JP6618311B2 - ナノダイヤモンド含有メッキ膜およびナノダイヤモンド含有メッキ物 - Google Patents
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Description
メッキ膜形成対象の部材Xとしての銅板(純度99.9%,縦40mm×横30mm×厚さ2mm)について、脱脂洗浄とその後の水洗を行った後、前工程S1を行った。具体的には、まず、酸処理用の薬液100mlに、室温で2分間、部材Xを浸漬した(酸処理)。この酸処理用の薬液は、濃塩酸(12mol/Lの)を純水で2倍希釈して調製したものである。次に、酸処理を経た部材Xを、水洗した後、室温で1分間、官能化処理用の薬液約100mlに浸漬した(官能化処理)。この官能化処理用の薬液は、純水100mlに対して100mgの塩化スズ二水和物(SnCl2・2H2O)と100μlの濃塩酸(12mol/L)とを添加して調製したものである。次に、官能化処理を経た部材Xを、水洗した後、室温で1分間、触媒化処理用の薬液約100mlに浸漬した(触媒化処理)。この触媒化処理用の薬液は、純水100mlに対して10mgの塩化パラジウム(PdCl2)と10μlの濃塩酸(12mol/L)とを添加して調製したものである。
形成されたナノダイヤモンド含有メッキ膜について、JIS H 8503(1989)に準拠し、往復動摩擦摩耗試験機(商品名「HEIDON TYPE:38」,新東科学株式会社製)を使用して下記の条件で往復動摩擦摩耗試験を行った。その結果を図3のグラフに示す。図3のグラフにおいて、縦軸は動摩擦力Fk(gf)を表し、横軸は往復動の回数を表す(図4〜6においても同様である)。
メッキ膜表面を相対的に摺動する圧子:直径10mmのSUSボール
圧子を介してのメッキ膜に対する荷重:100g
圧子からの荷重を受けた状態で往復動するメッキ膜の往復移動距離:10mm
メッキ膜の往復動の速度:100mm/分
まず、ナノダイヤモンド粗生成物たる空冷式爆轟法ナノダイヤモンド煤(ナノダイヤモンド一次粒子径;4〜8nm,株式会社ダイセル製)200gに2Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った(ナノダイヤモンド精製のための酸処理)。この酸処理における加熱温度は85〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、ナノダイヤモンド精製のための酸化処理を行った。具体的には、前記デカンテーションの後の沈殿液に、2Lの60質量%硫酸水溶液と2Lの50質量%クロム酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で5時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は120〜140℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、酸化処理後のデカンテーションによって得られた沈殿液に、1Lの10質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は95〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いた。次に、当該デカンテーションによって得られた沈殿液に塩酸を加えてそのpHを2.5に調整した後、この沈殿液中の固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)について遠心沈降法による水洗を行った。具体的には、遠心分離装置を使用して当該沈殿液ないし懸濁液について固液分離を行う操作、その後に沈殿物と上清液とを分ける操作、及び、その後に沈殿物に超純水を加えて懸濁する操作を含む一連の過程を、固形分濃度(ナノダイヤモンド濃度)を6質量%に調整したときの懸濁液の電気伝導度が64μS/cmとなるまで、反復して行った。次に、このような水洗を経たスラリー300ml(固形分濃度6質量%)を、粉砕装置ないし分散機たるビーズミル(商品名「ウルトラアペックスミルUAM−015」,寿工業株式会社製)を使用して行う解砕処理に付した。本処理では、解砕メディアとしてジルコニアビーズ(直径0.03mm)を使用し、ミル容器内に充填されるビーズの量はミル容器の容積に対して60%とし、ミル容器内で回転するローターピンの周速は10m/sとした。また、装置を循環させるスラリーの流速を10L/hとして90分間の解砕処理を行った。次に、このような解砕処理を経たスラリーから、遠心分離を利用した分級操作(20000×g,10分間)によって粗大粒子を除去した。この操作によって得られた分級液(分散するナノダイヤモンド一次粒子を含有する)の固形分濃度を測定したところ、5.8質量%であった。この分級液に超純水を加えて固形分濃度を5質量%に調整し、ナノダイヤモンドの一次粒子がコロイド粒子として分散する黒色透明のナノダイヤモンド分散液(ナノダイヤモンド分散液D)を調製した。得られたナノダイヤモンド分散液Dについて、粒径D50(メディアン径)は5.4nm、電気伝導度は1410μS/cm、pHは9.14、ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位(25℃,ナノダイヤモンド濃度0.2質量%)は−49mVであった。
ナノダイヤモンド分散液に関する上記の固形分濃度は、秤量した分散液3〜5gの当該秤量値と、当該秤量分散液から加熱によって水分を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)について精密天秤によって秤量した秤量値とに基づき、算出した。
