JP6613097B2 - 塩味増強剤及びこれを含有した食品 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた塩味増強効果を奏し、食塩の使用量を減じても、先味のインパクトと後味の持続性を維持でき、且つエグ味のない塩味増強剤及び前記を使用した食品に関する。
食塩は、飲食品の旨味、コクなどとともに食品に不可欠の塩味を付与し、さらに隠し味として微量を添加することで食材の風味を引き立てたるために使用される欠かせない調味料である。また、食塩は、生命の維持に欠かせないナトリウムと塩素からできており、ヒトや動物の健康面においても欠かせない食材である。しかし、その反面で、食塩の摂り過ぎは、高血圧や胃がんなどの様々な生活習慣病の原因になるとされ、近年では、食塩の添加量を制限した減塩食品が注目されている。
飲食品を飲んだり食べたりした際の味わいは先味、中味、後味と時間軸でとらえることができ、単に食塩の使用量を減じただけの飲食品では、塩味が薄くなるばかりでなく、先味のインパクトや後味の持続性が減少して、食品全体の風味が低下し、ぼやけた風味になったり、満足感が低減してしまう。
そのため、減塩によりぼやけた風味となるのを防ぎ、飲食による満足感が低減しないように、先味のインパクトと後味の持続性の両方を維持したまま、エグ味などの異味がなく、食塩の使用量を減じ得ることが肝要である。
従来、飲食品における減塩については、例えば、植物性たん白加水分解物と酵母エキスを混合した減塩飲食品用組成物(特許文献1)が開示されているが、効果が弱かったり、酸味や苦味などの余分な味が付与される等、嗜好性を十分に満足させるには至っていない。また、ステロールまたはステロール脂肪酸エステルと、メイラード反応生成物および含硫化合物類を含む動物エキス及び/又は植物エキスを含有する塩味増強剤(特許文献2)が開示されているが、食塩が持つ先味と持続性に劣るといった問題がある。
特開2011−4668号公報 国際公開第13/103031号
本発明の目的は、減塩による風味の低下を補って、優れた塩味増強効果を奏し、食塩の使用量を減じても、先味のインパクトと後味の持続性を維持でき、且つエグ味のない塩味増強剤及び前記塩味増強剤を含有する食品を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を持つステロール又はステロール脂肪酸エステルとメイラード反応生成物及び含硫化合物類を含む動物エキス及び/又は植物エキス、タンパク質加水分解物、カリウム塩及び特定のスパイスを、特定の乾燥重量比率で組み合わせて使用することで、食塩の使用量を減じても、エグ味を感じることなく、先味のインパクトと後味の持続性を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、下記一般式(1)で示すステロール又はステロール脂肪酸エステルと、メイラード反応生成物及び含硫化合物類を含む動物エキス及び/又は植物エキス(A)、タンパク質加水分解物(B)、カリウム塩(C)及びオールスパイス、メース、コリアンダー、セロリシード、カルダモン、シナモン、タイム及びフェンネルからなる群から選ばれる少なくとも1種のスパイス(D)を含有し、且つ成分(A)/(B)/(C)/(D)の乾燥重量比率が、これら四成分の合計乾燥重量100に対し(9〜55)/(5〜54)/(33〜83)/(0.3〜20)である塩味増強剤に関する。
Figure 0006613097
(但し、式(1)中、Rは水素原子または脂肪酸残基、Rは二重結合を有さない炭化水素基を表す。)
好ましくは、前記ステロールまたはステロール脂肪酸エステルが、β−シトステロール、コレステロールまたはβ−シトステロール脂肪酸エステルである。
好ましくは、前記ステロールまたはステロール脂肪酸エステルが、タマネギ由来である。
好ましくは、前記メイラード反応生成物として、フラン類、アルデヒド類およびピラジン類の少なくとも1つを含有する。
好ましくは、前記含硫化合物類として、チオフェン類およびスルフィド類の少なくとも1つを含有する。
本発明の第二は、前記塩味増強剤を含有する食品に関する。
本発明に従えば、減塩による風味の低下を補って、優れた塩味増強効果を奏し、食塩の使用量を減じても、先味のインパクトと後味の持続性を維持でき、且つエグ味のない塩味増強剤及び前記塩味増強剤を含有する食品を提供することができる。
本発明の(A)成分を製造する際に使用できる加熱装置の1実施形態の概略を示し、(a)は側断面図、(b)は図1(a)におけるI−I線断面図である。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の塩味増強剤は、特定の構造を持つステロール又はステロール脂肪酸エステルと、メイラード反応生成物及び含硫化合物類を含む動物エキス及び/又は植物エキス(A)、タンパク質加水分解物(B)、カリウム塩(C)及び特定のスパイス(D)を含有し、且つそれぞれの成分を特定の重量比であることを特徴とする。
前記動物エキス及び/又は植物エキス(A)中の特定の構造を持つステロール又はステロール脂肪酸エステルは、前記一般式(1)で示すステロールまたはステロール脂肪酸エステルをいい、具体例としては、カンペステロール又はカンペステロール脂肪酸エステル、β−シトステロールまたはβ−シトステロール脂肪酸エステル、コレステロールまたはコレステロール脂肪酸エステル等が挙げられ、β−シトステロール、β−シトステロール脂肪酸エステル、コレステロールまたはコレステロール脂肪酸エステルがより好ましい。
また、前記ステロール又はステロール脂肪酸エステルは、入手のし易さから動物及び/又は植物由来であることが好ましく、その中でもタマネギ由来であることが好ましい。
動物エキス及び/又は植物エキスに含まれる総ステロール量は、当該エキス全体のうち0.0005〜1重量%であることが好ましい。総ステロール量がこの範囲内であると、塩味増強効果をより好適に発揮することができる。
