以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、作業工具として、先端工具を揺動動作させて、被加工材に対して加工作業を行う電動式振動工具(以下、単に振動工具という)を例示する。振動工具に装着可能な先端工具として、ブレードや研削パッド等の複数種類の工具が用意されている。使用者は、これらの先端工具のうち、所望の加工作業に適した1つを選択して振動工具に装着し、作業を行うことができる。以下で参照する図面では、先端工具の一例として、扇形のブレードが振動工具に装着された例が図示されている。また、以下の実施形態では、作業工具に着脱可能に構成され、先端工具による作業を補助するためのアタッチメントとして、先端工具による被加工物の加工量(典型的には加工面からの切込みの深さ)、被加工物の加工面に対する先端工具の角度(典型的には加工面に対する切込みの角度)を調整可能なアタッチメントを例示する
[第一実施形態]
図1〜図7を参照して、第一実施形態に係る振動工具1およびアタッチメント6について説明する。
まず、図1〜図3を参照して、振動工具1の全体構成について説明する。図1および図3に示すように、振動工具1の工具本体10は、振動工具1の外郭を形成する長尺状のアウタハウジング11と、アウタハウジング11内に収容されたインナハウジング12とを含む。なお、図示は省略するが、インナハウジング12は、アウタハウジング11と同様、長尺状に形成されている。アウタハウジング11およびインナハウジング12は、いずれも、1つの部分のみから形成されていてもよいし、複数の部分が結合されることで形成されていてもよい。
なお、本実施形態では、アウタハウジング11とインナハウジング12とは、複数の弾性要素(図示せず)を介して連結されている。より詳細には、本実施形態のアウタハウジング11は、インナハウジング12に対して全方向(前後、左右、上下方向)に相対移動可能に複数個所で弾性連結されている。なお、弾性要素の典型例として防振ゴムが挙げられるが、弾性要素は、防振ゴム以外の弾性を有する材料で形成されていてもよい。
工具本体10の延在方向における一端部には、スピンドル3が収容されている。スピンドル3は、その軸線A1が工具本体10の延在方向に直交するようにインナハウジング12の延在方向における一端部に収容されている。スピンドル3は、軸線A1方向の一端部が工具本体10から突出し、外部へ露出している。また、工具本体10の延在方向における他端部には、バッテリ装着部15を介してバッテリ16が取り外し可能に装着されている。工具本体10の延在方向における中央部の領域は、他の部分よりも細く形成されており、作業者によって把持される把持部13を形成する。
なお、以下の説明では、便宜上、振動工具1の方向を、スピンドル3の軸線A1の延在方向を上下方向と規定し、軸線A1方向においてスピンドル3の一端部が工具本体10から突出する側を下側と規定する。また、スピンドル3の軸線A1に直交し、且つ、工具本体10が延在する方向を前後方向と規定し、工具本体10の延在方向においてスピンドル3が収容されている一端部側を前側と規定する。この方向定義は、後述の他の実施形態にも適用される。
以下、図3および図4を参照して、振動工具1の内部構成について説明する。図3に示すように、インナハウジング12には、スピンドル3と、モータ2と、伝達機構4と、クランプロック機構5とが収容されている。
スピンドル3は、中空の略円筒状の長尺部材である。本実施形態では、スピンドル3は、軸受31、32によって、上下方向の2箇所で回転可能に支持されている。軸受31、32は、インナハウジング12に保持されている。スピンドル3は、下端部、つまり、工具本体10から外部へ露出する先端部に、径方向外側に突出するフランジ状の工具装着部33を有する。工具装着部33は、先端工具8を着脱可能に構成された部位である。本実施形態では、先端工具8は、工具装着部33と、クランプロック機構5によって保持されたクランプシャフト61の工具固定部615との間に挟持されるが、この点については後で詳述する。なお、工具装着部33の下面には、下方に突出する突起34(図4参照)が周方向に所定間隔で設けられている。突起34は、先端工具8に設けられた係合穴81(図4参照)に嵌合可能に構成されている。
駆動源としてのモータ2は、その出力軸21の軸線A2がスピンドル3の軸線A1と平行に延在するように、インナハウジング12内部に収容されている。本実施形態では、モータ2は、軸線A2が上下方向に延在し、出力軸21が下方向に突出するように、スピンドル3の後側に配置されている。また、モータ2は、小型でありながら高出力であることから、ブラシレス直流モータが採用されている。なお、インナハウジング12のモータ2の収容領域近傍には、下方に向けて突出する円柱状の係合突起121が設けられている。係合突起121は、後述するアタッチメント6の係合部675に係合可能に構成されている。また、アウタハウジング11において、係合突起121の下方部分には、アウタハウジング11の内部と外部を連通させる開口部111が設けられている。
伝達機構4は、モータ2の回転運動をスピンドル3に伝達し、スピンドル3を軸線A1周りの所定の角度範囲内で往復回動するように構成されている。つまり、伝達機構4は、スピンドル3に装着された先端工具8を揺動駆動するように構成されている。本実施形態の伝達機構4は、偏心軸41と、揺動アーム45と、駆動軸受47とを含む。偏心軸41は、モータ2の出力軸21に同軸状に連結されている。偏心軸41は、上下2箇所に配置された軸受42、43によって、出力軸21と共に回転可能に支持されている。軸受42、43は、インナハウジング12によって保持されている。偏心軸41は、軸受42、43の間に、軸線A2に対して偏心した偏心部44を有する。偏心部44の外周部には、駆動軸受47の内輪が固定されている。
揺動アーム45は、駆動軸受47とスピンドル3とを接続する部材である。揺動アーム45は、固定部451とアーム部452とを含む。固定部451は、スピンドル3の外周部に固定された環状の部分である。アーム部452は、固定部451から後方へ向けて左右に二股に分かれて延びる部分である。アーム部452の後端部は、駆動軸受47を左右から挟んで、駆動軸受47の外輪に当接するように配置されている。
モータ2が駆動されると、出力軸21と共に偏心軸41が回転する。偏心軸41の回転に伴い、偏心部44の中心が出力軸21の軸線A2周りを移動するので、偏心部44の外周部に装着された駆動軸受47も軸線A2周りを移動する。これにより、揺動アーム45は、スピンドル3を支点として所定の角度範囲内で揺動される。揺動アーム45は固定部451でスピンドル3に固定されているため、スピンドル3は、揺動アーム45の揺動運動に伴って、軸線A1回りに所定の角度範囲内で往復回動する。その結果、スピンドル3(より詳細には、工具装着部33)に固定された先端工具8が揺動駆動され、所定の加工作業(例えば、切断、切込みの形成、研削等)が遂行可能となる。前述の通り、偏心軸41、揺動アーム45、駆動軸受47を含む伝達機構4は、モータ2の出力軸21の回転運動をスピンドル3に伝達し、スピンドル3を軸線A1周りの所定の角度範囲内で往復回動させる。
