以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る太陽電池モジュール診断システム(以下、適宜「診断システム」という)は、例えば、メガソーラーシステムにおける太陽電池モジュールの診断に好適に利用される。以下においては、本実施の形態に係る診断システムがメガソーラーシステムに適用される場合を例として説明する。しかしながら、本実施の形態に係る診断システムが適用される対象はメガソーラーシステムに限定されるものではなく、より小規模な太陽光発電システムに適用することができる。
図1は、本実施の形態に係る太陽電池モジュール診断システム(診断システム)10の構成を示すブロック図である。なお、図1においては、メガソーラーシステムを構成する多数の太陽電池アレイのうち、説明の便宜上、3個の太陽電池アレイ11〜13のみを示している。
図1に示すように、本実施の形態に係る診断システム10は、複数の太陽電池アレイ11〜13、パワーコンディショナ14、ストリング電気特性測定装置(測定装置)15、ストリング電気特性受信サーバ(受信サーバ)16、診断装置17及び監視装置18を含んで構成される。診断システム10では、敷地内に設置された太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流の変化を測定し、その測定結果に基づいて太陽電池アレイ11〜13を構成する太陽電池モジュール20の異常を診断するものである。
それぞれの太陽電池アレイ11〜13は、例えば、最大出力250Wの太陽電池モジュール20が直列に9枚接続されることにより最大出力2250Wの太陽電池アレイとして構成される。太陽電池モジュール20は、太陽光を表面(モジュール表面)に受光し、太陽光エネルギーを電気エネルギー(直流)に変換する。なお、これらの太陽電池モジュール20は、太陽電池パネルと呼ぶこともできる。
太陽電池アレイ11〜13は、診断システム10が設けられる敷地内に整列して配置されている。また、それぞれの太陽電池アレイ11〜13においては、太陽電池モジュール20が整列して配置されている。図1では、同図に示す上下方向に一定間隔で配置された3枚の太陽電池モジュール20が同図に示す左右方向に3列配置された場合について示している。それぞれの太陽電池アレイ11〜13における太陽電池モジュール20の位置は、互いに一致した状態となっている。太陽電池アレイ11〜13は、それぞれ逆流防止ダイオード(ブロッキングダイオード)21〜23を介してパワーコンディショナ14に接続されている。
図2は、本実施の形態に係る診断システム10に適用される太陽電池モジュール20の拡大図である。図2に示すように、太陽電池モジュール20は、複数の太陽電池セル201を含んでいる。太陽電池モジュール20内の太陽電池セル201は、インターコネクタのはんだ接続によって全て直列に配線された電気回路となっている。太陽電池モジュール20は、太陽電池モジュール20内の部分的な陰や故障・不具合の影響を抑えることを目的として複数の並列回路に分割されている。これらの並列回路には、電流の逆流を防ぐためのバイパスダイオード202が組み込まれている。なお、これらのバイパスダイオード202で分割された部分的な太陽電池セル群は、サブストリングやクラスタと呼ばれることがある。本明細書においては、これらの太陽電池セル群をサブストリング203と呼ぶものとする。
パワーコンディショナ14は、太陽電池アレイ11〜13の挙動を制御する。また、パワーコンディショナ14は、太陽電池アレイ11〜13によって生成された直流電力を交流電力に変換する。例えば、パワーコンディショナ14は、図示しない商用電源や負荷に接続される。このような場合、太陽電池アレイ11〜13で発電された電力は負荷で消費され、或いは、商用電源に売電される。
また、パワーコンディショナ14は、メガソーラーシステム(太陽光発電システム)における発電量を最大化する制御を行う。例えば、パワーコンディショナ14は、太陽電池アレイ11〜13(太陽電池モジュール20)の特性に合わせ、発電できる電力を最大化する最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を行う。MPPT制御では、太陽電池モジュール20の出力を常に最大化できるように、太陽電池モジュール20から最大の電力を引き出せる電圧(最大電力点)を求め、その電圧で太陽電池モジュール20を発電させる。
メガソーラーシステムでは、一般にMPPT制御として山登り法が適用されている。山登り法では、一定の更新間隔で電圧(ストリング電圧)を一定量だけ変化(増加又は減少)させると共に、変化後の電力を求める。そして、変化後の電力と、電圧を変化させる前の電力とを比較し、電力が大きい電圧を選択する。このようなMPPT制御(山登り法)により、メガソーラーシステムでは、気象条件等の変化で常に変動する最大電力点に追従しながら最大の発電量を確保することができる。
ストリング電気特性測定装置(以下、適宜「測定装置」という)15は、メガソーラーシステムの太陽電池アレイ11〜13におけるストリング単位での電気特性を測定する。ここで言う電気特性とは、ストリング単位での発電電圧や発電電流である。すなわち、測定装置15は、特許請求の範囲における測定手段の一例として機能するものであり、太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流を測定する。より具体的には、後述する診断装置17の入射光調整部171による入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化を測定する。なお、測定装置15は、ストリング監視ユニットと呼ばれることもある。
ストリング電気特性受信サーバ(以下、適宜「受信サーバ」という)16は、測定装置15に接続される。受信サーバ16は、測定装置15で測定されたストリング単位での電気特性データを保存する。例えば、受信サーバ16は、ストリング単位の電流値や電圧値を、データとして保存する。また、上記以外のデータとして、受信サーバ16は、後述する診断装置17の判定部173による太陽電池モジュール20の判定結果(正常/異常の判定結果)を保存する。受信サーバ16は、これらのストリング単位の電流や電圧の測定値等のデータを、一定期間(例えば、1か月)保存することができる。
診断装置17は、例えば、入射光調整部(調整部)171、記憶部172、判定部173、表示部174及び通信部175を含んで構成される。入射光調整部171は、特許請求の範囲における入射光調整手段の一部として機能するものであり、後述する遮蔽機構40を制御することで、太陽電池モジュール20に対する入射光を、太陽電池モジュール20に含まれるサブストリング203単位で調整する。なお、この遮蔽機構40の詳細な構成については、後述する。
