以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。また、「酸(無水物)」、「(無水)…酸」とは、酸とその無水物の双方を含むことを意味する。
また、本発明において「全固形分」とは、感光性樹脂組成物中又は後述するインク中に含まれる、溶剤以外の全成分を意味するものとする。
また、本発明において、数平均分子量、及び、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)をさす。
また、本発明において、「アミン価」とは、特に断りのない限り、有効固形分換算のアミン価を表し、分散剤の固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表される値である。なお、測定方法については後述する。一方、「酸価」とは、特に断りのない限り有効固形分換算の酸価を表し、中和滴定により算出される。
また、本明細書において、結合手を「*」を用いて示す場合がある。
また、本明細書において「ポリウレタン骨格」とは、ポリウレタンで構成される骨格だけでなく、ポリウレタンウレアで構成される骨格も含む概念である。同様に、「ポリウレタン分散剤」とは、ウレタン結合を2以上有する分散剤だけでなく、ウレア結合を2以上有する分散剤も、ウレタン結合及びウレア結合を有する分散剤をも含む概念である。
〔感光性樹脂組成物〕
本発明の感光性樹脂組成物は、
色材(a)、
特定の分散剤(b)、
特定の光重合開始剤(c)、
アルカリ可溶性樹脂(d)及び
溶剤(e)
を含有する。
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは、更に光重合性モノマーを含有し、更に必要に応じて、チオール類、分散助剤(顔料誘導体)、密着向上剤、塗布性向上剤、現像改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等、その他の配合成分を含むものであり、通常、各配合成分が、溶剤(e)に溶解又は分散した状態で使用される。
本発明の特徴は、感光性樹脂組成物が、分散剤として、特定のポリウレタン分散剤(b−1)を含有すること、及び、光重合開始剤(c)としてオキシムエステル光重合開始剤(c−1)を含有することにある。
[分散剤(b)]
本発明の感光性樹脂組成物は、分散剤(b)として、特定のポリウレタン分散剤(b−1)を含むことを特徴とする。
[ポリウレタン分散剤(b−1)]
前記ポリウレタン分散剤(b−1)は、親溶媒基及び吸着基を有し、さらに下記式(i)で表される部分構造を含むものである。
上記式(i)中、Raは置換基を有していてもよい、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した炭素数7〜20の基を表し、*は結合手を表す。
前記式(i)における置換基を有していてもよいアルキレン基の炭素数は1〜20の範囲内であれば特に限定されないが、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、また、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで分散性を良好にすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高粘度化を防止することができる傾向がある。
アルキレン基は鎖状であっても環状であってもよく、また、鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基が連結したものであってもよい。分散性の観点からは、少なくとも環状の部分を有するものであることが好ましい。
アルキレン基の具体例としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘキシレンメチレン基及びシクロヘキシレンメチレンシクロヘキシレン基などが挙げられる。分散性を良好にするとの観点からは、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基、又はシクロヘキシレンメチレンシクロヘキシレン基が好ましく、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基、又はシクロヘキシレンメチレンシクロヘキシレン基がより好ましい。
置換基を有していてもよいアルキレン基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
前記式(i)における置換基を有していてもよいアリーレン基の炭素数は6〜20の範囲内であれば特に限定されないが、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで分散性を良好にすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高粘度化を防止することができる傾向がある。
アリーレン基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
また、置換基を有するアリーレン基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
この中でも分散性の観点からは、上記式(0−3)で表される基であることが好ましい。
前記式(i)における、置換基を有していてもよいアルキレン基と、置換基を有していてもよいアリーレン基とを連結した基の炭素数は7〜20の範囲内であれば特に限定されないが、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましく、また、15以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、13以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで分散性を良好にすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高粘度化を防止することができる傾向がある。
前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基が有する、アリーレン基の数は1以上であれば特に限定されないが、分散性の観点からは2以上であることが好ましく、3以下であることが好ましい。また、アルキレン基の数は1以上であれば特に限定されないが、分散性の観点からは3以下であることが好ましい。
具体的には、例えば、置換基を有していてもよいアリーレン基を1つと置換基を有していてもよいアルキレン基の1つを連結した基、及び置換基を有していてもよいアリーレン基2つを置換基を有していてもよいアルキレン基1つを介して連結した基が挙げられる。
前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
この中でも分散性の観点からは上記式(0−5)で表される基であることが好ましい。
これらのアルキレン基、アリーレン基、アルキレン基とアリーレン基とを連結した基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも取扱い易さ又は分散性の観点からはメチル基であることが好ましい。
これらの中でも、分散性の観点から、Raが前記式(0−5)で表される基、前記式(0−3)で表される基、又は前記式(0−1)で表される基であることがさらに好ましい。
また、ポリウレタン分散剤(b−1)は、後述の親溶媒基含有部分構造同士が、前記式(i)で表される部分構造で連結されていてもよい。同様に、後述の吸着基含有部分構造同士が、前記式(i)で表される部分構造で連結されていてもよい。また、後述の親溶媒基含有部分構造及び後述の吸着基含有部分構造が、前記式(i)で表される部分構造で連結されていてもよい。
このように、ポリウレタン分散剤(b−1)は、前記式(i)で表される部分構造を有することにより、親溶媒基含有部分構造及び吸着基含有部分構造を直線上に配置することができ、これら部分構造の可動域が広がることで溶媒への相溶性及び顔料への吸着性を高めることができる傾向があると考えられる。
また、ポリウレタン分散剤(b−1)は、主鎖を有し、該主鎖が前記式(i)で表される部分構造を含むことが好ましい。このように、主鎖に含まれる部分構造として、前記式(i)で表される直線性の高い部分構造を採用することで、親溶媒基含有部分構造及び吸着基含有部分構造を直線上に配置することができ、これら部分構造の可動域が広がることで溶媒への相溶性及び顔料への吸着性を高めることができる傾向があると考えられる。
なお、本明細書において、ポリウレタン分散剤(b−1)が有する主鎖とは、2つ以上のウレタン結合で連結された鎖であって、最も長い鎖を意味する。
好ましい実施形態として、主鎖のポリウレタン骨格が、直鎖構造である形態が挙げられる。この場合、主鎖において、親溶媒基との結合部、吸着基及び吸着基との結合部以外が、直鎖構造となる。このようにポリウレタン骨格が直鎖である場合、親溶媒基の溶媒への相溶性、又は吸着基の顔料への吸着が良好となる傾向がある。特に、ポリウレタン骨格が直鎖であることにより、ウレタン結合の窒素原子による顔料吸着が促進され、分散性が良好となる傾向がある。
また、ポリウレタン分散剤(b−1)における前記式(i)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、分散性の観点から、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、また、90モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。
同様に、分散性の観点から、ポリウレタン分散剤(b−1)における前記式(i)で表される部分構造の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
(吸着基)
ポリウレタン分散剤(b−1)が有する吸着基は特に限定されないが、分散性の観点から、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、及び窒素原子含有複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「特定の吸着基」と略記する場合がある。)であることが好ましい。
また、ポリウレタン分散剤(b−1)が主鎖を有する場合、分散性の観点から吸着基は、主鎖中の又は主鎖と結合した、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、及び窒素原子含有複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、前記吸着基を含む吸着基含有部分構造を含むことが好ましく、前述のとおり分散性の観点から、吸着基含有部分構造同士、又は吸着基含有部分構造と後述の親溶媒基含有部分構造とを前記式(i)で表される部分構造により連結したものであることが好ましい。
(吸着基含有部分構造1)
吸着基含有部分構造の具体的な部分構造については特に限定されないが、下記式(1)で表される部分構造が好ましい。
式(1)中、R1は、置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、アルキレン基、アリーレンアルキレン基、又はアリーレン基を表す。
*は結合手を表す。
R1のアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などが挙げられる。分散性の観点からはメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基又はシクロヘキシル基であることがより好ましく、メチル基又はシクロヘキシル基であることがさらに好ましい。
R1のアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、フェニル基及びナフチル基などが挙げられ、分散性の観点からはフェニル基であることが好ましい。
これらのアルキル基、アリール基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、顔料への吸着力の観点からはヒドロキシル基、メチル基又はエチル基が好ましい。
また、上述したR1の中でも、分散性の観点からはR1がアルキル基であることが好ましい。
また、R2及びR3におけるアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは7以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロペンチレンメチレン基、シクロヘキシレンメチレン基、シクロヘキシレンエチレン基及びシクロヘキシレンプロピレン基などが挙げられる。分散性の観点からはメチレン基、エチレン基、又はシクロヘキシレンメチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
R2及びR3におけるアリーレンアルキレン基(アルキレン基とアリーレン基を連結した基)の炭素数は特に限定されないが、通常7以上であり、好ましくは8以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基及びフェニレンプロピレン基などが挙げられる。分散性の観点からはフェニレンメチレン基であることが好ましい。
R2及びR3におけるアリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、フェニレン基及びナフチレン基などが挙げられ、分散性の観点からはフェニレン基であることが好ましい。
これらのアルキレン基、アリーレンアルキレン基及びアリーレン基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、分子間の立体障害を抑制する観点からはヒドロキシル基、メチル基又はエチル基が好ましい。
R2及びR3は、同じものであっても異なるものであってもよいが、分散性の観点からは同じものであることが好ましい。これらの中でも、分散性の観点からはR2及びR3がそれぞれ独立に、アルキレン基であることが好ましい。
前記式(1)で表される部分構造の具体例としては、以下のものが挙げられる。
なお、前記式(1)で表される部分構造においては、式(1)全体が3級アミノ基からなる吸着基となる。また、式(1)で表される部分構造と、他の吸着基含有部分構造又は親溶媒基含有部分構造とを、前記式(i)で表される部分構造で連結することで、式(1)で表される吸着基を、ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖中に配置することができる。この場合、前記式(1)の*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、他の例として、下記式(1’)で表される部分構造を有することが好ましい。
式(1’)中、R1〜R3及び*は前記式(1)中のそれと同義である。RAは置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基を表す。X−は1価のアニオンを表す。
RAのアルキル基又はアリール基としては、R1として挙げたものを好ましく採用することができる。
X−は1価のアニオンであれば特に限定されないが、分散性の観点から、X−が塩素アニオンなどのハロゲンアニオン、又はメチル硫酸アニオンであることが好ましく、ハロゲンアニオンであることがより好ましく、塩素アニオンであることがさらに好ましい。式(1’)の4級アンモニウム塩基は、式(1)の3級アミノ基を4級化することにより得ることができ、その場合、X−は4級化剤由来のアニオンである場合がある。
なお、前記式(1’)で表される部分構造においては、式(1’)全体が4級アンモニウム塩基からなる吸着基となる。また、式(1’)で表される部分構造と、他の吸着基含有部分構造又は親溶媒基含有部分構造とを、前記式(i)で表される部分構造で連結することで、式(1’)で表される吸着基を、ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖中に配置することができる。
また、他の具体例としては、以下に示す部分構造が挙げられる。以下の部分構造全体が窒素原子含有複素環基からなる吸着基となる。窒素原子含有複素環基からなる吸着基は、顔料とのイオン性結合、及びパッキング効果による疎水性結合を示すものであるため、3級アミノ基又は4級アンモニウム塩基と同様に作用して、良好な顔料吸着性を示すものと考えられる。
また、該部分構造と、他の吸着基含有部分構造又は親溶媒基含有部分構造とを、前記式(i)で表される部分構造で連結することで、該部分構造で表される吸着基を、ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖中に配置することができる。
前記式中、*は結合手を表す。
(吸着基含有部分構造2)
他の好ましい例としては、下記式(2−1)〜(2−3)で表される少なくとも1種の部分構造が好ましい。下記式(2−1)〜(2−3)で表される少なくとも1種の部分構造を有することにより、吸着部分の立体障害が緩和されることとなり、吸着部の空間自由度が上がることで効率的に顔料へ吸着が可能となる傾向がある。
式(2−1)中、Rα及びRβはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基を表す。
Rγ、Rδ及びRεはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。ただし、Rγが置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。またRγは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する少なくともいずれか1つのN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
*は結合手を表す。
式(2−2)中、Rα及びRβはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基を表す。
Rγ及びRηはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。ただし、Rγ及びRηがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。またRγ及びRηは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する少なくともいずれか1つのN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
*は結合手を表す。
式(2−3)中、Rα及びRβはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基を表す。
Rγ’及びRδはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。ただし、Rγ’が置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。またRγ’は、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
Rε’は直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。
Rζは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。ただし、Rζがアルキル基又はアリール基の場合、その水素原子の少なくとも1つが、3級アミノ基又は窒素原子含有複素環基で置換されていてもよい。
*は結合手を表す。
上記式(2−1)〜(2−3)において、Rα、Rβ及びRζのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは2以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などが挙げられる。分散性の観点からはメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基であることが好ましく、メチル基、又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
Rα、Rβ及びRζのアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、フェニル基及びナフチル基などが挙げられ、分散性の観点からはフェニル基であることが好ましい。
Rα及びRβは、同じものであっても異なるものであってもよいが、分散性の観点からは同じものであることが好ましい。
これらのアルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、分子間立体障害による顔料吸着を阻害しない観点からはヒドロキシル基、メチル基又はエチル基が好ましい。
また、分散性の観点からはRα及びRβがそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。また、分散性の観点からはRζが水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
上記式(2−1)〜(2−3)において、Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの置換基を有していてもよいアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。
アルキレン基は鎖状であっても環状であってもよく、また、鎖状のアルキレン基と環状のアルキレン基が連結したものであってもよい。分散性との観点からは、鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
具体的には、例えば、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、シクロペンチレンメチレン基、シクロヘキシレンメチレン基、シクロヘキシレンジメチレン基及びシクロヘキシレントリメチレン基などが挙げられる。分散性の観点からはメチレン基、ジメチレン基、又はトリメチレン基であることが好ましく、ジメチレン基又はトリメチレン基であることがより好ましい。
Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηが置換基を有していてもよいアルキレン基の場合における前記式(2−1)〜(2−3)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
上記式(2−1)〜(2−3)において、Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの、置換基を有していてもよいアルキレン基と、置換基を有していてもよいアリーレン基とを連結した基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、好ましくは7以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。また、アルキレン基の数は1以上であれば特に限定されないが、分散性の観点からは3以下であることが好ましい。
具体的には、例えば、置換基を有していてもよいアリーレン基の一つと置換基を有していてもよいアルキレン基の一つとを連結した基、置換基を有していてもよいアリーレン基の2つを置換基を有していてもよいアルキレン基の一つを介して連結した基、置換基を有していてもよいアルキレン基の2つを置換基を有していてもよいアリーレン基の一つを介して連結した基、及び置換基を有していてもよいアルキレン基と置換基を有していてもよいアリーレン基とを交互に連結した基が挙げられる。
前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
この中でも分散性の観点からは上記式(b3)で表される基であることが好ましい。
Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの少なくともいずれか1つが、前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合における前記式(2−1)〜(2−3)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
これらの中では、(2−1−b)、(2−2−b)、(2−3−b)などのように、Rγ又はRγ’が、置換基を有していてもよいアルキレン基と、置換基を有していてもよいアリーレン基とを連結した基であるものが、分散性の点で好ましい。この場合、Rδ、Rε、Rε’、及びRηはアルキレン基であることが分散性の点で好ましい。
上記式(2−1)〜(2−3)において、Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの置換基を有していてもよいアリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられ、分散性の観点からはフェニレン基であることが好ましい。
Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの少なくともいずれかがアリーレン基の場合における前記式(2−1)〜(2−3)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
これらの中では、(2−1−c)、(2−2−c)又は(2−3−c)などのように、Rγ又はRγ’がアリーレン基であるものが、分散性の点で好ましい。
前記式(2−1)〜(2−3)における、Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηのアルキレン基、アリーレン基、アルキレン基とアリーレン基とを連結した基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、取扱い易さ及び分散性の観点からはメチル基であることが好ましい。
前述のとおり、Rγ、Rγ’及びRηがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。これらの中でも好ましい結合としては分散性の観点から、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部がウレタン結合又はエステル結合で置換されたものが挙げられる。
このような場合における前記式(2−1)〜(2−3)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
特に、分散性の観点から、前記式(2−1)のRγが前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であり、かつ、そのアルキレン基を構成するメチレン基の一部がウレタン結合で置換された上記式(2−1−d’)のようなものであることが好ましい。
また、分散性の観点から、前記式(2−2)のRγ及びRηがアルキレン基であり、かつ、少なくともいずれか一方のアルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部がエステル結合で置換された上記式(2−2−d)又は(2−2−d’)のようなものであることが好ましい。
また、分散性の観点から、前記式(2−3)のRγ’、Rδ及びRε’がいずれも無置換のアルキレン基である前記式(2−3−a)のようなものであることが好ましい。また、前記式(2−3)のRγ’がアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であり、そのアルキレン基を構成するメチレン基の一部が、ウレタン結合、チオウレタン結合、エステル結合又はチオエーテル結合で置換された上記式(2−3−d)又は(2−3−d’)のようなものも好ましく用いられる。
また前述のとおり、Rγは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する少なくともいずれか1つのN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
特に、分散性の観点から、前記式(2−1)のRγが、Rδ及びRεと結合したN原子と共に、−NH−(C=O)−基を介してウレア結合していることが好ましい。このような場合の前記式(2−1)及び(2−2)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
また前述のとおり、Rγ’は、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。このような場合の前記式(2−3)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
同様に、Rηは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。このような場合の前記式(2−2)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
また、Rζがアルキル基又はアリール基の場合、その水素原子の少なくとも1つが、3級アミノ基又は窒素原子含有複素環基で置換されていてもよい。このような場合の前記式(2−3)の具体的構造としては、例えば、以下の構造が挙げられる。
以上で述べた前記式(2−1)〜(2−3)の中でも、分散性の観点からは、以下が好ましい。
前記式(2−1)においては、Rγは、前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であることが好ましく、この場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、ウレタン結合で置換されていることが好ましく、また、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合していることが好ましい。また、この場合、Rδ、Rεは、アルキレン基であることが好ましい。このような具体例としては、以下に示す前記式(2−1−e)が挙げられる。
また、前記式(2−1)においては、Rγは、アルキレン基であることが好ましく、この場合は、アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合で置換されていることが好ましい。また、この場合、Rδ、Rεは、アルキレン基であることが好ましい。このような具体例としては、以下に示す前記式(2−1−d)が挙げられる。
また、前記式(2−2)においては、Rγは、前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であることが好ましく、この場合は、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、ウレタン結合で置換されていることが好ましく、また、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合していることが好ましい。また、この場合、Rηは、アルキレン基が好ましい。このような具体例としては、以下に示す前記式(2−2−e)が挙げられる。
また、前記式(2−2)においては、Rγは、アルキレン基であることが好ましく、この場合は、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合で置換されていることが好ましい。また、この場合、Rηは、アルキレン基であることが好ましい。このような具体例は、以下に示す前記式(2−2−d)が挙げられる。
また、前記式(2−2)においては、Rγは、アルキレン基であることが好ましい。またこの場合、Rηは、アルキレン基であることが好ましく、前記アルキレン基を構成するメチレン基の一部が、少なくともエステル結合で置換されていることが好ましい。このような具体例は、以下に示す前記式(2−2−d’)が挙げられる。
また、前記式(2−3)においては、Rγ’及びRδはアルキレン基であることが好ましく、Rε’は直接結合又はアルキレン基であることが好ましく、この場合はRζは水素原子であることが好ましい。このような具体例としては、以下に示す前記式(2−3−a)が挙げられる。
また、前記式(2−3)においては、Rγ’は、前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であることが好ましく、この場合は、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、ウレタン結合及び/又はチオウレタン結合で置換されていることが好ましい。又、この場合、Rδは、アルキレン基であることが好ましく、Rε’は直接結合であることが好ましい。また、Rζは水素原子であることが好ましい。このような具体例としては、以下に示す前記式(2−3−d)が挙げられる。
また、前記式(2−3)においては、Rγ‘は、アルキレン基であることが好ましくこの場合は、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、及びチオエーテル結合で置換されていることが好ましい。また、この場合、Rδは、アルキレン基であることが好ましく、Rε’は直接結合であることが好ましい。また、Rζは水素原子であることが好ましい。このような具体例としては、以下に示す前記式(2−3−d’)が挙げられる。
なお、前記式(2−1)中のRα、Rβ、N及びRγが3級アミノ基からなる吸着基となる。同様に、前記式(2−2)中のRα、Rβ、N及びRγが3級アミノ基からなる吸着基となる。また、前記式(2−3)中のRα、Rβ、N及びRγ’が3級アミノ基からなる吸着基となる。これらの場合、式中の*はポリウレタン骨格におけるウレタン結合又はウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、前記式(2−1)〜(2−3)で表される部分構造と、他の吸着基含有部分構造又は親溶媒基含有部分構造とを、前記式(i)で表される部分構造で連結することで、式(2−1)〜(2−3)に含まれる吸着基を、ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖と結合したものとすることができる。
また、他の好ましい例としては、下記式(2−1’)〜(2−3’)で表される部分構造が好ましい。
式(2−1’)中、Rα〜Rε及び*は式(2−1)中のそれと同義である。RA及びX−は式(1’)中のそれと同義である。
式(2−2’)中、Rα〜Rη及び*は式(2−2)中のそれと同義である。RA及びX−は式(1’)中のそれと同義である。
式(2−3’)中、Rα〜Rζ及び*は式(2−3)中のそれと同義である。RA及びX−は式(1’)中のそれと同義である。
また、他の具体例として、以下に示す部分構造が挙げられる。以下の部分構造中、窒素原子含有複素環基が吸着基となる。
前記式中、*は結合手を表す。
特定の吸着基は、主鎖のポリウレタン骨格中に存在するよりも、主鎖のポリウレタン骨格に対して側鎖として存在するペンダント型であることが好ましい。特に、吸着基における窒素原子が、主鎖のポリウレタン骨格上の最も近接した原子から少なくとも1個の原子で隔てられて結合していることが好ましい。つまり、主鎖と結合した吸着基であることが好ましい。
特に、特定の吸着基中の窒素原子は、主鎖のポリウレタン骨格上の最も近接した原子から少なくとも2個の原子で隔てられていることがより好ましく、特定の吸着基の窒素原子は、主鎖のポリウレタン骨格上の最も近接した原子から少なくとも3個の原子で隔てられていることが特に好ましい。
吸着基における窒素原子は、主鎖のポリウレタン骨格上の最も近接した原子から20個以下の原子で隔てられていることが好ましく、10個以下の原子で隔てられていることがより好ましい。以下、この主鎖のポリウレタン骨格上の最も近接した原子と特定の吸着基の窒素原子との間の原子数を「介在原子数」と称す場合がある。
例えば、前記式(2−3−a)の部分構造を有する場合、吸着基中の窒素原子は、下記のように、ポリウレタン骨格中のメチン基の炭素原子から1個の炭素原子で隔てられたものとなる。
(吸着基含有部分構造の含有割合)
ポリウレタン分散剤(b−1)は、例えば、上述の吸着基含有部分構造を有するものとすることができることができ、上述の吸着基含有部分構造を1種類有するものとすることもでき、また、2種類以上を有するものとすることもできる。
例えば、吸着基の全てを3級アミノ基含有部分構造とすることもでき、同様に、吸着基の全てを4級アンモニウム塩基含有部分構造とすることもでき、吸着基の全てを、窒素原子を有する複素環基含有部分構造とすることもできる。
分散性及び相溶性の観点からは、吸着基の全てが3級アミノ基であることが好ましい。この場合、2種類以上の3級アミノ基を有するものとすることもできるが、分散性の観点からは1種類の3級アミノ基を有することが好ましく、前記式(1)及び(2−1)〜(2−3)から選ばれるいずれか1種類の3級アミノ基含有部分構造を有することがより好ましく、式(2−1)で表される3級アミノ基含有部分構造を有することがさらに好ましい。
