JP6613683B2 - 粉体離型剤及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粉体離型剤及びその製造方法に関する。
鋳造品は、鋳造金型内に形成されたキャビティに注湯された高温の金属溶湯を注湯し、注湯した金属溶湯をキャビティ内で冷却凝固させることにより、製造される。鋳造時に金属溶湯が鋳造金型のキャビティ壁面に直接接触すると、鋳造品がキャビティ壁面に焼付く虞がある。これを防止するため、金属溶湯をキャビティに注湯する前に離型剤がキャビティ壁面に塗布される。塗布された離型剤が金属溶湯とキャビティ壁面との間に介在することにより、金属溶湯とキャビティ壁面との直接接触が防止される。すなわち鋳造品の焼付きが防止される。このような離型剤の主たる機能である耐焼付き性(キャビティ壁面への鋳造品の焼付きを防止する能力)の改善や、離型時の抵抗力の軽減を図るために、様々な成分を含む離型剤が開発されている。
特許文献1は、セリサイト類(鉱物)またはこれに類するマイカ類と、油状物及び/又は樹脂状物とが強固に結合した粉末状物質からなる粉体離型剤を開示する。特許文献2は、脂肪酸、ワックス、オイル、樹脂等から選ばれる1種又は2種以上の自己潤滑性を持つ粉体であって、常温において粉状或いは粒状の固体で、且つ熱により液化する性質を有する粉体離型剤を開示する。特許文献3は、特定の鎖状シリコーンに特定のモノオレフィン及び/又はアルケニル基を有する芳香族炭化水素と特定のジアクリル酸エステルとをヒドロシル化触媒存在下で反応させることにより得られるオルガノ変性シリコーンが含有された変性シリコーン系水溶性離型剤を開示する。特許文献4は、潤滑剤として用いられる無機化合物からなる粉末状又は顆粒状の離型剤基材と、この離型剤基材に付着性を付与する有機化合物とを混合してなる粉体離型剤を開示する。特許文献5は、鱗片上の黒鉛系固体潤滑剤と、窒化ホウ素、二硫化モリブデン及びタルク粉末から選ばれる1種又は2種以上からなる鱗片上の非黒鉛系固体潤滑剤とを混合した離型剤を開示する。
特開平7−53980号公報 特開平11−209770号公報 特開2012−130922号公報 特開平3−243242号公報 特開平9−295102号公報
(発明が解決しようとする課題)
離型剤は、液状離型剤と粉体離型剤とに大別される。液状離型剤はさらに油性離型剤(非水溶性離型剤)と水溶性離型剤とに分類される。これらのうち、現在では、高い耐焼付き性を有し、且つ、難燃性の点で優れる水溶性離型剤が広く用いられている。
水溶性離型剤には溶媒としての水が含まれているため、水溶性離型剤をキャビティ壁面に塗布した場合、水分がキャビティ壁面に残留する虞がある。この場合、キャビティ壁面上の残留水分がキャビティに注湯される金属溶湯内に取り込まれることにより、鋳造品内或いは鋳造品表面に鋳巣が形成される虞がある。また、水溶性離型剤をキャビティ壁面に塗布する際に大きな熱衝撃が鋳造金型に作用するため、水溶性離型剤を使用した場合、鋳造金型の劣化が促進される。さらに、水溶性離型剤を使用した場合、使用済の水溶性離型剤による水質汚濁を防止するための廃水処理設備が必要であるため設備コストが増大する。さらに、水溶性離型剤の使用時にミストが発生するため作業環境が悪化する。このように、水溶性離型剤を使用した場合であっても、多くの問題が発生する。
一方、粉体離型剤を使用した場合には、上記したような水溶性離型剤を使用することに起因した問題は生じない。また、粉体離型剤の塗布時間は液状離型剤の塗布時間よりも短いため、成形サイクルを短縮することができる。しかし、従来の粉体離型剤は無機固体であるため、それをキャビティ壁面に塗布した場合、キャビティ壁面に付着した部位のみに離型膜が形成される。そのため、粉体付着量の少ない部位には十分な離型膜が形成されず、それ故に、従来の粉体離型剤は耐焼付き性の点で劣る。また、粉体離型剤中には、耐焼付き性を高めるために無機化合物(鉱物)が含有されており、このような無機化合物が固体状態の離型剤残渣物としてキャビティ内に残留するため、キャビティ内で成形される鋳造品に無機化合物が付着する虞がある。鋳造品に無機化合物のような固体状態の離型剤残渣物が付着した場合、その後の工程にて離型剤残渣物の付着部位を含む部位に接着剤等を塗布した場合における接着力の低下、或いは付着部位の塗装性の悪化が懸念される。このように、粉体離型剤は、耐焼付き性及び耐付着性(離型剤残渣物が鋳造品に付着することを防止する能力)において、水溶性離型剤に劣る。
本発明は、高い耐焼付き性を有する粉体離型剤及び、そのような粉体離型剤の製造方法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤であって、潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成されるとともに潤滑液を内包した本体部とを有する主成分粒子を備え、本体部は、融点が常温よりも高く、前記鋳造金型の加熱温度で溶融する有機化合物により構成される、粉体離型剤を提供する。
本発明に係る粉体離型剤によれば、潤滑液を内包した固体粒子状の本体部を有する主成分粒子がキャビティ内に注湯される金属溶湯に接触した時には、本体部に内包されている潤滑液が外部に溶出する。従って、本体部の外部に溶出した潤滑液がキャビティ壁面に展着することによりキャビティ壁面が潤滑液で覆われて、離型膜が形成される。このため金属溶湯とキャビティ壁面との直接接触が防止され、両者の直接接触による焼付きの発生が防止される。
すなわち、本発明に係る粉体離型剤は、粉体状でありながら、液状離型剤のように潤滑液をキャビティ壁面に展着させて、キャビティ壁面に均一に離型膜を形成することができるように構成される。言い換えれば、本発明に係る粉体離型剤は、粉体離型剤でありながら、液状離型剤と同等の高い耐焼付き性を有する。よって、本発明によれば、高い耐焼付き性を有する粉体離型剤を提供することができる。
