以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、および車両制御プログラムの実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における車両制御装置100を中心とした構成の一例を示す図である。車両制御装置100が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)には、車両制御装置100の他に、例えば、検知デバイス10と、通信装置20と、車両センサ30と、操作デバイス40と、操作検出センサ42と、追従定速スイッチ50と、定速設定スイッチ55と、一時前進スイッチ60と、走行駆動力出力装置90と、ブレーキ装置92とが搭載される。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、特許請求の範囲における車両制御装置は、単に「車両制御装置100」のみを指しているのではなく、車両制御装置100以外の構成(例えば検知デバイス10や追従定速スイッチ50、定速設定スイッチ55、一時前進スイッチ60など)を含んでもよい。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
検知デバイス10は、複数のレーダやカメラなどである。例えば、複数のレーダは、自車両Mのバンパーやフロントグリル周辺に分散して設けられる。各レーダは、例えば、FM−CW(Frequency−Modulated Continuous Wave)方式によって自車両Mの前方に電波を照射し、その電波に対する反射波を受信することで、自車両Mの前方を走行する車両(以下、先行車両と称する)の位置を検出する。そして、各レーダは、検出結果を示す信号を車両制御装置100に出力する。また、カメラは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラは、例えば、車室内のフロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に設けられる。カメラは、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの前方を撮像し、撮像した画像を車両制御装置100に出力する。カメラは、複数のカメラを含むステレオカメラであってもよい。
また、検知デバイス10は、さらに複数のファインダを含んでいてもよい。例えば、複数のファインダのそれぞれは、フロントグリル、車体の側面、ドアミラー、前照灯内部、側方灯付近、トランクリッド、車体の側面、尾灯内部等に取り付けられる。各ファインダは、例えば、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。各ファインダは、測定した距離を示す信号を車両制御装置100に出力する。
第1の実施形態における検知デバイス10は、少なくとも複数のレーダを含んでいればよく、カメラやファインダは省略されてもよい。
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用した無線通信を行う。
車両センサ30は、車速を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。各種センサは、検出結果を示す検出信号を車両制御装置100に出力する。
操作デバイス40は、例えば、アクセルペダル40aを含む。アクセルペダル40aは、運転者による加速指示(或いは戻し操作による減速指示)を受け付けるための操作子である。また、操作デバイス40は、ブレーキペダル、ステアリングホイールなどを含んでもよい。ブレーキペダルは、運転者による減速指示を受け付けるための操作子である。ステアリングホイールは、運転者による旋回指示を受け付けるための操作子である。
操作検出センサ42は、操作デバイス40に対する操作量を検出するセンサである。例えば、操作検出センサ42は、アクセルペダル40aの踏み込み力(或いは踏み込み量)を検出し、検出結果を示すアクセル開度信号を車両制御装置100に出力するアクセル開度センサ42aを含む。また、操作検出センサ42は、ブレーキペダルの踏み込み力(或いは踏み込み量)を検出し、検出結果を示すブレーキ信号を車両制御装置100に出力するブレーキ踏量センサ、ステアリングホイールの操作角やステアリングホイールに加えられたトルクを検出し、検出結果を示すステアリング信号を車両制御装置100に出力するステアリングセンサ等を含んでもよい。なお、操作検出センサ42は、検出結果を示す信号を車両制御装置100に出力するのに代えて、アクセル開度信号を走行駆動力出力装置90に直接出力したり、ブレーキ信号をブレーキ装置92に直接出力したりしてもよい。
追従定速スイッチ50は、追従走行または定速走行を開始させる指示操作を受け付けるスイッチである。追従走行とは、例えば、先行車両との車間距離を一定に保つような速度で自車両Mを走行させる走行態様である。例えば、追従走行時の速度は、先行車両の速度と同程度であってもよいし、先行車両の速度が上限速度(例えば車道の法定速度)を超える場合には、上限速度であってもよい。
また、定速走行とは、自車両Mの前方における所定距離以内に先行車両が存在しない場合、予め定められた一定の目標速度(または目標加速度や目標躍度等)で自車両Mを走行させる走行態様である。追従定速スイッチ50は、追従走行または定速走行を開始させる指示操作を受け付けると、当該指示操作を示す指示信号を車両制御装置100に出力する。操作デバイス40に含まれるアクセルペダル40a、追従定速スイッチ50、および一時前進スイッチ60は、「受付部」の一例である。また、一時前進スイッチ60は、「アクセルペダル40aと異なる操作子」の一例である。
定速設定スイッチ55は、定速走行時の目標速度(または目標加速度や目標躍度等)を設定する指示操作を受け付けるスイッチである。例えば、定速走行時の目標速度は、定速設定スイッチ55の操作に応じて設定される。
一時前進スイッチ60は、例えば、自車両Mの走行態様が追従走行である場合に、運転者から指示操作を受け付けるスイッチである。一時前進スイッチ60は、指示操作を受け付けると、追従走行時に目標とする先行車両との車間距離(以下、目標車間距離と称する)を変更する。例えば、一時前進スイッチ60の操作を受けることで、目標車間距離は、予め定められた上限および下限の範囲内で、5[m]、10[m]、20[m]、40[m]、80[m]といったように段階的に設定されてよい。