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記の粒径D50(メディアン径)は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した値である。測定に付されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度が0.5〜2.0質量%となるように超純水で希釈した後に、超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記のゼータ電位は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した値である。測定に付されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度0.2質量%への超純水による希釈を行った後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。また、測定に付されたナノダイヤモンド分散液のpHは、pH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」,アズワン株式会社製)を使用して確認した値である。
ナノダイヤモンド分散液D由来の分散ナノダイヤモンド一次粒子の濃度を5g/L(実施例1)に代えて2.5g/L(実施例2)とした以外は実施例1と同様のメッキ浴を使用したメッキ工程S2を行い、当該メッキ工程S2以外は実施例1と同様にしてナノダイヤモンド含有メッキ膜を形成した。このメッキ膜のナノダイヤモンド含有量は、2.4質量%であった。実施例2のメッキ膜について、実施例1と同様にして、往復動摩擦摩耗試験を行った。その結果を図4のグラフに示す。
ナノダイヤモンド分散液D由来の分散ナノダイヤモンド一次粒子の濃度を5g/L(実施例1)に代えて1g/L(実施例2)とした以外は実施例1と同様のメッキ浴を使用したメッキ工程S2を行い、当該メッキ工程S2以外は実施例1と同様にしてナノダイヤモンド含有メッキ膜を形成した。このメッキ膜のナノダイヤモンド含有量は、2.1質量%であった。実施例3のメッキ膜について、実施例1と同様にして、往復動摩擦摩耗試験を行った。その結果を図5のグラフに示す。
メッキ浴の調製のためのナノダイヤモンド一次粒子の供給材料として、ナノダイヤモンド分散液Dに代えて別のナノダイヤモンド一次粒子水分散液(商品名「Vox D」,ナノダイヤモンド濃度5質量%,粒径D50;5nm,pH9におけるゼータ電位;−55mV,エア・ブラウン株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして調製したメッキ浴(ナノダイヤモンド粒子5g/L)を使用してメッキ工程S2を行い、当該メッキ工程S2以外は実施例1と同様にしてナノダイヤモンド含有メッキ膜を形成した。このメッキ膜のナノダイヤモンド含有量は、2.3質量%であった。
メッキ浴の調製のためのナノダイヤモンド一次粒子の供給材料として、ナノダイヤモンド分散液Dに代えて別のナノダイヤモンド一次粒子水分散液(商品名「ナノアマンド」,ナノダイヤモンド濃度5質量%,pH5,粒径D50;5nm,pH5におけるゼータ電位;+50mV,株式会社ナノ炭素研究所製)を用いた以外は実施例1と同様にして調製したメッキ浴(ナノダイヤモンド粒子5g/L)を使用してメッキ工程S2を行い、当該メッキ工程S2以外は実施例1と同様にしてナノダイヤモンド含有メッキ膜を形成した。このメッキ膜のナノダイヤモンド含有量は、2.6質量%であった。
メッキ工程で使用したメッキ浴の組成が異なる点以外は実施例1と同様にして、無電解ニッケル‐リン合金メッキ膜を形成した。比較例1のメッキ工程で使用したメッキ浴は、ナノダイヤモンド粒子を含有せず、0.1mol/Lの硫酸ニッケルと、0.15mol/Lのホスフィン酸ナトリウムと、0.3mol/Lのクエン酸ナトリウムとを含有し、水酸化ナトリウム水溶液の添加によってpHが10.0に調整されたものである。比較例1のメッキ膜について、実施例1と同様にして、往復動摩擦摩耗試験を行った。その結果を図6のグラフに示す。
比較例1のメッキ膜(ナノダイヤモンド非含有の無電解ニッケル‐リン合金メッキ膜)においては、往復動回数の増加に従って動摩擦力が有意に上昇した。これに対し、実施例1,2,3のナノダイヤモンド含有メッキ膜においては、比較例1のメッキ膜におけるよりも、往復動回数増加に伴う動摩擦力の上昇は抑制されていた。比較例1のナノダイヤモンド非含有の無電解ニッケル‐リン合金メッキ膜よりも実施例1,2,3のナノダイヤモンド含有メッキ膜の方が、耐摩耗性が高いと評価することができる。
10 メッキ膜
10a 表面
11 マトリックス
12 ND粒子
20 メッキ物
S1 前工程
S2 メッキ工程
S3 後工程
Claims (4)
- 金属マトリックスと、
前記金属マトリックス中に分散しているナノダイヤモンド一次粒子とを含み、
厚さが1.5〜10μmである、ナノダイヤモンド含有メッキ膜であって、
前記メッキ膜のナノダイヤモンド含有量が0.5〜3質量%であり、
前記ナノダイヤモンド一次粒子は、粒径1〜7nmの爆轟法ナノダイヤモンド粒子であり、
前記金属マトリックスはニッケル‐リン合金である、ナノダイヤモンド含有メッキ膜。 - 無電解メッキ膜である、請求項1に記載のナノダイヤモンド含有メッキ膜。
- ナノダイヤモンド含有量が1質量%を超える、請求項1または2に記載のナノダイヤモンド含有メッキ膜。
- 部材と、
請求項1から3のいずれか一つに記載の、前記部材上のナノダイヤモンド含有メッキ膜と、を備えるナノダイヤモンド含有メッキ物。
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