以下、図3および図4を参照して、クランプロック機構5について説明する。前述の通り、振動工具1は、工具装着部33と、クランプロック機構5によって保持されたクランプシャフト61の工具固定部615との間で先端工具8を挟持するように構成されている。図3に示すように、クランプシャフト61は、軸線A1方向にスピンドル3内部に同軸状に挿通可能に構成された、略円柱状の長尺部材である。本実施形態では、クランプシャフト61は、アタッチメント6の一部として構成されているが、この点については後で詳述する。
クランプロック機構5は、スピンドル3の上方にインナハウジング12によって形成された円筒状部分の内部空間に配置されている。クランプロック機構5は、バネ支持部材51と、付勢バネ52と、ロックアセンブリ50とを含む。
バネ支持部材51は、スピンドル3とほぼ同一の内径を有する概ね円筒状の長尺部材である。バネ支持部材51は、スピンドル3と同軸状にスピンドル3の上方に配置されている。バネ支持部材51の下端部には、径方向外側に突出するフランジ部511が形成されている。バネ支持部材51は、スピンドル3を回転可能に支持する軸受31、32のうち、上方に配置された軸受31によってフランジ部511の下方で回転可能に支持されている。つまり、軸受31は、スピンドル3とバネ支持部材51とを共に回転可能に支持する。バネ支持部材51には、圧縮コイルバネとして形成された付勢バネ52が外装されている。付勢バネ52の下端部は、フランジ部511の上面に当接する。
ロックアセンブリ50は、カラー53と、軸受531と、クランプ部材54と、蓋部材532と、付勢バネ533とから構成されたアセンブリである。カラー53は、環状の部材であって、その外周には軸受531の内輪が固定されている。軸受531は、バネ支持部材51の上方でインナハウジング12に保持され、カラー53を回転可能に支持している。なお、カラー53は、その下端部が、バネ支持部材51の上端部の径方向外側に一部重なるように配置されている。付勢バネ52の上端部は、カラー53の下端部に当接し、カラー53を常時上方へ付勢している。
カラー53の内側に形成された空間には、前後方向に対向するように、一対のクランプ部材54が収容されている。クランプ部材54の互いに対向する内面は、断面略U字状に形成されている。クランプ部材54の内面には、突条部541が設けられている。突条部541は、水平方向に延在する突条が上下方向に複数形成された部分である。突条部541は、後述するクランプシャフト61の溝部617に係合可能に構成されている。カラー53の上端部は、クランプ部材54よりも上方へ突出している。カラー53上端部の内周面に蓋部材532が嵌合されることで、カラー53の上部が覆われている。蓋部材532と各クランプ部材54の間には、圧縮コイルバネとして形成された付勢バネ533が配置されている。付勢バネ533は、クランプ部材54を常時下方へ付勢することで、クランプ部材54の姿勢を安定的に保持する。
クランプロック機構5は、操作レバー7の操作に連動して、ロック動作とロック解除動作を行うように構成されている。ロック動作とは、クランプシャフト61をクランプ部材54によって挟持することで、工具固定部615によって先端工具8をスピンドル3に対して固定する動作である。ロック解除動作とは、クランプ部材54によるクランプシャフト61の挟持を解除することで、工具固定部615による先端工具8のスピンドル3に対する固定を解除する動作である。クランプロック機構5の上方には、左右方向に延在する回動軸を中心として回動可能に工具本体10に支持された回動シャフト71が配置されている。正面視略U字状に形成された操作レバー7は、アウタハウジング11の外部で回動シャフト71の左右の端部に連結されている。操作レバー7は、図3に示すロック位置と図4に示すロック解除位置との間で回動シャフト71と共に回動可能である。
回動シャフト71の左右の端部には、回動軸に対して偏心した偏心部72が形成されている。図3に示すように、操作レバー7がロック位置に配置されると、偏心部72のうち径がより小さい部分が、カラー53から離間して上方に配置されるため、付勢バネ52の付勢力によってカラー53が付勢され、最上方位置に配置される。カラー53の内周面の一部とクランプ部材54の外周面の一部には、下方向に向かって径方向内側に傾斜する傾斜面が形成されている。このため、カラー53が付勢バネ52によって上方へ付勢され、クランプ部材54が付勢バネ533によって下方へ付勢されることで、クランプ部材54は、カラー53の径方向内側へ移動される。
このときにクランプシャフト61の溝部617がクランプ部材54の間に配置されていれば、クランプロック機構5はロック動作を行う。具体的には、クランプ部材54が径方向内側へ移動し、クランプ部材54の突条部541がクランプシャフト61の溝部617に係合することで、クランプシャフト61はクランプ部材54によって挟持される。そして、クランプシャフト61がクランプ部材54に挟持された状態で付勢バネ52によって上方に付勢されることで、先端工具8は、スピンドル3の工具装着部33とクランプシャフト61の工具固定部615との間で挟持され、スピンドル3に対して固定される。
一方、図4に示すように、操作レバー7がロック解除位置に配置されると、偏心部72のうち径がより大きい部分が上方からカラー53の上端部に接触し、付勢バネ52の付勢力に抗してカラー53を最下方位置まで押し下げる。クランプ部材54も、カラー53と共に下方へ移動する蓋部材532によって、付勢バネ533を介して下方へ押し下げられる。しかしながら、カラー53が最下方位置へ達する前に、クランプ部材54の下端部がバネ支持部材51の上端部に当接するため、クランプ部材54のそれ以上下方への移動が禁止される。このため、クランプ部材54はバネ支持部材51に当接した位置で保持された状態で、カラー53のみが、付勢バネ52の付勢力に抗して最下方位置へ移動される。
カラー53のみが最下方位置へ移動されると、カラー53とクランプ部材54に形成された傾斜面の接触が解除され、クランプ部材54は径方向外側へ移動可能な状態となる。このときにクランプシャフト61の溝部617がクランプ部材54の間に配置されていれば、クランプロック機構5はロック解除動作を行う。具体的には、クランプ部材54が径方向外側へ移動可能な状態となって、クランプシャフト61に対する挟持力を弱める(クランプシャフト61の挟持を解除する)ことで、先端工具8のスピンドル3に対する固定を解除する。よって、クランプシャフト61をスピンドル3から引き抜くことが可能となる。
以下、図2〜図6を参照して、振動工具1に着脱可能に構成されたアタッチメント6について説明する。アタッチメント6は、クランプシャフト61と、ベース部63と、軸受632、633と、作業補助部65と、移動規制部67とを含む。
