以下、本発明による建設機械用シリンダ装置を、ホイール式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げて詳細に説明する。この実施の形態では、アウトリガ装置のアウトリガシリンダ、フロント装置のブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダが建設機械用シリンダ装置として構成されているが、これらの中から代表してフロント装置のバケットシリンダの構成について詳細に述べている。
図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械の代表例となる油圧ショベル1は、自走可能なホイール式の下部走行体2と、前記下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、前記上部旋回体4の前側に設けられた後述のフロント装置15とを含んで構成されている。そして、油圧ショベル1は、ホイール式の下部走行体2によって一般道路を走行して作業現場に移動し、この作業現場においてフロント装置15によって土砂等の掘削作業を行うものである。
下部走行体2は、前,後方向に延びたボックス構造体からなるシャーシ5と、シャーシ5の前側にフロントアクスル(図示せず)を介して設けられた左,右の前輪6(右側のみ図示)と、シャーシ5の後側にリヤアクスル(図示せず)を介して設けられた左,右の後輪7(図2参照)とを含んで構成されている。シャーシ5の後部には、後述のアウトリガ装置8が取付けられている。
アウトリガ装置8は、例えばシャーシ5の前,後方向の後側に取付けられている。アウトリガ装置8は、フロント装置15を用いて掘削作業を行うときの車体の安定性を確保するものである。図2に示すように、アウトリガ装置8は、アウトリガ支持フレーム9と左,右のアウトリガ10と左,右のアウトリガシリンダ11とにより構成されている。
アウトリガ支持フレーム9は、シャーシ5の後部に後側に延びて取付けられた取付部位9Aと、取付部位9Aの後部に左,右方向に延びて設けられた支持部位9Bとにより構成されている。支持部位9Bは、複数枚の板体を角筒状に組立てることにより左,右方向に延びたボックス状に形成されている。支持部位9Bの左,右両側には、それぞれアウトリガ10が回動可能に取付けられている。また、支持部位9Bの内部には、アウトリガ10を回動させるための左,右のアウトリガシリンダ11が設けられている。
左,右のアウトリガ10は、アウトリガ支持フレーム9を構成する支持部位9Bの左,右方向の両端部位に上,下方向に回動可能に取付けられている。左,右のアウトリガ10は、基端側が支持部位9Bに回動可能に連結された角筒状の回動アーム10Aと、回動アーム10Aの先端側に回動可能に連結された接地板10Bとにより構成されている。また、左,右の回動アーム10Aと支持部位9Bとの間には、それぞれアウトリガシリンダ11が設けられている。
左,右のアウトリガシリンダ11は、基本的な構成が後述するフロント装置15のバケットシリンダ21と同様であるため、その構成を簡略化して説明するものとする。左,右のアウトリガシリンダ11は、チューブ11A、ロッド11B、ピストン(図示せず)および後述の保護カバー27、カバーガイド機構29により構成されている。各アウトリガシリンダ11は、チューブ11Aの基端側が支持部位9Bの左,右方向の中央部位に回動可能に取付けられ、ロッド11Bの先端側がアウトリガ10の回動アーム10Aの基端側に回動可能に取付けられている。
アウトリガ装置8は、左,右のアウトリガシリンダ11を縮小させることにより、アウトリガ10を上方へと回動し、アウトリガ10を立ち上げた格納状態を保持することができる。一方、油圧ショベル1で掘削作業を行う場合には、アウトリガシリンダ11を伸長させることにより、アウトリガ10を下方へと回動し、接地板10Bを地面に押付ける。これにより、アウトリガ装置8は、下部走行体2の後側をジャッキアップし、油圧ショベル1の姿勢を安定させることができる。
次に、上部旋回体4は、シャーシ5上に旋回装置3を介して旋回可能に取付けられた旋回フレーム12と、旋回フレーム12の左前側に設けられ運転室を画成するキャブ13と、旋回フレーム12の後側に設けられフロント装置15との重量バランスをとるカウンタウエイト14と、カウンタウエイト14の前側に位置して旋回フレーム12上に設けられたエンジン、油圧ポンプ、熱交換器(いずれも図示せず)とを含んで構成されている。
