JP6621196B2 - β型強化チタン合金、β型強化チタン合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本件発明は、β型強化チタン合金及びその製造方法に関する。
チタン合金は、軽量であり、引張強度や耐食性等において他の金属よりも優れた性質を有する。また、チタン合金の主成分であるチタンは、金属アレルギーを引き起こす等の人体への害が殆どなく、生体適合性にも優れている。
チタン合金は、常温での母相の結晶構造により大きく3種類に分類される。すなわち、稠密六方晶(HCP)であるα相を母相とするα型チタン合金、体心立方晶(BCC)であるβ相を母相とするβ型チタン合金、稠密六方晶(HCP)であるα相と体心立方晶(BCC)であるβ相とが共存するα+β型チタン合金の3種類である。ここで、β型チタン合金は、低ヤング率で高強度であるという優れた特性を備えることから、航空機や自動車等に用いる構造用材料、人工股関節や人工歯根等の医療用材料等様々な用途が期待されている。
β型チタン合金は、β単相組織で使用される場合、強化法としては、固溶強化、転位強化、結晶粒微細化強化が使用される。その中でも延性・靱性を損なうことなく大幅に強化出来る手法として、結晶粒微細化強化が有効とされている。β型チタン合金の結晶粒微細化技術としては、熱間加工を用いる方法や冷間加工と熱処理を組みあわせた方法等がある。
例えば、特許文献1には、高い強度を有するβ型チタン合金を材料として高強度な部品を製造する方法を提供するために、βトランザス温度以上であって1100℃以下の温度で鍛造または圧延を行なうことが開示されている。また、特許文献1には、鍛造または圧延を行なった後、固溶化熱処理を施して結晶粒を再結晶化させることも好ましいことが開示されている。
特開2005−60821号公報
しかし、特許文献1に開示の製造方法により得られたβ型チタン合金は、引張強度の向上が図られるものの、疲労強度の向上を十分且つ安定的に図ることが出来ない。そのため、特許文献1に開示のβ型チタン合金では、高負荷繰返し応力下での使用が想定される構造用材料や医療用材料として用いるには問題が多い。
また、β型チタン合金は、疲労強度を向上させる目的で、一般にショットピーニング処理が採用されている。しかし、ショットピーニング処理では、投射材(ショット)として、鉄系、非鉄系、ガラス系、セラミック系、樹脂系等の材料が用いられる。従って、投射材の材質によっては、生体に不適合な成分が含まれる場合があり、この成分がβ型チタン合金材の表面に付着して生体適合性が損われてしまう問題がある。また、この処理によりβ型チタン合金材の表面に凹凸が形成され、当該凹凸が疲労破壊の起点となる恐れがある。
以上のことから、本件発明は、生体適合性に優れ、引張強度及び疲労強度の向上が図られたβ型強化チタン合金、及びその製造方法の提供を目的とする。
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、上述した課題を解決するに到った。以下、本件発明に関して説明する。
件発明に係るβ型強化チタン合金は、引張強度に対する疲労限度の比として表される疲労限度比が0.9以上のTi−12Cr合金であることを特徴とする
本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法は、上述したβ型強化チタン合金の製造方法であって、少なくとも以下に示す工程を備えることを特徴とする。
工程A:β型チタン合金を冷間加工により減面率25%〜85%で減面処理する。
工程B:工程Aを経たβ型チタン合金を、高周波誘導加熱法により以下の条件式(1)又は条件式(2)を満足する温度Tまで100℃/s以上の昇温速度で加熱処理する。

工程C:工程Bを経たβ型チタン合金を、100℃/s以上の冷却速度で急冷処理する。
本件発明に係るβ型強化チタン合金及びその製造方法によれば、生体適合性に優れ、引張強度及び疲労強度といった機械的特性の向上を効果的に図ることが出来る。