また、本発明において、「キャビティ壁面」とは、鋳造品を形成するために利用される壁面を意味する。従って、金型(固定型、可動型)のキャビティ壁面のみならず、キャビティ内に設置される鋳抜きピンやスライドコア等の付帯部品のうち鋳造品を形成するために用いられる壁面も、本発明においては「キャビティ壁面」である。また、本発明において、「常温」とは、JIS Z 8703で定義される温度であり、5℃〜35℃(20℃±15℃)である。
また、本発明において、「固体粒子状」とは、固体状態であり且つ粒子状であることを意味する。また、本発明において、「内包」とは、外部にあふれ出ることなく内部に含まれることを意味する。従って、本発明に係る潤滑液は、固体粒子状の本体部の内部に含まれていさえすればよく、潤滑液がどのようにして本体部の内部に含まれているかまでは問わない。例えば、本体部の内部に全体的に潤滑液が浸透していてもよく、また、殻状の本体部の内部に潤滑液が充填されていても良い。また、本発明の離型剤は、潤滑液を備えるとはいえ、その潤滑液が固体粒子状の本体部に内包されているため、使用時における形態は、粉体状である。つまり、本発明の離型剤は、粉体離型剤である。
また、本発明によれば、本体部が、鋳造金型の加熱温度で溶融する有機化合物により構成されている。つまり、粉体離型剤は、潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成されるとともに潤滑液を内包した本体部とを有する主成分粒子を備え、本体部は、鋳造金型の加熱温度で溶融する有機化合物により構成されている。これによれば、加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に粉体離型剤を塗布したときに、キャビティ壁面の熱により主成分粒子の本体部を構成する有機化合物が溶融する。つまり、キャビティ壁面の熱により本体部が溶融する。本体部が溶融すると、本体部に内包されていた潤滑液が本体部から外部に放出される。放出された潤滑液がキャビティ壁面に展着されることにより、キャビティ壁面が潤滑液で覆われる。キャビティ壁面を覆った潤滑液は、その後にキャビティに注湯される金属溶湯とキャビティ壁面との間に介在する。このため金属溶湯とキャビティ壁面との直接接触が防止され、両者の直接接触による焼付きの発生が防止される。この場合、潤滑液は、耐焼付き性(離型性)が高められるような液体であるのがよく、特に変性シリコーンオイルであるとよい。
上記において、「鋳造金型の加熱温度」とは、離型剤をキャビティ壁面に塗布する際における鋳造金型の温度、さらに具体的に言えば、離型剤をキャビティ壁面に塗布する際におけるキャビティ壁面の温度である。一般に、鋳造金型は、離型剤をキャビティ壁面に塗布する際に予め定められた温度に設定される。従って、「鋳造金型の加熱温度」は、鋳造金型の設定温度であってもよい。このような鋳造金型の加熱温度(設定温度)は、使用する鋳造金型の材質、鋳造金型に注湯される金属の材質、製造条件等により変化する。そのため加熱温度を一律に定義することはできないが、一般的には、100℃以上であり、400℃以下である。
また、本発明によれば、粉体離型剤をキャビティ壁面に塗布したときに本体部が鋳造金型の熱により溶融して液体状態にされる。このため、金属溶湯をキャビティに注湯する際には、粉体離型剤を構成する主成分粒子が全て液体状態にされており、固体状態の離型剤成分はキャビティ内に残っていない。よって、固体状態の離型剤残渣物が鋳造品に付着することが効果的に防止される。つまり、耐付着性が高められる。
また、本体部を構成する有機化合物は、鋳造金型の熱で溶融された後に、キャビティに注湯される金属溶湯の熱により気体に分解されてもよい。これによれば、本体部が、キャビティに注湯された金属溶湯の熱により例えば二酸化炭素等の気体に分解される。このため、金属溶湯をキャビティに注湯した後には、粉体離型剤を構成する成分(本体部及び潤滑液)の大部分が、気体状態又は液体状態にされており、キャビティ内に存在する固体状態の離型剤成分の量は極めて少ない。よって、固体状態の離型剤残渣物が鋳造品に付着することが極力防止される。つまり、耐付着性が高められる。
さらにこの場合、本体部を構成する有機化合物の分子量は、800以上であり且つ2000以下であるのがよい。分子量が800以上であり且つ2000以下の低分子量の有機化合物の融点は低い。よって、このような低分子量の有機化合物により本体部を構成することにより、鋳造金型の熱により本体部を溶融させることができる。
さらにこの場合、本体部を構成する有機化合物が、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスであるとよい。ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスの融点は、90℃〜120℃程度であり、ほとんどの鋳造金型の一般的な加熱温度(設定温度)以下である。よって、これらを用いて本体部を構成することにより、鋳造金型の熱により本体部を確実に溶融させることができる。
また、本発明に係る粉体離型剤は、常温で固体粒子状に形成され、鋳造金型の加熱温度で溶融するバインダーを備えていてもよい。このバインダーは、キャビティ壁面に塗布されたときに溶融して粘着力を発揮することによって、主成分粒子をキャビティ壁面に付着させる機能を有する。つまり、主成分粒子は、バインダーを介在してキャビティ壁面に付着される。
この場合、本体部は、潤滑液を内部に密封するように殻状に形成されており、且つ、鋳造金型に金属溶湯が注湯される際における注湯圧力によって破壊され或いは注湯される金属溶湯の温度にて分解する有機化合物により構成されるとよい。すなわち、粉体離型剤は、潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成されるとともに潤滑液を密封するように殻状に形成された本体部とを有する主成分粒子と、常温で固体粒子状に形成され、鋳造金型の加熱温度で溶融するバインダーとを備え、バインダーは、キャビティ壁面に塗布されたときに溶融して粘着力を発揮することによって、主成分粒子をキャビティ壁面に付着させる機能を有し、本体部は、鋳造金型に金属溶湯が注湯される際における注湯圧力によって破壊され或いは注湯される金属溶湯の温度にて分解する(すなわち金属溶湯の熱により分解される)有機化合物により構成されるものであるとよい。この場合、本体部は、キャビティ内に金属溶湯が注湯されるまでは、内部に密封している潤滑液の密封状態が維持されるように構成されているとよい。例えば、本体部を構成する有機化合物は、鋳造金型の加熱温度によっては溶融及び分解しない有機化合物であるとよい。
