JP6611751B2 - リチウムイオン電池集電体用圧延銅箔及びリチウムイオン電池 - Google Patents

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Description

本発明はリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔及びリチウムイオン電池に関する。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、比較的高い電圧が得ることができるという特徴を有し、ノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話等の小型電子機器用に多用されている。将来、電気自動車や一般家庭の分散配置型電源といった大型機器の電源としての利用も有望視されている。
図1は、リチウムイオン電池のスタック構造の模式図である。リチウムイオン電池の電極体は一般に、正極11、セパレータ12及び負極13が幾十にも巻回又は積層されたスタック構造を有している。典型的には、正極は、アルミニウム箔でできた正極集電体とその表面に設けられたLiCoO2、LiNiO2及びLiMn24といったリチウム複合酸化物を材料とする正極活物質から構成され、負極は銅箔でできた負極集電体とその表面に設けられたカーボン等を材料とする負極活物質から構成される。正極同士及び負極同士は各タブ(14、15)でそれぞれ溶接される。また、正極及び負極はアルミニウムやニッケル製のタブ端子と接続されるが、これも溶接により行われる。溶接は超音波溶接により行われるのが通常である。
負極の集電体として使用される銅箔に要求される特性としては、負極活物質との密着性、さらには銅箔又はタブ端子との超音波溶接性が挙げられる。
活物質層との密着性を改善するための一般的な方法としては、予め粗化処理と呼ばれる銅箔表面に凹凸を形成する表面処理が挙げられる。粗化処理の方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、機械研磨、電解研磨、化学研磨及び電着粒のめっき等の方法が知られており、これらの中でも特に電着粒のめっきは多用されている。この技術は、硫酸銅酸性めっき浴を用いて、銅箔表面に樹枝状又は小球状に銅を多数電着せしめて微細な凹凸を形成し、投錨効果による密着性の改善や、体積変化の大きな活物質の膨張時に活物質層の凹部に応力を集中させて亀裂を形成せしめ、集電体界面に応力が集中することによる剥離を防ぐことで行われている(例えば、特許第3733067号公報)。
超音波溶接性については、従来、材料の溶接性に合わせて溶接エネルギーを大きく与えることで大きな問題とはなっていなかった。しかながら、溶接エネルギーを大きく与えることは溶接に使われる消耗品の消耗が激しいことから、近年のコスト削減において溶接エネルギーを小さくしても溶接性のよい銅箔が求められるようになってきた。このような構成の銅箔として、特開2009−68042号公報には、クロム水和酸化物層の銅箔表面への被覆量を0.5〜70μg−Cr/dm2に規定したり、クロム水和酸化物層が被覆されている面のRz(JISB0601−1994で規定する10点平均粗さ)を2.0μm以下にしたりする方法が記載されている。そして、実施例にはこのような表面粗さを電解銅箔で作り込んだことが記載されている。
また、リチウムイオン電池の集電体として使用される銅箔は、Liの活物質を銅箔表面に塗布するが、このとき、電池の高容量化のために当該活物質を厚塗りにすることがある。しかしながら、活物質を厚塗りすると、活物質が剥離するといった銅箔と活物質との間の密着性に関する問題が発生するおそれがある。また、電池の高容量化のための別の手段としてSi系の活物質の使用が検討されているが、Si系活物質は膨張収縮率が既存のものよりも高いために密着性に問題が生じるおそれがある。
特許第3733067号公報 特開2009−68042号公報
このように、リチウムイオン電池の集電体として使用される銅箔の特性向上のための技術開発が行われているが、密着性及び超音波溶接性を同時に向上させる技術については、未だ開発の余地がある。そこで、本発明は負極活物質との良好な接着性、及び、銅箔又はタブ端子との良好な超音波溶接性を有するリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ねたところ、圧延銅箔の残留油分と圧延平行方向の光沢度との関係を制御し、さらに圧延平行方向の光沢度の数値範囲を制御することで、密着性及び超音波溶接性を同時に向上させることが可能なリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔を提供することができることを見出した。
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.5、及び、200≦圧延平行方向の60°光沢度≦600を満たすリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔である。
本発明に係るリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は一実施形態において、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.0を満たす。
本発明に係るリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は別の一実施形態において、450≦圧延平行方向の60°光沢度≦600を満たす。
本発明に係るリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は更に別の一実施形態において、リチウムイオン二次電池負極集電体用である。
本発明は別の一側面において、本発明に係るリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔を集電体として用いたリチウムイオン電池である。
