JP6622010B2 - ポリエステル系裏地 - Google Patents
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(1)経糸及び緯糸のうちの何れか一方にポリエステル撚糸が配され、もう一方にポリエステル仮撚加工糸が配された織物からなるポリエステル系裏地である。前記ポリエステル撚糸の下記式(1)で求められる撚係数Kが10〜110であり、前記ポリエステル仮撚加工糸の単糸繊度が0.9〜5.0dtex、クリンプ率が10%以上である。前記ポリエステル系裏地のKES曲げ特性評価における曲げ剛性B値が0.0400gf・cm2/cm以下であり、かつKES曲げ特性評価における曲げ弾性2HB値が、0.0250gf・cm/cm以下である。
K=T/(10000/D)1/2 (1)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。
(5)(1)〜(4)の何れかのポリエステル系裏地を製造する方法であって、
経糸及び緯糸のうちの何れか一方に下記式(I)で求められる撚係数Kが10〜110であるポリエステル撚糸を配し、もう一方に単糸繊度が0.9〜5.0dtex、クリンプ率が10%以上であるポリエステル仮撚加工糸を配することにより織物の形態とし、次いで、この織物に対して、アルカリ減量加工を施した後、カムフィット処理を施すことを特徴とする、ポリエステル系裏地の製造方法。
K=T/(10000/D) 1/2 (I)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。
本発明のポリエステル系裏地は、経糸及び緯糸のいずれか一方にポリエステル撚糸が配されるとともに、もう一方にポリエステル仮撚加工糸が配された織物からなる。風合い又は滑り性により優れるために、経糸としてポリエステル撚糸が配されていることが好ましい。ポリエステル撚糸を用いることで、反発性及び滑り性を向上させることができる。従来技術においては、ポリエステル撚糸を用いると剛性が過度に強くなり滑り性又は風合いに劣るという問題があった。本発明においては、ポリエステル撚糸を用い、さらに、例えば後述のアルカリ減量処理を経ることで剛性が適度に抑制されて剛性と反発性とのバランスが最適となり、次いで、例えばカムフィット処理を経ることで、滑り性及び風合いに顕著に優れる裏地となる。これらの処理については後述する。なお、ポリエステル撚糸に代えて無撚のポリエステル糸、又はインターレース加工若しくは軽度の撚(例えば、撚係数が10未満であるような撚)などが施されたポリエステル糸を用いた場合は、反発性に劣る裏地しか得られないため、本発明の効果を奏することができない。また、ポリエステル仮撚加工糸を用いることで適度なふくらみによるソフト感が得られるため風合いに優れ、シワが発生し難くなる。本発明のポリエステル系裏地は、ポリエステル系繊維(ポリエステル撚糸、ポリエステル仮撚加工糸)を主たる構成繊維とする織物からなることが好ましく、ポリエステル系繊維のみからなる織物からなることが特に好ましい。
撚係数Kは下記式(1)にて求められる。
K=T/(10000/D)1/2 (1)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。
なお、本発明の裏地を構成するポリエステル撚糸の撚係数は、生機に用いられるポリエステル撚糸の撚係数を適切に選択することで、上記の範囲とすることができる。従来のポリエステル系裏地においては、ポリエステル撚糸を用いると剛性が過度に強くなり風合いに劣る裏地しか得られないため、ポリエステル撚糸を敢えて選択して用いなかった。一方で本発明においては、例えば、アルカリ減量処理及びカムフィット処理のような特定の処理を経ることで、ポリエステル撚糸を採用した場合であっても、剛性が適度に抑制されて剛性と反発性とのバランスが最適なものとなり、滑り性及び風合いにいっそう優れる裏地とすることができる。
上記のようなポリエステル撚糸とポリエステル仮撚加工糸とを公知の方法で製織し、織物の形態としてポリエステル系裏地とする。次いで、このポリエステル系裏地に対して、例えばアルカリ減量加工を施した後、カムフィット処理を施すことが好ましい。
本発明の実施例における測定方法、又は評価方法は、以下の通りである。
<繊度>
実施例及び比較例において、材料として用いられたポリエステル撚糸及びポリエステル仮撚加工糸、並びに得られたポリエステル系裏地を構成する織物から採取したポリエステル撚糸及びポリエステル仮撚加工糸について、JIS L 1013に従って繊度を測定した。
曲げ試験機(カトーテック株式会社製、「KES−FB2」)を用いた。得られたポリエステル系裏地を1cm×10cmの幅に裁断し、試験片とした。この試験片を曲率が−2.5cm−1〜+2.5cm−1の範囲で、かつ等速度(変形速度0.5cm−1/sec)の曲げ試験を行った。曲げ試験は1サイクルとし、単位長さ当たりの曲げ剛性値である曲げ剛性B値(単位:gf・cm2/cm)と、ヒステリシスの幅である曲げ断性2HB値(単位:gf・cm/cm)とを求めた。
実施例及び比較例において、材料として用いられたポリエステル仮撚加工糸に、繊度(dtex)に対して1/500の荷重(単位:g/dtex)を付与し20cmの箇所に印を付けた。荷重を1/10の荷重(単位:g/dtex)に変更して付与し、そのときの印間長さaを測定した。下記式(2)に従って算出した。
クリンプ率(%)={(a−20)/a}×100 (2)
さらに、実施例及び比較例において得られた裏地を分解して、1本の仮撚加工糸を採取した。この仮撚加工糸に、繊度(dtex)に対して1/500の荷重(単位:g/dtex)を付与し20cmの箇所に印を付けた。荷重を1/10の荷重(単位:g/dtex)に変更して付与し、そのときの印間長さbを測定した。下記式(3)に従って算出した。
クリンプ率(%)={(b−20)/b}×100 (3)
実施例及び比較例において、材料として用いられたポリエステル撚糸について、下記式(1)に従って撚係数を算出した。さらに、実施例及び比較例において得られたポリエステル系裏地を構成する織物から1本のポリエステル撚糸を採取して解撚し、下記式(1)に従って算出した。
K=T/(10000/D)1/2 (1)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。
スーツの上着の裏側(人体側)全体に、実施例及び比較例にて得られた裏地を縫着した。このスーツを着用し30分経過後の裏地のシワ状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
◎:着用後のシワが少なく、目立たない。
○:着用後のシワが多少あるが、目立つ程度ではない。
×:着用後のシワが多く、目立つ。
スーツの上着の裏側(人体側)全体に、実施例及び比較例にて得られた裏地を縫着した。このスーツを着用し、腕をスーツの袖に挿入する際の滑り性を、下記の基準で評価した。