記憶部172は、太陽電池モジュール20の正常/異常の判定に必要となる各種の情報を記憶する。例えば、記憶部172は、標準ストリング電流変化特性データ及び標準電力量データを記憶する。標準ストリング電流変化特性データは、測定部15で測定されたストリング電流の変化データと比較されるものである。例えば、標準ストリング電流変化特性データには、太陽電池モジュール20が正常な状態において、想定される日射量毎に特定のサブストリング203を遮蔽し、その遮蔽を解除した場合のストリング電流の変化データが設定される。また、標準電力量データは、測定部15で測定されたストリング電流とストリング電圧に基づいて算出される電力量と比較されるものである。例えば、標準電力量データは、太陽電池モジュール20が正常な状態において、想定される日射量毎にサブストリング203を遮蔽し、その遮蔽を解除した場合のストリング電流およびストリング電圧に対応する電力量データが設定される。
また、記憶部172は、これらの標準ストリング電流変化特性データ及び標準電力量データとの比較により、太陽電池モジュール20が正常(異常)であるかを判定するための複数の閾値を記憶する。これらの閾値には、想定される日射量毎に異なる閾値が設定される。さらに、記憶部172は、判定部173による太陽電池モジュール20の判定結果を記憶する。
判定部173は、特許請求の範囲における判定手段の一例として機能するものであり、測定装置15によるストリング電流の測定結果に基づいて太陽電池モジュール20の正常/異常を判定する。例えば、判定部173は、測定装置15で測定されたストリング電流の変化データと、記憶部172内の標準ストリング電流変化特性データとの比較結果に基づいて太陽電池モジュール20の正常/異常を判定する。より具体的には、判定部173は、両者の比較結果が記憶部172内の閾値を上回るか否かによって太陽電池モジュール20の正常/異常を判定する。
また、判定部173は、測定装置15で測定されたストリング電流とストリング電圧に基づいて算出される電力量と、記憶部172内の標準電力量データとの比較結果に基づいて太陽電池モジュール20の正常/異常を判定する。より具体的には、判定部173は、両者の比較結果が記憶部172内の閾値を上回るか否かによって太陽電池モジュール20の正常/異常を判定する。なお、判定部173は、太陽電池モジュール20の正常/異常を示す画像データ(モジュール状態診断画像データ)を生成することができる。
表示部174は、液晶ディスプレイなどの出力手段で構成され、判定部173による判定結果を表示する。例えば、表示部174は、判定部173により生成されたモジュール状態診断画像データを表示する。このモジュール状態診断画像データには、太陽電池アレイ11〜13における正常/異常と判定された太陽電池モジュール20の位置を特定する情報が含まれることが好ましい。例えば、太陽電池アレイ11〜13に含まれる全ての太陽電池モジュール20の位置を示すと共に、正常又は異常と判定された太陽電池モジュール20をそれぞれ異なる色で表示することは実施の形態として好ましい。
通信部175は、有線又は無線により接続された監視装置18との間で通信を行う。例えば、通信部175は、判定部173による判定結果(太陽電池モジュール20の正常/異常の診断結果)を監視装置18に送信する。監視装置18では、通信部175から受け取った判定結果を管理する。例えば、監視装置18は、この判定結果を太陽電池モジュール20又は太陽電池アレイ11〜13の経年劣化の診断に利用する。
ここで、このような診断システム10で利用される遮蔽機構の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る診断システム10で利用される遮蔽機構の説明図である。図3においては、太陽電池アレイ11を斜め前方側から見た場合について示している。なお、太陽電池アレイ12、13における遮蔽機構の構成については、太陽電池アレイ11における遮蔽機構と共通するため、その説明を省略する。
図3に示すように、太陽電池アレイ11は、例えば、水平面から10〜20度傾斜した状態の架台30の上面に設置される。この場合において、太陽電池アレイ11を構成する太陽電池モジュール20は、日光の差し込む方向に受光部(モジュール表面)を向けて架台30に設置されている。
遮蔽機構40は、太陽電池モジュール20の受光部に対向して配置される。遮蔽機構40は、特許請求の範囲における入射光調整手段の一部として機能するものであり、太陽電池モジュール20の受光部に対する太陽光(自然光)を遮蔽(遮光)する役割を果たす。例えば、遮蔽機構40は、架台30の外側に配置されたガイド枠50に支持された状態で配置される。ガイド枠50は、架台30の一部(図3においては、架台30に配置された一列の太陽電池モジュール20a、20b、20c)に対応する位置に設置されている。ガイド枠50は、特許請求の範囲におけるガイド機構の一例として機能するものであり、遮蔽機構40を太陽電池モジュール20の表面に沿って移動可能にガイドする役割を果たす。なお、ガイド枠50は、図示しない移動機構により架台30の表面に沿って移動可能に構成するようにしてもよい。
ガイド枠50は、長手方向に延びる一対の枠体部51と、これらの枠体部51と直交して短手方向に延びる一対の枠体部52と、枠体部51と枠体部52との交差部から下方側に延びる4本の脚部53とを有する。ガイド枠50は、架台30の傾斜に合わせた形状を有しており、枠体部51と枠体部52とを含む平面が、架台30(より具体的には、太陽電池モジュール20が設置される設置面)と平行になるように構成されている。
遮蔽機構40は、遮光性を有するシート41と、シート41の一端に固定される引出軸42と、シート41の他端に固定される巻き取り部43とを含んで構成される。例えば、引出軸42及び巻き取り部43は、ガイド枠50の枠体部52と平行な方向に延びており、互いに略同一の長さを有している。また、引出軸42及び巻き取り部43の寸法は、ガイド枠50の一対の枠体部51間の長さより僅かに長く構成されている。このため、引出軸42及び巻き取り部43の両端部は、枠体部51の上面で支持される。例えば、遮蔽機構40は、図示しない駆動機構により、枠体部51上をガイド枠50の長手方向に駆動され、所望位置で停止される。診断装置17の入射光調整部171は、この駆動機構を制御することにより、ガイド枠50における遮蔽機構40の位置を変更することができる。
遮蔽機構40は、巻き取り部43でシート41を全て巻き取った状態から、太陽電池モジュール20の単一のサブストリング203に対応する領域を遮蔽する長さまでシート41を引き出し可能に構成されている。例えば、引出軸42は、図示しない駆動機構により、巻き取り部43に対する位置を変更するように駆動される。これにより、巻き取り部43からシート41が引き出される一方、巻き取り部43にシート41が収納される。診断装置17の入射光調整部171は、この駆動機構を制御することにより、遮蔽機構40による入射光の遮蔽範囲(遮蔽範囲)を調整することができる。