これによれば、加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に粉体離型剤が塗布されたときに、バインダーが溶融して粘着力を発揮することにより、バインダーを介して粉体離型剤中の主成分粒子がキャビティ壁面に均一に付着される。そして、その後にキャビティに金属溶湯が注湯される際の注湯圧力により主成分粒子の本体部が破壊され、或いは、注湯される金属溶湯の熱により主成分粒子の本体部が分解される。本体部が破壊或いは分解されることにより、殻状に形成されていた本体部の内部に密封されていた潤滑液が外部に溶出し、溶出した潤滑液がキャビティ壁面に展着して金属溶湯とキャビティ壁面との間に介在する。このため金属溶湯とキャビティ壁面との直接接触が防止され、両者の直接接触による焼付きの発生が防止される。この場合、潤滑液は、耐焼付き性(離型性)が高められるような液体であるのがよく、特に変性シリコーンオイルであるとよい。
また、殻状の本体部がメラミン樹脂により構成されているとよい。比較的強度の高いメラミン樹脂によって殻状の本体部を構成することにより、主成分粒子がバインダーを介してキャビティ壁面に付着されたときに、本体部内の潤滑液の密封状態を維持することができる。そして、金属溶湯がキャビティ内に注湯されたときには、メラミン樹脂からなる殻状の本体部が金属溶湯の熱により分解又は注湯圧力で破壊する。このため、本体部の内部に密封されていた潤滑液を外部に溶出させることができる。
また、バインダーは、分子量が500以上であり且つ30000以下の有機化合物であるのがよい。有機化合物であるバインダーの分子量が上記の範囲内である場合、通常用いられる鋳造金型の加熱温度によりバインダーを溶融させることができ、且つ、キャビティ壁面で適度な粘着性を発揮することによって、主成分粒子を十分に粘着させることができる。この場合、バインダーが、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスを含むとよい。バインダーがポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスである場合、上記した効果が顕著に実現される。
また、主成分粒子の平均粒子径、具体的には体積平均粒子径が、1μm以上であり且つ100μm以下であるとよい。主成分粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)が上記した範囲内である場合、粉体離型剤の塗布時に十分な量の主成分粒子をキャビティ壁面に付着させ、且つ、均一に分散性させることができ、さらに、潤滑液が溶出した場合には、十分な量の潤滑液をキャビティ壁面に展着させることができる。
また、本発明は、加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤の製造方法であって、常温で固体状態であり且つ鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物を加熱することにより、液体状態にされた有機化合物を作製する第1工程と、液体状態にされた有機化合物と、潤滑性を有する液体により構成された潤滑液とを混合して混合液を調製する第2工程と、混合液を噴霧して混合液の液滴を形成するとともに、形成した液滴中の有機化合物を固化させることにより、有機化合物により構成され常温で固体粒子状に形成される本体部とその本体部に内包された潤滑液とを有する主成分粒子を備える粉体離型剤を生成する第3工程と、を含む、粉体離型剤の製造方法を提供する。この場合、潤滑液が、変性シリコーンオイルであるとよい。また、有機化合物の分子量が、800以上であり2000以下であるとよい。好ましくは、有機化合物がポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスであるとよい。
本発明によれば、第1工程にて、常温で固体状態であり且つ鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物の液状物が作製される。続く第2工程にて、有機化合物の液状物と潤滑液とが混合された混合液が調製される。そして、第3工程にて、混合液を噴霧して混合液の液滴を形成し、形成した液滴中の有機化合物を固化させる。このとき固化する有機化合物の内部に潤滑液が取り込まれることにより、本発明に係る主成分粒子を備える粉体離型剤が生成される。すなわち、第3工程では、噴霧造粒法により本発明に係る粉体離型剤が生成される。これによれば、高い耐焼付き性を有する粉体離型剤を製造することができる。
第一実施形態に係る粉体離型剤の一構造例を示す模式的な断面図である。 第一実施施形態に係る粉体離型剤の他の構造例を示す模式的な断面図である。 第一実施施形態に係る粉体離型剤の更に他の構造例を示す模式的な断面図である。 スプレークール装置の概略構成を示す図である。 第二実施形態に係る粉体離型剤の構造例を示す模式的な断面図である。 第二実施形態に係る粉体離型剤が、加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布された状態を示す図である。 実施例及び比較例に係る粉体離型剤を用いた場合における、離型抵抗を示すグラフである。 実施例及び比較例において算出した黒色面積率を比較したグラフである。 実施例及び比較例において算出した平均重量差を比較したグラフである。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態につき説明する。第一実施形態に係る粉体離型剤は、潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成され、鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物により構成されるとともに、潤滑液を内包した本体部とを有する主成分粒子を備える。図1は、第一実施形態に係る主成分粒子の一構造例を示す模式的な断面図である。図1に示すように、第一実施形態に係る粉体離型剤に備えられる主成分粒子1は、本体部2と潤滑液3とを有する。なお、図1及び後述する図2、図3において、潤滑液3がドットにより示されている。