図1に示すように、フロント装置15は、上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられている。フロント装置15は、基端側が旋回フレーム12の前部側に上,下方向に俯仰動可能に取付けられたブーム16と、ブーム16の先端側に回動可能に取付けられたアーム17と、アーム17の先端側に回動可能に取付けられたバケット18と、左,右のブームシリンダ19(右側のみ図示)、アームシリンダ20、後述のバケットシリンダ21とにより構成されている。
ここで、ブームシリンダ19とアームシリンダ20は、基本的な構成が後述のバケットシリンダ21と同様であるため、その構成を簡略化して説明するものとする。各ブームシリンダ19は、チューブ19A、ロッド19B、ピストン(図示せず)、後述の保護カバー27および後述のカバーガイド機構29により構成されている。各ブームシリンダ19は、ブーム16を俯仰動させるものである。同様に、アームシリンダ20は、チューブ20A、ロッド20B、ピストン(図示せず)、保護カバー27およびカバーガイド機構29により構成されている。アームシリンダ20は、ブーム16に対してアーム17を俯仰動させるものである。
次に、本発明の建設機械用シリンダ装置を説明する。この実施の形態では、シリンダ装置の基本構成、特徴部分となる保護カバーとカバーガイド機構の構成について、バケットシリンダ21を代表例として説明する。
この場合、バケットシリンダ21に設けられる保護カバー27とカバーガイド機構29は、基本的な構成はそのままに、各部の寸法を調整することにより、アウトリガ装置8の各アウトリガシリンダ11、フロント装置15の各ブームシリンダ19、アームシリンダ20にも取付けられている。これにより、本実施の形態では、アウトリガ装置8の各アウトリガシリンダ11、フロント装置15の各ブームシリンダ19、アームシリンダ20およびバケットシリンダ21は、油圧ショベル1に設けられた建設機械用シリンダ装置を構成している。
バケットシリンダ21は、建設機械用シリンダ装置の1つを構成するもので、アーム17とバケット18のリンク18Aとの間に設けられている。バケットシリンダ21は、アーム17に対してバケット18を回動させるものである。図3に示すように、バケットシリンダ21は、チューブ22、ピストン24、ロッド25、保護カバー27、カバーガイド機構29を含んで構成されている。
チューブ22は、長尺な筒状(円筒状)をなし、長さ方向の一側が底部22Aとなって閉塞され、他側がロッドガイド22Bとなっている。チューブ22の底部22Aには、取付アイ(クレビス)23が一体的に設けられている。取付アイ23は、アーム17に回動可能に取付けられている。チューブ22は、円筒状の外周面22Cを有し、この外周面22Cの他側(ロッドガイド22B側)には、後述するカバーガイド機構29のバンド30が外嵌して設けられている。そして、チューブ22内には、ピストン24が軸方向に摺動可能に挿嵌されている。
ロッド25は、一側がチューブ22内でピストン24に取付けられ、他側がロッドガイド22B側から外部に突出している。ロッド25の突出端側には、厚肉な円筒状のボス部26が取付けられている。ボス部26の外周面には、ロッド25の軸線と直交するようにねじ座26Aが径方向の外側に向けて突設されている。ロッド25の他側は、ボス部26を介してバケット18のリンク18Aに回動可能に連結されている。
次に、本実施の形態の特徴部分となる保護カバー27とカバーガイド機構29の構成について説明する。
保護カバー27は、チューブ22から突出したロッド25に掘削作業時の土砂や岩石が衝突しないように、土砂等からロッド25を保護するものである。保護カバー27は、基端側がボス部26に取付けられると共に、先端側が自由端となってチューブ22の外周側まで延びている。保護カバー27は、ロッド25の軸線に沿って延びる長尺な板状体として形成されている。保護カバー27の外形は、ロッド25を保護することができる長さ寸法Lと幅寸法W、具体的には、ロッド25が最も伸長したときの露出部分の長さ寸法よりも大きな長さ寸法Lと、ロッド25の直径寸法よりも大きな幅寸法Wとを有している。この保護カバー27の長さ寸法Lと幅寸法Wは、周囲の部材に干渉しないような寸法に収められている。
図4、図5に示すように、保護カバー27は、ボス部26からチューブ22に達する長尺で平坦な板状体からなるカバー本体27Aと、カバー本体27Aの幅方向の両側の端縁に沿ってそれぞれ延び各端縁にそれぞれ固着された一対の補強部材としての丸棒27Bとにより構成されている。図3に示すように、カバー本体27Aの基端側には、ボルト28が挿通され、このボルト28は、ボス部26のねじ座26Aに螺着されている。これにより、カバー本体27Aの基端側はボス部26に取付けられている。