図4は、本実施の形態に係る診断システム10が有する遮蔽機構40による遮光位置を説明するための模式図である。なお、図4では、説明の便宜上、太陽電池アレイ11を構成する9つの太陽電池モジュール20に符号20a〜20iを付している。また、図4では、これらの太陽電池モジュール20a〜20iに対応する3つのガイド枠50a〜50cを示している。さらに、図4では、説明の便宜上、太陽電池モジュール20cにのみ、サブストリング203を示している。
初期状態において、遮蔽機構40は、例えば、ガイド枠50aに示すように、ガイド枠50aの上端部であって、太陽電池モジュール20a〜20cから退避した位置に配置される。この場合、遮蔽機構40は、巻き取り部43によりシート41が巻き取られ、引出軸42が巻き取り部43の近傍に配置された状態となっている。このように太陽電池モジュール20a〜20cから退避しているため、遮蔽機構40により入射光が遮蔽されることはない。
ここで、診断装置17の入射光調整部171から太陽電池モジュール20eの中央のサブストリング203を遮蔽することが指示されたものとする。この場合、図示しない駆動機構により、初期位置から遮蔽機構40が太陽電池モジュール20eの中央のサブストリング203に対応する位置まで駆動される。そして、図示しない駆動機構により巻き取り部43に対する引出軸42の位置が離間され、シート41が引き出される。これにより、ガイド枠50bに示すように、太陽電池モジュール20eの中央のサブストリング203が遮蔽される。
同様に、太陽電池モジュール20iの下方側のサブストリング203の遮蔽が指示されると、図示しない駆動機構により、初期位置から遮蔽機構40が太陽電池モジュール20iの下方側のサブストリング203に対応する位置まで駆動される。そして、図示しない駆動機構により巻き取り部43に対する引出軸42の位置が離間され、シート41が引き出される。これにより、ガイド枠50cに示すように、太陽電池モジュール20iの下方側のサブストリング203が遮蔽される。
このように、本実施の形態に係る診断システム10においては、遮蔽機構40により、太陽電池モジュール20に対する入射光をサブストリング203単位で遮蔽する。これにより、簡単な構成で効果的に太陽電池モジュール20に対する入射光をサブストリング203単位で調整することが可能となる。特に、本実施の形態に係る診断システム10においては、遮蔽機構40を太陽電池モジュール20の表面に沿って移動可能にガイドするガイド枠50を有している。これにより、太陽電池モジュール20の表面に沿って遮蔽機構40をガイドできるので、簡単に遮蔽対象となるサブストリング203を変更することが可能となる。
次に、本実施の形態に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法について説明する。図5及び図6は、本実施の形態に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法について説明するためのフロー図である。なお、図5は、相対的に短い時間間隔(例えば、2週間間隔)での実行に好適な太陽電池モジュール20の診断方法である。一方、図6は、相対的に長い時間間隔(例えば、6カ月間隔)での実行に好適な太陽電池モジュール20の診断方法である。
なお、測定装置15は、太陽電池モジュール20の診断の有無とは関係なく、常に太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流やストリング電圧等の電気特性を測定し、測定したストリング電流やストリング電圧等の電気特性を受信サーバ16に出力している。受信サーバ16は、測定装置15から受け取ったストリング電流を一定期間(例えば、1か月)保存する。このため、受信サーバ16には、太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流やストリング電圧等の電気特性の変化データが保存されていくこととなる。
図5に示すように、太陽電池モジュール20の正常/異常を診断する場合、まず、診断対象となる太陽電池モジュール20のサブストリング203が特定される(ステップ(以下、「ST」という)501)。例えば、サブストリング203を特定する際は、測定装置15によるストリング電流の測定結果と測定状況下の日射量から換算されるストリング電流との乖離から異常ストリングが特定され、診断作業を行う作業者による指示に応じて診断対象となるサブストリングが特定される。ただし、上記に限定されることはなく、診断作業においては、作業者が必要に応じて特定された異常ストリングすべてのサブストリングについて、順次診断しても良い。
太陽電池モジュール20のサブストリング203が特定されると、上述した要領で遮蔽機構40がガイド枠50を移動し、対象となるサブストリング203を遮蔽する。これにより、対象となるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20への入射光が調整される(ST502)。対象となるサブストリング203への入射光が完全に遮蔽された後、判定部173は、入射光調整部171に対して測定開始を指示する(ST503)。測定開始の指示を受けると、入射光調整部171は、遮蔽機構40によるサブストリング203への入射光の遮蔽を解除し、太陽電池モジュール20に対する入射光の調整を終了する。
測定開始を指示した後、判定部173は、予め定めた測定時間の経過を判定する(ST504)。ここで、測定時間は、遮蔽機構40による遮蔽の解除に伴うストリング電流の変化を測定可能な時間であればよい。例えば、測定時間は、5秒程度に設定することができるが、これに限定されない。遮蔽機構40の巻き取り部43によるシート41の巻き取り速度に応じて、測定時間を調整することは実施の形態として好ましい。
特に、本実施の形態に係る診断システム10において、測定時間は、天候の急激な変化を鑑みパワーコンディショナ14によるMPPT制御(山登り法)の電圧更新間隔よりも短い時間または電圧更新間隔と略等しい時間に設定される。一般に、MPPT制御(山登り法)において、電圧(ストリング電圧)の設定には一定の変化率制限がかかっているので、測定時間をMPPT制御(山登り法)の電圧更新間隔よりも短い時間または電圧更新間隔と略等しい時間に設定することにより、MPPT制御で更新される電圧値がストリング電流に与える影響を実質的に無視することができる。
測定装置15においては、この測定時間が経過するまでのタイミングにおいて、太陽電池モジュール20に対する入射光の調整の前後におけるストリング電流やストリング電圧等の電気特性の変化を測定している。測定されたストリング電流やストリング電圧等の電気特性は、受信サーバ16に出力されて保存される。ここで、太陽電池モジュール20に対する入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化について説明する。図7は、本実施の形態に係る診断システム10における太陽電池モジュール20に対する入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化の説明図である。
