以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下では、作業機の先端のアタッチメントとしてバケット10を備える油圧ショベルを例示するが、バケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルで本発明を適用しても構わない。また、以下の説明では、同一の構成要素が複数存在する場合、符号(数字)の末尾にアルファベットを付すことがあるが、当該アルファベットを省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば、同一の3つのポンプ300a、300b、300cが存在するとき、これらをまとめてポンプ300と表記することがある。
<第1実施形態>
図1は本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図であり、図11は本発明の実施形態に係る油圧ショベルの制御コントローラを油圧駆動装置と共に示す図である。図1において、油圧ショベルは、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)を連結して構成された多関節型のフロント作業機1Aと、上部旋回体12及び下部走行体11からなる車体1Bとで構成され、フロント作業機1Aのブーム8の基端は上部旋回体12の前部に支持されている。
ブーム8、アーム9、バケット10、上部旋回体12及び下部走行体11はそれぞれブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回油圧モータ4及び左右の走行モータ3a、3bによりそれぞれ駆動される被駆動部材を構成し、それらの動作は上部旋回体12上の運転室内の走行右レバー23a、走行左レバー23b、操作右レバー1a、操作左レバー1b(これらを操作レバー1,23と総称することがある)により指示される。
運転室内には、走行右レバー23aを有する操作装置47a(図11参照)と、走行左レバー23bを有する操作装置47b(図11参照)と、操作右レバー1aを有する操作装置45a,46aと、操作左レバー1bを有する操作装置45b,46bが設置されている。操作装置45〜47は油圧パイロット方式であり、それぞれオペレータにより操作される操作レバー1,23の操作量と操作方向に応じたパイロット圧を制御信号として、パイロットライン144a〜149b(図11参照)を介して対応する流量制御弁15a〜15f(図11参照)の油圧駆動部150a〜155bに供給し、これら流量制御弁15a〜15fを駆動する。
オペレータによって走行右レバー23a、走行左レバー23b、操作右レバー1a、操作左レバー1bが操作されると、そのレバー操作量(例えば、レバーストローク)に応じて、油圧ポンプ2やコントロールバルブユニット20を制御するための制御信号としてパイロット圧(以下、操作圧と称することがある)が発生する。油圧ポンプ2から吐出した圧油がコントロールバルブユニット20内の流量制御弁15a,15b,15c,15d,15e,15f(図11参照)を介して走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3b、旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7が伸縮することで、ブーム8、アーム9、バケット10がそれぞれ回動し、バケット10の位置及び姿勢が変化する。また、供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。さらに、供給された圧油によって走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3bが回転することで、下部走行体11が走行する。
一方、ブーム8、アーム9、バケット10の回動角度α,β,γ(図5参照)を測定可能なように、ブームピンにブーム角度センサ30、アームピンにアーム角度センサ31、バケットリンク13にバケット角度センサ32が取付けられ、上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(車体1B)の前後方向の傾斜角θ(図5参照)を検出する車体傾斜角センサ33が取付けられている。
図11において、図1の油圧ショベルは、油圧ポンプ2と、この油圧ポンプ2からの圧油により駆動されるブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回油圧モータ4及び左右の走行モータ3a、3bを含む複数の油圧アクチュエータと、これら油圧アクチュエータ3〜7のそれぞれに対応して設けられた走行右レバー23a、走行左レバー23b、操作右レバー1a、操作左レバー1bと、油圧ポンプ2と複数の油圧アクチュエータ3〜7間に接続され、操作レバー1,23の操作量及び操作方向に応じて操作装置45a、45b、46a、46b、47a、47bから出力される制御信号によって制御され、油圧アクチュエータ4〜7に供給される圧油の流量及び方向を制御する複数の流量制御弁15a〜15fと、油圧ポンプ2と流量制御弁15a〜15fの間の圧力が設定値以上になった場合に開くリリーフ弁16とを有し、これらは油圧ショベルの被駆動部材を駆動する油圧駆動装置を構成している。
