以下に、本発明の実施の形態にかかる画像補正装置および画像補正方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる画像補正装置20の構成例を示す図である。画像補正装置20は、角加速度計測部1と、加速度計測部2と、動作量位置計算部3と、3次元形状計測部4と、撮像部5と、ブレ量計算部8と、補正画像出力部9と、を備える。画像補正装置20は、自動車または列車といった移動体に搭載され、移動体が移動することで位置を移動しながら、トンネル、橋、ビルなどの測定対象の構造物の状態を測定する。画像補正装置20は、測定対象の状態を測定するため、具体的に、測定対象の3次元形状を計測し、測定対象を撮影する。画像補正装置20は、撮影された画像にモーションブラーがあった場合、モーションブラーの画像を画素単位で補正する。以降の説明では、具体的に、画像補正装置20の測定対象がトンネルの場合について説明するが、画像補正装置20の測定対象はトンネルに限定されるものではない。
角加速度計測部1は、画像補正装置20が搭載された移動体が移動する際の、移動体の姿勢すなわち角加速度を検出する計測器である。角加速度計測部1は、例えば、ジャイロセンサーである。
加速度計測部2は、画像補正装置20が搭載された移動体が移動する際の、移動体の加速度を検出する計測器である。加速度計測部2は、例えば、加速度センサーである。
動作量位置計算部3は、角加速度計測部1で検出された角加速度、および加速度計測部2で検出された加速度に基づいて、角加速度および加速度を各々積算することによって、移動体に搭載された画像補正装置20の計測位置および姿勢、すなわち画像補正装置20の移動による動作量および位置を計算する。動作量位置計算部3は、画像補正装置20の動作量および位置を計算することによって、撮像部5が測定対象を撮影中のときの撮像部5の計測位置および姿勢、すなわち動作量および位置を求めることができる。動作量位置計算部3で計算される画像補正装置20の動作量および位置は、撮像部5の動作量および位置と同じである。撮像部5が測定対象を撮影中のときの動作量および位置とは、撮像部5が測定対象を撮影する瞬間、すなわちシャッターを切る瞬間の移動量および移動前後の位置である。画像補正装置20の位置については、図示しないGPS(Global Positioning System)などを用いて緯度および経度の絶対座標で表してもよいし、トンネルの入り口からの移動距離による相対的な位置情報で表してもよい。
3次元形状計測部4は、測定対象の3次元形状を取得可能な装置であり、測定対象であるトンネルの壁面までの距離および壁面の形状を計測する。3次元形状計測部4は、例えば、3次元レーザースキャナ、または距離画像取得装置である。3次元形状計測部4は、計測した3次元形状の情報を自装置で記憶してもよいし、図示しない記憶部に記憶させてもよい。以降の説明において、3次元形状の情報を単に3次元形状と称する場合がある。
撮像部5は、測定対象を撮影する装置である。撮像部5は、例えば、デジタルカメラである。撮像部5は、撮影した画像を自装置で記憶してもよいし、図示しない記憶部に記憶させてもよい。
ブレ量計算部8は、3次元形状計測部4で得られた測定対象の3次元形状、ならびに、動作量位置計算部3で得られた撮像部5の動作量の情報および位置の情報に基づいて、撮像部5が測定対象を撮影した画像にあるモーションブラーの状態を示すモーションブラー量、具体的にはモーションブラー量を表す計算式を算出する。以降の説明において、動作量の情報を単に動作量と称する場合がある。また、以降の説明において、位置の情報を単に位置と称する場合がある。ブレ量計算部8は、撮影された画像について、画素単位でモーションブラーが発生しているか否かを判定し、モーションブラーが発生している画素について、どの位置でどのようにモーションブラーが発生しているかを表す計算式を算出する。ブレ量計算部8の詳細な動作については後述する。
補正画像出力部9は、ブレ量計算部8で算出されたモーションブラー量からモーションブラーの補正量を算出する。具体的に、補正画像出力部9は、ブレ量計算部8で算出された計算式を用いて、計算式の逆算によってモーションブラーの補正量を算出する。補正画像出力部9は、算出した補正量を用いて撮像部5で撮影された画像の各画素を補正して、補正後の画像を出力する。補正画像出力部9は、補正後の画像を図示しない表示部に出力してもよいし、補正後の画像のデータを記憶媒体に出力してもよい。