一方で、アルカリ現像液に対する現像溶解性の観点からは吸着基の全てが4級アンモニウム塩基であることが好ましい。ただし、4級アンモニウム塩基は4級化剤により3級アミノ基を4級アンモニウム塩基化して作ることができるが、すべての3級アミノ基を4級アンモニウム塩基化すると4級化剤に由来する不純物が多く生成される傾向があることから、不純物の生成を抑制する観点から、3級アミノ基を一部残存させて、3級アミノ基と4級アンモニウム塩基とが併存するものとすることが多い。
従って、吸着基として3級アミノ基と4級アンモニウム塩基の両方を有することが好ましく、製造の効率化の観点から、前記式(1)と(1’)との組み合わせ、前記式(2−1)と(2−1’)との組み合わせ、前記式(2−2)と(2−2’)との組み合わせ、及び前記式(2−3)と(2−3’)との組み合わせから選ばれるいずれか1つの組み合わせであることがより好ましく、前記式(2−1)と(2−1’)との組み合わせであることがさらに好ましい。
3級アミノ基と4級アンモニウム塩基の両方を有する場合、その含有割合は特に限定されないが、分散性の観点から、3級アミノ基含有部分構造に対する4級アンモニウム塩基含有部分構造の含有割合が、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましく、また、99モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましく、60モル%以下であることがよりさらに好ましく、40モル%以下であることが特に好ましく、30モル%以下であることが最も好ましい。
同様に、分散性の観点から、ポリウレタン分散剤(b−1)における吸着基含有部分構造の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
また、特定の吸着基の含有割合は、100gのポリウレタン分散剤(b−1)に対して0.001モル以上が好ましく、0.01モル以上がより好ましく、0.05モル以上がさらに好ましく、また、0.8モル以下が好ましく、0.4モル以下がより好ましく、0.2モル以下がさらに好ましい。以下、この100gのポリウレタン分散剤(b−1)に対する特定の吸着基の割合を、特定の吸着基含有量として、「モル/100g」の単位で示す。
(親溶媒基)
ポリウレタン分散剤(b−1)は、親溶媒基を含む。ポリウレタン分散剤(b−1)が有する親溶媒基の種類は、溶媒との相溶性を示すものであれば特に限定されない。親溶媒基は、分散性の観点から、ポリエーテル鎖及びポリエステル鎖の少なくとも一方を含むことが好ましい。また、ポリウレタン分散剤(b−1)が主鎖を有する場合、分散性の観点から親しい溶媒基は、ポリエーテル鎖及びポリエステル鎖の少なくとも一方を含み、かつ、主鎖と結合したものであることが好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、前記親溶媒基を含む親溶媒基含有部分構造を含むことが好ましく、前述のとおり分散性の観点から、親溶媒基含有部分構造同士、又は前記吸着基含有部分構造と親溶媒基含有部分構造とを前記式(i)で表される部分構造により連結したものであることが好ましい。
親溶媒基含有部分構造の具体的な部分構造については特に限定されないが、下記式(3−1)〜(3−3)で表される部分構造が好ましい。式(3−1)〜(3−3)中のRθとO原子が親溶媒基であり、それ以外が親溶媒基との結合部である。
式(3−1)中、Rθはポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖を表す。
Rγ、Rδ及びRεはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。ただし、Rγが置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。またRγは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
またRγは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのO原子と共にウレタン結合していてもよく、また、カルボニル基を介してエステル結合していてもよい。
*は結合手を表す。
式(3−2)中、Rθはポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖を表す。
Rγ及びRηはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。ただし、Rγ及びRηがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。またRγ及びRηは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
またRγは、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのO原子と共にウレタン結合していてもよく、また、カルボニル基を介してエステル結合していてもよい。
*は結合手を表す。
式(3−3)中、Rθはポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖を表す。
Rγ’及びRδはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。ただし、Rγ’が置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。
またRγ’は、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのO原子と共にウレタン結合していてもよく、また、カルボニル基を介してエステル結合していてもよい。
Rε’は、直接結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基を表す。
Rζ’は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。ただし、Rζ’が置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基の場合、その水素原子の少なくとも1つが、Rθ−O−Rγ’−で置換されていてもよい。
*は結合手を表す。
Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’、及びRηにおける置換基を有していてもよいアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは7以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、シクロペンチレンメチレン基、シクロヘキシレンメチレン基、シクロヘキシレンジメチレン基、シクロヘキシレントリメチレン基などが挙げられ、分散性の観点からはジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、又はヘキサメチレン基であることが好ましく、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はペンタメチレン基であることがより好ましい。
上記式(3−1)〜(3−3)において、Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの、前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、好ましくは7以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。また、有するアルキレン基の数は1以上であれば特に限定されないが、分散性の観点からは3以下であることが好ましい。
具体的には、例えば、置換基を有していてもよいアリーレン基の一つと置換基を有していてもよいアルキレン基の一つとを連結した基、置換基を有していてもよいアリーレン基の2つを置換基を有していてもよいアルキレン基の一つを介して連結した基、及び置換基を有していてもよいアルキレン基の2つを置換基を有していてもよいアリーレン基の一つを介して連結した基が挙げられる。前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の具体例としては、前記式(b1)〜(b5)で表される基が挙げられる。
Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’、及びRηにおける置換基を有していてもよいアリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられ、分散性の観点からはフェニレン基であることが好ましい。
これらの中でも、分散性の観点からはRγ、Rγ’がアルキレン基、アリーレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であることが好ましくRδ、Rε、Rε’、及びRηがアルキレン基であることが好ましい。
前記式(3−1)〜(3−3)における、Rγ、Rγ’、Rδ、Rε、Rε’及びRηの置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、取扱い易さ及び分散性の観点からはアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
前述のとおり、Rγ、Rγ’及びRηがそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基の場合、前記アルキレン基を構成するメチレン基の少なくとも一部が、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、イミド結合、チオウレタン結合、チオエーテル結合、及びチオエステル結合からなる群から選ばれる少なくとも1つの結合で置換されていてもよい。
これらの中でも好ましい結合としては、分散性の観点から、Rγにおいてはウレタン結合又はエステル結合が挙げられ、Rγ’においてはチオウレタン結合、ウレタン結合又はエステル結合が挙げられる。また、Rηにおいては置換されないことが好ましい。特に、分散性の観点から、前記式(3−1)、(3−2)のRγがアルキレン基、又は前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であり、かつ、そのアルキレン基を構成するメチレン基の一部がウレタン結合、又はエステル結合で置換されたものが好ましい。その具体例としては以下のものが挙げられる。
また、前記式(3−3)においてはRγ’が前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であり、かつ、そのアルキレン基を構成するメチレン基の一部がウレタン結合及び/又はチオウレタン結合で置換されたものが挙げられる。その具体例としては以下のものが挙げられる。
また前述のとおり、Rγ及びRηは、それぞれ独立に、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合していてもよく、また、カルボニル基を介してアミド結合していてもよい。
これらの中でも好ましい結合としては、分散性の観点から、Rγにおいて、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合することが好ましく、また、Rηにおいては隣接するN原子と、上記結合を介さないほうが好ましい。
またRγ、及びRγ’は、それぞれ独立に、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのO原子と共にウレタン結合していてもよく、また、カルボニル基を介してエステル結合していてもよい。
特に、分散性の観点から、前記式(3−1)、(3−2)のRγがアルキレン基、又はアリーレン基であり、かつ、−NH−(C=O)−基を介して、隣接するN原子と共にウレア結合することが好ましい。また、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのO原子と共にウレタン結合することが好ましく、また、カルボニル基を介してエステル結合することが好ましい。その具体例としては以下のものが挙げられる。
また、前記式(3−3)においては、Rγ’が前記アルキレン基と前記アリーレン基とを連結した基であり、そのアルキレン基を構成するメチレン基の一部がチオウレタン結合で置換され、また、−NH−(C=O)−基を介して、隣接する1つのO原子と共にウレタン結合するものが挙げられる。その具体例は以下に挙げられる。
Rζ’は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。ただし、Rζ’がアルキル基又はアリール基の場合、その水素原子の少なくとも1つが、Rθ−O−Rγ’−で置換されていてもよい。
Rζ’におけるアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。前記範囲内であると分散性良好となる傾向がある。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などが挙げられる。分散性の観点からはメチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基又はシクロヘキシル基であることがより好ましく、メチル基又はシクロヘキシル基であることがさらに好ましい。
Rζ’におけるアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。具体的には、例えば、フェニル基及びナフチル基などが挙げられ、分散性の観点からはフェニル基であることが好ましい。
これらのアルキル基、アリール基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基:フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、顔料への吸着阻害を抑制する観点からはヒドロキシル基、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
また、上述したRζ’の中でも、分散性の観点からはRζ’が水素原子であることが好ましい。
Rθのポリエーテル鎖としては、例えば、下記式(3−4)で表されるものが挙げられる。また、ポリエステル鎖としては、例えば、下記式(3−5)又は(3−6)で表されるものが挙げられる。
上記式(3−4)中、Rbは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rcは置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。nは1〜100の整数を表す。*は隣接するO原子との結合手を表す。
また、上記式(3−5)及び(3−6)中、Rb’は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Rc’は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。nは1〜100の整数を表す。*は隣接するO原子との結合手を表す。
Rbのアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、また、好ましくは50以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などが挙げられる。分散性の観点からはメチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることが好ましく、メチル基、又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、アルカリ現像性への寄与、または基板密着への寄与の観点からはヒドロキシル基、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、Rcにおけるアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは7以下である。前記範囲内であると分散性が良好となる傾向がある。
具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、シクロペンチレンメチレン基、シクロヘキシレンメチレン基、シクロヘキシレンエチレン基及びシクロヘキシレンプロピレン基などが挙げられる。分散性の観点からはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、又はブチレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基、又はイソプロピレン基であることがより好ましい。
アルキレン基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。アルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、前記アリール基の炭素数は特に限定されないが、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。具体例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、前記アラルキル基の炭素数は特に限定されないが、7〜20であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。具体例としては、ベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、アルカリ現像性への寄与、または基板密着への寄与の観点からはヒドロキシル基、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
nは1〜100の整数であるが、分散性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、また、好ましくは60以下、より好ましくは40以下である。
Rb’のアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である。
また、Rb’のアルキル基の炭素数は、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤(e)の極性によって変えてもよい。溶剤(e)が極性溶媒の場合は、Rb’のアルキル基の炭素数は1以上で12以下が好ましい。一方、溶剤(e)が非極性溶媒の場合は、Rb’のアルキル基の炭素数は9以上で30以下が好ましい。前記範囲内であると分散性良好となる傾向がある。
具体的には、溶剤(e)が極性溶媒の場合は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナン−1−イル基、デカン−1−イル基、ウンデカン−1−イル基、又はドデカン−1−イル基が好ましい。
溶剤(e)が非極性溶媒の場合は、オクチル基、ノナン−1−イル基、デカン−1−イル基、ウンデカン−1−イル基、ドデカン−1−イル基、トリデカン−1−イル基、テトラデカン−1−イル基、ペンタデカン−1−イル基、イコサン−1−イル基又はトリアコンタン−1−イル基が好ましい。
また、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのような中極性溶媒では、デカン−1−イル基、ウンデカン−1−イル基、ドデカン−1−イル基、又はトリデカン−1−イル基が好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、例えば、ヒドロキシル基;カルボキシル基;メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。アルカリ現像性への寄与、または基板密着への寄与の観点からはヒドロキシル基、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、Rc’におけるアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上であり、好ましくは2以上、また、好ましくは50以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは26以下である。
また、Rc’のアルキレン基の炭素数は、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤(e)の極性によって変えてもよい。溶剤(e)が極性溶媒の場合は、Rc’のアルキレン基の炭素数は1以上で8以下が好ましい。一方、溶剤(e)が非極性溶媒の場合は、Rc’のアルキレン基の炭素数は9以上で26以下が好ましい。前記範囲内であると分散性良好となる傾向がある。
具体的には、溶剤(e)が極性溶媒の場合はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、又はオクチレン基(またはオクタメチレン基)が好ましい。
溶剤(e)が非極性溶媒の場合は、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、イコサメチレン基、又はトリアコンタメチレン基が好ましい。溶媒の極性によって、これらを組み合わすことが好ましい。
また、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのような中極性溶媒では、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、又はヘキシレン基が好ましい。
このように、Rθのポリエステル鎖としては前記式(3−5)又は(3−6)で表されるものが挙げられるが、合成の容易さの観点からは、前記式(3−5)で表されるものが好ましい。
なお、ポリウレタン分散剤(b−1)が主鎖を有する場合、式(3−1)〜(3−3)が、主鎖と結合した親溶媒基であり、式中の*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合又はウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
(親溶媒基の含有割合)
ポリウレタン分散剤(b−1)は、例えば、上述の親溶媒基含有部分構造を有するものとすることができ、上述の親溶媒基含有部分構造を1種類有するものとすることもでき、また、2種類以上を有するものとすることもできる。特に、ポリエーテル鎖を有する親溶媒基含有部分構造と、ポリエステル鎖を有する親溶媒基含有部分構造を共に有することが、分散効果がさらに大きくなるためより好ましい。
ポリエーテル鎖を有する親溶媒基含有部分構造に対するポリエステル鎖を有する親溶媒基含有部分構造の質量比率は、1/99以上が好ましく、3/97以上がより好ましく、5/95以上がさらに好ましく、また、99/1以下が好ましく、97/3以下がより好ましく、95/5以下がさらに好ましい。
分散性の観点からは、ポリウレタン分散剤(b−1)は、前記式(3−1)〜(3−3)から選ばれるいずれか1種類の部分構造を有することがより好ましく、式(3−1)で表される部分構造を有することがさらに好ましい。
同様に、分散性の観点から、ポリウレタン分散剤(b−1)における親溶媒基含有部分構造の含有割合は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがよりさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、親溶媒基及び吸着基以外に、その他の官能基を有するものであってもよい。その他の官能基としては、例えば、活性エネルギー線硬化性不飽和基などが挙げられる。具体的には、例えば、ビニル基、アクリロイル基及びメタアクリロイル基などの不飽和基が挙げられる。
このように、活性エネルギー線硬化性不飽和基を有することで、感光性組成物とした場合に感度が向上する傾向があると考えられるが、他方で分散時にこれら官能基が反応しゲル化する傾向があると考えられることから、経時安定性を考えた顔料分散の点では活性エネルギー線硬化性不飽和基を有さないことが好ましい。
(効果を奏する理由)
<分散性向上効果>
本発明で用いるポリウレタン分散剤(b−1)は、前記式(i)で表される部分構造を含むことを特徴とする。前記式(i)で表される部分構造を含むことで、親溶媒基又は吸着基、特に親溶媒基含有部分構造又は吸着基含有部分構造を直線上に配置することができ、溶媒への相溶性及び顔料全体への吸着性を高めることができるものと考えられる。また、ウレタン結合部位における窒素原子も顔料の吸着に寄与しており、吸着基との相乗効果によって、より一層、顔料吸着性が良好となっていると考えられる。
特に、親溶媒基を、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖を含むものとした場合には、その部位で感光性樹脂組成物中の溶剤(e)に親和して溶媒中に広がり、顔料が分散時に凝集しようとする際に、立体障害部となり、顔料が凝集するのを防ぐ機能を発揮する傾向がある。
また、ポリエーテル鎖とポリエステル鎖の極性を、溶媒極性又は感光性樹脂組成物中の後述のアルカリ可溶性樹脂(d)又は光重合性モノマーの極性に合うように構成すると、鎖部分が溶媒中に広がり易く立体障害作用が大きくなり、分散性が良好になる傾向がある。
特に、ポリエーテル鎖を有する親溶媒基と、ポリエステル鎖を有する親溶媒基を両方有することが好ましい。これらを両方有することにより、親溶媒基の極性を溶媒の極性に合うように調整しやすく、親溶媒基がより溶媒中に広がり、立体障害作用がさらに大きくなり、より良好な分散状態が得られ、長時間経過後も分散状態を安定に保つことができるようになる傾向があると考えられる。
さらに、吸着基は、主鎖のポリウレタン骨格から離れていることが好ましい。特定の吸着基が直鎖ポリウレタン骨格から離れていることにより、顔料吸着時の立体障害が少なくなり顔料吸着性がさらに向上する傾向があると考えられる。
<アルカリ現像処理耐性向上及び耐熱性向上による高微細細線の形成>
ポリウレタン分散剤(b−1)を含有する感光性樹脂組成物を用いることで、タブレット又は高精細ディスプレイなどに適用される高精細なカラーフィルターを製造することで、特にアルカル現像又は高温処理される工程においても微細な高細線を安定して形成することができる。
微細な細線を安定して形成するには、この細線形状がアルカリ現像時に安定して形成され、かつ、その後の200℃以上の高温加熱処理による硬化工程でも熱変形が少なくこの形状が安定して保たれることが必要である。
ポリウレタン分散剤(b−1)を含有する感光性樹脂組成物は、顔料と分散剤との吸着力が強いことに起因してアルカリ現像液への耐性が高くなるため、紫外線照射後のアルカリ現像時に一旦形成された微細な細線が、さらにアルカリ現像液中に浸漬された場合においても、該細線において基板と密着している部分への現像液の浸透が抑制され、さし込みの発生、はがれの発生、浸食によるテーパー形状の変形が防止されると考えられる。また、現像後、200℃以上で高温処理して硬化させる場合にも、顔料と分散剤との吸着が弱くならず、熱変形が少ないために微細な細線形状が安定に保たれると考えられる。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、前記式(i)で表される部分構造を有しているため、前述のとおり、顔料全体に吸着し易く、また、ウレタン結合又は吸着基の部分で顔料と強く吸着して、顔料を包み込むことができると考えられる。
特に、親溶媒基をポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖を含むものとした場合には、該親溶媒基は顔料の外側に広がっていく機能を有し、カラーフィルタ−を製造する工程において、アルカリ可溶性樹脂又は紫外線によって架橋した光重合性モノマーなどと、よく相溶し、からみ合う傾向がある。
このように、ポリウレタン分散剤(b−1)の顔料吸着性及び溶媒親和性により、アルカリ現像液への耐性及び高温処理への耐性が改善されると考えられる。特に紫外線が深部まで届きにくく深部の硬化が弱い、カーボンブラックなどの顔料含有割合が高い感光性樹脂組成物において効果的である。
特に後述する光重合開始剤(c)として、光吸収作用とラジカル発生作用を併せ持ち、少量で高感度となるオキシムエステル光重合開始剤(c−1)をポリウレタン分散剤(b−1)と組み合わせて用いた場合、光重合性モノマー又はアルカリ可溶性樹脂の紫外線照射による架橋が促進され、これらとポリウレタン分散剤の親溶媒基とのからみ合いがより強固となり、耐アルカリ現像性及び耐熱性が向上し、微細な細線形状を安定して形成することが可能となると考えられる。
特に、アルカリ可溶性樹脂として芳香環を多く含む樹脂を用いた場合には、その芳香環に起因する高い耐熱性及び高い耐アルカリ性、また、3次元的に大きな立体障害によっても耐熱性及び耐アルカリ性が向上し、微細な細線形状をより一層安定して形成することができる傾向がある。
また、カーボンブラックなどの遮光剤を用いる場合には、その平均一次粒径が小さい方が、このポリウレタン分散剤(b−1)がより顔料を取り込みやすくなり、耐アルカリ現像性及び耐熱性がさらに向上し、微細な細線形状をより一層安定して形成することができる傾向がある。
ポリウレタン分散剤(b−1)がポリエーテル鎖を有する親溶媒基とポリエステル鎖を有する親溶媒基の両方含む場合、それらは高分子のアルカリ可溶性樹脂又は紫外線で架橋した光重合性モノマーと相溶し易く、よりからみやすくいため、アルカリ現像液への耐性及び高温処理への耐性が向上する傾向がある。
また、さらにポリエーテル鎖が長鎖のアルキレンオキシドを有する場合には、アルカリ可溶性樹脂又は光重合性モノマーとより相溶し、からみやすくなって、耐アルカリ性及び耐熱性が向上し、より好ましい。
また、吸着基は、主鎖のポリウレタン骨格から、離れていることが好ましい。吸着基が主鎖のポリウレタン骨格から離れていることにより、この吸着基が顔料に吸着する際の立体障害が小さくなり、ポリウレタン分散剤(b−1)が顔料を取り込みやすくなり、さらにアルカリ現像液への耐性及び高温処理への耐性が増加する傾向がある。
[ポリウレタン分散剤(b−1)の製造方法]
ポリウレタン分散剤(b−1)は、例えば、ジイソシアネート化合物を用いて製造することができる。また、吸着基は、イソシアネート基と反応する官能基である、水酸基、イミノ基、又はチオール基を2個有し、かつ、該イソシアネート基と反応しない吸着基を1個以上有する化合物(以下、「吸着基導入化合物」と称す場合がある。)を用いて得ることができる。
前記吸着基導入化合物とジイソシアネート化合物が反応して結合することにより、直鎖構造のポリウレタン骨格を形成することができる。また、該吸着基導入化合物中に含まれる吸着基は、感光性樹脂組成物中の色材(a)である顔料に吸着する吸着基である。
前記吸着基導入化合物中における特定の吸着基の構造によって、該吸着基がポリウレタン骨格中に含まれる場合と、ポリウレタン骨格の側鎖となって、主鎖のポリウレタン骨格に結合したペンダント型吸着基になる場合とがある。
ポリウレタン分散剤(b−1)のポリウレタン骨格中のウレタン結合などでも顔料に吸着するが、顔料表面に吸着する吸着基をさらに有し、それがポリウレタン骨格に組み込まれるか、ポリウレタン骨格の側鎖となってペンダント型の吸着基になることにより、さらに良好な顔料吸着性を示すものとなる。吸着基はペンダント型の吸着基の方が、顔料吸着時の立体障害が小さくなる傾向があることから好ましい。これらの詳細については、後述する。
ポリウレタン分散剤(b−1)に含まれる親溶媒基は、その一方の末端のみに水酸基、イミノ基又はチオール基を2個有する化合物を用いることによって、この2個の基がイソシアネート基と反応することでポリウレタン骨格に結合できる。
ポリウレタン分散剤(b−1)に含まれることが好ましい親溶媒基のポリエーテル鎖は、その一方の末端のみに水酸基、イミノ基又はチオール基を2個有する化合物を用いることによって、この2個の基がイソシアネート基と反応することでポリウレタン骨格に結合できる。他方の末端にイソシアネート基と反応する基がある場合は、この基をアルキル基などで置換してイソシアネート基と反応しないようにすることが好ましい。
このように、片末端のみでジイソシアネート化合物と結合し、主鎖のポリウレタン骨格から側鎖として延びるように(以下、「横方向」と称す。)結合させることで親溶媒基のポリエーテル側鎖を形成することができる。これらの詳細については、後述する。
同様に、親溶媒基に含まれることが好ましいポリエステル鎖も、その一方の末端のみに水酸基、イミノ基又はチオール基を2個有する化合物を用いることによって、この2個の基がイソシアネート基と反応することでポリウレタン骨格に結合できる。他方の末端にイソシアネート基と反応する基がある場合、置換によりイソシアネート基と反応しないようにすることが好ましい。
このように、片末端のみでジイソシアネート化合物と結合し、主鎖のポリウレタン骨格から横方向に結合させることで親溶媒基のポリエステル側鎖を形成することができる。これらの詳細についても、後述する。
[ポリウレタン分散剤(b−1)を構成する化合物(b−a)、(b−b)、(b−c)]
ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖となるポリウレタン骨格は、本質的に直鎖であることが好ましい。この直鎖のポリウレタン骨格を形成するためのポリイソシアネート化合物としては、前述のとおり、イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物(b−a)を用いることが好ましい。
前記ジイソシアネート化合物(b−a)と、イソシアネート基と反応する官能基を2個有し、かつ、1個以上の吸着基を有する吸着基導入化合物(b−b)、及び、一方の末端のみにイソシアネート基と反応する官能基を2個有し、かつ、親溶媒基を含む化合物(b−c)を結合することにより、主鎖である直鎖構造のウレタン骨格と、該主鎖に結合した親溶媒基と、吸着基を有するポリウレタン分散剤(b−1)を得ることができる。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、ポリウレタン骨格を幹ポリマーとし、親溶媒基を枝ポリマーとしたグラフト重合体であり、幹ポリマーの直鎖ポリウレタン骨格の主鎖中に又は主鎖と結合した、特定の吸着基を有するものであることが好ましい。
[化合物(b−a);ポリウレタン骨格を構成するジイソシアネート化合物]
前記ジイソシアネート化合物(b−a)としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサンジイソシアネート(HDI)、α,α−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(4,4’−MDI)、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート(2,4’−MDI)若しくはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(HMDI)などのジイソシアネート化合物、又はこれらのジイソシアネート化合物の混合物であることが好ましい。
これらのうち、TDI、IPDI及びMDIのいずれかであることが好ましく、TDI及び/又はMDIであることがより好ましい。ジイソシアネート化合物(b−a)としては上記具体例以外のジイソシアネート化合物も用いることができる。
ジイソシアネート化合物(b−a)の化合物のいくつかを左下に例示するが、これにより、ポリウレタン分散剤(b−1)に右下の部分構造を導入することができる。
前記式中、*は、ウレタン結合における酸素原子、又はウレア結合における窒素原子との結合手を表す。
上記以外にも、2個のイソシアネートを有するジイソシアネート化合物であれば、直鎖ポリウレタン構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入するジイソシアネート化合物(b−a)として適用できる。
[化合物(b−b);イソシアネート基と反応する官能基を2個有し、かつ、少なくとも1個以上の吸着基を有する化合物]
ポリウレタン分散剤(b−1)中に含まれる吸着基は、前記ジイソシアネート化合物(b−a)とポリウレタン骨格を形成するために、イソシアネート基と反応する官能基を2個有する吸着基導入化合物(b−b)から得ることができる。
イソシアネート基と反応する官能基としては、水酸基又はイミノ基が好ましい。該官能基を2個有する場合の具体例としては、1個が水酸基であり、かつ、もう1個がイミノ基である場合、又は2個とも水酸基である場合がより好ましく、2個とも水酸基であることがさらに好ましい。
この化合物(b−b)がイソシアネート基と反応する官能基以外に塩基性基を有する場合、この塩基性基は、イソシアネート基と反応しないものとすることが好ましい。この種の塩基性基を有する化合物としては、例えば、脂肪族第三級アミン、ヒンダード芳香族アミン及び脂環族又は芳香族の窒素複素環化合物が挙げられる。ヒンダード芳香族アミンとしては、例えば、その2位及び/又は6位に立体障害基を有するフェニルアミンが挙げられる。
この化合物(b−b)とジイソシアネート化合物(b−a)によるウレタン結合及び/又はウレア結合によって前記式(1)、(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入させることができる。
式(1)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入させることができる化合物(b−b)は、イソシアネート基と反応する2個の官能基は2個とも水酸基のものが挙げられる。この2個の水酸基と、ジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基がウレタン結合する。具体例は後述する。