図7に示すように、判定部173による測定開始が指示される前の状態では、遮蔽機構40により対象となるサブストリング203への入射光が遮蔽されている。このため、このサブストリング203を含む太陽電池モジュール20のストリング電流は、相対的に低い電流値を示している。一方、判定部173から測定開始が指示されると、遮蔽機構40による遮蔽が解除され、対象となるサブストリング203が開放される。このため、このサブストリング203を含む太陽電池モジュール20のストリング電流は、徐々に上昇していく。受信サーバ16には、このような入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化を示すデータ(以下、適宜「ストリング電流変化データ」という)が保存される。
ST504の測定時間が経過すると、判定部173は、受信サーバ16に保存されている、入射光の調整の前後におけるストリング電流変化データを取り込む(ST505)。そして、判定部173は、このストリング電流変化データと、記憶部172に記憶された標準ストリング電流変化データとを比較する(ST506)。この比較処理により、ST504の測定時間における診断対象となる太陽電池モジュール20のストリング電流と、正常な状態の太陽電池モジュール20のストリング電流との変化量の相違が明確化される。なお、この比較処理で利用される標準ストリング電流変化データは、図示しない日射量計で計測される日射量に基づいて選択される。
次に、判定部173は、ST506の比較結果の値が、記憶部172に記憶された閾値以上であるかを判定する(ST507)。この判定処理により、診断対象とされるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20の正常/異常が特定される。なお、この判定処理で利用される閾値は、標準ストリング電流変化データと同様に、図示しない日射量計で計測される日射量に基づいて選択される。
ST507にて診断対象となる太陽電池モジュール20内のいずれのサブストリング203も閾値以上であると判定した場合、判定部173は、診断対象とされるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20が正常(異常なし)と判定する(ST508)。そして、判定部173は、表示部174に対して判定結果の出力を指示する。これに応じて、表示部174は、判定結果を出力する(ST509)。その後、判定部173は、通信部175に対して、監視装置18に対する判定結果の送信を指示する。これに応じて、通信部175は、判定結果を監視装置18に送信する(ST510)。
一方、ST507にて閾値以上でないと判定した場合、判定部173は、診断対象とされるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20が異常であると判定する。この場合、判定部173は、異常ありと診断された場合の統計を取るために、今回の診断における測定時間及び判定結果を受信サーバ16に保存する(ST511、ST512)。その後、太陽電池モジュール20を正常と判定した場合と同様に、判定部173は、表示部174に判定結果を出力させると共に(ST509)、通信部175から判定結果を監視装置18に送信する(ST510)。
ここで、診断システム10におけるストリング電流変化データの比較処理について説明する。図8は、本実施の形態に係る診断システム10におけるストリング電流変化データの比較処理の説明図である。図8Aでは、診断装置17の記憶部172に記憶された標準ストリング電流変化データの一例を示している。仮に、ST505にて図7に示すストリング電流変化データが取り込まれた場合、このストリング電流変化データは、図8Aに示す標準ストリング電流変化データと略同一の変化を示すこととなる。この場合、ST507においては、閾値以上であると判定され、太陽電池モジュール20が正常であると判定される(ST508)。
一方、仮に、ST505にて図8Bに示すストリング電流変化データが取り込まれた場合、このストリング電流変化データは、図8Aに示す標準ストリング電流変化データと比べて、遮蔽機構40の開放後の電流値が低い。この場合、ST507においては、閾値より小さいと判定され、太陽電池モジュール20が異常であると判定される。このように診断対象となる太陽電池モジュール20の正常/異常を判定した後、判定結果を表示部174に出力すると共に、監視装置18に送信し、一連の処理が終了する。そして、新たな診断対象となる太陽電池モジュール20のサブストリング203が特定されると(ST501)、再び診断処理が開始される。
このように図5に示す診断方法においては、サブストリング203単位での入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化が測定され、その測定結果に基づいて太陽電池モジュール20の異常が判定される。このため、サブストリング203単位で太陽電池モジュール20の異常を判定でき、セル単位で太陽電池モジュール20の異常を判定する場合と比べて診断作業に要する労力及びコストを低減することができる。
また、サブストリング203単位での入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化を測定することから、バイパスダイオード202を外すことなく、実際の利用環境にて部分的な不具合を有する太陽電池モジュール20を検出することができる。この結果、作業に要する労力及びコストの増大を抑制しつつ、部分的に不具合を有する太陽電池モジュール20を容易に検出することが可能となる。
特に、図5に示す診断方法においては、ストリング電流の変化の測定結果、言い換えると、ストリング電流における動的な特性に応じて太陽電池モジュール20の異常を判定する。このため、バイパスダイオード202を外した状態で太陽電池モジュール20のI−V特性(静的な特性)に応じて太陽電池モジュール20の異常を判定する場合と比べて、広範囲かつ効率的に不具合を有する太陽電池モジュール20を検出することが可能となる。
さらに、図5に示す診断方法においては、測定装置15で測定されたストリング電流変化データと、診断装置17の記憶部172に予め保持された標準ストリング電流変化特性データとの比較により太陽電池モジュール20の異常を判定する。これにより、複雑な処理を要することなく部分的に不具合を有する太陽電池モジュール20を容易に検出することが可能となる。
また、図5に示す診断方法において、判定部173は、パワーコンディショナ14によるMPPT制御の電圧更新間隔よりも短い時間または電圧更新間隔と略等しい時間におけるストリング電流の変化の測定結果から太陽電池モジュール20の異常を判定する。これにより、診断対象となる太陽電池モジュール20に対応するストリング電流変化データを判定する際、MPPT制御で時定数をもって更新される電圧値の影響を実質的に無視することができる。このため、調整部171による入射光の調整に伴って変動するストリング電流の変化に応じて精度よく太陽電池モジュール20の異常を判定することが可能となる。
