以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に本発明の車載燃料電池システムが適用される自動車用の車載燃料電池システム10の全体構成を示す。本実施形態の自動車としては、バスやトラックの大型自動車が用いられる。
車載燃料電池システム10は、燃料電池ユニット20A、20B、制御装置30、およびアクセルセンサ40を備える。
燃料電池ユニット20Aは、燃料電池21a、DC−DCコンバータ22a、23a、
バッテリ24a、インバータ25a、およびモータジェネレータ26aを備える。
燃料電池21aは、複数の燃料電池セルを直列に接続してなる固体高分子型燃料電池セルスタックである。複数の燃料電池セルは、それぞれ、燃料ガスおよび酸化剤ガスの電気化学反応により直流電力を出力する。
具体的には、複数の燃料電池セルでは、燃料電池セル毎に、アノード極において(1)
式の酸化反応が生じ、カソード極において(2)式の還元反応が生じる。燃料電池セル全体としては(3)式の起電反応が生じる。
H2→2H++2e-…(1)(1/2)O2+2H++2e-→H2O…(2)
H2+(1/2)O2→H2O…(3)
なお、本実施形態では、燃料ガスとしては、例えば水素ガスが用いられる。酸化剤ガスとしては、酸素をカソード極に供給するために例えば、空気が用いられる。
DC−DCコンバータ22aは、燃料電池21aから出力される直流電力を昇圧して出力する。DC−DCコンバータ23aは、インバータ25aから出力される直流電力とDC−DCコンバータ22aから出力される直流電力とを降圧してバッテリ24aに充電する。DC−DCコンバータ23aは、インバータ25aおよびDC−DCコンバータ22aから出力される直流電力に基づいてバッテリ24aに充電する充電量を調整する充電量調整部を構成する。DC−DCコンバータ23aは、バッテリ24aから出力される直流電力を昇圧してインバータ25aに出力する。つまり、DC−DCコンバータ23aは、バッテリ24aからモータジェネレータ26aに放電される放電量を調整する放電量調整部を構成する。
バッテリ24aは、燃料電池21aから出力される余剰の直流電力とモータジェネレータ26aが回収した回生電力とを貯える貯蔵源として機能するとともに、当該自動車の加速や減速時のエネルギーバッファとして機能する二次電池である。
インバータ25aは、DC−DCコンバータ22a、23aからそれぞれ出力される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ26aに出力する。インバータ25aは、DC−DCコンバータ22a、23aからモータジェネレータ26aに出力される電力を調整する電力量整部を構成する。インバータ25aは、モータジェネレータ26aで回収した回生電力を交流電力から直流電力に変換して出力する。モータジェネレータ26aは、駆動輪27を交流電動モータとして駆動するとともに、駆動輪27の制動により回生電力を回収する交流発電機を構成する。
燃料電池ユニット20Bは、燃料電池ユニット20Aと同様、燃料電池21b、DC−DCコンバータ22b、23b、バッテリ24b、インバータ25b、およびモータジェネレータ26bを備える。
なお、燃料電池21bは燃料電池21aに対応し、DC−DCコンバータ22bはDC−DCコンバータ22aに対応し、DC−DCコンバータ23bはDC−DCコンバータ23aに対応し、バッテリ24bはバッテリ24aに対応し、インバータ25bはインバータ25aに対応し、モータジェネレータ26bはモータジェネレータ26aに対応する。このため、インバータ25bは、DC−DCコンバータ22b、23bからモータジェネレータ26bに出力される電力を調整する電力量調整部を構成する。DC−DCコンバータ23bは、インバータ25bおよびDC−DCコンバータ22bから出力される直流電力に基づいてバッテリ24bに充電する充放電量を調整する充電量調整部を構成する。DC−DCコンバータ23bは、バッテリ24bからモータジェネレータ26bに放電される放電量を調整する放電量調整部を構成する。
制御装置30は、マイクロコンピュータやメモリを備える周知の電子制御装置である。
制御装置30は、コンピュータプログラムにしたがって、制御処理を実行する。制御装置30は、制御処理の実行に伴って燃料電池21a、21bの出力電力を制御する。
アクセルセンサ40は、アクセルペダル50の踏み込み量をアクセル開度として検出する。アクセル開度は、後述するシステム要求出力Waを算出するために用いられる。アクセルペダル50は、運転者が燃料電池21a、21bの出力電力を制御するために運転者の足により踏み込まれる操作部である。
次に、本実施形態の制御装置30の制御処理の説明に先だって、燃料電池21a、21bの特性について説明する。
燃料電池21a、21bは、発電の負荷状態に応じて燃料電池セルの毎に、出力電極間(アノード極およびカソード極の間)の電圧が変動し、その過程において、触媒層にてPt(プラチナ)の溶出、析出を繰り返してPtが凝集する。このため、発電に寄与するPt表面積が低下して出力低下を招くことになる。
ここで、触媒層は、燃料電池21a、21bにおいて発電反応部であるアノード極およびカソード極を構成する。触媒層は、カーボン粒子上に触媒であるPt粒子が担持してあり、その外側を電解質であるアイオノマで覆われている。燃料電池セルの出力電極間電圧が、おおよそ0.7V以下の低い電位状態では、Pt粒子は安定した状態で存在するが、燃料電池セルの出力電極間電圧がおおよそ0.8V以上の高い電位状態になると、Pt粒子からPtイオンがアイオノマや電解質膜中に溶出する。
ただし、0.8V以上の高い電位ではPt粒子の表面上では酸素と反応し酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜が形成されるとPt溶出も抑制される。このように電位が高いほどPtは溶出しやすいが酸化皮膜も形成されやすい。したがって、低い電位から急激に高い電位に変化したときほどPt溶出がされやすいが、時間が経過すれば酸化皮膜が形成されるため、Pt溶出が抑制される。
特に、燃料電池21a、21bにおいて、高負荷と低負荷とを繰り返す負荷変動時において、低負荷時の燃料電池セルの出力電極間電圧が、開放電圧(約1.0V)に近いほど触媒層が劣化しやすい。
図2に、アクセルのON/OFFを繰り返す耐久サイクル数と燃料電池セルの最大出力との関係を示す。アクセルONとは、燃料電池セルが高負荷になり、燃料電池セルの出力電圧が開放電圧から低下した状態である。アクセルOFFとは、燃料電池セルが低負荷になり、燃料電池セルの出力電圧が上昇して開放電圧に近づいた状態である。
グラフQ1は、アクセルON時の燃料電池セルの出力電圧を0.7Vとし、アクセルOFF時の燃料電池セルの出力電圧を0.85Vとしたときの燃料電池セルの最大出力の変化を示す。グラフQ2は、アクセルON時の燃料電池セルの出力電圧を0.7Vとし、アクセルOFF時の燃料電池セルの出力電圧を0.9Vとしたときの燃料電池セルの最大出力の変化を示す。グラフQ3は、アクセルON時の燃料電池セルの出力電圧を0.7Vとし、アクセルOFF時の燃料電池セルの出力電圧を1.0Vとしたときの燃料電池セルの最大出力の変化を示す。
このようにアクセルOFF時の燃料電池セルの出力電圧が開放電圧に近づくほど、少ない耐久サイクル数で燃料電池セルの最大出力が低下する。つまり、アクセルOFF時の燃料電池セルの出力電圧が開放電圧に近づくほど、燃料電池セル(燃料電池21a、21b)の耐久性は大きく低下する。
そこで、本実施形態では、制御装置30は、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際には、燃料電池セル毎に燃料電池セルの出力電極間電圧が所定電圧範囲Va(具体的には、0.7〜0.8V付近)に入る使用頻度を下げる。つまり、燃料電池21a、21bを構成する燃料電池セルの個数をNとし、(Va×N)から決まる電圧範囲を回避電圧範囲Vnとすると、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際には、燃料電池21a、21bの出力電圧が燃料電池毎に回避電圧範囲Vn内に入る使用頻度を下げることになる。換言すれば、制御装置30は、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際に、燃料電池21a、21bの出力電力が燃料電池毎に避けるべき電力範囲(以下、回避電力範囲Paという)内に入る使用頻度を下げることになる。
ここで、所定電圧範囲Vaは、燃料電池セルの出力電極間電圧の変動により触媒層が低下しやすい燃料電池セルの出力電極間電圧の範囲である。回避電圧範囲Vn(=Va×N)は、燃料電池毎に設定される出力電極間電圧の範囲であって、触媒層の低下により耐久性が低下しやすい燃料電池21a、21bの出力電極間電圧の範囲である。すなわち、回避電圧範囲Vnは、燃料電池21a、21bが劣化しやすい電圧範囲である。回避電力範囲Paは、燃料電池21a(或いは、21b)において、触媒層の低下により耐久性が低下しやすい電力範囲であって、回避電圧範囲Vnに対応関係にある電力範囲である。
以下、制御装置30の制御処理について図3、図4を参照して説明する。制御装置30は、図4のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図3は、後述するシステム要求出力Waと燃料電池21a、21bの出力(kW)との関係を示すグラフである。そして、図4は、制御装置30の制御処理を示すフローチャートである。
まず、ステップ100において、アクセルセンサ40によりアクセル開度を検出する。
アクセル開度は、運転者が足で踏み込むアクセルペダル50の踏み込み量である。踏み込み量が大きくなるほどアクセル開度が大きくなる。
次に、ステップ110において、アクセル開度に基づいて、自動車のモータジェネレータ26a、26bおよび補機に必要となる電力をシステム要求出力Waとして算出する。システム要求出力Waは、アクセル開度が大きくなるほど、大きくなるように設定されている。補機に必要な電力とは、車両用空調装置、変速機、車輪制動装置、操舵装置、照明装置、および音響装置等の各種の車載装置に必要となる電力のことである。
次に、ステップ120において、システム要求出力Waに基づいて、燃料電池21a、
21bがそれぞれ出力するべき電力(以下、分配出力Ws1、Ws2という)を次のように決める。
(1)Wa<(2×Wn1)であるとき、分配出力Ws1を(Wa/2)とし、分配出力Ws2を(Wa/2)とする。ここで、Wn1は、燃料電池21a、21bの出力電力として避けるべき電力範囲Paのうち最小値である。Wn2は、電力範囲Paのうち最大値である。
(2)(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid)であるとき、分配出力Ws1をアイドル出力Widとし、分配出力Ws2を(Wa−Wid)とする。
ここで、アイドル出力Widは、予め決められた高電位回避電圧に対応関係にある燃料電池21a、21bの出力電力である。高電位回避電圧は、燃料電池21a、21bの出力電圧が開放電圧よりも低く、かつ回避電圧範囲Vnよりも高くなるように設定されている電圧である。
(3)(Wnlim+Wid)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときには、分配出力Ws1を(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2をWnlimとする。ここで、Wnlimは、燃料電池21a(或いは、21b)の出力電力の最大値である。
(4)(Wnlim+Wn1)<Waであるときには、分配出力Ws1を(Wa/2)
とし、分配出力Ws2を(Wa/2)とする。
このように、ステップ120において、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を算出する。分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する(ステップ130)。
これに伴い、燃料電池21aでは、その出力電力を分配出力Ws1に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21aの出力電力を分配出力Ws1に近づけることができる。燃料電池21bでは、その出力電力を分配出力Ws2に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21bの出力電力を分配出力Ws2に近づけることができる。これにより、運転者によるアクセルペダル50への踏み込み量に応じて、燃料電池21a、21bの出力電力を制御することができる。
