以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。また、以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。上下方向は鉛直方向であり、スピンチャックに対して基板側が上である。
<実施形態1について>
<1.基板処理装置1の構成>
基板処理装置1の構成について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1〜図3は、実施形態1に係る基板処理装置1の構成を説明するための図である。図1、図2は、基板処理装置1の側面模式図、上面模式図である。図3は、基板処理装置1を斜め上方からみた概略斜視図である。図4は、基板処理装置1が吐出する処理液の液流と、不活性ガスのガス流とが基板Wの周縁部に当たる各位置の位置関係の一例を示す基板Wの上面模式図である。
図1〜図3では、ノズルヘッド48〜50がそれぞれの処理位置に配置された状態で、基板Wがスピンチャック21によって回転軸a1周りに所定の回転方向(矢印AR1の方向)に回転している状態が示されている。また、図2には、待避位置に配置されたノズルヘッド48〜50等が仮想線で示されている。図2、図3では、基板処理装置1の構成要素のうち飛散防止部3等の一部の構成要素の記載は省略されている。
基板Wの表面形状は略円形である。基板Wの基板処理装置1への搬入搬出は、ノズルヘッド48〜50等が待避位置に配置された状態で、ロボット等により行われる。基板処理装置1に搬入された基板Wは、スピンチャック21により着脱自在に保持される。
なお、以下の説明において、「処理液」には、薬液処理に用いられる「薬液」と、薬液をすすぎ流すリンス処理に用いられる「リンス液(「洗浄液」とも称される)」と、が含まれる。
基板処理装置1は、回転保持機構2、飛散防止部3、表面保護部4、処理部5、ノズル移動機構6、加熱機構7および制御部130を備える。これら各部2〜7は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130からの指示に応じて動作する。制御部130としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部130は、例えば、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM、制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク、等を備えている。制御部130においては、プログラムに記述された手順に従って主制御部としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。
<回転保持機構2>
回転保持機構2は、基板Wを、その一方の主面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転可能な機構である。回転保持機構2は、基板Wを、主面の中心c1を通る鉛直な回転軸a1のまわりで回転させる。
回転保持機構2は、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック(「保持部材」)21を備える。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸a1に一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置される。回転軸部22の軸線は、回転軸a1と一致する。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続される。回転駆動部23は、回転軸部22をその軸線まわりに回転駆動する。従って、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸a1周りに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を、回転軸a1を中心に回転させる回転機構231である。回転軸部22および回転駆動部23は、筒状のケーシング24内に収容されている。
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、図示省略の配管、開閉弁を介して図示省略のポンプが接続されている。当該ポンプ、開閉弁は、制御部130に電気的に接続されている。制御部130は、当該ポンプ、開閉弁の動作を制御する。当該ポンプは、制御部130の制御に従って、負圧と正圧とを選択的に供給可能である。基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプが負圧を供給すると、スピンチャック21は、基板Wを下方から吸着保持する。ポンプが正圧を供給すると、基板Wは、スピンチャック21の上面から取り外し可能となる。
この構成において、スピンチャック21が基板Wを吸着保持した状態で、回転駆動部23が回転軸部22を回転すると、スピンチャック21が鉛直方向に沿った軸線周りで回転される。これによって、スピンチャック21上に保持された基板Wが、その面内の中心c1を通る鉛直な回転軸a1を中心に矢印AR1方向に回転される。
なお、スピンチャック21が、その上面の周縁部付近に適当な間隔をおいて設けられた複数個(例えば6個)のチャックピンを備え、当該複数のチャックピンによって基板Wを保持してもよい。この場合のスピンチャック21は、基板Wより若干大きい円板状である。当該複数のチャックピンは、基板Wの主面の中心c1が回転軸a1に一致するとともに、基板Wがスピンチャック21の上面より僅かに高い位置で略水平姿勢となるように基板Wを着脱自在に保持する。各チャックピンの向きは、制御部130と電気的に接続されたモーター等によって、基板Wの周縁に当接して基板Wを保持する向きと、基板Wの周縁から離れて基板Wを開放する向きとに選択的に設定される。
<飛散防止部3>
飛散防止部3は、スピンチャック21とともに回転される基板Wから飛散する処理液等を受け止める。
飛散防止部3は、スプラッシュガード31を備える。スプラッシュガード31は、上端が開放された筒形状の部材であり、回転保持機構2を取り囲むように設けられる。この実施の形態では、スプラッシュガード31は、例えば、底部材311、内部材(「内側ガード」とも、単に「ガード」とも称する)312、および、外部材(「外側ガード」とも称する)313の3個の部材を含んで構成されている。外部材313が設けられていなくてもよいし、逆に、外部材313の外側に、回転保持機構2を取り囲むようにガードがさらに設けられてもよい。
底部材311は、上端が開放された筒形状の部材であり、円環状の底部と、底部の内側縁部から上方に延びる円筒状の内側壁部と、底部の外側縁部から上方に延びる円筒状の外側壁部と、を備える。内側壁部の少なくとも先端付近は、回転保持機構2のケーシング24に設けられた鍔状部材241の内側空間に収容される。
底部には、内側壁部と外側壁部との間の空間と連通する排液溝(図示省略)が形成される。この排液溝は、工場の排液ラインと接続される。また、この排液溝には、溝内を強制的に排気して、内側壁部と外側壁部との間の空間を負圧状態とする排気液機構が接続されている。内側壁部と外側壁部との間の空間は、基板Wの処理に使用された処理液を集めて排液するための空間であり、この空間に集められた処理液は、排液溝から排液される。
内部材312は、上端が開放された筒形状の部材であり、内部材312の上部(「上端側部分」、「上端部分」)は内側上方に向かって延びている。すなわち、当該上部は、回転軸a1に向かって斜め上方に延びている。内部材312の下部には、上部の内周面に沿って下方に延びる筒状の内周壁部と、上部の外周面に沿って下方に延びる筒状の外周壁部とが形成される。底部材311と内部材312とが近接する状態において、底部材311の外側壁部は、内部材312の内周壁部と外周壁部との間に収容される。内部材312の上部が受けた処理液等は、底部材311を介して排出される。
外部材313は、上端が開放された筒形状の部材であり、内部材312の外側に設けられている。外部材313の上部(「上端側部分」、「上端部分」)は内側上方に向かって延びている。すなわち、当該上部は、回転軸a1に向かって斜め上方に延びている。下部は、内部材312の外周壁部に沿って下方に延びている。外部材313の上部が受けた処理液等は、内部材312の外周壁部と外部材313の下部との隙間から排出される。
スプラッシュガード31には、これを昇降移動させるガード駆動機構(「昇降駆動部」)32が配設されている。ガード駆動機構32は、例えば、ステッピングモータにより構成される。この実施の形態では、ガード駆動機構32は、スプラッシュガード31が備える3個の部材311,312,313を、独立して昇降させる。
内部材312、および、外部材313の各々は、ガード駆動機構32の駆動を受けて、各々の上方位置と下方位置との間で移動される。ここで、各部材312,313の上方位置は、当該部材312,313の上端縁部が、スピンチャック21上に保持された基板Wの側方、かつ、上方に配置される位置である。一方、各部材312,313の下方位置は、当該部材312,313の上端縁部が、スピンチャック21の上面よりも下方に配置される位置である。外部材313の上方位置(下方位置)は、内部材312の上方位置(下方位置)よりも若干上方に位置する。内部材312と外部材313とは、互いにぶつからないように同時に、若しくは順次に昇降される。底部材311は、その内側壁部が、ケーシング24に設けられた鍔状部材241の内側空間に収容される位置と、その下方の位置との間でガード駆動機構32によって駆動される。ただし、ガード駆動機構32は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、スプラッシュガード31の位置(具体的には、底部材311、内部材312、および、外部材313各々の位置)は、制御部130によって制御される。
<表面保護部4>