領域制限制御の実行が可能な掘削制御システムは、運転室内の操作パネルの上方などオペレータの視界を遮らない位置に設置され領域制限制御の有効無効を切り替える制限制御スイッチ17と、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144a,144bに設けられ、操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(制御信号)を検出する圧力センサ70a,70bと、アーム9用の操作装置45bのパイロットライン145a,145bに設けられ、操作レバー1bの操作量としてパイロット圧(制御信号)を検出する圧力センサ71a,71bと、一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54aと、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144aと電磁比例弁54aの二次ポート側に接続され、パイロットライン144a内のパイロット圧と電磁比例弁54aから出力される制御圧の高圧側を選択し、流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導くシャトル弁82と、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144bに設置され、電気信号に応じてパイロットライン144b内のパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54bと、目標掘削面の下方を作業機1Aが掘削しないようにブーム8、アーム9およびバケット10の少なくとも1つを制御する領域制限制御が実行可能なコンピュータである制御コントローラ(制御装置)40を備えている。
アーム9用のパイロットライン145a,145bには、パイロット圧を検出して制御コントローラ40に出力する圧力センサ71a,71bと、制御コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧を低減して出力する電磁比例弁55a,55bが設けられている。バケット10用のパイロットライン146a,146bには、パイロット圧を検出して制御コントローラ40に出力する圧力センサ72a,72bと、制御コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧を低減して出力する電磁比例弁56a,56bが設けられている。なお、図11では、圧力センサ71,72及び電磁比例弁55,56と制御コントローラ40との接続線は紙面の都合上省略している。
制御コントローラ40は、後述のROM93又はRAM94に記憶された目標掘削面の形状情報、角度センサ30〜32と傾斜角センサ33の検出信号、および圧力センサ70〜72の検出信号を入力し、目標掘削面を設定すると共に、領域を制限した掘削制御(領域制限制御)を行うための制御信号(パイロット圧)の補正を行う電気信号を電磁比例弁54〜56に出力する。
図12に、制御コントローラ40のハードウェア構成を示す。制御コントローラ40は、入力部91と、プロセッサである中央処理装置(CPU)92と、記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と、出力部95とを有している。入力部91は、操作装置45〜47からの信号、目標掘削面を設定するための設定装置51からの信号、角度センサ30〜32及び傾斜角センサ33からの信号を入力し、A/D変換を行う。ROM93は、後述する図8,図10のフローチャートを実行するための制御プログラムと、当該フローチャートに実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり、CPU92は、ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力部91及びメモリ93,94から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力部95は、CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成し、その信号を電磁比例弁54〜56や報知装置53に出力することで、油圧アクチュエータ4〜7を駆動・制御したり、車体1B、バケット10及び目標掘削面等の画像を報知装置53であるモニタの表示画面上に表示させたりする。なお、図12の制御コントローラ40は、記憶装置としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えているが、記憶装置であれば特に代替可能であり、例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
図2は、本発明の実施形態に係る制御コントローラ40の機能ブロック図である。制御コントローラ40は、作業機姿勢演算部41と、目標掘削面演算部42と、目標動作演算部43と、電磁比例弁制御部44を備えている。また、制御コントローラ40には、作業機姿勢検出装置50、目標掘削面設定装置51、オペレータ操作検出装置52、報知装置53、電磁比例弁54〜56、がそれぞれ接続されている。
作業機姿勢検出装置50は、ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、車体傾斜角センサ33、から構成される。目標掘削面設定装置51は、目標掘削面に関する情報(目標掘削面の位置情報も含む)を入力可能なインターフェースである。目標掘削面設定装置51への入力は、オペレータが手動で行っても、外部ネットワークから取り込んでも良い。オペレータ操作検出装置52は、オペレータによる操作レバー1のレバー操作によって生じる操作圧を取得する圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bから構成される。報知装置53は、オペレータに目標掘削面と作業機1Aの位置関係を表示するディスプレイ(表示装置)、あるいは目標掘削面と作業機1Aの位置関係を音(音声も含む)により通達するスピーカの少なくとも一つから構成される。電磁比例弁54〜56は、図11で説明したパイロット圧(操作圧)の油圧ラインに設けられており、オペレータのレバー操作によって発生した操作圧を下流で増減することが可能である。また、オペレータのレバー操作なしに操作圧を発生させることも可能である。
制御コントローラ40は、マシンコントロール機能の掘削モードとして、後述する通常掘削モード、減速掘削モードおよび掘削停止モードを備えている。これらのモードは、制御コントローラ40によって自動的に選択される。