一方、カバー本体27Aの長さ方向に延びた各丸棒27Bは、保護カバー27の強度を高めるための補強部材を構成している。このため、各丸棒27Bは、カバー本体27Aの板厚寸法よりも大きな直径寸法D(図4参照)を有している。そして、各丸棒27Bは、後述するカバーガイド機構29の取付ブラケット34のカバー摺動面34C1とガイドブロック35との間に摺動可能に挟まれている。この場合、補強部材として適用された丸棒27Bは、取付ブラケット34とガイドブロック35に対する接触面積、即ち、角柱体等を用いた場合の面接触に比較して摺動抵抗が小さくなるから、ロッド25の伸縮動作に応じて保護カバー27を円滑に移動させることができる。
カバーガイド機構29は、チューブ22の他側寄りに設けられている。カバーガイド機構29は、保護カバー27をロッド25の伸縮方向に沿って移動可能に支持するものである。ここで、本実施の形態によるカバーガイド機構29は、チューブ22の外周面22Cに2本のボルト33を用いて簡単に取付けることができる。図6、図7に示すように、カバーガイド機構29は、後述のバンド30、左,右の取付ブラケット34、左,右のガイドブロック35およびボルト33,36によって構成されている。
バンド30は、チューブ22の他側に位置してチューブ22の外周面22Cを囲んで取付けられている。バンド30は、保護カバー27側に位置する第1バンド部材31と、保護カバー27と径方向の反対側に位置する第2バンド部材32とにより構成されている。後述の各取付ブラケット34が取付けられていない状態の第1バンド部材31と第2バンド部材32とは、同一の部材として形成され、左,右方向で反転させることによって1個のバンド30を構成している。これにより、バンド30は、部品の共通化によって製造コストを低減できる。
第1バンド部材31は、例えば、細長い金属板を半円弧状に湾曲させることにより、取付円弧部31Aを有している。また、取付円弧部31Aの長さ方向(円弧方向)の両端部は、径方向の外側に向けほぼ直角に折曲げられ、一方の端部には、ボルト挿通孔31Bが形成されている。また、他方の端部には、ねじ孔(溶接ナット)31Cが形成されている。
第2バンド部材32は、第1バンド部材31と同様に、取付円弧部32A、ボルト挿通孔32Bおよびねじ孔32Cを備えている。第2バンド部材32は、第1バンド部材31と同一部品として形成され、ボルト挿通孔32Bとねじ孔32Cの位置が、第1バンド部材31のボルト挿通孔31Bとねじ孔31Cの位置と左,右方向で逆になるように向きを変えて配置されている。
従って、第1バンド部材31の取付円弧部31Aと第2バンド部材32の取付円弧部32Aとを対面させた状態では、取付円弧部31A,32Aによってチューブ22を囲むことができる。この状態で、第1バンド部材31のボルト挿通孔31Bに挿通したボルト33を第2バンド部材32のねじ孔32Cに螺着し、第2バンド部材32のボルト挿通孔32Bに挿通したボルト33を第1バンド部材31のねじ孔31Cに螺着する。これにより、バンド30をチューブ22に取付けることができる。
左,右の取付ブラケット34は、バンド30の第1バンド部材31から保護カバー27に向けて外側に延びて設けられている。各取付ブラケット34は、取付円弧部31Aの円弧方向に間隔をもって、取付円弧部31Aから径方向の外向きに延びた短板34A、長板34Bと、短板34A、長板34Bの先端部に亘って左,右方向に延びて設けられたガイド板34Cとにより構成されている。ガイド板34Cは、保護カバー27が摺動可能に対面するカバー摺動面34C1を有している。また、左,右のガイド板34Cには、保護カバー27の幅寸法Wよりも大きな離間寸法をもってねじ孔(溶接ナット)34Dが設けられている。そして、左,右のガイド板34Cは、カバー摺動面34C1が同一平面となるように配置されている。
一対のガイドブロック35は、左,右の取付ブラケット34に取付けられている。各ガイドブロック35は、保護カバー27の板厚方向に扁平な直方体状のブロック体として形成されている。各ガイドブロック35は、取付ブラケット34を構成するガイド板34Cのカバー摺動面34C1に当接する平坦な当接面35Aを有している。また、各ガイドブロック35のうち、互いに対向する保護カバー27側には、保護カバー27の幅方向の両側の縁部、即ち、丸棒27Bを覆う位置まで延びた挟持部35Bが設けられている。
従って、各ガイドブロック35には、ガイド板34Cのカバー摺動面34C1との間で保護カバー27を挟持する溝部35Cが形成されている。具体的には、当接面35Aと挟持部35Bとの間には、段差によって溝部35Cが形成されている。この溝部35Cは、保護カバー27を厚さ方向で挟むための厚さ方向ガイド面35C1と、保護カバー27を幅方向で挟むための幅方向ガイド面35C2とにより角柱状の空間(溝)として形成されている。