表面保護部4は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面(処理面)の周縁部に当たるように不活性ガスのガス流を吐出するガス吐出機構(「周縁部用ガス吐出機構」とも、「ガス吐出部」とも称される)44Aを備える。「不活性ガス」は、基板Wの材質およびその表面に形成された薄膜との反応性に乏しいガスであり、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどである。ガス吐出機構44Aは、ガス吐出機構441、442を備えて構成されている。ガス吐出機構441、442は、不活性ガスを、例えば、ガス柱状のガス流G1、G2として吐出する。ガス吐出機構442は、ガス吐出機構441が吐出するガス流G1が基板Wの周縁部に当たる位置(「第1位置」)P1よりも基板Wの回転方向の上流側の位置(「第2位置」)P2に当たるように不活性ガスのガス流G2を吐出する。
表面保護部4は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面の中央付近に対して不活性ガスのガス流G3を吐出するガス吐出機構(「中央部用ガス吐出機構」とも、「他のガス吐出部」とも称される)443をさらに備える。表面保護部4は、ガス吐出機構441〜443から基板Wの上面に不活性ガスのガス流G1〜G3を吐出することによって、基板Wの上面の周縁部に規定される環状の処理領域S3(図4)に当たるように吐出された処理液等から基板Wの上面の非処理領域(「デバイス領域」)S4(図4)を保護する。非処理領域S4は、基板Wの上面のうち処理領域S3以外の領域である。
ガス吐出機構44Aは、ノズルヘッド48を備える。ガス吐出機構443は、ノズルヘッド49を備える。ノズルヘッド48、49は、後述するノズル移動機構6が備える長尺のアーム61、62の先端に取り付けられている。アーム61、62は、水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム61、62を移動させることによって、ノズルヘッド48、49をそれぞれの処理位置と退避位置との間で移動させる。
ノズルヘッド48は、ノズル41、42と、これらを保持する保持部材とを備える。保持部材は、例えば、水平面に沿って延在する板状部材と、当該板状部材の一端から上方に突出する突出部材とが接合されて形成されており、L字形の断面形状を有している。当該突出部材の先端は、アーム61の先端に取り付けられており、当該板状部材は、アーム61の基端に対してアーム61の先端よりもアーム61の延在方向にさらに突き出ている。ノズル41、42は、当該板状部材を鉛直方向に貫通した状態で、当該板状部材によって保持されている。ノズル41、42の先端部(下端部)は、当該板状部材の下面から下方に突出し、上端部は上面から上方に突出している。ノズル41、42の上端には、配管471、472の一端が接続されている。配管471、472の他端は、ガス供給源451、452に接続している。配管471の経路途中には、ガス供給源451側から順に流量制御器481、開閉弁461が設けられ、配管472の経路途中には、ガス供給源452側から順に流量制御器482、開閉弁462が設けられている。
ここで、ノズル移動機構6がノズルヘッド48を、その処理位置に配置すると、ノズル41の吐出口は、回転保持機構2が回転させる基板Wの周縁部の回転軌跡の一部に対向し、ノズル42の吐出口は、当該回転軌跡の他の一部に対向する。
ノズルヘッド48が処理位置に配置されている状態において、ノズル41、42は、ガス供給源451、452から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル41は、供給された不活性ガスのガス流G1を基板Wの周縁部の回転軌跡に規定される位置P1に当たるように上方から吐出する。ノズル41は、吐出したガス流G1が位置P1に達した後、位置P1から基板Wの周縁に向かって流れるように、ガス流G1を吐出口から定められた方向に吐出する。ノズル42は、供給された不活性ガスのガス流G2が当該回転軌跡上に規定される位置P2(「第2位置」)(図4)に当たるように、ガス流G2を上方から吐出する。ノズル42は、吐出したガス流G2が位置P2に達した後、位置P2から基板Wの周縁に向かって流れるように、ガス流G2を吐出口から定められた方向に吐出する。
基板Wの半径は、例えば、150mmである。基板Wの「周縁部」は、例えば、基板Wの周縁から幅D2の環状部分である。周縁部の幅D2は、例えば、3mm〜30mmである。処理領域S3は、基板Wの周縁から幅D3の環状部分である。処理領域S3の幅D3は、例えば、1mm〜5mmである。処理領域S3は、基板Wの上面周縁部のうちの端縁側の一部の領域である。
後述する処理部5のノズルヘッド50から吐出される処理液の液流L1は、基板Wの上面周縁部の回転軌跡上に規定される位置(「着液位置」)PL(図4)に当たる。液流L1の基板Wの径方向の幅D1は、例えば、0.5mm〜2.5mmである。ノズルヘッド50は、複数のノズル51a〜51dのそれぞれから選択的に処理液の液流L1を吐出することができる。位置PLは、ノズル51a〜51dの配置および処理液の吐出方向に応じて、若干変動する。位置P1は、ノズル51a〜51dの何れに対応する位置PLに対しても、基板Wの周方向に沿って基板Wの回転方向の上流側に位置する。また、位置P2は、位置P1よりも基板Wの周方向に沿って、基板Wの回転方向の上流側に位置する。
すなわち、ガス吐出機構44Aは、基板Wの周縁部の回転軌跡のうち処理部5から吐出される処理液が当たる位置PLよりも、基板Wの周方向に沿って基板Wの回転方向の上流側の位置P1に向けて上方から不活性ガスのガス流(「第1ガス流」)G1を吐出する。ガス吐出機構44Aは、吐出したガス流G1が位置P1から基板Wの周縁に向かうようにガス流G1を定められた方向に吐出する。また、ガス吐出機構44Aは、当該回転軌跡のうち位置P1よりも基板Wの周方向に沿って基板Wの回転方向の上流側の位置P2に向けて上方から不活性ガスのガス流(「第2ガス流」)G2を吐出する。ガス吐出機構44Aは、吐出したガス流G2が位置P2から基板Wの周縁に向かうようにガス流G2を定められた方向に吐出する。
ガス吐出機構443のノズルヘッド49は、アーム62の先端部の下面に取り付けられた円柱部材93と、円柱部材93の下面に取り付けられた円板状の遮断板90と、円筒状のノズル43とを備えている。円柱部材93の軸線と遮断板90の軸線とは、一致しており、それぞれ鉛直方向に沿う。遮断板90の下面は、水平面に沿う。ノズル43は、その軸線が遮断板90、円柱部材93の軸線と一致するように、円柱部材93、遮断板90を鉛直方向に貫通している。ノズル43の上端部は、さらにアーム62の先端部も貫通して、アーム62の上面に開口する。ノズル43の上側の開口には、配管473の一端が接続されている。配管473の他端は、ガス供給源453に接続している。配管473の経路途中には、ガス供給源453側から順に流量制御器483、開閉弁463が設けられている。ノズル43の下端は、遮断板90の下面に開口している。当該開口は、ノズル43の吐出口である。
ノズル移動機構6がノズルヘッド49をその処理位置に配置すると、ノズル43の吐出口は、基板Wの上面の中心付近に対向する。この状態において、ノズル43は、配管473を介してガス供給源453から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル43は、供給された不活性ガスを基板Wの上面の中心付近に向けて不活性ガスのガス流G3として吐出する。ガス流G3は、基板Wの中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって放射状に広がる。すなわち、ガス吐出機構443は、基板Wの上面の中央部分の上方から不活性ガスを吐出して、当該中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって広がるガス流を生成させる。
流量制御器481〜483は、例えば、それぞれが設けられている配管471〜473に流れるガスの流量を検出する流量計と、弁の開閉量に応じて当該ガスの流量を調節可能な可変バルブとを備えて構成されている。制御部130は、流量制御器481〜483のそれぞれについて、流量計が検出する流量が目標流量になるように、図示省略のバルブ制御機構を介して流量制御器481〜483の可変バルブの開閉量を制御する。制御部130は、予め設定された設定情報に従って所定の範囲内で目標流量を設定することによって、流量制御器481〜483を通過する各ガスの流量を所定の範囲内で自在に制御することができる。また、制御部130は、当該バルブ制御機構を介して開閉弁461〜463を開状態または閉状態に制御する。従って、ノズル41〜43からのガス流G1〜G3の吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。
また、ガス流G1、G2によって残留処理液を飛ばすときの飛ばし易さは、基板Wの表面の膜質によって異なる。疎水性の膜質と親水性の膜質とでは、疎水性の膜質の方が残留処理液を飛ばしにくく、親水性の膜質の方が飛ばしやすい。従って、ガス流G1の吐出態様は、好ましくは基板Wの表面の膜質に応じて設定される。
<処理部5>
処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板Wの上面周縁部における処理領域S3に対する処理を行う。具体的には、処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板Wの処理領域S3に処理液を供給する。
処理部5は、処理液吐出機構83Aを備える。処理液吐出機構83Aは、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面の周縁部(より詳細には、周縁部のうち処理領域S3)の一部に当たるように処理液の液流L1を吐出する。液流L1は、液柱状である。処理液吐出機構83Aは、ノズルヘッド50を備える。ノズルヘッド50は、ノズル移動機構6が備える長尺のアーム63の先端に取り付けられている。アーム63は、水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム63を移動させることによって、ノズルヘッド50をその処理位置と退避位置との間で移動させる。