図2は、実施の形態1にかかる画像補正装置20の3次元形状計測部4がトンネル21の3次元形状を計測している様子を示す図である。図2では、3次元形状計測部4の動作を分かり易くするため、画像補正装置20のうち3次元形状計測部4のみを示している。また、画像補正装置20を搭載している移動体の記載も省略している。画像補正装置20では、トンネル21を図の矢印22で示す方向に移動しながら、3次元形状計測部4がスキャン平面23をスキャンする。3次元形状計測部4は、3次元形状を測定可能なレーザースキャナ、または3次元形状を測定可能な距離画像センサーである。3次元形状計測部4がトンネル21内を移動しながらスキャンすることで、トンネル21全体の壁面までの距離および壁面の形状を計測することができる。
図3は、実施の形態1にかかる画像補正装置20の撮像部5がトンネル21の壁面を撮影している様子を示す図である。図2と同様、撮像部5の動作を分かり易くするため、画像補正装置20のうち撮像部5のみを示している。また、画像補正装置20を搭載している移動体の記載も省略している。画像補正装置20では、トンネル21を図の矢印22で示す方向に移動しながら、撮像部5がトンネル21の壁面の撮像範囲24の部分を撮影する。撮像部5がトンネル21内を移動し、また向きを変えながら撮影することで、トンネル21全体の壁面の画像を取得することができる。なお、撮像部5については、例えば1つのデジタルカメラに限定せず、複数のデジタルカメラを備える構成でもよい。撮像部5では、複数のデジタルカメラを各々異なる複数の方向に向けて設置する。複数のデジタルカメラが同時に撮影することで、撮像部5は、一度に撮影できる範囲が増え、帯状の画像を一度に撮影することができる。
画像補正装置20では、3次元形状計測部4がトンネル21の3次元形状を計測するとともに、撮像部5がトンネル21の壁面を撮影する。画像補正装置20では、3次元形状計測部4で計測されたトンネル21の任意の位置の3次元形状と、撮像部5で撮影されたトンネル21の任意の位置の画像とを対応付けて記録する。任意の位置については、前述のように、GPSなどを用いて緯度および経度の絶対座標で表してもよいし、トンネル21の入り口からの移動距離による相対的な位置情報で表してもよい。
つぎに、画像補正装置20が画像に含まれるモーションブラーを補正する原理について詳細に説明する。図4は、実施の形態1において、画像補正装置20を搭載した移動体が移動したことによって撮像部5の位置が変化したことによる撮像部5の撮影範囲の変化を示す図である。図4は、撮像部5が、第1の位置51から第2の位置52に移動しながら測定対象53を撮影した際の様子を示したものである。デジタルカメラといった撮像部5には画角があり、一定の範囲を同時に撮影することができる。撮像部5では、第1の位置51から撮影方向51αおよび撮影方向51βを同時に撮影していた場合、第2の位置52に移動すると、撮影方向51αは撮影方向52αに、撮影方向51βは撮影方向52βに各々変化する。撮像部5では、撮影方向51αおよび撮影方向52αによって第1の対象54が撮影され、撮影方向51βおよび撮影方向52βによって、第2の対象55が撮影されることになる。
第1の対象54については、撮像部5の移動に関わらず撮像部5から見れば同じ方向にあるため、第1の対象54が撮影された撮像面の像ではモーションブラーは小さい。一方、第2の対象55については、撮像部5の移動によって撮像部5から見た同じ方向には測定対象53の異なる部分があるため、第2の対象55が撮影された撮像面の像ではモーションブラーが大きい。画像補正装置20では、モーションブラーの大きさを正確に把握できれば、モーションブラーを補正することができる。モーションブラーの大きさを正確に把握できる場合とは、測定対象53と撮像部5との相対位置変化が把握できる場合である。測定対象53と撮像部5との相対位置変化が把握できる場合は、例えば、(a)測定対象53の3次元形状が把握でき、測定対象53と撮像部5の位置変化が把握できる場合、または、(b)測定対象53の3次元形状が把握でき、測定対象53または撮像部5の一方が固定で、他方の位置変化が把握できる場合、である。画像補正装置20は、3次元形状計測部4によって測定対象53の3次元形状が把握でき、角加速度計測部1、加速度計測部2および動作量位置計算部3によって画像補正装置20の位置変化が把握できる。また、測定対象53であるトンネル21は位置が固定である。従って、画像補正装置20は、上記(b)の場合に該当する。