マシンコントロールによる、水平掘削動作の例を図3に示す。例えば、オペレータが操作レバー1を操作して、矢印A方向へのアーム9の引き動作によって水平掘削を行う場合には、バケット10の先端(爪先)が目標掘削面60の下方に侵入しないように、ブーム8の上げ動作が自動的に行われるよう電磁比例弁54aが制御される。また、オペレータが要求する掘削速度、あるいは掘削精度を実現するように、電磁比例弁55が制御されアーム9の引き動作が行われる。このとき、掘削精度向上のため、電磁比例弁55によりアーム9の速度を必要に応じて減速させても良い。また、バケット10背面の目標掘削面60に対する角度Bが一定値となり、均し作業が容易となるように、電磁比例弁56を制御してバケット10が自動で矢印C方向(ダンプ方向)に回動するようにしても良い。このように、オペレータによる操作レバー1の操作量に対して、自動または半自動でアクチュエータを制御し、ブーム8、アーム9、バケット10、上部旋回体12といった作業機を動作させる機能をマシンコントロールと呼称する。目標掘削面の下方を前記作業機が掘削しないように前記ブーム、前記アームおよび前記バケットの少なくとも1つを制御する領域制限制御は、マシンコントロールの1つである。
作業機姿勢演算部41は作業機姿勢検出装置50からの情報に基づき、作業機1Aの姿勢を演算する。作業機1Aの姿勢は図5のショベル基準座標に基づいて定義できる。図5のショベル基準座標は、上部旋回体12に設定された座標であり、上部旋回体12に回動可能に支持されているブーム8の基底部を原点とし、上部旋回体12における鉛直方向にZ軸、水平方向にX軸を設定した。Z軸に対するブーム8の傾斜角をブーム角α、ブームに対するアーム9の傾斜角をアーム角β、アームに対するバケット爪先の傾斜角をバケット角γとした。水平面(基準面)に対する車体1B(上部旋回体12)の傾斜角を傾斜角θとした。ブーム角αはブーム角度センサ30により、アーム角βはアーム角度センサ31により、バケット角γはバケット角度センサ32により、傾斜角θは車体傾斜角センサ33により検出される。ブーム角αは、ブーム8を最大(最高)まで上げたとき(ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンドのとき、つまりブームシリンダ長が最長のとき)に最小となり、ブーム8を最小(最低)まで下げたとき(ブームシリンダ5が下げ方向のストロークエンドのとき、つまりブームシリンダ長が最短のとき)に最大となる。アーム角βは、アームシリンダ長が最短のときに最小となり、アームシリンダ長が最長のときに最大となる。バケット角γは、バケットシリンダ長が最短のとき(図5のとき)に負側の最大となり、バケットシリンダ長が最長のときに正側の最大となる。
目標掘削面演算部42は、目標掘削面設定装置51からの情報に基づき、目標掘削面60を演算する。目標動作演算部43は、作業機姿勢演算部41、目標掘削面演算部42およびオペレータ操作検出装置52からの情報に基づき、目標掘削面に侵入することなくバケット10が移動するよう作業機1Aの目標動作を演算する。電磁比例弁制御部44は、目標動作演算部43からの情報(具体的には後述の目標アクチュエータ速度演算部433からの各アクチュエータの目標速度情報)に基づき、電磁比例弁54〜56への制御入力を演算する。電磁比例弁54〜56は、電磁比例弁制御部44からの指令に基づき制御される。また、報知装置53は、目標動作演算部43からの情報(具体的には後述の掘削モード判定部434からの制御モードの情報)に基づき、マシンコントロールに関連する各種情報をオペレータへ通達する。
図4は、本発明の実施形態に係る制御コントローラ40内の目標動作演算部43の機能ブロック図である。目標動作演算部43は、姿勢情報変換部431と、目標掘削面情報変換部432と、目標アクチュエータ速度演算部433と、掘削モード判定部434を備えている。
姿勢情報変換部431は、作業機姿勢演算部41が演算する、ショベル基準座標に対するバケット10の先端位置(爪先位置)や、ブーム角α、アーム角β、バケット角γ、傾斜角θ、及びブーム8、アーム9、バケット10それぞれのシリンダ長といった作業機1Aの姿勢に関する情報を受信する。受信した各種情報は、掘削モード判定部434および目標アクチュエータ速度演算部433に出力される。
目標掘削面情報変換部432は、目標掘削面演算部42が演算するショベル基準座標における目標掘削面60の位置及び角度、並びにバケット10の先端からの距離等を受信する。受信した各種情報は、掘削モード判定部434および目標アクチュエータ速度演算部433に出力される。
目標アクチュエータ速度演算部433は、オペレータ操作検出装置52と、姿勢情報変換部431と、目標掘削面情報変換部432と、後述する掘削モード判定部434からの情報に基づいて、目標とする各アクチュエータ5,6,7の速度を演算し、電磁比例弁制御部44に送信する。各アクチュエータ5,6,7の目標速度算出アルゴリズムは、掘削モード判定部434の判定結果ごとに異なる。
掘削モード判定部434は、ショベル基準座標における作業可能範囲D、作業不可能範囲F、及び両者の境界線(後述する円弧E)の情報と、姿勢情報変換部431からの作業機1Aの姿勢情報と、目標掘削面情報変換部432からの目標掘削面情報とに基づき、領域制限制御の実行中のショベルの制御モードを判定する。詳細は後述するが、制御モードには、掘削停止モードと、減速掘削モードと、通常掘削モードの3つが存在し、後述の図8のフローチャートを基にいずれかの制御モードに判定される。
図6に作業機1Aの可動範囲、作業可能範囲D、作業不可能範囲Fを示す。図6では、斜線を付した領域が作業可能範囲Dを示し、ドットを付した領域が作業不可能範囲Fを示す。これらの範囲は、ブーム8、アーム9、バケット10の寸法、およびブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7のストローク又は角度により決定される。図6及び図7に示す各範囲の情報は、ショベル基準座標上の位置情報として制御コントローラ40の記憶装置93,94に格納されている。
本稿では、掘削作業の可否に関わらず、バケット10の爪先が移動可能な範囲を「可動範囲」とする。可動範囲は、作業機1Aによる掘削作業が可能な範囲(作業可能範囲)と、作業機1Aによる掘削作業が不可能な範囲(作業不可能範囲)に区分できる。作業不可能範囲は、ブーム8を最大に上げた状態(ブーム角αが最小値)で作業機1Aによる掘削作業が不可能な範囲である。作業可能範囲において作業不可能範囲に隣接する部分には、ブーム8を最大に上げた状態(ブーム角αが最小値)で作業機1Aにより掘削作業が可能な範囲(「ブーム最大上げ作業可能範囲」と称する)が存在する。