走行駆動力出力装置90は、車両が走行するための走行駆動力Df(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置90は、例えば、自車両Mが内燃機関を動力源とした自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)を備える。また、走行駆動力出力装置90は、自車両Mが電動機を動力源とした電気自動車である場合、走行用モータおよび走行用モータを制御するモータECUを備える。また、走行駆動力出力装置90は、自車両Mがハイブリッド自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUとを備える。走行駆動力出力装置90がエンジンのみを含む場合、エンジンECUは、後述する追従走行制御部130または定速走行制御部132から入力される情報に従って、エンジンのスロットル開度やシフト段等を調整する。走行駆動力出力装置90が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、追従走行制御部130または定速走行制御部132から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整する。走行駆動力出力装置90がエンジンおよび走行用モータを含む場合、エンジンECUおよびモータECUは、追従走行制御部130または定速走行制御部132から入力される情報に従って、互いに協調して走行駆動力Dfを制御する。走行駆動力出力装置90は、「走行駆動力出力部」の一例である。また、走行駆動力出力装置90は、「制動力出力部」の一例であってもよい。例えば、エンジンはエンジンブレーキとしての機能を有していてもよいし、走行用モータは回生ブレーキとしての機能を有していてもよい。
ブレーキ装置92は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える電動サーボブレーキ装置である。ブレーキECUは、追従走行制御部130または定速走行制御部132から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じた制動力Bt(ブレーキトルク)が各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置92は、「制動力出力部」の他の例である。
ブレーキ装置92は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置92は、上記説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。電子制御式油圧ブレーキ装置は、追従走行制御部130または定速走行制御部132から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する。また、ブレーキ装置92は、走行駆動力出力装置90に含まれ得る走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
[車両制御装置]
車両制御装置100は、例えば、一以上のプロセッサまたは同等の機能を有するハードウェアにより実現される。車両制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、記憶装置、および通信インターフェースが内部バスによって接続されたECU(Electronic Control Unit)、或いはMPU(Micro-Processing Unit)などが組み合わされた構成であってよい。車両制御装置100は、例えば、周辺認識部102と、追従走行パラメータ導出部110と、追従走行制御部130と、定速走行制御部132と、制御切替部134と、記憶部150とを備える。追従走行パラメータ導出部110、追従走行制御部130、定速走行制御部132、および制御切替部134は、「制御部」の一例である。
周辺認識部102、追従走行パラメータ導出部110、追従走行制御部130、定速走行制御部132、および制御切替部134のうち一部または全部は、プロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。また、車両制御装置100は、複数のコンピュータ装置によって分散化されたものであってもよい。
記憶部150は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部150に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、そのプログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部150にインストールされてもよい。記憶部150には、例えば、後述する操作受付可否判定情報152などの情報が格納される。
周辺認識部102は、検知デバイス10により出力された信号に基づいて、周辺車両の位置、速度、加速度等の状態を認識する。周辺車両とは、例えば、自車両Mの周辺を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両である。周辺車両には、少なくとも先行車両が含まれる。先行車両は、自車両Mが走行する自車線において、自車両Mの直前を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両であってもよいし、自車線において、自車両Mの前方で停車している車両であってもよい。検知デバイス10および周辺認識部102は、「検出部」の一例である。
追従走行パラメータ導出部110は、例えば、駆動力導出部112と、制動力導出部114と、車間距離導出部116とを備える。追従走行パラメータ導出部110における各構成要素は、例えば、追従定速スイッチ50から追従走行を開始させる指示操作を示す指示信号が入力されると処理を開始してもよいし、バッググラウンドにおいて所定周期で繰り返し処理を行って、その処理結果を記憶部150に保持しておき、追従定速スイッチ50から指示信号が入力された時点で記憶部150に格納された最新の処理結果を読み出してもよい。
駆動力導出部112は、周辺認識部102によって先行車両が認識された場合、先行車両の速度に基づいて、走行駆動力出力装置90に出力させる走行駆動力Dfを導出する。
制動力導出部114は、周辺認識部102によって先行車両が認識された場合、先行車両の速度に基づいて、ブレーキ装置92に出力させる制動力Btを導出する。また、制動力導出部114は、さらに車両センサ30に含まれる各種センサの検出信号に基づいて、導出した制動力Btを補正してよい。例えば、車速センサにより検出された速度に対して、加速度センサにより検出された加速度に基づき導出される速度が小さい場合、制動力導出部114は、車道が登り坂であると判断して、導出した制動力Btを大きい値に補正してもよい。