一方、図6に示す診断方法においても、診断対象となる太陽電池モジュール20のサブストリング203の特定から、ストリング電流やストリング電圧等の電気特性データの取り込みまでの処理は、図5に示す診断方法と同様である(ST601〜ST605)。ストリング電流やストリング電圧等の電気特性データを取り込んだ後、判定部173は、このストリング電流やストリング電圧に基づいて太陽電池モジュール20から発生する電力量を算出する(ST606)。例えば、判定部173は、ストリング電流変化データを積分した後、ストリング電圧を乗算することで電力量を算出することができる。
そして、判定部173は、算出した電力量と、記憶部172に記憶された標準電力量データとを比較する(ST607)。この比較処理により、ST604の測定時間における診断対象となる太陽電池モジュール20から発生する電力量と、正常な状態の太陽電池モジュール20から発生する電力量との相違が明確化される。なお、この比較処理で利用される標準電力量データは、図示しない日射量計で計測される日射量に基づいて選択される。
次に、判定部173は、ST607の比較結果の値が、記憶部172に記憶された閾値以上であるかを判定する(ST608)。この判定処理により、診断対象とされるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20の正常/異常が特定される。なお、この判定処理で利用される閾値は、標準電力量データと同様に、図示しない日射量計で計測される日射量に基づいて選択される。
ST608にて閾値以上であると判定した場合、判定部173は、診断対象とされるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20が正常(異常なし)と判定する(ST609)。そして、判定部173は、表示部174に対して判定結果の出力を指示する。これに応じて、表示部174は、判定結果を出力する(ST610)。その後、判定部173は、通信部175に対して、監視装置18に対する判定結果の送信を指示する。これに応じて、通信部175は、判定結果を監視装置18に送信する(ST611)。
一方、ST608にて閾値以上でないと判定した場合、判定部173は、診断対象とされるサブストリング203を含む太陽電池モジュール20が異常であると判定する。この場合、判定部173は、異常ありと診断された場合の統計を取るために、今回の診断における電力量算出値、判定に使用した閾値(判定閾値)及び判定結果を記憶部172に保存する(ST612)。その後、太陽電池モジュール20を正常と判定した場合と同様に、判定部173は、表示部174に判定結果を出力させると共に(ST610)、通信部175から判定結果を監視装置18に送信する(ST611)。
このようにして、図6に示す太陽電池モジュール20の診断方法の一連の処理が終了する。そして、新たな診断対象となる太陽電池モジュール20のサブストリング203が特定されると(ST601)、再び診断処理が開始される。図6に示す診断方法においては、図5に示す診断方法と同様に、作業に要する労力及びコストの増大を抑制しつつ、部分的に不具合を有する太陽電池モジュール20を容易に検出することができる。
特に、図6に示す診断方法においては、太陽電池モジュール20に対する入射光の調整の前後における電力量に応じて、診断対象となる太陽電池モジュール20の正常/異常が診断される。一般に、太陽電池モジュール20の性能の経年劣化は、太陽電池モジュール20の発電出力に表出し易い。図6に示す診断方法によれば、予め保持された標準電力量データとの比較により太陽電池モジュール20の異常が判定されることから、太陽電池モジュール20の性能の経年劣化を加味しながら、部分的に不具合を有する太陽電池モジュール20を高精度に検出することが可能となる。
本実施の形態においては、診断装置17の判定部173が、図5に示す診断方法と、図6に示す診断方法とを異なる時間間隔で実行する。例えば、判定部173は、第1の診断時間間隔(例えば、2週間間隔)で標準ストリング電流変化特性データに基づく判定(図5に示す診断方法)を行い、第2の診断時間間隔(例えば、6カ月間隔)で標準電力量データに基づく判定(図6に示す診断方法)を行う。これにより、標準ストリング電流変化特性データに基づいて突発的に発生した太陽電池モジュール20の部分的な不具合を容易に検出する一方、標準電力量データに基づいて経年劣化等を伴う太陽電池モジュール20の部分的な不具合を高精度に検出することが可能となる。
なお、以上の説明においては、入射光調整部171がガイド枠50上の遮蔽機構40を、図示しない駆動機構により診断対象となる太陽電池モジュール20に移動する場合について説明している。しかしながら、遮蔽機構40の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、診断を行う作業者がガイド枠50上の遮蔽機構40を手動で移動させ、シート41を引き出す構成としてもよい。この場合には、作業者が遮蔽機構40による遮蔽を解除する必要がある。しかしながら、遮蔽機構40を駆動する駆動機構を備える必要がなく、簡単な構成で太陽電池モジュール20に対する入射光をサブストリング203単位で調整すると共に、遮蔽に要するコストを低減することが可能となる。
また、ガイド枠50を省略し、診断対象となる太陽電池モジュール20の受光部(モジュール表面)に直接的に遮蔽機構40を着脱可能に構成してもよい。例えば、遮蔽機構40のシート41の外面(太陽電池モジュール20側の面)に貼付部を設け、この貼付部で太陽電池モジュール20の受光部に貼付するようにしてもよい。この場合には、作業者が遮蔽機構40による遮蔽を解除する必要がある。しかしながら、遮蔽機構40を駆動する駆動機構やガイド枠50を備える必要がなく、簡単な構成で太陽電池モジュール20に対する入射光をサブストリング203単位で調整すると共に、遮蔽に要するコストを低減することが可能となる。
さらに、以上の説明においては、診断対象となる太陽電池モジュール20に対する入射光を調整する構成として、遮蔽機構40を備える場合について説明している。しかしながら、太陽電池モジュール20に対する入射光を調整する構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、遮蔽機構40の代わりに太陽電池モジュール20の一部に検査光を照射できる照射機構を備えるようにしてもよい。