また、各ガイドブロック35には、保護カバー27の板厚方向に貫通してボルト挿通孔35Dが設けられている。図7に示すように、このボルト挿通孔35Dには、各取付ブラケット34のガイド板34Cのカバー摺動面34C1に対し各ガイドブロック35を取付けるためのボルト36が挿通される。ボルト挿通孔35Dは、ボルト36のねじ部36Aよりも大きな貫通孔として形成されている。具体的には、ボルト挿通孔35Dは、保護カバー27の幅方向に長い長孔として形成されている。
これにより、各ガイドブロック35は、ボルト挿通孔35Dに挿通したボルト36のねじ部36Aを各取付ブラケット34のガイド板34Cのねじ孔34Dに螺合することにより、ガイド板34Cに取付けることができる。この上で、各ガイドブロック35は、ボルト挿通孔35Dを保護カバー27の幅方向に長い長孔として形成しているから、この長孔によってボルト36のねじ部36Aとの間に設けられた隙間の分だけ移動させることができる。
次に、保護カバー27とカバーガイド機構29をバケットシリンダ21に取付ける場合の作業手順の一例について述べる。
まず、第1バンド部材31の取付円弧部31Aと第2バンド部材32の取付円弧部32Aでバケットシリンダ21のチューブ22を挟んで取囲む。このときの第1バンド部材31の取付位置は、各取付ブラケット34がバケットシリンダ21のボス部26に設けられたねじ座26Aに対応した周方向位置とする。この状態で、第1バンド部材31のボルト挿通孔31Bにボルト33を挿通し、このボルト33を第2バンド部材32のねじ孔32Cに螺着する。同様に、第2バンド部材32のボルト挿通孔32Bにボルト33を挿通し、このボルト33を第1バンド部材31のねじ孔31Cに螺着する。これにより、2本のボルト33を用いてバンド30をチューブ22に取付けることができる。
チューブ22にバンド30と左,右の取付ブラケット34を取付けたら、ロッド25に沿って保護カバー27を配置し、カバー本体27Aの基端側に挿通したボルト28を、ボス部26のねじ座26Aに螺着する。これにより、保護カバー27の基端側は、ボス部26に取付けることができ、先端側は、各取付ブラケット34のガイド板34Cのカバー摺動面34C1に対面して配置することができる。
次に、自由端となった保護カバー27の先端側をガイドするために、各取付ブラケット34のガイド板34Cにそれぞれガイドブロック35を配置し、ボルト挿通孔35Dに挿通したボルト36のねじ部36Aを、ガイド板34Cのねじ孔34Dに螺着する。各ガイドブロック35の取付時には、それぞれの挟持部35Bを内側(保護カバー27側)に配置し、ガイド板34Cのカバー摺動面34C1と溝部35Cの厚さ方向ガイド面35C1との間で保護カバー27の丸棒27Bを摺動可能に挟む。
これにより、バケットシリンダ21のロッド25を伸縮動作させたときには、カバーガイド機構29によって保護カバー27をバケットシリンダ21の軸方向に沿って案内することができる。
ここで、カバーガイド機構29によって保護カバー27を案内するためには、カバーガイド機構29と保護カバー27との間に僅かな隙間が必要となる。一方で、この隙間が大きくなるとがたついてしまう。
そこで、カバーガイド機構29で保護カバー27を案内する場合の隙間の調整手順について例示する。まず、保護カバー27の丸棒27Bの直径寸法Dに対して、各ガイド板34Cのカバー摺動面34C1と各ガイドブロック35の溝部35C(厚さ方向ガイド面35C1)との間の隙間寸法Hを調整する。調整方法の一例としては、丸棒27Bの直径寸法Dよりも各ガイド板34Cと厚さ方向ガイド面35C1との隙間寸法Hが大きい場合には、保護カバー27が厚さ方向にがたついてしまう。そこで、各ガイドブロック35の当接面35Aに切削加工を施すことにより、隙間寸法Hを小さくすることができ、保護カバー27の厚さ方向のがたつきを抑制することができる。
一方、丸棒27Bの直径寸法Dよりも各ガイド板34Cと厚さ方向ガイド面35C1との隙間寸法Hが小さい場合には、保護カバー27が動き難くなってしまう。そこで、各ガイドブロック35の溝部35Cの厚さ方向ガイド面35C1に切削加工を施したり、各ガイド板34Cのカバー摺動面34C1と各ガイドブロック35の当接面35Aとの間にスペーサ(図示せず)を挟んだりすることにより隙間寸法Hを大きくすることができる。これにより、保護カバー27は、適正な隙間寸法Hによって円滑に移動させることができる。