車間距離導出部116は、周辺認識部102により認識された周辺車両のうち先行車両と自車両Mとの車間距離Dを導出する。例えば、車間距離導出部116は、検知デバイス10に含まれるレーダの検出信号を参照して車間距離Dを導出してもよいし、検知デバイス10に含まれるカメラの撮像画像を解析して、車間距離Dを導出してもよい。また、車間距離導出部116は、レーダおよびカメラによる双方の検出結果に基づいて、車間距離Dを導出してもよい。
追従走行制御部130は、駆動力導出部112により導出された走行駆動力Dfを出力させるように走行駆動力出力装置90を制御する。また、追従走行制御部130は、制動力導出部114により導出された制動力Btを出力させるようにブレーキ装置92を制御する。
定速走行制御部132は、追従定速スイッチ50から定速走行を開始させる指示操作を示す指示信号が入力されると、周辺認識部102によって先行車両が認識されない場合(または自車両Mから十分遠い場合)、定速設定スイッチ55により設定された定速走行時の目標速度を出力させるように走行駆動力出力装置90およびブレーキ装置92を制御する。
制御切替部134は、記憶部150に格納された操作受付可否判定情報152を参照して、車間距離導出部116により導出された車間距離Dに応じて、追従走行制御部130による走行駆動力出力装置90の制御、またはアクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御のいずれかに切り替える。例えば、制御切替部134は、操作デバイス40に対する操作量が閾値を超えた状態が基準時間以上継続した場合に、運転者に運転の意思があるものと判断して、アクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御に切り替える。この場合、操作検出センサ42がアクセル開度信号を走行駆動力出力装置90に直接出力することによって、走行駆動力出力装置90は、アクセルペダル40aの操作量に応じて駆動力を出力する。
図2は、操作受付可否判定情報152の一例を示す図である。操作受付可否判定情報152は、例えば、車間距離Dに対して、追従走行制御部130による走行駆動力出力装置90の制御、またはアクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御の可否、アクセルペダル40aに対する操作の受付可否、一時前進スイッチ60に対する操作の受付可否が予め対応付けられた情報である。例えば、車間距離導出部116により導出された車間距離Dが第1閾値D1以上である場合、制御切替部134は、アクセルペダル40aに対する操作および一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを許可して、追従走行制御部130による走行駆動力出力装置90の制御、またはアクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御を可能な状態にする。第1閾値D1は、先行車両からある程度余裕をもった距離(例えば4[m]程度)に設定される。
また、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合、制御切替部134は、アクセルペダル40aに対する操作の受け付けを許可すると共に、一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止する。第2閾値D2は、例えば、ブレーキ装置92における油圧系の応答遅れを考慮して、最低限確保しておくべき距離(例えば2[m]程度)に設定される。これによって、アクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御が可能な状態となる。また、車間距離Dが第2閾値D2未満である場合、制御切替部134は、アクセルペダル40aに対する操作および一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止して、アクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御を不可にする。これによって、車間距離Dが第2閾値D2を下回った時点で自車両Mの制御権が運転者から車両制御装置100に移る。
図3は、ある場面での車両制御装置100の制御の一例を示す図である。図中の場面(1)から(4)のいずれにおいても登り坂を走行している際に前方に先行車両が存在している状況を表している。なお、本実施形態の制御は、登り坂限定で実施されるものではないが、登り坂では先行車両との間隔(車間距離)が空きがちなので、特に本実施形態の制御が効果的である。
例えば、登り坂を走行している場合、平坦な車道を走行している場合に比べて検知デバイス10や車両センサ30による検出値にばらつき(例えば検知デバイス10の検出値により導出される速度と車両センサ30の検出値により導出される速度との差)が生じ、自車両Mが第1閾値D1よりも大きい車間距離Dで停止する場合がある。この場合、図中の場面(1)に示すように、運転者が一時前進スイッチ60を操作して、目標車間距離を現在の設定値からより小さい設定値に変更することで自車両Mを先行車両に接近させることが想定される。一時前進スイッチ60の操作によって目標車間距離が変更された場合、車両制御装置100は、場面(2)に示すように、自車両Mを先行車両に接近させる。このとき、車両制御装置100は、車間距離Dが第2閾値D2未満とならない範囲の移動量ΔDaで自車両Mを接近させる。なお、場面(1)において、アクセルペダル40aが操作された場合、車両制御装置100は、アクセルペダル40aの操作量に応じて自車両Mを接近させてもよい。
場面(2)では、自車両Mが先行車両に接近したことにより、車間距離Dが第1閾値D1未満、且つ第2閾値D2以上となり、制御切替部134は、一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止する。ここで場面(3)に示すように、車間距離Dが第2閾値D2以上であることからアクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御が許可されており、運転者がアクセルペダル40aを操作して、さらに自車両Mを先行車両に接近させることがある。例えば、運転者による普段の運転経験から、更に車間距離Dを詰めることができると判断された場合に、運転者によってアクセルペダル40aが操作されることが想定される。また、自車両Mと後続車両との間を他の車両(例えば救急車などの緊急車両)が通過しようとしている場合に、後続車両との車間距離Dを広げるために、運転者がアクセルペダル40aを操作して自車両Mを先行車両に近づけることが想定される。この場合、追従走行パラメータ導出部110は、アクセルペダル40aに対する操作量に基づいて、接近時の移動量が、移動量ΔDaよりも少ない移動量ΔDbとなるように走行駆動力Df、制動力Btなどを再度導出する。これによって、場面(4)に示すように、自車両Mは先行車両に接近する。なお、自車両Mが移動量ΔDbで先行車両に接近したことによって、車間距離Dが第2閾値D2未満となった場合、制御切替部134は、更に、アクセルペダル40aに対する操作の受け付けを禁止する。