本実施形態では、「可動範囲」は、円弧439a及び円弧439bと、円弧438a、円弧438b及び円弧438cで挟まれる領域と規定した。円弧439aは、作業機1Aの長さが最大(最大掘削半径)Lmaxとなるアーム9とバケット10の姿勢(「最大リーチ姿勢」と称することがある)で、ブーム角αを最小値と最大値との間で変化させたときのバケット10の先端が描く軌跡である。なお、最大リーチ姿勢のときのバケット角γを「最大リーチ角」と称することがある。円弧439bは、最大リーチ姿勢でブーム角αが最大値の状態から、アーム角βを最小値と最大値との間で変化させたときにバケット10の先端が描く軌跡である。円弧438aは、ブーム角αを最小値かつアーム角βを最小値にした状態で、バケットシリンダ長を最小値と最大値との間で変化させたときにバケット10の先端が描く軌跡である。円弧438bは、ブーム角αを最小値かつバケットシリンダ長を最大値にした状態で、アーム角βを最小値と最大値との間で変化させたときにバケット10の先端が描く軌跡である。円弧438cは、ブーム角αを最小値かつアーム角βを最大値にした状態で、バケットシリンダ長を最小値と最大値との間で変化させたときにバケット10の先端が描く軌跡である。
本実施形態では、「可動範囲」を円弧Eで「作業可能範囲D」と「作業不可能範囲F」に区分した。すなわちこれら2つの範囲D,Fの境界線が円弧Eである。図6における円弧Eの上方の領域が作業不可能範囲Fであり、円弧Eの下方の領域が作業可能範囲Dである。円弧Eは、ブーム角αが最小値かつバケットシリンダ長が最小値(バケット角γが負側の最大値)で、アーム角βを最小値と最大値の間で変化させたときにバケット10の先端が描く軌跡であり、ブーム8を最大に上げた状態(ブーム角αが最小値)で作業機1Aにより掘削作業が可能な範囲(「ブーム最大上げ作業可能範囲」(第1範囲))である。範囲Fは、円弧Eと、円弧438a、円弧438bおよび円弧438cで挟まれた領域として規定される。
「作業可能範囲D」は、上部旋回体12から相対的に遠い方に位置する円弧439a及び円弧439bと、上部旋回体12から相対的に近い方に位置する円弧Eで挟まれた領域として規定されている。
さらに、本実施の形態では、図7に示すように、作業可能範囲D内において、ブーム8の下げ方向で円弧Eに隣接する範囲Gを規定した。本実施の形態では、範囲Gの下側(ブーム下げ側)の境界線440を、バケット10を最大リーチ姿勢としブーム角αを最小値から所定の値だけ大きくした状態(例えば、ブームシリンダ5が最長の状態から10%短くした状態)で、アーム角βを最小値と最大値との間で変化させたときにバケット10の先端が描く軌跡とした。ブーム角αを最小値からどの程度まで大きくした範囲をGとするかは運用に応じて適宜変更可能である。また、境界線440は円弧に限られるものでもない。
本実施形態では、可動範囲を3つの領域に分割し、領域制限制御時に各領域で異なる掘削モードが実行されるように油圧ショベルを構成している。具体的には図7に示すように、範囲Fを「掘削停止モード領域」とし、範囲Gを「減速掘削モード領域(第2範囲)」とし、作業可能範囲Dから減速掘削モード領域Gを除いた領域を「通常掘削モード領域」としている。
掘削停止モード領域(範囲F)では、アーム9又はバケット10による掘削動作を指示する操作が操作レバー1(操作装置45,46)に入力されていても、アーム9及びバケット10のシリンダ速度の指令をゼロに強制的に設定し、アーム9又はバケット10による掘削動作を停止させる掘削停止モードで領域制限制御を実行する。減速掘削モード領域(範囲G、第2範囲)では、アーム9又はバケット10による掘削動作の速度を操作レバー1(操作装置45,46)による指示速度よりも低減させる減速掘削モードで領域制限制御を実行する。通常掘削モード領域(範囲D−範囲G)では、目標掘削面への作業機1A(バケット10の先端)の侵入をブーム8の上げ動作により回避する通常掘削モードで領域制限制御を実行する。
ところで、平らな目標掘削面に沿ってバケット10の先端を移動させるためには、アーム引き動作に伴ったブーム上げ動作が必要になることが少なくない。しかし、掘削停止モード領域(範囲F)では、ブーム8は最大に上がった状態でありアーム引き動作に伴ったブーム上げ動作は不可能である。そのため、掘削停止モード領域(範囲F)に目標掘削面が存在する場合には、掘削作業時の目標掘削面への作業機1Aの侵入を回避できない可能性が非常に高い。例えば、図7における範囲F内の目標掘削面437を領域制限制御により形成する場合には、範囲F内ではブーム上げが不可能でバケット10の先端を水平に動かすこと(水平引き)ができず、アーム9の引き動作とともにバケット10が目標掘削面437の下方に侵入してしまう。
そこで、本実施形態では、領域制限制御の実行中に、制御コントローラ40の掘削モード判定部434において、目標掘削面への作業機1Aの侵入をブーム8の上げ動作により回避可能かを判定することとした。そして、その判定の結果が回避不可能の場合には、アーム9又はバケット10による掘削動作を指示する操作が操作装置45,46に入力されていても、制御コントローラ40の目標アクチュエータ速度演算部433及び電磁比例弁制御部44においてアーム9又はバケット10による掘削動作を停止させることとした。より具体的には、本実施の形態では、掘削モード判定部434による上記判定を、(1)ブーム8を最大に上げた状態で作業機1Aにより掘削作業が可能な範囲(ブーム最大上げ作業可能範囲(第1範囲)。本実施形態では円弧E)、(2)目標掘削面、および、(3)バケット10の爪先位置を基に行うこととした。そして、A)目標掘削面が第1範囲(円弧E)と交わり、かつ、バケット10の爪先位置が第1範囲に存在すると掘削モード判定部434で判定された場合には、制御コントローラ40は掘削停止モードで領域制限制御を実行し、B)目標掘削面が第1範囲と交わらず、または、バケット10の爪先位置が第1範囲に存在しないと掘削モード判定部434で判定された場合には、通常掘削モードで領域制限制御を実行することとした。