動物エキス及び/又は植物エキスに含まれる総ステロール量を測定する方法を以下に説明する。
<総ステロール量の分析方法>
動物エキス及び/又は植物エキスにエタノールを加え、攪拌する。これに塩酸(5mol/l)を加え、80℃で30分間、酸分解を行なう。これに水酸化カリウムのエタノール溶液(1 mol/l)を加えてけん化した後、水とジエチルエーテルを加えて不けん化物の抽出を行なう。エーテル層を分離し、水洗、脱水ろ過を行なった後、カラムクロマトグラフィーによる精製処理を行なう。水洗、脱水ろ過を行なったエーテル層をシリカカートリッジカラムに通し、ジエチルエーテルおよびヘキサンの混液(15:85)でカラムを洗浄した後、ジエチルエーテルおよびヘキサン混液(35:65)で溶出させる。これに内部標準物質(5α−コレスタン)を添加した後、溶媒を留去する。これをヘキサンに溶解させた後、ガスクロマトグラフ法(水素炎イオン検出器)によりステロール量を測定する。7種類のステロール総量を総ステロール量とする。7種類のステロールはコレステロール、カンペステロール、7−エルゴステノール、β−シトステロール、イソフコステロール、7−スチグマステノール、アベナステロールである。これら7種類のステロールはいずれも、前記一般式(1)で表されるものである。
前記動物エキス及び/又は植物エキス(A)中のメイラード反応生成物は、野菜などを加熱調理したときに生ずる褐変の原因物質でもあるが、本発明においては、塩味増強効果を発揮する重要な成分である。メイラード反応生成物としては、例えば、フラン類、アルデヒド類、ピラジン類などの香気成分が挙げられ、フラン類、アルデヒド類およびピラジン類の少なくとも1つを含有することがより好ましい。
前記フラン類としては、例えばフルフラール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラール、フルフリルアルコールなどが挙げられる。
前記アルデヒド類としては、例えばペンタナール、ヘキサナール、2−メチル−2−ブテナール、2−メチル−2−ペンテナール、ノナナール、メチルチオアセトアルデヒドなどが挙げられる。前記ピラジン類としては、例えばピラジン、メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、エチルピラジンなどが挙げられる。
前記動物エキス及び/又は植物エキス(A)中の含硫化合物類は、塩味増強剤において、前記メイラード反応生成物と共に、塩味増強効果を発揮する重要な成分である。前記含硫化合物類としては、例えば、ジメチルトリスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルメチルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、プロペニルプロピルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、アリルイソプロピルスルフィド、メチルイソプロピルジスルフィド、ジアリルスルフィドなどのスルフィド類;2−アセチルメチルチオフェン、2−メチルチオフェン、3−メチルチオフェン、2,4−ジメチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、2−エチルチオフェン、2−(t−ブチル)−3−メチルチオフェン、2,5−ジエチルチオフェンなどのチオフェン類;3,4−ジメチル−2,5−ジハイドロチオフェン−2−オン、ジハイドロ−3(2H)−チオフェノン、2−[(メチルジチオ)メチル]フラン、ジメチルフルフォキサイド、3,5−ジエチル−1,2,4−トリチオランなどが挙げられ、チオフェン類およびスルフィド類の少なくとも1つを含有することがより好ましい。
<フラン類の含有量>
本発明の動物エキス及び/又は植物エキスにおけるフラン類量は、ガスクロマトグラフにおけるフルフラール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールおよびフルフリルアルコールのピーク面積の合計が、動物エキス及び/又は植物エキス中にデカンを1ppm添加混合したときのデカンのピーク面積に対して2.0倍以上であると好ましい。フルフリルアルコール、5−メチルフルフラール、2−アセチルフラン、フルフラールは、いずれも加熱条件下で糖とアミノ酸がメイラード反応を起こすことによって生成する物質であり、これらの成分が塩味増強効果に寄与していると推定される。
<含硫化合物類の含有量>
含硫化合物類量は、塩味増強効果が強くなることから、主な含硫化合物類として、アリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィドおよびジメチルジスルフィドのピーク面積の合計が、動物エキス及び/又は植物エキス中にデカンを1ppm添加混合したときのデカンのピーク面積に対して2.76倍以上が好ましく、より好ましくは2.91倍以上である。
なお、ここでいうデカンは、本発明の動物エキス及び/又は植物エキス中の風味成分である前記のような各種香気成分を定量的に測定するための内部標準物質として、動物エキス及び/又は植物エキス中に1ppmの濃度で添加するものである。本発明における前記香気成分量は、ガスクロマトグラフのデカンのピーク面積に対して、該当する成分のピーク面積の割合を計算することによって定量化している。ガスクロマトグラフによる分析の具体的な条件は、以下の通りである。
[香気成分量の測定法]
<指標香気成分>
1)フラン類:
フルフラール、
2−アセチルフラン、
5−メチルフルフラール、
フルフリルアルコール
2)含硫化合物類:
アリルメチルジスルフィド、
ジメチルトリスルフィド、
ジメチルジスルフィド
<GC/MS測定方法>
ガスクロマトグラフ装置:Agilent Technologies社製 6890N
分析手法:昇温分析法