図4に示すように、クランプシャフト61は、シャフト部611と、工具固定部615とを含む。シャフト部611は、長尺の円柱状部材であって、振動工具1内部に配置される基端部と、工具本体10から外部に露出する先端部を有する。シャフト部611の先端部は、他の部分よりも大きい径を有する大径部612として形成されている。シャフト部611のうち大径部612以外の径がより小さい部分を小径部613という。小径部613は、アタッチメント6が振動工具1に装着されたときにスピンドル3およびバネ支持部材51の内部にスピンドル3と同軸状に挿通される部分であり、スピンドル3およびバネ支持部材51の内径にほぼ等しい径を有する。
工具固定部615は、大径部612と小径部613の境界に固定された、シャフト部611の径方向外側に突出するフランジ状の部分である。図3に示すように、工具固定部615は、スピンドル3の下端部(工具装着部33)の下に配置された先端工具8の下面に下方から当接し、スピンドル3に対して先端工具8を固定するように構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、アタッチメント6の方向を、図3に示すようにアタッチメント6が振動工具1に装着されたときの振動工具1の方向に合わせて規定する。シャフト部611の基端部(上端部)には、溝部617が設けられている。溝部617は、小径部613の全周に亘って掘られた溝が、上下方向に複数形成された部分である。溝部617は、クランプ部材54の突条部541に係合可能に構成されている。
図2〜図5に示すように、ベース部63は、円筒部631と、支持部635と、接続部638とを含む。本実施形態では、ベース部63は、クランプシャフト61の軸線A3上において、工具固定部615に並列して、工具固定部615に対してクランプシャフト61の先端部(下端部)側に配置されている。より詳細には、工具固定部615の下方において、大径部612の外周部には、2つの軸受632、633が軸線A3に沿って上下に配置されている。本実施形態では、軸受632、633として玉軸受が採用されており、軸受632、633の内輪がシャフト部611の大径部612に固定される一方、外輪の外周には円筒部631が固定されている。つまり、ベース部63は、軸受632、633を介してシャフト部611に支持されており、シャフト部611に対して相対回動可能である。
図2、図5および図6に示すように、支持部635は、円筒部631下端部の周方向における一部に円筒部631と一体的に設けられている。支持部635は、後述する支持シャフト651を介して作業補助部65を支持するように構成されている。本実施形態では、支持部635は、概ね矩形筒状に形成され、軸線A3に直交する方向(水平方向)に延在する、断面矩形状の貫通孔636を有する。図6に示すように、支持部635には、貫通孔636に加え、貫通孔636の軸線に直交する方向(上下方向)に延在するネジ穴637が設けられている。ネジ穴637には、摘みネジ601のネジ部が螺合可能である。
図3〜図5に示すように、接続部638は、後述する移動規制部67と接続可能に構成されている。本実施形態では、接続部638は、軸線A3方向における円筒部631の中央部から、径方向外側へ突出する矩形片として円筒部631と一体的に設けられている。接続部638の中央部には上方に突出する突起が形成されている。接続部638は、この突起を貫通して軸線A3に平行に(上下方向に)延在するネジ穴639を有する。ネジ穴639には、摘みネジ602のネジ部が螺合可能である。
図2、図5および図6に示すように、作業補助部65は、支持シャフト651と、プレート655とを含む。支持シャフト651は、前述の支持部635の貫通孔636内を軸線A4方向に摺動可能に構成された長尺部材である。本実施形態では、支持シャフト651は、断面が矩形状の角柱部材として形成されている。図6に示すように、支持シャフト651が支持部635に挿通された状態で、摘みネジ601のネジ部がネジ穴637に螺合され、ネジ部の先端が支持シャフト651に押し付けられることで、支持部635に対する支持シャフト651の相対位置が固定される。よって、作業者は、支持シャフト651を軸線A4方向に摺動させ、摘みネジ601を締め付けることで、支持部635による支持シャフト651の支持位置を所望の位置に調整することができる。このように、支持部635は、支持シャフト651の延在方向(軸線A4方向)における支持位置を変更可能に構成されている。
プレート655は、被加工物の加工面、またはその他の平面に接触する平面部である接触面656を有し、連結部650を介して支持シャフト651に連結されている。本実施形態では、プレート655は、長方形状に形成された薄板部材であって、接触面656の裏面側で支持シャフト651に連結されている。なお、プレート655は、先端工具8との干渉を回避するため、接触面656が工具固定部615よりも下方に配置されるように支持シャフト651に支持される。
図5および図6に示すように、連結部650は、支持シャフト651の一端部に連結されたシャフト連結部652と、プレート655の上側の角部の1つに設けられたプレート連結部657とを含む。シャフト連結部652は、概ね四角柱状に形成されている。但し、図6に示すように、シャフト連結部652の外面を形成する六面のうち、支持シャフト651が固定された面の対向面は、断面円弧状に支持シャフト651の方へ向けて湾曲する湾曲面653として形成されている。シャフト連結部652には、支持シャフト651の固定位置に隣接して、支持シャフト651の軸線A4(貫通孔636の軸線)に平行に延在し、後述する六角穴付ボルト665が螺合されるネジ穴654が設けられている。
プレート連結部657は、接触面656の裏面側に突出する湾曲部であって、その縦断面形状は半円状である。プレート連結部657は、シャフト連結部652の湾曲面653と対応する外側湾曲面658と、内側湾曲面659とを有する。プレート連結部657の中央部には、貫通孔660が設けられている。貫通孔660の径は、プレート連結部657の円弧形状の周方向(概ね上下方向)においてシャフト連結部652のネジ穴654より大きく、周方向に直交する方向(概ね水平方向)においてネジ穴654とほぼ同一である。つまり、貫通孔660は、周方向に長い長穴として形成されている。
シャフト連結部652とプレート連結部657とは、介在部材667と六角穴付ボルト665とを用いて、支持シャフト651の軸線A4に対する接触面656の角度を変更可能に連結される。介在部材667は、断面半円状に形成された部材であって、プレート連結部657の内側湾曲面659に対応する湾曲面668と、湾曲面668の突出方向に延在する貫通孔を有する。六角穴付ボルト665の軸部は、その先端部に設けられたネジ部が湾曲面668の外部へ突出するように、介在部材667の貫通孔に挿通されている。介在部材667の湾曲面668の円弧長は、貫通孔660よりも長く設定されている。