本体部2は、常温で固体状態であって且つ粒状に、すなわち常温で固体粒子状に形成されている。また、本体部2は、鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物により構成される。
潤滑液3は、潤滑性を有し、常温で液体状態である。潤滑液3は、それを離型剤として用いた場合に耐焼付き性(離型性)が高められるような液体であるのがよい。潤滑液3は、液状離型剤の原料として通常用いられるものにより構成されていてもよい。潤滑液3は、変性シリコーンオイルであるのが好ましい。この潤滑液3は、固体粒子状に形成された本体部2に内包されている。図1によれば、潤滑液3が、固体粒子状の本体部2の内部に全体的に浸透している。
潤滑液3は、図1に示す以外の形態により本体部2に内包されていてもよい。例えば、図2に示すように、中空形状に形成された本体部2の内部に潤滑液3が充填されていてもよい。また、図3に示すように、本体部2内に多数の空孔が形成されており、潤滑液3がこの空孔内に充填されていてもよい。
主成分粒子1は、粉体離型剤の主成分として、予め設定された温度に加熱されている鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される。塗布時には、主成分粒子1は固体粒子状である。塗布された主成分粒子1の本体部2は、鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物により構成されているため、鋳造金型のキャビティ壁面からの熱によって溶融又は分解する。本体部2が溶融又は分解すると、本体部2に内包されている潤滑液3が本体部2から滲み出て、本体部2の外部に溶出される。溶出された潤滑液3はキャビティ壁面に展着される。このようにして、キャビティ壁面が潤滑液3に覆われて、キャビティ壁面に潤滑液からなる離型膜が形成される。
主成分粒子1を備える粉体離型剤を鋳造金型のキャビティ壁面に塗布した後に、キャビティ内に金属溶湯が注湯される。キャビティ壁面は上述したように本体部2から溶出された潤滑液3で覆われているため、キャビティ内に金属溶湯が注湯された場合、金属溶湯とキャビティ壁面との間に潤滑液3が介在する。このため金属溶湯とキャビティ壁面との直接接触が防止される。よって、キャビティ内で形成される鋳造品がキャビティ壁面に焼付くことが防止される。特に、潤滑液3が変性シリコーンオイルである場合、変性シリコーン系水溶性離型剤と同等の高い耐焼付き性が発揮される。
また、第一実施形態に係る粉体離型剤には水分が含まれていないため、キャビティ壁面への水残りに起因した鋳巣が鋳造品内に発生することもない。加えて、塗布時の熱衝撃による鋳造金型の劣化、廃水処理設備のための設備コストの増大、ミストの発生による作業環境の悪化、等の、水溶性離型剤を使用することによって生じる不具合は発生しない。つまり、第一実施形態に係る粉体離型剤は、水溶性離型剤と同等の高い耐焼付き性を発揮し、且つ、水溶性離型剤のデメリットを克服した、有用性の高い粉体離型剤である。
また、主成分粒子1の本体部2を構成する有機化合物の融点が鋳造金型の加熱温度以下である場合、粉体離型剤をキャビティ壁面に塗布したときに、本体部2が溶融して液体状態にされる。このため、金属溶湯をキャビティに注湯する際には、粉体離型剤の主成分粒子1を構成する成分(本体部2及び潤滑液3)が全て液体状態にされており、固体状態の離型剤成分はキャビティ内に残っていない。よって、固体状態の離型剤残渣物が鋳造品に付着することが防止される。つまり、耐付着性が高められる。
また、粉体離型剤の塗布後にキャビティに注湯される金属溶湯の温度は、例えば金属溶湯がアルミニウム溶湯である場合、約650℃である。このような高温の金属溶湯が粉体離型剤の主成分粒子1に接触した場合、本体部2を構成する有機化合物は熱によりほとんど分解される。分解生成物は、例えば二酸化炭素のような気体である。従って、金属溶湯をキャビティに注湯した後には、粉体離型剤を構成する成分(本体部2及び潤滑液3)の大部分が、気体状態又は液体状態(すなわち固体状態以外の相状態)にされており、キャビティ内に存在する固体状態の離型剤成分の量は極めて少ない。よって、固体状態の離型剤残渣物が鋳造品に付着することが極力防止される。つまり、耐付着性が高められる。
また、本体部2を構成する有機化合物が鋳造金型の加熱温度によって気体に分解される場合、分解反応により生成された気体がキャビティから放出される。このため、金属溶湯をキャビティに注湯する際には、キャビティ壁面に本体部はほとんど残っていない。よって、固体状態の離型剤残渣物が鋳造品に付着することが極力防止される。つまり、耐付着性が高められる。
本体部2を構成する有機化合物の分子量は、10000以下であるとよい。特に、分子量が800以上であり且つ2000以下であるとよい。分子量が上記範囲である有機化合物は、一般的な金型の加熱温度(90℃〜150℃)で溶融し、且つ、さらに高い温度で気体に分解され易い。また、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスの分子量は800〜2000程度であり、その融点は概ね90℃〜150℃である。よって、これらを本体部2を構成する有機化合物として用いるのが好ましい。