図4の概念をふまえた上で、ブレ量計算部8が、第2の対象55に対応する撮像面の像で発生するモーションブラー量を示す計算式を算出する処理について説明する。図4において、撮像部5が第1の位置51から第2の位置52に移動するのに伴い、撮像部5で撮影されたβ方向の撮像面の像であるXβは、モーションブラー量計算式である次の式(1)で表すことができる。なお、式(1)中のΣの部分については、式(2)の条件を満たすものとする。
Bkは測定対象53の位置kにおける色および明るさを表し、iβkは位置kに対して撮影された時間の割合となる。位置mの撮影対象は、Xβに全く撮影されなかった場合、iβm=0と表現できる。iβkは撮像部5の移動情報と測定対象53の形状より求められる。Xβは実際に撮影された画像として得られる。前述のように、ブレ量計算部8は、3次元形状計測部4で計測された3次元形状、ならびに、動作量位置計算部3で計算された画像補正装置20の計測位置および姿勢の情報を取得している。また、撮像部5が測定対象53を撮影し、測定対象53の画像を得ている。従って、連立一次方程式を解くことによって、具体的には式(1)の逆算によってBkを求めることができる。補正画像出力部9は、ブレ量計算部8で算出されたモーションブラー量を示す計算式の式(1)を逆算することによって、撮影されたXpを用いて、モーションブラー量を補正した画像を得ることが可能となる。なお、式(1)によって、測定対象53の複数の点の加算として表現される離散的な表現としたが、一例であり、時刻毎に位置が変化することを利用して、時刻に対する積分表現にして正確な値を求めてもよい。以降の説明において、姿勢の情報を単に姿勢と称する場合がある。
つづいて、画像補正装置20による画像補正処理について説明する。図5は、実施の形態1にかかる画像補正装置20の画像補正処理を示すフローチャートである。まず、画像補正装置20では、移動体によってトンネル21内を移動し、3次元形状計測部4および撮像部5による計測位置を移動する(ステップS1)。動作量位置計算部3は、角加速度計測部1で検出された角加速度、および加速度計測部2で検出された加速度に基づいて、画像補正装置20の計測位置および姿勢、すなわち動作量および位置を計算する(ステップS2)。
3次元形状計測部4は、測定対象、ここではトンネル21の壁面の3次元形状を計測する(ステップS3)。同時に、撮像部5は、測定対象、ここではトンネル21の壁面を撮影する(ステップS4)。
画像補正装置20は、計測が終了していない場合(ステップS5:No)、ステップS1に戻って計測位置を移動して、ステップS2からステップS4の処理を繰り返し実施する。
計測が終了した場合(ステップS5:Yes)、ブレ量計算部8は、3次元形状計測部4で計測された3次元形状、ならびに、動作量位置計算部3で算出された画像補正装置20の計測位置および姿勢に基づいて、モーションブラー量を示す計算式を算出する(ステップS6)。補正画像出力部9は、ブレ量計算部8で算出されたモーションブラー量を示す計算式を逆算してモーションブラーの補正量を算出する(ステップS7)。
そして、補正画像出力部9は、算出したモーションブラーの補正量によって撮像部5で撮影された画像を加工し、モーションブラーを除去すなわち補正した画像を生成して出力する(ステップS8)。
なお、図5では、ステップS1からステップS5までの計測処理、およびステップS6からステップS8までの補正処理が異なる流れになっているが、実際には、画像補正装置20では、3次元形状計測部4が測定対象の3次元形状を計測する処理とともに、撮像部5が測定対象を撮影する処理を実施している。この場合、画像補正装置20は、測定対象の3次元形状および画像を同時に取得できるため、計測処理の流れの中で、測定された箇所から順次補正する処理を実施してもよい。
つづいて、画像補正装置20のハードウェア構成について説明する。画像補正装置20において、角加速度計測部1は、ジャイロセンサーなどの計測器により実現される。加速度計測部2は、加速度センサーなどの計測器により実現される。3次元形状計測部4は、3次元レーザースキャナなどの計測器により実現される。撮像部5は、デジタルカメラにより実現される。動作量位置計算部3、ブレ量計算部8、および補正画像出力部9は、処理回路により実現される。すなわち、画像補正装置20は、モーションブラー量を示す計算式を算出し、モーションブラーの補正量を算出し、モーションブラーを補正して補正した画像を出力するための処理回路を備える。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)およびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