ノズルヘッド50は、ノズル51a〜51dと、これらを保持する保持部材とを備える。保持部材は、例えば、水平面に沿って延在する板状部材と、当該板状部材の一端から上方に突出する突出部材とが接合されて形成されており、L字形の断面形状を有している。当該突出部材の先端は、アーム63の先端に取り付けられており、当該板状部材は、アーム63の基端に対してアーム63の先端よりもアーム63の延在方向にさらに突き出ている。ノズル51a〜51dは、当該板状部材の先端側から順にアーム63の延在方向に沿って一列に並んで配置されている。ノズル51a〜51d当該板状部材を鉛直方向に貫通した状態で、当該板状部材によって保持されている。ノズル51a〜51dの先端部(下端部)は、当該板状部材の下面から下方に突出しており先端に吐出口を備える。ノズル51a〜51dの基端部(上端部)は、当該板状部材の上面から上方に突出している。
ノズル51a〜51dには、これらに処理液を供給する配管系である処理液供給部83が接続されている。具体的には、ノズル51a〜51dの上端には、処理液供給部83の配管832a〜832dの一端が接続している。ノズル51a〜51dは、処理液供給部83から処理液をそれぞれ供給され、供給された処理液を先端の吐出口からそれぞれ吐出する。処理液吐出機構83Aは、ノズル51a〜51dのうち制御部130に設定された制御情報によって定まる1つのノズルから、制御部130の制御に従って処理液の液流L1を吐出する。図示の例では、ノズル51cから処理液の液流L1が吐出されている。
処理液供給部83は、具体的には、SC−1供給源831a、DHF供給源831b、SC−2供給源831c、リンス液供給源831d、複数の配管832a,832b,832c,832d、および、複数の開閉弁833a,833b,833c,833dを、組み合わせて構成されている。
SC−1供給源831aは、SC−1を供給する供給源である。SC−1供給源831aは、開閉弁833aが介挿された配管832aを介して、ノズル51aに接続されている。したがって、開閉弁833aが開放されると、SC−1供給源831aから供給されるSC−1が、ノズル51aから吐出される。
DHF供給源831bは、DHFを供給する供給源である。DHF供給源831bは、開閉弁833bが介挿された配管832bを介して、ノズル51bに接続されている。したがって、開閉弁833bが開放されると、DHF供給源831bから供給されるDHFが、ノズル51bから吐出される。
SC−2供給源831cは、SC−2を供給する供給源である。SC−2供給源831cは、開閉弁833cが介挿された配管832cを介して、ノズル51cに接続されている。したがって、開閉弁833cが開放されると、SC−2供給源831cから供給されるSC−2が、ノズル51cから吐出される。
リンス液供給源831dは、リンス液を供給する供給源である。ここでは、リンス液供給源831dは、例えば、純水を、リンス液として供給する。リンス液供給源831dは、開閉弁833dが介挿された配管832dを介して、ノズル51dに接続されている。したがって、開閉弁833dが開放されると、リンス液供給源831dから供給されるリンス液が、ノズル51dから吐出される。なお、リンス液として、純水、温水、オゾン水、磁気水、還元水(水素水)、各種の有機溶剤(イオン水、IPA(イソプロピルアルコール)、機能水(CO2水など)、などが用いられてもよい。
処理液供給部83は、SC−1、DHF、SC−2、および、リンス液を選択的に供給する。処理液供給部83から処理液(SC−1、DHF、SC−2、あるいは、リンス液)がノズル51a〜51dのうち対応するノズルに供給されると、回転している基板Wの上面周縁部の処理領域S3に当たるように、当該ノズルは当該処理液の液流L1を吐出する。ただし、処理液供給部83が備える開閉弁833a,833b,833c,833dの各々は、制御部130と電気的に接続されている図示省略のバルブ開閉機構によって、制御部130の制御下で開閉される。つまり、ノズルヘッド50のノズルからの処理液の吐出態様(具体的には、吐出される処理液の種類、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。すなわち、処理液吐出機構83Aは、制御部130の制御によって、回転軸a1を中心に回転している基板Wの上面周縁部の回転軌跡のうち位置PLに当たるように処理液の液流L1を吐出する。
<ノズル移動機構6>
ノズル移動機構6は、ガス吐出機構44A、443および処理液吐出機構83Aのノズルヘッド48〜50をそれぞれの処理位置と退避位置との間で移動させる機構である。
ノズル移動機構6は、水平に延在するアーム61〜63、ノズル基台64〜66、駆動部67〜69を備える。ノズルヘッド48〜50は、アーム61〜63の先端部分に取り付けられている。
アーム61〜63の基端部は、ノズル基台64〜66の上端部分に連結されている。ノズル基台64〜66は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢でケーシング24の周りに分散して配置されている。ノズル基台64〜66は、その軸線に沿って鉛直方向に延在し、軸線周りに回転可能な回転軸をそれぞれ備えている。ノズル基台64〜66の軸線と各回転軸の軸線とは一致する。各回転軸の上端には、ノズル基台64〜66の上端部分がそれぞれ取り付けられている。各回転軸が回転することにより、ノズル基台64〜66の各上端部分は各回転軸の軸線、すなわちノズル基台64〜66の軸線を中心に回転する。ノズル基台64〜66には、それぞれの回転軸を軸線周りに回転させる駆動部67〜69が設けられている。駆動部67〜69は、例えば、ステッピングモータなどをそれぞれ備えて構成される。
駆動部67〜69は、ノズル基台64〜66の回転軸を介してノズル基台64〜66の上端部分をそれぞれ回転させる。各上端部分の回転に伴って、ノズルヘッド48〜50もノズル基台64〜66の軸線周りに回転する。これにより、駆動部67〜69は、ノズルヘッド48〜50をそれぞれの処理位置と、退避位置との間で水平に移動させる。
ノズルヘッド48が処理位置に配置されると、ノズル41の吐出口は、回転保持機構2が回転させる基板Wの周縁部の回転軌跡の一部に対向し、ノズル42の吐出口は、当該回転軌跡の他の一部に対向する。
ノズルヘッド49が処理位置に配置されると、ノズル43は、基板Wの中心c1の上方に位置し、ノズル43の軸線は、スピンチャック21の回転軸a1に一致する。ノズル43の吐出口(下側の開口)は、基板Wの中心部に対向する。また、遮断板90の下面は、基板Wの上面と平行に対向する。遮断板90は、基板Wの上面と非接触状態で近接する。
ノズルヘッド50が処理位置に配置されると、ノズル51a〜51dが処理位置に配置される。より厳密には、例えば、ノズル51a〜51dがアーム63の延在方向に沿って1列に配置されている場合には、ノズル51a〜51dと、円形の基板Wの周縁との各距離は、通常、相互に僅かに異なる。処理領域S3の幅の細い場合でも、ノズル51a〜51dから選択的に吐出される処理液が処理領域S3に当たるように、駆動部69は、ノズル51a〜ノズル51dのうち処理液を吐出するノズルに応じて、ノズルヘッド50の処理位置を制御部130の制御下で調節する。
ノズルヘッド48〜50の各待避位置は、これらが基板Wの搬送経路と干渉せず、かつ、これらが相互に干渉しない各位置である。各退避位置は、例えば、スプラッシュガード31の外側、かつ、上方の位置である。
駆動部67〜69は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。制御部130は、ガス流G1、G2、液流L1が基板Wの周縁部の回転軌跡における位置P1、P2、PLに当たるように、処理位置へのノズルヘッド48、50の配置を予め設定された設定情報に従ってノズル移動機構6に行わせる。位置P1、P2、PLは、当該設定情報を変更することによって調節される。また、制御部130は、ガス流G3が基板Wの中心付近に当たるように、処理位置へのノズルヘッド49の配置を当該設定情報に従ってノズル移動機構6に行わせる。つまり、ノズルヘッド48〜50の位置は、制御部130によって制御される。すなわち、ノズル41〜43、51a〜51dの位置は、制御部130によって制御される。
位置P1、P2、PLの制御に関して、基板Wの中心c1と処理液の着液位置である位置PLとを結ぶ線分と、中心c1とガス流G2が当たる位置P2とを結ぶ線分との双方の線分が挟む中心角θ(図4)は、好ましくは180°以下に設定され、さらに好ましくは90°以下に設定され、さらにより好ましくは45°以下に設定される。これは、中心角θが小さい方が、残留処理液を長く基板Wの処理領域S3の各部に留まらせることができて処理レートを向上させることができるからである。
基板Wの表面周縁部の回転軌跡における位置PLに吐出された処理液の液流L1は、液膜となって処理領域S3に付着した状態で基板Wの周方向に移動する。当該移動の過程で、処理液の液膜が付着している部分と、位置PLとを基板Wの端面(「端縁」)に沿って結ぶ円弧の上に立つ中心角は大きくなる。処理液の液膜には、当該移動の過程で基板Wの回転による遠心力が作用する。このため、当該中心角が90度に達するまでに、処理液の約80%が基板Wの外部に排出される。この割合は、基板Wの回転速度、膜質、吐出される処理液の液量、粘性等によって変動する。
処理領域S3の幅、すなわちエッチング処理等を行いたい幅が1mmであれば、処理液の液流L1は、基板Wの周縁から幅0.5mmの範囲に当たるように吐出されることが好ましい。この場合に、非処理領域S4へ達する液跳ねを抑制しつつ、残留処理液を基板W上から効率良く除くためには、不活性ガスのガス流G1、G2の断面の中心が基板Wの周縁から、例えば、幅4mm〜8mmの範囲に当たるように、ガス流G1、G2を吐出することが好ましい。基板Wの周縁部に付着する残留処理液の液膜の幅は、通常、位置PLに当たる処理液の液流L1の幅よりも広がる。従って、上述のように、基板Wの周縁部に当たる処理液の液流L1の幅よりも、不活性ガスのガス流G1、G2の幅の方が広いことがより好ましい。具体的には、不活性ガスのガス流G1、G2の幅は、液流L1の幅の、例えば、3倍から5倍に設定されることが好ましい。これにより、基板Wの周縁部に付着している残留処理液をガス流G1、G2によって効率良く基板Wの外部に排出できる。