式(2−1)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入させることができる化合物(b−b)は、イソシアネート基と反応する2個の官能基が2個とも水酸基のものが挙げられ、この2個の水酸基とジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基がウレタン結合する。具体例は後述する。
式(2−2)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入させることができる化合物(b−b)は、式(2−2)で表される部分構造におけるN原子の結合手が水素原子と結合したイミノ基と、O原子の結合手が水素原子と結合した水酸基を有するものが挙げられる。このイミノ基及び水酸基と、ジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基が、それぞれウレア結合及びウレタン結合をする。具体例は後述する。
式(2−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に含有させることができる化合物(b−b)は、イソシアネート基と反応する2個の官能基が2個とも水酸基のものが挙げられ、この2個の水酸基とジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基がウレタン結合する。具体例は後述する。
[式(1)で表される部分構造を導入するための化合物(b−b)]
化合物(b−b)が、式(1)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入する化合物である場合、化合物(b−b)の2個の水酸基と、ジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基の結合によって、式(1)で表される部分構造全体の3級アミン構造が、ポリウレタン骨格に組み込まれる。
この場合の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン(NMDA)及びN−フェニルジエタノールアミン(NPDA)などが挙げられる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入できる。これは上記式(1)で表される部分構造に相当する。それ以外にも式(1)で表される部分構造を含み、かつ、その末端に水酸基を有するものであればポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用することができる。また、水酸基に代えて、チオール基又はアミノ基等を有するものを用いることでも、類似のポリウレタン化合物を得ることができる。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
[式(2−1)〜(2−3)で表される部分構造を導入するための化合物(b−b)]
吸着基導入化合物(b−b)が、前記式(2−1)、(2−2)、又は(2−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入する化合物の場合、化合物(b−b)のイソシアネート基と反応する2個の官能基と、ジイソシアネート化合物(b−a)のイソシアネート基との結合によって、吸着基である式(2−1)、(2−2)、又は(2−3)中のRα、Rβ、N及びRγ(Rγ’)は、ポリウレタン骨格から離れて存在したものとなる。
吸着基導入化合物(b−b)の中でも、式(2−1)、(2−2)、又は(2−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入できる化合物が、前記の<分散性向上効果>及び<耐アルカリ現像液向上及び耐熱性向上による高微細細線の形成>に記載した理由により、好ましい。
式(2−1)、(2−2)、又は(2−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入する吸着基導入化合物(b−b)は、好ましくは水酸基及び/又はイミノ基を有し、ジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基とウレタン結合及び/又はウレア結合で結合し、ポリウレタン骨格を形成する。
この場合は、式(2−1)、(2−2)、又は(2−3)で表される部分構造中のN原子、Rδ及びRε(Rε’)、O、Rη、及びC原子がポリウレタン骨格に組み込まれるが、3級アミンのRα、Rβ、N及びRγ(Rγ’)である吸着基はポリウレタン骨格に結合することでポリウレタン骨格から離れている。その結果、3級アミンの窒素原子が、ポリウレタン骨格上の最も近接した原子から少なくとも1個の原子で隔てられているようになっている。
こうした、主鎖の直鎖構造のポリウレタン骨格から離れて横方向に結合した3級アミンは、顔料表面に対してより良好な吸着機能を有する傾向がある。3級アミンは、その一部または全部を4級化して、4級アンモニウム塩としてもよい。
4級アンモニウム塩としては、例えば、式(2−1’)、(2−2’)、又は(2−3’)で表される部分構造における、Rα、Rβ、RA、N+及びRγ(Rγ’)である吸着基が挙げられる。
この場合、前記吸着基はポリウレタン骨格に結合することでポリウレタン骨格から離れており、その結果、4級アンモニウム塩基の窒素原子が、ポリウレタン骨格上の最も近接した原子から少なくとも1個の原子で隔てられているようになっている。
これらの吸着基導入化合物(b−b)のうち、式(2−1)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)中に導入できる化合物の具体例には以下のような例が挙げられるが、それ以外にも、式(2−1)で表される部分構造を含み、その末端にイソシアネート基と反応する官能基を2個有してればポリウレタン分散剤(b−1)に適用することができる。
式(2−1)で表される部分構造は、少なくとも1個以上の3級アミノ基を有し、かつ水酸基を1個有する化合物(b−b1)などから得られる。その具体的な反応例は以下のとおりである。
まず、前記化合物(b−b1)の水酸基を、トルエンジイソシアネートなどの2つのイソシアネート基を含有する化合物の一方のイソシアネート基と反応させる。次に、もう一方のイソシアネート基と、ジエタノールアミンなどの1つの2級アミノ基および少なくとも2つの活性水酸基を含有する化合物における2級アミノ基と反応させる。これにより、化合物(b−b1)に2つの水酸基を導入させることができる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは上記式(2−1)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、式(2−1)で表される部分構造を導入する化合物は、以下の方法でも得ることができる。具体的には、少なくとも1個以上の3級アミノ基を有し、かつ、エチレン性不飽和基を有する化合物と、ジエタノールアミンなどの1つの2級アミノ基および少なくとも2つの活性水酸基を含有する化合物の2級アミノ基とマイケル付加をさせる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは上記式(2−1)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、式(2−1)で表される部分構造を導入する化合物は以下の方法でも得られる。例えば、3級アミノ基と1個の水酸基を有する化合物を、イソシアネート基とアクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させ、水酸基とイソシアネート基とをウレタン結合させることで3級アミノ基を有する化合物に不飽和基を導入でき、これとジエタノールアミンの2級アミノ基をマイケル付加させる方法などもある。この方法によっても、2個の水酸基を導入できる。
また、式(2−1)で表される部分構造を導入する化合物として以下のような化合物がある。左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これも前記式(2−1)で表される部分構造に相当する。それ以外にも、式(2−1)で表される部分構造を含み、かつ、その末端に水酸基を2個有してればポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用される。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、式(2−2)で表される部分構造を導入する化合物は、以下の方法で得ることができる。具体的には、ジメチルアミノプロピルアミンなどの1個の3級アミノ基と1個の1級アミノ基を有する化合物に、ヒドロキシエチルアクリレートなどの1個の水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物をマイケル付加させることにより得られる。これにより、エチレン性不飽和基と1級アミノ基のマイケル付加より得られるイミノ基と、水酸基を有する化合物が得られる。
また、同様に、モノエタノールアミンなど1個の水酸基と1級アミノ基を有する化合物と、2−(ジメチルアミノ)−エチルアクリレートなどの1個の3級アミノ基とエチレン性不飽和基を有する化合物のマイケル付加によっても、3級アミノ基の吸着基、水酸基及びイミノ基を有する化合物が得られる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(2−2)で表される部分構造に相当する。それ以外にも、前記式(2−2)で表される部分構造を含み、かつ、その末端に1個の水酸基及びイミノ基を有していれば、ポリウレタン分散剤(b−1)に適用される。
前記式中、酸素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、同ウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、式(2−3)で表される部分構造を有する化合物として以下のような化合物がある。例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(2−3)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
それ以外にも、前記式(2−3)で表される部分構造を含み、その末端に水酸基を2個有していれば、ポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用することができる。
例えば、上記化合物の2個の水酸基の代わりに、2個の1級及び/又は2級アミノ基を置換した化合物もポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用することができる。その他、特定の吸着基を1個以上含み、2個の1級及び/又は2級アミノ基を置換した化合物もポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用することができる。また、水酸基を1個のみ有する化合物(b−b1)と、チオグリセロールの反応から式(2−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1−1)に導入できる。
その具体的反応例は、以下のとおりである。まず、前記化合物(b−b1)の水酸基を、トルエンジイソシアネートなどの2つのイソシアネートを含有する化合物の一方のイソシアネート基と反応させる。
次に、もう一方のイソシアネート基と、チオグリセロールなどの1つの活性チオール基および少なくとも2つの活性水酸基を含有する化合物の活性チオール基と反応させる。これにより、化合物(b−b1)に2つの水酸基を導入させることができる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(2−3)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
[窒素原子含有複素環基を導入するための化合物(b−b)]
化合物(b−b)として、窒素原子を含有する複素環化合物を用いることで、ポリウレタン分散剤(b−1)に良好な顔料吸着機能を付与することができる。これらの窒素原子を含有する複素環がポリウレタン骨格に組み込まれる場合の、その窒素原子を含有する複素環基を導入するための化合物と、導入される構造の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。それ以外にも、イソシアネート基と反応する2つの官能基が、複素環上の異なる位置に直接結合しているか、又は1〜10個の原子を介して複素環上の異なる位置に結合している化合物を用いることもできる。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、窒素原子含有複素環基が、主鎖のポリウレタン骨格から少なくとも1個以上の原子を介して離れている場合は、以下のような化合物を用いることができる。例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。
それ以外にも窒素原子を含有する複素環化合物の環と、1〜20個の原子を介して結合している1本の側鎖の末端にイソシアネート基と反応する官能基を2個含有している化合物も用いることができる。
酸素原子に隣接する*は、ポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、同ウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
これらの化合物も、前記式(2−1)又は(2−2)で表される部分構造と同様の方法により得ることができる。また、前記式(2−3)で表される部分構造に相当する3級アミノ基の部分が窒素原子を含有する複素環化合物の構造の場合も、同様に有効であり、ポリウレタン分散剤(b−1)に適用できる。
これらの場合、化合物(b−b)の窒素原子を含有する複素環化合物が、ポリウレタン骨格から、少なくとも原子1個以上離れたペンダント型吸着基となる。ポリウレタン化合物(b−1−1)は、このペンダント型吸着基を含有する方が、前記、<分散性向上効果>並びに<耐アルカリ現像液向上及び耐熱性向上による高微細細線の形成>の部分で述べた理由により好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)の合成に用いる吸着基導入化合物(b−b)は、その他の公知の一般的方法によっても得ることができる。
[4級アンモニウム塩基を導入する方法]
ポリウレタン分散剤(b−1)に4級アンモニウム塩基を導入する方法としては、例えば、まず式(2−1)〜(2−3)で表される部分構造を導入するための化合物を用いることでポリウレタン分散剤(b−1)に3級アミノ基を導入し、次に既知の任意の4級化剤を用いることで該3級アミノ基を4級化する方法が挙げられる。
好ましい4級化剤は、アルキルハライド、アラルキルハライド、ジアルキルカーボネート、ジアルキルサルフェート又はエポキシドである。特に好ましい4級化剤は、ジメチルサルフェート、塩化ベンジル又はスチレンオキシドである。3級アミノ基は、その一部を4級アンモニウム塩化してもよく、すべての3級アミノ基を4級アンモニウム塩化してもよい。
また、これらの3級アミノ基は既知の任意の有機酸化合物と塩を形成してもよい。好ましい有機酸化合物は、ビニルスルホン酸などの有機スルホン酸化合物、リン酸ジメタクロイルオキシエチル又はフェニルホスホン酸などの有機リン酸化合物などである。
[化合物(b−c);片末端でイソシアネート基と反応する2個の官能基を有し、親溶媒基を含む化合物]
ポリウレタン分散剤(b−1)中のポリウレタン骨格の主鎖と、その側方に結合した横方向の親溶媒基の側鎖は、片末端のみにイソシアネート基と反応する官能基を2個有する親溶媒基を含む化合物(b−c)と、前記ジイソシアネート化合物(b−a)を反応させることによって得ることができる。
化合物(b−c)のイソシアネート基と反応する2個の官能基としては、水酸基及び/又はイミノ基が好ましく、1個が水酸基でもう1個がイミノ基であるか、2個とも水酸基であることがより好ましく、2個とも水酸基であることがさらに好ましい。
以下、ポリウレタン分散剤(b−1)の親溶媒基が、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖を含む場合、特に、前記式(3−1)〜(3−3)で表される部分構造を有する場合について詳述する。
化合物(b−c)とジイソシアネート化合物(b−a)とのウレタン結合、又はウレア結合によって、前記式(3−1)、(3−2)又は(3−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入させることができる。
式(3−1)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入することができる化合物(b−c)における、イソシアネート基と反応する2個の官能基はいずれも水酸基であり、この2個の水酸基と、ジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基がウレタン結合する。具体例は後述する。
式(3−2)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入することができる化合物(b−c)は、イソシアネート基と反応する2個の官能基が、イミノ基及び水酸基であり、イミノ基とイソシアネート基がウレア結合し、かつ、水酸基がイソシアネート基とウレタン結合する。具体例は後述する。
式(3−3)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入することができる化合物(b−c)の、イソシアネート基と反応する2個の官能基はいずれも水酸基であり、この2個の水酸基とジイソシアネート化合物(b−a)の2個のイソシアネート基がウレタン結合する。具体例は後述する。
次に、ポリウレタン分散剤(b−1)に親溶媒基を導入するための化合物(b−c)について述べる。
この化合物(b−c)は、両末端にイソシアネート基と反応する官能基を含んでいると、ポリウレタン分散剤(b−1)の合成の際に、他の残留したイソシアネート基と、該官能基が結合してしまい、直鎖ポリウレタン骨格に対して側方に結合した横方向側鎖の形成を阻害する可能性がある。その為に、化合物(b−c)は、片末端以外にイソシアネート基と反応する官能基を含まない方が好ましい。
そのため、イソシアネート基と反応する2つの官能基とは反対の末端に、水酸基等のイソシアネート基と反応する官能基がある場合は、該水酸基等はイソシアネート基と反応しないように置換されることが好ましい。該水酸基の水素原子は、アルキル基で置換され、アルコキシ基とされていることがより好ましい。
特に、前記水酸基の水素原子を置換するアルキル基は炭素数1〜50のアルキル基であることがさらに好ましい。アルキル基は、任意で分枝鎖のアルキル基又はシクロアルキル基であってもよく、アルキル基の代りにアリール基又はアラルキル基を導入してもよい。
シクロアルキル基としては、好ましくはシクロプロピル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜6のシクロアルキル基である。アリール基としては、好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されていてもよいナフチル基、フェニル基などの炭素数6〜10のアリール基である。
アラルキル基としては、好ましくは水素原子がハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されていてもよい2−フェニルエチル基、又はベンジル基である。
ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖含有化合物の末端アルキル基の鎖長は、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤(e)の性質によって適宜選択することができる。例えば(e)溶剤が極性有機溶剤である場合、前記末端アルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
ポリウレタン分散剤(b−1)がポリエーテル側鎖を含む場合、市場での入手が容易との観点から、末端アルキル基は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。他方、(e)溶剤が非極性有機溶剤である場合、前記末端アルキル基の炭素数は8以上であることが好ましい。
親溶媒基に含まれるポリエーテル鎖のポリアルキレンオキシド鎖の部分(ただし末端アルキル基は含まない)は、炭素数2〜4のポリアルキレンオキシドが好ましい。炭素数2〜4のポリアルキレンオキシドに含まれるポリエチレンオキシドの含有量は、基板密着性の観点から、60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に20質量%以下であることが好ましく、ポリエチレンオキシドを含まないことが、さらに好ましい。
炭素数2〜4のポリアルキレンオキシド鎖部分は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドの(共)重合によって、又はテトラヒドロフランから得てもよい。共重合の場合、ランダムコポリマーであってもブロックコポリマーであってもよい。また、ポリアルキレンオキシド部分は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。
ポリアルキレンオキシド部分は、分散経時安定性を向上させるとの観点から、ポリプロピレンオキシドであることが好ましい。ポリウレタン分散剤(b−1)の親溶媒基に含まれるポリエーテル鎖は、分散性を向上させるとの観点から、末端アルキル基として炭素数1〜10のアルキル基を有し、かつ炭素数2〜4のポリアルキレンオキシドを有するものが好ましく、この場合は、末端アルキル基がメチル基、又はブチル基であることがより好ましい。
親溶媒基であるポリエステル鎖は、好ましくは、1〜26個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンから得ることができる。ヒドロキシカルボン酸の種類は、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤(e)の性質によって適宜選択することができる。
(e)溶剤が極性有機溶剤である場合、ヒドロキシカルボン酸は最大で8個の炭素原子を含むことが好ましく、有機媒体が非極性有機液体である場合、ヒドロキシカルボン酸は8個を超える炭素原子を含むことが好ましい。
ポリエステル鎖は、それが有機媒体の溶解性を助けるため、2つ以上の異なるヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンから得ることが好ましい。ヒドロキシカルボン酸は飽和であっても不飽和であっても、また直鎖であっても分枝鎖であってもよい。
適切なヒドロキシカルボン酸の例は、グリコール酸、乳酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸および4−ヒドロキシデカン酸である。
適切なラクトンの例は、β−プロピオラクトンおよび任意で炭素数1〜6のアルキル基で置換されたδ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンである。例えば、β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、2−メチル、3−メチル、4−メチル、5−tertブチル、7−メチル−4,4,6−トリメチルおよび4,6,6−トリメチル−ε−カプロラクトン並びにこれらの混合物である。
δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンから誘導されるポリエステル鎖が特に好ましい。
親溶媒基であるポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の横方向側鎖は、単一のモノマーから構成されてもよく、また、複数のモノマー成分から構成されてもよい。また、ポリエーテル鎖はポリエステル部分を含んでもよく、逆にポリエステル鎖は、ポリエ−テル部分を含んでもよい。
ポリウレタン分散剤(b−1)中の親溶媒基のポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の数平均分子量は、好ましくは10,000以下、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは2,500以下である。ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の数平均分子量は好ましくは300以上、より好ましくは600以上、さらに800以上であることが好ましい。前記上限値以下とすることで基板密着性を向上できる傾向があり、また、前記下限値以上とすることで分散性を向上できる傾向がある。
次に化合物(b−c)のポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の片末端にイソシアネート基と反応する2個の官能基を導入する方法について述べる。
ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の片末端に、化合物(b−a)のイソシアネート基と反応する2個の官能基を導入するには、いくつかの方法がある。これにより、前記のポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖は、片末端の2個の官能基でジイソシアネート化合物(b−a)と結合しポリウレタン骨格である主鎖を形成するとともに、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の親溶媒基の側鎖を形成することができる。
横方向親溶媒基の側鎖がポリエーテル鎖を含む場合、親溶媒基のポリエ−テル鎖を含む化合物(b−c)は、片末端に、イソシアネート基と反応する2個の水酸基を有するか、1個の水酸基及び1個のイミノ基を有することが好ましい。水酸基及びイミノ基は、最大で6個の炭素原子で隔てられていることが好ましい。化合物(b−c)が、イソシアネート基と反応する2つの水酸基を含む場合、それらは、最大で17個の原子で隔てられていることが好ましい。
ポリエーテル鎖を含む化合物(b−c)のイソシアネート基と反応する片末端の2個の官能基として、2個とも水酸基を導入する方法としては、前記化合物(b−b)において2個の水酸基を導入した方法と同じ方法が用いられる。
式(3−1)で表される部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)中に導入するための化合物(b−b)の具体例には以下のようなものが挙げられる。それ以外にも、式(3−1)で表される部分構造を含み、その末端に2個の水酸基を有してればポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用される。
まず、片末端をアルキルエーテル化した炭素数2〜4のポリアルキレンオキシド鎖などの、もう1方の末端の水酸基を、トルエンジイソシアネートなどの2つのイソシアネート基を含有する化合物の一方のイソシアネート基と反応させる。次に、もう一方のイソシアネート基と、ジエタノールアミンなどの1つの2級アミノ基および少なくとも2つの活性水酸基を含有する化合物の2級アミノ基とを反応させる。これにより、ポリアルキレンオキシド鎖の片末端に2つの水酸基を導入させることができる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは式(3−1)で表される化学構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、前記式(3−1)で表される部分構造を有する化合物は、以下の方法でも得ることができる。ポリエーテル鎖を含む化合物(b−c)の片末端に2個の水酸基を導入する方法として、ポリ(アルキレンオキシド)アクリレートにジエタノールアミンをマイケル付加させる方法もある。その具体例は以下の通りである。
左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(3−1)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、式(3−2)で表される部分構造を有する場合は、以下の方法で得ることができる。
ポリエーテル鎖を含む化合物(b−c)の、イソシアネート基と反応する片末端の2個の官能基が1個の水酸基及び1個のイミノ基の場合も、前記化合物(b−b)において、1個の水酸基及び1個のイミノ基を導入した方法と同じような方法が適用される。具体的には、ヒドロキシエチルアクリレートなどの1個の水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物とポリアルキレンオキシド鎖の末端に1個の1級アミノ基を有する化合物をマイケル付加させることにより得られる。これにより、エチレン性不飽和基とアミノ基のマイケル付加より得られるイミノ基と、ヒドロキシアクリレート中の1個の水酸基が得られる。
また、同様に、モノエタノールアミンなど1個の水酸基と1級アミノ基を有する化合物と、アルキレンオキシド鎖とエステル結合したアクリレートなどのアルキレンオキシド鎖とエチレン性不飽和基を有する化合物のマイケル付加によってもアルキレンオキシドの親溶媒部とイソシアネート基と反応する水酸基とイミノ基が得られる。そのような化合物は以下のようなものがある。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは式(3−2)で表される部分構造に相当する。それ以外にも、式(3−2)で表される部分構造を含み、かつ、1個の水酸基及び1個のイミノ基を有していれば、ポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用される。
酸素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、同ウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造の場合も、同様に有効な効果があり、ポリウレタン分散剤(b−1−1)の合成に適用できる。
前記式(3−3)で表される部分構造を導入する化合物は、片末端に2個の水酸基を有する化合物である。前記式(3−3)で表される部分構造は、例えば、末端に1個の水酸基を有するポリエーテルと、ジイソシアネート化合物とチオグリセロールを用いて得られる。その具体的反応例は以下のとおりである。
まず末端に1個の水酸基を有するポリエーテルの水酸基を、トルエンジイソシアネートなどの2つのイソシアネートを含有する化合物の一方のイソシアネート基と反応させる。次に、もう一方のイソシアネート基と、チオグリセロールなどの1つの活性チオール基および少なくとも2つの活性水酸基を含有する化合物の活性チオール基と反応させる。これにより、ポリエーテルの片末端に2つの水酸基を導入させた化合物が得られる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは式(3−3)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
前記式(3−3)で表される構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入する化合物は、片末端に2つの水酸基を有した化合物であるが、前記式(3−3)で表される部分構造の2つの酸素原子を2つの1級及び/又は2級アミノ基で置換した化合物も、ポリウレタン分散剤(b−1)の合成に用いる化合物(b−c)として適用できる。
親溶媒基がポリエステル鎖を含むポリウレタン分散剤(b−1)の合成に用いる化合物(b−c)は、ポリエステル鎖を含む化合物の一端に、イソシアネート基と反応する2個の水酸基を含むことが好ましい。その水酸基は最大で17個の原子で隔てられていることが好ましい。2個の水酸基は5個以上の原子で隔てられていることが特に好ましい。
ポリエステル鎖の末端が水酸基の場合、及びカルボキシ基の場合のいずれの場合であっても、イソシアネート基と反応する2個の水酸基を片末端に導入することが可能である。
ポリエステル鎖の末端が水酸基の場合、後述の連鎖停止化合物である水酸基含有化合物の存在下で、1種又は複数のヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンを重合させることによって製造することができる。
後述の連鎖停止化合物である水酸基含有化合物を用いて得られるポリエステルは、好ましくは下記式(4)で表されるものである。
R9O(OC−A−O)wH (4)
式(4)中、wは5〜150であり、R9は炭素数1〜50のアルキル基であり、Aは炭素数1〜26のアルキレン基、又は炭素数2〜26のアルケニレン基である。
式(4)の化合物に片末端にイソシアネート基と反応する2つの水酸基を導入するには、前述の、ポリエーテルの片末端に2つの水酸基を導入する方法と同じ方法を用いることができる。
また、式(4)の化合物に片末端にイソシアネート基と反応する1個の水酸基と1個のイミノ基を導入する方法も、前述の、ポリエーテルの片末端に1個の水酸基と1個のイミノ基を導入する方法を適用できる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(3−1)で表される部分構造又は式(3−2)で表される部分構造に相当する。それ以外にも、前記式(3−1)で表される部分構造又は式(3−2)で表される部分構造を含み、その末端にイソシアネート基と反応する水酸基又はイミノ基などの官能基を2個のみ有していれば、ポリウレタン分散剤(b−1)に適用することができる。
酸素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、同ウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造の場合も、有効な効果があり、ポリウレタン分散剤(b−1)に適用できる。
ポリエステル鎖を含む前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造も、ポリエーテル鎖を含む前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造で述べたものと同じ構造が適用できる。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(3−3)で表される部分構造に相当する。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
ポリエステル鎖の末端がカルボキシル基の場合は、後述の連鎖停止化合物であるカルボキシ基含有化合物の存在下で、1種又は複数のヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンを重合させることによって製造することができる。
後述の連鎖停止化合物であるカルボキシル基含有化合物を用いて得られるポリエステルは、好ましくは下記式(5)で表されるものである。
R9CO(O−A−CO)wOH (5)
式(5)中、R9、Aおよびwは上記式(4)の定義と同義である。
式(4)及び/又は式(5)のポリエステルは一般に、1つ又は複数のヒドロキシカルボン酸を、不活性雰囲気で、エステル化触媒の存在下、50〜250℃で、水酸基含有化合物又はカルボキシ含有化合物と共に反応させることによって製造される。典型的な工程条件は国際公開第2001/80987号に記載されている。
上記式(5)の化合物から片末端にイソシアネート基と反応する2つの水酸基を導入するには、式(5)の化合物を、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどのジオールと反応させてモノヒドロキシ化合物に転換させ、得られたモノヒドロキシ誘導体について、式(4)の化合物と同様の方法にて行う。
例えば、左下に例示する化合物より、ポリウレタン分散剤(b−1)中に右下に例示する構造を導入することができる。これは前記式(3−1)で表される部分構造又は式(3−2)で表される部分構造に相当する。
それ以外にも、前記前記式(3−1)で表される部分構造又は式(3−2)で表される部分構造を含み、その末端にイソシアネート基と反応する水酸基又はイミノ基などの官能基を2個のみ有していれば、ポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用される。
前記式中、酸素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、同ウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
また、前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造の場合も、有効な効果があり、ポリウレタン分散剤(b−1)の合成に適用できる。