図4は、図3に示す場面における各種パラメータの変化の一例を示す図である。図中LN1は、アクセルペダル40aに対する操作に応じて要求される走行駆動力Dfの時間に対する変化を表している。また、LN2は、一時前進スイッチ60の操作によって設定される目標車間距離に応じて要求される走行駆動力Dfの時間に対する変化を表している。また、LN3は、一時前進スイッチ60の操作によって設定される目標車間距離に応じて要求される制動力Btの時間に対する変化を表している。また、LN4は、実際に出力すべき走行駆動力Dfの時間に対する変化を表している。この走行駆動力Dfは、例えば、アクセルペダル40aに対する操作に応じた走行駆動力Dfと、追従走行時の目標車間距離に応じた走行駆動力Dfおよび制動力Btとに基づいて導出される。LN5は、車間距離Dの時間に対する変化を表している。
例えば、時刻t0の時点では、既に追従定速スイッチ50が操作されて、追従走行が開始されている。この時点では、制動力導出部114は、坂道の途中で自車両Mを停止させるため、登り坂の勾配と、検知デバイス10および車両センサ30の検出値のばらつきを考慮した制動力Btx(力が釣り合う均衡点での制動力)を導出する。また、駆動力導出部112は、停車した状態から坂道発進を行うために、一定値以上の走行駆動力Dfを導出する。制動力Btxは、「基準の制動力」の一例である。
時刻t1の時点で、一時前進スイッチ60が操作され、追従時の目標車間距離がより小さい距離に変更されると、駆動力導出部112は、走行駆動力Dfを大きくする。制動力導出部114は、駆動力導出部112により導出された走行駆動力Dfが制動力Btxを超えた時点、すなわち自車両Mが前進を開始した時点(時刻t2)で、導出する制動力Btを小さくする。この際、制動力導出部114は、車間距離Dが第2閾値D2未満とならない程度の制動力Btを導出する。例えば、制動力導出部114は、時刻t2から時刻t3の期間ΔTaにおいて制動力Btを減少させ、時刻t3以降においては制動力Btを一定とする。
駆動力導出部112は、車間距離Dが短くなり始めると、走行駆動力Dfを徐々に小さくし、車間距離Dが第1閾値D1未満となった時点(時刻t4)で、制動力Btが走行駆動力Dfと同程度になるまで、現在の走行駆動力Dfを維持する。また、制動力導出部114は、時刻t4で、制動力Btを大きくする。これによって、坂道において自車両Mがずり下がっていくのを防止することができる。
駆動力導出部112は、制動力Btが走行駆動力Dfを超え、制動力Btxに達した時点(時刻t5)で、導出する走行駆動力Dfを、クリープ現象により出力される駆動力程度まで小さくする。これによって、自車両Mは車間距離Dが第1閾値D1未満、且つ第2閾値D2以上となる地点で停止する。
坂道の途中で自車両Mが停止している時刻t6においてアクセルペダル40aが操作され、アクセルペダル40aの操作量が閾値以上となった時点(時刻t7)で、駆動力導出部112は、走行駆動力Dfを大きくする。制動力導出部114は、走行駆動力Dfが制動力Btを超えた時点(時刻t8)で導出する制動力Btを小さくする。この際、制動力導出部114は、車間距離Dが第2閾値D2未満とならない程度に制動力Btを低下させる。例えば、制動力導出部114は、時刻t2から時刻t3の期間ΔTaに比してより長い期間ΔTb(例えば、時刻t8から時刻t11までの期間)において、制動力Btを低下させる。すなわち、期間ΔTbにおける制動力Btの低下傾向は、期間ΔTaにおける制動力Btの低下傾向に比して緩やかな減少変化となる。期間ΔTaにおいて出力される制動力は「第1の制動力」の一例であり、期間ΔTbにおいて出力される制動力は「第2の制動力」の一例である。
例えば、時刻t6以降において、運転者が追従走行時に覚えた速度感覚でアクセルペダル40aを踏み込んだ場合、これまでアクセルペダル40aを踏み込んでいなかった(或いは踏み込みの頻度が小さかった)ことから過度に踏み込んでしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、追従走行制御部130による追従走行制御時の制動力Btの出力時間(期間ΔTa)に対してアクセルペダル40aの操作時の制動力Btの出力時間(期間ΔTb)を長くするため、運転者によってアクセルペダル40aが過度に踏み込まれてしまっても、ブレーキ装置92から制動力Btがより長い時間出力されるため、自車両Mが急発進しないように制御することができる。
アクセルペダル40aの操作によって車間距離Dが第2閾値D2未満となった時点(時刻t11)において、制御切替部134は、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aの操作(アクセル開度信号)の受け付けを禁止して、アクセルペダル40aの操作による走行駆動力出力装置90の制御から、追従走行制御部130による走行駆動力出力装置90の制御に切り替える。これを受けて、駆動力導出部112は、制動力Btが走行駆動力Dfを超えるまで、走行駆動力Dfを徐々に小さくする。また、制動力導出部114は、導出する制動力Btを、均衡がとれる制動力Btxまで大きくする。これによって、坂道において自車両Mがずり下がっていくのを防止することができる。
図5は、第1の実施形態における車両制御装置100による制御の一例を示すフローチャートである。例えば、本フローチャートの処理は、追従定速スイッチ50に対して操作がなされた場合に開始される。
まず、追従走行制御部130または定速走行制御部132は、周辺認識部102により先行車両が認識されたか否かを判定する(ステップS100)。定速走行制御部132は、周辺認識部102により先行車両が認識されない場合、定速設定スイッチ55に対する操作に応じて目標速度に設定する(ステップS102)。次に、定速走行制御部132は、定速走行時の目標速度を出力させるように走行駆動力出力装置90およびブレーキ装置92を制御して、これらの装置に走行駆動力Dfおよび制動力Btを出力させる(ステップS104)。