カラム:HP−INNOWAX
カラムサイズ:60m×0.25mm
キャリアーガス:ヘリウム
検出器(MS): Agilent Technologies社製 5973inert
ガスクロマトグラフ条件:
イニシャル温度:40℃
イニシャル温度保持時間:2分間
昇温スピード:100℃まで毎分3℃、その後240℃まで毎分5℃
最終温度:240℃
最終温度保持時間:30分間
キャリアーガス:ヘリウム 206kPa
キャリアーガス流量:2.1ml/min
MS(検出器条件):イオン源温度 230℃、四重極温度 150℃
インジェクション条件:
インジェクション装置:GERSTEL社製 「TDS」
Cold trap material:シリカキャピラリー
Sample Tube Material:Tenax TA
TDS条件:
イニシャル温度:20℃
イニシャル温度保持時間:1分間
昇温スピード:毎分60℃
最終温度240℃
最終温度保持時間:5分間
CIS条件:
イニシャル温度:−100℃
インシャル温度保持時間:0.2分
昇温スピード:毎秒12℃
最終温度:240℃
最終温度保持時間:10分間
Tenax TAチューブへのヘッドスペースガス吸着条件
トラップ管:Tenax TA (GERSTEL社製)
サンプル品温:40℃
内部標準物質:デカン1ppm(和光純薬工業株式会社製、「040−21602」)
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:100ml/min
吸着時間:20分
水抜きガス:窒素
水抜きガス流量:150ml/minで5分間、その後100ml/minで10分間
<測定手順>
サンプル(動物エキス及び/又は植物エキス)25gに蒸留水25gを加え、さらにデカンの濃度が1ppmになるように添加し、よく攪拌したものをフラスコに投入して、上述の吸着条件に基づきトラップ管に前記サンプルのヘッドスペースガスの吸着を行う。ヘッドスペースガスを吸着したトラップ管を、インジェクション装置(GERSTEL社製、「TDS」)にセットし、上述のガスクロマトグラフ分析条件に基づきガスクロマトグラフ分析を行う。
<デカン濃度1ppmに調整する方法>
デカン濃度を1ppmにするために、エタノール100mlにデカンを137μl添加した溶液を、サンプル25gに対して25μl添加してよく攪拌する。
前記動物エキス及び/又は植物エキス(A)は、上記のような特定の構造を持つステロール又はステロール脂肪酸エステル、メイラード反応生成物および含硫化合物類をそれぞれ別に調製し、混合して製造してもよいが、生産性などを考慮すると、以下のように、動物及び/又は植物由来原料のすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液またはこれらの液を濃縮したエキスであって、140メッシュ(140mesh;USA)を通過しない固形分を実質的に含まないものを加熱調理して製造することが好ましい。なお、各成分をそれぞれ別に調製し、混合して動物エキス及び/又は植物エキスを製造する場合、動物及び/又は植物由来の原料を搾汁し、及び/又は酵素分解し、篩い分け後、アルコール、水などにより洗浄され、由来の動物及び/又は植物に起因する風味を除去して各成分を用いることが好ましい。
前記動物及び/又は植物由来原料としては、例えば、牛肉、豚肉、および鶏肉等の畜肉、魚介類、乳、卵などの動物由来原料や、タマネギ、ニンニク、ネギ、ニラ、ワケギ、チャイブ、エシャロット、アサツキなどの植物由来原料が例示でき、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、タマネギがより好ましい。その理由は必ずしも明らかではないが、タマネギから得られる植物組織微粉砕物は、植物エキスに含まれるメイラード反応生成物および含硫化合物類の吸着能が高く、かつ食して口中で放出されるまで、前記メイラード反応生成物および含硫化合物類が散逸しにくく、しかも口中では前記メイラード反応生成物および含硫化合物類が放出され易いのではないかと考えられる。
140メッシュ(140mesh;USA)を通過しない動物及び/又は植物由来原料を実質的に含まないようにするためには、動物及び/又は植物のすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液を、濃縮する場合はその前に、濃縮しない場合はそれらを加熱装置の加熱容器内に導入する前に、140メッシュ(140mesh;USA)を通過する固形分を分取すればよい。分取する方法としては、前記のように、篩やフィルタープレス等を用いてろ過すればよい。
前記動物及び/又は植物由来原料のすり潰し液は、生の動物及び/又は植物由来原料を公知の手段ですり潰すことで得ることができる。また、前記すり潰し液では、動物及び/又は植物由来原料を加熱してからすり潰してもよいし、すり潰した液を必要に応じて裏ごししてピュレ状のとろみのある半液体状にしてもよい。
前記動物及び/又は植物由来原料の搾汁液は、原料となる生の動物及び/又は植物由来原料を適当な方法によりカットしたり、すり潰したり、さらには破砕して細かくした後、圧搾または遠心分離することにより得ることができる。前記動物及び/又は植物由来原料の抽出液は、熱水抽出法等の公知の方法で得ることができる。前記動物及び/又は植物由来原料の酵素処理液は、前記すり潰し液、搾汁液、生の動物及び/又は植物由来原料をカットしたり破砕したもの、動物及び/又は植物由来原料の乾燥物を水戻ししたものなどに酵素を作用させて細胞を溶解して得ることができる。また、前記動物及び/又は植物由来原料の搾汁液としては、乾燥した動物及び/又は植物由来原料を水戻しして回収した液を用いても良い。