次に、本実施形態に係る粉体離型剤の製造方法について説明する。まず、常温で固体状態であり且つ鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物を加熱することによって、液体状態にされた有機化合物を作製する(第1工程)。次いで、液体状態の有機化合物と、潤滑性を有する液体により構成された潤滑液とを混合し、ミキサを用いて撹拌する。このとき、潤滑液の温度が液体状態の有機化合物の温度と同じ程度になるように、潤滑液を加熱しておくとよい。これにより、液体状態の有機化合物と潤滑液とが混合した混合液が調製される(第2工程)。その後、混合液を、スプレークール装置(噴霧冷却造粒装置)に供給し、噴霧造粒法により常温で固体粒子状の粉体離型剤を生成する。
図4は、スプレークール装置10の概略構成を示す図である。図4に示すように、スプレークール装置10は、造粒塔11と、アトマイザ12を備える。造粒塔11は、鉛直方向に沿った軸を有する円筒形状に形成された側周部11aと、側周部11aの上端開口を塞ぐ天板部11bと、側周部11aの下端に連結した回収部11cとを有する。回収部11cは、下方に向かうほど先細りのテーパ状に形成されており、その下端部位に回収通路13が連結されている。側周部11a、天板部11b及び回収部11cに囲まれた空間により、造粒塔11の内部空間が形成される。
アトマイザ12は、筒状容器12aと回転体12bとを備える。筒状容器12aは天板部11bを上下に貫通しており、その上端が造粒塔11の外部に位置し、その下端が造粒塔11の内部空間に位置する。筒状容器12aの下端に回転体12bが取り付けられている。従って、回転体12bは造粒塔11の内部空間内に配設される。回転体12bは造粒塔11の内部空間内で鉛直軸周りに回転するように構成される。回転体12bの内部には中空空間が形成され、その中空空間は筒状容器12a内の空間に連通している。また、回転体12bの側周面には、内部の中空空間に連通した多数の微細孔が開口している。
上記構成のスプレークール装置10の作動について説明する。まず、アトマイザ12の回転体12bを回転させる。次いで、上記第2工程で得られた混合液を、アトマイザ12の筒状容器12aの上端から筒状容器12a内に供給する。筒状容器12a内に供給された混合液は、筒状容器12a内から回転体12b内に導かれる。回転体12b内の混合液は遠心力によって回転体12bの側周面に開口した多数の微細孔から噴出される。このようにして、混合液がアトマイザ12から噴霧される。
アトマイザ12から噴霧された混合液は、非常に微細な液滴となって重力により造粒塔11の内部空間内を下方に落下する。落下中に液滴が冷却されることにより、液滴中の有機化合物が粒状に固化する。一方、液滴中の潤滑液は、固化した有機化合物の内部に取り込まれる。このようにして、上記第2工程で得られた混合液を噴霧冷却造粒することにより、有機化合物により構成される固体粒子状の本体部2と、本体部2に内包された潤滑液3とを有する主成分粒子1を備える粉体離型剤が生成される(第3工程)。生成された粉体離型剤は、回収通路13からスプレークール装置10の外部に排出される。
このように、第1工程、第2工程、及び、第3工程を経て、第一実施形態に係る粉体離型剤が製造される。
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る粉体離型剤について説明する。第二実施形態に係る粉体離型剤は、潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成されるとともに前記潤滑液を密封するように殻状に形成された本体部としての外殻物質とを有する主成分粒子と、常温で固体粒子状に形成され、鋳造金型の加熱温度で溶融するバインダーとを備える。
図5は、第二実施形態に係る主成分粒子の構造例を示す模式的な断面図である。図5に示すように、第二実施形態に係る主成分粒子4は、外殻物質5(本体部)と、潤滑液6とを有する。
外殻物質5は、鋳造金型の加熱温度では溶融及び分解せず、且つ、鋳造金型に金属溶湯が注湯される際における注湯圧力によって破壊され、或いは、注湯される金属溶湯の温度にて熱分解する(すなわち金属溶湯の熱により分解される)有機化合物により構成される。このような特性を有する有機化合物として、メラミン樹脂が例示できる。
潤滑液6は、上記第一実施形態に係る潤滑液3と同様に、潤滑性を有し、常温で液体状態である。また、潤滑液3は、それを離型剤として用いた場合に耐焼付き性(離型性)が高められるような液体であるのがよい。潤滑液3は、液状離型剤の原料として通常用いられるものにより構成されていてもよい。潤滑液3は、変性シリコーンオイルであるのが好ましい。
また、図5からわかるように、外殻物質5は、潤滑液6を内部に密封するように殻状に形成されている。従って、常温において、主成分粒子4は、その外面が外殻物質5に覆われた粉体状を呈する。このように、殻状の外殻物質5の内部に潤滑液を封入することにより、一つの主成分粒子4における潤滑液6の含有量を大きくすることができる。
また、第二実施形態に係る粉体離型剤に備えられるバインダーは、常温で固体粒子状に形成され、鋳造金型の加熱温度で溶融するような物質により構成される。このバインダーは、キャビティ壁面に塗布されたときに溶融して粘着力を発揮することによって、主成分粒子4をキャビティ壁面に付着させる機能を有する。
図6は、第二実施形態に係る粉体離型剤が、加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布された状態を示す図である。図6に示すように、キャビティ壁面Hに塗布された粉体離型剤のうち、バインダー7は、キャビティ壁面Hからの熱によって溶融する。溶融したバインダー7は、キャビティ壁面H上に引き伸ばされる。また、キャビティ壁面Hに塗布された粉体離型剤のうち、主成分粒子4は、溶融したバインダー7の粘着力によって、バインダー7内に留められる。このため、バインダー7内で主成分粒子4が均一に分散する。