一方、追従走行制御部130は、周辺認識部102により先行車両が認識された場合、一時前進スイッチ60に対する操作に応じて、追従走行時の目標車間距離を設定する(ステップS106)。なお、追従走行制御部130は、一時前進スイッチ60に対して目標車間距離を設定する操作がなされない場合、予め設定された目標車間距離(デフォルト設定の目標車間距離)を用いてもよい。
次に、車間距離導出部116は、周辺認識部102により認識された先行車両と自車両Mとの間の車間距離Dを導出する(ステップS108)。
次に、制御切替部134は、車間距離導出部116により導出された車間距離Dが第1閾値D1以上であるか否かを判定する(ステップS110)。制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aおよび一時前進スイッチ60に対する操作(アクセル開度信号やスイッチ操作の信号)の受け付けを許可する(ステップS112)。
一方、制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1未満である場合、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上であるか否かを判定する(ステップS114)。制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合、追従走行制御部130に対して、一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止すると共に、アクセルペダル40aに対する操作の受け付けを許可する(ステップS116)。
一方、制御切替部134は、車間距離Dが第2閾値D2未満である場合、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aおよび一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止する(ステップS118)。そして、追従走行制御部130は、車間距離Dに応じて走行駆動力出力装置90およびブレーキ装置92を制御して、これらの装置に走行駆動力Dfおよび制動力Btを出力させる(ステップS120)。
次に、追従走行パラメータ導出部110は、操作の受け付けが許可されたアクセルペダル40aまたは一時前進スイッチ60が操作されたか否かを判定する(ステップS122)。追従走行パラメータ導出部110は、アクセルペダル40aまたは一時前進スイッチ60のいずれかが操作された場合、操作に応じて走行駆動力Dfおよび制動力Btを導出する。そして、追従走行制御部130は、追従走行パラメータ導出部110により導出された走行駆動力Dfおよび制動力Btに基づいて走行駆動力出力装置90およびブレーキ装置92を制御することで、これらの装置に走行駆動力Dfおよび制動力Btを出力させる(ステップS124)。
一方、追従走行パラメータ導出部110は、アクセルペダル40aまたは一時前進スイッチ60のいずれも操作されない場合、S120に処理を移す。これによって本フローチャートの処理が終了する。
なお、上述した実施形態では、登り坂での車間距離の調整について説明したがこれに限られない。例えば、車両制御装置100は、下り坂において、上述した図5に示すフローチャートの処理を行ってもよい。すなわち、車両制御装置100は、下り坂走行時に、アクセルペダル40aまたは一時前進スイッチ60が操作された場合に、自車両Mと先行車両との間の車間距離Dを短くするように自車両Mを前進させ、更にアクセルペダル40aが操作された場合に、先行車両との車間距離を、一回目の接近に比してさらに先行車両に近づけるように自車両Mを前進させてよい。これによって、例えば、下り坂のような重力の影響により乗員の意図した前進よりも自車両Mが進みやすい状況下であっても、制動力を残すように自車両Mを制御することができる。
以上説明した第1の実施形態における車両制御装置100によれば、自車両Mを停止させた状態で、アクセルペダル40aまたは一時前進スイッチ60が操作された場合に、自車両Mと先行車両との間の車間距離Dを短くするように自車両Mを前進させ、アクセルペダル40aが操作された場合に、先行車両との車間距離を、一回目の接近に比してさらに先行車両に近づけるように自車両Mを前進させることにより、運転者の意思をより忠実に反映させて車間距離を調整することができる。
また、上述した第1の実施形態における車両制御装置100によれば、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合、すなわち未だ先行車両に接近できるだけの有余がある場合にアクセルペダル40aの操作のみを受け付けることから、車間距離Dを詰めたいという車両乗員の意思をより精度良く認識した上で、車間距離の調整を行うことができる。
また、上述した第1の実施形態における車両制御装置100によれば、一回目に先行車両に接近したときの制動力Btの出力時間(期間ΔTa)に対して二回目に先行車両に接近したときの制動力Btの出力時間(期間ΔTb)を長くするため、運転者によってアクセルペダル40aが過度に踏み込まれてしまっても、ブレーキ装置92から制動力Btが出力されるため、急な加速を抑制することができる。この結果、運転者の運転操作によって自車両Mを先行車両に接近させる際に、先行車両との衝突を防止することができる。
また、上述した第1の実施形態における車両制御装置100によれば、渋滞や割り込み車を避ける場合、自車両Mが停車した後に先行車が少し進むなどといった、先行車両との車間距離を少し詰めたい状況において、特に効果的に車間距離の調整を行うことができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、アクセルペダル40aが操作されると、このアクセルペダル40aに対して反力を出力する点で第1の実施形態と相違する。反力とは、アクセルペダル40aを踏み込む力(踏力)とは逆方向の力(押し戻す力)のことをいう。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図6は、第2の実施形態における車両制御装置100Aを中心とした構成の一例を示す図である。第2の実施形態における自車両Mには、上述した第1の実施形態に示す構成(図1参照)に加えて、更に、反力出力装置93が搭載される。反力出力装置93は、「反力出力部」の一例である。
反力出力装置93は、車両制御装置100Aから出力される指示に従って、アクセルペダル40aに対して反力を出力する。
第3の実施形態における車両制御装置100Aの追従走行パラメータ導出部110Aは、上述した駆動力導出部112、制動力導出部114、および車間距離導出部116に加えて、更に、反力導出部118を備える。