これにより、目標掘削面にバケット10が侵入するおそれがある場合(例えば、バケット10の先端が作業可能範囲Dから範囲Fに侵入しようとする場合)には掘削停止モードが実行されて、アーム9やバケット10のシリンダ速度の指令がゼロ、すなわちアーム9又はバケット10による掘削動作が停止するので、目標掘削面にバケット10が侵入することを防止できる。また、他の場合には、通常掘削モードが実行されるので、目標掘削面に沿った掘削作業を行うことができる。
なお、上記条件から明らかであるが、掘削停止モードで停止されるのは、作業機1Aによる「掘削動作」であり、掘削動作に該当しない動作は停止されない。すなわち、掘削動作に該当するアームの引き動作は停止されるが、掘削動作には該当しない「アーム9の押し動作」は停止されない。そのため、目標掘削面から離れる方向にバケット10を移動させる動作が阻害されることはない。
ところで、範囲Fに侵入する瞬間にアームシリンダ6又はバケットシリンダ7の速度の指令を突然ゼロとすると急停止となりオペレータへの違和感が大きい。
そこで、本実施の形態では、掘削モード判定部434において、上記(1)〜(3)に加えて、(4)作業可能範囲D内においてブーム8の下げ方向で第1範囲(円弧E)に隣接する第2範囲(範囲G)を基に上記判定を行っている。そして、制御コントローラ40は、A)目標掘削面が円弧E(第1範囲)と交わり、かつ、バケット10の爪先位置が第2範囲(範囲G)に存在すると掘削モード判定部434で判定された場合には、減速掘削モードで領域制限制御を実行し、B)目標掘削面が第1範囲(円弧E)と交わり、かつ、バケット10の爪先位置が第1範囲(円弧E)上に存在すると掘削モード判定部434で判定された場合には、掘削停止モードで領域制限制御を実行し、C)目標掘削面が第1範囲(円弧E)と交わらず、または、バケット10の爪先位置が第1範囲(円弧E)及び第2範囲(範囲G)に存在しないと掘削モード判定部434で判定された場合には、通常掘削モードで領域制限制御を実行することとした。
これにより、バケット10の先端が第2範囲(範囲G)に侵入した場合に減速掘削モードが実行され、アーム9やバケット10のシリンダ速度が減速されるので、バケット10の先端が通常制御モード領域(範囲D)から減速掘削モード領域(範囲G)を経由して掘削停止モード領域(範囲F)に移動して停止する際のオペレータへの違和感を低減でき、操作フィーリングを向上できる。
図8に、本実施形態における制御コントローラ40の制御フローチャートを示す。まず、ステップ100にて、掘削モード判定部434は、ステップ100の実行時の円弧Eの位置情報と目標掘削面の位置情報を取得する。次に、ステップ101で、掘削モード判定部434は、目標掘削面が円弧Eと交わっているかどうか、別の言い方をすれば、図7に示す範囲Fに目標掘削面があるかどうかを、目標掘削面演算部42の出力(目標掘削面の位置情報)と円弧Eの位置を基に判断する。
ステップ101で範囲F内に目標掘削面がある(すなわち、目標掘削面が円弧Eと交わっている)と判断された場合、ステップ102に進む。この場合、アーム9やバケット10の掘削動作による目標面への侵入をブーム上げ動作のみでは回避できない。そのため、ステップ102にて、掘削モード判定部434は、作業機先端(バケット10の爪先)が図7に示す円弧E上に位置するかどうかを、作業機姿勢演算部41からの出力(バケット10の爪先位置)と円弧Eの位置を基に判定する。ここでバケット10の爪先が円弧E上に位置すると判定された場合にはステップ103に進む。
次に、ステップ103にて、目標アクチュエータ速度演算部433は、オペレータによるアーム9またはバケット10の掘削操作があるかどうかを、オペレータ操作検出装置52からの出力(圧力センサ71,72の出力)を基に判定する。ここで掘削操作があると判定された場合にはステップ104に進む。掘削操作がある場合、ブーム上げ動作では目標掘削面への作業機先端の侵入が避けられない。そのため、アーム9またはバケット10の掘削動作を停止させ、目標掘削面へのバケット10の侵入を防ぐ必要がある。
ステップ104では掘削モード判定部434が現在の制御モードを確認し、現在の制御モードが掘削停止モードである場合にはそれを維持し(ステップ121)、ステップ122に進む。ステップ104で現在の制御モードが掘削停止モードでない場合にはステップ130に進み、制御モードが通常掘削モードであるか否かの判定を行う。ステップ130で制御モードが通常掘削モードであると判定された場合には、掘削停止モードへの遷移を報知装置53で報知しつつ(ステップ132)掘削停止モードに遷移し(ステップ123)、ステップ122に進む。ステップ132のように報知装置53でモード遷移を報知すると、オペレータにモード遷移を認識させることができ、モード遷移に伴う動作変化への違和感を軽減できる。ステップ130で通常掘削モードでないと判定された場合には、減速掘削モードとなり、報知無しで掘削停止モードに遷移する。
ステップ122では、掘削停止モードが実行され、アーム9またはバケット10の掘削動作を停止させるために、アームシリンダ6またはバケットシリンダ7の目標速度を零とする。このとき、目標アクチュエータ速度演算部433は電磁比例弁制御部44に、アーム9またはバケット10の掘削動作を停止させるよう指令を出す。これにより電磁比例弁制御部44は、流量制御弁15b又は流量制御弁15cが中立位置に保持されるように電磁比例弁55a,55b又は電磁比例弁56a,56bを動作させる。ステップ122の処理が終了したらステップ109に進む。
ステップ101にて、目標掘削面が円弧Eと交わっていないと判定された場合は、通常掘削モードにてマシンコントロールを実施する。この場合、ステップ101からステップ105に進んで、掘削モード判定部434が現在の制御モードを確認し、通常掘削モードであればそれを維持し(ステップ127)、それ以外の場合では通常掘削モードに遷移する(ステップ129)。また、ステップ105には、後述するステップ106またはステップ107からも進むことがある。