図9は、本実施の形態の変形例に係る診断システム10で利用される照射機構の説明図である。なお、図9においては、太陽電池アレイ11を側方側から見た場合について示している。なお、図9において、図3と共通の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示すように、照射機構60は、架台30の下端部側(図9に示す右端部側)であって、架台30から一定距離だけ離間した位置に配置される。例えば、照射機構60は、検査光照射部61と、検査光照射部61を支持する支柱部62と、検査光照射部61及び支柱部62を移動する移動部63とを含んで構成される。検査光照射部61は、例えば、LED光を照射可能なLED照射装置や、キセノン光を照射可能なキセノン光フラッシュ装置で構成される。
検査光照射部61は、太陽電池モジュール20の一定領域に限定して検査光を照射する。より具体的にいうと、検査光照射部61は、単一の太陽電池モジュール20に含まれる特定のサブストリング203に対応する領域に検査光を照射する。図9では、架台30上の太陽電池モジュール20bの中央に配置されたサブストリング203に検査光を照射した状態について示している。
また、検査光照射部61は、支柱部62の上端部に対して図9に示す矢印A、B方向に揺動可能に支持されている。支柱部62に対する検査光照射部61の角度を調整することにより、架台30上に配置される太陽電池モジュール20a〜20cの任意のサブストリング203に検査光を照射することができる。
移動部63は、例えば、駆動モータと、前後方向(図9における紙面奥行き方向)に照射機構60を移動可能な車輪とを有する。移動部63を駆動させることにより、照射機構60は、架台30の下縁部に沿って往復移動することができる。上述した支柱部62に対する角度調整及び移動部63による位置調整により、照射機構60は、検査光照射部61で架台30上の太陽電池モジュール20の任意のサブストリング203に検査光を照射することができる。
なお、支柱部62は、鉛直方向に伸縮可能な構成としてもよい。例えば、検査光照射部61による検査光の照射領域に応じて、支柱部62の鉛直方向の長さを変更することは実施の形態として好ましい。
図10は、本実施の形態の変形例に係る診断システム10が有する照射機構60による照射位置を説明するための模式図である。なお、図10では、説明の便宜上、太陽電池アレイ11を構成する9つの太陽電池モジュール20に符号20a〜20iを付している。また、図10では、説明の便宜上、太陽電池モジュール20cにのみ、サブストリング203を示している。さらに、図10では、説明の便宜上、照射機構60による照射位置にハッチングを付与している。
初期状態において、照射機構60は、検査光を照射していない。ここで、診断装置17の入射光調整部171から太陽電池モジュール20aの下方側のサブストリング203に対する検査光の照射が指示されたものとする。この場合、移動部63によって照射機構60が太陽電池モジュール20aに対応する位置に移動される。そして、支柱部62に対する検査光照射部61の角度が調整された後、検査光が照射される。これにより、太陽電池モジュール20aの下方側のサブストリング203に検査光が照射される。
同様に、太陽電池モジュール20eの中央のサブストリング203に対する検査光の照射が指示されると、移動部63によって照射機構60が太陽電池モジュール20eに対応する位置に移動される。そして、支柱部62に対する検査光照射部61の角度が調整された後、検査光が照射される。これにより、太陽電池モジュール20eの中央のサブストリング203に検査光が照射される。
このように、本実施の形態の変形例に係る診断システム10においては、照射機構60により、太陽電池モジュール20に含まれるサブストリング203単位で検査光を照射する。これにより、例えば、自然光が不足するような環境下においても、効果的に太陽電池モジュール20に対する検査光をサブストリング203単位で調整することが可能となる。
ここで、変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法について、図5及び図6を参照しながら説明する。変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法は、基本的に図5及び図6で示した診断方法と同一である。なお、変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法を実行する場合、診断装置17の記憶部172には、照射機構60からの検査光に対応する標準ストリング電流変化データ、標準電力量データ及び閾値が記憶されている。
図5に示すように、変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法においては、太陽電池モジュール20のサブストリング203が特定されると(ST501)、照射機構60が上述した要領で移動してサブストリングに検査光を照射することで入射光が調整される(ST502)。なお、照射機構60による検査光の照射は、後述する測定時間を考慮して決定される。検査光照射部61がLED照射装置又はキセノン光フラッシュ装置で構成される場合、照射時間は、それぞれ1秒程度又は1ミリ秒程度に設定される。
対象となるサブストリング203に検査光を照射した直後、判定部173は、入射光調整部171に対して測定開始を指示する(ST503)。そして、測定開始を指示した後、判定部173は、予め定めた測定時間の経過を判定する(ST504)。ここで、測定時間は、照射機構60による検査光の照射に伴うストリング電流の変化を測定可能な時間であればよい。検査光照射部61がLED照射装置又はキセノン光フラッシュ装置で構成される場合、測定時間は、それぞれ1秒程度又は1ミリ秒程度に設定することができるが、これに限定されない。
測定装置15においては、この測定時間が経過するまでのタイミングにおいて、太陽電池モジュール20に対する検査光の照射の前後におけるストリング電流の変化を測定している。測定されたストリング電流やストリング電圧等の電気的特性は、受信サーバ16に出力されて保存される。ここで、太陽電池モジュール20に対する検査光の照射の前後におけるストリング電流の変化について説明する。図11及び図12は、本実施の形態の変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20に対する検査光の照射の前後におけるストリング電流の変化の説明図である。図11は、照射機構60の検査光照射部61がLED照射装置で構成された場合のストリング電流の変化を示し、図12は、照射機構60の検査光照射部61がキセノン光フラッシュ装置で構成された場合のストリング電流の変化を示している。
図11及び図12に示すように、判定部173による測定開始が指示される前の状態では、照射機構60が消灯状態であり、対象となるサブストリング203に対して検査光が照射されていない。このため、このサブストリング203を含む太陽電池モジュール20のストリング電流は、相対的に低い電流値を示している。一方、判定部173から測定開始が指示されると、照射機構60が点灯状態に切り替わり、対象となるサブストリング203に対して検査光が照射される。このため、このサブストリング203を含む太陽電池モジュール20のストリング電流は上昇する。受信サーバ16には、このような検査光の照射の前後におけるストリング電流の変化を示すデータ(ストリング電流変化データ)が保存される。