反力導出部118は、車間距離導出部116により導出された車間距離Dと、操作検出センサ42(アクセル開度センサ42a)により検出されたアクセルペダル40aの踏み込み力(踏み込み量)とに基づいて、反力出力装置93に出力させる反力を導出する。例えば、反力導出部118は、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合にアクセルペダル40aが操作を受け付けた場合、このアクセルペダル40aに対する踏み込み力に応じた反力を導出する。また、反力導出部118は、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合にアクセルペダル40aが操作を受け付けた場合、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合のアクセルペダル40aに対する踏み込み力に応じた反力に比して大きな反力を導出する。アクセルペダル40aの踏み込み力(踏み込み量)は、「操作量」の一例である。
図7は、第2の実施形態における車両制御装置100Aによる制御の一例を示すフローチャートである。例えば、本フローチャートの処理は、自車両が下り坂や登り坂を走行する際に所定の周期で繰り返し行われる。
まず、車間距離導出部116は、周辺認識部102により認識された先行車両と自車両Mとの間の車間距離Dを導出する(ステップS200)。
次に、制御切替部134は、車間距離導出部116により導出された車間距離Dが第1閾値D1以上であるか否かを判定する(ステップS202)。制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aおよび一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを許可する(ステップS204)。
次に、追従走行パラメータ導出部110は、操作の受け付けが許可されたアクセルペダル40aが操作されたか否かを判定する(ステップS206)。アクセルペダル40aが操作された場合、追従走行パラメータ導出部110Aの反力導出部118は、アクセルペダル40aの踏み込み力に応じた反力(以下、第1反力と称する)を導出する。このとき、第1反力は、アクセルペダル40aの踏み込み力に対して所定の比率(例えば第1反力:踏み込み力=0.2:1.0)で導出される。以下、第1反力に対応した所定の比率を、第1比率と称して説明する。
そして、追従走行制御部130は、反力導出部118により導出された第1反力に基づいて反力出力装置93を制御することで、この装置に第1反力を出力させる(ステップS208)。
一方、制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1未満である場合、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上であるか否かを判定する(ステップS210)。制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合、追従走行制御部130に対して、一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止すると共に、アクセルペダル40aに対する操作の受け付けを許可する(ステップS212)。
次に、追従走行パラメータ導出部110は、操作の受け付けが許可されたアクセルペダル40aが操作されたか否かを判定する(ステップS214)。アクセルペダル40aが操作された場合、反力導出部118は、アクセルペダル40aの踏み込み量に応じた反力(以下、第2反力と称する)を導出する。このとき、第2反力は、アクセルペダル40aの踏み込み力に対して、第1反力に対応した第1比率よりも大きい第2比率(例えば、第2反力:踏み込み力=0.5:1.0)で導出される。
そして、追従走行制御部130は、反力導出部118により導出された第2反力に基づいて反力出力装置93を制御することで、この装置に第2反力を出力させる(ステップS216)。これによって、一回目の接近からさらに自車両Mを先行車両に近づけるような場合に、アクセルペダル40aを踏み込みにくくさせることができ、急な駆動力の増加を抑制することができる。
一方、制御切替部134は、車間距離Dが第2閾値D2未満である場合、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aおよび一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止する(ステップS218)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。
なお、反力導出部118は、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、第1比率をゼロとして第1反力を導出してもよい。また、反力導出部118は、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、ゼロを超える値の第2比率で第2反力を導出してもよい。すなわち、車両制御装置100Aは、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、アクセルペダル40aに反力を出力させずに、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、アクセルペダル40aに反力を出力させるようにしてもよい。
以上説明した第2の実施形態における車両制御装置100Aによれば、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、このアクセルペダル40aに対する踏み込み力に応じた第1反力をアクセルペダル40aに対して出力し、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、このアクセルペダル40aに対する踏み込み力に応じた反力に比して小さな第2反力をアクセルペダル40aに対して出力することにより、運転者の意思をより忠実に反映させて車間距離を調整すると共に、急な駆動力の増加を抑制することができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、アクセルペダル40aの操作量に応じた走行駆動力Dfを、車間距離Dに応じて変更する点で第1および第2の実施形態と相違する。以下、第1および第2の実施形態との相違点を中心に説明し、第1および第2の実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図8は、第3の実施形態における車両制御装置100Bによる制御の一例を示すフローチャートである。例えば、本フローチャートの処理は、自車両が下り坂や登り坂を走行する際に所定の周期で繰り返し行われる。