ポリエステル鎖を含む前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造も、ポリエーテル鎖を含む前記式(3−3)で表される部分構造に相当する構造で述べたものと同じ構造が適用できる。
また、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の末端にイソシアネート基と反応する官能基を導入する方法は、その他の公知の方法を用いてもよい。例えば、片末端に1つの水酸基を有するポリエーテル又はポリエステル鎖に、イソシアネート基とアクリロイルオキシ基を有する化合物を反応させ、ウレタン結合させることでポリエーテル鎖又はポリエステル鎖を有する化合物の片末端に不飽和基を導入することができ、これとジエタノールアミンをマイケル付加させる方法などもある。この方法によっても、ポリエーテル鎖又はポリエステル鎖の片末端に2個の水酸基を導入できる。
ポリウレタン骨格の主鎖と、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖が側方に結合した親溶媒基である側鎖と、かつ特定の吸着基を有したポリウレタン化合物(b−1−1)は、その特性に影響を及ぼさない範囲で、片末端でイソシアネート基と反応する2個の官能基を有するポリアクリレート及び/又はポリオレフィンを反応させて得たものでもよい。
ポリアクリレート及び/又はポリオレフィンの片末端に2個のイソシアネート基と反応する官能基を導入するには、前記ポリエーテル鎖若しくはポリエステル鎖の末端に2個の水酸基を導入する方法又は1個の水酸基および1個のイミノ基を導入する場合と同じような方法が適用される。
また、ポリアクリレート及び/又はポリオレフィンの重合体を合成する時に、2個の水酸基を有する重合開始剤又はチオグリセロールなどのジヒドロキシ官能性連鎖移動剤を使用することによって得ることができる。
前記片末端でイソシアネート基と反応する2個の官能基を有するポリアクリレート及び/又はポリオレフィンとなる化合物とジイソシアネート化合物(b−a)のイソシアネート基との反応により、ポリウレタン骨格の側方に結合した横方向のポリアクリレート及び/又はポリオレフィン鎖を形成することができる。
[ポリウレタン分散剤(b−1)に含まれてよい任意のその他の構造]
ポリウレタン分散剤(b−1)は、その他、以下の化合物(b−d)、(b−e)、(b−f)のウレタン反応、ウレア反応によって導入される構造を含有してもよい。
・化合物(b−d):イソシアネート基と反応する2つの官能基を有する化合物の1種又は2種以上。
・化合物(b−e):イソシアネート基と反応する1つの官能基を含む、連鎖停止剤として作用する化合物の1種又は2種以上。
・化合物(b−f):1個のイソシアネート基を含む、連鎖停止剤として作用する化合物の1種又は2種以上。
これらの化合物(b−d)、(b−e)、(b−f)に由来する構造は、これらの化合物(b−d)、(b−e)、(b−f)を、化合物(b−a)、(b−b)、(b−c)と一緒に反応させることによって、ポリウレタン分散剤(b−1)のポリウレタン骨格に導入させることができる。
より具体的には、化合物(b−d)に由来する構造はポリウレタン骨格中に導入させることができ、化合物(b−e)、(b−f)に由来する構造はポリウレタン骨格の両末端に導入させることができる。
前記化合物(b−d)は、イソシアネート基と反応する官能基を2個のみ有することが好ましい。
化合物(b−d)の好ましい官能基はアミノ基又は水酸基であり、ジアミン又はジオールであることがより好ましく、ジオールであることがさらに好ましい。化合物(b−d)は主に、ポリウレタンポリマーの溶解性を変えるための鎖延長剤として用いられる。化合物(b−d)の数平均分子量は特に限定されないが、32〜3,000であることが好ましい。
好ましいジアミンの例は、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミンおよび1,6−ヘキサンジアミンである。好ましいジオールの例は、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1,2−ドデカンジオール、2−フェニル−1,2−プロパンジオール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ブタンジオールおよびネオペンチルグリコールである。
ジオールは、ポリ(C2〜4−アルキレングリコール)、ポリエステル又はポリアクリル酸ジオールなどのポリエーテルであってもよい。ポリアルキレングリコールは、その混合物を含む反復エチレンオキシ、プロピレンオキシもしくはブチレンオキシ基を含むランダム又はブロックホモポリマー又はコポリマーであってよい。
左下に化合物(b−d)のいくつかを例示するが、これにより、ポリウレタン化合物(b−1−1)に右下の部分構造を導入することができる。
前記式中、酸素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、同ウレア結合のカルボニル基との結合手を表す。
それ以外にも、イソシアネート基と反応する2個のみの官能基を有していれば、前記部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入できる化合物(b−d)として適用できる。
ポリウレタン分散剤(b−1)におけるポリウレタン骨格は、本質的に、直鎖の特性を有することが好ましい。しかし、成分のいずれかに不純物として官能価が2より大きいポリオール又はポリオイソシアネートが存在する場合は、少量の枝分れ構造が導入される場合がある。
以下に開示するように、化合物(b−e)である連鎖停止化合物は、イソシアネート基と反応する1つの官能基を持った単官能の化合物である。化合物(b−e)の単官能基は好ましくはアミノ基又は水酸基である。化合物(b−e)は、ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖のポリウレタン骨格の末端に結合し、末端基となる。
好ましい連鎖停止化合物は、ポリウレタン分散剤(b−1)を構成する化合物(b−c)で用いたのと同様のポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルアミン、又は前記式(4)で表される化合物の末端基が水酸基のポリエステル化合物が挙げられる。
左下に化合物(b−e)を例示するが、これにより、ポリウレタン分散剤(b−1)に右下の部分構造が導入される。
前記式中、*は主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表す。
それ以外にも、片末端にイソシアネート基と反応する1個のみの官能基を有していれば、前記部分構造をポリウレタン分散剤(b−1)に導入できる化合物(b−e)として適用できる。
化合物(b−e)は、分散性、及び分散経時安定性の観点から、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の親溶媒基を含むものが好ましいが、それ以外にも、1個の水酸基、1個の1級アミノ基、1個の2級アミノ基、又は1個のチオール基のみを有する化合物であれば、連鎖停止作用を持っており、化合物(b−e)として適用できる。
前記化合物(b−e)として、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖の親溶媒基を有する化合物に代えて、ポリウレタン分散剤(b−1)の効果に影響を及ぼさない範囲で、これと同様な構造を持ったポリアクリレート又はポリオレフィンを適用してもよい。
化合物(b−f)のモノイソシアネート化合物も連鎖停止化合物として作用し、ポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖である直鎖ポリウレタン骨格の両末端に結合する。化合物(b−f)のモノイソシアネート化合物の具体例としては、フェニルイソシアネートがあるが、これは残留すると後処理が必要になる場合があるため、(b−e)化合物で連鎖停止することが好ましい。
[ポリウレタン分散剤(b−1)の合成]
ポリウレタン分散剤(b−1)を合成する際の典型的な原料使用量は、ポリウレタン分散剤(b−1)全体の原料の合計質量に対して、10〜50質量%の化合物(b−a)、1〜24質量%の化合物(b−b)、10〜80質量%の化合物(b−c)、0〜25質量%の化合物(b−d)、0〜50質量%の化合物(b−e)、および0〜20質量%の化合物(b−f)である。
ポリウレタン分散剤(b−1)中の横方向側鎖を構成する化合物(b−c)、及びポリウレタン骨格の両末端を構成する化合物(b−e)の質量割合は、好ましくはポリウレタン分散剤(b−1)全体の原料の合計質量の35%以上である。
化合物(b−c)及び、化合物(b−e)のポリエーテル鎖を含む化合物とポリエステル鎖を含む化合物は、それぞれ単独でもよいが、両者がともに含まれる方が好ましい。ポリエーテル鎖を含む化合物とポリエステル鎖を含む化合物の質量比率は、化合物(b−c)及び化合物(b−e)の合計の質量に対して、1:99〜99:1が好ましく、より好ましくは、3:97〜97:3であり、さらに好ましくは、5:95〜95:5である。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、親溶媒基としてポリエーテル鎖及びポリエステル鎖を含んでいることが、タブレット又は高細線カラーフィルターBMを形成するときに、形成プロセス中のアルカリ現像液への耐性又は高温処理時の耐性が、さらに良好になるために好ましい。また、ポリウレタン分散剤(b−1)の吸着基は、主鎖と結合した特定の吸着基であることが、特定の吸着基が顔料によく吸着して、現像液への耐性又は高温処理時の耐性のある顔料を抱き込みやすくなるために特に好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)は、当業界で既知の任意の公知の方法で調製することができる。一般に、ポリウレタン分散剤(b−1)は、実質的に無水の条件下、一般に0〜130℃の温度の不活性雰囲気で、任意で不活性溶媒の存在下、かつ任意で触媒の存在下で、ジイソシアネート化合物(b−a)の1種又は2種以上を、少なくとも、化合物(b−b)の1種又は2種以上、及び、化合物(b−c)の1種又は2種以上と反応させることによって得ることができる。
また、任意で、鎖延長剤として作用する1つ又は複数の化合物(b−d)、および化合物(b−e)及び化合物(b−f)である連鎖停止化合物として作用する任意の1つ又は複数の化合物とともに反応を実施してもよい。
不活性雰囲気は、不活性ガスのいずれによっても行うことができるが、窒素ガスが好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)の調製は、触媒の存在下で実施することができる。特に好ましい触媒は、ジラウリン酸ジブチル錫(DBTDL)などの脂肪酸の錫錯体又は第三級アミンである。
ポリウレタン分散剤(b−1)の合成時には、合成時に反応させる化合物全体において、イソシアネート基と、イソシアネート基と反応する官能基のモル数の割合を調整することで、様々な生成物が形成される。
1つのケースでは、化合物(b−a)の中のイソシアネート基の合計モル数は、化合物(b−b)、(b−c)、ならびに必要に応じて用いられる化合物(b−d)、(b−e)のイソシアネート基と反応する官能基の合計モル数より少なくしてもよい。この場合、どの末端イソシアネート基も反応し、未反応末端イソシアネート基は残存しない傾向となる。
あるいは、化合物(b−a)および任意の化合物(b−f)によって提供されるイソシアネート基の合計モル数は、化合物(b−b)、(b−c)、ならびに、必要に応じて用いられる化合物(b−d)、(b−e)のイソシアネート基と反応する官能基の合計モル数より多くしてもよい。この場合、得られるポリウレタン化合物(b−1−1)は残留イソシアネート基を含むプレポリマーとなる傾向がある。
従って、このプレポリマーは、任意で溶媒中に溶解させる前か、異なるプレポリマー鎖と結合させる化合物(b−d)などの他の鎖延長剤及び/又は化合物(b−e)である連鎖停止化合物と反応させることができる。
また、残留イソシアネート基を含むプレポリマーが存在する場合、鎖延長反応は、水自体によって実施することができる。または、ポリオール、アミノ−アルコール、第一もしくは第二脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環ポリアミン、特にジアミン、ヒドラジン又は置換ヒドラジンによって実施することができる。
鎖延長剤としては、例えば、一般には以下のような2個以上のイソシアネート基と反応する官能基を有する鎖延長剤が挙げられるが、直鎖のウレタン骨格を保つためには、イソシアネート基と反応する官能基を2個のみを有する鎖延長剤が好ましい。
一般に使われる鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2−クロルアニリン)、3,3’−ジクロロ−4、4’−ビフェニルジアミン、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、メタンジアミン、m−キシレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ジメチルヒドラジンなどのアジンなどが挙げられる。
直鎖ポリウレタン骨格を有するポリウレタン分散剤(b−1)の合成に使用される鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する官能基を2個のみ有する鎖延長剤が好ましく、ヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。
鎖延長反応は高温、低温及び室温のいずれでも行うことができる。好ましい温度は約5〜95℃である。
ポリウレタン分散剤(b−1)の調製においてプレポリマー法を用いる場合、得られるポリウレタン分散剤(b−1)の分子量を制御するために、鎖延長剤および連鎖停止化合物の量を調整することができる。
鎖延長剤中のイソシアネート基と反応する官能基のモル数が、プレポリマー中の遊離イソシアネート基のモル数とほぼ等しい場合、高分子量となりやすい。低分子量のポリウレタン分散剤(b−1)を得るには、ポリウレタンプレポリマーとの反応において、鎖延長剤と連鎖停止剤の組合せにおいて、連鎖停止剤を多くしたりするなど調整すればよい。
粘度を制御するために、ポリウレタン分散剤(b−1)若しくはそのプレポリマーが生成する前か、その間か又はその後に不活性溶媒を加えることができる。好ましい溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ダイグライム、N−メチルピロリドン、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エチル、エチレンおよびプロピレングリコールジアセテート、エチレンとプロピレングリコールアセテートのアルキルエーテル、トルエン、キシレンおよびt−ブタノール及びジアセトンアルコールなどの立体障害アルコールが挙げられる。より好ましい溶媒は酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピルおよびN−メチルピロリドンである。
[ポリウレタン分散剤(b−1)の物性]
ポリウレタン分散剤(b−1)の、固形分1g中のアミン価は、分散性の観点から、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、分散性の観点から、180mgKOH/g以下であることが好ましく、110mgKOH/g以下であることがより好ましく、70mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
ポリウレタン分散剤(b−1)の数平均分子量は、分散効果の点から好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、特に好ましくは4,000以上であり、分散しやすさと低粘度化の点から、好ましくは50,000以下、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特に好ましくは20,000以下である。
また、親溶媒基は、100gのポリウレタン分散剤(b−1)に対して0.001モル本以上が好ましく、0.005モル本以上がより好ましく、0.01モル本以上がさらに好ましく、0.02モル本以上が特に好ましく、また、0.5モル本以下が好ましく、0.2モル本以下がより好ましく、0.1モル本以下がさらに好ましく、0.08モル本以下が特に好ましい。以下、該親溶媒基の割合を、親溶媒基含有量として「モル本/100g」の単位で示す。
ただし、親溶媒基の「モル本」とは、合成時の仕込みにおいて、親溶媒基の原料について、その仕込量を、その数平均分子量で割った値である。また、該親溶媒基の「モル本」を用いて、触媒以外の仕込量固形分量全体中の100gに相当する値を、親溶媒基の「モル本/100g」と定義する。
<他の実施形態>
本発明のポリウレタン分散剤(b−1)の他の実施形態として、非直鎖、即ち、分岐構造を含む主鎖を有するもの、即ち、主鎖において少なくとも3つ以上に分岐した枝を有するものが挙げられる。
本実施形態においては、後述する様に、少なくとも3つ以上に分岐した枝構造を主鎖中に1つ以上有すること以外は、主鎖のポリウレタン骨格が直鎖構造である実施形態に近い構造となっているため、感光性樹脂組成物中での分散性は良好であると考えられる。また、パターニング時のアルカリ現像又は200℃以上の高温処理において、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)又はアルカリ可溶性樹脂(d)等と組み合わせて、アルカリ耐性及び耐熱性が相乗的に上がることによって、高微細な細線を形成することができると考えられる。
本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖は、親溶媒基との結合部、吸着基及び吸着基との結合部以外が、分岐構造を有するものであれば特に限定されないが、該分岐構造としては例えば、下記一般式(ii)で示される部分構造が挙げられる。
上記式(ii)中、Reは3価のアルコール化合物残基を表し、*は結合手を表す。なお、アルコール化合物残基とは、アルコール化合物の全水酸基から水素原子を除いたその残基を意味する。
前記式(ii)における3価のアルコール化合物残基の炭素数は特に限定されないが、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで良好な広がりを持った分岐構造にできる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで分散性を良好にできる傾向がある。
3価のアルコール化合物残基の具体例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−プロパントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,5,10−デカントリオール、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、及び末端に3個の水酸基を有する3分岐しているポリアルキレンオキシド化合物などのアルコール化合物残基が挙げられる。良好な広がりを持った分岐性の観点からは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−プロパントリオール、1,3,5−ペンタントリオールのアルコール化合物残基が好ましく、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又は1,2,3−プロパントリオールのアルコール化合物残基がより好ましい。
より好ましい3価のアルコール化合物残基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
これらの中でも、良好な広がりを持った分岐性の観点から、Reがトリメチロールエタン又はトリメチロールプロパンのアルコール化合物残基であることがさらに好ましい。
また、本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の主鎖は、親溶媒基との結合部、吸着基及び吸着基との結合部以外が直鎖構造を含んでいてもよい。直鎖構造としては、前記式(i)で示される部分構造を好ましく採用することができる。
この場合、主鎖に含まれる直鎖構造と分岐構造の比率については特に限定されないが、直鎖構造と分岐構造の合計に対して分岐構造が1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、100質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
前記下限値以上とすることでポリエステル構造部位、またはポリエーテル構造部位のもたらす溶媒親和性を向上できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで立体障害が低減され効率的に顔料に吸着できる傾向がある。
また、本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の特定の吸着基、吸着基の含有割合、特定の親溶媒基、親溶媒基の含有割合、及び物性については、前述のものを好ましく採用することができる。
また、本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の製造方法は、ウレタン形成反応において少量の三官能以上の単量体を使用する点以外は、前述した製造方法と同じである。三官能以上の単量体を使用することにより、主鎖にいくつかの枝分れ点が形成される。
ここで用いる三官能以上の単量体としては、ポリオール、ポリアミン又はポリイソシアネートが挙げられ、ポリオール又はポリアミンであることが好ましく、ポリオールであることが特に好ましい。
本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)は、ゲル化しやすい傾向があるため、ゲル化しないように合成することが好ましい。係る観点から、ポリウレタン分散剤(b−1)の数平均分子量は、40,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましい。一方、ポリウレタン分散剤(b−1)の数平均分子量は、分散効果の点から、少なくとも3,000以上であることが好ましく、少なくとも5,000以上であることがより好ましい。
本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)は、前述の方法において化合物(b−a)及び(b−d)に代えて、化合物(b−a’)及び(b−d’)を用いることで合成することができる。
[化合物(b−a’):ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物(b−a’)は、3個以上のイソシアネート基を有する化合物を含有していれば、ポリウレタン骨格を分岐構造とすることができるが、分岐は低度となることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(b−a’)中には、3個以上のイソシアネート基を有する化合物だけでなく、前記ジイソシアネート化合物(b−a)が含まれていてもよい。また、後述の化合物(b−d’)としてイソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物を含有するものを用いる場合には、ポリイソシアネート化合物(b−a’)はジイソシアネート化合物のみからなるものであってもよい。
ポリイソシアネート化合物(b−a’)の平均官能基数は、2.0以上であることが好ましく、また、2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましい。また、化合物(b−d’)としてイソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物を含有するものを用いる場合には、ポリイソシアネート化合物(b−a’)の平均官能基数は2.0であることが特に好ましい。
ここで、平均官能基数とは、異なる官能基数を持った化合物の混合物の場合、その官能基数の平均値のことであり、下記式で算出される。
平均官能基数=
[{(官能基数)×(その官能基数を有する化合物のモル数)}の総和]/(化合物の総モル数)
平均官能基数が2.0の化合物(b−a’)は、前記化合物(b−a)と同じである。
[化合物(b−d’):イソシアネート基と反応する官能基を3個以上有し、ポリウレタン骨格に分岐構造を与える化合物]
前記化合物(b−d)は、イソシアネート基と反応する官能基を2個有し、直鎖のポリウレタン骨格を形成するが、化合物(b−d’)はイソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物を少なくとも含有しているので、それにより、主鎖のポリウレタン骨格に分岐構造を導入することができる。
化合物(b−d’)は、イソシアネート基と反応する官能基を2個有する化合物と、イソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物の混合物でもよい。この場合、化合物(b−d’)のイソシアネート基と反応する官能基の平均数は、2.01以上が好ましく、2.1以上がより好ましく、また、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。
化合物(b−d’)における、イソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物、及びその化合物からもたらさせるポリウレタン分散剤(b−1)の部分構造の具体例は以下の通りである。
水酸基を3個以上有する低分子量ポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールなどが挙げられる。アミノ基を3個以上有するポリアミンとしては、例えば、ジエチルトリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
また、3個、又は4個の水酸基を有する化合物を使用して、ポリアルキレングリコールの合成又はラクトンの重合を行うことにより、好ましくは数平均分子量が200〜2,000のトリオール又はテトラオールのオリゴマー化合物を得ることができ、これを化合物(b−d’)として用いてもよい。化合物(b−d’)としては低分子の3個の水酸基を有する化合物が好ましい。
化合物(b−d’)における、イソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物の具体例を左下に例示するが、これにより、ポリウレタン分散剤(b−1)に右下の部分構造を導入することができる。
前記式中、酸素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレタン結合のカルボニル基との結合手を表し、窒素原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるウレア結合のカルボニル基との結合手を表し、硫黄原子に隣接する*は、主鎖のポリウレタン骨格におけるチオウレア結合との結合手を表す。
それ以外にも、3個以上の水酸基及び/又は1級、2級アミノ基を有する化合物であれば、化合物(b−d’)として適用できる。
また、化合物(b−d’)の数平均分子量は32〜3,000であることが好ましく、これらの化合物は1種でもよく、複数を用いてもよい。
次に、化合物(b−a’)、(b−b)、(b−c)、(b−d’)、(b−e)中のイソシアネート基の量とイソシアネート基と反応する官能基の量について述べる。
本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)におけるイソシアネート基は、基本的には化合物(b−a’)からもたらされる。それに対し、イソシアネート基と反応する官能基は、化合物(b−b)、(b−c)、(b−d’)、(b−e)からもたらされる。これらの官能基の量は以下のように等しくなるように用いることが好ましい。
{(b−a’)中のイソシアネート基数}×{(b−a’)のモル数}=
{(b−b)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−b)のモル数}+{(b−c)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−c)のモル数}+{(b−d’)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−d’)のモル数}+{(b−e)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−e)のモル数}
ただし、(b−a’)〜(b−e)の化合物が混合物の場合は、その混合物の官能基の平均官能基数及び混合物の合計モル数を使用する。
また、本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の好ましい構造は、以下の化合物を用いることで得ることができる。
・(b−a’)中のイソシアネート基数:2個
・(b−b)中のイソシアネート基と反応する官能基数:2個
・(b−c)中のイソシアネート基と反応する官能基数:2個
・(b−d’)中のイソシアネート基と反応する官能基数:2個と3個以上の混合物を含めて、平均官能基数が少なくとも2個よりも多い。
・(b−e)中のイソシアネート基と反応する官能基数:1個
本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の分岐構造は低次であることが好ましい。低次であることは、以下の定義によって表される。まず、イソシアネート基と反応する官能基において、連鎖停止剤として働く化合物(b−e)以外の化合物(b−b)、(b−c)、(b−d’)の平均官能基数を考える。これを「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」と定義する。
「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」= A/B
ただし、A及びBは以下の通りである。
A=
{(b−b)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−b)のモル数}
+{(b−c)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−c)のモル数}+{(b−d’)中のイソシアネート基と反応する官能基数}×{(b−d’)のモル数}
B={(b−b)のモル数}+{(b−c)のモル数}+{(b−d’)のモル数}
本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)は、「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」が2より大きいポリウレタン化合物とすることができる。「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」を2より大きくするために、化合物(b−d’)のイソシアネート基と反応する化合物の平均官能基数が2より大きいものを用いることが好ましい。そのために、化合物(b−d’)は、少なくともイソシアネート基と反応する官能基を3個以上有する化合物を含有するものとすればよい。
化合物(b−d’)のイソシアネート基と反応する官能基は、水酸基、アミノ基が好ましく、水酸基であることが特に好ましい。化合物(b−d’)は、数種類の化合物の混合物であってもよい。
また、「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」は2.0を超え、3.0以下であることが好ましい。「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」は、2.6以下であることが好ましく、2.4以下であることがより好ましく、2.3以下であることがさらに好ましい。
「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」は低次であることが好ましい。「連鎖停止剤以外のイソシアネート基と反応する官能基の平均数」を低次とすることで、ポリウレタン分散剤(b−1)自体のからまりによる、溶剤又は感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂又は光重合性モノマーとの相溶性の悪化を抑制できる傾向がある。また、分散剤のからまりによって立体障害が大きくなることを防ぎ、顔料への吸着作用の悪化を抑制できる傾向がある。それにより、溶剤中での分散性、細線形成時の耐アルカリ現像液耐性及び高温処理時の耐熱性が良好となり、本発明の効果が十分発揮できる傾向がある。
なお、本実施形態のポリウレタン分散剤(b−1)の数平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上であり、好ましくは40,000以下、より好ましくは30,000以下である。
<その他の分散剤>
本発明の感光性樹脂組成物中の分散剤(b)は、少なくとも前記ポリウレタン分散剤(b−1)を含むものであるが、ポリウレタン分散剤(b−1)を用いることによる本発明の効果に影響がない範囲で、ポリウレタン分散剤(b−1)以外のその他の分散剤(b−2)を併用してもよい。
その他の分散剤(b−2)としては、高分子分散剤が好ましく、更には、分散安定性の面からカルボキシル基;リン酸基;スルホン酸基;又はこれらの塩基;1級、2級又は3級アミノ基;4級アンモニウム塩基;ピリジン、ピリミジン又はピラジン等の窒素原子含有複素環基等の官能基を有する高分子分散剤が好ましい。中でも特に、1級、2級又は3級アミノ基;4級アンモニウム塩基;ピリジン、ピリミジン又はピラジン等の窒素原子含有複素環基等の塩基性官能基を有する高分子分散剤が特に好ましい。
また、その他の併用できる高分子分散剤としては、例えば、ポリウレタン分散剤(b−1)以外のウレタン系分散剤、アクリル系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリアリルアミン系分散剤、アミノ基を持つモノマーとマクロモノマーからなる分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸系分散剤、ポリエステルリン酸系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤及び脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
このようなその他の併用できる分散剤の具体例としては、商品名で、EFKA[登録商標、以下同じ。エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製。]、Disperbyk(登録商標、以下同じ。ビックケミー社製。)、ディスパロン(登録商標、以下同じ。楠本化成社製。)、SOLSPERSE(登録商標、以下同じ。ルーブリゾール社製。)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー又はフローレン(共栄社化学社製)、アジスパー(登録商標、以下同じ。味の素ファインテクノ社製。)等が挙げられる。
より具体的には、例えば、EFKA−4046、−4047(BASF社製)、Disperbyk−111、−161、−162、−163、−166、−167、−182、−2000、−2001(ビックケミー社製)、ディスパロンDA−7301、ED−701(楠本化成社製)、SOLSPERSE−22000、−24000、28000(ルーブリゾール社製)、フローレンKDG−2400(共栄化学社製)及びアジスパーPB−821、−881(味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
これらの高分子分散剤は1種のみをポリウレタン分散剤(b−1)と併用使用してもよく、2種以上を併用使用してもよい。
これらのその他の分散剤のうち、塩基性官能基を有するポリウレタン分散剤(b−1)以外のウレタン系高分子分散剤及び/又はアクリル系高分子分散剤が好ましく、特にはウレタン系高分子分散剤が好ましい。また、塩基性官能基を有し、ポリエステル及び/又はポリエーテル結合を有する高分子分散剤も好ましい。
ウレタン系高分子分散剤として好ましい化学構造を具体的に例示するならば、例えば、トルエンジイソシアネート3量体のような3個以上のイソシネート基を有するポリイソシアネート化合物と、分子内に水酸基を1個又は2個有する数平均分子量300〜10,000の親溶媒基を有する化合物又は鎖延長基を有する化合物と、同一分子内に1個の活性水素と3級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られる、重量平均分子量1,000〜200,000の分散樹脂等が挙げられる。
このような樹脂において、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物の導入量は、反応後のアミン価で1〜100mgKOH/gの範囲に制御するのが好ましい。より好ましくは5〜95mgKOH/gの範囲である。