前記動物及び/又は植物由来原料に含まれるメイラード反応生成物を増加させるために、動物及び/又は植物由来原料、そのすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液またはこれらの液を濃縮したエキスに、糖類を添加してもよい。該糖類としては、グルコース、フルクトース等の単糖類、スクロース、マルトース等の二糖類、オリゴ糖等の三糖類以上が例示できる。特に単糖類、二糖類が好ましい。また、該糖類の添加量は、動物及び/又は植物由来原料、そのすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液またはこれらの液を濃縮したエキス100重量部に対し、30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。動物及び/又は植物由来原料中のアミノ酸含量にもよるが、30重量部以上を添加するとメイラード反応が進みにくい場合がある。
動物及び/又は植物由来原料のすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液などを濃縮する方法は、特に限定されず、常圧下で加熱しながら煮詰めて作製しても良いし、また減圧下で濃縮してもよい。濃縮度については、濃縮後に流動性を保つ範囲内であれば良く、具体的には、水溶性固形分濃度を示すBrixの値で90%以下であれば良い。その後の加熱工程で効率良く風味成分(塩味増強成分)を生成させるためには、Brix値で60〜85%に濃縮するのがより好ましい。Brix値が60%より低いと風味成分が発現しにくい場合があり、また85%より高いとコゲが発生しやすくなる場合がある。
加熱調理は、より強い塩味増強効果をもたらすためには、被加熱処理物である前記動物及び/又は植物由来原料のすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液またはこれらの液を濃縮したエキスであって、140メッシュ(140mesh;USA)を通過しない動物及び/又は植物組織粗粉砕物を実質的に含まないものに対して十分な加熱を行うことと、コゲ臭や苦味を多く発生させないことが好ましいと考えられる。そのためには、動物及び/又は植物由来原料のすり潰し液、搾汁液、抽出液、酵素処理液またはこれらの液を濃縮したエキスを、加熱装置の加熱容器内に導入し、該容器に設けた加熱面に強制的に接触させ、略均一な薄膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って流動させながら、所定の品温に到達するまで加熱することが好ましい。
均一な加熱処理を施す手段としては、前記被加熱処理物を加熱装置の加熱容器内に導入し、該容器に設けた加熱面に強制的に接触させ、略均一な厚さの薄い膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って流動させながら、所定の品温に到達するまで加熱処理できるものであればよい。所定の品温には、なるべく早く到達するほうが、コゲ臭や苦味が少なくなり、塩味増強効果も強くなるので好ましい。
加熱調理温度は、品温が140℃を超え且つ180℃以下に達するまで実施することが好ましく、150〜180℃がより好ましく、さらに好ましくは155℃〜170℃である。加熱調理温度が180℃を超えると、過熱により焦げ付き等が発生し、得られる塩味増強剤の品質は著しく低下する場合がある。また、140℃以下ではメイラード反応の進行が遅いためフルフリルアルコール、5−メチルフルフラール、2−アセチルフラン、フルフラールなどのフラン類の生成量は少なく、目的とする塩味増強剤を得ることができない場合がある。さらには、原料の状態や目的とする塩味増強剤の品質に応じて、上記の加熱温度で一定時間保持することもできる。
上記加熱装置の例を挙げれば、例えば図1に示すような二重筒加熱装置10を用いることができる。この二重筒加熱装置10は、それぞれ加熱用のジャケットを有する内筒12および外筒13の内外二本の円筒から加熱容器11を構成し、内筒12の外壁面12aと外筒13の内壁面13aとの二つの壁面間に、被加熱処理物の流路となる円筒状の間隙14を形成するとともに、間隙14に連通して、被加熱処理物の供給口14aと、加熱容器11内で加熱処理された被加熱処理物の排出口14bとが、それぞれ設けられている。この二重筒加熱装置10では、内筒12と外筒13とを相対的に回転させてもよい。その場合は、内筒12または外筒13の一方のみを回転させて他方は固定しておいても良いし、内筒12、外筒13の両方を互いに反対方向に回転させても良い。
また、加熱については、内筒12、外筒13の両方に加熱ジャケットを設けた両面加熱式でも良いし、いずれか一方のみに加熱ジャケットを設けて片面加熱としても良い。この二重筒加熱装置10では、内筒12および外筒13の内外二本の円筒のいずれか一方のジャケットまたは両方のジャケットに蒸気を導入し、供給口14aから加熱容器11内にポンプなどを用いて被加熱処理物を圧入すると、被加熱処理物は内筒12および/または外筒13からの加熱を受けながら、内筒12と外筒13との間の間隙14内を薄膜状となって排出口14bに向かって流動し、排出される。この時、内外二本の円筒12、13を相対的に回転させると、加熱容器11内に導入された被加熱処理物は、相対的に回転する内筒12と外筒13との間の間隙14内を、内筒12の外壁面12aと外筒13の内壁面13aとの相対的移動方向(回転方向)に対して直交する方向(回転軸方向)に流動し、排出口14bから排出される。
この二重筒加熱装置10では、内筒12の外径寸法と外筒13の内径寸法により間隙14の幅dを調整し、加熱容器11の間隙14内を流動する被加熱処理物の膜厚を調整することができる。また、加熱具合は、内筒12および/または外筒13のジャケットに導入する蒸気圧と、前記膜厚(間隙14の幅d)に加えて、加熱容器11への被加熱処理物の単位時間当たりの圧入量(流量)で調整できる。さらに、複数の二重筒加熱装置10を連設する、または二重筒加熱装置10の排出口14bから排出された被加熱処理物を再度供給口14aに圧入することを繰り返して循環させることにより、被加熱処理物が所定の品温および時間に到達して目的とする加工状態になるまで、加熱処理を繰り返し行うこともできる。