ST505以降の処理については、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。このように図5を適用した変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法においては、太陽電池モジュール20に対する検査光の照射の前後におけるストリング電流の変化量に応じて、診断対象となる太陽電池モジュール20の正常/異常が診断される。
一方、図6に示す診断方法においても、診断対象となる太陽電池モジュール20のサブストリング203の特定から測定時間の経過までの処理は、上述したST501〜ST504と同様である。そして、ST605以降の処理については、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。このように図6を適用した変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法においては、太陽電池モジュール20に対する検査光の照射の前後における電力量に応じて、診断対象となる太陽電池モジュール20の正常/異常が診断される。
このように変形例に係る診断システム10における太陽電池モジュール20の診断方法においても、上記実施の形態と同様に、サブストリング203単位で太陽電池モジュール20の異常を判定でき、セル単位で太陽電池モジュール20の異常を判定する場合と比べて診断作業に要する労力及びコストを低減することができる。また、サブストリング203単位での検査光の調整の前後におけるストリング電流の変化や電力量を測定することから、バイパスダイオードを外すことなく、実際の利用環境にて部分的な不具合を有する太陽電池モジュールを検出することができる。この結果、作業に要する労力及びコストの増大を抑制しつつ、部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを容易に検出することが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
例えば、上記実施の形態においては、診断システム10が、測定装置15及び受信サーバ16を備える場合について説明している。しかしながら、本発明に係る診断システムの構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、これらの測定装置15及び受信サーバ16の機能を診断装置17に備える構成としてもよい。
図13は、本実施の形態の変形例に係る診断システム70の構成を示すブロック図である。図13に示すように、診断システム70においては、測定装置15及び受信サーバ16を備えていない点、並びに、診断装置17がストリング電流測定部(以下、適宜「測定部」という)176及び記憶部177を有する点にて、図1に示す診断システム10と相違する。なお、図13において、図1に示す診断システム10と共通の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
測定部176は、図1に示す測定装置15と同様の機能を有する。測定部176は、メガソーラーシステムにおける発電電流を太陽電池アレイ11〜13におけるストリング単位で測定する。すなわち、測定部176は、特許請求の範囲における測定手段の一例として機能するものであり、太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流を測定する。より具体的には、診断装置17の入射光調整部171による入射光(検査光)の調整の前後におけるストリング電流の変化を測定する。
記憶部177は、図1に示す記憶部172に記憶される情報に加え、図1に示す受信サーバ16に記憶されるデータを保存する。記憶部177は、測定部176で測定されたストリング電流の電流値を含むデータを保存する。例えば、記憶部177は、図1に示す受信サーバ16と同様に、これらのストリング電流の測定値等のデータを、一定期間(例えば、1か月)保存するようにしてもよい。
図13に示す診断システム70においては、診断装置17を太陽電池アレイ11〜13に接続された配線に接続することで、測定部176にて太陽電池アレイ11〜13におけるストリング単位で測定することができる。このため、例えば、作業者がメガソーラーシステムの敷地まで診断装置17を台車等で運搬し、太陽電池アレイ11〜13に対応する配線に接続する態様にて太陽電池モジュール20の異常を診断することができる。したがって、メガソーラーシステムを構成する全ての太陽電池アレイに接続されるような大規模な設備を必要とすることなく、部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを容易に検出することが可能となる。
また、このように作業者が診断装置17を運搬する際、遮蔽機構40や照射機構60を一緒に運搬するようにしてもよい。そして、診断対象となる太陽電池モジュール20に含まれるサブストリング203に対する入射光を遮蔽し、或いは、サブストリング203に検査光を照射するようにしてもよい。この場合には、診断システム70に遮蔽機構40や照射機構60を予め配置しておく必要がなくなる。このため、診断システム70に要するコストを大幅に低減しつつ、部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを検出することが可能となる。
さらに、上記実施の形態においては、測定装置15(測定部176)が太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流を測定する場合について説明している。しかしながら、太陽電池アレイ11〜13におけるストリング電流の測定の方法については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、太陽電池アレイ11〜13に対応する配線にそれぞれ電流を測定するセンサ(電流センサ)を備え、これらの電流センサの測定結果を診断装置17に有線通信又は無線通信にて受け渡すようにしてもよい。
また、最後に本実施形態の特徴を以下に整理する。
これらの太陽電池モジュール診断システムは、太陽電池モジュールに対する入射光を前記太陽電池モジュールに含まれるサブストリング単位で調整する入射光調整手段と、前記入射光調整手段による入射光の調整の前後におけるストリング電流を測定する測定手段と、前記測定手段による測定結果に基づいて前記太陽電池モジュールの異常を判定する判定手段と、を具備することを特徴とする。