図6は、実施の形態1にかかる画像補正装置20の処置回路をCPUおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がCPU91およびメモリ92で構成される場合、動作量位置計算部3、ブレ量計算部8、および補正画像出力部9の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路では、メモリ92に記憶されたプログラムをCPU91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、画像補正装置20は、動作量位置計算部3、ブレ量計算部8、および補正画像出力部9が処理回路により実行されるときに、モーションブラー量を示す計算式を算出するステップ、モーションブラーの補正量を算出するステップ、モーションブラーを補正して補正した画像を出力するステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。また、これらのプログラムは、画像補正装置20の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、CPU91は、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ92とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
図7は、実施の形態1にかかる画像補正装置20の処置回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアである場合、図7に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。動作量位置計算部3、ブレ量計算部8、および補正画像出力部9の各機能を機能別に処理回路93で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路93で実現してもよい。
なお、動作量位置計算部3、ブレ量計算部8、および補正画像出力部9の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、動作量位置計算部3の機能については専用のハードウェアとしての処理回路93でその機能を実現し、ブレ量計算部8および補正画像出力部9の機能についてはCPU91がメモリ92に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、画像補正装置20では、画像補正装置20すなわち撮像部5の動作量および位置を求め、測定対象の3次元形状を計測し、測定対象を撮影し、測定対象の3次元形状、ならびに、撮像部5の動作量および位置に基づいて、測定対象が撮影された画像にあるモーションブラーの状態を示すモーションブラー量を表す計算式を算出し、計算式の逆算からモーションブラーの補正量を算出し、撮影された画像のモーションブラーを補正することとした。これにより、画像補正装置20は、移動しながら測定対象を撮影する場合において、撮影された画像に含まれるモーションブラーを補正して、モーションブラーを除去した高解像度の画像を得ることができ、正確な画像計測が可能となる。
実施の形態2.
実施の形態1では撮影された画像のモーションブラーを補正する処理について説明した。ここで、ボケを生み出す要因には、モーションブラーの他にも、例えば、対象までの距離と光学系の焦点距離が一致しないことによる合焦の不正、いわゆるピンボケがある。実施の形態2では、撮影された画像に対して、さらにピンボケを補正する処理について説明する。実施の形態1と異なる部分について説明する。
図8は、実施の形態2にかかる画像補正装置20aの構成例を示す図である。画像補正装置20aは、画像補正装置20に対して、補正画像出力部9を補正画像出力部9aに置き換え、さらに、合焦距離取得部6およびボケ量計算部7を追加したものである。
合焦距離取得部6は、測定対象を撮影したときの合焦距離の情報を撮像部5から取得する。以降の説明において、合焦距離の情報を単に合焦距離と称する場合がある。具体的に、合焦距離取得部6は、撮像部5で撮影される画像のピントリングの位置から、撮像部5で測定対象が撮影されたときの合焦距離を取得する。一般的に、合焦距離取得部6の機能はデジタルカメラに含まれている。そのため、撮像部5および合焦距離取得部6を併せてデジタルカメラとしてもよい。合焦距離取得部6は、合焦距離を自装置で記憶してもよいし、図示しない記憶部に記憶させてもよい。