<加熱機構7>
また、基板Wの下面周縁部の下方には、加熱機構7が設けられている。加熱機構7は、環状のヒーター71と、ヒーター71への電力の供給を制御部130の制御に従って行う図示省略の電気回路を備える。
ヒーター71は、基板Wの下面のうちスピンチャック21の上面が当接していない部分と非接触で対向するように、下面周縁部の下方において、スピンチャック21の周りに環状に配設されている。ヒーター71の上面は、基板Wの下面と平行である。ヒーター71は、例えば、ケーシング24から立設された図示省略の保持部材によって保持されている。ヒーター71は、処理液による基板Wの処理レートを向上させるために設けられており、基板Wの周縁部を下面側から加熱する。加熱機構7は、図示省略の移動機構(例えば、モーターなど)を更に備える。当該移動機構は、ヒーター71を上下動させて、処理位置、若しくは処理位置の下方の退避位置にヒーター71を配置する。退避位置は、基板処理装置1への基板Wの搬入搬出時にヒーター71が基板Wの搬送経路と干渉しない位置である。ヒーター71が処理位置に配置された状態でヒーター71に電力が供給され、ヒーター71は発熱して、基板Wの周縁部を加熱する。
ヒーター71に電力を供給する電気回路と、ヒーター71を上下動させる移動機構は、制御部130に電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、ヒーター71による基板Wの加熱態様と、ヒーター71の位置とは、制御部130によって制御される。
<2.ガス流、液流の吐出方向>
図5、図6は、基板処理装置1のノズル41、42、51cが吐出するガス流G1、G2、液流L1の各吐出方向が成す俯角α1、α2、αL、旋回角β1、β2、βLをそれぞれ説明するための側面模式図、上面模式図である。図5、図6では、ノズル41、42、51cを共通のノズルによって表示し、ガス流G1、G2、液流L1を共通の流れによって表示している。「俯角」は、水平面と、ガス流G1(ガス流G2、液流L1)の吐出方向とが成す角度である。俯角は、ガス流等が鉛直方向に沿って下向きに吐出される場合は90度、水平に吐出される場合は0度となる。「旋回角」は、ガス流G1(ガス流G2、液流L1)が基板Wに当たる位置P1(P2、PL)に最も近い基板Wの端面における接線と、ガス流G1(ガス流G2、液流L1)を基板W上に投影したときの吐出方向とが成す角度である。旋回角は、当該投影した吐出方向が接線方向に沿う場合に0°となり、基板Wの径方向に沿う場合には、90°となる。
ガス流G1、G2の俯角α1、α2は、45°〜90°の範囲で設定され、旋回角β1、β2も45°〜90°の範囲で設定される。好ましくは、ガス流G1、G2のそれぞれの俯角α1、α2は、45°に設定され、旋回角β1、β2は、90°に設定される。俯角α1、α2が互いに異なり、旋回角β1、β2が互いに異なってもよい。
液流L1の俯角αLは、30°〜90°の範囲で設定され、旋回角β3は、0°〜45°の範囲で設定される。好ましくは、俯角αL、旋回角βLは、それぞれ、45°に設定される。
図7、図8は、不活性ガスのガス流G1、G2と、処理液の液流L1の吐出態様の一例をそれぞれ示す図である。ノズル41、42、51cとして表示されている円は、基板W上に投影されたノズル41、42、51cの吐出口を表現している。投影された吐出口の形状は、吐出口の形状および向き等によって異なるが、円形として表示している。また、ガス流G1、G2、液流L1が基板Wに当たる領域も、位置P1、P2、PLを囲む各円によって表現している。また、位置P1は、位置PLに対して基板Wの回転方向の上流側に位置し、位置P2は、位置P1に対して基板Wの回転方向の上流側に位置する。
図7に示される例では、ノズル41、42の吐出口は、基板Wの半径方向に沿って並んでいる。ノズル41から吐出されたガス流G1は、位置P1に当り、ノズル42から吐出されたガス流G2は、位置P2に当たっている。このように、ノズル41、42の吐出口の基板Wの径方向における位置が、互いに異なっていてもよい。
図8に示される例では、ガス流G1とガス流G2とが互いに異なる旋回角で吐出されている。ノズル41、42の吐出口は、基板Wの回転方向に沿って互いに異なる位置にある。ノズル42の吐出口は、ノズル41の吐出口に対して基板Wの回転方向の上流側に位置する。図8の例では、具体的には、ガス流G1は、90°の旋回角で吐出されており、ガス流G2は、45°の旋回角で吐出されている。すなわち、ガス流G2の旋回角がガス流G1の旋回角よりも小さい。この場合には、ガス流G2は、基板Wの径に沿って基板Wの外側に向かう速度成分と、基板Wの周方向に沿って回転方向下流側に向かう速度成分との双方の速度成分を有している。このため、例えば、ガス流G1と同様に、90°の旋回角でガス流G2を吐出する場合に比べると、基板Wの回転方向における残留処理液とガス流G2とのそれぞれの速度の差が小さくなる。従って、ガス流G2が残留処理液の液膜に当たるときの液跳ねの発生を抑制しつつ、ガス流G2によって残留処理液を基板Wの外部に排出して、残留処理液の液膜の厚みを小さくできる。
<3.液跳ねの抑制>
基板処理装置1の処理液吐出機構83Aは、回転している基板Wの上面周縁部の回転軌跡における位置PLに処理液の液流L1が当たるように、液流L1を吐出する。吐出された液流L1は、基板Wの上面周縁部(より厳密には処理領域S3)における吐出された箇所に液膜の状態で付着して基板Wの周縁部と一緒に基板Wの周方向に移動する。
このような残留処理液の液膜に対して、上方からガス流を当てて、当たった位置から基板Wの外部に向かうガス流を生じさせると、ガス流が当たった部分の処理液は、基板Wの外側に吹き飛ばされる。これにより、ガス流が当たる部分の液膜の厚みが薄くなる。上述のように、不活性ガスのガス流の幅は、好ましくは、位置PLに吐出される処理液の液流L1の幅よりも広くなるように設定される。この場合には、ガス流G1、ガス流G2の幅は、基板Wの上面周縁部に付着している残留処理液の液膜の幅のよりも広い。このため、残留処理液の液膜のうちガス流が当たる部分に対して基板Wの回転方向における上流側の隣接部分と下流側の隣接部分(単に、「各隣接部分」とも称する)にも、ガス流が当たる部分から処理液が移動し、当該各隣接部分の液膜の膜厚が増加する。このため、ガス流が当たる部分とその各隣接部分とにおいて液膜が波打つ。この場合には、通常、主に、液膜のうち当該各隣接部分から液跳ねが生じて周囲に向けて飛散する。
液膜の表面の単位面積に当たるガス流の運動エネルギーが大きい程、ガス流が当たる部分の液は、より効率良く吹き飛ばされて、液膜の膜厚が減少するとともに、ガス流が当たる部分の各隣接部分の液膜が厚くなる。従って、残留処理液の液膜の厚さが一定の場合は、液膜の単位面積に当たるガス流の運動エネルギーが大きい程、液膜に生ずる波が大きくなり、波から発生する残留処理液の液跳ねの量、速度も大きくなる。
また、回転する基板Wの表面周縁部に形成される液膜の厚さには上限があるため、液膜の単位面積に当たるガス流の運動エネルギーが一定である場合には、通常、液膜の厚さが厚い程、液膜に発生する波が大きくなって、当該波から生ずる液跳ねの量、速度も増加する。
液膜の厚さが薄い場合には、運動エネルギーの大きいガス流、すなわち、強いガス流で瞬間的に液を吹き飛ばしたとしても液跳ねが生じにくい。一方、液膜が厚い場合には、液膜の波打ちによって液跳ねが生じやすいが、運動エネルギーの小さいガス流、すなわち、弱いガス流を当てれば、ガス流が当たる部分と、その各隣接部分とに生ずる波が小さくなるので、液跳ねを抑制しつつ液膜を徐々に減少させることができる。
換言すれば、残留処理液の液跳ねの発生を抑制しつつ、残留処理液を効率良く基板Wの外部に排出するためには、液膜が厚い部分に運動エネルギーの小さいガス流(弱いガス流)を当てるとともに、液膜が薄い部分には、運動エネルギーの大きいガス流(強いガス流)を当てて効率良く処理液を排出する必要がある。なお、残留処理液の液膜の厚さは、基板Wの表面が親水性であるか疎水性であるかによっても変動する。すなわち、基板Wの表面が親水性である場合は、残留処理液が基板Wの表面に沿って広がりやすいので液膜が薄くなる。一方、基板Wの表面が疎水性である場合は、処理液が基板Wの表面から盛り上がって液膜の厚みが厚くなる。
基板処理装置1のガス吐出機構44Aは、残留処理液の液跳ねの発生を抑制しつつ、残留処理液を効率良く基板Wの外部に排出するために、不活性ガスのガス流G1、G2を吐出する。具体的は、ガス流G1が位置PLに対して基板Wの回転方向の上流側の位置P1において残留処理液の液膜に当たるとともに、ガス流G2が位置P1のさらに上流側の位置P2において残留処理液の液膜に当たるように、ガス吐出機構44Aはガス流G1、G2を吐出する。ガス流G1、G2の吐出時の運動エネルギー(より詳細には、吐出口から単位時間に吐出されるガス流の運動エネルギー)は、ノズル41、42の吐出口の断面積と、吐出時の流速の3乗との積に比例する。単位時間に液膜の単位面積に当たるガス流の運動エネルギーも、ガス流の流速の3乗に比例する。吐出機構44Aは、ガス流G2の吐出時の運動エネルギーがガス流G1の吐出時の運動エネルギーよりも小さくなるように、ガス流G1、G2を吐出する。より好ましくは、ガス吐出機構44Aは、ガス流G2のうち吐出口の単位断面積から単位時間に吐出されるガス流の運動エネルギーがガス流G1のうち吐出口の単位断面積から単位時間に吐出されるガス流の運動エネルギーよりも小さくなるように、ガス流G1、G2を吐出する。