まず、車間距離導出部116は、周辺認識部102により認識された先行車両と自車両Mとの間の車間距離Dを導出する(ステップS300)。
次に、制御切替部134は、車間距離導出部116により導出された車間距離Dが第1閾値D1以上であるか否かを判定する(ステップS302)。制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1以上である場合、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aおよび一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを許可する(ステップS304)。
次に、追従走行パラメータ導出部110は、操作の受け付けが許可されたアクセルペダル40aが操作されたか否かを判定する(ステップS306)。アクセルペダル40aが操作された場合、第3の実施形態における駆動力導出部112は、アクセルペダル40aの踏み込み力に応じた走行駆動力Dfを導出する。
そして、追従走行制御部130は、駆動力導出部112により導出された走行駆動力Dfに基づいて走行駆動力出力装置90を制御することで、この装置に走行駆動力Dfを出力させる(ステップS308)。
一方、制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1未満である場合、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上であるか否かを判定する(ステップS310)。制御切替部134は、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合、追従走行制御部130に対して、一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止すると共に、アクセルペダル40aに対する操作の受け付けを許可する(ステップS312)。
次に、追従走行パラメータ導出部110は、操作の受け付けが許可されたアクセルペダル40aが操作されたか否かを判定する(ステップS314)。アクセルペダル40aが操作された場合、駆動力導出部112は、アクセルペダル40aの踏み込み力に応じた走行駆動力Dfを導出する。そして、追従走行制御部130は、駆動力導出部112により導出された走行駆動力Dfに基づいて走行駆動力出力装置90を制御することで、この装置に走行駆動力Dfを出力させる(ステップS316)。
次に、駆動力導出部112は、走行駆動力出力装置90により出力される走行駆動力Dfが、力が釣り合う均衡点での制動力Btx(に相当する値)以上となったか否かを判定する(ステップS318)。例えば、上述した図4における時刻t5以降のような、走行駆動力Dfが制動力Btx以上となる場合、駆動力導出部112は、アクセルペダル40aの踏み込み力に応じた走行駆動力Dfを車間距離Dに応じて低下させる(ステップS320)。
図9は、車間距離Dごとの走行駆動力Dfおよびアクセルペダル40aの操作量の関係を示す図である。図中LN6は、車間距離がD1である場合における、アクセルペダル40aの踏み込み力に対する走行駆動力Dfの変化傾向を示している。また、LN7は、車間距離がD1未満のD1−2である場合における、アクセルペダル40aの踏み込み力に対する走行駆動力Dfの変化傾向を示している。また、LN8は、車間距離がD1‐2未満のD1‐3である場合における、アクセルペダル40aの踏み込み力に対する走行駆動力Dfの変化傾向を示している。また、LN9は、車間距離がD1‐3未満のD2である場合における、アクセルペダル40aの踏み込み力に対する走行駆動力Dfの変化傾向を示している。図示のように、例えば、駆動力導出部112は、車間距離Dが短いほど、アクセルペダル40aの踏み込み力に対する走行駆動力Dfの上昇傾向を緩やかにしてよい。これによって、一回目の接近からさらに自車両Mを先行車両に近づけるような場合に、アクセルペダル40aが強く踏み込まれてしまった場合であっても、急な駆動力の増加を抑制することができる。
ここで、図8のフローチャートの説明に戻る。S310の判定において否定的な判定結果を得た場合、すなわち、車間距離Dが第2閾値D2未満である場合、制御切替部134は、追従走行制御部130に対して、アクセルペダル40aおよび一時前進スイッチ60に対する操作の受け付けを禁止する(ステップS322)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。
以上説明した第3の実施形態における車両制御装置100Bによれば、車間距離Dが第1閾値D1未満であり、且つ第2閾値D2以上である場合にアクセルペダル40aが操作された場合、このアクセルペダル40aに対する踏み込み力に応じた走行駆動力Dfを、車間距離Dが短くなるほど低下させて出力することにより、運転者の意思をより忠実に反映させて車間距離を調整すると共に、急な駆動力の増加を抑制することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、車両制御装置100Cが自車両Mの速度制御または操舵制御のうち少なくとも一方を自動的に行う自動運転を実施する点で第1から第3の実施形態と相違する。以下、速度制御または操舵制御のうち少なくとも一方を自動的に行う自動運転を「自動運転モード」と称し、速度制御および操舵制御を運転者による操作で行う手動運転を「手動運転モード」と称して説明する。上述した追従走行および定速走行は、例えば、自動運転モードに含まれる。以下、第1から第3の実施形態との相違点を中心に説明し、第1から第3の実施形態と共通する機能等についての説明は省略する。
図10は、第4の実施形態における車両制御装置100Cを中心とした構成の一例を示す図である。第4の実施形態における検知デバイス10は、例えば、レーダ、カメラ、ファインダを含む。また、車両制御装置100Cが搭載される自車両Mには、さらに自動運転切替スイッチ70と、ナビゲーション装置80と、ステアリング装置94とが搭載される。
自動運転切替スイッチ70は、自動運転モードまたは手動運転モードを切り替える指示操作を受け付けるスイッチである。自動運転切替スイッチ70は、自動運転モードを開始させる指示操作を受け付けると、当該指示操作を示す指示信号を車両制御装置100Cに出力する。