かかる構成により、六角穴付ボルト665のネジ部が貫通孔660に挿通され、ネジ穴654に締め付けられた状態では、介在部材667を介してプレート連結部657がシャフト連結部652に押し付けられることで、両者の相対位置が固定される。一方、六角穴付ボルト665が緩められた状態では、シャフト連結部652とプレート連結部657は、貫通孔660の長さの範囲内で周方向に相対移動が可能となる。よって、作業者は、外側湾曲面658を湾曲面653に沿って周方向に摺動させ、六角穴付ボルト665を締め付けることで、軸線A4に対する接触面656の角度を所望の角度に調整することができる。このように、プレート655は、軸線A4に対する接触面656の角度を変更可能に支持シャフト651に連結されている。
移動規制部67は、ベース部63が工具本体10に対して相対移動することを規制するように構成されている。本実施形態では、移動規制部67は、軸受632、633を介してシャフト部611に対して相対回動可能に支持されたベース部63が、回動部と共に工具本体10に対して回動することを規制する回り止めとして構成されている。具体的には、移動規制部67は、ベース部63に接続され、工具本体10(より詳細にはインナハウジング12)に係合するように構成されている。
図2、図3および図5に示すように、移動規制部67は、円弧部671と、アーム部674と、係合部675とを含む。円弧部671は、ベース部63の円筒部631の外周の概ね半分に沿って配置される、円弧状に形成された板状部である。円弧部671は、ほぼ全長に亘って形成された円弧状の長穴672を有する。長穴672の幅は、後述する摘みネジ602の軸部の径とほぼ同じである。アーム部674は、円弧部671の周方向における中央部から円筒部631の径方向外側(つまり、シャフト部611の軸線A3に直交する水平方向)に向けて突出し、屈曲して上方へ延びるL字状の部分である。アーム部674の先端部(上端部)には、係合部675が接続されている。本実施形態では、係合部675は、周方向の一部が分断された細長円筒状(断面C字形状の円筒状)に形成されており、上下方向に延在している。係合部675の内径は、インナハウジング12に設けられた係合突起121の径とほぼ同一である。
詳細は後述するが、係合部675は、アタッチメント6が振動工具1に装着されるときに係合突起121に係合することで、ベース部63が工具本体10に対して相対移動することを規制する。このとき、アーム部674のうち、円筒部631の径方向外側に向けて突出する部分(以下、突出部676という)は、振動工具1の前後方向に延在するように配置される。
かかる構成により、ベース部63の接続部638の下方に円弧部671が配置され、摘みネジ602のネジ部が下方から長穴672に挿通され、更に、接続部638のネジ穴639に締め付けられた状態では、摘みネジ602によって円弧部671が接続部638に押し付けられることで、移動規制部67に対するベース部63の相対位置が固定される。一方、摘みネジ602が緩められた状態では、ベース部63と移動規制部67は、長穴672の長さの範囲内で周方向に相対移動が可能となる。よって、作業者は、摘みネジ602を長穴672に沿って周方向に摺動させ、締め付けることで、移動規制部67に対するベース部63の相対位置を調整することができる。
なお、支持シャフト651は、ベース部63の支持部635によって、シャフト部611の軸線A3と直交する方向に延在するように支持されている。よって、移動規制部67に対するベース部63の相対位置が固定されると、アーム部674の延在方向に対する支持シャフト651の軸線A4の角度が固定されるともいえる。また、前述のように、アタッチメント6が振動工具1に装着されると、アーム部674の延在方向は振動工具1の前後方向に一致する。よって、移動規制部67は、振動工具1の前後方向に対する支持シャフト651の軸線A4の角度を変更可能に構成されていると言い換えることもできる。
以下、図2〜図4、および図7を参照して、振動工具1に対するアタッチメント6の着脱と、先端工具8(ブレード)によって被加工物に切込みを形成する場合のアタッチメント6の調整について説明する。
例えば、アタッチメント6を用いてスピンドル3に装着された先端工具8を交換して別の加工作業を行いたい場合、作業者は、まず、図4に示すように、操作レバー7をロック解除位置に配置する。これにより、前述のように、クランプロック機構5がロック解除動作を行う。つまり、クランプ部材54がクランプシャフト61の挟持を解除することで、工具固定部615による先端工具8のスピンドル3に対する固定を解除する。よって、作業者は、クランプシャフト61をスピンドル3から引き抜くことができる。クランプシャフト61がスピンドル3から引き抜かれた場合、アタッチメント6全体が一体的に振動工具1から取り外される。これとあわせて、作業者は工具装着部33から先端工具8を取り外すことができる。
その後、作業者は、加工作業に応じて適切な先端工具8を選択し、工具装着部33の突起34を先端工具8の係合穴81に嵌合させ、先端工具8を工具装着部33の下部に配置する。そして、アタッチメント6の小径部613を、先端工具8の貫通孔82を通して、スピンドル3内部に下方から挿入する。このとき作業者は、移動規制部67のアーム部674の突出部676が振動工具1の後方に向けて突出するように、アタッチメント6を配置する。作業者は、溝部617がクランプ部材54の間に配置され、工具固定部615が先端工具8を挟んで工具装着部33に押し付けられるまで、アタッチメント6を上方へ移動させる。アタッチメント6の係合部675は、この過程でアウタハウジング11の開口部111を通ってインナハウジング12の係合突起121に嵌め込まれる。
図3に示すように、作業者が操作レバー7をロック位置に移動させると、クランプロック機構5が前述のようにロック動作を行う。具体的には、クランプ部材54が径方向内側へ移動してクランプシャフト61を挟持する。クランプシャフト61がクランプ部材54に挟持された状態で付勢バネ52によって上方に付勢されることで、先端工具8は、スピンドル3の工具装着部33と工具固定部615との間で挟持され、スピンドル3に対して固定される。また、クランプシャフト61に軸受632、633を介して支持されたベース部63は、スピンドル3およびクランプシャフト61に対して相対回動可能に振動工具1(より詳細にはスピンドル3)に装着される。
作業者は、必要に応じて被加工物の加工面からの切込みの深さや加工面に対する切込みの角度を調整する。まず、切込みの深さは、加工面に対する振動工具1の進行方向における先端工具8の刃先と加工面との距離に応じて規定される。接触面656は、加工面(または加工面と一定の配置関係にある平面)に接触する平面部として機能するため、切込みの深さは、先端工具8の刃先と接触面656との距離に応じて規定されると言い換えることができる。このため、作業者は、切込みの深さを変更したい場合、摘みネジ601を緩め、支持部635による支持シャフト651の支持位置を、刃先と接触面656との距離が所望の深さに対応するように調整すればよい。つまり、作業者は、ベース部63(支持部635)による支持シャフト651の支持位置を変更するだけで、先端工具8による切込みの深さを容易に調整することができる。また、作業者は、摘みネジ602を緩め、加工面に対する振動工具1の進行方向に応じて移動規制部67に対するベース部63の相対位置を調整することで、振動工具1の前後方向に対する支持シャフト651の角度を容易に調整することができる。