加熱面に沿って薄膜状に流動する被加熱処理物の膜厚は、通常は0.5〜125mmの範囲内となることが好ましい。前記膜厚が、125mmを超えると、薄膜状で流動する被加熱処理物の内部まで均一に加熱ができない場合があり、加熱面から遠いところではメイラード反応が進行しにくいため、フルフリルアルコール、5−メチルフルフラール、2−アセチルフラン、フルフラールなどのフラン類の生成量が少なく、目的とする塩味増強剤を得ることができない場合がある。また、0.5mm未満では過熱により焦げ付き等が発生し、得られる塩味増強剤の品質が著しく低下する場合がある。使用する加熱装置の構造にもよるが、被加熱処理物に対する加熱制御の容易さを考慮すると、前記膜厚は1mm〜30mmがより好ましく、2mm〜15mmとするのがさらに好ましい。
前記タンパク質加水分解物(B)は、タンパク質原料を加水分解して得られるものであれば特に制限はなく、該タンパク質原料も、タンパク質を含む原料であれば特に制限されず、植物性のものであってもよく、動物性のものであってもよい。また、植物性タンパク質を含む原料としては、例えば、大豆、小麦、大麦、トウモロコシ、および米等の穀物、ならびにそれらの加工品が挙げられる。動物性タンパク質を含む原料としては、例えば、牛肉、豚肉、および鶏肉等の畜肉、魚肉、乳、卵、酵母ならびにそれらの加工品が挙げられる。加工品としては、例えば、ゼラチンや乳カゼインが挙げられる。また、鰹節、煮干などの抽出残渣を使用することも出来る。
前記加水分解の手法は特に制限されず、例えば公知の手法を利用できる。 例えば、塩酸等の無機酸を用いてタンパク質原料を加水分解することができる。反応条件は、タンパク質原料の種類や所望の分解率等の諸条件に応じて適宜設定できる。塩酸を用いる場合の反応条件として、具体的には、例えば、100℃で1〜2日間が挙げられる。一般に、植物性タンパク質および動物性タンパク質を無機酸によりほぼ完全に加水分解したものは、それぞれ、Hydrolyzed Vegetable Protein(HVP)およびHydrolyzed Animal Protein(HAP)と呼ばれる。また、例えばプロテアーゼやペプチダーゼ等のタンパク質分解酵素を用いてタンパク質原料を加水分解することもできる。
タンパク質加水分解物としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。タンパク質加水分解物としては、1種のタンパク質加水分解物を用いてもよく、2種またはそれ以上のタンパク質加水分解物を組み合わせて用いてもよい。具体的には、酵母エキス、小麦タンパク分解物、大豆タンパク加水分解物などが例示でき、これらの群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、酵母エキスがより好ましい。
前記カリウム塩(C)は、食用に適したものであれば特に制限はなく、例えば、無機酸塩、有機酸塩、核酸塩、アミノ酸塩の何れであってもよく、カリウムイオン数は1価であっても2価以上であってもよい。但し、カリウム塩(C)は、エグ味が増してしまう。具体的には、塩化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、酢酸カリウム、乳酸カリウム、グルコン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸水素カリウム、コハク酸カリウム、コハク酸水素カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、フマル酸カリウム、フマル酸水素カリウム、グルタミン酸カリウム、アスパラギン酸カリウム、イノシン酸カリウム、グアニル酸カリウム、リジル酸カリウム、シチジル酸カリウム、リボヌクレオチドカリウム、アルギン酸カリウムなどが例示でき、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。その中でも先味のインパクトの観点からは塩化カリウムが好ましく、エグ味を減らす観点からは乳酸カリウムが好ましく、塩化カリウムと乳酸カリウムを併用することがより好ましい。
前記スパイス(D)としては、オールスパイス、メース、コリアンダー、セロリシード、カルダモン、シナモン、タイム及びフェンネルが例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、オールスパイス、メース及びコリアンダーからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、オールスパイスとコリアンダーの併用が更に好ましい。該スパイス(D)は、カリウム塩(C)によるエグ味を消す効果を有している。
本発明の塩味増強剤は、前記(A)〜(D)の成分を、乾燥重量比率で、これら四成分の合計乾燥重量100に対し(9〜55)/(5〜54)/(33〜83)/(0.3〜20)で含有することが好ましく、(18〜55)/(11〜54)/(33〜70)/(0.3〜1.5)で含有することがより好ましい。含有比率が上記範囲を外れると塩味増強効果が小さくなり過ぎる場合がある。
本発明に係る塩味増強剤は、上記のような動物エキス及び/又は植物エキス(A)、タンパク質加水分解物(B)、カリウム塩(C)及びスパイス(D)をそれぞれ別に調製し、混合して得ることができる。
本発明の塩味増強剤の形態としては、例えば水分を含む液状やペースト状であってもよいし、粉末状に加工してもよい。
前記ペースト状または粉末状の塩味増強剤は、対象の食品の種類や食塩量にもよるが、乾燥物換算で前記(A)〜(D)の成分の合計重量が食品全体中0.1〜3重量%となるように使用することが好ましい。塩味増強剤を過剰に添加すると、異味が発現する場合がある。