次に、本実施形態の燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2の具体例について図5を参照して説明する。
まず、時刻t0〜時刻t1の間では、Wa<(2×Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa/2)とし、分配出力Ws2=(Wa/2)とする。
次に、時刻t1〜時刻t2の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid)
であり、分配出力Ws1=Widとし、分配出力Ws2=(Wa−Wid)とする。
次の時刻t2〜時刻t3の間では、Wa<(2×Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa/2)とし、分配出力Ws2=(Wa/2)とする。
次の時刻t3〜時刻t4の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid)であり、分配出力Ws1=Widとし、分配出力Ws2=(Wa−Wid)とする。
次の時刻t4〜時刻t5の間では、(Wnlim+Wid)<Wa<(Wnlim+Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2=Wnlimとする。
次の時刻t5〜時刻t6の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid)であり、分配出力Ws1=Widとし、分配出力Ws2=(Wa−Wid)とする。
次の時刻t6〜時刻t7の間では、(Wnlim+Wid)<Wa<(Wnlim+Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2=Wnlimとする。
次の時刻t7〜時刻t8の間では、(Wnlim+Wn1)<Waであり、分配出力Ws1を(Wa/2)とし、分配出力Ws2を(Wa/2)とする。
次の時刻t8〜時刻t9の間では、(Wnlim+Wid)<Wa<(Wnlim+Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2=Wnlimとする。
次の時刻t9〜時刻t10の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid)
であり、分配出力Ws1=Widとし、分配出力Ws2=(Wa−Wid)とする。
次の時刻t10以降では、Wa<(2×Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa/2)とし、分配出力Ws2=(Wa/2)とする。
以上に説明した本実施形態によれば、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する車載燃料電池システム10であって、制御装置30は、アクセルペダル50の操作量を検出するアクセルセンサ40の出力信号に基づいて、燃料電池21a、21bから出力するべき電力の総量をシステム要求出力Waとして算出する。制御装置30は、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときに、分配出力Ws2が回避電力範囲Paよりも高く、かつ分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも低くなるように燃料電池毎の分配出力Ws1、Ws2を算出する。制御装置30は、燃料電池21a、21bの出力電力を燃料電池毎の分配出力Ws1、Ws2に近づけるように燃料電池21a、21bを独立して制御する。
このため、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときに、燃料電池21a、21bの出力電力は、燃料電池毎に回避すべき電力範囲Pa以外の電力になる。したがって、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることが避けることができる範囲は、図3中の出力範囲Eg2になる。
これに対して、図6に示すように、車載燃料電池システムの総発電量が変化しても燃料電池21a、21bの発電量Wg1、Wg2が同一値になる従来の車載燃料電池システムでは、図3中の出力範囲Eg1内にて、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることとなる。
したがって、燃料電池21a、21bの出力電力が電力範囲Pa以外の電力になるシステム要求出力Waの範囲を拡げることができるので、燃料電池21a、21bの耐久性を向上することができる。
ここで、上記特許文献1では、制御装置は、道路環境に応じて燃料電池の出力電圧を制御するため、燃料電池の耐久性を向上することができるものの、例えば、燃料電池から走行用電動機に出力される電力がアクセルペダルの踏み込み量に追従しなくなり、自動車の加速時に燃料電池から走行用電動機に供給される電力が不足してドライビリティ(運転性)が低下することが懸念される。
これに対して、本実施形態では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときには、分配出力Ws2が回避電力範囲Paよりも大きくなり、かつ分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも小さくなっている。このため、燃料電池21bの出力電力が回避電力範囲Paよりも大きくなり、かつ燃料電池21aの出力電力が回避電力範囲Paよりも小さくなっている。これにより、アクセルペダル50の踏み込み量に追従して燃料電池21a、21bから十分な電力をモータジェネレータ26a、26bに供給することができる。よって、自動車のドライビリティの低下を抑えることができる。
以上により、車載燃料電池システムにおいて、自動車のドライビリティの低下を抑えつつ、燃料電池21a、21bの耐久性を向上することができる。
本実施形態では、制御装置30は、上述の如く、燃料電池21a、21bの出力電力を独立して制御するので、アクセルペダル50の踏み込み量に追従して燃料電池21a、21bから十分な電力をモータジェネレータ26a、26bに供給することができる。このため、燃料電池21a、21bがモータジェネレータ26a、26bに電力を供給する際に、燃料電池21a、21bを補助するためのバッテリ24a、24bの容量を小さくすることができる。これに加えて、バッテリ24a、24bの使用頻度が抑えられるので、バッテリ24a、24bの耐久性の低下を抑えることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、上記第1実施形態において、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2が回避電力範囲Paを跨ぐときに、ヒステリシスを有するように分配出力Ws1、Ws2を算出する例について図7を参照して説明する。
図7は、システム要求出力Waと燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2との関係を示すグラフである。
まず、システム要求出力Waが(2×Wn1)よりも低い値から(2×Wn1)よりも高い値に変化するときに、燃料電池21bの分配出力Ws2が電力範囲Paの最小値Wn1よりも低い値から電力範囲Paの最大出力Wn2よりも高い値に変化する。この際に、燃料電池21bの分配出力Ws2は矢印h1の如くステップ状に上昇する。これに伴い、燃料電池21aの分配出力Ws1は矢印h2の如くステップ状に低下する。
次に、システム要求出力Waが(Wnlim+Wn1)よりも低い値から(Wnlim+Wn1)よりも高い値に変化するときに、燃料電池21aの分配出力Ws1が回避電力範囲Paの最小出力Wn1よりも低い値から回避電力範囲Paの最大出力Wn2よりも高い値に変化する。この際に、燃料電池21aの分配出力Ws1は矢印h3の如くステップ状に上昇する。これに伴い、燃料電池21bの分配出力Ws2は矢印h4の如くステップ状に低下する。
次に、システム要求出力Waが(Wnlim+Wn1)よりも高い値から(Wnlim+Wn1)も低い値に変化するときに、燃料電池21aの分配出力Ws1が回避電力範囲Paの最大出力Wn2よりも高い値から回避電力範囲Paの最小出力Wn1よりも低い値に変化する。この際に、燃料電池21aの分配出力Ws1は、矢印h7の如く、ランプ状に低下する。これに伴い、燃料電池21bの分配出力Ws2は、矢印h8の如く、ランプ状に上昇する。
ここで、燃料電池21aの分配出力Ws1はランプ状に低下する際には、燃料電池21aの出力電圧の時間当たりの変化量が0.1(V/sec)以下になるように燃料電池毎の分配出力Ws1が算出されている。
次に、システム要求出力Waが(2×Wn1)よりも高い値から(2×Wn1)よりも低い値に変化するときに、燃料電池21bの分配出力Ws2が回避電力範囲Paの最大値Wn2よりも高い値から回避電力範囲Paの最小出力Wn1よりも低い値に変化する。この際に、燃料電池21bの分配出力Ws2は矢印h5の如くランプ状に低下する。これに伴い、燃料電池21aの分配出力Ws1は矢印h6の如く一定になる。
ここで、燃料電池21bの分配出力Ws2はランプ状に低下する際には、燃料電池21bの出力電圧の時間当たりの変化量が0.1(V/sec)以下になるように燃料電池毎の分配出力Ws2が算出されている。
次に、本実施形態の燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2の具体例について図8、図9を参照して説明する。図8は、本実施形態において時間に対する分配出力Ws1、Ws2の変化を示すタイミングチャートである。図9は、図8中B部分の拡大図である。以下、本実施形態と上第1記実施形態との間の相違点について説明する。
図8中A付近において、時刻t2〜時刻t2aの間で、システム要求出力Waが(2×Wn1)よりも高い値から(2×Wn1)よりも低い値に変化するときに、燃料電池21bの分配出力Ws2が回避電力範囲Paの最大出力Wn2よりも高い値から回避電力範囲Paの最小出力Wn1よりも低い値に変化する。この際に、燃料電池21bの分配出力Ws2はランプ状に低下する。これに伴い、燃料電池21aの分配出力Ws1は一定値になる。
図9中の時刻t8〜時刻t9の間で、システム要求出力Waが(Wnlim+Wn1)
よりも高い値から(Wnlim+Wn1)よりも低い値に変化するときに、燃料電池21aの分配出力Ws1が回避電力範囲Paの最大出力Wn2よりも高い値から回避電力範囲Paの最小出力Wn1よりも低い値に変化する。この際に、燃料電池21aの分配出力Ws1はランプ状に低下する。これに伴い、燃料電池21bの分配出力Ws2はランプ状に上昇する。
図9中の時刻t10以降で、システム要求出力Waが(2×Wn1)よりも高い値から(2×Wn1)よりも低い値に変化するときに、燃料電池21bの分配出力Ws2が回避電力範囲Paの最大出力Wn2よりも高い値から回避電力範囲Paの最小出力Wn1よりも低い値に変化する。この際に、燃料電池21bの分配出力Ws2はランプ状に低下する。これに伴い、燃料電池21aの分配出力Ws1は一定になる。
以上説明した本実施形態では、制御装置30は、ヒステリシスを有するように燃料電池毎の分配出力Sw1、Sw2を算出する。すなわち、燃料電池21a、21bのうち一方の燃料電池の分配出力を回避電力範囲Paよりも低い値から回避電力範囲Paよりも高い値に変化させる場合には、前記一方の燃料電池の分配出力を時間軸に対してステップ状に変化させる。一方、前記一方の燃料電池の分配出力を回避電力範囲Paよりも高い値から回避電力範囲Paよりも低い値に変化させる場合には、前記分配出力を時間軸に対してランプ状に変化させる。したがって、前記一方の燃料電池の分配出力を時間軸に対して緩やかに上昇させることができる。具体的には、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2はランプ状に低下する際には、燃料電池21a、21bの出力電圧の時間当たりの変化量が0.1(V/sec)以下になる。このため、前記一方の燃料電池の分配出力を時間軸に対してステップ状に上昇させる場合に比べて、前記一方の燃料電池の触媒層においてPtイオンを溶出することを抑制することができる。したがって、燃料電池21a、21bの耐久性の低下をより一層抑制することができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、燃料電池21bの分配出力Ws2が回避電力範囲Paよりも高く、かつ燃料電池21aの分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも低くなるように分配出力Ws1、Ws2を算出した例について説明したが、本実施形態では、次のように、分配出力Ws1、Ws2を算出する。