基板処理装置1においては、ガス流G1よりも運動エネルギーの小さいガス流G2が、ガス流G1よりも先に、位置P2において残留処理液の液膜に当る。従って、ガス流G2によって液膜に波が生じ、この波から非処理領域S4に到達する液跳ね(より厳密には、非処理領域S4に到達可能な速度を有する液跳ね)が発生することを抑制しつつ、残留処理液の膜厚を減らすことができる。
次に、位置P2の下流側の位置P1において、膜厚の薄くなった処理液の液膜にガス流G1が当たる。ガス流G1は、ガス流G2よりも運動エネルギーが大きいので、より効率良く残留処理液を基板Wの外部に排出できる。また、ガス流G2が当たったときに比べて、処理液の膜厚が薄くなっているのでガス流G1によって液膜に生ずる波も小さくなる。このため、ガス流G1によって、非処理領域S4に到達する液跳ねの発生を抑制しつつ、残留処理液の大部分を基板Wから外部に排出できる。
従って、位置P1の下流側の位置PLに当たるように吐出される新たな処理液が、残留処理液に衝突することを抑制できる。これにより、処理液が基板Wの上面の非処理領域S4に進入することを抑制しつつ基板Wの上面周縁部を処理できる。ガス流G1の運動エネルギー(厳密には、ガス流G1のうちノズル41の単位断面積から単位時間に吐出されるガス流の運動エネルギー)は、好ましくは、ガス流G2の運動エネルギー(厳密には、ガス流G2のうちノズル42の単位断面積から単位時間に吐出されるガス流の運動エネルギー)の、例えば、1.2倍〜8倍に設定される。この場合、ガス流の単位体積当りの運動エネルギーの比は、1.2倍〜4倍となる。
なお、残留処理液があまりにも高速で基板Wの外部に排出されると残留処理液の一部が、スプラッシュガード31によって反射されて基板W側に飛散し、基板Wの上面のうちガス流が吐出されていない部分に到達することがある。従って、スプラッシュガード31から基板W側に反射された残留処理液が基板Wに到達しないようにガス流の運動エネルギーを設定することが好ましい。
ここで、ガス流の流量は、ガス流の断面積と流速との積に比例する。従って、ガス流の流量を増やすことによって、ガス流の運動エネルギーを増やすこともできる。従って、ガス流G2の吐出時の流量が、ガス流G1の吐出時の流量よりも小さくなるように、ガス流G1、G2を吐出してもよい。例えば、ガス流G1の流量は、ガス流G2の流量の1.1倍〜2倍に設定される。
ガス流の流速を遅くしても、また、ガス流の断面積を小さくしても流量を小さくすることができる。流速を遅くすれば、単位時間に残留処理液の液膜の単位面積に当たるガス流の運動エネルギーが小さくなる。従って、ガス流G2の流速をガス流G1の流速よりも遅くすることによって、ガス流G2の流量をガス流G1の流量よりも小さくすることが好ましい。この場合において、ガス流G2の断面積をガス流G1の断面積よりも大きくすることによって、ガス流G1よりも広範囲に弱いガス流G2を吐出することによって、ガス流G2が当たった液膜からの液跳ねを抑制しつつ液膜を減少させてもよい。
また、ガス流の流速が速いほうが、ガス流の運動エネルギーも大きくなる。従って、ガス流G2の吐出時の流速が、ガス流G1の吐出時の流速よりも遅くなるように、ガス流G1、G2を吐出してもよい。例えば、ガス流G1の流速は、ガス流G2の流速の1.1倍〜2倍に設定される。
<4.ガス吐出機構のノズルの他の例>
図9(図11)は、ガス吐出機構44Aが図1のノズル41、42に代えて備えることができるノズルの一例として、ノズル41A、42A(41B、42B)の先端側部分(吐出口を含む部分)を示す斜視図である。図10(図12)は、ノズル41A、42A(41B、42B)が吐出するガス流G1、G2が基板Wの周縁部に当たる位置を模式的に示す図である。
図9に示されるノズル41Aとノズル42Aとは、それぞれ円筒状の外形を備えている。ノズル41Aの吐出口の径は、ノズル42Aの吐出口の径よりも小さく、ノズル41Aの軸と、ノズル42Aと軸とは一致している。すなわち、ノズル41Aの側壁は、ノズル42Aの側壁によって囲まれている。ノズル41A、42Aの各吐出口は、基板Wの上面周縁部に対向している。ノズル41Aは、円柱状のガス流G1を吐出し、ノズル42Aは、ガス流G1の周囲を囲むリング状の断面形状を有する筒状のガス流G2を吐出する。ガス流G2は、ノズル42の軸線から外側に広がりつつ軸線に沿って進む。ガス流G2の吐出時の運動エネルギーは、ガス流G1の吐出時の運動エネルギーよりも小さい。
液流L1が当たる位置PLの上流側の位置P1にノズル41Aが吐出するガス流G1が当り、さらにその上流側の位置P2にノズル42Aが吐出したガス流G2の一部が当たる。ガス流G2の一部は、ガス流G1が当たる位置P1の下流側にも当たっているが、位置P1の上流側の位置P2に当たるガス流G2の一部と、位置P1に当たるガス流G1とによって、基板Wの周縁部の残留処理液を、液跳ねを抑制しつつ減らすことができているので、基板処理装置1の有用性は損なわれない。ノズル41A、42Aを用いれば、位置P1の下流側で再度、ガス流G2の一部が基板Wに当たることによって、残留処理液をさらに減らすことができる。
図11に示されるノズル41B、42Bは、基板Wの周縁に沿う方向に長く、基板Wの径方向の幅が短い円弧状の断面形状を有する筒状のノズルである。ノズル41B、42Bの吐出口は、基板Wの周縁部に対向している。ノズル41B、42Bは、同軸の円弧に沿ってそれぞれの流路の断面が隣接するように、軸方向に延設された隔壁によって分けられている。
ノズル41B、42Bは、基板Wの周縁の形状に沿うような円弧状の断面形状をそれぞれ有するガス流G1、ガス流G2を吐出する。吐出時の運動エネルギーは、ガス流G2がガス流G1よりも小さい。
液流L1が当たる位置PLの上流側の位置P1にノズル41Bが吐出するガス流G1が当り、さらにその上流側の位置P2にノズル42Bが吐出するガス流G2が当たる。運動エネルギーが小さいガス流G2によって、非処理領域S4に到達する残留処理液の液跳ねを抑制しつつ、残留処理液を減らすことができる。そして、ガス流G2によって除去されずに残った残留処理液は、運動エネルギーがガス流G2よりも大きいガス流G1によって大部分基板Wから除去される。また、残留処理液の液膜も薄くなっているので、ガス流G1が当たっても非処理領域S4に達する液跳ねの発生を抑制できる。また、ガス流G1、ガス流G2は、それぞれ基板Wの周方向に長い断面形状で液膜に当たるので、ガス流G1、G2の運動エネルギーは、狭い面積にガス流G1、G2が当たる場合に比べて分散される。さらに、狭い面積にガス流G1、G2が当たる場合に比べて、基板Wの周方向に長い領域にガスが当たるので、各ガス流の単位面積当りの運動エネルギーが減少していても、各ガス流が、より長い時間、残留処理液の液膜に当たるので、残留処理液を十分に除去できる。
<5.基板処理装置の動作>
図13は、基板処理装置1が処理液によって基板を処理する動作の一例を示すフローチャートである。図13を参照しつつ、以下に基板処理装置1の動作を説明する。図13に示される動作の開始に先立って、基板Wは、基板処理装置1に搬入されてスピンチャック21によって保持されている。また、ノズルヘッド48〜50は、ノズル移動機構6によって処理位置に配置されており、スプラッシュガード31は、ガード駆動機構32によって上方位置に配置されている。
図13に示す処理が開始されると、基板処理装置1の回転機構231は、基板Wを保持するスピンチャック21の回転を開始する(ステップS110)。基板Wの回転速度は、例えば、1000回転/分に設定される。
次に、ガス吐出機構44Aが、ノズルヘッド48のノズル41、42から不活性ガスのガス流G1、G2の吐出を開始するとともに、ガス吐出機構443が、ノズルヘッド49のノズル43から不活性ガスのガス流G3の吐出を開始する(ステップS120)。ノズル43は、基板Wの上面の中央部分に上方から不活性ガスを吐出することによって、当該中央部分から基板Wの周縁に向かって広がるガス流G3を生成させる。ノズル43が吐出するガス流G3の吐出時の流量は、ガス流G1、G2の吐出時の流量よりも多い。
ガス吐出機構44A、443が、ガス流G1、G2、G3の吐出を開始した後、加熱機構7は、ヒーター71によって基板Wの周縁部の加熱を開始する。時間の経過によって基板Wの周縁部の温度が上昇して安定した後、処理液吐出機構83Aは、基板Wの上面周縁部(より詳細には、上面周縁部のうち基板Wの端面側の処理領域S3)に当たるように処理液の液流L1を吐出して上面周縁部の処理を行う(ステップS130)。具体的には、処理液吐出機構83Aは、ノズル51a〜51dのうち1つのノズル(図1では、ノズル51c)から制御部130の制御に従って液流L1を吐出する。液流L1は、基板Wの上面周縁部(より詳細には、処理領域S3)の回転軌跡上に規定される位置PLに当たるように吐出される。また、液流L1の断面サイズおよび流量は、液流L1が液膜となって付着するときの当該液膜の幅が処理領域S3に収まるように予め設定されている。液流L1は、位置PLに当たった後、処理領域S3上に液膜を形成する。処理液の液膜は、基板Wの回転に伴って基板Wの周縁部に付着した状態で基板Wの周方向に移動する。
基板Wの処理レートを向上させる観点においては、吐出された処理液が、処理領域S3における吐出された箇所にできるだけ長く留まることが好ましい。回転軌跡における位置PLと基板Wの中心c1とを結ぶ直線と、液流L1を吐出された箇所と中心c1とを結ぶ直線とに挟まれた中心角は、基板Wに回転に伴って徐々に大きくなる。処理領域S3に吐出された処理液のうち、例えば、80%の処理液が、中心角が90°になる角度まで基板Wが回転する間に、基板Wの回転に伴う遠心力などによって基板Wの外部に排出される。排出されずに残った液膜状の処理液は、その後も徐々に基板Wの外部へ排出されながら処理領域S3に付着した状態で基板Wの回転とともに移動し、その過程で基板Wの処理に寄与する。