また、先端工具8は、スピンドル3の往復回動に伴って、軸線A1を中心として仮想的な揺動平面P(図3参照)上で揺動されるため、加工面に対する切込みの角度は、被加工物の加工面と揺動平面Pとがなす角度によって規定される。接触面656は、加工面(または加工面と一定の配置関係にある平面)に接触する平面部として機能するため、切込みの角度は、接触面656と揺動平面Pとがなす角度に応じて規定されると言い換えることができる。このため、作業者は、切込みの角度を変更したい場合、六角穴付ボルト665を緩め、支持シャフト651の軸線A4に対する接触面656の角度を、接触面656と揺動平面Pとがなす角度が所望の角度に対応するように調整すればよい。このようにして、作業者は、軸線A4に対する接触面656の角度を変更するだけで、加工面に対する切込みの角度を容易に調整することができる。
作業者は、必要に応じて、軸線A4方向における支持シャフト651の支持位置、振動工具1の前後方向に対する支持シャフト651の軸線A4の角度、および軸線A4に対する接触面656の角度のうち、いずれか1つ以上を調整すればよい。図7には、図2に示す状態から、軸線A4方向における支持シャフト651の支持位置、振動工具1の前後方向に対する支持シャフト651の軸線A4の角度、および軸線A4に対する接触面656の角度のすべてが変更された例が図示されている。なお、上記の調整作業は、アタッチメント6が振動工具1に装着される前に行われてもよい。
スイッチがONとされ、モータ2が駆動されると、伝達機構4を介してスピンドル3が軸線A1周りの所定の角度範囲内で往復回動される。付勢バネ52の付勢力により、バネ支持部材51およびロックアセンブリ50もスピンドル3と一体的に往復回動される。また、クランプロック機構5によって保持されたクランプシャフト61も、スピンドル3と一体的に往復回動される。この観点から、スピンドル3、クランプシャフト61、バネ支持部材51、付勢バネ52、ロックアセンブリ50は、スピンドル3と一体的に工具本体10に対して相対回動可能な回動部を構成するということができる。ベース部63は、軸受632、633を介してシャフト部611(大径部612)に支持されているため、シャフト部611に対して相対回動する。一方、ベース部63は、ベース部63に連結された移動規制部67の係合部675がインナハウジング12の係合突起121に係合しているため、シャフト部611と共に回動して工具本体10に対して相対移動することが規制される。よって、回動部の回動動作にかかわらず、ベース部63によって支持された作業補助部65と工具本体10との相対的な位置関係は、安定して維持される。
以上に説明したように、本実施形態のアタッチメント6は、クランプシャフト61と、ベース部63と、作業補助部65と、移動規制部67とを備えている。ベース部63は、クランプシャフト61の工具固定部615による先端工具8の固定に伴って、クランプシャフト61の軸線A3上において工具固定部615と並列して、スピンドル3と一体的に回動する回動部に対して相対回動可能に装着されるように構成されている。ベース部63には、先端工具8による作業を補助するように構成された作業補助部65が支持されている。また、ベース部63には、ベース部が工具本体に対して相対移動することを規制するように構成された移動規制部67が接続されている。
かかる構成を有するアタッチメント6によれば、作業補助部65を支持するベース部63は、先端工具8が工具固定部615によってスピンドル3に対して固定されるのに伴って、軸線A3上において工具固定部615と並列して、回動部に対して相対回動可能に装着される。よって、作業者は、クランプシャフト61の工具固定部615によって所望の先端工具8をスピンドル3に固定するのと併せて、先端工具8による作業を補助するための作業補助部65を振動工具1に装着することができる。特に、本実施形態では、クランプロック機構5のロック動作およびロック解除動作に伴って、工具固定部615による先端工具8の固定とその解除、および、ベース部63の装着と取り外しが可能とされている。つまり、クランプロック機構5のロック動作とロック解除動作に伴って、先端工具8の着脱とアタッチメント6の着脱とを同時に行うことが可能となるため、アタッチメント6をネジ等の別部材を用いて工具本体10に装着し、更に、先端工具8をスピンドル3に固定する場合に比べ、作業効率を向上させることができる。
また、本実施形態のベース部63は、軸受632、633を介してクランプシャフト61の下端部(大径部612)に支持されているため、作業者は、ベース部63とクランプシャフト61を一体的に取り扱うことができる。つまり、作業者は、クランプシャフト61をスピンドル3に着脱する操作を行うだけで、先端工具8の着脱とアタッチメント6の着脱も行うことできるため、作業効率を更に向上することができる。
また、移動規制部67は、ベース部63が軸受632、633を介して回動部と共に回動することを規制する回り止めとして構成されている。よって、軸受632、633と回り止めというシンプルな構成によって、回動部に対して相対回動可能にベース部63を装着し、且つ、ベース部63の工具本体10に対する相対移動を規制することができる。特に、本実施形態の移動規制部67は、工具固定部615によって先端工具8がスピンドル3に固定される過程で工具本体10(インナハウジング12)に係合し、先端工具8の固定が解除される過程で係合が解除されるように構成された係合部675を有する。係合部675は、係合突起121に係合するだけの(つまりネジ等で固定されない)構成である。よって、作業者は、クランプシャフト61をスピンドル3に着脱する操作を行うだけで、係合部675による係合とその解除も行うことができるため、作業効率を更に向上することができる。
また、本実施形態では、ベース部63は、クランプシャフト61の軸線A3上において、工具固定部615に対してクランプシャフト61の先端部(下端部)側に配置されている。よって、ベース部63が基端部(上端部)側にある場合に比べ、先端工具8が振動工具1に対してより近くに配置されるため、作業者は先端工具8を操作しやすい。なお、ベース部63が軸線A3上において工具固定部615よりもクランプシャフト61の先端部(下端部)側でクランプシャフト61に支持される構成とすることで、クランプシャフト61のうち、小径部613と工具固定部615とから構成される部分には、作業補助部65等を備えない通常のクランプシャフトと同一の構成を採用することができる。よって、振動工具1(より詳細には、スピンドル3を含む回動部)には、ベース部63専用の特別な着脱構成を設ける必要がないため、振動工具1の大型化や製造コストの増加を防ぐことができる