すなわち、本実施形態では、燃料電池21a、21bのうち分配出力が回避電力範囲Paよりも高くなるように算出される算出対象としての燃料電池と分配出力が回避電力範囲Paよりも低くなるように算出される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。
本実施形態と上記第1実施形態とでは制御装置30の制御処理が相違する。そこで、以下、本実施形態における制御装置30の制御処理について説明する。制御装置30は、図4に代わる図10のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図10のフローチャートは、図4のフローチャートにおいて、ステップ115、ステップ120Aを追加したものである。図10において、図4と同一の符号は、同一ステップを示し、その説明を省略する。
まず、ステップ115は、上述した算出対象を切り替えるべきか否かを判定する。すなわち、ステップ120、120Aのうちいずれのステップを実行するかを決めるためのステップである。例えば、ステップ115でステップ120を実行すべきであると判定するときには、YESと判定する。ステップ115でステップ120Aを実行すべきであると判定するときには、NOと判定する。
本実施形態では、ステップ115の実行毎に、ステップ120、120Aを交互に実行する。例えば、第1回目のステップ115でYESと判定してステップ120を実行し、第2回目のステップ115でNOと判定してステップ120Aを実行し、第3回目のステップ115でYESと判定してステップ120を実行し、第4回目のステップ115でNOと判定してステップ120Aを実行し、・・・・・第M(>4)回目のステップ115でYESと判定してステップ120を実行する。このため、ステップ115の実行毎に、ステップ120、ステップ120A、ステップ120、ステップ120A・・・の順に実行されるステップが切り替わることになる。
ここで、ステップ120は、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるとき、燃料電池21bの分配出力Ws2を回避電力範囲Paよりも高くし、かつ燃料電池21aの分配出力Ws1を回避電力範囲Paよりも低くするように分配出力Ws1、Ws2を算出するステップである。
ステップ120Aは、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるとき、燃料電池21aの分配出力Ws1を回避電力範囲Paよりも高くし、かつ燃料電池21bの分配出力Ws2を回避電力範囲Paよりも低くするように分配出力Ws1、Ws2を算出するステップである。
具体的には、ステップ120Aでは、次の(5)〜(8)のように分配出力Ws1、Ws2を算出する。
(5)Wa<(2×Wn1)であるとき、分配出力Ws1を(Wa/2)とし、分配出力Ws2を(Wa/2)とする。
(6)(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid)であるとき、分配出力Ws1を(Wa−Wid)とし、分配出力Ws2をアイドル出力Widとする。
(7)(Wnlim+Wid)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときには、分配出力Ws1をWnlimとし、分配出力Ws2を(Wa−Wnlim)とする。
(8)(Wnlim+Wn1)<Waであるときには、分配出力Ws1を(Wa/2)
とし、分配出力Ws2を(Wa/2)とする。
なお、ステップ120の処理は、上記第1実施形態のステップ120と同様であるので、説明を省略する。
その後、ステップ130では、上記ステップ120、120Aのうち一方のステップで算出される分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する。これに伴い、燃料電池21a、21bでは、それぞれの出力電力を分配出力Ws1、Ws2に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21a、21bの出力電力をそれぞれ分配出力Ws1、Ws2に近づけることができる。これにより、運転者によるアクセルペダル50への踏み込み量に追従して、燃料電池21a、21bからモータジェネレータ26a、26bにそれぞれ十分な出力電力を出力することができる。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置30は、期間Eg2にて燃料電池21a、
21bのうち、分配出力が回避電力範囲Paよりも高くなるように算出される算出対象としての燃料電池と、期間Eg2にて回避電力範囲Paよりも低くなるように算出される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。
このことにより、燃料電池21a、21bのうち、期間Eg2にて出力電力が回避電力範囲Paよりも高くなるように制御される制御対象としての燃料電池と、期間Eg2にて出力電力が回避電力範囲Paよりも低くなるように制御される制御対象としての燃料電池とが交互に切り替えられる。このため、燃料電池21a、21bの耐久性の低下を均等にすることができる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態では、制御装置30は、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際には、ある基準値よりもシステム要求出力Waが低くなったときに、燃料電池21a、21bにおいて少量の発電を継続する例について説明する。
本実施形態の車載燃料電池システム10と上記第1実施形態の車載燃料電池システム10とは、制御装置30の制御処理が相違するだけで、その他の構成は同一である。そこで、以下、本実施形態の制御装置30の制御処理について説明する。
本実施形態の制御装置30は、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際には、
ある基準値(高電位回避電圧X)よりもシステム要求出力Waが低くなっても、燃料電池21a、21bの負荷を零とせず、燃料電池21a、21bにおいて少量の発電を継続し、燃料電池セル毎に燃料電池セルの出力電極間電圧を開放電位よりも低い電圧に維持する。
以下、このように燃料電池21a、21bの出力電極間電圧(或いは、燃料電池セルの出力電極間電圧)を開放電圧Ka(或いは、開放電圧Kb)よりも低い高電位回避電圧に維持することを高電位回避という。燃料電池21a、21bの出力電極間電圧とは、燃料電池21a(或いは、21b)のプラス側出力電極およびマイナス側出力電極の間に発生する電圧のことである。
開放電圧Kaは、燃料電池21a(或いは、21b)のプラス側出力電極およびマイナス側出力電極の間を開放したときに、燃料電池21a(或いは、21b)のプラス側出力電極およびマイナス側出力電極の間に発生する電圧である。開放電圧Kbは、燃料電池セルのプラス側出力電極およびマイナス側出力電極の間を開放したときに、燃料電池セルのプラス側出力電極およびマイナス側出力電極の間に発生する電圧である。
ここで、高電位回避電圧が低いほど触媒層の劣化を抑制することができるので、燃料電池21a、21bの耐久性が向上するが、発電量が増えるため余剰電力量が増えてしまう。
そこで、本実施形態では、燃料電池21a、21bのうち一方の燃料電池21aの高電位回避電圧V1を他方の燃料電池21bの高電位回避電圧V2(<V1)よりも、高い値に設定して燃料電池21a、21bの出力電力を独立して制御する。
これら燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際には、燃料電池セル毎に燃料電池セルの出力電極間電圧が所定電圧範囲(0.7V〜0.8V)に入る使用頻度を下げる。所定電圧範囲(0.7V〜0.8V)は、燃料電池セルの出力電極間電圧の変動により触媒層が劣化しやすい燃料電池セルの出力電極間電圧の範囲である。
つまり、燃料電池21a、21bを構成する燃料電池セルの個数をNとし、(Va×N)から決まる電圧範囲を回避電圧範囲Vnとすると、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際には、燃料電池21a、21bの出力電圧が燃料電池毎に回避電圧範囲Vn内に入る使用頻度を下げることになる。換言すれば、制御装置30は、燃料電池21a、21bの出力電力を制御する際に、燃料電池21a、21bの出力電力が燃料電池毎に避けるべき電力範囲(以下、回避電力範囲Paという)内に入る使用頻度を下げることになる。
ここで、所定電圧範囲Vaは、燃料電池セルの出力電極間電圧の変動により触媒層が低下しやすい燃料電池セルの出力電極間電圧の範囲である。回避電圧範囲Vn(=Va×N)は、燃料電池毎に設定される出力電極間電圧の範囲であって、触媒層の低下により耐久性が低下しやすい燃料電池21a、21bの出力電極間電圧の範囲である。すなわち、回避電圧範囲Vnは、燃料電池21a、21bが劣化しやすい電圧範囲である。回避電力範囲Paは、燃料電池21a(或いは、21b)において、触媒層の劣化により耐久性が低下しやすい電力範囲であって、回避電圧範囲Vnに対応関係にある電力範囲である。
以下、制御装置30の制御処理について図11、図12を参照して説明する。制御装置30は、図12のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図11は、後述するシステム要求出力Waと燃料電池21a、21bの出力(kW)との関係を示すグラフである。そして、図12は、制御装置30の制御処理を示すフローチャートである。
まず、ステップ100において、アクセルセンサ40によりアクセル開度を検出する。
アクセル開度は、運転者が足で踏み込むアクセルペダル50の踏み込み量である。踏み込み量が大きくなるほどアクセル開度が大きくなる。
次に、ステップ110において、アクセル開度に基づいて、自動車のモータジェネレータ26a、26bおよび補機に必要となる電力をシステム要求出力Waとして算出する。システム要求出力Waは、燃料電池21a、21bから出力すべき電力の総量であって、アクセル開度が大きくなるほど、大きくなるように設定されている。補機に必要な電力とは、車両用空調装置、変速機、車輪制動装置、操舵装置、照明装置、および音響装置等の各種の車載装置に必要となる電力のことである。
次に、ステップ140において、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるか否かを判定する。高電位回避閾値Xは、予め決められた電力である。
ここで、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるとき、次のステップ150、160において、高電位回避電圧V1、V2に基づいて、燃料電池21a、21bが出力するべき電力(以下、分配出力Ws1、Ws2という)を決める。
まず、ステップ150において、燃料電池21aの負荷が低いときに燃料電池21aから出力するべき電力としてのアイドル出力Widlを高電位回避電圧V1に応じて設定する。つまり、アイドル出力Widlは、燃料電池21aの出力電極間電圧が高電位回避電圧V1になるときに燃料電池21aから出力される電力である。
燃料電池21bの負荷が低いときに燃料電池21bから出力するべき電力としてのアイドル出力Wid2を高電位回避電圧V2に応じて設定する。つまり、アイドル出力Wid2は、燃料電池21bの出力電極間電圧が高電位回避電圧V2になるときに燃料電池21bから出力される電力である。
次に、ステップ160において、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドル出力Wid1(=分配出力Ws1)とする。燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドル出力Wid2(=分配出力Ws2)とする。