ステップS120でノズル41(42)から吐出を開始されたガス流G1(G2)は、基板Wの回転軌跡において位置PLよりも基板Wの周方向に沿って基板Wの回転方向の上流側に位置する位置P1(P2)において残留処理液の液膜に当たる。位置P2は、位置P1よりも上流側に位置する。その後、ガス流G1(G2)は、その吐出方向および基板Wの回転に伴う遠心力によって位置P1(P2)から基板Wの周縁に向かう。すなわち、ガス吐出機構44Aは、基板Wの回転軌跡のうち処理液が着液する位置PLよりも基板Wの回転方向の上流側の位置P1に向けて上方から不活性ガスのガス流G1を吐出してガス流G1を位置P1から基板Wの周縁に向かわせる。また、ガス吐出機構44Aは、基板Wの回転軌跡のうち位置P1よりも基板Wの回転方向の上流側の位置P2に向けて上方から不活性ガスのガス流G2を吐出してガス流G2を位置P2から基板Wの周縁に向かわせる。
また、ガス吐出機構443のノズル43が吐出したガス流G3は、ガス流G3の吐出方向および基板Wの回転に伴う遠心力の影響によって基板Wの中央部分から周縁に向かって広がる。すなわち、ガス吐出機構443は、基板Wの上面の中央部分の上方から不活性ガスを吐出して、当該中央部分から基板Wの周縁に向かって広がるガス流G3を生成させる。
基板Wの周縁部における残留処理液の液膜には、先ずガス流G2が当たる。ガス流G2は、ガス流G1よりも吐出時の運動エネルギーが小さいので、非処理領域S4に到達する液跳ねの発生を抑制しつつ処理液を基板の外部に排出することができる。これにより、残留処理液の膜厚は減少する。ガス流G2によって基板Wから排出されずに残った処理液の液膜には、位置P2の下流側の位置P1においてガス流G1が当たる。ガス流G1は、ガス流G2よりも吐出時の運動エネルギーが大きいので、残った処理液の大部分がガス流G1によって基板Wの外部に排出される。また、ガス流G1が当たる前に残留処理液の液膜はガス流G2によって薄くなっている。従って、ガス流G1が残留処理液の液膜に当たっても非処理領域S4に到達する液跳ねの発生を抑制できる。
このように、位置PLにおいて基板Wの処理領域S3に当たるように吐出された処理液の大部分は、基板Wが一回転する間に基板Wの外部に排出される。従って、位置PLに新たに吐出される処理液が残留処理液に当たることによって生ずる液跳ねが抑制される。ガス流G1〜G3の吐出と、液流L1の吐出とが並行して行われている状態で、回転機構231は、制御部130の制御に従って基板Wを繰り返し回転させる。また、ガス流G1〜G3は、例えば、12L/分、4L/分、30L/分〜130L/分の流量でそれぞれ吐出される。
制御部130が、基板Wの処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液吐出機構83Aは、処理液の吐出を停止する。これにより、ステップS130の処理が終了する。
回転機構231は、スピンチャック21の回転を停止させ(ステップS140)、加熱機構7は、ヒーター71による基板Wの周縁部の加熱を停止する。ガス吐出機構44A、443は、ガス流G1〜G3の吐出を停止させる(ステップS150)。これにより、図13に示す動作が終了する。
その後、ノズル移動機構6、ガード駆動機構32は、ノズルヘッド48〜50、スプラッシュガード31を退避位置に移動させる。基板Wがスピンチャック21から取り外されて基板処理装置1から搬出される。
基板処理装置1は、不活性ガスのガス流G3を吐出するノズル43を備えているが、基板処理装置1がノズル43を備えていなくてもよい。その場合には、基板処理装置1が、アーム62、ノズルヘッド49を備えていなくてもよい。
ノズル41、42は、ノズルヘッド48に保持されて、アーム61によって互いに一体的に移動されているが、ノズル41、42が互いに異なるノズルヘッドによって保持されて、互いに異なるアームによって別々に移動される構成が採用されてもよい。
基板処理装置1では、窒素ガスがガス流G1〜G3として吐出されているが、ガス流G1〜G3のうち少なくとも1つのガス流が、他のガス流と種類の異なる不活性ガスであってもよい。
基板処理装置1では、不活性ガスのガス流G1、G2を吐出するノズル41、42と、処理液を吐出する各ノズルとは、互いに異なるノズルヘッド48、50によって保持されているが、ノズル41、ノズル42および処理液を吐出する各ノズルが、同一のノズルヘッドによって保持されて、アーム等によって一体的に移動される構成が採用されてもよい。
ノズル41B、42Bは、隣接しているが、それぞれ別体のノズルである。例えば、基板の周方向に長い長尺の吐出口を有する1つのノズルによって、基板Wの回転方向の上流側の部分からガス流G2を吐出し、下流側の部分からガス流G1を吐出してもよい。このようなノズルは、例えば、流路のうち上流側の部分を流れるガスが受ける抵抗が下流側に比べて大きくなるように、抵抗となる構造を流路の下流側に設けることなどによって実現される。
また、ノズル41、ノズル42の間、若しくはノズル41B、42Bの間に、基板Wの周縁部に当たるように不活性ガスのガス流を吐出する少なくとも1つの他のノズルが設けられてもよい。当該少なくとも1つの他のノズルが吐出するガス流の運動エネルギーは、ノズル42が吐出するガス流G2の運動エネルギーよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。当該少なくとも1つの他のノズルは、基板Wの周縁部に吐出される不活性ガスのガス流の運動エネルギーが、基板Wの回転方向の上流側から下流側にかけて順次に大きくなるように、ガス流を吐出することが好ましい。
以上のように構成された本実施形態1に係る基板処理装置によれば、ガス流G1よりも運動エネルギーが小さいガス流G2が位置P2において基板Wの周縁部における残留処理液の液膜に当る。これにより、非処理領域S4に到達可能な残留処理液の液跳ねの発生を抑制しつつ残留処理液を基板Wの外部に排出して残留処理液の膜厚を減らすことができる。このため、下流側の位置P1において残留処理液の膜厚が減った部分に運動エネルギーが大きいガス流G1を当てることによって、非処理領域S4に到達可能な残留処理液の液跳ねの発生を抑制しつつ残留処理液の大部分を基板Wの外部に排出できる。これにより、さらに下流側の位置PLに吐出される新たな処理液と残留処理液との衝突によって基板Wの非処理領域S4に到達可能な液跳ねが発生することを抑制できる。従って、処理液が基板Wの上面の非処理領域S4に進入することを抑制しつつ基板Wの上面周縁部を処理できる。
また、以上のように構成された本実施形態1に係る基板処理装置によれば、第2ガス流の吐出時の流量が、ガス流G1の吐出時の流量よりも小さい。従って、第2ガス流によって、非処理領域S4に到達可能な液跳ねの発生を抑制しつつ残留処理液を基板Wの外部に排出して残留処理液の膜厚を減らすことができる。
また、以上のように構成された本実施形態1に係る基板処理装置によれば、第2ガス流の吐出時の流速が、ガス流G1の吐出時の流速よりも遅い。従って、第2ガス流によって、非処理領域S4に到達可能な液跳ねの発生を抑制しつつ残留処理液を基板Wの外部に排出して残留処理液の膜厚を減らすことができる。
また、以上のように構成された本実施形態1に係る基板処理装置によれば、ガス吐出機構443が、基板Wの上面の中央部分の上方から不活性ガスを吐出して、中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって広がるガス流を生成させる。ガス吐出機構443が生成させるガス流によって、第2ガス流、ガス流G1、新たな処理液が順次に残留処理液に当たるときに発生する各液跳ねが、非処理領域S4に達することがさらに抑制される。
また、以上のように構成された本実施形態1に係る基板処理装置によれば、ガス吐出機構443が吐出するガス流の吐出時の流量が、ガス流G1の吐出時の流量と第2ガス流の吐出時の流量との何れの流量よりも多い。ガス吐出機構443が生成するガス流が、基板Wの中央部分から周縁部に向けて放射状に広がる場合にも周縁部の各部に多くのガス流を供給できる。
<実施形態2について>
<6.基板処理装置1Aの構成>
基板処理装置1Aの構成について、図14〜図19を参照しながら説明する。図14は、実施形態に係る基板処理装置1Aの構成を説明するための図である。図14は、基板処理装置1Aの側面模式図である。図15は、基板処理装置1Aのガス吐出機構440が備えるノズル40Aを示す斜視図である。図16は、ノズル40Aが吐出するガス流G4が基板に当たる位置を模式的に示す図である。図17は、ノズル40Aを説明するための上面模式図である。図18は、ノズル40Aを説明するための模式的な側面断面図である。図19は、基板処理装置1Aが吐出する処理液の液流と、不活性ガスのガス流とが基板Wの周縁部に当たる各位置の位置関係の一例を示す基板Wの上面模式図である。なお、図18、および後述する図20、図22〜図24、および図26においては、理解容易のために領域Q1が太線で示されている。図19において、位置P1と位置P2がなす頂角θsは、好ましくは、10度〜30度に設定される。
図14では、ノズルヘッド48A、49、50がそれぞれの処理位置に配置された状態で、基板Wがスピンチャック21によって回転軸a1周りに所定の回転方向(矢印AR1の方向)に回転している状態が示されている。
基板処理装置1Aは、基板処理装置1の表面保護部4に代えて表面保護部4Aを備えることを除いて、基板処理装置1と同様に構成され、基板処理装置1と同様の動作を行う。すなわち、基板処理装置1Aは、回転保持機構2、飛散防止部3、表面保護部4A、処理部5、ノズル移動機構6、加熱機構7および制御部130を備える。
より詳細には、基板処理装置1Aは、基板Wを略水平に保持し、回転軸a1を中心に回転可能に設けられたスピンチャック21と、スピンチャック21を回転軸a1を中心に回転させる回転保持機構2を備える。基板処理装置1Aは、回転軸a1を中心に回転している基板Wの上面周縁部の回転軌跡のうち一部の位置(着液位置)PL1に当たるように処理液の液流L1を吐出する処理液吐出機構83Aをさらに備える。
以下では、表面保護部4Aについて説明し、他の構成要素の説明は省略する。表面保護部4Aの説明において、表面保護部4Aの備える構成のうち表面保護部4が備える構成と同様のもの説明は省略する。
<表面保護部4A>
表面保護部4Aは、表面保護部4のガス吐出機構44Aに代えて、ガス吐出機構440を備える。ガス吐出機構440は、スピンチャック21上に保持されて回転している基板Wの上面(処理面)の周縁部に当たるように不活性ガスのガス流を吐出する。ガス吐出機構440は、不活性ガスを、例えば、カーテン状のガス流G4として吐出する。