◎:着用時に滑り易く、容易に着用できる。
○:着用時の滑りが普通である。
×:着用時に滑りにくく、着用が困難である。
スーツの上着の裏側(人体側)全体に、実施例及び比較例にて得られた裏地を縫着した。このスーツを着用したときの着用感を、下記の基準で評価した。
◎:着心地がソフトで適度にコシがあり、着用感が良好である。
○:着心地が普通である。
×:着心地が悪い。
経糸として、ポリエステルフィラメント糸(56dtex24フィラメント)に、Z撚り600T/Mの条件で撚りを施して得られたポリエステル撚糸を用いた。緯糸として、ポリエステル仮撚加工糸(84dtex36フィラメント、クリンプ率35%)を用いた。そして、経糸密度が98本/2.54cm、緯糸密度:90本/2.54cmである平組織の織物生機を得た。次いで、得られた織物生機に対して80℃で30分間の精練処理を行い、その後、減量率が15%となるようにアルカリ減量処理(NaOH濃度:40g/L)を行った。次に、分散染料としてのDianix Bule UN−SEを1%o.w.f、酢酸を0.2cc/L、ニッカサンソルトを0.5g/Lを用いて130℃で30分間染色を行った後に仕上げセットを行った。次いで、カムフィット機(上野山機工株式会社製)を用いてカムフィット処理を行い、実施例1のポリエステル系裏地を得た。
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り135T/Mに変更し、撚係数を13.4とした以外は、実施例1と同様にして実施例2のポリエステル系裏地を得た。
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り1300T/Mに変更し、撚係数を97.3とした以外は、実施例1と同様にして実施例3のポリエステル系裏地を得た。
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、クリンプ率が13%であるものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4のポリエステル系裏地を得た。
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、クリンプ率が25%であり84dtex72フィラメントであるものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例5のポリエステル系裏地を得た。
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り100T/Mに変更し、撚係数を7.4とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリエステル系裏地を得た。
経糸に用いるポリエステル撚糸において、撚条件をZ撚り1500T/Mに変更し、撚係数を112.2と変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリエステル系裏地を得た。
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、仮撚加工を行っておらずクリンプ率が2%であるポリエステルフィラメント糸(84dtex36フィラメント)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のポリエステル系裏地を得た。
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、クリンプ率が16%であり84dtex144フィラメントであるものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のポリエステル系裏地を得た。
緯糸に用いるポリエステル仮撚加工糸を、セルロース系フィラメント糸(旭化成せんい株式会社製「ベンベルグ」、84dtex45フィラメント)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5の裏地を得た。
織物加工においてアルカリ減量処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例6のポリエステル系裏地を得た。
織物加工においてカムフィット処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例7のポリエステル系裏地を得た。
Claims (5)
- 経糸及び緯糸のうちの何れか一方にポリエステル撚糸が配され、もう一方にポリエステル仮撚加工糸が配された織物からなるポリエステル系裏地であって、
前記ポリエステル撚糸の下記式(1)で求められる撚係数Kが10〜110であり、
前記ポリエステル仮撚加工糸の単糸繊度が0.9〜5.0dtex、クリンプ率が10%以上であり、
前記ポリエステル系裏地のKES曲げ特性評価における曲げ剛性B値が0.0400gf・cm2/cm以下、かつKES曲げ特性評価における曲げ弾性2HB値が0.0250gf・cm/cm以下であることを特徴とする、ポリエステル系裏地。
K=T/(10000/D)1/2 (1)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。 - 前記ポリエステル撚糸の単糸繊度が0.5〜22.0dtexであることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステル系裏地。
- 前記ポリエステル仮撚加工糸の総繊度が30〜165dtexであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエステル系裏地。
- 前記織物の経糸密度が100〜280本/2.54cmであり、かつ緯糸密度が75〜120本/2.54cmであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリエステル系裏地。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のポリエステル系裏地を製造する方法であって、
経糸及び緯糸のうちの何れか一方に下記式(1)で求められる撚係数Kが10〜110であるポリエステル撚糸を配し、もう一方に単糸繊度が0.9〜5.0dtex、クリンプ率が10%以上であるポリエステル仮撚加工糸を配することにより織物の形態とし、次いで、この織物に対して、アルカリ減量加工を施した後、カムフィット処理を施すことを特徴とする、ポリエステル系裏地の製造方法。
K=T/(10000/D) 1/2 (1)
上記式(1)において、Tは撚数(単位:T/M)を示し、Dはポリエステル撚糸の総繊度を示す。
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