このように、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるときには、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドル出力Wid1とし、燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドル出力Wid2とする。
一方、上記ステップ140において、システム要求出力Waが高電位回避閾値Xよりも大きいとしてNOと判定すると、次のステップ170において、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を(9)(10)(11)(12)の如く算出する。
(9)システム要求出力Waが(2×Wn1)よりも小さいときいは、燃料電池21aの分配出力Ws1を(Wa−Wid2)とし、燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドル出力Wid2とする。
ここで、(2×Wn1)は、最小出力Wn1を2倍した値である。(Wa−Wid2)
は、システム要求出力Waからアイドル出力Wid2を引いた値である。最小出力Wn1は、回避電力範囲Paのうちの最小値である。最大出力Wn2は、回避電力範囲Paのうちの最大値である。アイドル出力Wid1、Wid2は、最小出力Wn1よりも小さい。
(10)(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid1)であるとき、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドルWid1とし、燃料電池21bの分配出力Ws2を(Wa−Wid1)とする。(Wa−Wid1)は、システム要求出力Waからアイドル出力Wid1を引いた値である。
(11)(Wnlim+Wid1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるとき、燃料電池21aの分配出力Ws1を(Wa−Wnlim)とし、燃料電池21aの分配出力Ws2を(Wnlim)とする。(Wnlim)は、燃料電池21a(或いは、21b)の最大出力電力である。
(12)(Wnlim+Wn1)<Waであるときには、燃料電池21aの分配出力Ws1を(Wa/2)とし、燃料電池21aの分配出力Ws2を(Wa/2)とする。
このように、ステップ140、160において、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を算出する。分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する(ステップ130)。
これに伴い、燃料電池21aでは、その出力電力を分配出力Ws1に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21aの出力電力を分配出力Ws1に近づけることができる。燃料電池21bでは、その出力電力を分配出力Ws2に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21bの出力電力を分配出力Ws2に近づけることができる。これにより、運転者によるアクセルペダル50への踏み込み量に応じて、燃料電池21a、21bの出力電力を制御することができる。
その後、ステップ180において、燃料電池21a、21bの発電を終了すべきか否かを判定する。燃料電池21a、21bの発電を終了すべきではないとしてステップ180においてNOと判定すると、ステップ100に戻る。このため、ステップ180において、燃料電池21a、21bの発電を終了すべきであると判定されるまで、アクセル開度の入力処理(ステップ100)、システム要求出力算出処理(ステップ110)、システム要求出力判定処理(ステップ120)、分配出力算出処理(ステップ150、160、170)、および分配出力処理(ステップ130)を繰り返し実行する。
その後、燃料電池21a、21bの発電を終了すべきであるとしてステップ180においてYESと判定すると、制御処理を終了する。
次に、本実施形態の燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2の具体例について図13を参照して説明する。
まず、時刻t0〜時刻t1の間では、Wa<Xであり、分配出力Ws1=Wid1とし、分配出力Ws2=Wid2とする。
次に、時刻t1〜時刻t2の間では、Wa<(2×Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wid2)とし、分配出力Ws2=Wid2とする。
次に、時刻t2〜時刻t3の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid2)であり、分配出力Ws1=Wid1とし、分配出力Ws2=(Wa−Wid1)とする。
次の時刻t3〜時刻t4の間では、時刻t3の間では、Wa<(2×Wn1)であり、
分配出力Ws1=(Wa−Wid2)とし、分配出力Ws2=Wid2とする。
次の時刻t4〜時刻t5の間では、Wa<Xであり、分配出力Ws1=Wid1とし、
分配出力Ws2=Wid2とする。
次の時刻t5〜時刻t6の間では、Wa<(2×Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wid2)とし、分配出力Ws2=Wid2とする。
次の時刻t6〜時刻t7の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid1)
であり、分配出力Ws1=Wid1とし、分配出力Ws2=(Wa−Wid1)とする。
次の時刻t7〜時刻t8の間では、(Wnlim+Wid1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2=(Wnlim)とする。
次の時刻t8〜時刻t9の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid1)
であり、分配出力Ws1=Wid1とし、分配出力Ws2=(Wa−Wid1)とする。
次の時刻t9〜時刻t10の間では、(Wnlim+Wid1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2=(Wnlim)とする。
次の時刻t10〜時刻t11の間では、(Wnlim+Wn1)<Waであり、分配出力Ws1=(Wa/2)とし、分配出力Ws2=(Wa/2)とする。
次の時刻t11〜時刻t12の間では、(Wnlim+Wid1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wnlim)とし、分配出力Ws2=Wnlimとする。
次の時刻t12〜時刻t13の間では、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid2)であり、分配出力Ws1=アイドルWid1とし、分配出力Ws2=(Wa−Wid1)とする。
次の時刻t13〜時刻14の間では、Wa<(2×Wn1)であり、分配出力Ws1=(Wa−Wid2)とし、分配出力Ws2=Wid2とする。
その後、時刻14以降では、Wa<Xであり、分配出力Ws1=Wid1とし、分配出力Ws2=Wid2とする。
以上に説明した本実施形態によれば、システム要求出力Waが高電位回避閾値X未満である低負荷運転時には、燃料電池21a、21bの出力電圧が燃料電池毎に高電位回避電圧になるように、燃料電池毎の分配出力Ws1、Ws2が算出される。このため、複数の燃料電池の耐久性を向上することができる。
さらに、燃料電池21a、21bは、高電位回避電圧が互いに相違するように設定されているので、低負荷運転時における余剰電力を下げることができる。
一方、従来、車載燃料電池システムでは、特開2008−218398号公報に示すように、燃料電池に対する要求電力が所定値未満であるとき、制御装置は、燃料電池の出力電圧が開放端電圧よりも低い高電位回避電圧に維持されるように燃料電池の出力電力を制御するものがある。
このものにおいては、燃料電池に対する要求電力が所定値以上であるとき、制御装置は、高電位回避電圧を上限電圧として燃料電池の出力電圧を制御する。これにより、燃料電池の出力電圧の上限を高電位回避電圧に設定することができる。このため、燃料電池の出力電圧が開放端電圧まで上昇することによる燃料電池の触媒の劣化を抑制することができる。しかし、この場合、2つの燃料電池を用いた場合に、2つの燃料電池の耐久性を向上するために2つの燃料電池の出力電圧の上限電圧を下げると、余剰電力が大きくなり、燃費が低下する。
これに対して、本実施形態によれば、上述の如く、燃料電池21a、21bは、高電位回避電圧が互いに相違するように設定されているので、低負荷運転時における余剰電力を下げることができる。
さらに、本実施形態では、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以上であり、かつ(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときには、燃料電池21a、21bの出力電力は、燃料電池毎に回避すべき回避電力範囲Pa以外の電力になる。したがって、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることが避けることができる範囲は、図11中の出力範囲Eg2になる。
これに対して、図6に示すように、車載燃料電池システムの総発電量が変化しても燃料電池21a、21bの発電量Wg1、Wg2が同一値になる従来の車載燃料電池システムでは、図11中の出力範囲Eg1内にて、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることとなる。したがって、燃料電池21a、21bの耐久性を向上することができる。
本実施形態によれば、燃料電池21a、21bのうち高電位回避電圧が高く設定されている一方の燃料電池21aの分配出力が回避電力範囲よりも低くなるように分配出力を算出する。したがって、燃料電池21a、21bの出力電圧の変動を小さくすることができる。一方、燃料電池21aのうち高電位回避電圧が低く設定されている燃料電池21bの分配出力が回避電力範囲よりも高くなるように分配出力を算出する。したがって、燃料電池21bの出力電圧の変動を小さくすることができる。これにより、燃料電池21a、21bの出力電圧の変動を小さくすることができる。このため、燃料電池21a、21bの耐久性を向上することができる。
以上により、余剰電力を下げつつ、燃料電池21a、21bの耐久性を向上するようにした車載燃料電池システム10を提供することができる。
(第5実施形態)
上記第4実施形態では、燃料電池21aの高電位回避電圧V1を燃料電池21bの高電位回避電圧V2(<V1)よりも高くして燃料電池21a、21bの分配出力を算出した例について説明したが、本第5実施形態では、次のように、燃料電池21a、21bの分配出力を算出する。
すなわち、本実施形態では、燃料電池21a、21bのうち高電位回避電圧が高く設定される算出対象としての燃料電池と高電位回避電圧が低く設定される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。
本実施形態と上記第1実施形態とでは制御装置30の制御処理が相違する。そこで、以下、本実施形態における制御装置30の制御処理について説明する。制御装置30は、図12に代わる図14のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図14において、図12と同一の符号は、同一ステップを示し、その説明を省略する。
図14中のステップ200Aは、ステップ140A、150A、160A、170Aから構成されたものであって、燃料電池21aの高電位回避電圧V1を燃料電池21bの高電位回避電圧V2(>V1)よりも低くして燃料電池21a、21bの分配出力を算出するステップである。
ここで、図14中のステップ140、150、160、170は、上記第4実施形態と同様、燃料電池21aの高電位回避電圧V1を燃料電池21bの高電位回避電圧V2(<V1)よりも高くして燃料電池21a、21bの分配出力を算出するステップである。以下、説明の便宜上、ステップ140、150、160、170を纏めてステップ200とする。
