補正を行うために、二つの補正信号S24a、S24bを生成する。そのため、補正回路40は、振幅調整回路41a、41b、反転回路42a、42b、切替回路43a、43b、移相回路44a、44b、差動増幅回路45a、45bをそれぞれ二回路ずつで構成される。なお、補正回路40の上述の構成が並列に制御IC10上に組み込まれていること以外は第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、モニタ電圧信号S2を検出信号S10aの補正用と検出信号S10bの補正用に二つに分配し、モニタ電圧信号S2をそれぞれ振幅調整回路41a、41bにより検出電圧信号S11a、S11bの漏れ信号成分とそれぞれ同振幅となるよう振幅調整を行う。以降の補正動作について、第1実施形態との相違点は検出電圧信号の差動出力ではなく、各検出電圧信号S11a、S11bの漏れ信号成分を打ち消すように補正信号を生成している点であり、それ以外は第1実施形態と同様である。
従、補正回路40で生成した補正信号S24a、S24bはそれぞれ検出電圧信号S11a、S11bの漏れ信号成分と同振幅かつ同位相の信号であり、生成したそれぞれの補正信号S24a、S24bと検出電圧信号S11a、S11bを補正処理回路40Bに入力し、差動増幅回路45a、45bでそれぞれ差動増幅し、補正後信号S25a、S25bを出力する。得られた補正後信号S25a、S25bを差動増幅器33に入力し、差動出力S12を出力し、第1実施形態と同様に角速度出力S15を得る。なお、第1実施形態と同様に補正処理回路40Bは差動増幅回路45a、45bに限定されず、加算回路(図示せず)を用いても良い。この場合、補正回路40で生成した補正信号S24a、S24bはそれぞれ検出電圧信号S11a、S11bの漏れ信号成分と同振幅かつ逆位相の信号であり、生成したそれぞれの補正信号S24a、S24bと検出電圧信号S11a、S11bを補正処理回路40Bに入力し、加算回路でそれぞれ加算し、加算信号として補正後信号S25a、S25bを出力する。
次に、本発明の第2実施形態の振動型ジャイロセンサの補正調整作業について図6のフローチャートに基づいて説明する。なお、第2実施形態の補正調整作業は、第1実施形態のフローチャートに対して異なる箇所のステップについてのみ説明する。
第1実施形態との相違点は、検出電圧信号S11a、S11bの差動出力S12ではなく、各検出電圧信号S11a、S11bの二つの信号を補正するため、各ステップにおいて二回ずつ交互に、または検出信号S10a、S10bの一信号ずつ順番に補正調整作業を行う点である。図6において、前述した如く各検出電圧信号S11a、S11bの漏れ信号成分を打ち消すように補正信号S24a、S24bを生成しているためステップST2、ステップST3及び、ステップST6が第1実施形態と異なるため説明する。
ステップST2において、補正回路40を制御して補正信号S24a、S24bの出力レベルをゼロとした後、振動型ジャイロセンサの二つの検出モニタ端子12a、12bから、検出モニタ信号S16a、S16bとして検出電圧信号S11a、S11bをそれぞれ入力し、漏れ信号成分を検出して、その振幅及びモニタ電圧信号S2に対する位相差を測定する。
ステップST3において、外部制御装置は、ステップST2で漏れ信号成分を検出したならば、その漏れ信号成分の位相が、モニタ電圧信号S2に対して±90度の位相差の範囲内であるか、範囲外であるかを判定し、I/F端子13を介して制御回路11に制御信号を送信し、制御回路11からの切替制御信号S27によって切替回路43a、43bを制御し、切替動作Aまたは切替動作Bを選択する。なお、補正回路40において加算回路を用いる場合は、漏れ信号成分の逆位相がモニタ電圧信号S2に対して±90度の位相差の範囲内であるか、範囲外であるかを判定することになる。
ステップST6において、外部制御装置は、再び二つの検出モニタ端子12a、12bから漏れ信号成分を検出して、その振幅を測定し、漏れ成分が規定値以下であるかを判定する。
以上のように、本発明の振動型ジャイロセンサは、駆動信号S5により生ずる電気漏れ信号成分及び振動子の振動により生ずる機械漏れ信号成分を合成し一つの漏れ信号成分として扱い、漏れ信号成分に対しては、モニタ信号S1より生成した補正信号で補正を行うことを特徴としている。これにより、それぞれの漏れ信号成分を一つの補正回路で同時に補正するので、漏れ信号成分を最小となるように補正することができる。また、補正回路に移相回路を備えるため、振動子の製造ばらつきや形状等に起因する様々な振動のモードを含む不要振動によりモニタ信号S1と同位相でない機械漏れ信号成分が検出電極に発生しても補正することができる。さらに、振動子の振動をモニタしているモニタ信号S1から補正信号を生成しているので、振動子1の振動が経時変化や温度特性によって変化しても補正信号はその変化に追従して補正信号を生成し補正することができる。
この結果、素子のばらつき、経時変化、温度変化等の影響を受けることなく、高精度に安定して角速度を検出でき、回路規模を小型化可能な振動型ジャイロセンサを提供することができる。なお、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更して良い。
(第3実施形態)