ボケ量計算部7は、3次元形状計測部4で得られた測定対象の3次元形状、および合焦距離取得部6で得られた合焦距離に基づいて、撮像部5が測定対象を撮影した画像にあるピンボケの状態を示すピンボケ量、具体的にはピンボケ量を表す計算式を算出する。ボケ量計算部7は、撮影された画像について、画素単位でピンボケが発生しているか否かを判定し、ピンボケが発生している画素について、どの位置でどのようにピンボケが発生しているかを表す計算式を算出する。ボケ量計算部7の詳細な動作については後述する。
補正画像出力部9aは、ブレ量計算部8で算出されたモーションブラー量からモーションブラーの補正量を算出する。さらに、補正画像出力部9aは、ボケ量計算部7で算出されたピンボケ量からピンボケの補正量を算出する。具体的に、補正画像出力部9aは、ボケ量計算部7で算出された計算式、およびブレ量計算部8で算出された計算式を用いて、計算式の逆算によってピンボケの補正量およびモーションブラーの補正量を算出する。補正画像出力部9aは、算出したピンボケの補正量およびモーションブラーの補正量を用いて撮像部5で撮影された画像の各画素を補正して、補正後の画像を出力する。補正画像出力部9aは、補正後の画像を図示しない表示部に出力してもよいし、補正後の画像のデータを記憶媒体に出力してもよい。
つぎに、画像補正装置20aが画像に含まれるピンボケを補正する原理について詳細に説明する。図9は、実施の形態2にかかる撮像部5が壁面31を撮影したときの壁面31、撮像部5、および撮像面35の位置関係を示す図である。図9では、説明を簡単にするため、撮像部5のうちレンズ38および撮像面35を示している。壁面31には、照明などの構造物32が設置されており、壁面31の部分の1点を撮影の第1の対象33とし、構造物32の1点を撮影の第2の対象34とする。また、撮像部5によって壁面31が撮影された撮像面35には、第1の対象33に対応する第1の像36があり、第2の対象34に対応する第2の像37がある。壁面31の第1の対象33を撮影した画像は、レンズ38を介して第1の光路39により、撮像面35の第1の像36の位置に表れる。構造物32の第2の対象34を撮影した画像は、レンズ38を介して第2の光路40により、撮像面35の第2の像37の位置に表れる。なお、41は撮像部5のレンズ38の光学中心を示し、2つのFはレンズ38の焦点を示す。
図9は、実施の形態2において、トンネル21の壁面31に撮像部5のピントを合わせて撮影した状態の光路を示したものである。壁面31の第1の対象33が、第1の光路39を通ってレンズ38によって集光され、撮像面35の第1の像36の位置に結像されている。これは、撮像部5の撮影においてピントが合った状態を示している。一方、壁面31の上に構造物32がある場合、構造物32からレンズ38までの距離は、壁面31からレンズ38までの距離と異なる。この場合、壁面31上の構造物32の第2の対象34が、第2の光路40を通ってレンズ38によって集光されるが、撮像面35の第2の像37の位置の1点に結像されず、広がった状態になる。これは、撮像部5の撮影においてピントがずれた状態を示している。一般的に、撮像部5の撮影対象、ここではトンネル21の壁面31は撮像部5のレンズ38に対して平行な平面ではないため、ピントの合う箇所、およびピントの合わない箇所ができる。ピントが合わない箇所は、図9の第2の像37のように、第2の対象34の部分が広がって、すなわちピンボケの状態で撮影される。
図9ではレンズ38から撮影対象までの距離は、ピントが合っている箇所を除き、別途計測しないと分からない。レンズ38から撮影対象までの距離が分からず、撮像面35においてピンボケが発生している場合、光路が不明なためボケ方が分からず正確な補正が難しい。一方で、レンズ38から撮影対象、図9の例では構造物32までの距離が分かる場合、光路計算ができるため、正確な補正をすることが可能となる。図10は、実施の形態2において、撮像部5で撮像された撮像面35の全ての像でピントが合った状態を示した図である。図10は、光学系としてレンズ38の光学中心41にピンホールを設定したピンホールカメラの光学系に相当する。図10では全ての撮像対象、ここでは壁面31および構造物32の点と撮像面35の像が1対1の関係になる。図10に示す状態にすることが、ピントを合わせる、すなわちピンボケの補正である。