まず、ステップ115は、上述した算出対象を切り替えるべきか否かを判定する。すなわち、ステップ200、200Aのうちいずれのステップを実行するかを決めるためのステップである。
例えば、ステップ115でステップ200を実行すべきであると判定するときには、YESと判定する。ステップ115でステップ200Aを実行すべきであると判定するときには、NOと判定する。
本実施形態では、ステップ200、200Aを交互に実行する。例えば、第1回目のステップ115でYESと判定してステップ200を実行し、第2回目のステップ115でNOと判定してステップ200Aを実行し、第3回目のステップ115でYESと判定してステップ200を実行し、第4回目のステップ115でNOと判定してステップ200Aを実行し、・・・・・第M(>4)回目のステップ115でYESと判定してステップ200を実行する。このため、ステップ115の実行毎に、ステップ200、ステップ200A、ステップ200、ステップ200A・・・の順に実行されるステップが切り替わることになる。
以下、ステップ200Aの処理の詳細について説明する。
まず、ステップ140Aにおいて、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるか否かを判定する。ここで、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるとき、次のステップ150A、160Aにおいて、燃料電池21a、21bが出力するべき電力としての分配出力Ws1、Ws2を決める。
次に、ステップ150Aにおいて、燃料電池21aの高電位回避電圧V1’を燃料電池21bの高電位回避電圧V2’よりも低くする(V2’>V1’)。
燃料電池21aのアイドル出力Widl’を高電位回避電圧V1’に応じて設定する。
アイドル出力Wid1’は、燃料電池21bの出力電極間電圧が高電位回避電圧V1’になるときに燃料電池21aから出力される電力である。
燃料電池21bのアイドル出力Wid2’を高電位回避電圧V2’に応じて設定する。
アイドル出力Wid2’は、燃料電池21bの出力電極間電圧が高電位回避電圧V2’になるときに燃料電池21bから出力される電力である。
次に、ステップ160Aにおいて、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドル出力Wid1’(=分配出力Ws1)とする。燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドル出力Wid2’(=分配出力Ws2)とする。
このように、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるときには、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドル出力Wid1’とし、燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドル出力Wid2’とする。
一方、上記ステップ140Aにおいて、システム要求出力Waが高電位回避閾値Xよりも大きいとしてNOと判定すると、次のステップ170Aにおいて、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を(13)(14)(15)(16)の如く算出する。
(13)システム要求出力Waが(2×Wn1)よりも小さいときいは、燃料電池21bの分配出力Ws2を(Wa−Wid1’)とし、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドル出力Wid1’とする。
ここで、(Wa−Wid1’)は、システム要求出力Waからアイドル出力Wid2’を引いた値である。アイドル出力Wid1’、Wid2’は、最小出力Wn1よりも小さい。
(14)(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wid2’)であるとき、燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドルWid2’とし、燃料電池21aの分配出力Ws1を(Wa−Wid1’)とする。(Wa−Wid1’)は、システム要求出力Waからアイドル出力Wid1’を引いた値である。
(15)(Wnlim+Wid2’)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるとき、燃料電池21bの分配出力Ws2を(Wa−Wnlim)とし、燃料電池21aの分配出力Ws1を(Wnlim)とする。(Wnlim)は、燃料電池21a(或いは、21b)の最大出力電力である。
(16)(Wnlim+Wn1)<Waであるときには、燃料電池21aの分配出力Ws1を(Wa/2)とし、燃料電池21aの分配出力Ws2を(Wa/2)とする。
このようにステップ170Aで燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を算出することにより、(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるとき、分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも高くなり、分配出力Ws2が回避電力範囲Paよりも低くなる。
ここで、ステップ200の処理は、上記第4実施形態のステップ200と同様であるので、説明を省略する。
以上のように、ステップ200、或いはステップ200Aにおいて、燃料電池21a、
21bの分配出力Ws1、Ws2を算出する。その後、ステップ130では、上記ステップ200、200Aのうちいずれか1つのステップで算出される分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する。これに伴い、燃料電池21a、21bでは、それぞれの出力電力を分配出力Ws1、Ws2に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21a、21bの出力電力をそれぞれ分配出力Ws1、Ws2に近づけることができる。これにより、運転者によるアクセルペダル50への踏み込み量に追従して、燃料電池21a、21bからモータジェネレータ26a、26bにそれぞれ十分な出力電力を出力することができる。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置30は、燃料電池21aのうち、分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも高くなるように算出される算出対象としての燃料電池と、分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも低くなるように算出される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。
このことにより、燃料電池21a、21bのうち、出力電力が回避電力範囲Paよりも高くなるように制御される制御対象としての燃料電池と、出力電力が回避電力範囲Paよりも低くなるように制御される制御対象としての燃料電池とが交互に切り替えられる。このため、燃料電池21a、21bの耐久性の低下を均等にすることができる。
(第6実施形態)
本第6実施形態では、上記第1実施形態と上記第4実施形態とを組み合わせた車載燃料電池システム10について図15を参照して説明する。
本実施形態と上記第4実施形態とは、制御装置30の制御処理が相違するだけであり、
その他の構成は、同じである。このため、以下、本実施形態の制御装置30の制御処理について図15を参照して説明する。
図15は、本実施形態の制御装置30の制御処理を示すフローチャートである。
図15のフローチャートは、図12中ステップ100、110、130、140、150と図4中のステップ120とを組み合わせたものである。このため、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以下であるときには(ステップ140:YES)、上記第4実施形態と同様、燃料電池21aの分配出力Ws1をアイドル出力Wid1とし、燃料電池21bの分配出力Ws2をアイドル出力Wid2とする(ステップ150、160)。
アイドル出力Widlは、燃料電池21aの出力電極間電圧が高電位回避電圧V1になるときに燃料電池21aから出力される電力である。アイドル出力Wid2は、燃料電池21bの出力電極間電圧が高電位回避電圧V2になるときに燃料電池21bから出力される電力である。
一方、システム要求出力Waが高電位回避閾値X以上であるときには(ステップ140:NO)、上記第1実施形態と同様に、ステップ120に進んで、分配出力Ws1、Ws2を算出する。
以上説明した本実施形態によれば、システム要求出力Waが高電位回避閾値X未満であるときには、燃料電池21a、21bの出力電圧が燃料電池毎に高電位回避電圧になるように、燃料電池毎の分配出力Ws1、Ws2が算出される。
システム要求出力Waが高電位回避閾値X以上であり、かつ(2×Wn1)<Wa<(Wnlim+Wn1)であるときに、燃料電池21a、21bの出力電力は、燃料電池毎に回避すべき電力範囲Pa以外の電力になる。
以上により、複数の燃料電池の耐久性を向上することができる。
(第7実施形態)
上記第6実施形態では、燃料電池21aの高電位回避電圧V1を燃料電池21bの高電位回避電圧V2(<V1)よりも高くして燃料電池21a、21bの分配出力を算出した例について説明したが、本第7実施形態では、次のように、燃料電池21a、21bの分配出力を算出する。
すなわち、本実施形態では、燃料電池21a、21bのうち高電位回避電圧が高く設定される算出対象としての燃料電池と高電位回避電圧が低く設定される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。
本実施形態と上記第6実施形態とでは制御装置30の制御処理が相違する。そこで、以下、本実施形態における制御装置30の制御処理について説明する。制御装置30は、図15に代わる図16、図17のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図16、図17のフローチャートは、図15のフローチャートにおいて、ステップ115、210、210Aを追加したものである。図16、図17において、図15と同一の符号は、同一ステップを示し、その説明を省略する。
ステップ210Aは、ステップ120A、140A、150A、160Aから構成されたものであって、燃料電池21aの高電位回避電圧V1’を燃料電池21bの高電位回避電圧V2’(>V1’)よりも低くして燃料電池21a、21bの分配出力を算出するステップである。
ここで、図17中ステップ120Aは、図10中ステップ120Aと同一であり、図17中のステップ140A、150A、160Aは、図14中のステップ140A、150A、160Aと同一である。
図16中のステップ120、140、150、160は、上記第4実施形態と同様、燃料電池21aの高電位回避電圧V1を燃料電池21bの高電位回避電圧V2(<V1)よりも高くして燃料電池21a、21bの分配出力を算出するステップである。以下、説明の便宜上、ステップ120、140、150、160を纏めてステップ210とする。
ここで、図16中のステップ120は、図4のステップ120と同一であり、図16中のステップ120、140、150、160は、図15のステップ120、140、150、160と同一である。
まず、ステップ115は、上述した算出対象を切り替えるべきか否かを判定する。すなわち、ステップ210、210Aのうちいずれのステップを実行するかを決めるためのステップである。
例えば、ステップ115でステップ210を実行すべきであると判定するときには、YESと判定する。ステップ115でステップ210Aを実行すべきであると判定するときには、NOと判定する。
本実施形態では、ステップ210、210Aを交互に実行する。例えば、第1回目のステップ115でYESと判定してステップ210を実行し、第2回目のステップ115でNOと判定してステップ210Aを実行し、第3回目のステップ115でYESと判定してステップ210を実行し、第4回目のステップ115でNOと判定してステップ210Aを実行し、・・・・・第M(>4)回目のステップ115でYESと判定してステップ210を実行する。このため、ステップ115の実行毎に、ステップ210、ステップ210A、ステップ210、ステップ210A・・・の順に実行されるステップが切り替わることになる。