[第二実施形態]
以下、図8〜図10を参照して、第二実施形態に係る振動工具100およびアタッチメント60について説明する。本実施形態の振動工具100の構成は、第一実施形態の振動工具1の構成とほぼ同一である。具体的には、振動工具100は、スピンドル30以外は振動工具1と同一の構成を有する。よって、以下では、振動工具1と同一の構成については同一符号を付して図示するのみで説明は省略し、スピンドル30についてのみ説明する。また、本実施形態のアタッチメント60は、クランプシャフト62およびベース部64に関する構成がアタッチメント6とは大きく異なるものの、その他の構成はアタッチメント6と同様である。よって、以下では、アタッチメント6と同様の構成については同一符号を付して説明を簡略化する。
まず、図8を参照して、振動工具100のスピンドル30について説明する。図8に示すように、略円筒状のスピンドル30は、第一実施形態のスピンドル3(図3参照)よりも軸線A1方向に長く形成されている。より詳細には、スピンドル30は、工具本体10(アウタハウジング11)の下端部からの突出量が、スピンドル3よりも大きくなるように形成されている。また、スピンドル30下端部に形成された工具装着部330も、第一実施形態の工具装着部33(図3参照)よりも軸線A1方向に長く形成されている。より詳細には、工具装着部330の軸線A1方向の長さは、後述するアタッチメント60のベース部64の軸線A3方向の長さよりも若干大きくなるように設定されている。工具装着部330の下面には、工具装着部33と同様、突起34が設けられている。また、工具装着部330の上端部には、他の部分よりも径方向外側へ突出し、後述するベース部64の上端位置を規定するように構成されたストッパ部331が設けられている。
次に、図8〜図10を参照して、振動工具100に着脱可能に構成されたアタッチメント60について説明する。アタッチメント60は、クランプシャフト62と、ベース部64と、軸受644と、作業補助部65と、移動規制部67とを含む。
図8に示すように、クランプシャフト62は、シャフト部621と、工具固定部625とを含む。シャフト部621は、長尺の円柱状部材である。本実施形態では、シャフト部621は、第一実施形態のシャフト部611よりも長く、且つ、全長に亘って概ね同一径に形成されている。また、本実施形態では、フランジ状の工具固定部625は、シャフト部621の先端部(下端部)に固定されている。工具固定部625は、第一実施形態の工具固定部615と同様、スピンドル30の下端部(工具装着部330)の下に配置された先端工具8の下面に下方から当接し、スピンドル30に対して先端工具8を固定するように構成されている。また、シャフト部621の基端部(上端部)には、第一実施形態と同様の溝部627が設けられている。なお、第一実施形態では、クランプシャフト61は、軸受632、633およびベース部63と一体化されていたが、本実施形態では、クランプシャフト62は、アタッチメント60の他の要素のすべてと別体とされている。
図8および図10に示すように、ベース部64は、円筒部641と、支持部645と、接続部648とを含む。本実施形態では、ベース部64は、クランプシャフト62の軸線A3上において、工具固定部625に並列して、工具固定部625に対してクランプシャフト62の先端部とは反対側(上端部側)に配置される。本実施形態では、ベース部64の円筒部641は、いずれも円筒状に形成された内壁642と外壁643によって二重筒状に形成されている。内壁642と外壁643は、軸受644を介して互いに相対回動可能に配置されている。なお、本実施形態では、軸受644には玉軸受が採用されている。内壁642は、スピンドル30の工具装着部330の径とほぼ同一の内径を有し、工具装着部330が嵌合可能に構成されている。
図10に示すように、支持部645は、円筒部641上端部の周方向における一部に、円筒部641(より詳細には外壁643)と一体的に設けられている。支持部645は、第一実施形態の支持部635と同様、支持シャフト651を介して作業補助部65を支持するように構成されている。なお、支持部645による支持シャフト651の支持位置を固定するための摘みネジ601は、先端工具8との干渉を回避するため、第一実施形態とは異なり、摘み部分が上方に突出するように配置される。接続部648の構成は、大きさが若干異なるものの、第一実施形態の接続部638とほぼ同一であるため、ここでの説明は省略する。
ベース部64の支持部645によって支持された作業補助部65は、第一実施形態とほぼ同一の構成を有する。つまり、作業補助部65は、支持部645によって支持された支持シャフト651と、連結部650を介して支持シャフト651に連結されたプレート655とを含む。なお、本実施形態では、プレート655は、先端工具8との干渉を回避するため、接触面656が工具固定部625よりも上方に配置されるように支持シャフト651に支持される(図8参照)。
図8および図9に示すように、移動規制部67は、円弧部671の大きさが異なるものの、第一実施形態とほぼ同一の構成を有する。つまり、移動規制部67は、円弧部671と、アーム部674と、係合部675とを含む。より詳細には、前述の通り、円筒部641の径が第一実施形態の円筒部631の径よりも大きいことに伴い、円筒部641の外周の概ね半分に沿って配置される円弧部671は、第一実施形態よりも大きく形成されている。このため、アーム部674は、突出部676が第一実施形態よりも短くなるように形成されている。第一実施形態と同様、係合部675は、アタッチメント60が振動工具100に装着されるときに係合突起121に係合することで、ベース部64が工具本体10に対して相対移動することを規制する。
以下、図8および図9を参照して、振動工具100に対するアタッチメント60の着脱について説明する。
図8に示すように振動工具100に装着されたアタッチメント60を取り外したい場合、作業者は、まず、操作レバー7をロック解除位置に移動させることで、クランプロック機構5にロック解除動作を行わせる。その後、作業者は、クランプシャフト62をスピンドル30から引き抜く。クランプシャフト62がスピンドル30から引き抜かれると、先端工具8の工具装着部330に対する固定も解除されるため、作業者は、先端工具8を取り外すことができる。作業者は、更に、スピンドル30(より詳細には工具装着部330)の外周に嵌合されていたベース部64を取り外すことで、アタッチメント60全体を振動工具100から取り外すことができる。