表面保護部4Aは、表面保護部4と同様に、ガス吐出機構443をさらに備える。ガス吐出機構443は、回転している基板Wの上面の中央付近に対して不活性ガスのガス流G3を吐出する。表面保護部4Aは、ガス吐出機構440、443から基板Wの上面に不活性ガスのガス流G3、G4を吐出することによって、基板Wの上面の周縁部に規定される環状の処理領域S3(図19)に当たるように吐出された処理液等から基板Wの上面の非処理領域(「デバイス領域」)S4(図19)を保護する。非処理領域S4は、基板Wの上面のうち処理領域S3以外の領域である。
ガス吐出機構440は、ノズルヘッド48Aを備える。ノズルヘッド48Aは、ノズル移動機構6が備える長尺のアーム61の先端に取り付けられている。ノズル移動機構6は、アーム61を移動させることによって、ノズルヘッド48Aをその処理位置と退避位置との間で移動させる。
ノズルヘッド48Aは、ノズル40Aと、これを保持する保持部材とを備える。当該保持部材は、表面保護部4のノズルヘッド48の保持部材と同様に構成されている。当該保持部材は、アーム61の先端に取り付けられている。当該保持部材の先端は、アーム61の先端よりもアーム61の延在方向にさらに突き出ている。ノズル40Aは、当該保持部材を鉛直方向に貫通した状態で、当該保持部材によって保持されている。ノズル40Aの先端部(下端部)は、当該保持部材の下面から下方に突出し、上端部は当該保持部材の上面から上方に突出している。ノズル40Aの上端には、配管470の一端が接続されている。配管470の他端は、ガス供給源450に接続している。配管470の経路途中には、ガス供給源450側から順に流量制御器480、開閉弁460が設けられている。ガス供給源450と、配管470と、流量制御器480と、開閉弁460とは、ガス供給部45Aを構成する。ガス供給部45Aは、ノズル40Aに連通し、ノズル40Aに不活性ガスを供給する。
対象領域Q1は、基板Wの上面周縁部の回転軌跡のうち位置P1から基板Wの回転方向の上流側の位置P2にわたる領域である。位置P1は、位置PLよりも当該回転方向の上流側に位置する。ノズル移動機構6がノズルヘッド48Aを、その処理位置に配置すると、ノズル40Aの吐出口は、対象領域Q1に対向する。
ノズルヘッド48Aが処理位置に配置されている状態において、ノズル40Aは、ガス供給源450から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル40Aは、対象領域Q1の各位置のうち位置P1と位置P2とを含む少なくとも2つの位置に向けて上方から不活性ガスのガス流G4を吐出し、吐出したガス流G4を当該少なくとも2つの位置から基板Wの周縁に向かわせる。より詳細には、ノズル40Aは、対象領域Q1の全域に向けて、カーテン状のガス流G4を吐出している。
処理部5のノズルヘッド50から吐出される処理液の液流L1は、基板Wの上面周縁部の回転軌跡上に規定される位置(「着液位置」)PL(図19)に当たる。液流L1の基板Wの径方向の幅D1は、例えば、0.5mm〜2.5mmである。位置P1は、位置PLに対して、基板Wの周方向に沿って基板Wの回転方向の上流側に位置する。また、位置P2は、位置P1よりも基板Wの周方向に沿って、基板Wの回転方向の上流側に位置する。
ノズル40Aは、基板Wの周方向に沿って延在して対象領域Q1に対向する不活性ガスの吐出口403Aと、ガス供給部45Aから供給される不活性ガスを導入する導入口401Aと、流路402Aとを備えている。導入口401Aは、吐出口403Aにおける基板Wの回転方向の下流側の端部に対向して形成されている。
流路402Aは、導入口401Aと吐出口403Aとを接続し、導入口401Aから導入される不活性ガスを吐出口403Aに導く。吐出口403Aは、好ましくは、基板Wの周縁部に沿って湾曲して形成される。吐出口403Aが、湾曲せず、直線状に延在していてもよい。また、ノズル40Aの延在方向における流路402Aの断面の長さは、導入口401Aから吐出口403Aに向けて増加している。これにより、導入口401Aから導入された不活性ガスは、流路402Aに沿って、吐出口403Aの各部分に向けてスムーズに拡散される。
ノズル40Aは、対象領域Q1の各位置に対向する吐出口403Aの各部分から対象領域Q1の当該各位置に向けて不活性ガスを吐出する。対象領域Q1の位置P1に対向する吐出口403Aの第1部分NP1から位置P2に対向する吐出口403Aの第2部分NP2にわたる吐出口403Aの各部分からは、ガス流G4を構成する部分ガス流が吐出される。部分ガス流の吐出時の運動エネルギーは、第2部分NP2から第1部分NP1に向けて増加する。なお、第2部分NP2は、好ましくは、吐出口403Aにおいて基板Wの回転方向の最も上流側の部分とされる。
ノズル40Aの吐出口403Aの延在方向における導入口401Aの長さは、当該延在方向における吐出口403Aの長さよりも短い。導入口401Aから対象領域Q1に対向する吐出口403Aの各部分までの各距離は、対象領域Q1の位置P2に対向する吐出口403Aの第2部分NP2から対象領域Q1の位置P1に対向する第1部分NP1に向けて減少しており、ノズル40Aは、導入口401Aから流路402Aに導入された不活性ガスを導入口401Aから対象領域Q1に対向する吐出口403Aの各部分に向けて流路402A内で拡散させて吐出口403Aから吐出する。これにより、吐出口403Aの各部分からそれぞれ吐出される部分ガス流の流速および流量(運動エネルギー)は、位置P2から位置P1に向けて、すなわち基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて増加する。
従って、ノズル40Aが吐出する不活性ガスのガス流G4のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流GP1と、上流側の位置P2に供給される部分ガス流GP2とについて、部分ガス流GP1の吐出時の運動エネルギーが、部分ガス流GP2の吐出時の運動エネルギーよりも大きい。このため、位置P1における部分ガス流GP1の運動エネルギーが、位置P2における部分ガス流GP2の運動エネルギーよりも大きくなる。
流量制御器480は、例えば、これが設けられている配管470に流れるガスの流量を検出する流量計と、弁の開閉量に応じて当該ガスの流量を調節可能な可変バルブとを備えて構成されている。制御部130は、流量制御器480について、流量計が検出する流量が目標流量になるように、図示省略のバルブ制御機構を介して流量制御器480の可変バルブの開閉量を制御する。制御部130は、予め設定された設定情報に従って所定の範囲内で目標流量を設定することによって、流量制御器480を通過するガスの流量を所定の範囲内で自在に制御することができる。また、制御部130は、当該バルブ制御機構を介して開閉弁460を開状態または閉状態に制御する。従って、ノズル40Aからのガス流G4の吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出流量、等)は、制御部130によって制御される。
また、ガス流G4によって残留処理液を飛ばすときの飛ばし易さは、基板Wの表面の膜質によって異なる。疎水性の膜質と親水性の膜質とでは、疎水性の膜質の方が残留処理液を飛ばしにくく、親水性の膜質の方が飛ばしやすい。従って、ガス流G4の吐出態様は、好ましくは基板Wの表面の膜質に応じて設定される。
図20は、ガス供給部45Aのノズルの他の例としてノズル40Bを説明するための模式的な側面断面図である。ノズル40Bは、導入口401Bと、吐出口403Bと、導入口401Bから吐出口403Bに至る流路402Bを備えている。導入口401Bは、吐出口403Bの延在方向における中央部分に対向して形成されている。また、ノズル40Bの延在方向における流路402Bの断面の長さは、導入口401Bから吐出口403Bに向けて増加している。
ノズル40Bの吐出口403Bの延在方向における導入口401Bの長さは、当該延在方向における吐出口403Bの長さよりも短い。導入口401Bから対象領域Q1に対向する吐出口403Bの各部分までの各距離は、対象領域Q1の位置P2に対向する吐出口403Bの第2部分NP2から対象領域Q1の位置P1に対向する第1部分NP1に向けて減少している。ノズル40Bは、導入口401Bから流路402Bに導入された不活性ガスを導入口401Bから対象領域Q1と、対象領域Q1の下流側の隣接領域とに対向する吐出口403Bの各部分に向けて流路402B内で拡散させて吐出口403Bから吐出する。これにより、吐出口403Bの各部分からそれぞれ吐出される部分ガス流の流速および流量(運動エネルギー)は、位置P2から位置P1に向けて増加する。
従って、ノズル40Bが吐出する不活性ガスのガス流G4のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流GP1と、上流側の位置P2に供給される部分ガス流GP2とについて、部分ガス流GP1の吐出時の運動エネルギーが、部分ガス流GP2の吐出時の運動エネルギーよりも大きい。このため、位置P1における部分ガス流GP1の運動エネルギーが、位置P2における部分ガス流GP2の運動エネルギーよりも大きくなる。
図21は、ガス供給部45Aのノズルの他の例として、ノズル40Cを説明するための上面模式図である。図22は、ノズル40Cを説明するための模式的な側面断面図である。ノズル40Cは、導入口401Cと、吐出口403Cと、導入口401Cから吐出口403Cに至る流路402Cを備えている。
吐出口403Cの延在方向を横切る方向における吐出口403Cの幅は、対象領域Q1の位置P2に対向する吐出口403Cの第2部分NP2から対象領域Q1の位置P1に対向する吐出口403Cの第1部分NP1に向けて増加している。図21の例では、吐出口403Cは、略三角形状に形成されている。
ノズル40Cの流路402Cは、吐出口403Cと略同じ断面形状を有し、ノズル40Cは、導入口401Cから流路402Cに導入された不活性ガスを流路402Cの軸方向に沿って吐出口403Cに向かわせて、吐出口403Cからガス流G4として吐出する。