ステップ102にて、作業機先端が図7に示す円弧E上にないと判定された場合、ステップ106に進む。ステップ106では、掘削モード判定部434は、作業機先端が作業可能範囲D内で円弧Eの近傍にあるかどうか、具体的には図7に示す減速掘削モード領域(範囲G)内にあるかどうかを判定する。ステップ106で範囲G外(すなわち通常掘削モード領域)であると判定されると、ステップ105に進む。一方、範囲G内にあると判定された場合はステップ107に進む。この場合、近い将来、アーム9やバケット10の掘削動作によって範囲Fに作業機先端が移動して掘削停止モードに遷移する可能性が高い。そこでステップ107ではアーム9またはバケット10の掘削操作があるかどうかを目標アクチュエータ速度演算部433が判定する。ステップ107でアーム9またはバケット10の掘削操作がない場合には、ステップ105へと進み目標アクチュエータ速度演算部433は通常掘削モードで領域制限制御を実行する。
ステップ107で掘削操作があると判断された場合にステップ108に進む。ステップ108では、掘削モード判定部434は、現在の制御モードが減速掘削モードであるか否かを判定し、現在の制御モードが減速掘削モードである場合にはそれを維持し(ステップ124)、ステップ125に進む。また、現在の制御モードが減速掘削モードでない場合には、ステップ134に進み、現在の制御モードが通常掘削モードか否かの判定を行う。現在の制御モードが通常掘削モードである場合には、減速掘削モードへの遷移を報知装置53で報知しつつ(ステップ136)減速掘削モードに遷移し(ステップ126)、ステップ125に進む。ステップ136のように報知装置53でモード遷移を報知すると、オペレータにモード遷移を認識させることができ、モード遷移に伴う動作変化への違和感を軽減できる。一方、ステップ134で現在の制御モードが通常掘削モードでないと判定された場合には、報知無しで減速掘削モードに遷移し(ステップ126)、ステップ125に進む。
ステップ125では、減速掘削モードが実行され、オペレータによるアーム9またはバケット10の掘削操作に対して、アームシリンダ6またはバケットのシリンダ7の目標速度を減速させる。このとき、目標アクチュエータ速度演算部433は電磁比例弁制御部44に、アーム9またはバケット10の掘削動作を減速させるよう指令を出す。これにより電磁比例弁制御部44は、パイロットライン145a又はパイロットライン146a,146bのパイロット圧が操作装置45b又は操作装置46aからの出力値よりも低下するように電磁弁55a又は電磁弁56a,56bを動作させる。さらに、目標アクチュエータ速度演算部433は、このアームシリンダ6またはバケットシリンダ7の速度にあわせて、作業機先端が目標掘削面に侵入しないようブーム上げ動作を実行するように電磁比例弁制御部44に指令を出す。これにより電磁比例弁制御部44は、電磁比例弁54aを通過した作動油が流量制御弁15aの油圧駆動部150aに作用するように電磁比例弁54aを動作させる。ステップ125の処理が終了したらステップ109に進む。
ステップ109では、現在の制御モードをオペレータに通達するよう報知装置53に指令を出す。
本実施形態においては、作業可能範囲D、円弧E及び範囲Gと目標掘削面の位置とを常に比較しているので、目標掘削面が掘削停止モード領域(範囲F)、あるいは減速掘削モード領域(範囲G)内にあることを、オペレータによる掘削操作の前に報知装置53により通達することが可能となる。その場合、図8のステップ101で円弧Eと目標掘削面が交わると判定された場合、掘削モード判定部434は、報知装置53に対して目標掘削面が作業不可能範囲にあると通達を出すよう指令する。また、目標掘削面が掘削停止モード領域(範囲F)に入らないようなショベルの停止位置を、報知装置53に表示することによりオペレータに通達しても良い。
なお、減速掘削モード領域(範囲G)の広さは、出荷時の初期設定のままとしても良いし、オペレータが任意の値を入力して変更可能にショベルを構成しても良い。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。
第1の実施形態では、ショベルの作業可能範囲D、円弧E及び範囲Gと、目標掘削面と作業機先端(バケット爪先)の位置関係から通常掘削モード、減速掘削モード、掘削停止モードとを区分していたが、本実施形態においては作業可能範囲D、円弧E及び範囲Gの情報を用いることなく、目標掘削面への侵入を防止できる構成としている。具体的には、図10に示すように、掘削モード判定部434は、目標アクチュエータ速度演算部433から電磁比例弁制御部44に出力されるブーム上げ指令と、姿勢情報変換部431から出力されるブームシリンダ5のシリンダ長(ブーム8の姿勢)に基づいて3つの制御モードの適用タイミングを区分している。
すなわち、本実施の形態では、掘削モード判定部434において、(1)目標掘削面への作業機1Aの侵入を回避するためにブームシリンダ5の流量制御弁15aへの制御信号として出力されるブーム上げ指令と、(2)ブームシリンダ5の伸縮状態(例えばシリンダ長)とを基に、領域制限制御の実行中に目標掘削面への作業機1Aの侵入をブーム8の上げ動作により回避可能か否かの判定を行う。そして、制御コントローラ40は、A)ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンドにないと掘削モード判定部434で判定された場合には、ブーム上げ指令を出力することで目標掘削面への作業機1Aの侵入を回避する通常掘削モードで前記領域制限制御を実行し、B)ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンドに達した状態でブーム上げ指令が要求されたと掘削モード判定部434で判定された場合には、アーム9又はバケット10による掘削動作を指示する制御信号が操作装置45b,46aから出力されていても、アーム9又はバケット10による掘削動作を停止させる掘削停止モードで前記領域制限制御を実行することとした。
これによりブーム上げ指令が出力されていない場合には、バケット10の爪先が円弧Eや範囲Fに存在していても掘削停止モードが実行されないので、アーム9やバケット10が不必要に停止することがなくなり、オペレータの操作フィーリングを向上できる。