このような市販の分散剤としては、Disperbyk−161、−162、−163、−166、−167、−182(ビックケミー社製)又はEFKA−4046、−4047(BASF社製)などがある。
本発明においてアミン価は、塩基性アミノ基を酸により中和滴定し、酸価に対応させてKOHのmg数で表した値であり、具体的には、以下の方法で測定される。アミン価が上記範囲より低いと分散能力が低下する傾向があり、また、上記範囲を超えると現像性が低下しやすくなる。
<アミン価の測定方法>
アミン価は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの質量で表し、次の方法により測定することができる。
100mLのビーカーに分散剤試料の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHClO4(過塩素酸)酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
〔但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[質量%]を表す。〕
[光重合開始剤(c)]
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光重合開始剤(c)は、少なくとも、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)を含むことを特徴とする。
<オキシムエステル光重合開始剤(c−1)>
本発明において、光重合開始剤(c)として、オキシム誘導体類(オキシム系及びケトオキシム系化合物)であるオキシムエステルが有効である理由は次の通りである。
即ち、本発明において分散剤(b)として用いる特定のポリウレタン分散剤(b−1)は、感光性樹脂組成物において、光重合開始剤(c)としてオキシムエステル光重合開始剤(c−1)を用いた時に、カラーフィルター作製時などに、アルカリ現像液への耐性が向上し、その後の高温硬化処理における熱変形が抑えられることにより、現在、市場で要求されている高微細な細線を容易に形成することができるようになる。
本発明で用いるポリウレタン分散剤(b−1)は、前記のように、吸着基又はウレタン骨格の部位で顔料が取り込まれ、ポリエステル鎖又はポリエーテル鎖の部位で感光性樹脂組成物中の樹脂又はモノマーとよく相溶してからみ合い、又、その後、紫外線で光重合開始剤(c)によって感光性樹脂組成物の樹脂又はモノマーが架橋することにより、本発明の効果である耐アルカリ現像性及び耐熱性をさらに向上させる。この効果は、ポリウレタン分散剤(b−1)とオキシムエステル光重合開始剤(c−1)を併用することにより、より一層向上するものと考えられる。
特に紫外線の届きにくい基板と細線パターンの接着部分又は紫外線露光時のマスクによって紫外線が遮光され弱くなる細線パターンの側面部において、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)とポリウレタン分散剤(b−1)が共存することにより、アルカリ現像液耐性と耐熱性の効果が相乗的に向上し、高微細な細線を容易に形成することが可能となる。
また、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)は、その構造の中に紫外線を吸収する構造と光エネルギーを伝達する構造とラジカルを発生する構造を併せ持っているために、少量で感度が高く、かつ熱反応に対しては安定であり、少量で高感度な感光性樹脂組成物の設計が可能である。特に、露光光源のi線(365nm)に対する光吸収性の観点から、置換されていてもよいカルバゾール基(置換されていてもよいカルバゾール環を有する基)を有するオキシムエステル光重合開始剤(c−1)の場合に、この構造特性が良好に発現されより好ましい。
現在、市場では、遮光度が高く、一方で薄膜のBM(ブラックマトリックス)が要求されており、顔料濃度も、ますます高くなっている。このような状況において、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)は有効に機能する。
オキシムエステル光重合開始剤(c−1)のオキシム系化合物としては、下記一般式(22)で示される構造部分を含む化合物が挙げられ、好ましくは、下記一般式(23)で示されるオキシムエステル系化合物が挙げられる。
上記式(22)中、R22は、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数1〜20のヘテロアリールアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のフェノキシカルボニルアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリ−ルオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜10のアミノアルキルカルボニル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数1〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、又は炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基を示す。
上記式(23)中、R21aは、水素原子、又はそれぞれ置換されていてもよい、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜25のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数8〜20のフェノキシカルボニルアルキル基、炭素数1〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルキル基もしくはヘテロアリールチオアルキル基、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数1〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、又は炭素数6〜20のシクロアルキルアルキル基を示す。
R21bは芳香環あるいはヘテロ芳香環を含む任意の置換基を示す。
なお、R21aはR21bと共に環を形成してもよく、その連結基は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、ポリエチレン基[−(CH=CH)r−]若しくはポリエチニレン基[−(C≡C)r−]又はこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。なお、rは0〜3の整数である。
R22aは、上記式(22)のおけるR22と同様の基を示す。
これらの中でも感度の観点から、上記一般式(22)におけるR22及び上記一般式(23)におけるR22aとしては、好ましくは、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数1〜20のヘテロアリールアルカノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基が挙げられ、より好ましくは炭素数2〜10のアルカノイル基が挙げられ、さらに好ましくは炭素数2〜5のアルカノイル基が挙げられる。
上記一般式(23)におけるR21aとしては、溶媒への溶解性、感度の観点から好ましくは、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のシクロアルキルアルキル基、又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチルエチル基、4−(2−メトキシ−1−メチル)エトキシ−2−メチルフェニル基又はN−アセチル−N−アセトキシアミノ基で置換されたプロピル基が挙げられる。
また、上記一般式(23)におけるR21bとしては、好ましくは置換されていてもよいカルバゾール基、置換されていてもよいチオキサントニル基又は置換されていてもよいフェニルスルフィド基が挙げられる。R21bとして、置換基を有していてもよいカルバゾール基を含有する場合が、前述の理由からより好ましい。またニトロ基をもったカルバゾール基を有するオキシムエステル開始剤も有効である。
オキシムエステル光重合開始剤(c−1)としては、R21bとして置換されていてもよいカルバゾール基を含有するものが、前述の理由からより好ましい。さらに、置換されていてもよい炭素数6〜25のアリール基、置換されていてもよい炭素数7〜25のアリールカルボニル基、置換されていてもよい炭素数5〜25のヘテロアリール基、置換されていてもよい炭素数6〜25のヘテロアリールカルボニル基、及びニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するカルバゾール基が好ましい。特に、感度の観点から、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基、チエニルカルボニル基、及びニトロ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するカルバゾール基が好ましい。カルバゾール基が有していてもよい置換基がこれらのものであれば、光重合開始剤の感度に大きな影響はなく、仮に多少影響があったとしても露光量を調整したり、光重合開始剤の添加量を調整したりすることによって、所望の細線を形成することができる傾向がある。
また、これらの基は、吸収した光エネルギーの効率的な伝達の観点から、カルバゾール基の3位に結合していることが好ましい。同様に、前記式(23)におけるC原子は、カルバゾール基の6位に結合していることが好ましい。
また、カルバゾール基のN原子に結合しているH原子は、任意の置換基で置換されていてもよく、任意の置換基としては溶媒への溶解性の観点から、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がさらに好ましい。
このようなオキシムエステル光重合開始剤(c−1)の市販品として、BASF社製のOXE−02、常州強力電子社製のTR−PBG−304、TR−PBG−314又はADEKA社製NCI−831などがある。
オキシムエステル光重合開始剤(c−1)として、本発明に好ましいオキシムエステル系化合物として具体的には、以下に例示されるような化合物が挙げられるが、何らこれらの化合物に限定されるものではない。
一方、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)のケトオキシムエステル系化合物としては、下記一般式(24)で示される構造部分を含む化合物が挙げられ、好ましくは、下記一般式(25)で示されるオキシムエステル系化合物が挙げられる。
上記一般式(24)において、R24は、前記一般式(22)におけるR22と同義である。
上記一般式(25)において、R23aは、それぞれ置換されていてもよい、フェニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜25のアルケニル基、炭素数1〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルキル基、炭素数8〜20のフェノキシカルボニルアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数1〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルキル基もしくはヘテロアリールチオアルキル基、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数1〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、又は炭素数6〜20のシクロアルキルアルキル基を示す。
R23bは芳香環あるいはヘテロ芳香環を含む任意の置換基を示す。
なお、R23aはR23bと共に環を形成してもよく、その連結基は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、ポリエチレン基(−(CH=CH)r−)、ポリエチニレン基(−(C≡C)r−)あるいはこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。なお、rは0〜3の整数である。
R24aは、それぞれ置換されていてもよい、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のベンゾイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基、又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を表す。
上記一般式(24)におけるR24及び上記一般式(25)におけるR24aとしては、好ましくは、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数1〜20のヘテロアリールアルカノイル基、炭素数3〜8のシクロアルカノイル基又は炭素数7〜20のアリーロイル基が挙げられる。
上記一般式(25)におけるR23aとしては、好ましくは無置換のエチル基、プロピル基若しくはブチル基、又はメトキシカルボニル基で置換されたエチル基若しくはプロピル基が挙げられる。また、上記一般式(25)におけるR23bとしては、好ましくは置換されていてもよいカルバゾール基、置換されていてもよいフェニルスルフィド基が挙げられるが、R23bとしてカルバゾール基を含有するものが、前記理由より、より好ましい。
オキシムエステル光重合開始剤(c−1)として本発明に好ましいケトオキシムエステル系化合物として具体的には、以下に例示されるような化合物が挙げられるが、何らこれらの化合物に限定されるものではない。
このようなオキシムエステル光重合開始剤(c−1)の市販品として、BASF社製のOXE−01又は常州強力電子社製のTR−PBG−305などがある。
これらのオキシム及びケトオキシムエステル系化合物は、それ自体公知の化合物であり、例えば、日本国特開2000−80068号公報、又は日本国特開2006−36750号公報に記載されている一連の化合物の一種である。
上記オキシムエステル光重合開始剤(c−1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<その他の光重合開始剤>
本発明における光重合開始剤(c)は、少なくとも上記のオキシムエステル光重合開始剤(c−1)を含むものであるが、オキシムエステル光重合開始剤(c−1)を用いることによる本発明の効果に影響しない範囲でオキシムエステル光重合開始剤(c−1)以外のその他の光重合開始剤(c−2)を併用してもよい。また、必要に応じて、加速剤、増感色素等の付加剤を添加して使用してもよい。
その他の光重合開始剤(c−2)としては、例えば、日本国特開昭59−152396号公報、日本国特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン誘導体類を含むメタロセン化合物;日本国特開2000−56118号公報に記載のビイミダゾール誘導体;日本国特開平10−39503号公報記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体、ハロメチル−s−トリアジン誘導体、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤又はα−アミノアルキルフェノン誘導体;などが挙げられる。
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)及びジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6−ジ−フルオロ−3−(ピロ−1−イル)−フェニ−1−イル〕等が挙げられる。
また、ビイミダゾール誘導体類としては、例えば、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体及び(4’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
また、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、例えば、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6”−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール及び2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
また、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類としては、例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン及び2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
また、α−アミノアルキルフェノン誘導体類としては、例えば、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン及び4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
その他に、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体類;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体類;9−フェニルアクリジン、9−(p−メトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体類;9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体類;ベンズアンスロン等のアンスロン誘導体類等も挙げられる。
これらのその他の光重合開始剤についても1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
<加速剤>
加速剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物又は脂肪族多官能メルカプト化合物等が挙げられる。加速剤は、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<増感色素>
光重合開始剤(c)には、必要に応じて、感応感度を高める目的で、画像露光光源の波長に応じた増感色素を併用させることができる。これら増感色素としては、日本国特開平4−221958号公報、同4−219756号公報に記載のキサンテン色素、日本国特開平3−239703号公報、同5−289335号公報に記載の複素環を有するクマリン色素、日本国特開平3−239703号公報、同5−289335号公報に記載の3−ケトクマリン化合物、日本国特開平6−19240号公報に記載のピロメテン色素、その他、日本国特開昭47−2528号公報、同54−155292号公報、日本国特公昭45−37377号公報、日本国特開昭48−84183号公報、同52−112681号公報、同58−15503号公報、同60−88005号公報、同59−56403号公報、日本国特開平2−69号公報、日本国特開昭57−168088号公報、日本国特開平5−107761号公報、日本国特開平5−210240号公報、日本国特開平4−288818号公報に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等を挙げることができる。
これらの増感色素のうち好ましいものは、アミノ基含有増感色素であり、更に好ましいものは、アミノ基及びフェニル基を同一分子内に有する化合物である。特に、好ましいのは、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ[4,5]ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ[6,7]ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等のp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等である。
このうち最も好ましいものは、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。
増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[アルカリ可溶性樹脂(d)]
本発明の感光性樹脂組成物に適用される樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂(d)が適用される。本発明で用いるアルカリ可溶性樹脂(d)は、これを含有する本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる膜を露光後、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が変化するようなものであれば特に限定されてないが、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基の少なくとも一方を有するアルカリ可溶性樹脂(d−1)が好ましく、カルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂が更に好ましい。
具体的には、例えば、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及びアクリル共重合樹脂が挙げられる。好ましいものとしてより具体的には、後述のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)、アクリル共重合樹脂(D2−1)、アクリル共重合樹脂(D2−2)、アクリル共重合樹脂(D2−3)及びアクリル共重合樹脂(D2−4)として記載のものが挙げられる。これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。
上記の中でも、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が特に好ましい。その理由は以下の通りである。
アルカリ可溶性樹脂(d)は、本発明で用いる、前述のウレタン骨格と親溶媒基及び吸着基を有するポリウレタン分散剤(b−1)と、溶剤(e)を含有する感光性樹脂組成物中で、良く相溶し、ポリウレタン分散剤(b−1)のポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖と高分子のアルカリ可溶性樹脂(d)が、色材(a)の凝集を防止する立体障害部となり、良好な分散状態を保つ。
また、カラーフィルター作製時には、良く相溶したポリウレタン分散剤(b−1)のポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖と高分子のアルカリ可溶性樹脂(d)が、からみ合うこと、又はポリウレタン分散剤(b−1)の吸着基若しくはポリウレタン骨格が色材(a)に吸着し、耐性の高い色材(a)を取り込むことにより、アルカリ現像時又はその後の高温処理時において、アルカリ現像液による浸食又は熱による変形が小さくなる。
また、カラーフィルター作製時、アルカリ現像液に非露光部が溶解するには、バインダー樹脂として、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などの酸性の官能基を有するアルカリ可溶性樹脂が適用される。特に、アルカリ可溶性樹脂がカルボキシル基を有する場合、水酸基を有する場合に比べてアルカリ現像液に溶解しやすくなる傾向がある。
また、リン酸基又はスルホン酸基は、カルボキシル基よりも酸性度は高いが、感光性樹脂組成物中の塩基性を持った光重合開始剤、光重合性モノマー、分散剤、その他の添加剤と反応しやすく、保存安定性が悪くなる場合がある。
また、アルカリ可溶性樹脂の酸性基がカルボキシル基である場合には、分散に影響を及ぼすことなく、分散剤(b)と弱く親和し、アルカリ現像時のアルカリ現像液による浸食、又はその後の高温処理時の熱による変形がさらに抑えられる傾向がある。
さらに、アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を有する場合には、紫外線照射により、架橋して、前記ポリウレタン分散剤(b−1)のポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖とアルカリ可溶性樹脂(d)のからみ合いがより強固になり、紫外線照射部のアルカリ現像液耐性及び耐熱性が、非常に大きくなる傾向がある。
また、アルカリ可溶性樹脂(d)がエチレン性不飽和基を有する場合には、ポリウレタン分散剤(b−1)とオキシムエステル光重合開始剤(c−1)を併用することによる効果がより一層向上する。
特に紫外線の届きにくい基板と細線パターンとの接着部分又は紫外線露光時のマスクによって紫外線が遮光され弱くなる細線パターンの側面部において、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂とポリウレタン分散剤(b−1)及びオキシムエステル光重合開始剤(c−1)の併用により、相乗的にアルカリ現像液耐性と耐熱性が向上し、高微細な細線を容易に形成することができるようになる傾向がある。
また、カルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂としてエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を用いた場合には、樹脂中に不飽和基又はカルボキシル基を多く付加させることができる。また、芳香環構造を多く導入させたり、立体的に嵩ばった脂環式構造を導入させることが可能となり、耐アルカリ現像液性及び耐熱性をより一層向上させることができる。
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂>
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、以下のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)が挙げられる。
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)>
エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸及びその無水物の少なくとも一方を反応させることによって得られたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂。
<エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)>
エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコールと、多塩基酸及びその無水物の少なくとも一方と反応させることによって得られたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D−1)及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D−2)の原料となるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学社製の「エピコート(登録商標。以下同じ。)828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ(例えば、日本化薬社製の「NER−1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、三菱化学社製の「エピコート807」、「EP−4001」、「EP−4002」、「EP−4004等」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、三菱化学社製の「YX−4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−201」、三菱化学社製の「EP−152」、「EP−154」、ダウケミカル社製の「DEN−438」)、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN(登録商標。以下同じ。)−102S」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学社製の「TEPIC(登録商標)」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN(登録商標。以下同じ。)−501」、「EPN−502」、「EPPN−503」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド(登録商標。以下同じ。)2021P」、「セロキサイドEHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したエポキシ樹脂(例えば、大日本インキ社製の「EXA−7200」、日本化薬社製の「NC−7300」)及び下記一般式(d1)〜(d4)で表されるエポキシ樹脂、等が挙げられる。
具体的には、例えば、下記一般式(d1)で表されるエポキシ樹脂として日本化薬社製の「XD−1000」、下記一般式(d2)で表されるエポキシ樹脂として日本化薬社製の「NC−3000」及び下記一般式(d4)で表されるエポキシ樹脂として新日鐵化学社製の「ESF−300」等が挙げられる。
上記一般式(d1)において、b11は平均値を示し0〜10の数を示す。R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表す。なお、1分子中に存在する複数のR11は互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(d2)において、b12は平均値を示し0〜10の数を示す。R21は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表す。なお、1分子中に存在する複数のR21は互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(d3)において、Xは下記一般式(d3−1)又は(d3−2)で表される連結基を示す。但し、分子構造中に1つ以上のアダマンタン構造を含む。b13は2又は3の整数を示す。
上記一般式(d3−1)及び(d3−2)において、R31〜R34及びR35〜R37は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアダマンチル基、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。また、各式中の*印は式(d3)中の結合部位を表す。
上記一般式(d4)において、p及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、R41及びR42はそれぞれ独立してアルキル基又はハロゲン原子を表す。R43及びR44はそれぞれ独立してアルキレン基を表す。x及びyはそれぞれ独立して0以上の整数を表す。
これらの中で、一般式(d1)〜(d4)のいずれか1で表されるエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体などのモノカルボン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシブチルマレイン酸(メタ)、アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものである単量体、或いはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに(無水)コハク酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸などの酸(無水物)を付加させた単量体及び(メタ)アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。
これらの内、感度の点から、特に好ましいものは(メタ)アクリル酸である。
エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させる方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、エステル化触媒の存在下、50〜150℃の温度で、α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとエポキシ樹脂とを反応させることができる。
ここで用いるエステル化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン及びベンジルジエチルアミン等の3級アミン、並びにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等を用いることができる。
なお、エポキシ樹脂、α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル、及びエステル化触媒は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルの使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。
α,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルの使用量が少ないと不飽和基の導入量が不足し、引き続く多塩基酸及び/又はその無水物との反応も不十分となる。
また、多量のエポキシ基が残存することも有利ではない。一方、該使用量が多いとα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルが未反応物として残存する。いずれの場合も硬化特性が悪化する傾向が認められる。
多塩基酸及び/又はその無水物としては、例えば、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸及びビフェニルテトラカルボン酸並びにこれらの無水物等から選ばれた、1種又は2種以上が挙げられる。
好ましくは、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸若しくはビフェニルテトラカルボン酸、又はこれらの無水物である。特に好ましくは、テトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸、無水テトラヒドロフタル酸、又はビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
多塩基酸及び/又はその無水物の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、エポキシ樹脂へのα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルの付加反応と同様な条件下で、継続反応させて目的物を得ることができる。
多塩基酸及び/又はその無水物成分の付加量は、生成するカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価が10〜150mgKOH/gの範囲となるような程度であることが好ましく、さらに20〜140mgKOH/gの範囲となるような程度であることが好ましい。
カルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の酸価が上記範囲未満であるとアルカリ現像性に乏しくなる傾向があり、また、上記範囲を超えると硬化性能に劣る傾向が認められる。
なお、多塩基酸及び/又はその無水物の付加反応合成時に、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールを添加し、多分岐構造を導入したものとしてもよい。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、(D1−2)は、通常、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物に、多塩基酸及び/又はその無水物を混合した後、もしくは、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物に、多塩基酸及び/又はその無水物及び多価アルコールを混合した後に、加温することにより得られる。
この場合、多塩基酸及び/又はその無水物と多価アルコールの混合順序に、特に制限はない。加温により、エポキシ樹脂とα,β−不飽和モノカルボン酸又はカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとの反応物と多価アルコールとの混合物中に存在するいずれかの水酸基に対して多塩基酸及び/又はその無水物が付加反応する。