このように、ステップ210、或いはステップ210Aにおいて、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を算出する。その後、ステップ130では、上記ステップ210、210Aのうちいずれか1つのステップで算出される分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する。これに伴い、燃料電池21a、21bでは、それぞれの出力電力を分配出力Ws1、Ws2に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21a、21bの出力電力をそれぞれ分配出力Ws1、Ws2に近づけることができる。これにより、運転者によるアクセルペダル50への踏み込み量に追従して、燃料電池21a、21bからモータジェネレータ26a、26bにそれぞれ十分な出力電力を出力することができる。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置30は、燃料電池21aのうち、分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも高くなるように算出される算出対象としての燃料電池と、分配出力Ws1が回避電力範囲Paよりも低くなるように算出される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。このため、燃料電池21a、21bの耐久性の低下を均等にすることができる。
(第8実施形態)
本実施形態では、上記第1実施形態において、バッテリ24a、24bの充放電を利用して、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2が回避電力範囲Paを跨ぐときに、ヒステリシスを有するように分配出力Ws1、Ws2を算出する例について説明する。
本実施形態と上記第1実施形態とは、制御装置30の制御処理とが相違する。そこで、本実施形態の制御装置30の制御処理について図18、図19を参照して説明する。
図18は制御処理を示すフローチャートである。図19は、システム要求出力Waと、燃料電池21a、21bの出力(kW)と、バッテリ24a、24bの充電量(kW)、放電量(kW)との関係を示すグラフである。制御装置30は、図18のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図18中ステップ100と図4中ステップ100とは同一であり、図18中ステップ110と図4中ステップ110とは同一である。
まず、ステップ100において、アクセルセンサ40によりアクセル開度を検出する。
次に、ステップ110において、アクセル開度に基づいて、自動車のモータジェネレータ26a、26bおよび補機に必要となる電力をシステム要求出力Waとして算出する。
次に、ステップ300において、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であるか否かを判定する。
具体的には、所定期間前のシステム要求出力Wa(N−1)に比べて、現時刻のシステム要求出力Wa(N)の方が大きい場合には、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であると判定する。一方、システム要求出力Wa(N−1)に比べて、システム要求出力Wa(N)の方が小さい場合には、システム要求出力Waが時間の経過に伴って減少中であると判定する。
このとき、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であるとステップ300で判定したときには、システム要求出力Waに基づいて燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2と、バッテリ24a、24bの放電量とを次のように決める(ステップ310)。
(1)Wa<(2×Wn1)であるときには、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。
(2)(2×Wn1)<Wa<(2×Wn1+Wbatlimt)であるときには、Ws1=Wn1、Ws2=Wn1とする。
この場合、燃料電池21a、21bがモータジェネレータ26a、26bに電力を出力する際に、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2がそれぞれ最小出力Wn1を維持した状態で、燃料電池21bの分配出力Ws2にアシストしてバッテリ24bがその放電電力をモータジェネレータ26bに電力を出力する。
ここで、バッテリ24bの放電電力をWbatとしたとき、Wbat=Wa−Ws1−Ws2を満たす。Wbatlimtは、バッテリ24bから放電可能である電力の最大値である。
(3)(2×Wn1+Wbatlimt)<Wa<(Wnlimt+Wid)であるときには、Ws1=Wid、Ws2=Wa−Widとする。このため、燃料電池21bの分配出力Ws2が最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の電力に変化する。
ここで、Widは、燃料電池21a、21bのアイドル出力である。Wnlimtは、燃料電池21a、21bの最大出力である。
(4)(Wnlimt+Wid)<Wa<(Wnlimt+Wn1)であるときには、Ws1=Wa−Wnlimtとし、Ws2=Wnlimtとする。
(5)(Wnlimt+Wn1)<Wa<(Wnlimt+Wn1+Wbatlimt)であるときには、Ws1=Wn1、Ws2=Wnlimtとする。
この場合、燃料電池21aがモータジェネレータ26aに電力を出力する際に、燃料電池21aの分配出力Ws1にアシストしてバッテリ24aがその放電電力をモータジェネレータ26aに電力を出力する。
ここで、Wbatは、バッテリ24aの放電電力であって、Wbat=Wa−Ws1−Ws2を満たす。Wbatlimtは、バッテリ24aから放電可能である電力の最大値である。
(6)(Wnlimt+Wn1+Wbatlimt)<Waであるときには、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。このため、燃料電池21aの分配出力Ws1が最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の電力に変化する。
また、上記ステップ300において、システム要求出力Waが時間の経過に伴って減少中であると判定したときには、システム要求出力Waに基づいて燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2と、バッテリ24a、24bの充電量とを次のように決める(ステップ320)。
(1)Wa>(2×Wn2)であるとき、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。
(2)(2×Wn2)>Wa>(2×Wn2−Wbatlimt)であるとき、Ws1=Wn2、Ws2=Wn2とする。
この場合、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2をそれぞれ最大出力Wn2に維持しつつ、燃料電池21aの分配出力Ws1によってバッテリ24aを充電する。
このとき、燃料電池21aからバッテリ24aに充電される電力である充電量をWbatとすると、Wbat=Ws1+Ws2−Waを満たす。
(3)(2×Wn2−Wbatlimt)>Wa>(Wn2 + Wid)であるとき、Ws1=Wid、Ws2=Wa−Widとする。このため、燃料電池21aの分配出力Ws1が最大出力Wn2以上の電力から最小出力Wn1以下の電力に変化する。
(4)(Wn2+Wid)>Wa>(Wn2+Wid−Wbatlimt)であるとき、 Ws1=Wid、Ws2=Wn2とする。
この場合、燃料電池21aの分配出力Ws1をWidに維持しつつ、燃料電池21bの分配出力Ws2を最大出力Wn2に維持した状態で、燃料電池21aの分配出力Ws1によってバッテリ24aを充電する。
このとき、燃料電池21aからバッテリ24aに充電される充電量Wbatは、Wbat=Ws1+Ws2−Waを満たす。
(5)(Wn2+Wid−Wbatlimt)>Waであるとき、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。このため、燃料電池21bの分配出力Ws2が最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の電力に変化する。
このように、ステップ310、320によって、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2と、バッテリ24aの放電量Wbat、充電量Wbatとを算出する。このとき、分配出力Ws1、Ws2とシステム要求出力Waとの関係において、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2が回避電力範囲Paを跨ぐときに、ヒステリシスを有することになる。
つまり、分配出力Ws1、Ws2がシステム要求出力waに対してヒステリシスを有している。燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の値に変化させるシステム要求出力Waと、燃料電池21aの分配出力を最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の値に変化させるシステム要求出力Waとが互いに相違する。
そして、分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する(ステップ130A)。
これに伴い、燃料電池21aでは、その出力電力を分配出力Ws1に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21aの出力電力を分配出力Ws1に近づけることができる。
このような燃料電池21aの出力電力は、DC−DCコンバータ22aおよびインバータ25aを介してモータジェネレータ26aに出力される。
ここで、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であり、かつ(2×Wn1)<Wa<(2×Wn1+Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ23bおよびインバータ25bを制御することにより、バッテリ24bからDC−DCコンバータ23bおよびインバータ25bを介してモータジェネレータ26bに出力される電力が放電量Wbatに近づくことになる。
システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であり、かつ(Wnlimt+Wn1)<Wa<(Wnlimt+Wn1+Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ23aおよびインバータ25aを制御することにより、バッテリ24aからDC−DCコンバータ23aおよびインバータ25aを介してモータジェネレータ26aに出力される電力が放電量Wbatに近づくことになる。
システム要求出力Waが時間の経過に伴って減少中であり、かつ(2×Wn2)>Wa>(2×Wn2−Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ22a、23aを制御することにより、バッテリ24aが燃料電池21aによって充電される電力が充電量Wbatに近づくことになる。このため、燃料電池21aの出力電力のうち一部の電力がバッテリ24aに充電され、燃料電池21aの出力電力のうち一部の電力以外の残りの電力がモータジェネレータ26aに出力される。
システム要求出力Waが時間の経過に伴って減少中であり、かつ(Wn2+Wid)>Wa>(Wn2+Wid−Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ22b、23bを制御することにより、バッテリ24bが燃料電池21bによって充電される電力が充電量Wbatに近づくことになる。このため、燃料電池21bの出力電力のうち一部の電力がバッテリ24bに充電され、燃料電池21bの出力電力のうち一部の電力以外の残りの電力がモータジェネレータ26bに出力される。