バインダーは、分子量が500以上であり且つ30000以下の有機化合物であるのがよい。バインダーとして用いられる有機化合物の分子量が上記の範囲内である場合、通常用いられる鋳造金型の加熱温度によりバインダーを溶融させることができ、且つ、キャビティ壁面で適度な粘着性を発揮することによって、主成分粒子を十分に粘着させることができる。この場合、バインダーが、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスを含むとよい。バインダーがポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスである場合、上記した効果が顕著に実現される。
主成分粒子4の平均粒子径(体積平均粒子径)は、1μm以上であり且つ100μm以下であるとよい。主成分粒子4の平均粒子径が上記した範囲よりも大きいと、主成分粒子どうしが干渉することによって、粉体離型剤をキャビティ壁面に塗布する際における主成分粒子の均一分散性が悪化し、且つ、キャビティ壁面への主成分粒子の付着性が悪化する。主成分粒子4の平均粒子径が上記した範囲よりも小さいと、本体部に対する潤滑液の含有比率が相対的に小さくなるので、潤滑液を十分にキャビティ壁面に展着させることができず、離型性、耐焼付き性が悪化する虞がある。これに対し、主成分粒子4の平均粒子径が上記した範囲内である場合、粉体離型剤の塗布時に十分な量の主成分粒子をキャビティ壁面に付着させ、且つ、均一に分散性させることができ、さらに、潤滑液が溶出した場合には、十分な量の潤滑液をキャビティ壁面に展着させることができる。
第二実施形態に係る粉体離型剤を鋳造金型のキャビティ壁面に塗布した後に、キャビティ内に金属溶湯が注湯される。キャビティ壁面には上述したようにバインダー7を介して主成分粒子4が付着されているので、キャビティ内に金属溶湯が注湯された場合、金属溶湯から圧力(注湯圧力)が主成分粒子4に作用する。また、金属溶湯の熱により主成分粒子4が熱せられる。ここで、主成分粒子4の外殻物質5(本体部)は、上記したように、注湯圧力により破壊され、或いは金属溶湯の温度にて分解するような有機化合物で形成されている。よって、キャビティ内に金属溶湯が注湯されたときに、外殻物質5が破壊又は分解する。外殻物質5が破壊又は分解することにより、外殻物質5の内部に密封されていた潤滑液6が溶出する。こうして溶出した潤滑液6がキャビティ壁面に展着し、金属溶湯とキャビティ壁面との間に介在してキャビティ壁面と金属溶湯との直接接触が防止される。このため、キャビティ内で形成される鋳造品がキャビティ壁面に焼付くことが防止される。この場合、潤滑液6が変性シリコーンオイルである場合、変性シリコーン系水溶性離型剤と同等の高い耐焼付き性が発揮される。
また、第二実施形態に係る粉体離型剤には水分が含まれていないため、キャビティ壁面への水残りに起因した鋳巣が鋳造品内に発生することもない。加えて、塗布時の熱衝撃による鋳造金型の劣化、廃水処理設備のための設備コストの増大、ミストの発生による作業環境の悪化、等の、水溶性離型剤を使用することによって生じる不具合は発生しない。つまり、第二実施形態に係る粉体離型剤も、第一実施形態に係る粉体離型剤と同様に、水溶性離型剤と同等の高い耐焼付き性を発揮し、且つ、水溶性離型剤のデメリットを克服した、有用性の高い粉体離型剤である。
(実施例1)
実施例1では、上記第一実施形態に係る粉体離型剤を製造する。第一実施形態に係る粉体離型剤を製造するに当たり、まず、本体部を構成する有機化合物としてのポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、分子量:900、融点:116℃)を140℃に加熱して、液体状態のポリエチレンワックスを作製した。次に、140℃に加熱された液体状態のポリエチレンワックスと、同じく140℃に加熱された潤滑液としての長鎖アルキル変性タイプの変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製)とを、重量比1:9(シリコーンオイル:ポリエチレンワックス=1:9)の割合で混合して混合液を調製した。次いで、混合液の温度を140℃に維持しつつ、ホモミキサを用いて混合液を15分間撹拌した。
その後、上記混合液を、スプレークール装置(大川原加工機株式会社製、品名:L−8i)に供給して混合液を噴霧冷却した。このときのアトマイザの回転数は3500r.p.mである。また、アトマイザ(回転体)の温度をT1とし、造粒塔内の出口温度をT2とすると、T1<T2となるように、アトマイザの温度及び造粒塔内の温度を制御した。アトマイザから噴霧された混合液からなる微細な液滴は、造粒塔内で冷却固化し、固体粒子状にされる。これにより、ポリエチレンワックスからなる固体粒子状の本体部と、本体部の内部に浸透するように本体部に内包された液状の変性シリコーンオイル(潤滑液)を有する主成分粒子を備える実施例1に係る粉体離型剤が製造された。
製造された実施例1に係る粉体離型剤の主成分粒子の重量平均粒径を、光回折/散乱装置により測定したところ、53μmであった。また、製造された実施例1に係る粉体離型剤の主成分粒子に含まれる変性シリコーンオイルとポリエチレンの重量比を、固体NMR測定装置により測定したところ、変性シリコーンオイル:ポリエチレン=14:86であった。つまり、変性シリコーンオイル(潤滑液)の含有率は、14wt%であった。
(実施例2)
実施例2では、上記第二実施形態に係る粉体離型剤を作製する。この場合、まず、分散媒であるエチレン−無水マレイン酸共重合体に、潤滑液としての変性シリコーンオイルを添加し、撹拌する。これにより、分散媒中に多数の微小な変性シリコーンオイルの油滴が形成される。次いで、分散媒中に、メラミン−ホルマリンプレポリマー及び酢酸を添加し、pH及び温度を調整する。ここで、油滴表面は疎水性(親油性)であり、メラミン−ホルマリンプレポリマーは油滴表面にて重合する。そして、重合反応により生じたメラミンポリマー(メラミン樹脂)が油滴表面を覆うように膜状に形成される。このようにして、メラミン樹脂からなる殻状の外殻物質(本体部)が形成され、外殻物質の内部に変性シリコーンオイル(潤滑液)が密封される。