多価アルコールの使用量は、少な過ぎると効果が薄く、多過ぎると増粘又はゲル化の可能性があるので、エポキシ樹脂成分とα,β−不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル成分との反応物に対して、通常0.01〜0.5質量倍程度、好ましくは0.02〜0.2質量倍程度である。
このようにして得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、(D1−2)の酸価は、通常10mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上である。酸価が10mgKOH/g未満では現像性が不足する場合がある。
また酸価が過度に高いと、感光性組樹脂成物のアルカリ耐性に問題がある(すなわち、アルカリ性現像液により、パターン表面の粗面化又は膜減りが生じる)場合があるので、酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、(D1−2)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1,500以上であることがより好ましい。また、10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましく、6,000以下であることが更に好ましい。重量平均分子量(Mw)が小さ過ぎると感度、塗膜強度又はアルカリ耐性に問題が生じる可能性があり、大き過ぎると現像性又は再溶解性に問題が生じる場合がある。
<アクリル共重合樹脂>
アクリル共重合樹脂としては、例えば、日本国特開平7−207211号公報、日本国特開平8−259876号公報、日本国特開平10−300922号公報、日本国特開平11−140144号公報、日本国特開平11−174224号公報、日本国特開2000−56118号公報、日本国特開2003−233179号公報、日本国特開2007−270147号公報などの各公報等に記載された様々な高分子化合物を使用することができるが、好ましくは、以下の(D2−1)〜(D2−4)の樹脂等が挙げられる。中でも(D2−1)〜(D2−4)の樹脂の中においては、(D2−1)と(D2−3)の樹脂が好ましい。
(D2−1):エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、当該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは当該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂(以下「(D2−1)樹脂」と称す場合がある。)
(D2−2):主鎖にカルボキシル基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂(以下「(D2−2)樹脂」と称す場合がある。)
(D2−3):前記(D2−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下「(D2−3)樹脂」と称す場合がある。)
(D2−4):(メタ)アクリル系樹脂(以下「(D2−4)樹脂」と称す場合がある。)
尚、上記(D2−1)樹脂もエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の概念に包含される。
以下、これらの各樹脂について説明する。
<(D2−1)樹脂>
(D2−1)エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、当該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは当該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂としては、より具体的には、「エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体10〜95モル%との共重合体に対し、当該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは当該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に、更に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂」が挙げられる。
(D2−1)樹脂を構成する「エポキシ基含有(メタ)アクリレート」としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性単量体としては、下記一般式(11)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
上記一般式(11)において、R81〜R88は各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示すが、R87及びR88は互いに連結して環を形成していてもよい。上記一般式(11)において、R87とR88が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和の何れでもよく、炭素数が5〜6であるのが好ましい。
中でも、上記一般式(11)で表される構造としては、下記式(11a)、(11b)、又は(11c)で表される構造が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の感光性樹脂組成物をカラーフィルター又は画像表示装置に使用する場合に、その耐熱性及び強度を高めることができる。
前記一般式(11)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り様々なものが使用できるが、特に下記一般式(12)で表されるものが好ましい。
上記一般式(12)中、R89は水素原子又はメチル基を示し、R90は前記一般式(11)で表される構造を示す。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体において、前記一般式(11)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性単量体」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
なお、前記一般式(11)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性単量体」としては、特に限定されるものではない。
(D2−1)樹脂の、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性単量体との共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性単量体に由来する繰返し単位10〜95モル%とからなるものが好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
(D2−1)樹脂では、上記のエポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、多塩基酸無水物とを反応させる。
ここで、エポキシ基に付加させる「不飽和一塩基酸」としては、様々なものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、又はp−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような成分を付加させることにより、(D2−1)樹脂に重合性を付与することができる。
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは50〜100モル%に付加させる。
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる「多塩基酸無水物」としては、様々なものが使用できる。例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及び無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物及びビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸及び無水コハク酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、(D2−1)樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜80モル%に付加させる。
<(D2−2)樹脂>
(D2−2)主鎖にカルボキシル基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、通常、カルボキシル基を含有する重合性モノマーを重合して得られる。
カルボキシル基含有重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸及び2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸等のビニル系モノマー;アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン及びδ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものであるモノマー;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにコハク酸、マレイン酸及びフタル酸並びにそれらの無水物等の酸或いは無水物を付加させたモノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル酸又は2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸であり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
また、(D2−2)樹脂は、上記のカルボキシル基含有重合性モノマーに、カルボキシル基を有さない他の重合性モノマーを共重合させたものであってもよい。この場合、他の重合性モノマーとしては、特に限定されないが、日本国特開2009−52010号公報に記載されているもの等が挙げられる。また、これら重合性モノマーのうち、顔料分散性に優れる点からは、特にベンジル(メタ)アクリレートを含む共重合体樹脂が好ましい。
<(D2−3)樹脂>
(D2−3)前記(D2−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂において、(D2−2)樹脂のカルボキシル基部分に付加させるエポキシ基含有不飽和化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するものであれば、特に限定されるものではない。
このエポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル−α−エチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の非環式エポキシ基含有不飽和化合物が挙げられる。耐熱性及び顔料の分散性の観点から、以下に記載する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。
ここで、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物の脂環式エポキシ基として、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基及び7,8−エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル〕基等が挙げられる。また、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基に由来するものであるのが好ましい。
<(D2−4)樹脂>
(D2−4)(メタ)アクリル系樹脂としては、下記一般式(6)で表される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなる(メタ)アクリル系樹脂を挙げることができる。
上記一般式(6)中、R71及びR72は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を示す。
以下、一般式(6)の化合物について詳述する。
一般式(6)で表されるエーテルダイマーにおいて、R71及びR72で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル及び2−エチルヘキシル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル及び2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル及び1−エトキシエチル等のアルコキシ基で置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル及びベンジル等のような酸又は熱で脱離しにくい1級又は2級炭素原子を有する置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、R71及びR72は、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
一般式(6)で表されるエーテルダイマーとしては、特に、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート又はジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(D2−4)樹脂を得る際の、モノマー成分中における前記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全モノマー成分中、通常2〜60質量%、好ましくは5〜50質量%である。
(D2−4)樹脂は、酸基を有することが好ましい。酸基を有することにより、これを用いて得られる本発明の感光性樹脂組成物が、酸基とエポキシ基が反応してエステル結合を形成する架橋反応(以下、「酸−エポキシ硬化」と略することがある。)により硬化が可能な感光性樹脂組成物、又は未硬化部をアルカリ現像液で顕像可能な感光性樹脂組成物、とすることができる。
前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基及びカルボン酸無水物基等が挙げられる。樹脂1分子中に含まれるこれらの酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(D2−4)樹脂に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマー、及び/又は「重合後に酸基を付与しうるモノマー」(以下「酸基を導入するためのモノマー」と称することもある。)を、モノマー成分として使用すればよい。なお、「重合後に酸基を付与しうるモノマー」をモノマー成分として使用する場合には、重合後に、酸基を付与するための処理が必要となる。
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸又はイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー;無水マレイン酸又は無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられる。これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
これら酸基を導入するためのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(D2−4)樹脂を得る際のモノマー成分が、前記酸基を導入するためのモノマーをも含む場合、その含有割合は、通常は全モノマー成分中5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%である。
(D2−4)樹脂を得る際のモノマー成分は、上記必須のモノマー成分のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(d)として上記のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)、(D2−1)樹脂、(D2−2)樹脂、(D2−3)樹脂及び(D2−4)樹脂のいずれか1を含むことが好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)、(D2−1)樹脂及び(D2−3)樹脂のいずれか1を含むことがさらに好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)を少なくとも含むことが特に好ましい。
<その他のアルカリ可溶性樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)、(D2−1)〜(D2−4)樹脂以外に、アルカリ可溶性樹脂(b)として、その他のアルカリ可溶性樹脂の1種又は2種以上を含有していてもよい。
その他のアルカリ可溶性樹脂に制限は無く、感光性樹脂組成物に通常使用される樹脂から選択すればよい。例えば、日本国特開2007−271727号公報、日本国特開2007−316620号公報、日本国特開2007−334290号公報などに記載のアルカリ可溶性樹脂などが挙げられる。
[色材(a)]
本発明の感光性樹脂組成物は、色材(a)を含有する。色材(a)は、本発明の感光性樹脂組成物を着色するものをいう。色材(a)としては、染顔料が使用できるが、耐熱性及び耐光性等の点から顔料が好ましい。
顔料としては、例えば、青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料又は黒色顔料等各種の色の顔料が挙げられる。また、その構造としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等が挙げられる。
以下に、本発明に使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275及び276を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242又は254を、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、254を挙げることができる。
青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78及び79を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4又は15:6を、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6を挙げることができる。
緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54及び55を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36又は58を挙げることができる。
黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207及び208を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180又は185を、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、150又は180を挙げることができる。
オレンジ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78及び79を挙げることができる。この中でも、好ましくは、C.I.ピグメントオレンジ38又は71を挙げることができる。
紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49及び50を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19又は23を、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23を挙げることができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物が、カラーフィルターの樹脂ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物である場合、色材(a)としては、黒色の色材を用いることができる。黒色色材は、黒色色材の単独でもよく、又は赤、緑及び青等の混合によるものでもよい。また、これら色材は無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択することができる。
黒色色材を調製するために混合使用可能な色材としては、例えば、ビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッド7B4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)、リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6)、リオノーゲンレッドGD(ピグメントレッド168)及びリオノールグリーン2YS(ピグメントグリーン36)等が挙げられる(なお、上記の( )内の数字は、カラーインデックス(C.I.)を意味する)。
また、更に他の混合使用可能な顔料についてC.I.ナンバーにて示すと、例えば、C.I.黄色顔料20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154及び166、C.I.オレンジ顔料36、43、51、55、59及び61、C.I.赤色顔料9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228及び240、C.I.バイオレット顔料19、23、29、30、37、40及び50、C.I.青色顔料15、15:1、15:4、22、60及び64、C.I.緑色顔料7並びにC.I.ブラウン顔料23、25及び26等を挙げることができる。
また、単独使用可能な黒色色材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック及びチタンブラック等が挙げられる。
黒色の色材を用いる場合、これらの色材(a)の中では、カーボンブラックを用いることが遮光率、画像特性の観点から好ましい。カーボンブラックの例としては、以下のようなカーボンブラックが挙げられる。
三菱化学社製:MA7、MA77、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA220、MA230、MA600、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#50、#52、#55、#650、#750、#850、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#2200、#2300、#2350、#2400、#2600、#3050、#3150、#3250、#3600、#3750、#3950、#4000、#4010、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B及びOIL31B
デグサ社製:Printex(登録商標。以下同じ。)3、Printex3OP、Printex30、Printex30OP、Printex40、Printex45、Printex55、Printex60、Printex75、Printex80、Printex85、Printex90、Printex A、Printex L、Printex G、Printex P、Printex U、Printex V、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack350、SpecialBlack250、SpecialBlack100、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S160及びColor Black S170
キャボット社製:Monarch(登録商標。以下同じ。)120、Monarch280、Monarch460、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Monarch4630、REGAL(登録商標。以下同じ。)99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、REGAL400R、REGAL55R0、REGAL660R、BLACK PEARLS480、PEARLS130、VULCAN(登録商標。以下同じ。) XC72R及びELFTEX(登録商標)−8
コロンビヤンカーボン社製:RAVEN(登録商標。以下同じ。)11、RAVEN14、RAVEN15、RAVEN16、RAVEN22RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040、RAVEN1060U、RAVEN1080U、RAVEN1170、RAVEN1190U、RAVEN1250、RAVEN1500、RAVEN2000、RAVEN2500U、RAVEN3500、RAVEN5000、RAVEN5250、RAVEN5750及びRAVEN7000
カーボンブラックは、樹脂で被覆されたものを使用しても構わない。樹脂で被覆されたカーボンブラックを使用すると、ガラス基板への密着性及び体積抵抗値を向上させる効果がある。樹脂で被覆されたカーボンブラックとしては、例えば、日本国特開平09−71733号公報に記載されているカーボンブラック等が好ましく使用できる。
被覆処理するカーボンブラックとしては、NaとCaの合計含有量が100ppm以下であることが好ましい。これは、以下の理由による。即ち、カーボンブラックは、通常、製造時の原料油若しくは燃焼油(又はガス)、反応停止水若しくは造粒水、又は反応炉の炉材等から混入したNa、Ca、K、Mg、Al若しくはFe等を組成とする灰分がパーセントのオーダーで含有されている。この内、Na及びCaは、各々数百ppm以上含有されているのが一般的であるが、これらが多く存在すると、透明電極(ITO)又はその他の電極に浸透し、電気的短絡の原因となる場合があるからである。
カーボンブラック中のこれらのNa又はCaを含む灰分の含有量を低減する方法としては、カーボンブラックを製造する際の原料油及び燃料油(又はガス)並びに反応停止水として、これらの含有量が極力少ないものを厳選すること及びストラクチャーを調整するアルカリ物質の添加量を極力少なくする方法が挙げられる。他の方法としては、炉から製出したカーボンブラックを水又は塩酸等で洗うことによりNa又はCaを溶解させて除去する方法が挙げられる。
他の黒色顔料の例としては、チタンブラック、アニリンブラック、酸化鉄系黒色顔料、並びに、赤色、緑色及び青色の三色の有機顔料を混合して黒色顔料として用いることができる。
また、顔料として、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ又は酸化クロム等を用いることもできる。
これら各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、緑色顔料と黄色顔料とを併用したり、青色顔料と紫色顔料とを併用することができる。
<色材(a)の粒径>
本発明に用いられる色材(a)である顔料の平均一次粒径としては、カラーフィルターの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10〜70nmの範囲内であることがより好ましく、20〜60nmの範囲内であることがさらに好ましい。該顔料の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造された画像表示装置の色特性を高品質なものとすることができる。また、顔料がカーボンブラックの場合の平均一次粒径は、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。また、顔料がカーボンブラックの場合の平均一次粒径は、20nm以上が好ましく、24nm以上がより好ましく、特に27nm以上が好ましい。
前記上限値以下とすることで、ポリウレタン分散剤(b−1)による顔料の取り込みが良好となり、耐アルカリ現像性及び耐熱性が向上する傾向がある。一方、前記下限値以上とすることで、分散剤(b)の量が多く必要になることによる分散性の低下を抑制できる傾向がある。
なお、上記顔料の平均一次粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とする。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均一次粒径とする。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)又は走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、色材(a)として好ましくは顔料が含まれるが、その他に、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で染料を併用してもよい。併用できる染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料及びメチン系染料等が挙げられる。
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、C.I.アシッドオレンジ7、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド180、C.I.アシッドブルー29、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトレッド83、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド120、C.I.リアクティブブラック5、C.I.ディスパースオレンジ5、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ベーシックブルー41、C.I.ベーシックレッド18、C.I.モルダントレッド7、C.I.モルダントイエロー5及びC.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドグリーン25、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー49、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー56及びC.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
フタロシアニン系染料としては、例えば、C.I.パッドブルー5等が挙げられる。キノンイミン系染料としては、例えば、C.I.ベーシックブルー3及びC.I.ベーシックブルー9等が挙げられる。
キノリン系染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.アシッドイエロー3及びC.I.ディスパースイエロー64等が挙げられる。ニトロ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、C.I.アシッドオレンジ3及びC.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
[光重合性モノマー]
本発明の感光性樹脂組成物は、感度等の点から光重合性モノマーを含有することが好ましい。
本発明に用いられる光重合性モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも1個有する化合物(以下、「エチレン性単量体」と称することがある)を挙げることができる。
具体的には、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン、エチレン性不飽和結合を1個有するカルボン酸、及び多価又は1価アルコールのモノエステル等が挙げられる。
本発明においては、特に、1分子中にエチレン性不飽和基を二個以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが好ましい。
かかる多官能エチレン性単量体としては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルなどが挙げられる。
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びグリセロールアクリレート等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル、並びにこれら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロネートに代えたクロトン酸エステル及びマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート及びピロガロールトリアクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル並びにメタクリル酸エステル等が挙げられる。
多塩基性カルボン酸及び不飽和カルボン酸と、多価ヒドロキシ化合物のエステル化反応により得られるエステルとしては必ずしも単一物ではないが、代表的な具体例としては、アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、並びにアクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
その他、本発明に用いられる多官能エチレン性単量体としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル又はポリイソシアネート化合物とポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られるようなウレタン(メタ)アクリレート類;多価エポキシ化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸との付加反応物のようなエポキシアクリレート類;エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
更に、本発明に用いられる多官能エチレン性単量体としては、例えば、分子内にカプロラクトン構造と2個以上のエチレン性不飽和基とを有する化合物(以下、「カプロラクトン構造含有多官能性単量体」ということがある。)が、本発明で用いるポリウレタン分散剤(b−1)とよく相溶し、これらの分散剤による効果をさらに向上させることができるために、有用であり好ましく用いられる。
カプロラクトン構造含有多官能性単量体としては、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール又はトリメチロールメラミン等の多価アルコールに、ε−カプロラクトンを開環付加反応により開環骨格を結合させ、開環骨格の末端水酸基に、(メタ)アクリロイルクロライドを反応させたり、(メタ)アクリル酸とエステル化反応させたりして(メタ)アクリロイル基を導入する公知の方法によって合成することができる、ε−カプロラクトン構造含有多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
このようなカプロラクトン構造含有多官能性単量体は、以下のような市販のものがある。例えば、多価アルコールとしてジペンタエリスリトールを用い、これとアクリル酸とε−カプロラクトンをエステル化したものとしては、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60及びDPCA−120等を挙げることができ、本発明の感光性樹脂組成物の光重合性モノマーとして好ましく用いられる。
また、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート化合物の市販品として、新中村化学工業株式会社のA−9300−1CL(1モルの化合物中に1モルのε−カプロラクトン構造を有する。)があり、これらのε−カプロラクトン構造を1モルの化合物中に0.1〜9モル、より好ましくは1〜3モル有しているものも、本発明の感光性樹脂組成物の光重合性モノマーとして好ましく用いられる。
また、多価アルコールとしてペンタエリスリトールを用い、これとε−カプロラクトンをエステル化したのちの末端水酸基にアクリル酸をさらにエステル化したものも、本発明の感光性樹脂組成物の光重合性モノマーとして好ましく用いられる。これらは、1モルの化合物中にε−カプロラクトン構造を0.1〜20モル有しているものが好ましく、1〜12モル有しているものがより好ましく、1〜4モル有しているものが特に好ましい。
これらの光重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[チオール類]