上記太陽電池モジュール診断システムによれば、サブストリング単位での入射光の調整の前後におけるストリング電流が測定され、その測定結果に基づいて太陽電池モジュールの異常が判定される。このため、サブストリング単位で太陽電池モジュールの異常を判定でき、セル単位で太陽電池モジュールの異常を判定する場合と比べて診断作業に要する労力及びコストを低減することができる。また、サブストリング単位での入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化を測定することから、バイパスダイオードを外すことなく、実際の利用環境にて部分的な不具合を有する太陽電池モジュールを検出することができる。この結果、作業に要する労力及びコストの増大を抑制しつつ、部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを容易に検出することが可能となる。
例えば、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記判定手段は、予め保持された標準ストリング電流変化特性データとの比較により前記太陽電池モジュールの異常を判定する。この構成によれば、予め保持された標準ストリング電流変化特性データとの比較により太陽電池モジュールの異常が判定されることから、複雑な処理を要することなく部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを容易に検出することが可能となる。
また、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記測定手段は、さらにストリング電圧を測定し、前記判定手段は、前記測定手段によるストリング電流及びストリング電圧の測定結果から電力量を算出し、予め保持された標準電力量データとの比較により前記太陽電池モジュールの異常を判定するようにしてもよい。一般に、太陽電池モジュールの性能の経年劣化は、太陽電池モジュールの発電出力に表出し易い。この構成によれば、予め保持された標準電力量データとの比較により太陽電池モジュールの異常が判定されることから、太陽電池モジュールの性能の経年劣化を加味しながら、部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを高精度に検出することが可能となる。
さらに、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記判定手段は、第1の診断時間間隔で前記標準ストリング電流変化特性データに基づく判定を行い、前記第1の診断時間間隔よりも長い第2の診断時間間隔で前記標準電力量データに基づく判定を行うことが好ましい。この構成によれば、標準ストリング電流変化特性データに基づいて突発的に発生した太陽電池モジュールの部分的な不具合を容易に検出する一方、標準電力量データに基づいて経年劣化等を伴う太陽電池モジュールの部分的な不具合を高精度に検出することが可能となる。
特に、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記判定手段は、前記太陽電池モジュールに接続されるパワーコンディショナによるMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御の電圧更新間隔よりも短い時間または電圧更新間隔と略等しい時間におけるストリング電流の変化の測定結果から前記太陽電池モジュールの異常を判定することが好ましい。この構成によれば、パワーコンディショナによるMPPT制御の電圧更新間隔よりも短い時間または電圧更新間隔と略等しい時間におけるストリング電流の変化の測定結果から太陽電池モジュールの異常が判定されることから、MPPT制御で時定数をもって更新される電圧値の影響を実質的に無視することができる。このため、入射光調整手段による入射光の調整に伴って変動するストリング電流の変化に応じて精度よく太陽電池モジュール20の異常を判定することが可能となる。
例えば、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記入射光調整手段は、前記太陽電池モジュールに対する入射光をサブストリング単位で遮蔽する遮蔽機構を有する。この構成によれば、遮蔽機構によりサブストリング単位で入射光を遮蔽するので、簡単な構成で効果的に太陽電池モジュールに対する入射光をサブストリング単位で調整することが可能となる。
特に、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記入射光調整手段は、前記遮蔽機構を前記太陽電池モジュールの表面に沿って移動可能にガイドするガイド機構を有することが好ましい。この構成によれば、ガイド機構により太陽電池モジュールの表面に沿って遮蔽機構がガイドされるので、簡単に遮蔽対象となるサブストリングを変更することが可能となる。
なお、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記遮蔽機構は、前記太陽電池モジュールの表面上に着脱可能に構成されるようにしてもよい。この構成によれば、太陽電池モジュールの表面上に遮蔽機構を着脱することにより、遮蔽機構を駆動する駆動機構等を必要とすることなく、簡単な構成で太陽電池モジュールに対する入射光をサブストリング単位で調整することが可能となる。
また、上記太陽電池モジュール診断システムにおいて、前記入射光調整手段は、前記太陽電池モジュールに含まれるサブストリング単位で検査光を照射する照射機構を有するようにしてもよい。この構成によれば、照射機構によりサブストリング単位で検査光を照射するので、例えば、自然光が不足するような環境下においても、効果的に太陽電池モジュールに対する入射光をサブストリング単位で調整することが可能となる。
本発明に係る太陽電池モジュール診断方法は、太陽電池モジュールに対する入射光を前記太陽電池モジュールに含まれるサブストリング単位で調整するステップと、前記入射光の調整の前後におけるストリング電流を測定するステップと、前記ストリング電流の変化の測定結果に基づいて前記太陽電池モジュールの異常を判定するステップと、を具備することを特徴とする。
上記太陽電池モジュール診断方法によれば、サブストリング単位での入射光の調整の前後におけるストリング電流が測定され、その測定結果に基づいて太陽電池モジュールの異常が判定される。このため、サブストリング単位で太陽電池モジュールの異常を判定でき、セル単位で太陽電池モジュールの異常を判定する場合と比べて診断作業に要する労力及びコストを低減することができる。また、サブストリング単位での入射光の調整の前後におけるストリング電流の変化を測定することから、バイパスダイオードを外すことなく、実際の利用環境にて部分的な不具合を有する太陽電池モジュールを検出することができる。この結果、作業に要する労力及びコストの増大を抑制しつつ、部分的に不具合を有する太陽電池モジュールを容易に検出することが可能となる。