実施例1及び比較例1,2に係る試料の金属組織写真を示す。 実施例1及び比較例1,2に係る試料の引張試験結果を示す。 実施例1及び比較例1,2で用いる引張試験片形状を示す。 実施例1及び比較例1,2に係る試料の疲労試験結果を示す。 実施例1及び比較例1,2に係る試料の疲労限度比と結晶粒径の関係を示す。 実施例1及び比較例1,2に係る試料のヤング率の測定結果を示す。 本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法の条件を決定すべく、種々の試験条件で処理を行い、得られた金属組織の一例を示す。 本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法の条件を決定すべく、種々の試験条件で処理を行い、得られた再結晶の状況に及ぼす減面率と加熱温度の関係を示す。 本件発明のβ型強化チタン合金の製造方法の条件を決定すべく、種々の試験条件で処理を行い、得られた再結晶部分の結晶粒径と加熱温度の関係を示す。 本件発明のβ型強化チタン合金の製造方法における減面率と加熱温度の条件範囲を示す。
本件発明に係るβ型強化チタン合金: 本件発明に係るβ型強化チタン合金は、引張強度に対する疲労限度の比として表される疲労限度比が0.9以上のTi−12Cr合金であることを特徴とする。本件発明に係るβ型強化チタン合金は、当該疲労限度比が0.9以上という降伏応力にほぼ匹敵する疲労限度を有する極めて優れた耐疲労特性を有するものである。よって、本件発明に係るβ型強化チタン合金は、高負荷繰返し応力下での使用が想定される構造用材料や医療用材料として用いたとしても疲労破壊が起き難い。
また、本件発明に係るβ型強化チタン合金は、結晶粒径が60μm以下であることが好ましい。本件発明に係るβ型強化チタン合金は、結晶粒径が60μm以下に微細化されていることで、通常相反する機械的強度と靱性を同時に向上させ、引張強度と疲労強度が極めて優れたものとなる。ここで、当該結晶粒径が60μmを超えると、これら特性の低下を招くため好ましくない。
また、本件発明に係るβ型強化チタン合金は、疲労限度が800MPa以上であることが好ましい。具体的には、本件発明に係るβ型強化チタン合金は、疲労試験における10回片振り引張疲労限度が800MPa以上となる。β型チタン合金は、曲げ疲労試験における10回片振り引張疲労限度が800MPa以上であることで、高負荷繰返し応力下で用いたとしても優れた耐久性を発揮出来る。そのため、本件発明に係るβ型強化チタン合金によれば、高荷重化や高トルク化等の過酷な使用条件においても問題なく用いることが出来る。ここで、当該疲労限度が800MPa未満の場合、引張強度と疲労特性とが高いレベルで要求される分野での使用が困難となる。
本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法: 本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法は、β型強化チタン合金の製造方法であって、少なくとも以下に示す工程Aから工程Cの各工程を備えることを特徴とする。
工程A:β型チタン合金を冷間加工により減面率25%〜85%で減面処理する。
工程B:工程Aを経たβ型チタン合金を、高周波誘導加熱法により以下の条件式(1)又は条件式(2)を満足する温度Tまで100℃/s以上の昇温速度で加熱処理する。

工程C:工程Bを経たβ型チタン合金を、100℃/s以上の冷却速度で急冷処理する。
本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法は、β型チタン合金の高強度化を更に増進するための手段として、熱処理前に冷間加工を行なって結晶内部に転位を導入し、次いで急速加熱し、その後急速冷却することにより結晶粒を微細化する。以下に、本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法が備える工程A〜Cについて説明する。
<工程A>
本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法は、冷間加工を行うことを必須条件とし、時効処理を行わない。本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法では、冷間加工を施すことによって再結晶温度を低くして、後の加熱処理で新たな結晶を発現しやすくすることが出来る。その結果、本工程を経ることで、均一で且つ微細な結晶組織を形成して、β型チタン合金の引張強度及び疲労強度の向上を図ることが可能となる。