本発明の感光性樹脂組成物は、高感度化、基板への密着性の向上のため、チオール類を含有することも好ましい。
チオール類の種類としては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)(略してPGMB)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン[商品名;カレンズ(登録商標。以下同じ。)MT BD1、昭和電工(株)製]、ブタンジオールトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(商品名;カレンズMT PE1、昭和電工(株)製)、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(略してTPMB)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)(略してTPMIB)及び1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(商品名;カレンズMT NR1、昭和電工(株)製)等が挙げられ、これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
好ましくは上記、PGMB、TPMB、TPMIB、カレンズMT BD1、カレンズMT PE1、カレンズMT NR1などの多官能チオールが好ましく、その中でもカレンズMT BD1、カレンズMT PE1、カレンズMT NR1がさらに好ましく、カレンズMT PE1が特に好ましい。
これらのチオール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[溶剤(e)]
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、アルカリ可溶性樹脂(d)、光重合性モノマー、光重合開始剤(c)、色材(a)、分散剤(b)、及び必要に応じて使用される各種材料が、溶剤(e)に溶解又は分散した状態で使用される。
本発明で用いる溶剤(e)としては、沸点(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)が100〜300℃の範囲の有機溶剤を選択するのが好ましい。より好ましくは120〜280℃の沸点をもつ有機溶剤である。
このような有機溶剤としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル及びトリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
エチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート及び1,6−ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;
シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;
アミルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル及びジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン及びメトキシメチルペンタノンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン及びベンジルアルコールのような1価又は多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン及びドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン及びビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル及びγ−ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸及び3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
ブチルクロライド及びアミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類等:
上記に該当する市販の溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ(「セロソルブ」は登録商標。以下同じ。)、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フォトリソグラフィー法にてカラーフィルターの画素又はブラックマトリックスを形成する場合、有機溶剤としては沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点を持つものである。
上記有機溶剤のうち、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。
また、グリコールアルキルエーテルアセテート類は、単独で使用してもよいが、他の有機溶剤を併用してもよい。併用する有機溶剤として、特に好ましいのはグリコールモノアルキルエーテル類である。中でも、特に組成物中の構成成分の溶解性からプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
なお、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、添加量が多すぎると顔料等の色材(a)が凝集しやすく、後に得られる感光性樹脂組成物の粘度が上がっていくなど、保存安定性が低下する傾向があるので、溶剤(e)中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、溶剤(e)として、150℃以上の沸点をもつ有機溶剤(以下「高沸点溶剤」と称す場合がある。)を併用することも好ましい。このような高沸点溶剤を併用することにより、感光性樹脂組成物は乾きにくくなるが、組成物中における色材(a)の均一な分散状態が、急激な乾燥により破壊されることを防止する効果がある。すなわち、例えばスリットノズル先端における、色材(a)などの析出・固化による異物欠陥の発生を防止する効果がある。
このような効果が高い点から、上述の各種溶剤の中でも、特にジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましい。
溶剤(e)中の高沸点溶剤の含有割合は、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。高沸点溶剤の量が少なすぎると、例えばスリットノズル先端で色材(a)などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こす可能性があり、また多すぎると組成物の乾燥温度が遅くなり、後述するカラーフィルター製造工程における、減圧乾燥プロセスのタクト不良、及びプリベークのピン跡といった問題を惹き起こすことが懸念される。
なお沸点150℃以上の高沸点溶剤が、グリコールアルキルエーテルアセテート類であってもよく、またグリコールモノアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の高沸点溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
好ましい高沸点溶剤として、例えば、前述の各種溶剤の中ではジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテート及びトリアセチンなどが挙げられる。
[感光性樹脂組成物のその他の配合成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、上述の成分の他、密着向上剤、塗布性向上剤、現像改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、顔料誘導体、重合加速剤、光酸発生剤、架橋剤、可塑剤、保存安定剤、表面保護剤、有機カルボン酸、有機カルボン酸無水物、現像改良剤又は熱重合防止剤等を適宜配合することができる。
<密着向上剤>
基板との密着性を改善するため、密着向上剤を本発明の感光性樹脂組成物に含有させてもよい。密着向上剤としては、例えば、シランカップリング剤、リン酸系密着向上剤及びその他の密着向上剤等が挙げられる。
シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、(メタ)アクリル系又はアミノ系等種々のものが1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
好ましいシランカップリング剤として、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン類、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン類並びに3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン類が挙げられる。特に好ましくは、エポキシシラン類のシランカップリング剤が挙げられる。
リン酸系密着向上剤としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類が好ましく、中でも下記一般式(g1)、(g2)又は(g3)で表されるものが好ましい。
上記一般式(g1)、(g2)及び(g3)において、R51は水素原子又はメチル基を示し、l及びl’は1〜10の整数、mは1、2又は3である。
その他の密着向上剤としては、例えば、TEGO*Add Bond LTH(Evonik社製)などが挙げられる。
これらのリン酸系密着向上剤及びその他の密着向上剤も、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<界面活性剤>
本発明の感光性着色組成物には、塗布性向上ため、界面活性剤を含有させてもよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性界面活性剤等各種のものを用いることができる。中でも、諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン系界面活性剤を用いるのが好ましく、特にフッ素系又はシリコン系の界面活性剤が塗布性の面で効果的である。
このような界面活性剤としては、例えば、TSF4460(ジーイー東芝シリコーン社製)、DFX−18(ネオス社製)、BYK−300、BYK−325、BYK−330(ビックケミー社製)、KP340(信越シリコーン社製)、F−470、F−475、F−478、F−559(大日本インキ化学工業社製)、SH7PA(トーレシリコーン社製)、DS−401(ダイキン社製)、L−77(日本ユニカー社製)及びFC4430(住友3M社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<顔料誘導体>
本発明の感光性着色組成物には、分散性、保存性向上のため、顔料誘導体を含有させてもよく、特に分散剤(b)と顔料誘導体の併用は分散性向上の点で好ましい。
顔料誘導体としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系及びジオキサジン系等の誘導体が挙げられる。中でもフタロシアニン系又はキノフタロン系が好ましい。
顔料誘導体の置換基としては、例えば、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基若しくはアミド基等が顔料骨格に直接又はアルキル基、アリール基若しくは複素環基等を介して結合したものが挙げられ、好ましくはスルホン酸基である。またこれら置換基は一つの顔料骨格に複数置換していてもよい。
顔料誘導体の具体例としては、フタロシアニンのスルホン酸誘導体、キノフタロンのスルホン酸誘導体、アントラキノンのスルホン酸誘導体、キナクリドンのスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロールのスルホン酸誘導体及びジオキサジンのスルホン酸誘導体等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[感光性樹脂組成物中の成分配合量]
本発明の感光性樹脂組成物の色材(a)の含有割合は、感光性樹脂組成物中の全固形分量に対して通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、また、通常70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。前記下限値以上とすることで、所定の色濃度を得るための膜厚が厚くなることで生じる、液晶セル化の際のギャップ制御などの悪影響を防止できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで、充分な画像形成性が容易に得られる傾向がある。
本発明の感光性樹脂組成物は、前述したように種々な用途に使用することができるが、本発明の感光性樹脂組成物による優れた画像形成性は、カラーフィルター用ブラックマトリックスの形成に使用した場合に、特に効果的である。
本発明の感光性樹脂組成物をブラックマトリックス形成に使用する場合には、色材(a)として前述したカーボンブラック又はチタンブラック等の黒色色材を使用するか、黒色以外の色材を複数種類混合し黒色に調整して使用すればよい。その中でも遮光性の観点から、カーボンブラックを使用することが、特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物による効果は、特に黒色顔料の顔料濃度が大きくなる領域で有効に発揮される。前述の通り、近年は遮光度を上げるために黒色顔料濃度を高くする必要があるが、本発明の効果が大きく生じる傾向があるとの観点から、黒色顔料の含有割合は感光性樹脂組成物の全固形分に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、48質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物において、黒色顔料が上記範囲内で含有されることにより、遮光性(光学密度、OD値)の高い着色感光性樹脂組成物を得ることができる傾向がある。具体的には、黒色顔料の含有割合を感光性樹脂組成物の全固形分に対し45質量%以上とすることにより、本発明の感光性樹脂組成物を用いて厚さ1μmのブラックマトリックスを形成した場合における光学密度を4.0以上の値とすることができる傾向がある。この光学密度は、より好ましくは4.2以上である。
一般に、遮光性が高い場合には、紫外線が膜の深部まで透過しにくく、特に基板と細線の密着する部分において光重合による架橋が弱くなる傾向があるが、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合は、顔料濃度が高いであっても、本発明の効果を顕著に確認することができる。本発明の感光性樹脂組成物の顔料濃度としては、特に固形分に対して40〜65質量%が効果的である。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、顔料濃度高い場合に限られず、低い場合においても、本発明の効果を奏することができる。感光性樹脂組成物において顔料濃度のみ変更した場合に、顔料濃度によっては、現像後の熱硬化処理時に熱変形が生じて細線の線幅が多少太くなったり細くなったりする場合もあるが、光重合性モノマーや光重合性開始剤などの成分量を調整したり、露光量を調整したりすることで、所望の線幅の細線を得ることができる。
本発明の感光性樹脂組成物の分散剤(b)の含有割合は特に限定されないが、感光性樹脂組成物の全固形分中、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、また、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。
また、分散剤(b)の含有割合は、色材(a)100質量部に対して、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、通常200質量部以下、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。分散剤(b)の含有割合を前記下限値以上とすることで、十分な分散性が得られやすい傾向があり、前記上限値以下とすることで相対的に他の成分の含有割合を十分に確保することでき、所望の色濃度、所望の感度、所望の成膜性等が得られやすい傾向がある。
なお、分散剤(b)に占めるポリウレタン分散剤(b−1)の割合は、ポリウレタン分散剤(b−1)を用いることによる本発明の効果をより一層有効に得るとの観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、また、通常100質量%以下である。
本発明の感光性樹脂組成物において、ポリウレタン分散剤(b−1)のアルカリ可溶性樹脂(d)100質量部に対する含有割合は、通常2質量部以上、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上がよりさらに好ましく、40質量部以上が特に好ましい。また、通常500質量部以下、300質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物の光重合開始剤(c)の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量以上、さらに好ましくは1質量%以上、よりさらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、また、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。光重合開始剤(c)の含有割合を前記下限値以上とすることで十分な感度が得られる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで未露光部分の現像液に対する溶解性の低下を抑制し、現像不良を防止しやすい傾向がある。
特に、光重合開始剤(c)中に占めるオキシムエステル光重合開始剤(c−1)の割合は、通常10質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、また、通常100質量%以下である。オキシムエステル光重合開始剤(c−1)の含有割合を前記下限値以上とすることで、本発明で用いるポリウレタン分散剤(b−1)とアルカリ可溶性樹脂(d)との組み合わせにおいて、紫外線照射後、アルカリ現像液又は高温処理に対する耐性がより良好になり、高微細な細線の形成性を向上させることができる。
また、ポリウレタン分散剤(b−1)とアルカリ可溶性樹脂(d)と光重合性モノマーの合計量100質量部に対する光重合開始剤(c)の含有割合は、通常1質量部以上であり、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、通常100質量部以下であり、60質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
光重合開始剤(c)と共に加速剤を用いる場合、加速剤の含有含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0質量%以上、好ましくは0.02質量%以上で、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下であり、加速剤は、光重合開始剤(c)に対して好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の割合で用いることができる。
また、増感色素を用いる場合、本発明の感光性樹脂組成物中に含まれる増感色素の含有割合は、感光性樹脂組成物中の全固形分中、通常0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜10質量%である。
本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性樹脂(d)の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、通常85質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、よりさらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。
アルカリ可溶性樹脂(d)の含有割合を前記下限値以上とすることで、未露光部分の現像液に対する溶解性の低下を抑制し、現像不良の誘起を防止しやすい傾向がある。また、前記上限値以下とすることで、露光部への現像液の浸透性を低く維持できる傾向があり、画素のシャープ性又は密着性を向上しやすい傾向がある。
尚、上述のように、本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(d)として、前述のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)、(D2−1)樹脂、(D2−2)樹脂、(D2−3)樹脂及び(D2−4)樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)樹脂、(D2−1)樹脂、(D2−3)樹脂を含むことがより好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)を含むことが特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(d)がこれらの好ましい樹脂以外のその他のアルカリ可溶性樹脂を含む場合、その含有割合は、アルカリ可溶性樹脂(d)の合計に対して、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、通常0質量%以上である。
なお、本発明の感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性樹脂(d)の色材(a)100質量部に対する量は、通常20質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、また、通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、よりさらに好ましくは80質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。色材(a)に対するアルカリ可溶性樹脂(d)の含有割合を前記下限値以上とすることで、未露光部分の現像液に対する溶解性の低下を抑制でき、現像不良の誘起を防止できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで、所望の画素膜厚が得られやすくなる傾向がある。
本発明の感光性樹脂組成物の光重合性モノマーの含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。光重合性モノマーの含有量が上記上限以下であることで、露光部への現像液の浸透性が適度となり良好な画像を得ることができる傾向にある。
光重合性モノマーの含有量の下限は、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。上記下限以上であることで、紫外線照射による光硬化を向上させるとともにアルカリ現像性も良好となる傾向にある。
また、ポリウレタン分散剤(b−1)とアルカリ可溶性樹脂(d)の合計量100質量部に対する光重合性モノマーの含有割合は、通常2質量部以上であり、4質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましい。また、通常500質量部以下であり、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂に対するポリウレタン分散剤(b−1)、光重合性モノマー、光重合開始剤(c)の量を前記下限値以上とすることで、感光性樹脂組成物の溶液中で、ポリウレタン分散剤(b−1)とアルカリ可溶性樹脂(d)の相溶性による色材(a)の凝集に対する立体障害性向上により、分散性を向上させ、又、カラーフィルター作製時には、ポリウレタン分散剤(b−1)とアルカリ可溶性樹脂(d)と紫外線照射により、光重合開始剤(c)で架橋したエチレン性不飽和基を有する成分が、さらに架橋性を増すことにより、本発明の効果であるアルカリ現像液及び高温処理に対する耐性を向上させ、高微細な細線を形成しやすくなる傾向がある。
また、アルカリ現像液に対する溶解性に劣る傾向があるポリウレタン分散剤(b−1)、光重合性モノマー、光重合開始剤(c)の量を上記上限値以下とすることで、紫外線未露光部のアルカリ現像液に対する溶解性を向上させ、基板上の現像残渣を低減することができる傾向がある。
また、前述のチオール類を用いる場合、チオール類の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。チオール類の含有量が少なすぎると感度低下の向上効果が十分でなく、多すぎると保存安定性が悪くなる場合がある。
本発明の感光性樹脂組成物に顔料誘導体を含有させる場合、顔料誘導体の含有割合は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常0.1質量%以上で、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下とすることが好ましい。
また、界面活性剤を用いる場合、その含有割合は、感光性樹脂組成物中の全固形分に対して通常0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。界面活性剤の含有割合を前記範囲内とすることで塗布膜の平滑性、均一性を十分にしやすい傾向がある。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、前述の溶剤(e)を使用して、その固形分濃度が通常5質量%以上、好ましくは10質量%以下、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%となるように調液される。前記範囲内とすることで、感光性樹脂組成物の塗布性が良好となる傾向がある。
[感光性樹脂組成物の製造方法]
本発明の感光性樹脂組成物(以下、「レジスト」と称することがある。)は、常法に従って製造される。
通常、色材(a)は、予めペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いて分散処理するのが好ましい。分散処理により色材(a)が微粒子化されるため、レジストの塗布特性が向上する。また、色材(a)として黒色色材を使用した場合は遮光能力の向上に寄与する。
分散処理は、通常、色材(a)、分散剤(b)、溶剤(e)、及び必要に応じてアルカリ可溶性樹脂(d)の一部又は全部を併用した系にて行うことが好ましい(以下、分散処理に供する混合物、及び該処理にて得られた組成物を「インク」又は「顔料分散液」と称することがある。)。この分散処理において、本発明に係るポリウレタン分散剤(b−1)を用いることにより、得られたインク及びレジストの経時の増粘が抑制される(分散安定性に優れる)ので好ましい。
なお、感光性樹脂組成物に配合する全成分を含有する液に対して分散処理を行った場合、分散処理時に生じる発熱のため、高反応性の成分が変性する可能性がある。従って、上記の成分を含む系にて分散処理を行うことが好ましい。
サンドグラインダーで色材(a)を分散させる場合には、0.1〜8mm程度の径のガラスビーズ又はジルコニアビーズが好ましく用いられる。分散処理条件は、温度は通常、0℃から100℃であり、好ましくは、室温から80℃の範囲である。分散時間は液の組成及び分散処理装置のサイズ等により適正時間が異なるため適宜調節する。
レジストの20度鏡面光沢度[JIS Z8741(1997年)]が100〜200の範囲となるように、インキの光沢を制御するのが分散の目安である。レジストの光沢度が低い場合には、分散処理が十分でなく荒い顔料(色材)粒子が残っていることが多く、現像性、密着性、解像性等が不十分となる可能性がある。また、光沢度が上記範囲を超えるまで分散処理を行うと、顔料が破砕して超微粒子が多数生じるため、却って分散安定性が損なわれる傾向がある。
次に、上記分散処理により得られたインキと、レジスト中に含まれる、上記の他の成分を混合し、均一な溶液とする。レジストの製造工程においては、微細なゴミが液中に混じることが多いため、得られたレジストはフィルター等により濾過処理するのが好ましい。
〔硬化物〕
本発明の感光性樹脂組成物を硬化させることで、本発明の硬化物を得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、ブラックマトリックス又は着色スペーサーとして好ましく用いることができる。
[ブラックマトリックス]
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いたブラックマトリックスについて、その製造方法に従って説明する。
(1)支持体
ブラックマトリックスを形成するための支持体としては、適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。支持体としては、主として透明基板が使用される。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンなどの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、又は各種ガラスなどが挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラス、耐熱性樹脂が好ましい。
また、基板の表面にITO又はIZO等の透明電極が成膜されている場合も有る。透明基板以外では、TFTアレイ上に形成することも可能である。
支持体には、接着性などの表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤又はウレタン系樹脂などの各種樹脂の薄膜形成処理などを行ってもよい。
支持体の厚さは、通常0.05〜10mm、好ましくは0.1〜7mmの範囲とされる。また各種樹脂の薄膜形成処理を行う場合、その膜厚は、通常0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
(2)ブラックマトリックス
上述の本発明の感光性樹脂組成物により、本発明のブラックマトリックスを形成するには、透明基板等の支持体上に本発明の感光性樹脂組成物を塗布して乾燥した後、該塗膜の上にフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光、現像を行い、更に必要に応じて熱硬化或いは光硬化を行うことによりブラックマトリックスを形成させる。
(3)ブラックマトリックスの形成
(3−1)感光性樹脂組成物の塗布
ブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物の透明基板等の支持体上への塗布は、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、又はスプレーコート法などによって行うことができる。中でも、ダイコート法によれば、塗布液使用量が大幅に削減され、かつ、スピンコート法によった際に付着するミストなどの影響が全くなく、異物発生が抑制されるなど、総合的な観点から好ましい。
塗膜の厚さは、厚すぎると、パターン現像が困難となるとともに、液晶セル化工程でのギャップ調整が困難となることがあり、薄すぎると顔料濃度を高めることが困難となり所望の色発現が不可能となることがある。塗膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2〜10μmの範囲とするのが好ましく、より好ましいのは0.5〜6μmの範囲、更に好ましいのは1〜4μmの範囲である。
(3−2)塗膜の乾燥
支持体に感光性樹脂組成物を塗布した後の塗膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、又はコンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。乾燥の条件は、前記溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができる。乾燥時間は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて、通常は、40〜200℃の温度で15秒〜5分間の範囲で選ばれ、好ましくは50〜130℃の温度で30秒〜3分間の範囲で選ばれる。
乾燥温度は、高いほど支持体に対する塗膜の接着性が向上するが、高すぎるとアルカリ可溶性樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。なお、この塗膜の乾燥工程は、温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う、減圧乾燥法であってもよい。
(3−3)露光
画像露光は、感光性樹脂組成物の塗膜上に、ネガのマスクパターンを重ね、このマスクパターンを介して、紫外線又は可視光線の光源を照射して行う。この際、必要に応じ、酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため、光重合性の塗膜上にポリビニルアルコール層などの酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。
上記の画像露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク及び蛍光ランプなどのランプ光源、並びにアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー及び半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
(3−4)現像
本発明に係るブラックマトリックスは、感光性樹脂組成物による塗膜を、上記の光源によって画像露光を行った後、有機溶剤、又は、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いる現像によって、基板上に画像を形成して作製することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料又は顔料を含ませることができる。
アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム及び水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物、並びにモノ−・ジ−又はトリエタノールアミン、モノ−・ジ−又はトリメチルアミン、モノ−・ジ−又はトリエチルアミン、モノ−又はジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−又はトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)及びコリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類及びモノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類及びスルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、並びにアルキルベタイン類及びアミノ酸類などの両性界面活性剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール及びジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、単独で用いてもよく、また、水溶液と併用してもよい。
現像処理の条件は特に制限はなく、通常、現像温度は10〜50℃の範囲、中でも15〜45℃、特に好ましくは20〜40℃で、現像方法は、浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法又は超音波現像法などのいずれかの方法によることができる。
(3−5)熱硬化処理
現像後の支持体には、熱硬化処理又は光硬化処理、好ましくは熱硬化処理を施す。この際の熱硬化処理条件は、温度は100〜280℃の範囲、好ましくは150〜250℃の範囲で選ばれ、時間は5〜60分間の範囲で選ばれる。
以上のようにして形成させたブラックマトリックスの底部の幅は、通常3〜50μm、好ましくは4〜30μm、特に高細線の場合には4〜8μmが好ましく、高さは通常0.5〜5μm、好ましくは1〜4μmである。また、体積抵抗率は1×1013Ω・cm以上、好ましくは1×1014Ω・cm以上であり、比誘電率は6以下、好ましくは5以下である。さらに、厚さ1μm当たりの光学濃度(OD)は、通常3.0以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、特に好ましくは4.2以上である。
[その他のカラーフィルター画像の形成]