次いで、乾燥によって分散媒を揮発させて、殻状の外殻物質(本体部)及び外殻物質の内部に密封された変性シリコーンオイル(潤滑液)を有する主成分粒子を抽出する。その後、抽出した主成分粒子と、バインダーとしてのポリプロピレンワックス粉末を、主成分粒子:バインダー=80wt%:20wt%の割合で混合する。このようにして、実施例2に係る粉体離型剤が製造された。
製造された実施例2に係る粉体離型剤の主成分粒子の重量平均粒径を、光回折/散乱装置により測定したところ、17μmであった。また、製造された実施例2に係る粉体離型剤の主成分粒子に含まれる変性シリコーンオイルの含有率をICP−OES分析により測定したところ、75wt%であった。
(離型抵抗評価)
次に、実施例1及び2に係る粉体離型剤の離型抵抗を測定した。離型抵抗の測定にあたり、テスト用鋳造金型を型締め力800tのダイカストマシンにセットした。そして、テスト用鋳造金型のキャビティ壁面に、各例に係る粉体離型剤を塗布装置を用いてそれぞれ塗布した。このときの塗布量は2.0gであり、塗布時間は2秒である。粉体離型剤の塗布後に型締めし、温度660℃に加熱されたアルミニウム溶湯(材種:ADC12)をテスト用鋳造金型のキャビティ内に射出して鋳造成形した。所定時間経過後にテスト用鋳造金型を型開きするが、その際に要した力の大きさを測定し、測定した力を圧力換算することにより、離型抵抗(単位:MPa)を測定した。こうした離型抵抗の測定を、一つの実施例に係る粉体離型剤あたり30回実施し、離型抵抗の平均値を求めた。また、比較例1として、黒鉛系粉体離型剤を用いて上記のように鋳造成形を実施し、型開き時における離型抵抗の平均値を求めた。
図7は、各例(実施例1、実施例2、比較例1)に係る粉体離型剤を用いた場合における、離型抵抗を示すグラフである。図7からわかるように、実施例1に係る粉体離型剤を用いた場合における離型抵抗の平均値は約2.8MPaであり、実施例2に係る粉体離型剤を用いた場合における離型抵抗の平均値は約2.3MPaであり、比較例1に係る黒鉛系粉体離型剤を用いた場合における離型抵抗の平均値は約3.2MPaであった。このことから、実施例1及び実施例2に係る粉体離型剤は、従来の粉体離型剤よりも、離型性に優れることがわかる。また、実施例2に係る粉体離型剤を用いた場合における離型抵抗は、実施例1に係る粉体離型剤を用いた場合における離型抵抗よりも小さい。これは、実施例2に係る粉体離型剤の主成分粒子中の潤滑液の含有率が、実施例1に係る粉体離型剤の主成分粒子中の潤滑液の含有率よりも、大きいことに起因していると考えられる。
(耐付着性評価)
次に、実施例1及び実施例2に係る粉体離型剤の耐付着性を評価した。耐付着性の評価にあたり、まず、直径φ30mmの鉄製カップを用意した。この鉄製カップが鋳造金型に相当する。鉄製カップを200℃に加熱し、加熱した鉄製カップの底面に実施例に係る粉体離型剤を敷き詰めた。その後、温度650℃のアルミニウム合金(材種:ADC12)の溶湯を鉄製カップに充填した。充填したアルミニウム合金溶湯の重量は60gであった。
次に、鉄製カップに充填したアルミニウム合金溶湯を自然放冷し、鉄製カップ内でアルミニウム合金を凝固させた。その後、凝固したアルミニウム合金を鉄製カップから取り出した。そしてアルミニウム合金の底面、すなわち鉄製カップの底面に敷き詰められていた各実施例に係る粉体離型剤に接触していた面に、どの程度の量の固体状態の離型剤残渣物が付着したかを評価した。ここで、離型剤残差物は黒色を呈する。よって、アルミニウム合金の底面の面積に対する黒色部分の面積の比を黒色面積率として算出し、この黒色面積率を、耐付着性の評価指標として用いた。黒色面積率が小さいほど、鋳造品に固体状態の離型剤残渣が付着しておらず、耐付着性が高いと評価できる。また、比較例2として、黒鉛系粉体離型剤を用いた場合における黒色面積率を、比較例3として、脂肪酸系粉体離型剤を用いた場合における黒色面積率を、それぞれ算出した。
図8は、実施例1、実施例2、比較例2、比較例3において算出した黒色面積率を比較したグラフである。図8に示すように、実施例1及び実施例2に係る粉体離型剤を用いた場合における黒色面積率は0である。すなわち、鋳造品に固体状態の離型剤残渣物は付着しなかった。一方、黒鉛系粉体離型剤を用いた場合における黒色面積率は5%であり、脂肪酸系粉体離型剤を用いた場合における黒色面積率は0.5%であった。この結果から、実施例1及び実施例2に係る粉体離型剤の耐付着性は、非常に高いことがわかる。
(耐焼付き性評価)
次に、実施例1及び実施例2に係る粉体離型剤の耐焼付き性を評価した。耐焼付き性を評価するにあたり、まず、予めダイカスト金型に設けられている所定温度に加熱された鋳抜きピンの表面に、各実施例に係る粉体離型剤を塗布した。塗布量は0.2gであり、塗布時間は2秒である。その後、アルミニウム合金(材種:ADC12)の溶湯(温度660℃)をダイカスト金型のキャビティに射出して、鋳抜きピンをアルミニウム合金溶湯により鋳包んだ。次いで、キャビティ内のアルミニウム合金が冷却凝固するまで待ち、冷却凝固完了後に、鋳抜きピンを鋳造品(アルミニウム合金)から抜き取って鋳抜きピンの重量G1を測定した。次いで、その鋳抜きピンをアルカリ液に浸漬して鋳抜きピンに付着したアルミニウム合金を除去した。その後、再度鋳抜きピンの重量G2を測定した。そして、重量G1と重量G2との重量差ΔG(G1−G2)を算出した。算出された重量差ΔGは、鋳抜きピンに付着したアルミニウム合金の重量、すなわち、キャビティ壁面(鋳抜きピンの壁面)に焼き付いた鋳造品の重量である。このような重量差ΔGの測定を、20回繰り返して行い、その平均値を平均重量差ΔGavとして算出した。平均重量差ΔGavが小さいほど、鋳造品がキャビティ壁面(鋳抜きピンの壁面)に焼付いた量が少なく、耐焼付き性が高いと評価できる。また、比較例4として、黒鉛系粉体離型剤を用いた場合における平均重量差ΔGavを、比較例5として、変性シリコーン系水溶性離型剤を用いた場合における平均重量差ΔGavを、それぞれ算出した。