本工程では、減面率25%〜85%の冷間加工を行うことが好ましい。本工程に示す条件で処理したβ型チタン合金は、低温で再結晶が終了することにより、後の加熱処理での加熱温度を低く設定することが出来るため、結晶の粒成長が抑制されて結晶組織の均一微細化に好ましい影響を及ぼすものと考えられる。ここで、「減面率」とは、圧延や伸線加工における加工率を表すものであり、例えば減面加工前の線材の断面積をA、減面加工後の線材の断面積をBとすると(A−B)/A×100(%)で表わされる。当該減面率が25%未満では、転位密度が少ないために後の加熱処理で新たな結晶が発現し難く、再結晶温度の上昇を招いてしまう。その結果、後の加熱処理では、加熱温度を高く設定しなければならないため、結晶粒の粗大化を招き、十分な引張強度が得られなくなる。また、当該減面率が82%を超えると、加工後の表面に割れが生じる等して疲労強度を十分に向上することが出来なくなる。
<工程B>
本工程では、先の工程Aを経たβ型チタン合金を高周波誘導加熱法により急速加熱することで、チタン合金のβ相が再結晶化された後の結晶の粒成長を抑制して結晶粒を非常に小さいものとし、結晶組織の均一微細化を図ることが出来る。ここで、高周波誘導加熱法とは、被処理品の周りにコイルを配置し、当該コイルに高周波電流を流すことで当該コイルに近い被処理品の表面に誘導電流が生じ、ジュール熱で加熱するものである。この高周波誘導加熱法は、公知の急速加熱手段であり、被処理品の表面を秒単位の短時間で1000℃を超える温度まで昇温させることが可能である。従って、本工程によれば、β型チタン合金を高周波誘導加熱法により急速加熱することで、引張強度及び疲労強度を共に高めることが出来る。
また、本工程では、先の工程Aを経たβ型チタン合金を、減面率が25%以上50%未満の場合には以下に示す条件式(1)を満たす加熱温度で急速加熱し、減面率が50%以上85%以下の場合には以下に示す条件式(2)を満たす加熱温度で急速加熱する。
ここで、βトランザス温度(Tβ)とは、チタンの結晶構造が、β変態点温度以下の低温域では稠密六方晶(hcp)構造を持ち、β変態点温度以上の高温域では体心立方晶(bcc)構造へと同素変態するときの変態温度である。当該βトランザス温度は、種々の合金元素がチタン合金に添加されることで変化する。本工程では、先の工程Aを経たβ型チタン合金を、以下に示す条件式(3)又は(4)を満たす温度まで加熱することで全面を再結晶組織にすることが可能となり、結晶粒径を全面的に微細化することが出来る。
また、本工程において、β型チタン合金を高周波誘導加熱法により急速加熱する際に、100℃/s以上の昇温速度で加熱処理することが好ましい。本工程で処理したβ型チタン合金は、結晶の粒成長を効果的に抑制することが出来る。ここで、当該昇温速度が100℃/s未満の場合には、β相の粒成長が過剰となり結晶粒の粗大化を招いてしまう。
<工程C>
本工程は、図1,2に示す如く、上述した工程Bを経たβ型チタン合金を、100℃/s以上の速度で急速冷却することが好ましい。工程Bで熱処理したβ型チタン合金の結晶粒の粗大化を防ぐことができ、引張強度の向上のみならず延性も改善して疲労強度も向上するからである。ここで、当該冷却速度が100℃/s未満の場合には、結晶粒の粗大化を招く他、Cr、Fe、Mn、Nb、Mo、Vを含む準安定β型合金においてはω相(遷移相)が析出して著しく脆くなるおそれがある。
また、本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法において、用いるβ型チタン合金は、Ti−12Cr合金であることが好ましい。
β型チタン合金は、α+β型チタン合金よりも多量のβ安定化元素を添加して、高温領域で存在するβ相を常温まで完全に残留させた単相合金である。本件発明に係るβ型強化チタン合金は、Ti(チタン)を基とし、合金元素としてβ安定化元素であるCr(クロム)を含めたTi−12Cr合金を用いることで、引張強度と疲労強度とを効果的に向上させることが出来る。このTi−12Cr合金は、高価な合金元素を多く含まないことからコストメリットも大きい。
以下、本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。
実施例1では、β型チタン合金Ti−12Cr(Cr:11.9質量%、C:0.01質量%、O:0.11質量%、N:0.004質量%、Ti:Bal.)からなる、1000℃(溶体化温度域)で熱間鍛造された直径9mmの丸棒をセンタレス研削により直径7mmまで加工を行い、その後この丸棒を直径5mmになるまで冷間加工を施して減面率49%の試料を作製した。そして、当該試料を高周波誘導加熱法(200kHz)により1秒で934℃まで昇温させた後、直ちに水を噴射して約400℃/sで急速冷却を行い、引張試験及び疲労試験を行った。
[比較例1]