本発明の塩味増強剤は、これを直接、対象となる食品に添加して使用してもよいし、調味料または香味料に添加した塩味増強調味料または塩味増強香味料として、食品に添加してもよい。本発明の塩味増強剤を食品に添加することで、食塩の使用量を減じても、先味のインパクトと後味の持続性を強めることができる。
前記塩味増強調味料としては、例えば、醤油類、ウスターソース、中濃ソース等のソース類、味噌、みりん、ドレッシング類、そば、うどん、ラーメン、パスタ、牛丼等のつゆやタレ、マヨネーズ、トマトケチャップなどが挙げられる。
前記塩味増強香味料としては、例えば、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、カニフレーバー、カツオブシフレーバー、ニボシフレーバー、チキンフレーバー、バターフレーバー、オニオンフレーバーなどが挙げられる。
また、本発明の対象となる食品としては、特に制限はなく幅広い食品に利用可能であるが、例えば、漬物(塩漬け、たくあん漬け、糠みそ漬け、みそ漬け、奈良漬け、福神漬け、ラッキョウ漬け、梅干し等)、米飯調理食品(おかゆ、雑炊、お茶漬け等)、その他の農産加工食品、飲料(トマトジュース、野菜ジュース、コーンスープ等)、水産加工食品(魚肉ハム・ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、みりん干し、佃煮、さきイカ等)、畜肉加工食品(ハンバーグ、ハム・ソーセージ、餃子等)、乳製品(乳、チーズ、チーズソース、クリーム、バター等)、インスタント食品、麺類、パン類、菓子類(ポテトチップス、煎餅、クッキー等)、塩蔵品(新巻きザケ、塩マス、たらこ、かずのこ、キャビア、いくら、すじこ等)、塩辛類(イカ塩辛、カツオ塩辛、ウニ塩辛等)など、スープ類(味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、卵スープ、ワカメスープ、ポタージュスープ、オニオンスープ、玉子スープ、カレースープ等)、カレー、ミートソース、マーボーソース、八宝菜等の調理食品等が挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
(製造例1)ラーメンスープの作製
(1)対照区(先味のインパクトと後味の持続性の基準となる通常配合のラーメンスープ)
表1の配合に従い、対照区のラーメンスープを作製した。即ち、水を除く全ての原材料を容器に計り取り、そこに沸騰したお湯を投入して撹拌し、対照区のラーメンスープを得た。
Figure 0006613097
1)キッコーマン(株)製「しょうゆ」
2)アリアケジャパン(株)製「ガラスープ」
3)公益財団法人塩事業センター製「精製塩」
4)アリアケジャパン(株)製「チキンオイルFR−4000」
5)味の素(株)製「味の素RC」
6)MCフードスペシャリティーズ(株)製「リボタイド」
7)東洋精糖(株)製「上白糖」
8)(株)カネカサンスパイス製「白コショウ末S60K」
9)(株)カネカサンスパイス製「ローストオニオンパウダーNo.1」
10)(株)カネカサンスパイス製「ガーリックパンチパウダーSP」
11)焼津水産化学工業(株)製「チキンパウダーM」
12)(株)カネカサンスパイス製「メンマパウダーA」
13)(株)日本触媒製「コハク酸二ナトリウム」
14)三栄源エフ・エフ・アイ(株)製「サンエース」
15)扶桑化学工業(株)製「無水クエン酸」
16)MCフードスペシャリティーズ(株)製「シルビン」(水分0.3重量%)
17)コービオンジャパン(株)製「ピューラサルHiPure Plus」(水分22重量%)
(2)試験区(減塩配合のラーメンスープ)
表1の配合に従い、後述する各実施例又は比較例の塩味増強剤を添加し、添加水で全体量を調整した以外は、対照区と同様にして各試験区のラーメンスープを作製した。
(3)参考区1(低エグ味の基準となる配合のラーメンスープ)
表1の配合に従い、塩化カリウム及び乳酸カリウムを添加し、添加水で全体量を調整した以外は、対照区と同様にして参考区1のラーメンスープを作製した。
(4)参考区2(高エグ味の基準となる配合のラーメンスープ)
表1の配合に従い、塩化カリウム及び乳酸カリウムの添加比率はそのままで、添加量を増量し、添加水で全体量を調整した以外は、参考区1と同様にして参考区2のラーメンスープを作製した。
<ラーメンスープの官能評価方法>
ラーメンスープを60℃に調整して、熟練した10名のパネラーに食べて評価してもらい、それらの平均点を評価値とした。その際の評価基準は、以下の通りである。なお、先味のインパクトとは、ラーメンスープを口に入れた瞬間に感じる味の強さを意味し、後味の持続性とは、ラーメンスープを口に入れてから比較的時間が経過した時に残る味の持続性を意味する。
(先味のインパクト)
5点:対照区に比べて先味のインパクトが強く、大変好ましい。
4点:対照区に比べて先味のインパクトが同等であり、好ましい。
3点:対照区に比べて先味のインパクトがやや弱く、やや物足りない。
2点:対照区に比べて先味のインパクトがかなり弱く、大変物足りない。
1点:対照区に比べて先味のインパクトがなく、美味しくない。
(後味の持続性)
5点:対照区に比べて後味の持続性が強く、大変好ましい。
4点:対照区に比べて後味の持続性が同等であり、好ましい。
3点:対照区に比べて後味の持続性がやや弱く、やや物足りない。
2点:対照区に比べて後味の持続性がかなり弱く、大変物足りない。
1点:対照区に比べて後味の持続性がなく、美味しくない。
(エグ味のなさ)
5点:エグ味が感じられず、大変好ましい。
4点:参考区1に比べてエグ味は弱いが若干感じられ、品質的に問題はないもののやや劣る。
3点:参考区1に比べて同等のエグ味が感じられ、品質的に問題はないものの劣る。
2点:参考区2に比べてエグ味は弱いが、品質的にやや問題がある。
1点:参考区2に比べて同等のエグ味が感じられ、品質的に問題がある。