ナビゲーション装置80は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置80は、GNSS受信機によって自車両Mの位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置80により導出された経路は、車両制御装置100Cの目標車線決定部136に提供される。自車両Mの位置は、車両センサ30の出力(検出値)を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置80は、車両制御装置100Cが手動運転モードを実行している際に、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。
ステアリング装置94は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、車両制御装置100から入力される情報、或いは操作検出センサ42により出力されるステアリング操舵角またはステアリングトルクの情報に従って電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
第4の実施形態における車両制御装置100Cは、例えば、上述した第1から第3の実施形態における構成に加えて、さらに目標車線決定部136と、自車位置認識部138と、自動運転制御部140とを備える。また、第4の実施形態における記憶部150Cには、さらに高精度地図情報154、目標車線情報156、および行動計画情報158が格納される。高精度地図情報154は、ナビゲーション装置80が有するナビ地図よりも高精度な地図情報である。高精度地図情報154は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、高精度地図情報154には、道路情報、交通規制情報(工事や交通事故、渋滞等によって車線が封鎖されているといった情報)などが含まれてよい。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。
目標車線決定部136は、例えば、MPUにより実現される。目標車線決定部136は、ナビゲーション装置80から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、高精度地図情報154を参照してブロックごとに目標車線を決定する。目標車線決定部136は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。目標車線決定部136は、例えば、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な走行経路を走行できるように、目標車線を決定する。目標車線決定部136により決定された目標車線は、目標車線情報156として記憶部150Cに記憶される。
自車位置認識部138は、例えば、高精度地図情報154から認識される道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、検知デバイス10に含まれるカメラによって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。この認識において、ナビゲーション装置80から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
自動運転制御部140は、例えば、行動計画生成部142と、軌道生成部144とを備える。行動計画生成部142は、自動運転のスタート地点、および/または自動運転の目的地を設定する。行動計画生成部142は、そのスタート地点と自動運転の目的地との間の区間において、行動計画を生成する。行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、自車両を減速させる減速イベントや、自車両を加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように自車両を走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント等が含まれる。行動計画生成部142によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報158として記憶部150Cに格納される。
軌道生成部144は、例えば、レーンキープイベントを実施する際に、定速走行、追従走行、低速追従走行、減速走行、カーブ走行、障害物回避走行などのうちいずれかの走行態様を決定する。軌道生成部144は、決定した走行態様に基づいて、軌道の候補を生成する。軌道生成部144は、例えば、将来の所定時間ごとに、自車両Mの基準位置(例えば重心や後輪軸中心)が到達すべき目標位置(軌道点)の集まりとして決定する。軌道点の間隔が広いほど、自車両Mの速度は速くなり、軌道点の間隔が狭いほど、自車両Mの速度は遅くなる。従って、軌道生成部144は、加速したい場合には軌道点の間隔を徐々に広くし、減速したい場合は軌道点の間隔を徐々に狭くする。
軌道生成部144は、自車両Mの走行態様を追従走行に決定した場合、追従走行パラメータ導出部110を起動させる。これを受けて、追従走行パラメータ導出部110は処理を開始する。従って、この場合には、追従定速スイッチ50および一時前進スイッチ60が省略されてもよい。
第4の実施形態における追従走行制御部130は、軌道生成部144によって生成された軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置90、ブレーキ装置92、およびステアリング装置94を制御する。また、追従走行制御部130は、軌道生成部144により走行態様が追従走行に決定された場合、追従走行パラメータ導出部110により導出された走行駆動力Df、制動力Btに基づいて、それぞれ走行駆動力出力装置90とブレーキ装置92を制御する。また、追従走行制御部130は、ステアリング装置94については、軌道生成部144によって生成された軌道点の位置関係に基づいて制御してよい。
制御切替部134は、自動運転切替スイッチ70から入力される信号に基づいて自動運転モードと手動運転モードとを相互に切り替える。
以上説明した第4の実施形態における車両制御装置100Cによれば、上述した第1から第3の実施形態と同様に、運転者の意思をより忠実に反映させて車間距離を調整することができる。
また、第4の実施形態における車両制御装置100Cによれば、自動運転モードが設定されている場合に、自車両Mは自律して走行するため、利用者の利便性がより向上する。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。