比較例1では、β型チタン合金Ti−12Cr(Cr:11.9質量%、C:0.01質量%、O:0.11質量%、N:0.004質量%、Ti:Bal.)からなる、1000℃(溶体化温度域)で熱間鍛造された直径9mmの丸棒をセンタレス研削により直径7mmまで加工を行い、その後この丸棒を直径5mmになるまで冷間加工を施して減面率49%の試料を作製した。そして、当該試料を高周波誘導加熱法(200kHz)により1秒で1250℃まで昇温させ、5.5秒間の保定後水を噴射して約400℃/sで急速冷却を行い、引張試験及び疲労試験を行った。
[比較例2]
比較例2では、β型チタン合金Ti−12Cr(Cr:11.9質量%、C:0.01質量%、O:0.11質量%、N:0.004質量%、Ti:Bal.)からなる、1000℃(溶体化温度域)で熱間鍛造された直径9mmの丸棒をセンタレス研削により直径7mmまで加工を行い試料を作製した。そして、当該試料を真空炉にて730℃で1時間の加熱を行った後に水冷却を行い、引張試験及び疲労試験を行った。
[実施例と比較例との対比]
以下に、本件発明の実施例及び比較例とを対比しつつ、本件発明を詳細に説明する。
図1には、実施例1及び比較例1,2に係る試料の金属組織写真を示す。図1より、試料の結晶粒径(D)は、実施例1の試料が14μm、比較例1の試料が177μm、比較例2の試料が92μmであった。この結果より、実施例1に係る試料は、比較例1,2に係る試料と比較して結晶粒の微細化が図られたものであることが分かる。
図2には、実施例1及び比較例1,2に係る試料の引張試験結果を示す。引張試験片は、機械加工を行った後に研磨紙及びバフにより鏡面仕上げを行い、図3に示す試験片形状(平行部の直径:2.3mm、標点間距離:8.4mm)に作製した。引張試験は、室温の大気中にて、インストロン型引張試験機を用い、クロスヘッド速度8.33×10−6m/sで行った。図2より、試料の引張強度(σ)は、実施例1の試料が約950MPa、比較例1の試料が約910MPa、比較例2の試料が約940MPaであった。この結果より、実施例1に係る試料は、比較例1,2に係る試料と比較して、若干ではあるが引張強度に優れたものであることが分かる。
図4には、実施例1及び比較例1,2に係る試料の疲労試験結果を示す。疲労試験片は、上述の引張試験片と同様の形状とした(図3を参照のこと。)。疲労試験は、片振り引張疲労試験であり、室温の大気中にて、油圧式疲労試験機を用いて応力比0.1、周波数10Hzで行った。図4より、片振り引張疲労限度(σ)は、実施例1の試料が約930MPa、比較例1の試料が約650MPa、比較例2の試料が約800MPaであった。この結果から、実施例1に係る試料は、比較例1及び2に係る試料と比較して、疲労強度に優れたものであることが分かる。
図5には、実施例1及び比較例1,2に係る試料の疲労限度比と結晶粒径との関係を示す。図5より、結晶粒径が小さくなるとともに疲労限度比(σ/σ)が増加しており、実施例1の試料に関しては疲労限度比が0.98と非常に高い値であった。そして、図5に示す結果から、疲労限度比と結晶粒径(D)の関係は、以下の条件式(5)で近似できることが分かる。この条件式(5)によれば、疲労限度比を0.90以上とするためには、結晶粒径を60μm以下にすることが必要となる。
図6には、実施例1及び比較例2に係る試料のヤング率の測定結果を示す。ヤング率の測定は、φ3mm×40mmまで研削を行った試験片に対して、自由共振法により行った。図6より、ヤング率は、実施例1の試料が84GPa、比較例2の試料が90GPaであり、実施例1の試料と比較例2の試料ともに90GPa以下の低い値で大差はなかった。β型チタン合金では、時効処理を施せばα相などが析出し、高強度化を図ることが可能であるが、ヤング率も増加する。しかし、本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法では時効処理を行わないため、この製法により得られたβ型強化チタン合金は、母相はほぼβ相となり、これによって90GPa以下の低いヤング率を維持できることが分かる。
以上の実施例1と比較例1,2とを対比した結果より、本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法によって得られたβ型強化チタン合金は、低いヤング率を維持しつつも、引張強度及び疲労強度の向上が図られたものであることが分かる。
<β型強化チタン合金における減面率と加熱温度の条件範囲についての確認>