反対に、アタッチメント60を振動工具100に装着する場合、作業者は、スピンドル30(工具装着部330)の外周に、作業補助部65および移動規制部67が接続されたベース部64(より詳細には、円筒部641の内壁642)を嵌合させる。これにより、ベース部64(より詳細には、外壁643)は、回動部に対して回動可能に、軸受644を介してスピンドル30に支持される。なお、ベース部64は、工具装着部330のストッパ部331によって、その上端位置が規定される。その後、作業者は、先端工具8を工具装着部330の下部に配置し、クランプシャフト62を、先端工具8の貫通孔82を通してスピンドル30内部に下方から挿入する。作業者は、溝部627がクランプ部材54の間に配置され、工具固定部625が先端工具8を挟んで工具装着部330に押し付けられるまで、クランプシャフト62を上方へ移動させる。
作業者が操作レバー7をロック位置に移動させると、クランプロック機構5が前述のようにロック動作を行い、クランプシャフト61はクランプ部材54によって挟持される。クランプシャフト61がクランプ部材54に挟持された状態で付勢バネ52によって上方に付勢されることで、先端工具8は、スピンドル30の工具装着部330と工具固定部625との間で挟持され、スピンドル30に対して固定される。このとき、工具装着部330の外周に嵌められたベース部64は、ストッパ部331と先端工具8との間で上下方向に挟持されることで、スピンドル30およびクランプシャフト62を含む回動部に対して相対回動可能に装着される。
なお、アタッチメント60における支持シャフト651の支持位置、振動工具1の前後方向に対する支持シャフト651の軸線A4の角度、および軸線A4に対する接触面656の角度の調整については、第一実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
以上に説明したように、本実施形態のアタッチメント60は、クランプシャフト62と、ベース部64と、作業補助部65と、移動規制部67とを備えている。ベース部64は、クランプシャフト62の工具固定部625による先端工具8の固定に伴って、クランプシャフト62の軸線A3上において工具固定部625と並列して、スピンドル30と一体的に回動する回動部に対して相対回動可能に装着されるように構成されている。ベース部64には、先端工具8による作業を補助するように構成された作業補助部65が支持されている。また、ベース部64には、ベース部が工具本体に対して相対移動することを規制するように構成された移動規制部67が接続されている。
かかる構成を有するアタッチメント60によれば、作業補助部65を支持するベース部64は、先端工具8が工具固定部625によってスピンドル30に対して固定されるのに伴って、軸線A3上において工具固定部625と並列して、回動部に対して相対回動可能に装着される。よって、作業者は、クランプシャフト62の工具固定部625によって所望の先端工具8をスピンドル3に固定するのと併せて、先端工具8による作業を補助するための作業補助部65を振動工具100に装着することができる。特に、本実施形態では、クランプロック機構5のロック動作およびロック解除動作に伴って、工具固定部625による先端工具8の固定とその解除、および、ベース部64の装着と取り外しが可能とされている。つまり、クランプロック機構5のロック動作とロック解除動作に伴って、先端工具8の着脱とアタッチメント60の着脱とを同時に行うことが可能となるため、アタッチメント60をネジ等の別部材を用いて工具本体10に装着し、更に、先端工具8をスピンドル30に固定する場合に比べ、作業効率を向上させることができる。
また、本実施形態のベース部64(より詳細には円筒部641の外壁643)は、軸受644を介して回動部(より詳細にはスピンドル30)に対して相対回動可能に支持される。また、移動規制部67は、ベース部64(外壁643)が軸受644を介して回動部と共に回動することを規制する回り止めとして構成されている。よって、軸受644と回り止めというシンプルな構成によって、回動部に対して相対回動可能にベース部64を装着し、且つ、ベース部64の工具本体10に対する相対移動を規制することができる。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係るアタッチメントおよび作業工具は、例示されたアタッチメント6、60および振動工具1、100の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すアタッチメント6、60および振動工具1、100、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
振動工具1、100は、工具本体10に対して回転可能に支持されたスピンドル3、30を所定の軸線A1周りに所定の角度範囲内で往復回動させることで、スピンドル3、30に装着された先端工具8を揺動動作させるよう構成されていればよく、例えば、モータ2の配置、伝達機構4の構成等は適宜変更が可能である。工具本体10は、防振の観点からは、前述のように弾性連結されたアウタハウジング11とインナハウジング12の2層構造とされることが好ましいが、必ずしも2層構造とされる必要はない。
振動工具1、100は、クランプロック機構5によってクランプシャフト61、62の基端部(上端部)を挟持することで、工具固定部615、625によって先端工具8を工具装着部33、330との間に挟持するように構成されている。しかしながら、工具固定部615、625によって先端工具8をスピンドル3、30に固定するための構成は、クランプロック機構5によるものに限られない。例えば、クランプシャフト61、62のシャフト部611、621にネジ部を形成し、工具固定部615、625と工具装着部33、330との間に先端工具8が挟持された状態で、スピンドル3、30に形成されたネジ穴にネジ部を螺合させることで、先端工具8をスピンドル30に固定する構成が採用されてもよい。クランプシャフト61、62を挟持する構成も、クランプロック機構5の例に限られない。クランプシャフト61、62を挟持する位置と挟持を解除する位置の間でクランプ部材54を移動させる他の構成が採用されてもよい。また、クランプロック機構5のロック動作とロック解除動作は、操作レバー7以外の操作部を用いて切替えられてもよい。
また、上記実施形態では、クランプシャフト61、62は、夫々、スピンドル3、30に着脱可能に構成されている。しかしながら、クランプシャフト61、62は、スピンドル3、30に取り付け可能に構成されていればよく、スピンドル3、30から完全には取り外せない構成であってもよい。この場合、クランプシャフト61、62の基端部(上端部)がバネ支持部材51またはスピンドル3、30に挿入された状態で、先端工具8の交換が可能であればよい。例えば、先端工具8は、シャフト部611、621が下方から挿通される貫通孔82(図4参照)に代えて、シャフト部611、621に対して水平方向から係合可能な構成を有すればよい。