本発明によれば、負極活物質との良好な接着性、及び、銅箔又はタブ端子との良好な超音波溶接性を有するリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔を提供することができる。
リチウムイオン電池のスタック構造の模式図を示す。 実施例及び比較例の残留油分と圧延平行方向の60°光沢度との関係を示すグラフである。
(リチウムイオン電池集電体用圧延銅箔)
本発明のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔の銅箔基材は圧延銅箔を使用する。当該圧延銅箔には圧延銅合金箔も含まれるものとする。圧延銅箔の材料としては、特に制限はなく、用途や要求特性に応じて適宜選択すればよい。例えば、限定的ではないが、高純度の銅(無酸素銅やタフピッチ銅等)の他、Sn入り銅、Ag入り銅、Ni、Si等を添加したCu−Ni−Si系銅合金、Cr、Zr等を添加したCu−Cr−Zr系銅合金のような銅合金が挙げられる。
圧延銅箔の厚みは特に制限はなく、要求特性に応じて適宜選択すればよい。一般的には1〜100μmであるが、リチウム二次電池負極の集電体として使用する場合、圧延銅箔を薄肉化した方がより高容量の電池を得ることができる。そのような観点から、典型的には2〜50μm、より典型的には5〜20μm程度である。
本発明のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.5を満たす。圧延銅箔の残留油分と圧延平行方向の60°光沢度との関係をこのように制御することで、負極活物質との良好な接着性、及び、銅箔又はタブ端子との良好な超音波溶接性が得られる。本発明のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.2を満たすのが好ましく、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.0を満たすのがより好ましい。
本発明のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は、さらに、200≦圧延平行方向の60°光沢度≦600を満たす。圧延平行方向の60°光沢度が200未満であると、圧延銅箔の表面のオイルピット量が多く、残留油分が多くなり、また、超音波溶接時の重ね合わせた銅箔と銅箔との接点が小さくなるため超音波溶接性が悪化する。また、圧延平行方向の60°光沢度が600超であると、アンカー効果が低減して負極活物質との密着性が悪化するおそれがある。本発明のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は、300≦圧延平行方向の60°光沢度≦600を満たすのが好ましく、450≦圧延平行方向の60°光沢度≦600を満たすのがより好ましい。
上記のような圧延銅箔の残留油分と圧延平行方向の光沢度との関係、及び、圧延平行方向の光沢度が制御された本発明のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔は、研磨処理や電着粒のめっきといった粗化処理を行わずに、オイルピットに起因する表面の凹凸状態を制御することにより構築することが可能である。オイルピットとは、ロールバイト内で圧延用ロールと被圧延材により封じ込められた圧延油が、被圧延材の表面に部分的に発生する微細な窪みである。粗化処理工程が省略されるので、経済性・生産性が向上するメリットがある。
圧延銅箔のオイルピットの形状、すなわち表面性状は、圧延ロールの表面粗さ、圧延速度、圧延油の粘度、1パス当たりの圧下率(とりわけ最終パスの圧下率)などを調節する事で制御可能である。例えば、表面粗さの大きな圧延ロールを使用すれば得られる圧延銅箔の表面粗さも大きくなり、逆に、表面粗さの小さな圧延ロールを使用すれば得られる圧延銅箔の表面粗さも小さくなりやすい。また、圧延速度を速く、圧延油の粘度を高く、又は1パス当たりの圧下率を小さくすることでオイルピットの発生量が増加しやすい。逆に、圧延速度を遅く、圧延油の粘度を低く、又は1パス当たりの圧下率を大きくすることでオイルピットの発生量が減少しやすい。
(リチウムイオン電池)
本発明に係る圧延銅箔を材料とする集電体とその上に形成された活物質層によって構成された負極を用いて、慣用手段によりリチウムイオン電池を作製することができる。リチウムイオン電池には、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担うリチウムイオン一次電池用及びリチウムイオン二次電池が含まれる。負極活物質としては、限定的ではないが、炭素、珪素、スズ、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、アルミニウム、インジウム、リチウム、酸化スズ、チタン酸リチウム、窒化リチウム、インジウムを固溶した酸化錫、インジウム−錫合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1〜9、比較例1〜6)
[圧延銅箔の製造]
幅600mmのタフピッチ銅のインゴットを製造し、熱間圧延により圧延した。
次に、焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に冷間圧延で、ワークロール径60mm、ワークロール表面粗さRaを0.03μmとし、最終パスの圧延速度400m/分で表1に記載の厚みに仕上げた。圧延油の粘度は4.0cSt(25℃)であった。得られた圧延銅箔はRaが0.04μmであった。この状態では銅箔に最終冷間圧延で使用した圧延油などの油分が付着している。この銅箔を、石油系溶剤と陰イオン界面活性剤を含有する溶液で洗浄し、銅箔表面に付着している銅微粉末及び圧延油等を取り除き、その後送風乾燥した。