<総合評価>
ラーメンスープの官能評価(先味のインパクト、後味の持続性、エグ味のなさ)の各評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
5点:ラーメンスープの先味のインパクト、後味の持続性、エグ味のなさの評価が全て4.5点以上。
4点:ラーメンスープの先味のインパクト、後味の持続性、エグ味のなさの評価で4点未満がなく、且つ1つ以上が4点以上4.5点未満。
3点:ラーメンスープの先味のインパクト、後味の持続性、エグ味のなさの評価で3点未満がなく、且つ1つ以上が3点以上4点未満。
2点:ラーメンスープの先味のインパクト、後味の持続性、エグ味のなさの評価で2点未満がなく、且つ1つ以上が2点以上3点未満。
1点:ラーメンスープの先味のインパクト、後味の持続性、エグ味のなさの評価で1つ以上が2点未満。
(製造例2)ステロール又はステロール脂肪酸エステルと、メイラード反応生成物及び含硫化合物類を含む植物エキス1の作製
(1)タマネギエキスの製造
タマネギ3000kgを、外皮を除去して水洗いし、食品粉砕機(アーシェル・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド製、「コミトロール(登録商標)プロセッサ」)を用いて3mm程度の大きさに粉砕した。その後、スクリュープレス機で圧搾し、約2000kgのタマネギ搾汁液を得た。
図1で例示される加熱装置10を用いて上記タマネギ搾汁液の減圧濃縮を行った。タマネギ搾汁液600kgはあらかじめタンクに投入しておき、タンク直下に接続したポンプを用いて、流量毎時500kgの条件でタマネギ搾汁液を加熱装置10に供給した。加熱装置10は床面に対してほぼ垂直に設置し、約3mmの間隙をもって設置された内筒12と外筒13の回転差を毎分170回、壁面12a、13aの温度を125℃の条件に設定した。加熱装置10で加熱されたタマネギ搾汁液を−0.055〜−0.065MPaの減圧条件に設定した蒸発缶に供給し、水分を蒸発させた後、再びタンクに供給した。この循環加熱減圧濃縮を10時間行い、Brix71%まで濃縮したタマネギエキス約50kgを得た。
(2)タマネギエキス混合液の製造
(1)で得られたタマネギエキス75.0重量部、上白糖17.5重量部、水7.5重量部を混ぜ合わせ、タマネギエキス混合液を作製した。なお、このタマネギエキス混合液に含まれる140メッシュを通過する植物組織微粉砕物は乾燥物換算で1.0%であった。
(3)植物エキス1の製造
図1で例示される加熱装置を用いて、前記タマネギエキス混合液の加熱処理を行った。加熱装置10は床面に対してほぼ垂直に設置し、約10mmの間隙をもって設置された内筒12と外筒13の回転差を毎分400回、外筒13の内壁面13aの温度を177℃の条件に設定した。また、タマネギエキス混合液20kgを蒸気ジャケット付きタンクに投入し、品温60℃まで攪拌しながら予備加熱を行った。このタマネギエキス混合液を、ポンプにより毎時60Lの流量で定量的に加熱装置10に供給し、品温160℃に加熱後、あらかじめ加熱装置10に接続した容積1.5Lの配管を通過させた後、プレート式熱交換器(株式会社イズミフードマシナリ製、NS08LSR−005−6−W)で品温70℃に冷却し、植物エキス1を6kg得た。得られた植物エキス1中の固形分は70.0重量%であった。なお、加熱装置10に接続した容積1.5Lの配管は160℃のオイルバスにつけて品温低下を防いだ。また、加熱時の内圧については、プレート式熱交換器の直後に背圧弁を接続し、0.7MPaの条件で実施した。
得られた植物エキス1について、既述の分析条件でガスクロマトグラフ分析を行ったところ、メイラード反応生成物であるフルフラール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラール、フルフリルアルコールのピーク面積の合計は、内部標準物質であるデカンのピーク面積に対して2.75倍であった。さらに含硫化合物類であるアリルメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィドおよびジメチルジスルフィドのピーク面積の合計は、内部標準物質であるデカンのピーク面積に対して6.85倍であった。また、植物エキス1中のステロール及びステロール脂肪酸エステルの含有量は、前述した総ステロール量の分析により0.0019重量%であった。
(実施例1)塩味増強剤の作製
表2に示す配合に従い、原材料を混合・溶解して、塩味増強剤を得た。
Figure 0006613097
18)富士食品工業(株)製「バーテックスIG20」(タンパク質加水分解物90重量%、水分2.9重量%)
19)富士食品工業(株)製「ウェルネックスYN−1」(タンパク質加水分解物80重量%、水分3.6重量%)
20)(株)カネカサンスパイス製「オールスパイス」(水分8.8重量%)
21)(株)カネカサンスパイス製「メース」(水分13.0重量%)
22)(株)カネカサンスパイス製「コリアンダー」(水分8.5重量%)
(実施例2,3、比較例1〜3)塩味増強剤の作製
表2に示す配合に従い、植物エキス1の添加量を変え、添加水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にして塩味増強剤を得た。
実施例1〜3、比較例1〜3で得られた塩味増強剤を使用したラーメンスープの評価結果を表2に示した。また、官能評価の評価基準として、対照例1、参考例1及び2のラーメンスープも同様に作製し、その結果を表2に示した。
表2から明らかなように、塩味増強剤中の全固形分に対して、成分(A)である植物エキス1の含有量が9.2〜55.0重量%の範囲にある実施例1〜3は何れも、エグ味を感じることなく、先味のインパクトと後味の持続性に優れ、良好な評価結果であった。一方、植物エキス1を添加しない比較例1及び植物エキス1の含有量が7.5重量%と少ない比較例2は、先味のインパクトと後味の持続性が劣り、商品性のないものであった。塩味増強剤として植物エキス1のみを添加した比較例3は、先味のインパクトに劣り、商品性のないものであった。