上記実施形態では、ベース部63は、軸受632、633を介してクランプシャフト61に支持されており、ベース部64の外壁643は、軸受644を介してスピンドル30に支持されている。軸受632、633、644はいずれも玉軸受である。しかしながら、ベース部63および外壁643は、その他の手段を介して回動部に対して相対回動可能に装着されていてもよい。例えば、軸受632、633、644として、玉以外の転動体(コロ、針)を用いた他の転がり軸受が採用されてもよい。また、例えば、ベース部63自体が滑り軸受で構成されていてもよい。
上記実施形態では、移動規制部67は、係合部675がインナハウジング12の係合突起121に係合することで、ベース部63、64が工具本体10に対して移動することを規制するように構成されている。しかしながら、係合部675は、回動部と共に工具本体10に対して相対回動しない部位であれば、インナハウジング12ではなく、アウタハウジング11の一部、またはインナハウジング12内部に配置された部材に係合するように構成されてもよい。但し、上記実施形態のように、アウタハウジング11とインナハウジング12とが防振のために弾性連結されている場合には、係合部675は、インナハウジング12またはインナハウジング12内部に配置された部材に係合することが好ましい。なお、移動規制部67は、ベース部63、64が工具本体10に対して相対移動することを規制する機能を有すれば足りるため、作業効率向上の観点からは、工具本体10にネジ等で固定される構成でないことが好ましい。
また、回動部の回動動作にかかわらず、ベース部63、64によって支持された作業補助部65と工具本体10との相対的な位置関係を安定して維持できるという観点からは、アタッチメント6、60は、移動規制部67を備えていることが好ましい。しかしながら、アタッチメント6、60は、必ずしも移動規制部67を備えていなくてもよい。移動規制部67が設けられない場合であっても、例えば、作業補助部65が常に被加工物に押し付けられた状態で加工作業が行われることで、ベース部63、64および作業補助部65の工具本体10に対する相対移動を抑制することができるためである。
上記実施形態では、スピンドル3、30と一体的に工具本体10に対して相対回動する回動部が、スピンドル3、30、クランプシャフト61、62、バネ支持部材51、付勢バネ52、ロックアセンブリ50を含む例が挙げられている。しかしながら、回動部は必ずしもこれらをすべて含む必要はなく、少なくともスピンドル3、30、クランプシャフト61、62を含めばよい。また、回動部は、バネ支持部材51、付勢バネ52、ロックアセンブリ50以外の部材であって、スピンドル3、30に一体的に連結され、スピンドル3、30およびクランプシャフト61、62と共に工具本体10に対して相対回動するよう構成された部材を含んでいてもよい。
上記実施形態では、作業補助部65による作業補助の例として、ブレードによる被加工物に対する切込み深さおよび加工面に対する切込みの角度の調整を挙げたが、作業補助部65は、この例以外の先端工具8による被加工物の加工量や、被加工物の加工面に対する先端工具8の角度の調整も可能である。例えば、研削パッドによる被加工物の研削量(加工面からの研削深さ)等も調整可能である。
また、実施形態で例示された作業補助部65は、被加工物の加工量および加工面に対する先端工具8の角度の両方が調整可能に構成されているが、いずれか一方のみが調整可能な構成に変更されてもよい。具体的には、被加工物の加工量のみを調整可能とする場合、例えば、作業補助部65は、支持部635によって支持位置を変更可能に支持された支持シャフト651のみを備えればよい。この場合、支持シャフト651の先端を被加工物との接触部として、加工量を調整することができる。一方、加工面に対する先端工具8の角度のみを調整可能とする場合、例えば、支持シャフト651は支持部635に対して移動不能に連結され、連結部650によって、支持シャフト651の軸線A4に対する接触面656の角度のみが調整可能とされればよい。
更に、作業補助部65の各部分の構成は、適宜変更が可能である。例えば、軸線A4周りの回転を防止するという観点からは、支持シャフト651の断面形状は矩形が好ましいが、円形、楕円形、長方形、および矩形以外の多角形のいずれかであってもよい。また、また、プレート655の形状および大きさや、角度調整可能な方向(貫通孔660の構成)も適宜変更可能である。連結部650も、軸線A4に対する接触面656の角度を変更可能に支持シャフト651とプレート655とを連結できればよく、実施形態で例示された以外の構成が採用されてもよい。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の構成(態様)が構築される。以下の構成のうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すアタッチメント6、60および振動工具1、100、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記シャフト部は、前記スピンドルに対して着脱可能に構成されていてもよい。
[態様2]
前記ベース部は、前記回動部に対して相対回動可能に前記スピンドルの外周に装着されるように構成されていてもよい。
[態様3]
前記移動規制部は、前記ベース部に接続され、且つ、前記工具本体に設けられた被係合部に係合可能に構成された係合部を有してもよい。
[態様4]
前記係合部は、前記工具固定部による前記先端工具の固定に伴って、前記被係合部と係合するように構成されていてもよい。
[態様5]
前記移動規制部は、前記ベース部に対する前記シャフト部の前記軸線周りの相対位置を調整可能に構成されていてもよい。
上記実施形態および変更例の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。振動工具1、100は、本発明の「作業工具」に対応する構成例である。工具本体10、スピンドル3、30、クランプロック機構5は、夫々、本発明の「工具本体」、「スピンドル」、「クランプロック機構」に対応する構成例である。アタッチメント6、60は、本発明の「アタッチメント」に対応する構成例である。クランプシャフト61、62は、いずれも本発明の「シャフト部」、「クランプシャフト」に対応する構成例である。
工具固定部615、625は、いずれも本発明の「工具固定部」に対応する構成例である。スピンドル3、30、クランプシャフト61、62、バネ支持部材51、付勢バネ52、およびロックアセンブリ50は、本発明の「回動部」に対応する構成例である。ベース部63、ベース部64(外壁643)は、本発明の「ベース部」に対応する構成例である。軸受632、633、644は、いずれも本発明の「軸受」に対応する構成例である。
作業補助部65は、本発明の「作業補助部」に対応する構成例である。支持シャフト651は、本発明の「延在部」に対応する構成例である。プレート655、接触面656は、夫々、本発明の「接触部」、「平面部」に対応する構成例である。移動規制部67は、本発明の「移動規制部」に対応する構成例である。係合部675は、本発明の「係合部」に対応する構成例である。係合突起121は、本発明の「被係合部」に対応する構成例である。