図9は、実施例1、実施例2、比較例4、比較例5において算出した平均重量差ΔGavを比較したグラフである。図9に示すように、実施例1に係る粉体離型剤を用いた場合における平均重量差ΔGavは5.2mg、実施例2に係る粉体離型剤を用いた場合における平均重量差ΔGavは3.5mg、比較例4に係る黒鉛系粉体離型剤を用いた場合における平均重量差ΔGavは8.8mg、比較例5に係る変性シリコーン系水溶性離型剤を用いた場合における重量差ΔGavは5.2mgであった。この結果から、実施例1に係る粉体離型剤は、変性シリコーン系水溶性離型剤の耐焼付き性と同等程度であり、高い耐焼付き性を発揮することがわかる。また、実施例2に係る粉体離型剤の耐焼付き性は、変性シリコーン系水溶性離型剤の耐焼付き性よりも優れる。このため、実施例2に係る粉体離型剤は、極めて優れた耐焼付き性を発揮することがわかる。
以上、本発明の様々な実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。例えば、上記第一実施形態においては、第3工程にてスプレークール装置を用いた噴霧冷却法により本発明に係る粉体離型剤を生成する例を示したが、スプレードライ装置を用いた噴霧乾燥法により本発明に係る粉体離型剤を生成することもできる。また、上記第一実施例においては本体部を構成する有機化合物としてポリエチレンワックスを使用した例を示したが、ポリプロピレンワックスを使用しても良いし、その他の比較的分子量の少ない有機化合物を使用してもよい。また、上記第二実施例においては、本体部としての外殻物質をメラミン樹脂により形成したが、金属溶湯の注湯時における注湯圧力で破壊され、或いは、注湯される金属溶湯の熱により分解されるような有機化合物であれば、メラミン樹脂以外の物質により外殻物質を形成してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…主成分粒子、2…本体部、3…潤滑液、4…主成分粒子、5…外殻物質(本体部)、6…潤滑液、7…バインダー、10…スプレークール装置、11…造粒塔、11a…側周部、11b…天板部、11c…回収部、12…アトマイザ、12a…筒状容器、12b…回転体、13…回収通路

Claims (11)

  1. 加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤であって、
    潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成されるとともに前記潤滑液を内包した本体部とを有する主成分粒子を備え、
    前記本体部は、融点が常温よりも高く、前記鋳造金型の加熱温度で溶融する有機化合物により構成される、粉体離型剤。
  2. 請求項に記載の粉体離型剤において、
    前記潤滑液が変性シリコーンオイルである、粉体離型剤。
  3. 請求項1又は2に記載の粉体離型剤において、
    前記本体部を構成する有機化合物の分子量が800以上であり且つ2000以下である、粉体離型剤。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉体離型剤において、
    前記本体部を構成する有機化合物がポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスを含む、粉体離型剤。
  5. 加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤であって、
    潤滑性を有し常温で液体状態の潤滑液と、常温で固体粒子状に形成されるとともに前記潤滑液を内包した本体部とを有する主成分粒子と、
    常温で固体粒子状に形成され、前記鋳造金型の加熱温度で溶融するバインダーとを備え、
    前記バインダーは、前記キャビティ壁面に塗布されたときに溶融して粘着力を発揮することによって、前記主成分粒子を前記キャビティ壁面に付着させる機能を有し、
    前記本体部は、前記潤滑液を内部に密封するように殻状に形成されており、且つ、前記鋳造金型に金属溶湯が注湯される際における注湯圧力によって破壊され或いは注湯される金属溶湯の温度にて分解する有機化合物により構成される、粉体離型剤。
  6. 請求項に記載の粉体離型剤において、
    前記潤滑液が変性シリコーンオイルである、粉体離型剤。
  7. 請求項5又は6に記載の粉体離型剤において、
    前記本体部がメラミン樹脂により構成される、粉体離型剤。
  8. 請求項5乃至7のいずれか1項に記載の粉体離型剤において、
    前記バインダーは、分子量が500以上であり且つ30000以下の有機化合物である、粉体離型剤。
  9. 請求項5乃至8のいずれか1項に記載の粉体離型剤において、
    前記バインダーが、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスを含む、粉体離型剤。
  10. 請求項5乃至9のいずれか1項に記載の粉体離型剤において、
    前記主成分粒子の平均粒子径が1μm以上であり且つ100μm以下である、粉体離型剤。
  11. 加熱された鋳造金型のキャビティ壁面に塗布される粉体離型剤の製造方法であって、
    常温で固体状態であり且つ前記鋳造金型の加熱温度で溶融又は分解する有機化合物を加熱することにより、液体状態にされた前記有機化合物を作製する第1工程と、
    液体状態にされた前記有機化合物と、潤滑性を有する液体により構成された潤滑液とを混合して混合液を調製する第2工程と、
    前記混合液を噴霧して前記混合液の液滴を形成するとともに、形成した液滴中の前記有機化合物を固化させることにより、前記有機化合物により構成され常温で固体粒子状に形成される本体部とその本体部に内包された前記潤滑液とを有する主成分粒子を備える粉体離型剤を生成する第3工程と、
    を含む、粉体離型剤の製造方法。
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