さらに、保護カバー27の幅寸法Wに合わせて左,右のガイドブロック35の取付位置を調整する場合について述べる。この場合、各ガイドブロック35には、長孔からなるボルト挿通孔35Dが設けられているから、ボルト36を緩めた状態では、ボルト36のねじ部36Aとボルト挿通孔35Dとの隙間の分だけ、ガイドブロック35を幅方向に移動させることができる。従って、保護カバー27の幅寸法Wに応じて左,右のガイドブロック35を左,右方向に移動させることにより、保護カバー27と各ガイドブロック35との隙間を適正な寸法に調整できる。これにより、保護カバー27は、左,右方向(幅方向)がたつくことなく円滑に移動させることができる。
本実施の形態によるバケットシリンダ21は上述の如き構成を有するものである。このバケットシリンダ21を備えた油圧ショベル1は、ブームシリンダ19、アームシリンダ20、バケットシリンダ21によりそれぞれブーム16、アーム17、バケット18を回動させることにより、掘削作業を行うことができる。
この掘削作業時には、土砂や岩石がブームシリンダ19、アームシリンダ20、バケットシリンダ21等に向けて飛んでくることがある。しかし、各シリンダ19,20,21には、保護カバー27を設けているから、ロッド19B,20B,25を飛石から保護することができる。
かくして、本実施の形態によれば、保護カバー27をバケットシリンダ21のロッド25の伸縮方向に沿って移動可能に支持するカバーガイド機構29が設けられている。このカバーガイド機構29は、チューブ22の他側に位置してチューブ22を囲んで取付けられたバンド30と、バンド30から外側に延び保護カバー27が摺動可能に対面するカバー摺動面34C1を有する左,右の取付ブラケット34と、各取付ブラケット34に取付けられ、カバー摺動面34C1との間で保護カバー27を挟持する溝部35Cを形成するガイドブロック35とによって構成されている。
従って、カバーガイド機構29は、チューブ22に対して2本のボルト33で容易に取付けることができる。また、カバーガイド機構29は、各取付ブラケット34に対して加工を加えたり、スペーサ等を設けたりすることにより、保護カバー27と各取付ブラケット34との間の隙間を適正な寸法に調整することができる。この結果、バケットシリンダ21のチューブ22に対してカバーガイド機構29を容易に取付けることができると共に、カバーガイド機構29に保護カバー27を正確に、かつ容易に取付けることができる。
保護カバー27は、ボス部26からチューブ22に達する長尺な板状体からなるカバー本体27Aと、カバー本体27Aの幅方向の両側の端縁に沿ってそれぞれ延び各端縁にそれぞれ固着された一対の丸棒27Bとにより構成されている。これにより、保護カバー27の各丸棒27Bは、それぞれ取付ブラケット34のカバー摺動面34C1とガイドブロック35との間に摺動可能に挟まれている。従って、保護カバー27の幅寸法W、丸棒27Bの直径寸法Dに応じて左,右のガイドブロック35を左,右方向に移動させることができる。これにより、保護カバー27と各ガイドブロック35との隙間を適正な寸法に調整でき、保護カバー27を円滑に移動させることができる。
また、カバー本体27Aの幅方向の両側に設けた丸棒27Bは、各取付ブラケット34、各ガイドブロック35に対して小さな面積で接触することができる。これによっても、保護カバー27を円滑に移動させることができる。
各ガイドブロック35には、ボルト36のねじ部36Aよりも大きな貫通孔からなるボルト挿通孔35Dが設けられている。これにより、ねじ部36Aとボルト挿通孔35Dとの間の隙間の分だけ各ガイドブロック35を移動させることができ、保護カバー27と各ガイドブロック35との隙間を簡単に調整することができる。
さらに、各ガイドブロック35のボルト挿通孔35Dは、保護カバー27の幅方向に長い長孔として形成されている。この結果、各ガイドブロック35をボルト挿通孔35Dの長さに応じて大きく移動させることができる。
次に、図8は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、取付ブラケットを1枚の板体を折曲げて形成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図8において、第2の実施の形態によるカバーガイド機構41は、第1の実施の形態によるカバーガイド機構29とほぼ同様に、バンド30、各ガイドブロック35、ボルト33,36および取付ブラケット42によって構成されている。しかし、第2の実施の形態によるカバーガイド機構41は、取付ブラケット42の形状が異なっている点で、第1の実施の形態によるカバーガイド機構29と相違している。