図9および図10、すなわちレイトレーシング(Ray Tracing)の概念をふまえた上で、ボケ量計算部7が、構造物32の第2の対象34に対応する撮像面35の第2の像37のピンボケ量を示す計算式を算出する処理について説明する。ボケ量計算部7は、まず、現状として撮像面35の第2の像37にどのように第2の対象34が撮影されているかを把握する。ここで、第2の対象34の色および明るさをAkとし、撮影された色および明るさをXpとする。ただし、kは第2の対象34の位置を示し、pは撮像面35上の位置を示す。図9のように、ピントが合っていない場合、第2の対象34は撮像面35の複数の位置に分散して投影される。この場合、撮像面35上の第2の像37として観測されるXpは、ピンボケ量計算式である次の式(3)で表すことができる。なお、式(3)中のΣの部分については、式(4)の条件を満たすものとする。
hpkは撮像面35において撮像される場所毎に異なるAkの割合であり、ボケ量計算部7は、第2の光路40から計算することができる。前述のように、ボケ量計算部7は、3次元形状計測部4で計測された3次元形状、および合焦距離取得部6で取得された合焦距離を取得していることから、第2の光路40を正確に計算することができる。従って、全てのXpとAkは連立一次方程式の関係で示すことができる。Xpは撮影によって観測されるため、式(3)の逆算によってAkを求めることができる。すなわち、補正画像出力部9aは、ブレ量計算部8で算出されたモーションブラー量を示す計算式の式(1)、およびボケ量計算部7で算出されたピンボケ量を示す計算式の式(3)を逆算することによって、撮影されたXpを用いて、モーションブラー量およびピンボケ量を補正した画像を得ることが可能となる。詳細には、補正画像出力部9aは、図10に示すピンホールカメラモデルに照らし合わせて、モーションブラー量およびピンボケ量を補正した像を図10に示す撮像面35の第2の像37の位置に投影することによって、ピンボケおよびモーションブラーを補正することができる。
つづいて、画像補正装置20aによる画像補正処理について説明する。図11は、実施の形態2にかかる画像補正装置20aの画像補正処理を示すフローチャートである。まず、画像補正装置20aでは、移動体によってトンネル21内を移動し、3次元形状計測部4および撮像部5による計測位置を移動する(ステップS11)。動作量位置計算部3は、角加速度計測部1で検出された角加速度、および加速度計測部2で検出された加速度に基づいて、画像補正装置20aの計測位置および姿勢、すなわち動作量および位置を計算する(ステップS12)。
3次元形状計測部4は、測定対象、ここではトンネル21の壁面31の3次元形状を計測する(ステップS13)。同時に、撮像部5は、測定対象、ここではトンネル21の壁面31を撮影する(ステップS14)。撮像部5がトンネル21の壁面31を撮影すると、合焦距離取得部6は、撮像部5のピントリングの位置から合焦距離を取得する(ステップS15)。
画像補正装置20aは、計測が終了していない場合(ステップS16:No)、ステップS11に戻って計測位置を移動して、ステップS12からステップS15の処理を繰り返し実施する。
計測が終了した場合(ステップS16:Yes)、ボケ量計算部7は、3次元形状計測部4で計測された3次元形状、および合焦距離取得部6で取得された合焦距離に基づいて、ピンボケ量を示す計算式を算出する(ステップS17)。補正画像出力部9aは、ボケ量計算部7で算出されたピンボケ量を示す計算式を逆算してピンボケの補正量を算出する(ステップS18)。
ブレ量計算部8は、3次元形状計測部4で計測された3次元形状、ならびに、動作量位置計算部3で算出された画像補正装置20aの計測位置および姿勢に基づいて、モーションブラー量を示す計算式を算出する(ステップS19)。補正画像出力部9aは、ブレ量計算部8で算出されたモーションブラー量を示す計算式を逆算してモーションブラーの補正量を算出する(ステップS20)。
そして、補正画像出力部9aは、算出したピンボケおよびモーションブラーの補正量によって撮像部5で撮影された画像を加工し、ピンボケおよびモーションブラーを除去すなわち補正した画像を生成して出力する(ステップS21)。
なお、図11では、ステップS11からステップS16までの計測処理、およびステップS17からステップS21までの補正処理が異なる流れになっているが、実際には、画像補正装置20aでは、3次元形状計測部4が測定対象の3次元形状を計測する処理とともに、撮像部5が測定対象を撮影する処理を実施している。この場合、画像補正装置20aは、測定対象の3次元形状および画像を同時に取得できるため、計測処理の流れの中で、測定された箇所から順次補正する処理を実施してもよい。