ブラックマトリックスを設けた支持体上に、上記(3−1)〜(3−5)と同じプロセスで赤色、緑色及び青色のうち一色の色材を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥した後、塗膜の上にフォトマスクを重ね、該フォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させることにより着色層を作製することができる。この操作を、赤色、緑色及び青色の三色の感光性樹脂組成物についてそれぞれ行うことによって、カラーフィルター画像を形成することができる。これらの順番は上記に限定されるものではない。
[着色スペーサー]
本発明の感光性樹脂組成物は、ブラックマトリックス以外に着色スペーサー用のレジストとして使用することも可能である。スペーサーをTFT型LCDに使用する場合、TFTに入射する光によりスイッチング素子としてTFTが誤作動を起こすことがあり、着色スペーサーはこれを防止するために用いられ、例えば、日本国特開平8−234212号公報にスペーサーを遮光性とすることが記載されている。着色スペーサーは着色スペーサー用のマスクを用いる以外は前述のブラックマトリックスと同様の方法で形成することができる。
[透明電極の形成]
カラーフィルターは、このままの状態で画像上にITOなどの透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置などの部品の一部として使用されるが、表面平滑性及び耐久性を高めるため、必要に応じ、画像上にポリアミド又はポリイミドなどのトップコート層を設けることもできる。また一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)などの用途においては、透明電極を形成しないこともある。
〔画像表示装置〕
本発明の画像表示装置は、本発明の感光性樹脂組成物よりなるブラックマトリックスを備えるものであり、画像又は映像を表示する装置であれば特に限定は受けないが、例えば、後述する液晶表示装置及び有機ELディスプレイ等が挙げられる。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、上述の本発明のブラックマトリックスを用いて作製されたものであり、カラー画素若しくはブラックマトリックスの形成順序又は形成位置等特に制限を受けるものではない。
液晶表示装置は、通常、カラーフィルター上に配向膜を形成し、該配向膜上にスペーサーを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。
配向膜としては、ポリイミド等の樹脂膜が好ましい。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線の照射又はラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。
スペーサーとしては、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2〜8μmのものが好ましい。カラーフィルター基板上に、フォトリソグラフィー法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサーの代わりに活用することもできる。対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好ましい。
対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶表示装置の用途によって異なるが、通常2〜8μmの範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、紫外線(UV)照射及び/又は加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。
液晶セル内の減圧度は、通常、1×10−2〜1×10−7Paであるが、好ましくは1×10−3〜1×10−6Paである。また、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は通常30〜100℃であり、より好ましくは50〜90℃である。
減圧時の加温保持は、通常10〜60分間の範囲とされ、その後液晶中に浸漬される。液晶を注入した液晶セルは、UV硬化樹脂を硬化させて液晶注入口を封止することによって、液晶表示装置(パネル)が完成する。
液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系又は多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等のいずれでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶及びコレステリック液晶等が知られているが、いずれであってもよい。
[有機ELディスプレイ]
有機ELディスプレイは、例えば図1に示すように、まず透明支持基板10上に、感光性樹脂組成物により形成されたパターン[すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられた樹脂ブラックマトリックス(図示せず)]が形成されてなるカラーフィルターを作製し、該カラーフィルター上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100として作製することができる。
なお、画素20及び樹脂ブラックマトリックスの内、少なくともブラックマトリックスは本発明の感光性樹脂組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、例えば、カラーフィルター上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法、並びに別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。
このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社、2004年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
なお、本発明にかかるカラーフィルターは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<分散剤1>
以下の(工程1−1)〜(工程1−9)を経て得られるポリウレタン化合物1を分散剤1として用いた。
化合物A:1−ドデカノール
化合物B:ε−カプロラクトン
化合物C:ジルコニウムブトキシド触媒
化合物D:トルエンジイソシアネート(TDI)
化合物E:ジエタノールアミン
3級アミノ化合物1:3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール
ポリエーテル化合物1:ポリ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル(Mn=1100)
(工程1−1)化合物A(114.6質量部)と化合物B(912.3質量部)を窒素雰囲気下、150℃で混合し均一化する。
(工程1−2)(工程1−1)で得られる混合物に化合物C(4.0質量部)を添加し180℃で20時間反応させる。
(工程1−3)(工程1−2)で得られる反応物を室温に冷却しワックス状のポリエステル化合物1を得る。
(工程1−4)化合物D(83.46質量部)を窒素雰囲気下、反応容器に入れ50〜60℃に加熱する。
(工程1−5)(工程1−3)で得られるポリエステル化合物1の800質量部を50℃で溶融し、(工程1−4)で得た50〜60℃に加熱した化合物Dに2時間かけて添加する。
(工程1−6)(工程1−5)で得られる混合液を、60℃で1時間、撹拌しながら反応させる。
(工程1−7)(工程1−6)で得られる反応物を20℃に冷却し、化合物E(50.37質量部)を加え35℃で残留イソシアネートがなくなるまで反応させて、ポリエステル化合物2を得る。
(工程1−8)化合物D(26.68質量部)を窒素雰囲気下、反応容器に入れ、続いて、溶媒のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを131質量部、3級アミノ化合物1(17.12質量部)、(工程1−7)で得た前記ポリエステル化合物2を57.68質量部加えて、撹拌しながら70℃に加熱する。
(工程1−9):(工程1−8)で得られる混合液にさらにポリエーテル化合物1(17.00質量部)を加え、70℃で残留イソシアネートがなくなるまで2時間反応させることで、GPC分析で重量平均分子量(Mw)が22000で数平均分子量(Mn)が8800を示すポリウレタン化合物1を得る。
<分散剤2>
以下の(工程2−1)〜(工程2−13)を経て得られるポリウレタン化合物2を分散剤2として用いた。
化合物D:トルエンジイソシアネート(TDI)
化合物E:ジエタノールアミン
化合物F:ジメチルアミノプロピルアミン
化合物G:2−ヒドロキシエチルアクリレート
化合物H:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
ポリエーテル化合物1:ポリ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル(Mn=1100)
ポリエステル化合物1:前記(工程1−3)で得られる。
ポリエステル化合物2:前記(工程1−7)で得られる。
(工程2−1)化合物F(100質量部)、化合物G(113.8質量部)及び化合物H(0.29質量部)を70℃で48時間、マイケル付加反応が完結するまで一緒に攪拌し、3級アミノ化合物2を得る。
(工程2−2)50℃まで加熱した撹拌反応容器に、化合物D(25.0質量部)を充填する。
(工程2−3)ポリエーテル化合物1(125.0質量部、TDIに対して約0.8モル当量)を滴下漏斗に充填し、50〜60℃の間の温度を維持し、4時間で上記の撹拌反応容器に滴下する。
(工程2−4)(工程2−3)で得られる反応物を、70℃で、60分間保持する。
(工程2−5)残留イソシアネートの滴定により、反応の完結を決定し、その反応混合物を20℃まで冷却する。
(工程2−6)(工程2−5)で得られる反応混合物に、化合物E(24.14質量部、TDIに対して約1.6モル当量)を加え、赤外分光分析により決定できるイソシアネートの残留がなくなるまで、室温で保持する。
(工程2−7)(工程2−6)で得られる生成物の混合物(これは、ジエタノールアミンとTDIとの二付加物を含有する)をジエチルエーテルに溶解し、シリカカラムで溶出する。
(工程2−8)(工程2−7)で溶出するカラムをジエチルエーテルで3回洗浄し、画分を合わせ、そして真空中で溶媒を除去し、90質量部のポリエーテル化合物2の固形生成物を得る。
上記の(工程2−7)及び(工程2−8)でジエタノールアミンとTDIとの二付加物が除去される。
(工程2−9)化合物D(26.68質量部)を窒素雰囲気下で反応器に入れる。
(工程2−10)上記化合物Dを含む反応器に、溶媒として酢酸メトキシプロピル(130.87質量部)、ポリエステル化合物2(15.23質量部)およびポリエーテル化合物2(10.68質量部)、および3級アミノ化合物2(28.30質量部)を添加する。(工程2−11)(工程2−10)で得られる混合物を攪拌しながら70℃に加熱する。
(工程2−12)ポリエステル化合物1(26.09質量部)を(工程2−11)の反応混合物に加え、70℃で2時間保持する。
(工程2−13)(工程2−12)で得られる反応混合物の残留イソシアネートが無いことを確認し、GPC分析で重量平均分子量(Mw)が20000で数平均分子量(Mn)が8000を示すポリウレタン化合物2を得る。
<分散剤3>
以下の(工程3−1)を経て得られるポリウレタン化合物3を分散剤3として用いた。
化合物I:塩化ベンジル
(工程3−1)前記(工程1−9)で得られる反応液200質量部(ポリウレタン化合物1の含有量は94.97質量部)に化合物I(2.35質量部、反応液中のポリウレタン化合物1中の3級アミンのモル数の20%相当のモル数の量)を添加し、70℃で20時間撹拌することで、ポリウレタン化合物1中の3級アミンの一部が4級化されているポリウレタン化合物3を得る。
<分散剤4>
以下の(工程4−1)を経て得られるポリウレタン化合物4を分散剤4として用いた。
化合物E:ジエタノールアミン
(工程4−1)前記(工程1−8)において、3級アミノ化合物1(17.12質量部、0.12モル)の代わりに、同じモル数の化合物E(ジエタノールアミン、12.62質量部、0.12モル)を加える以外は(工程1−1)〜(工程1−9)と同じように行い、ポリウレタン化合物4を得る。
<分散剤5>
以下の(工程5−1)を経て得られるポリウレタン化合物5を分散剤5として用いた。
化合物J:1,6−ヘキサンジオール
(工程5−1)前記(工程1−8)において、3級アミノ化合物1(17.12質量部、0.12モル)の代わりに、同じモル数の化合物J(14.18質量部、0.12モル)を加える以外は(工程1−1)〜(工程1−9)と同じように行い、ポリウレタン化合物5を得る。
<分散剤6>
以下の(工程6−1)を経て得られるポリウレタン化合物6を分散剤6として用いた。
化合物K:トリメチロールプロパン
(工程6−1)前記(工程1−8)において、化合物Dを28.04質量部に増量し、化合物K(0.52質量部、0.004モル)を加え、前記(工程1−9)において、ポリエーテル化合物1を21.26質量部に増量した以外は、(工程1−1)〜(工程1−9)と同じように行い、重量平均分子量(Mw)が23000で数平均分子量(Mn)が9200のポリウレタン化合物6を得る。
分散剤1〜6の構成要素を表1に示す。
<カーボンブラックインク1>
以下の組成で顔料、分散剤、分散助剤、溶剤を調合し、以下の方法でカーボンブラックインク1を調製した。
まず、顔料、分散剤、分散助剤の固形分が以下となるように調合した。
・顔料 SB350(デグサ社製カーボンブラック):100質量部
・分散剤 分散剤1:20質量部(固形分換算)
・分散助剤(顔料誘導体) S12000(ルーブリゾール社製、酸性基を有するフタロシアニン顔料誘導体):2質量部
・溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:226.6質量部
上記の各成分を十分に攪拌し、混合を行った。
次に、ペイントシェーカーにより25〜45℃の範囲で6時間分散処理を行い、分散液を得た。ビーズとしては、直径0.5mmのジルコニアビーズを用い、分散液60質量部とビーズ180質量部を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、固形分35質量%のカーボンブラックインク1を調製した。
<カーボンブラックインク2〜14の調製>
カーボンブラックインク1の分散剤及び顔料の種類を、表2に記載の分散剤及び顔料に変更して、カーボンブラックインク1と同じ方法で撹拌、混合、ペイントシェーカーによる分散処理を行い、固形分35質量%のカーボンブラックインク2〜14を調製した。
表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・SB350:デグサ社製カーボンブラック顔料 平均一次粒径:31nm
・MA77:三菱化学社製カーボンブラック顔料 平均一次粒径:23nm
・Disperbyk−161:ビックケミー社製分散剤 トルエンジイソシアネート多量体で形成されたポリウレタン骨格を骨格連結基で連結した構造を有する高分子量分散剤。塩基性官能基を有する。
・Disperbyk−167:ビックケミー社製分散剤 トルエンジイソシアネート多量体で形成されたポリウレタン骨格を骨格連結基で連結した構造を有する中〜低分子量分散剤。塩基性官能基を有する。
・アジスパーPB−821:味の素ファインテクノ社製分散剤 ポリエチレンイミン又はポリエチレン/ポリアミン骨格を有する塩基性グラフトポリマー。
・フローレンKDG−2400:共栄社化学社製分散剤 塩基性官能基を有するポリアクリル系グラフトポリマー。
・HIPLAAD ED−701:楠本化成社製分散剤 ポリエチレンイミン又はポリエチレン/ポリアミン骨格を有する塩基性グラフトポリマー。
・Disperbyk−2000:ビックケミー社製分散剤 3級アミンの4級化アンモニウム塩変性アクリル系ブロック共重合体。
・Disperbyk−2001:ビックケミー社製分散剤 3級アミンの酸変性アクリル系ブロック共重合体。
<アルカリ可溶性樹脂(1):エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)>
上記構造のエポキシ化合物(エポキシ当量264)50g、アクリル酸13.65g、メトキシブチルアセテート60.5g、トリフェニルホスフィン0.936g、及びパラメトキシフェノール0.032gを、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液(1)を得た。
上記エポキシアクリレート溶液(1)25質量部、トリメチロールプロパン(TMP)0.76質量部、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)3.3質量部、及びテトラヒドロフタル酸無水物(THPA)3.5質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調整し、酸価115mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)2600のアルカリ可溶性樹脂(1)を得た。
<アルカリ可溶性樹脂(2):エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−2)>
アルカリ可溶性樹脂(1)の製造におけると同様にして、エポキシ化合物(エポキシ当量264)、アクリル酸、メトキシブチルアセテート、トリフェニルホスフィン、及びパラメトキシフェノールを反応させて、エポキシアクリレート溶液(2)を得た。
上記エポキシアクリレート溶液(2)25質量部、トリメチロールプロパン(TMP)0.37質量部、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)4.76質量部、及びテトラヒドロフタル酸無水物(THPA)1.02質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調整し、酸価100mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)10000のアルカリ可溶性樹脂(2)を得た。
<アルカリ可溶性樹脂(3):エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(D1−1)>
日本化薬(株)製「XD1000」(ジシクロペンタジエン・フェノール重合物のポリグリシジルエーテル、エポキシ当量252)300質量部、メタクリル酸104質量部、p−メトキシフェノール0.2質量部、トリフェニルホスフィン5質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート255質量部を反応容器に仕込み、100℃で酸価が3.0mg−KOH/gになるまで攪拌した。次いで更にテトラヒドロ無水フタル酸145質量部を添加し、120℃で4時間反応させ、固形分50質量%、酸価106mg−KOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)1580のアルカリ可溶性樹脂(3)を得た。
<光重合開始剤(1)>
(ジケトン体)
エチルカルバゾール(5g、25.61mmol)とo−ナフトイルクロリド(5.13g、26.89mmol)を30mlのジクロロメタンに溶解し、氷水バスにて2℃に冷却して攪拌し、AlCl3(3.41g、25.61mmol)を添加した。さらに室温にて3時間攪拌後、反応液にクロトノイルクロリド(2.81g、26.89mmol)の15mlジクロロメタン溶液を加え、AlCl3(4.1g、30.73mmol)を添加し、さらに1時間30分攪拌した。反応液を氷水200mlにあけ、ジクロロメタン200mlを添加し有機層を分液した。回収した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮し、白色固体(10g)のジケトン体を得た。
(オキシム体)
ジケトン体(3.00g、7.19mmol)、NH2OH・HCl(1.09g、15.81mmol)、及び酢酸ナトリウム(1.23g、15.08mmol)をイソプロパノール30mlに混合し、3時間還流した。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた残渣に酢酸エチル30mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30ml、飽和食塩水30mlで洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、有機層を減圧下濃縮し、固体1.82gを得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色固体2.22gのオキシム体を得た。
(オキシムエステル体)
オキシム体(2.22g、4.77mmol)とアセチルクロリド(1.34g、17.0mmol)をジクロロメタン20mlに加えて氷冷し、トリエチルアミン(1.77g、17.5mmol)を滴下して、そのまま1時間反応した。薄層クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した後、水を加えて反応を停止した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5mlで2回、飽和食塩水5mlで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、有機層を減圧下濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=2/1)で精製して、0.79gの淡黄色固体の光重合開始剤(1)を得た。光重合開始剤(1)の1H−NMRの化学シフトを以下に示す。
1H−NMR(CDCl3):σ1.17(d,3H),1.48(t,3H),1.53(s,3H),1.81(s,3H),2.16(s,3H),2.30(s,3H),3.17−3.32(m,2H),4.42(q,2H),4.78−4.94(br,1H),7.45−7.59(m,5H),7.65(dd,1H),7.95(m,2H),8.04(m,2H),8.14(dd,1H),8.42(d,1H),8.64(d,1H)
光重合開始剤(1)の構造は以下の通りである。
<実施例1>
(レジスト1(感光性樹脂組成物1)の調製)
先に調製したカーボンブラックインク1を用い、表3に記載の各成分が、表3に示す割合となるように調合し、スターラーにより攪拌、溶解させて、固形分濃度15質量%のレジスト1を調製した。
表3中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・PM21:メタクリロイル基含有ホスフェート(日本化薬社製、KAYAMER(登録商標) PM21、密着向上剤)。
・SH6040:エポキシシランカップリング剤(東レ株式会社製、SH6040、密着向上剤)
・F−559:界面活性剤(大日本インキ化学工業社製、F−559)
<実施例2〜7、比較例1〜9>
(レジスト2〜16(感光性樹脂組成物2〜16)の調製)
表4、5及び6に示すカーボンブラックインクを用い、レジスト1の各成分の種類を、表4、5及び6に記載の各成分に変更し、これらを表3に示す割合でとなるように調合し、レジスト1と同じ方法で、スターラーにより攪拌、溶解させて、それぞれ固形分濃度15質量%のレジスト2〜16を調製した。ただし、レジスト15のIRG907及びDETX−Sの固形分濃度の合計は、レジスト1における光重合開始剤(1)の固形分濃度と同じになるように4:1の質量比率で混合して用いた。
表5及び6中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・IRG907:イルガキュア907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン。
・DETX−S:KAYACURE DETX−S、日本化薬(株)社製、2,4−ジメチルチオキサントン。レジスト15の固形分中に1.6質量%含有。
・光重合開始剤(2):OXE02、BASF社製。以下の化学構造を有する。
(インクの評価)
(1)カーボンブラックインクの粘度評価
調製したカーボンブラックインク1〜14の粘度を粘度計(東機産業社製、RE105L)で測定した。いずれのカーボンブラックインクの粘度も10〜20mPa・sの範囲であった。カーボンブラックインク調製直後(分散直後)と、室温で1週間静置した後のインクの粘度を測定し、以下基準で分類判定した。結果を表7に記載する。
◎:インク分散後、1週間室温に置いても増粘はほとんど無い。
○:インク分散後、1週間室温に置くと増粘はあるが、20mPa・s以内で安定する。
△:インク分散後、1週間室温に置くと増粘が続き、20mPa・sを超える。
×:インク分散直後から大きく増粘し、3日以内で20mPa・sを超える。
(レジストの評価)
(1)レジスト(感光性樹脂組成物)の粘度評価
調製したレジスト1〜15の粘度を粘度計(東機産業社製、RE105L)で測定した。いずれのレジストの粘度も2〜5mPa・sの範囲であった。レジスト調製直後と、室温で1ヶ月静置した後のレジストの粘度を測定し、以下基準で分類判定した。結果を表7に記載する。
◎:レジスト調製後、1ヶ月室温に置いても増粘はほとんど無い。
○:レジスト調製後、1ヶ月室温に置くと増粘はあるが、増粘の程度は0.5mPa・s以内である。
△:レジスト調製後、1ヶ月室温に置くと増粘して、増粘の程度が0.5mPa・sを超える。
×:レジスト調製後、1週間室温に置くと増粘して、増粘の程度が0.5mPa・sを超える。
レジストの粘度は塗布時に大きく影響するため、インクに比べて上記のような厳しい基準にて評価を実施した。
(2)ブラックマトリックス(BM)の作製
調製したレジスト1〜16をスピンコーターにてガラス基板に塗布し、減圧乾燥後、ホットプレートで100℃にて150秒間乾燥した。続いて、得られた乾燥塗布膜に対し、高圧水銀灯により30mJで、パターン幅6μm及び5μmの開口部を有する露光マスクを通してパターン露光を行った後、室温(23℃)下、超純水で0.04質量%に調製したKOH水溶液をアルカリ現像液として用いてスプレー現像して、未露光部を除去後、超純水でスプレー洗浄を行った。引き続き、230℃のオーブンにて30分間ポストベークを行い、膜厚約1μmのBMを作製した。
(3)BMの光学密度(OD値)と膜厚の評価
(2)で作製したBMの膜厚を段差測定装置Alpha−Step−500(KLA−Tencor社)で測定し、OD値を透過濃度測定装置GretagMacbeth D200−II(GretagMacbeth社製)で測定した。これより1μmあたりのOD値(単位OD値)を求めた。レジスト粘度評価結果が◎のもの及び○のものの単位OD値はいずれも4.2/μmであった。
(4)6μm細線評価(現像後)
6μm開口(幅が6μmの開口)を複数有する露光マスクを用い、現像時間を以下の条件に設定し、(2)と同じプロセスで塗布、露光、現像し、BM細線を作製した。以下、6μm開口を有する露光マスクを用いて作製したBM細線を、「6μm細線」と略記する。
アルカリ現像時間が短すぎると、アルカリ可溶性樹脂の溶け残り及び顔料の残存が発生し、基板の汚れが目立ち、一方で長すぎるとアルカリ現像液でBM細線が少しずつ浸食され、はがれる場合がある。また、最短溶解時間(基板上のパターニングが確認できる最短時間)は、感光性樹脂組成物のアルカリ現像しやすさを表す。
BM細線評価を行なう際に、最短溶解時間だけでなく、最短溶解時間の数倍(例えば、1.5倍、2倍など)で現像した際のBM線幅を評価する場合があるが、最短溶解時間に対する倍数が大きくなるに伴って線幅が少しずつ細くなり、また、基板とBM細線が密着している部分にアルカリ現像液が浸透して、さし込み部分ができ、はがれやすくなる。また、倍数が小さくなるに伴って残渣が残りやすくなる。
通常、パターニングが確認された時点では露光マスクからの回折光の影響で、BM線幅が太くなる傾向にある為、目的の線幅において評価を行う為には最短溶解時間の1.5倍の現像時間が現像適点である。また、感光性樹脂組成物の組成によって最短溶解時間は異なるが、最短溶解時間に対する倍数の値が同じ条件であれば同じ現像度合いとなる。
レジスト(感光性樹脂組成物)1〜16は、各々、最短溶解時間が40〜60秒であったので、その各々の1.5倍の60〜90秒の間の現像時間でサンプルを数点作製して以下評価した。
(4−1)6μm細線の観察評価
前記(4)で作製したサンプルを光学顕微鏡で3か所、線幅を測定した。さらにその平均値を求めた。結果を表7に示す。
(4−2)6μm細線の直線性評価
細線はアルカリ現像液、又はその後の水洗シャワー圧で不均一に浸食されたりすることでその直線性が悪くなる場合がある。光学顕微鏡観察で、基板上の3か所にある6μm細線の直線性を観察し、以下のように分類した。結果を表7に記載する。
◎:全ての6μm細線の直線性が非常に良好。
○:アルカリ現像液に浸食され始めの部分が見られるが、直線性の悪化は目立たない。
△:全体的に直線性の悪化が見られ、欠けなども部分的に見られる。
×:全体的に直線性が非常に悪く、欠けも多い。
(4−3)6μm細線のパターンさし込み
作製した6μm細線の一部を3点切り出したその断面をSEM写真で観察した。断面観察により、基板と6μm細線パターンの接着面がアルカリ現像液に浸食されて、さし込みが入っていないかを観察し、以下の分類に従って評価した。結果を表7に記載する。
(さし込み評価)
A:観察した3点ともさし込みが全くなく良好。
B:さし込みが全くなく良好な点と、さし込みまではしていないが密着面の浸食し始めが観察された点とが混在。
C:観察した3点とも、さし込みまではしていないが密着面の浸食し始めが観察される。
D:さし込みまではしていないが、密着面の浸食し始めが観察された点と、明らかにさし込みがみられた点とが混在。
E:観察した3点とも明らかに、さし込みが見られる。
F:明らかにさし込みが見られた点と、大きくさし込んでいる点とが混在。
G:観察した3点とも大きくさし込んでいる。
(5)6μm細線評価(熱処理後)
現像処理を行ったBM細線は、その後に赤、緑、青の感光性樹脂組成物を、さらに重ね塗りするために、高温で熱処理して硬化させておくことが必要である。そこで6μm細線を230℃で30分間熱処理した。熱処理することにより、まだ十分に硬化できていない感光性樹脂組成物の流動、又は残留溶媒の抜けなどにより、細線が熱変形して線幅が太くなる場合がある。
熱処理後の6μm細線の線幅を、3か所で測定した。さらにその平均値を求めた。また、現像後の線幅と熱処理後の線幅の差から、増加線幅を求めて以下の評価基準を設定した。結果を表7に記載する。
(線幅評価(平均値))
○:5.6〜6.5μmの範囲内。
×:5.6〜6.5μmの範囲外。
(増加線幅評価)
A:観察した3点とも0.1μm以下。
B:観察した3点が0.1μm以下のものと、0.1μmを超過し0.3μm以下のものとが混在。
C:観察した3点とも0.1μmを超過し、0.3μ以下。
D:観察した3点が、0.1μmを超過し0.3μm以下のものと、0.3μmを超過し0.4μm以下のものが混在。
E:観察した3点とも、0.3μmを超過し、0.4μm以下。
F:観察した3点が0.3μmを超過し0.4μm以下のものと、0.4μmを超過するものとが混在。
G:観察した3点とも0.4μmを超過する。
また、熱処理後の6μm細線であって、線幅と増加線幅を評価したサンプルの一部を3点切り出し、SEM観察した。細線の断面は台形であった。細線と基板との接触面に対応する下底の両端の底角をテーパー角という。このテーパー角を以下基準で評価した。結果を表7に記載する。
(テーパー角評価)
A:観察した3点とも73度以上。
B:73度以上の点と、63度以上73度未満の点とが混在。
C:観察した3点とも63度以上73度未満。
D:63度以上73度未満の点と、59度以上63度未満の点とが混在。
E:観察した3点とも59度以上63度未満。
F:59度以上63度未満の点と、59度未満の点とが混在。
G:観察した3点とも59度未満。
表7に示すように、実施例1〜7の現像後の6μm細線は、いずれも直線性が非常に良好であり、さし込みが全くないものであった。一方で、比較例1〜9の現像後の6μm細線は、直線性の悪化が見られ、基板との接着部にさし込みが見られた。
また、実施例1〜7の熱処理後の6μm細線は、いずれも線幅が5.6μm〜6.5μmの範囲内におさまっており、6μmの細線が良好に形成できた。増加線幅はいずれも0.3μ以下に抑えられ、テーパー角も、いずれも63度以上で、良好な細線となっていた。
一方で、比較例1〜9はいずれも熱処理後の6μm細線も、増加線幅は0.3μmを超過し、テーパー角も63度未満で、線幅6.5μmを超過し、5.6〜6.5μmの6μm細線を形成できなかった。特にオキシムエステル光重合開始剤以外の開始剤を用いた比較例9が、現像後も熱処理後も悪かった。
(6)5μm細線評価(現像後及び熱処理後)
さらに、5μm開口を有する露光マスクを用いて作製したBM細線(5μm細線)についても、6μm細線と同様な評価方法及び評価分類にて評価を行った。結果を表8に示す。
(線幅評価(平均値))
○:4.6〜5.5μmの範囲内。
×:4.6〜5.5μmの範囲外。
表8に示すように、分散剤1と、オキシムエステル光重合開始剤を含有した感光性樹脂組成物である実施例1の現像後の5μm細線は、6μm細線に比べて細くなったために、アルカリ現像液又は熱処理の影響をより受けやすくなり、多少、直線性低下のきざしがみられたり、若干、線幅が0.1μm太くなったり、テーパー角が若干5度小さくなったりしたが、4.6〜5.5μmの5μm細線を良好に形成できた。
また、実施例6は、顔料の1次粒径が23nmと小さく表面積が大きいため、分散剤が顔料に吸着しやすく、それに伴って顔料に吸着した分散剤の親溶媒基とアルカリ可溶性樹脂とが効果的に相溶した結果、6μm細線のときと同様に、直線性及びさし込みが良好な5μm細線を形成できたものと考えられる。
本実施例のレジストに使用したポリウレタン分散剤は、アルカリ可溶性樹脂との組み合わせにより分散剤の親溶媒基とアルカリ可溶性樹脂が良好に相溶して良好な立体障害部を形成し、粘度もODも良好で分散性も良かった。
また、実施例では、1分子内に紫外線吸収部位、エネルギー伝達部位及びラジカル発生部位を有するオキシムエステル光重合開始剤を用いているが、それにより紫外線の届きにくい基板密着面近傍でもアルカリ可溶性樹脂等を効果的に重合させることができる。それにより、アルカリ可溶性樹脂とポリウレタン分散剤の親溶媒部とのからみがより強固なものとなり、紫外線照射による硬化時においても顔料の凝集が抑制されて良好に分散した状態を維持できた結果、顔料に由来する耐アルカリ現像性及び耐熱性が細線中で均一に発現し、直線性が良好で、さし込み及びアルカリ現像液による浸食が少なくなったものと考えられる。
また、実施例1、2、3で使用される分散剤の吸着基は全てペンダント型である為、顔料との吸着力が向上し、遊離分散剤量が低減されると考えられる。これにより熱処理時に、遊離分散剤がグリスの様に働いて、テーパー角が下がり線幅が増加することを防ぐことが可能であったと考えられる。
他方、比較例9の感光性樹脂組成物は、主としてラジカル発生部位を有するIRG907開始剤と、主として紫外線吸収部位を有するDETXS開始剤とを併用することでラジカルを発生させているが、2種類の光重合開始剤を用いているためにラジカル発生効率が悪く、特に基板密着面近傍などの紫外線の届きにくい部分での重合が進みにくく、それに伴い熱処理時に熱変形が生じたものと考えられる。
また、吸着基を有さない分散剤5を用いた比較例1、並びにポリウレタン骨格以外のグラフト重合体である分散剤を用いた比較例4、5及び6は、顔料との吸着力が弱く、レジスト中における顔料の分散性が不十分であった。
このため、カラーフィルター製造時には、熱処理時に顔料と分散剤との結合が弱くなり、顔料の凝集が生じてしまい、顔料に由来する耐アルカリ現像性及び耐熱性が十分に発現されず、熱変形が起こったものと考えられる。
また、ウレタン結合を有する市販の分散剤を用いた比較例2及び3は、3個以上のイソシアネートを有する、トルエンジイソシアネートの多量体数個を骨格連結基で連結した骨格と、数個の親溶媒基又は吸着基で構成された分散剤であるために、顔料へのパッキング効果が低下し、加えて吸着基への立体障害も生じる為、顔料への吸着性能が低い。その上、親溶媒基の量も吸着基の量も実施例で用いたポリウレタン分散剤に比べて少なく、親溶媒基とアルカリ可溶性樹脂との相溶が不十分となり、顔料の凝集が生じて、顔料に由来する耐アルカリ現像性及び耐熱性が十分に発現できていないものと考えられる。
さらに、アクリル系ABブロック型分散剤を用いた比較例7及び8は、吸着基が分散剤の一方に集約されてしまっている為、顔料吸着基同士で立体障害が生じて十分に顔料に吸着できず、遊離分散剤量が増加すると考えられる。その為、顔料と基板間で分散剤を介した基板密着力を十分得ることができず、アルカリ現像耐性が低下してパターニングを得ることが難しくなったと考えられる。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2014年7月11日付で出願された日本特許出願(特願2014−143279)に基づいており、その全体が引用により援用される。