このようなステップ100、110、300、310、320、130Aの処理が繰り返される。これにより、運転者によるアクセルペダル50への踏み込み量に応じて、バッテリ24aの放電量、充電量と燃料電池21a、21bの出力電力とが制御される。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置30は、ステップ310の(2)において、燃料電池21bの分配出力Ws2を回避電力範囲Paの最小出力Wn1にした状態で、燃料電池21bの分配出力Ws2にアシストしてバッテリ24bの出力電力をモータジェネレータ26bに出力してから、燃料電池21bの分配出力Ws2を回避電力範囲Paの最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の値に変化させるように燃料電池21a、21bの分配出力Ws1およびバッテリ24bの放電量を算出する。
このことにより、システム要求出力Waの増加時には、燃料電池21bの分配出力Ws2を最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の電力に変化させるシステム要求出力Waを大きくすることができる。このため、燃料電池21bの出力電力が最大出力Wn2以上の電力、或いは最小出力Wn1以下の電力になるシステム要求出力Waの範囲が拡がる。
制御装置30は、ステップ310の(5)において、制御装置30は、燃料電池21aの分配出力Ws1を回避電力範囲Paの最小出力Wn1にした状態で、燃料電池21aの分配出力Ws1にアシストしてバッテリ24aの出力電力をモータジェネレータ26aに出力してから、燃料電池21aの分配出力Ws1を回避電力範囲Paの最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の値に変化させるように燃料電池21aの分配出力Ws1およびバッテリ24aの放電量を算出する。
このことにより、システム要求出力Waの増加時には、燃料電池21aの分配出力Ws1を最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の電力に変化させるシステム要求出力Waを大きくすることができる。このため、燃料電池21aの出力電力が最大出力Wn2以上の電力、或いは最小出力Wn1以下の電力になるシステム要求出力Waの範囲が拡がる。
以上により、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加しているときには、2×Wn1<Wa<Wnlimt+Wn1+Wbatlimtであるときに、燃料電池21a、21bの出力電力は、回避電力範囲Paの最大出力Wn2以上の電力、或いは最小出力Wn1以下の電力になる。したがって、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることが避けることができる範囲は、図19中の出力範囲Eg2aになる。
制御装置30は、ステップ320の(2)において、燃料電池21aの分配出力Ws1を回避電力範囲Paの最大出力Wn2にした状態で、燃料電池21aの分配出力Ws2によってバッテリ24aを充電してから、燃料電池21aの分配出力Ws1を回避電力範囲Paの最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の値に変化させるように燃料電池21aの分配出力Ws1およびバッテリ24aの充電量を算出する。
このことにより、システム要求出力Waの減少時には、燃料電池21aの分配出力Ws1を最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の電力に変化させるシステム要求出力Waを小さくすることができる。このため、燃料電池21aの出力電力が最大出力Wn2以上の電力、或いは最小出力Wn1以下の電力になるシステム要求出力Waの範囲が拡がる。
制御装置30は、ステップ320の(4)において、制御装置30は、燃料電池21bの分配出力Ws2を回避電力範囲Paの最大出力Wn2にした状態で、燃料電池21bの分配出力Ws2によってバッテリ24bを充電してから、燃料電池21bの分配出力Ws2を回避電力範囲Paの最大出力Wn2から最小大値Wn1以下の値に変化させるように燃料電池21bの分配出力Ws2およびバッテリ24bの放電量を算出する。
このことにより、システム要求出力Waの減少時には、燃料電池21bの分配出力Ws2を最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の電力に変化させるシステム要求出力Waを小さくすることができる。このため、燃料電池21bの出力電力が最大出力Wn2以上の電力、或いは最小出力Wn1以下の電力になるシステム要求出力Waの範囲が拡がる。
このため、システム要求出力Waが時間の経過に伴って減少しているときには、(Wn2+Wid−Wbatlimt)<Wa<2×Wn2であるときに、燃料電池21a、21bの出力電力は、回避電力範囲Paの最大出力Wn2以上の電力、或いは最小出力Wn1以下の電力になる。したがって、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることが避けることができる範囲は、図19中の出力範囲Eg2bになる。
以上により、燃料電池21a、21bの出力電力が回避電力範囲Paに入ることが避けることができるシステム要求出力Waの範囲を拡げることができるので、燃料電池21a、21bの耐久性を向上することができる。
本実施形態の分配出力Ws1、Ws2がシステム要求出力waに対してヒステリシスを有して、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2を最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の値に変化させるシステム要求出力Waと、燃料電池21aの分配出力を最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の値に変化させるシステム要求出力Waとが互いに相違する。
したがって、システム要求出力Waが変動しても、燃料電池21a、21bの出力電力が最小出力Wn1以下の電力から最大出力Wn2値以上の電力に変化したり、燃料電池21a、21bの出力電力が最大出力Wn2値以上の電力から最小出力Wn1以下の電力に変化したりすることを抑制することができる。これにより、燃料電池21a、21bの耐久性をより一層向上することができる。
本実施形態では、システム要求出力Waの増加時におけるバッテリ24a、24bの放電とシステム要求出力Waの減少時におけるバッテリ24a、24bの充電とが必ずセットで行われるため、不要な余剰電力が生じることはない。
(第9実施形態)
本実施形態では、上記第8実施形態において、出力範囲Eg2a、Eg2bにて、燃料電池21a、21bのうち分配出力が回避電力範囲Paの最大出力Wn2以上になるように算出される算出対象としての燃料電池と、分配出力が回避電力範囲Paの最小出力Wn1以下になるように算出される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える例について説明する。
本実施形態と上記第8実施形態とでは制御装置30の制御処理が相違する。そこで、以下、本実施形態における制御装置30の制御処理について説明する。制御装置30は、図18に代わる図20、図21のフローチャートにしたがって、制御処理を実行する。図20、図21のフローチャートは、図18のフローチャートにおいて、ステップ115、310A、320A、130Aを追加したものである。図20、図21において、図18と同一の符号は、同一ステップを示し、その説明を省略する。
まず、ステップ115は、上述した算出対象を切り替えるべきか否かを判定する。すなわち、ステップ400、410のうちいずれのステップを実行するかを決めるためのステップである。例えば、ステップ115でステップ400を実行すべきであると判定するときには、YESと判定する。ステップ115でステップ410を実行すべきであると判定するときには、NOと判定する。
本実施形態では、ステップ115の実行毎に、ステップ400、410を交互に実行する。例えば、第1回目のステップ115でYESと判定してステップ400を実行し、第2回目のステップ115でNOと判定してステップ410を実行し、第3回目のステップ115でYESと判定してステップ400を実行し、第4回目のステップ115でNOと判定してステップ410を実行し、・・・・・第M(>4)回目のステップ115でYESと判定してステップ400を実行する。このため、ステップ115の実行毎に、ステップ400、ステップ410、ステップ400、ステップ410・・・の順に実行されるステップが切り替わることになる。
ここで、ステップ400は、図18のステップ300、310、320から構成されてステップである。ステップ410は、ステップ300A、310A、320Aから構成されてステップである。
具体的には、ステップ410では、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であるか否かを判定する(ステップ300A)。
このとき、システム要求出力Waが時間の経過に伴って増加中であるとステップ300Aで判定したときには、システム要求出力Waに基づいて燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2と、バッテリ24a、24bの放電量とを次のように決める(ステップ310A)。
(1)Wa<(2×Wn1)であるときには、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。
(2)(2×Wn1)<Wa<(2×Wn1+Wbatlimt)であるときには、Ws1=Wn1、Ws2=Wn1とする。
この場合、燃料電池21a、21bがモータジェネレータ26a、26bに電力を出力する際に、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2がWn1を維持した状態で、燃料電池21aの分配出力Ws1にアシストしてバッテリ24aがその放電電力をモータジェネレータ26aに電力を出力する。
ここで、バッテリ24aの放電電力をWbatとしたとき、Wbat=Wa−Ws1−Ws2を満たす。Wbatlimtは、バッテリ24aから放電可能である電力の最大値である。
(3)(2×Wn1+Wbatlimt)<Wa<(Wnlimt+Wid)であるときには、Ws1=Wa−Wid、Ws2=Widとする。このため、燃料電池21aの分配出力Ws1が最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の電力に変化する。
(4)(Wnlimt+Wid)<Wa<(Wnlimt+Wn1)であるときには、Ws2=Wa−Wnlimtとし、Ws1=Wnlimtとする。
(5)(Wnlimt+Wn1)<Wa<(Wnlimt+Wn1+Wbatlimt)であるときには、Ws2=Wn1、Ws1=Wnlimtとする。
この場合、燃料電池21bがモータジェネレータ26bに電力を出力する際に、燃料電池21bの分配出力Ws2にアシストしてバッテリ24bがその放電電力をモータジェネレータ26bに電力を出力する。
ここで、Wbatは、バッテリ24bの放電電力であって、Wbat=Wa−Ws1−Ws2を満たす。Wbatlimtは、バッテリ24bから放電可能である電力の最大値である。
(6)(Wnlimt+Wn1+Wbatlimt)<Waであるときには、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。このため、燃料電池21bの分配出力Ws2が最小出力Wn1から最大出力Wn2以上の電力に変化する。
また、上記ステップ300Aにおいてシステム要求出力Waが時間の経過に伴って減少中であると判定したときには、システム要求出力Waに基づいて燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2と、バッテリ24a、24bの充電量とを次のように決める(ステップ320A)。
(1)Wa>(2×Wn2)であるとき、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。
(2)(2×Wn2)>Wa>(2×Wn2−Wbatlimt)であるとき、Ws1=Wn2、Ws2=Wn2とする。