画像補正装置20aのハードウェア構成について説明する。画像補正装置20aにおいて、合焦距離取得部6は、撮像部5とともにデジタルカメラにより実現される。動作量位置計算部3、ボケ量計算部7、ブレ量計算部8、および補正画像出力部9aは、処理回路により実現される。画像補正装置20aの処理回路についても、実施の形態1と同様、図6または図7に示すような構成となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、画像補正装置20aでは、画像補正装置20の処理に加えて、さらに、測定対象が撮影されたときの合焦距離に基づいて、測定対象が撮影された画像にあるピンボケの状態を示すピンボケ量を表す計算式を算出し、計算式の逆算からピンボケの補正量を算出し、撮影された画像のピンボケを補正することとした。これにより、画像補正装置20aは、移動しながら測定対象を撮影する場合において、撮影された画像に含まれるピンボケとともにモーションブラーを補正して、ピンボケおよびモーションブラーを除去した高解像度の画像を得ることができ、正確な画像計測が可能となる。
実施の形態3.
実施の形態3では、画像補正装置において3次元形状計測部4を使用しないで測定対象の3次元形状を取得する方法について、実施の形態2と異なる部分について説明する。
図12は、実施の形態3にかかる画像補正装置20bの構成例を示す図である。画像補正装置20bは、画像補正装置20aに対して、3次元形状計測部4を削除し、平面内距離計測部10および3次元形状化処理部11を追加したものである。
平面内距離計測部10は、測定対象であるトンネル21の壁面31までの距離を計測する。平面内距離計測部10は、例えば、2次元レーザースキャナである。
3次元形状化処理部11は、平面内距離計測部10で計測されたトンネル21の壁面31までの距離の測定結果を、動作量位置計算部3で計算された画像補正装置20bの動作量および位置を用いて3次元化する。すなわち、3次元形状化処理部11は、平面内距離計測部10による測定結果である2次元平面のスキャン結果を積算して3次元化する。
その他の構成の動作は、実施の形態1および実施の形態2と同様である。なお、画像補正装置20bの位置については、実施の形態2と同様、GPSなどを用いて緯度および経度の絶対座標で表してもよいし、トンネル21の入り口からの移動距離による相対的な位置情報で表してもよい。
つづいて、画像補正装置20bによる画像補正処理について説明する。図13は、実施の形態3にかかる画像補正装置20bの画像補正処理を示すフローチャートである。まず、画像補正装置20bでは、移動体によってトンネル21内を移動し、平面内距離計測部10および撮像部5による計測位置を移動する(ステップS11)。動作量位置計算部3は、角加速度計測部1で検出された角加速度、および加速度計測部2で検出された加速度に基づいて、画像補正装置20bの動作量および位置を計算する(ステップS12)。
平面内距離計測部10は、測定対象、ここではトンネル21の壁面31までの距離を計測する(ステップS31)。3次元形状化処理部11は、平面内距離計測部10で計測されたトンネル21の壁面31までの距離の測定結果を、動作量位置計算部3で計算された画像補正装置20bの動作量および位置を用いて3次元化する(ステップS32)。以降のステップS14からステップS21の処理は、図11のフローチャートに示す実施の形態2のときの処理と同様である。
画像補正装置20bのハードウェア構成について説明する。画像補正装置20bにおいて、平面内距離計測部10は、2次元レーザースキャナなどの計測器により実現される。動作量位置計算部3、ボケ量計算部7、ブレ量計算部8、補正画像出力部9a、および3次元形状化処理部11は、処理回路により実現される。画像補正装置20bの処理回路についても、実施の形態1と同様、図6または図7に示すような構成となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、画像補正装置20bでは、3次元形状を、平面内距離計測部10および3次元形状化処理部11によって取得することとした。これにより、3次元形状を計測する装置を使用しなくても、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態では、実施の形態2の画像補正装置20aから3次元形状計測部4を削除し、平面内距離計測部10および3次元形状化処理部11を追加した場合について説明したが、実施の形態1にも適用可能である。画像補正装置20から3次元形状計測部4を削除し、平面内距離計測部10および3次元形状化処理部11を追加してもよい。この場合の画像補正装置は、図12の画像補正装置20bから、合焦距離取得部6およびボケ量計算部7を削除し、補正画像出力部9aを補正画像出力部9に置き換えたものと同じである。
実施の形態4.