取付ブラケット42は、バンド30の第1バンド部材31から保護カバー27に向けて外側に延びて設けられている。取付ブラケット42は、1枚の細長い板体を適宜に折曲げることにより形成されている。即ち、取付ブラケット42は、長さ方向の中間部に位置して第1バンド部材31の取付円弧部31Aに固着される円弧状の取付板42Aと、この取付板42Aの両端部から保護カバー27に向けて斜めに延びた傾斜板42Bと、各傾斜板42Bの先端から屈曲して左,右方向の外側に延びたガイド板42Cとにより構成されている。ガイド板42Cは、保護カバー27が摺動可能に対面するカバー摺動面42C1を有している。また、左,右のガイド板42Cには、ねじ孔42Dが設けられている。左,右のガイド板42Cは、カバー摺動面42C1が同一平面となるように配置されている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用および効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、取付ブラケット42を1枚の板体によって形成しているから、取付ブラケット42を安価に製造することができる。
次に、図9は、本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、取付ブラケットを角筒状に折曲げた板体を用いて形成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9において、第3の実施の形態によるカバーガイド機構51は、第1の実施の形態によるカバーガイド機構29とほぼ同様に、バンド30、各ガイドブロック35、ボルト33,36および取付ブラケット52によって構成されている。しかし、第2の実施の形態によるカバーガイド機構41は、左,右の取付ブラケット52の形状が異なっている点で、第1の実施の形態によるカバーガイド機構29と相違している。
左,右の取付ブラケット52は、バンド30の第1バンド部材31から保護カバー27に向けて外側に延びて設けられている。各取付ブラケット52は、1枚の細長い板体を角筒状に折曲げることにより形成され、その端部が第1バンド部材31の取付円弧部31Aに固着されている。各取付ブラケット52は、保護カバー27側が平坦なガイド板52Aとなり、このガイド板52Aは、保護カバー27が摺動可能に対面するカバー摺動面52A1を有している。また、左,右のガイド板52Aには、ねじ孔52Bが設けられている。左,右のガイド板52Aは、カバー摺動面52A1が同一平面となるように配置されている。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用および効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、例えば市販の各パイプ材を用いて各取付ブラケット52を形成することができ、取付ブラケット52を安価に製造することができる。
なお、第1の実施の形態では、保護カバー27を、平坦な板状体からなるカバー本体27Aと、カバー本体27Aの幅方向の両側の端縁にそれぞれ固着された一対の丸棒27Bとにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、保護カバー27を1枚の板状体として形成してもよい。また、補強部材として丸棒27B以外にも、三角形状、四角形状等の棒状体を用いることもできる。これらの構成は、他の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、本発明の特徴部分である保護カバー27とカバーガイド機構29を、アウトリガシリンダ11、ブームシリンダ19、アームシリンダ20およびバケットシリンダ21に設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、アウトリガシリンダ11、ブームシリンダ19、アームシリンダ20、バケットシリンダ21のうち、いずれか1つのシリンダ装置または複数のシリンダ装置に保護カバー27とカバーガイド機構29を設ける構成としてもよい。これ以外にも、フロント装置をオフセット動作させるオフセットシリンダ、追加のアタッチメントに設けられる各種シリンダ等に保護カバー27とカバーガイド機構29を設ける構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態についても同様である。
各実施の形態では、建設機械用シリンダ装置をホイール式の油圧ショベル1に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、クローラ式の油圧ショベル、ホイールローダ等の他の建設機械に搭載されるシリンダ装置に広く適用できるものである。