さらに、本実施の形態では、A)ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンド又はストロークエンドの近傍に無く、かつ、ブーム上げ指令が要求されていないと掘削モード判定部434で判定された場合には、制御コントローラ40は、ブーム上げ指令を出力することで目標掘削面への作業機1Aの侵入を回避する通常掘削モードで領域制限制御を実行し、B)ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンドに達した状態でブーム上げ指令が要求されたと掘削モード判定部434で判定された場合には、アーム9又はバケット10による掘削動作を指示する制御信号が操作装置45b,46aから出力されていても、制御コントローラ40は、アーム9又はバケット10による掘削動作を停止させる掘削停止モードで領域制限制御を実行し、C)ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンド近傍(ストロークエンドは除く)に達した状態でブーム上げ指令が要求されたと掘削モード判定部434で判定された場合には、制御コントローラ40は、アーム9又はバケット10による掘削動作の速度を操作装置45b,46aによる指示速度よりも低減させる減速掘削モードで領域制限制御を実行することとした。
これにより、ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンド近傍に達した状態でブーム上げ指令が要求された場合に、減速掘削モードが実行され、アーム9やバケット10のシリンダ速度が減速されるので、ブームシリンダ長がさらに伸びて上げ方向のストロークエンドに達した状態でブーム上げ指令が要求された場合にアーム9やバケット10が停止しても、その動作に対するオペレータへの違和感を低減できる。
以下に図7のような目標掘削面437が設定された際に、本実施形態で掘削モード判定部434がどのように掘削モードを判定するかを示す。図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る制御コントローラ40の制御フローチャートを示す。まず、掘削モード判定部434は、姿勢情報変換部431より得られる情報から、ブームシリンダ5が伸長方向、つまりブーム8が上がる方向のストロークエンドに達しているかをステップ200で判断する。ステップ200で伸長方向のストロークエンドに達していると判断された場合、掘削モード判定部434は、ブーム上げ指令が目標アクチュエータ速度演算部433により生成されているかどうかをステップ201で判断する。
ステップ201でブーム上げ指令が生成されていると判断された場合にはステップ202に進む。この場合、ブーム上げによって目標掘削面への侵入を防ごうとするときだが、ストロークエンドに達しているとそれ以上ブーム8を上げることができない。よってストロークエンド且つブーム上げ指令が生成されている場合には、アーム9やバケット10といった、ブーム上げ要求を出す要因となる他の被駆動部材の動作を停止させる必要がある。そこで、ステップ202では、掘削モード判定部434は現在の制御モードが掘削停止モードであるか否かを判定し、現在の制御モードが掘削停止モードであればそれを維持し(ステップ210)、ステップ211に進む。
一方、ステップ202で現在の制御モードが掘削停止モード以外であると判定された場合には、掘削停止モードに遷移し(ステップ212)、ステップ211に進む。
ステップ211では、掘削停止モードが実行され、目標アクチュエータ速度演算部433は電磁比例弁制御部44に、アーム9又はバケット10の動作を停止させるよう指令を出す。ステップ211が終了したらステップ219に進む。
ステップ219では、掘削モード判定部434が、現在選択されている制御モードをオペレータに通知するように報知装置53に指令を出力する。また、現在の制御モードの通知に加えて、報知装置53は制御コントローラ40からの指令によって、ショベルを後退させ、目標掘削面437が範囲Fから作業可能範囲D内に入るよう移動させるようメッセージを表示させても良いし、音声等によるガイダンスを行っても良い。また、目標掘削面が範囲Fにあること(すなわち掘削不可能な領域に存在すること)を、報知装置53による画面表示または音声等によって通知しても良い。
ステップ201で、ブームシリンダ5が伸長方向のストロークエンドに達していても、ブーム上げ指令が生成されていないと判断された場合には、ステップ203に進み、現在の制御モードが通常掘削モードか否かを判定する。このとき、現在の制御モードが通常掘削モードであればそれを維持し(ステップ216)、ステップ217に進む。ステップ203で現在の制御モードが通常掘削モード以外であると判定された場合には、通常掘削モードに遷移し(ステップ218)、ステップ217に進む。
ステップ217では通常掘削モードが実行される。これにより、目標掘削面が作業不可能範囲に存在しない時や、オペレータの操作によってバケット10の爪先が目標掘削面に近づかない時は、オペレータは違和感なく作業機1Aを操作することが可能になる。
次に、ステップ200にて、ブームシリンダ5が伸長方向のストロークエンドに達していないと判断された場合にはステップ204に進む。このときは、まだ作業機先端は作業可能範囲内にある状況である。そこで、ステップ204で、掘削モード判定部434はブームシリンダ5が伸長方向のストロークエンド近傍に達しているかどうかを判定する。本実施形態では、ストロークエンド近傍に達しているか否かの判定に際して、ブームシリンダ5を伸長方向のストロークエンドまで伸ばしたブームシリンダ長に対してその時のブームシリンダ長の割合が閾値(例えば9割)以上かどうかで判定している。ブームシリンダ長の割合が閾値以上であれば、ストロークエンド近傍に達していると判定し、ステップ205に進む。