実施の形態4では、画像補正装置が列車に搭載された場合の構成について、実施の形態3と異なる部分について説明する。ここでは、一例として画像補正装置が列車に搭載された場合について説明するが、レールなどの軌道上を移動するもの、例えば、トロッコ、映画の撮影に使用される台車、またはリニアステージなどにも適用可能である。
図14は、実施の形態4にかかる画像補正装置20cの構成例を示す図である。画像補正装置20cは、画像補正装置20bに対して、角加速度計測部1を削除し、動作量位置計算部3を動作量位置計算部3cに置き換えたものである。
動作量位置計算部3cは、加速度計測部2で検出された加速度に基づいて、加速度を積算することによって、列車に搭載された画像補正装置20cの計測位置、すなわち動作量および位置を計算する。動作量位置計算部3cは、画像補正装置20cの動作量および位置を計算することによって、撮像部5が測定対象を撮影中のときの撮像部5の動作量および位置を求めることができる。画像補正装置20cの位置については、実施の形態3と同様、GPSなどを用いて緯度および経度の絶対座標で表してもよいし、トンネル21の入り口からの移動距離による相対的な位置情報で表してもよい。
画像補正装置20cでは、列車に搭載される場合、自動車に搭載される場合と比較して移動方向が制限される。画像補正装置20cを搭載した列車はレール上を移動するため、レールの敷設のされ方によっては、画像補正装置20cがどのように移動するのかある程度予測できる場合がある。例えば、レールが直線上に敷設されている場合である。このような場合、画像補正装置20cでは、加速度計測部2だけの情報で自装置の動きを計算することが可能である。これにより、画像補正装置20cでは、画像補正装置20bよりも構成を簡略化することが可能となる。
画像補正装置20cによる画像補正処理については、図13のフローチャートに示す画像補正装置20bの画像補正処理のステップS12において、角加速度計測部1の部分の処理を削除すればよい。画像補正装置20cにおける画像補正処理のその他の処理は、画像補正装置20bと同様である。
画像補正装置20cのハードウェア構成について説明する。動作量位置計算部3c、ボケ量計算部7、ブレ量計算部8、補正画像出力部9a、および3次元形状化処理部11は、処理回路により実現される。画像補正装置20cの処理回路についても、実施の形態1と同様、図6または図7に示すような構成となる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、画像補正装置20cでは、移動体が列車などの移動方向が制限される場合、角加速度計測部1を削除した構成にしてもよい。これにより、姿勢を計測する装置を使用しないことから、実施の形態3の画像補正装置20bと比較して、画像補正装置20cの構成を簡略化することができる。
なお、本実施の形態では、実施の形態3の画像補正装置20bから角加速度計測部1を削除し、動作量位置計算部3を動作量位置計算部3cに置き換えた場合について説明したが、実施の形態2にも適用可能である。画像補正装置20aから角加速度計測部1を削除し、動作量位置計算部3を動作量位置計算部3cに置き換えてもよい。また、実施の形態1にも適用可能である。画像補正装置20から角加速度計測部1、動作量位置計算部3および3次元形状計測部4を削除し、動作量位置計算部3c、平面内距離計測部10および3次元形状化処理部11を追加してもよい。この場合の画像補正装置は、図14の画像補正装置20cから、合焦距離取得部6およびボケ量計算部7を削除し、補正画像出力部9aを補正画像出力部9に置き換えたものと同じである。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。