以上をふまえ、以下に、本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法における、減面率及び加熱温度の条件範囲の確認を行う。具体的には、本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法における減面率及び加熱温度の条件を変更したときに観察したβ型チタン合金の再結晶組織に基づき、引張強度及び疲労強度の変化の確認を行う。
表1に、種々の減面率及び加熱条件で処理を行ったβ型Ti−12Cr合金の再結晶判定及び再結晶部分の結晶粒径を示す。再結晶の判定基準としては、再結晶している領域が試験片断面の7割以上占めるものは○、3割以上7割未満であるものは△、3割未満のものは×とした。また、再結晶部分の結晶粒径は、JIS G0551の比較法により得られた粒度番号(G)から以下の条件式(6),(7)を用いて算出した。
図7には、減面率49%で冷間加工を行った試験片、表1の代表例として試料番号13、及び8の光学顕微鏡写真を示す。図7より、減面率49%での冷間加工後では変形組織が発達しているが、試料番号13では全面が微細な再結晶組織となっている。一方、試料番号8は一部微細な再結晶粒が存在しているが、多くの部分で未再結晶組織となっていることが分かる。
図8には、表1の各減面率(R)と、加熱温度(T)とβトランザス温度(Tβ)との差(T−Tβ)での再結晶判定結果をグラフ化したものを示す。ここで、Ti−12Cr合金のβトランザス温度(Tβ)は680℃である。図8をみるに、いずれの減面率においても加熱温度の上昇に伴い再結晶が進行している傾向がみられる。また、図8より、減面率が増加すると、7割以上の再結晶領域を示す下限温度が低下していることが分かる。この結果から、全面再結晶組織を得るためには、以下に示す条件式(3)及び(4)を満たす必要があることが分かる。
図9には、表1の再結晶部分の結晶粒径(D)と、加熱温度(T)とβトランザス温度(Tβ)との差(T−Tβ)との関係を示す。図9より、加熱温度の増加に伴い、結晶粒径が粗大化する傾向となり、本件発明に係るβ型強化チタン合金を得るための結晶粒径60μm以下となるためには、加熱温度とβトランザス温度との差を450℃以下とする必要があることが分かる。
図10には、図8及び9に示す結果に基づき、好ましいとされる加熱温度(T)とβトランザス温度(Tβ)との差(T−Tβ)と、好ましいとされる減面率(R)との関係を斜線部で示した領域により表す。図10に示す結果より、本件発明に係るβ型強化チタン合金の工程Aにおける減面率(R)と工程Bにおける加熱温度(T)の条件は、以下の条件式(1)及び(2)で表すことが出来る。
また、本件発明に係るβ型強化チタン合金の工程Cにおける急冷処理に関し、表1の試料番号11では、急冷の直前に0.8秒の放冷時間を設けているが、再結晶判定が「○」となっている。この結果より、本件発明に係るβ型強化チタン合金の工程Cでは、結晶粒の粗大化を招かない短時間であれば放冷時間を設けることが出来る。
本件発明に係るβ型強化チタン合金の製造方法によれば、生体適合性に優れ、引張強度及び疲労強度の向上が図られたβ型チタン合金を得ることが出来るため、高負荷繰返し応力下での使用が想定される構造用材料や医療用材料として好適に用いることが出来る。よって、本件発明に係るβ型強化チタン合金は、航空機、自動車エンジン部品、自動車ギア、ゴルフヘッド、眼鏡フレーム等の引張強度と疲労強度が求められる材料に好適に用いることが出来る。

Claims (4)

  1. 引張強度に対する疲労限度の比として表される疲労限度比が0.9以上のTi−12Cr合金であることを特徴とするβ型強化チタン合金。
  2. 平均結晶粒径が60μm以下である請求項1に記載のβ型強化チタン合金。
  3. 疲労限度が850MPa以上である請求項1又は請求項2に記載のβ型強化チタン合金。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のβ型強化チタン合金の製造方法であって、少なくとも以下に示す工程を備えることを特徴とする。
    工程A:β型チタン合金を冷間加工により減面率25%〜85%で減面処理する。
    工程B:工程Aを経たβ型チタン合金を、高周波誘導加熱法により以下の条件式(1)又は条件式(2)を満足する温度Tまで100℃/s以上の昇温速度で加熱処理する。

    工程C:工程Bを経たβ型チタン合金を、100℃/s以上の冷却速度で急冷処理する。
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