銅箔表面における圧延油は、有機溶剤(脱脂溶媒)としてノルマルパラフィンを用いて脱脂処理により除去した。表1に当該脱脂処理において実施した銅箔の有機溶剤(脱脂溶媒)への浸漬時間を示す。なお、実施例1〜9では、このときの銅箔表面の残留油分と圧延平行方向の60°光沢度との関係式(残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.5)を満たすように制御している。
なお、銅箔表面から圧延油等を除去する方法として、従来公知の脱脂処理又は洗浄処理を採用することができ、さらに使用する有機溶剤(脱脂溶媒)としては、例えばノルマルパラフィン、イソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、エチレングリコールが挙げられる。
[60°光沢度]
60°光沢度G60RDは、JIS Z8741に準拠し、たとえば日本電色工業株式会社製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1等の種々の光沢度計を用いて、圧延方向に平行な方向の入射角60°での光沢度を測定することにより求めた。
[残留油分]
残留油分は以下の方法で測定した。すなわち、420mm×594mmのサイズの銅箔サンプルを50mm×50mm程度に小さく切り出した。次に、ビーカーに当該銅箔サンプルと溶媒(堀場製作所製H−997)を入れ、超音波洗浄機によって2分間の超音波洗浄を実施した。その後、堀場製作所製油分濃度計OCMA−555を用いて専用のセルに入れて油分濃度を測定した。溶媒は堀場製作所製H−997を用いて測定した。
なお、上記油分濃度は、本実施例で用いた堀場製作所製油分濃度計OCMA−555の他に、公知の一般的な方法によって測定することができる。また、溶媒についても、本実施例で用いた堀場製作所製H−997の他に、四塩化炭素等の公知の一般的な溶媒を用いることができる。
[活物質との密着性]
活物質との密着性を以下の手順で評価した。
(1)平均径9μmの人工黒鉛とポリビニリデンフルオライドを重量比1:9で混合し、これを溶剤N−メチル−2−ピロリドンに分散させる。
(2)銅箔の表面に上記の活物質を塗布する。
(3)活物質を塗布した銅箔を乾燥機にて90℃×30分間加熱する。
(4)乾燥後、20mm角に切り出し、1.5トン/mm2×20秒間の荷重をかける。
(5)上記サンプルをカッターにて碁盤目状に切り傷を形成し、市販の粘着テープ(セロテープ(登録商標))を貼り、重さ2kgのローラーを置いて1往復させて粘着テープを圧着する。
(6)粘着テープを剥がし、銅箔上に残存した活物質は、表面の画像をPCに取り込み、二値化によって銅表面の金属光沢部分と活物質が残存する黒色部分を区別し、活物質の残存率を算出。残存率は、各サンプル3つの平均値とした。活物質密着性の判定は、残存率50%未満を「×」、50%以上を「○」とした。
[超音波溶接性]
超音波溶接性を以下の手順で評価した。
(1)銅箔を100mm×150mmの大きさに切り出し、30枚重ねる。
(2)ブランソン社製のアクチュエータ(型番:Ultraweld L20E)にホーン(ピッチ0.8mm、高さ0.4mm)を取り付ける。アンビルは0.2mmピッチを使用した。
(3)溶接条件は、圧力40psi、振幅60μm、振動数20kHz、溶接時間は0.1秒とした。
(4)上記条件で溶接した後、銅箔を1枚ずつ剥離したときに、11枚以上の銅箔が溶接部分で破れた場合を「○」、0〜10枚の銅箔が溶接部分で破れた場合を「×」とした。なお、銅箔を剥離する前に、ホーンに接触していた最表層の銅箔の溶接部分を実態顕微鏡にて20倍で拡大観察し、クラックが発生していないことを確認してから剥離試験を実施した。
評価条件及び評価結果を表1に示す。
実施例1〜9は、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.5、及び、200≦圧延平行方向の60°光沢度≦600を満たしていた。そのため、活物質密着性、及び超音波溶接性のいずれも良好であった。
比較例1、2は、圧延平行方向の60°光沢度が600を超え、さらに残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)が2.5を超えたため、活物質密着性が不良であった。
比較例3は、圧延平行方向の60°光沢度が200未満であり、超音波溶接性が不良であった。より詳細には、比較例3は光沢度が低く、オイルピットによって銅箔に凹凸が多くできた状態となり、超音波溶接で銅箔を重ね合わせて溶接した際に、銅箔と銅箔の接点が少ない。その結果、超音波溶接性は光沢の高い銅箔よりも悪化した。
比較例4〜6は、残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)が2.5を超えたため、活物質密着性が不良であった。
図2に、実施例及び比較例の残留油分と圧延平行方向の60°光沢度との関係を示すグラフを示す。

Claims (5)

  1. 残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.5、及び、
    200≦圧延平行方向の60°光沢度≦600
    を満たすリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔。
  2. 残留油分[mg/m2]+(圧延平行方向の60°光沢度/400)≦2.0
    を満たす請求項1に記載のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔。
  3. 450≦圧延平行方向の60°光沢度≦600
    を満たす請求項1または2に記載のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔。
  4. リチウムイオン二次電池負極集電体用である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池集電体用圧延銅箔を集電体として用いたリチウムイオン電池。
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