吐出口403Cの各部分から吐出される部分ガス流の流速はほぼ同じであるが、吐出口403Cの幅は、上流側の位置P2に対向する第2部分NP2から下流側の位置P1に対向する第1部分NP1に向けて増加している。これにより、対象領域Q1に供給されるガス流G4の、対象領域Q1上の各位置における流量(運動エネルギー)は、位置P2から位置P1に向けて増加する。
従って、ノズル40Cが吐出する不活性ガスのガス流G4のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流GP1と、上流側の位置P2に供給される部分ガス流GP2とについて、部分ガス流GP1の吐出時の運動エネルギーが、部分ガス流GP2の吐出時の運動エネルギーよりも大きくなる。このため、位置P1における部分ガス流GP1の運動エネルギーが、位置P2における部分ガス流GP2の運動エネルギーよりも大きくなる。
図23は、ガス供給部45Aのノズル他の例として、ノズル40Dを説明するための模式的な側面断面図である。ノズル40Dは、導入口401D、流路402D、および基板Wの周方向に延在するスリット状の吐出口403Dを備えている。ノズル40Dは、対象領域Q1に向けて不活性ガスのカーテン状のガス流G4を吐出する。
ノズル40Dは、多数の細孔を含むフィルター404を流路402Dにさらに備えている。流路402Dは、不活性ガスを、フィルター404を通して吐出口403Dに導く。フィルター404のうち対象領域Q1に対応する部分におけるポア径は、基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて増加する。図23の例では、フィルター404は、上流側から下流側に配列された4つのフィルター4041〜4044を含んでいる。フィルター4041〜4044のそれぞれのポア径は、フィルター4041、4042、4043、4044の順に増加している。すなわち、図23の例では、フィルター404のうち対象領域Q1に対応する部分におけるポア径は、基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて不連続に増加している。これにより、吐出口403Dの各部分から対象領域Q1にそれぞれ吐出される部分ガス流の流速および流量(運動エネルギー)は、位置P2から位置P1に向けて、すなわち基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて不連続に増加する。
これにより、位置P1に供給されるガス流GD1の運動エネルギー(流速および流量)は、位置P2に供給されるガス流GD2の運動エネルギーよりも大きくなる。また、ガス流GD1の吐出口403Dからの吐出時の運動エネルギーは、ガス流GD2の吐出時の運動エネルギーよりも大きくなる。なお、ガス流GD1は、ノズル40Dが吐出する不活性ガスのガス流G4のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流であり、ガス流GD2は、ノズル40Dが吐出する不活性ガスのガス流G4のうち上流側の位置P2に供給される部分ガス流である。
フィルター404のうち対象領域Q1に対応する部分におけるポア径は、基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて連続的に増加するようにフィルター404が構成されてもよい。
図24は、ガス供給部45Aのノズルの他の例として、ノズル40Eを説明するための側面断面図である。図25は、ノズル40Eが備える板状部材405の上面模式図である。
ノズル40Eは、導入口401E、流路402E、吐出口403Eを備える。ノズル40Eは、流路402Eを閉塞するように設けられた板状部材405をさらに備える。板状部材405には、複数(図24、図25の例では5個)の貫通孔4041〜4045が形成されている。
貫通孔4041〜4045は、板状部材405を、流路402Eの軸方向にそれぞれ貫通している。貫通孔4041〜4045は、吐出口403Eの延在方向に配列されている。ノズル40Eは、板状部材405の複数の貫通孔4041〜4045を通した不活性ガスを吐出口403Eから対象領域Q1に向けて吐出する。複数の貫通孔4041〜4045のそれぞれの面積は、基板Wの回転方向における最も上流側の貫通孔4051から最も下流側の貫通孔4055に向けて増加している。すなわち、複数の貫通孔4041〜4045のそれぞれの面積は、基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて増加している。これにより、吐出口403Eの各部分から対象領域Q1にそれぞれ吐出される部分ガス流の流速および流量(運動エネルギー)は、位置P2から位置P1に向けて、すなわち基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて増加する。
これにより、位置P1に供給されるガス流GE1の運動エネルギー(流速および流量)は、位置P2に供給されるガス流GE2の運動エネルギーよりも大きくなる。また、ガス流GE1の吐出時の運動エネルギーは、ガス流GE2の吐出時の運動エネルギーよりも大きくなる。なお、ガス流GE1は、ノズル40Eが吐出する不活性ガスのガス流のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流であり、ガス流GE2は、ノズル40Fが吐出する不活性ガスのガス流のうち上流側の位置P2に供給される部分ガス流である。
図26は、ガス吐出機構44Aのノズルの更に他の例としてノズル40Fを説明するための側面模式図である。ノズル40Fは、基板Wの周方向に沿って並んで対象領域Q1に対向する不活性ガスの複数(図示の例では、2個)の吐出口403F1、403F2と、ガス供給部45Aから供給される不活性ガスを導入する導入口401Fを備えている。
ノズル40Fは、導入口401Fに連通する本流路4010と、本流路4010からそれぞれ分岐して吐出口403F1、403F2にそれぞれ連通する複数(図示の例では、2個)の枝流路4011、4012をさらに備えている。
ノズル40Fは、吐出口403F1、403F2のうち基板Wの回転方向における最も上流側の吐出口403F2から対象領域Q1の位置P2に向けて不活性ガスが吐出されるとともに、当該回転方向における最も下流側の吐出口403F1から対象領域Q1の位置P1に向けて不活性ガスが吐出されるように、導入口401Fから導入された不活性ガスを吐出口403F1、403F2から吐出する。
複数の吐出口403F1、403F2のそれぞれの面積は、基板Wの回転方向における最も上流側の吐出口403F2から最も下流側の吐出口403F1に向けて増加している。すなわち、複数の吐出口403F1、403F2のそれぞれの面積は、基板Wの回転方向の上流側から下流側に向けて増加している。また、複数の枝流路4011、4012の断面積は、複数の吐出口403F1、403F2のうち各枝流路が対応する吐出口の当該複数の吐出口403F1、403F2の中での面積の増加順に従って増加する。具体的には、枝流路4011は、吐出口403F1に対応し、枝流路4012は、吐出口403F2に対応しており、吐出口の面積は、吐出口403F2、吐出口403F1の順に増加している。従って、複数の枝流路4011、4012の断面積は、枝流路4012、4011の順に増加している。
これにより、位置P1に供給されるガス流GF1の運動エネルギー(流速および流量)は、位置P2に供給されるガス流GF2の運動エネルギーよりも大きくなる。また、ガス流GF1の吐出時の運動エネルギーは、ガス流GF2の吐出時の運動エネルギーよりも大きくなる。なお、ガス流GF1は、ノズル40Fが吐出する不活性ガスのガス流のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流であり、ガス流GF2は、ノズル40Fが吐出する不活性ガスのガス流のうち上流側の位置P2に供給される部分ガス流である。
図27は、ガス吐出機構44Aのノズルの更に他の例としてノズル40Gを説明するための上面模式図である。
ノズル40Gは、ガス供給部45Aから供給された不活性ガスをそのスリット状の吐出口からカーテン上のガス流G5として基板Wの上面周縁部の対象領域Q1に吐出する。ノズル40Gの吐出口と、対象領域Q1との距離は、上流側の位置P2から下流側の位置P1に向けて近くなっている。
これにより、ノズル40Gが吐出する不活性ガスのガス流G5のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される部分ガス流G51と、上流側の位置P2に供給される部分ガス流G52とについて、位置P1における部分ガス流G51の運動エネルギーが、位置P2における部分ガス流G52の運動エネルギーよりも大きくなる。
上記のように構成された本実施形態2に係る基板処理装置によれば、ガス吐出ノズルが吐出する不活性ガスのガス流のうち基板Wの回転方向の下流側の位置P1に供給される第1の部分ガス流と、上流側の位置P2に供給される第2の部分ガス流とについて、位置P1における第1の部分ガス流の運動エネルギーが、位置P2における第2の部分ガス流の運動エネルギーよりも大きい。これにより、上流側の位置P2において運動エネルギーの小さいガス流を残留処理液に当てて液跳ねを抑制しつつ残留処理液の膜厚を減らした後に、下流側の位置P1において残留処理液の膜厚が減った部分に運動エネルギーが大きいガス流を当てることによって、デバイス領域に到達可能な残留処理液の液跳ねの発生を抑制しつつ残留処理液の大部分を基板Wの外部に排出できる。これにより、さらに下流側の着液位置に吐出される新たな処理液と残留処理液との衝突によって基板Wのデバイス領域に到達可能な液跳ねが発生することを抑制できる。従って、処理液が基板W上面のデバイス領域に進入することを抑制しつつ基板Wの上面周縁部を処理できる。
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。