ステップ205では、目標アクチュエータ速度演算部433でブーム上げ指令速度が生成されているか否かを判定する。ステップ205でブーム上げ指令が生成されていると判断される場合は、ステップ206に進み、現在の制御モードが減速掘削モードか否かを判定する。ステップ206で現在の制御モードが減速掘削モードである場合にはそれを維持し(ステップ213)、ステップ214に進む。また、現在の制御モードが減速掘削モード以外の場合は減速掘削モードに遷移し(ステップ215)、ステップ214に進む。
ステップ214では減速掘削モードが実行され、目標アクチュエータ速度演算部433は、ブーム上げ指令を生成する要因である、アームシリンダ6やバケットシリンダ7の速度を操作による指示値よりも減速させ、その減速させたアームシリンダ6やバケットシリンダ7の動作速度に合わせてブーム上げも行われる。これにより、ブームシリンダ5が伸長方向のストロークエンドに達した場合のアーム9又はバケット10の急停止を防ぎ、オペレータに与える違和感を軽減することが可能となる。ステップ214が終了したらステップ219に進む。
ステップ204でストロークエンド近傍に達していないと判断された場合と、ステップ205でブーム上げ指令速度が生成されていないと判断された場合には、ステップ203に進み、通常掘削モードで制御を行う。この場合、オペレータの操作感を損ねることはない。
なお、ステップ204でブームシリンダ5が伸長方向のストロークエンド近傍に達しているかどうかを判断する閾値は、出荷時の初期設定のままとしても良いし、オペレータが任意の値を入力可能にショベルを構成しても良いし、ブームシリンダ5の応答の遅れを考慮してもストロークエンドに達しない値に自動調整されるようにしても良い。また、目標掘削面の傾斜角や、作業機1Aの姿勢に応じて閾値を変動させても良い。また、上記で説明した「割合」に代えて、ストロークセンサ等でブームシリンダ5の長さ(シリンダ長)を検出し、その長さが閾値以上かどうかで判定を行っても良い。
本実施形態によれば、ショベルの作業可能範囲情報無しに、通常掘削モードから、減速掘削モード、掘削停止モードに遷移し、目標掘削面への侵入防止が可能になる。このため、制御コントローラ40でのショベルの作業可能範囲情報を演算する負荷を軽減させることができる。
<付記>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
例えば、第1の実施形態では、ブーム最大上げ作業可能範囲(第1範囲)を便宜上円弧Eで定義した。しかし、ブーム角αが最小値で掘削作業が可能なバケット角γは1つではなく或る範囲をとることができ、例えば、アームピンから最も遠いバケット10の部分がバケット10の爪先となる範囲であれば掘削が可能である。そのため、ブーム最大上げ作業可能範囲は、線(円弧)ではなく、作業可能範囲D内において作業不可能範囲Fと隣接して位置し、面的な広がりを有する領域となり得る。したがって、ブーム最大上げ作業可能範囲は円弧(線)でなく領域で設定しても良い。この場合、範囲G(図7参照)は、作業可能範囲D内においてブーム最大上げ作業可能範囲とブーム下げ側で隣接して位置することになる。
第1の実施形態では、姿勢情報算出のためブーム8、アーム9、バケット10の角度を検出する角度センサ30,31,32を用いたが、角度センサではなくシリンダストロークセンサによりショベルの姿勢情報を算出するとしても良い。また、目標掘削面設定装置51に入力する目標掘削面情報は、あらかじめ制御コントローラ40の内部メモリに保存する形式や、制御コントローラ40の外部端末との通信により入手する形式や、オペレータが手動で入力する形式等であっても良い。また、ショベルが自身の位置情報を取得する必要がある場合には、GNSSアンテナを備えていても良い。
図8のフローチャートでは、通常掘削モードから掘削停止モードまたは減速掘削モードへ遷移する場合に報知装置53による報知を行ったが、全てのモードの遷移を報知装置53で行っても良い。また、図9のフローチャートでも同様に報知しても良い。図8,9に示したフローチャートは一例にすぎず、同じ結果が得られるのであれば、各処理の順番は適宜入れ替え可能である。また、発明の成立に不要な処理は適宜省略可能である。
また、上記2つの実施形態では、バケット10の爪先位置が目標掘削面に侵入しないようにするものとして説明したが、制御の基準とする点(基準位置)はバケットの先端である必要はなく、例えばバケットの背面のような、バケット上の任意の点であれば代替可能である。
上記では3つの制御モードが選択される場合を説明したが、いずれの実施形態についても、通常掘削モードと掘削停止モードの2つのモードのみが選択されるようにショベルを構成することもできる。
減速掘削モードでのアクチュエータの目標速度の低減量は、一定に設定しても良いし、円弧Eとバケット先端の距離が近いほど大きくなるように設定しても良い。
バケットシリンダ7及びアームシリンダ6の少なくとも一方の油圧室に圧力センサを搭載して掘削負荷を検出し、圧力が一定値以上となり実掘削が行われていると判断さるときにのみ、通常掘削モード、減速掘削モード、掘削停止モードへの遷移を判断するものとしても良い。この場合、実掘削が行われていない場合に掘削停止モードや減速掘削モードが実行されることが無くなるので、オペレータに与える違和感を軽減できる。
操作レバー1の操作量は、圧力センサ70,71,72だけでなく、例えば、レバーの傾倒量を検出する変位センサや、レバー傾斜角を検出する角度センサ等からも検出可能であり、操作装置が電気式レバーの場合であれば電気レバーから生成される指令電流の値を検出する電流センサ等からも検出可能である。
図11の流量制御弁15は油圧駆動されているが、これを電磁弁に代えて電動駆動しても良い。この場合、電磁弁54,55,56等が不要になるので回路が簡素化される。
上記では、ブーム上げ量が制限される状況として、ブームシリンダの上げ方向のストロークエンド及びその近傍での掘削作業を例に挙げたが、油圧ショベルの上方に存在する障害物によりブーム上げが制限される状況においても同様の効果を奏する。
また、上記では、ブーム、アーム及びバケットからなる作業機を備える油圧ショベルを例に挙げて説明したが、多関節型の作業機を備え、作業機の先端で目標掘削面に沿った掘削作業を行う作業機械であれば、本発明は適用可能である。