この場合、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2をそれぞれWn2に維持しつつ、燃料電池21bの分配出力Ws2によってバッテリ24bを充電する。
このとき、燃料電池21bからバッテリ24bに充電される電力である充電量をWbatとすると、Wbat=Ws1+Ws2−Waを満たす。
(3)(2×Wn2−Wbatlimt)>Wa>(Wn2 + Wid)であるとき、Ws1=Wa−Wid、Ws2=Widとする。このため、燃料電池21bの分配出力Ws2が最大出力Wn2以上の電力から最小出力Wn1以下の電力に変化する。
(4)(Wn2+Wid)>Wa>(Wn2+Wid−Wbatlimt)であるとき、 Ws2=Wid、Ws1=Wn2とする。
この場合、燃料電池21bの分配出力Ws1をWidに維持しつつ、燃料電池21aの分配出力Ws1をそれぞれWn2に維持した状態で、燃料電池21aの分配出力Ws1によってバッテリ24aを充電する。
このとき、燃料電池21aからバッテリ24aに充電される充電量Wbatは、Wbat=Ws1+Ws2−Waを満たす。
(5)(Wn2+Wid−Wbatlimt)>Waであるとき、Ws1=(Wa/2)とし、Ws2=(Wa/2)とする。このため、燃料電池21aの分配出力Ws1が最大出力Wn2から最小出力Wn1以下の電力に変化する。
このように、ステップ310、320、310A、320Aによって、燃料電池21a、21bの分配出力Ws1、Ws2と、バッテリ24aの放電量Wbat、充電量Wbatとを算出する。そして、分配出力Ws1、Ws2を制御出力値として燃料電池21a、21bに出力する(ステップ130A)。
これに伴い、燃料電池21aでは、その出力電力を分配出力Ws1に近づけるように燃料ガスおよび酸化剤ガスの化学反応が実施される。このため、燃料電池21aの出力電力を分配出力Ws1に近づけることができる。
このような燃料電池21aの出力電力は、DC−DCコンバータ22aおよびインバータ25aを介してモータジェネレータ26aに出力される。
例えば、ステップ310Aで分配出力Ws1、Ws2、および燃料電池21a、21bの放電量を算出し、かつ(2×Wn1)<Wa<(2×Wn1+Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ23aおよびインバータ25aを制御することにより、バッテリ24aからDC−DCコンバータ23aおよびインバータ25aを介してモータジェネレータ26aに出力される電力が放電量Wbatに近づくことになる。この際に、DC−DCコンバータ23aは、バッテリ24aからモータジェネレータ26aに出力される放電量を調整する放電量調整部として機能する。
ステップ310Aで分配出力Ws1、Ws2、および燃料電池21a、21bの放電量を算出し、かつ(Wnlimt+Wn1)<Wa<(Wnlimt+Wn1+Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ23bおよびインバータ25bを制御することにより、バッテリ24bからDC−DCコンバータ23bおよびインバータ25bを介してモータジェネレータ26bに出力される電力が放電量Wbatに近づくことになる。この際に、DC−DCコンバータ23bは、バッテリ24bからモータジェネレータ26bに出力される放電量を調整する放電量調整部として機能する。
ステップ320Aで分配出力Ws1、Ws2、および燃料電池21a、21bの充電量を算出し、かつ(2×Wn2)>Wa>(2×Wn2−Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ23bを制御することにより、バッテリ24bが燃料電池21bによって充電される電力が充電量Wbatに近づくことになる。このため、燃料電池21bの出力電力のうち一部の電力がバッテリ24bに充電され、燃料電池21bの出力電力のうち一部の電力以外の残りの電力がモータジェネレータ26bに出力される。この際に、DC−DCコンバータ23bは、バッテリ24bが燃料電池21bによって充電される電力が充電量を調整する充電量調整部として機能する。
ステップ320Aで分配出力Ws1、Ws2、および燃料電池21a、21bの充電量を算出し、かつ(Wn2+Wid)>Wa>(Wn2+Wid−Wbatlimt)であるとき、制御装置30がDC−DCコンバータ23aを制御することにより、バッテリ24aが燃料電池21aによって充電される電力が充電量Wbatに近づくことになる。このため、燃料電池21aの出力電力のうち一部の電力がバッテリ24aに充電され、燃料電池21aの出力電力のうち一部の電力以外の残りの電力がモータジェネレータ26aに出力される。この際に、DC−DCコンバータ23aは、バッテリ24aが燃料電池21aによって充電される電力が充電量を調整する充電量調整部として機能する。
ステップ310、320で分配出力Ws1、Ws2、および燃料電池21a、21bの充電量、放電量を算出した場合において、制御装置30が図21のステップ130Aで実行する処理は、制御装置30が図18のステップ130で実行する処理と同じであるため、その説明を省略する。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置30は、出力範囲Eg2a、Eg2bにて、燃料電池21a、21bのうち、分配出力が回避電力範囲Paの最大出力Wn2以上になるように算出される算出対象としての燃料電池と、分配出力が回避電力範囲Paの最小出力Wn1以下になるように算出される算出対象としての燃料電池とを交互に切り替える。このため、燃料電池21a、21bの耐久性の低下を均等にすることができる。
(他の実施形態)
上記第1〜第7の実施形態では、車載燃料電池システム10に2つの燃料電池ユニット20A、20Bを設けた例について説明したが、これに限らず、車載燃料電池システム10に3つの以上の燃料電池ユニットを設けてもよい。
上記第1〜第9の実施形態では、燃料電池ユニット20A、20Bをそれぞれ、複数の燃料電池セルを直列接続したものとした例について説明したが、これに代えて、燃料電池ユニット20A、20Bをそれぞれ1つの燃料電池セルからなるものとしてもよい。
上記第1〜第9の実施形態では、本発明の車載燃料電池システム10を大型自動車用の車載燃料電池システムとした例について説明したが、これに代えて、本発明の車載燃料電池システム10を大型自動車用以外の自動車用の車載燃料電池システムとしてもよい。或いは、本発明の車載燃料電池システム10を自動車以外の列車用の車載燃料電池システムとしてもよい。
上記第3実施形態では、ステップ115におけるYES判定とステップ115におけるN0判定とを交互に繰り返して、ステップ120、ステップ120A、ステップ120、ステップ120A・・・の順に実行される例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、ステップ115におけるYES判定をN回繰り返すことと、ステップ115におけるN0判定をN回繰り返すこととを交互に繰り返す。このことにより、ステップ120をN回繰り返すことと、ステップ120AをN回繰り返すことを交互に繰り返す。このため、ステップ120(1)、ステップ120(2)、・・・ステップ120(N)、ステップ120A(1)、ステップ120A(2)、・・・ステップ120A(N)、ステップ120(N+1)、ステップ120(N+2)、・・・ステップ120(N+N)、ステップ120A(N+1)、ステップ120A(N+2)、・・・ステップ120A(N+N)・・・の順に実行される。なお、Nは2以上の整数であり、括弧内の符号・数字は、ステップ120、120Aのそれぞれの実行回数を示している。
同様に、上記第5実施形態において、ステップ115におけるYES判定をN回繰り返すことと、ステップ115におけるN0判定をN回繰り返すこととを交互に繰り返してもよい。
このことにより、ステップ200をN回繰り返すことと、ステップ200AをN回繰り返すことを交互に繰り返す。このため、ステップ200(1)、ステップ200(2)、・・・ステップ200(N)、ステップ200A(1)、ステップ200A(2)、・・・ステップ200A(N)、ステップ200(N+1)、ステップ200(N+2)、・・・ステップ200(N+N)、ステップ200A(N+1)、ステップ200A(N+2)、・・・ステップ200A(N+N)・・・の順に実行される。
同様に、上記第7実施形態において、ステップ115におけるYES判定をN回繰り返すことと、ステップ115におけるN0判定をN回繰り返すこととを交互に繰り返してもよい。このことにより、ステップ210をN回繰り返すことと、ステップ210AをN回繰り返すことを交互に繰り返す。このため、ステップ210(1)、ステップ210(2
)、・・・ステップ210(N)、ステップ210A(1)、ステップ210A(2)、・・・ステップ210A(N)、ステップ210(N+1)、ステップ210(N+2)、・・・ステップ210(N+N)、ステップ210A(N+1)、ステップ210A(N+2)、・・・ステップ210A(N+N)・・・の順に実行される。
同様に、上記第9実施形態において、ステップ115におけるYES判定をN回繰り返すことと、ステップ115におけるN0判定をN回繰り返すこととを交互に繰り返してもよい。このことにより、ステップ400をN回繰り返すことと、ステップ410をN回繰り返すことを交互に繰り返す。
上記第8、第9実施形態において、ステップ310の(2)において、燃料電池21bの分配出力Ws2を最小出力Wn1にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21bの分配出力Ws2を最小出力Wn1未満の電力にしてもよい。
上記第8、第9実施形態において、ステップ310の(5)において、燃料電池21aの分配出力Ws1を最小出力Wn1にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21aの分配出力Ws1を最小出力Wn1未満の電力にしてもよい。
上記第8、第9実施形態において、ステップ320の(2)において、燃料電池21aの分配出力Ws1を最大出力Wn2にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21aの分配出力Ws1を最大出力Wn2よりも大きな電力にしてもよい。
上記第8、第9実施形態において、ステップ320の(4)において、燃料電池21bの分配出力Ws2を最大出力Wn2にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21bの分配出力Ws2を最大出力Wn2よりも大きな電力にしてもよい。
上記第9実施形態において、ステップ310Aの(2)において、燃料電池21aの分配出力Ws1を最小出力Wn1にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21aの分配出力Ws1を最小出力Wn1未満の電力にしてもよい。
上記第9実施形態において、ステップ310Aの(5)において、燃料電池21bの分配出力Ws2を最小出力Wn1にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21bの分配出力Ws2を最小出力Wn1未満の電力にしてもよい。
上記第9実施形態において、ステップ320Aの(2)において、燃料電池21bの分配出力Ws2を最大出力Wn2にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21bの分配出力Ws2を最大出力Wn2よりも大きな電力にしてもよい。
上記第9実施形態において、ステップ320Aの(4)において、燃料電池21aの分配出力Ws1を最大出力Wn2にした例について説明したが、これに限らず、燃料電池21aの分配出力Ws1を最大出力Wn2よりも大きな電力にしてもよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
次に、上記各実施形態と特許請求の範囲との対応関係について説明する。
モータジェネレータ26a、26bが走行用電動機に対応し、アクセルペダル50が操作部に対応し、アクセルセンサ40がセンサに対応し、ステップ110が第1算出手段に対応し、ステップ120、120Aがそれぞれ第2算出手段に対応し、ステップ160、160Aが第4算出手段に相当し、ステップ170、170Aが第5算出手段に相当し、ステップ130が制御手段に対応し、ステップ115が切替制御手段に対応する。