次に、上記のような構成の振動型ジャイロセンサを搭載した電子機器について説明する。なお、図8は、上記実施形態で説明した振動型ジャイロセンサを搭載した電子機器の一例としてのGPS機能、カメラの手振れ補正機能、及びモーション入力機能を備えるスマートフォンを示す図である。
図8に示すスマートフォン100は、圧電デバイスをGPS機能、カメラの手振れ補正機能、及びモーション入力機能を利用するためのスマートフォン本体の姿勢制御及びモーションセンシング用素子として備える構成とされている。また、図8に示すスマートフォン100の外観構成としては、液晶タッチパネル101、複数の操作ボタン102、受話口103、送話口104、カメラ105、及びスピーカー106を挙げることができる。
なお、本発明に係る電子機器としては、スマートフォンに限定されず、姿勢制御機能を要するカーナビゲーションシステムや、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、ロボット、モーションセンシング機能を要する電子ゲーム機器、モーションコントローラ、ヘッドマウントディスプレイ、PDR(歩行者位置方位計測)、ゲーム用コントローラ等や、手振れ補正機能を要するデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等も含むものとする。
(第4実施形態)
次に、上記のような構成の振動型ジャイロセンサを搭載した移動体について説明する。なお、図9は、上記実施形態で説明した振動型ジャイロセンサを搭載した移動体の一例として、自動車の車両安定電子制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図9に示す自動車の車両安定電子制御システム200は、車両の横滑りを抑制し車両安定走行制御を行うシステムであって、ヨーレートセンサ201、加速度センサ202、操舵角センサ203、車輪速度センサ204、ブレーキ駆動部205、油圧センサ206、エンジン制御部207、スロットルセンサ208、制御コンピュータ209によって構成される。
ヨーレートセンサ201は、上記実施形態で説明した振動型ジャイロセンサであり、車両安定電子制御システム200が搭載された車両(以下、単に「車両」という)のヨーレート(車両旋回方向の回転角の変化)を検知する。加速度センサ202は、車両の加速度(進行方向の速度変化)を検知する。操舵角センサ203は、車両のハンドルに設けられた回転センサであり、車両の操舵角を検知する。車輪速度センサ204は、車両の各車輪の回転速度を検知する。なお、図9には車輪速度センサ204を一つのみ図示しているが、実際には車輪速度センサ204は車両の各車輪(4輪)に一つずつ設置されている。油圧センサ206は、車両の各車輪のブレーキ圧を検知する。スロットルセンサ208は、車両のエンジンのスロットル開度をエンジン出力として検知する。
ブレーキ駆動部205は、車両の各車輪に設けられたブレーキシステムを駆動し、車輪の回転を遅延または、停止させる。ブレーキ駆動部205は、運転者によるブレーキペダル(図示しない)の操作の他、制御コンピュータ209による制御によって動作する。エンジン制御部207は、例えばECU(Engine Control Unit)であり、車両のエンジン点火機構、燃料系統、吸排気系統等を総合的に制御して、エンジンの出力を制御する。なお、本実施形態では、車両はエンジン出力によって駆動されるものとするが、これに限らず例えばモータによって駆動される電気自動車等であっても良い。
制御コンピュータ209は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースを取るインターフェース部等を含んで構成される。
次に、図9に基づいて、自動車の車両安定電子制御システム200の動作を説明する。車両に搭載されている各種センサ(ヨーレートセンサ201、加速度センサ202、操舵角センサ203、車輪速度センサ204)が車両の状態を常にモニタリングを行い、制御コンピュータ209に測定結果を提供する。さらに、制御コンピュータ209は車両が運転者の意図する方向に走行しているかの常時判定を行う。その判定の結果、通常であれば再び車両の状態をモニタリングし判定を行い、異常であれば車両安定走行制御を行う。車両安定走行制御では、制御コンピュータ209がブレーキ駆動部205に対し車両の個々の車輪に適切にブレーキをかけるように命令して、エンジン制御部207に対しエンジン出力を制御するように命令し、制御コンピュータ209の演算した目標制御量に基づき車両の向きを修正して、横滑りを防止する。なお、油圧センサ206はブレーキ圧、スロットルセンサ208はエンジン出力をそれぞれ常時モニタリングを行い、制御コンピュータ209に実際の制御量のフィードバックを行い、目標制御量は実際の制御量及び車両の状態のモニタリングから決定する。
なお、本発明に係る移動体としては、車両安定電子制御システムを搭載した自動車に限定されず、上記実施形態で説明した振動型ジャイロセンサは、他にもカーナビゲーションシステム、エアバッグ、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、等の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)を搭載した自動車等に広く適用できる。