(実施例4,5、比較例4,5)塩味増強剤の作製
表3に示す配合に従い、酵母エキスの添加量を変え、添加水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にして塩味増強剤を得た。
Figure 0006613097
実施例4,5、比較例4,5で得られた塩味増強剤を使用したラーメンスープの評価結果を表3に示した。
表3から明らかなように、塩味増強剤中の全固形分に対して、成分(B)である酵母エキス(タンパク質加水分解物)の含有量が5.1〜54.0重量%の範囲にある実施例4,5はどちらも、エグ味を感じることなく、先味のインパクトと後味の持続性は実施例1に比べるとやや劣るものの、良好な評価結果であった。一方、酵母エキスを添加しない比較例4及び酵母エキスの含有量が4.2重量%と少ない比較例5は、後味の持続性が劣り、商品性のないものであった。
(実施例6,7、比較例6〜8)塩味増強剤の作製
表4に示す配合に従い、塩化カリウムと乳酸カリウムの比率はそのままで、合計の添加量を変え、添加水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にして塩味増強剤を得た。
Figure 0006613097
実施例6,7、比較例6〜8で得られた塩味増強剤を使用したラーメンスープの評価結果を表4に示した。
表4から明らかなように、塩味増強剤中の全固形分に対して、成分(C)であるカリウム塩の含有量が36.6〜82.2重量%の範囲にある実施例6,7はどちらも、エグ味を感じることなく、先味のインパクトと後味の持続性に優れており、良好な評価結果であった。一方、カリウム塩を添加しない比較例6及びカリウム塩の含有量が31.6重量%と少ない比較例7は、先味のインパクトが劣り、カリウム塩の含有量が85重量%と多い比較例8は、エグ味が強く感じられ、何れも商品性のないものであった。
(実施例8〜11、比較例9〜11)塩味増強剤の作製
表5に示す配合に従い、オールスパイス、メース、コリアンダーの比率を同じにし、合計の添加量を変え、添加水で全体量を調整した以外は、実施例1と同様にして塩味増強剤を得た。
Figure 0006613097
実施例8〜11、比較例9〜11で得られた塩味増強剤を使用したラーメンスープの評価結果を表5に示した。
表5から明らかなように、塩味増強剤中の全固形分に対して、成分(D)であるスパイスの含有量が0.3〜18.5重量%の範囲にある実施例8〜11はいずれも、エグ味を感じることなく、先味のインパクトと後味の持続性に優れており、良好な評価結果であった。一方、スパイスを添加しない比較例9及びスパイスの含有量が0.2重量%と少ない比較例10はエグ味が強く感じられ、スパイスの含有量が20.6重量%と多い比較例11は後味の持続性が劣り、何れも商品性のないものであった。
(実施例12〜20)塩味増強剤の作製
表6に示す配合に従い、添加量は同じで、スパイスの種類を変えた以外は、実施例1と同様にして塩味増強剤を得た。
Figure 0006613097
23)(株)カネカサンスパイス製「セロリシード」(水分9.0重量%)
24)(株)カネカサンスパイス製「カルダモン」(水分11.0重量%)
25)(株)カネカサンスパイス製「シナモン」(水分3.3重量%)
26)(株)カネカサンスパイス製「タイム」(水分4.4重量%)
27)(株)カネカサンスパイス製「フェンネル」(水分10.5重量%)
実施例12〜20で得られた塩味増強剤を使用したラーメンスープの評価結果を表6に示した。
表6から明らかなように、成分(D)であるスパイスの種類を変えた実施例12〜20は何れも、エグ味を感じることなく、先味のインパクトと後味の持続性に優れており、良好な評価結果であった。
10 二重筒加熱装置
11 加熱容器
12 内筒
13 外筒
14 間隙

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示すステロール又はステロール脂肪酸エステルと、メイラード反応生成物及び含硫化合物類を含むタマネギエキス(A)、酵母エキスであるタンパク質加水分解物(B)、カリウム塩(C)及びオールスパイス、メース、コリアンダー、セロリシード、カルダモン、シナモン、タイム及びフェンネルからなる群から選ばれる少なくとも1種のスパイス(D)を含有し、且つ成分(A)/(B)/(C)/(D)の乾燥重量比率が、これら四成分の合計乾燥重量100に対し(9〜55)/(5〜54)/(33〜83)/(0.3〜20)である塩味増強剤。
    Figure 0006613097
    (但し、式(1)中、Rは水素原子または脂肪酸残基、Rは二重結合を有さない炭化水素基を表す。)
  2. 前記ステロールまたはステロール脂肪酸エステルが、β−シトステロール、コレステロールまたはβ−シトステロール脂肪酸エステルである請求項1記載の塩味増強剤。
  3. 前記メイラード反応生成物として、フラン類、アルデヒド類およびピラジン類の少なくとも1つを含有する請求項1又は2に記載の塩味増強剤。
  4. 前記含硫化合物類として、チオフェン類およびスルフィド類の少なくとも1つを含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の塩味増強剤。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の塩味増強剤を食品に添加するか、又は、当該塩味増強剤を調味料もしくは香味料に添加した塩味増強調味料もしくは塩味増強香味料を食品に添加することを特徴とする、食品の製造方法


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