以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1〜図3を参照して、第1実施形態のフィルム及びフィルムの貼付方法に係る貼付装置1の構成について説明する。貼付装置1は、被貼付面BSを有する基材Bに対してフィルムFを貼り付ける貼付装置である。被貼付面BSを有する基材Bとは、フィルムFが貼付けられる面を有した基材であれば特に限定されない。本実施形態では、基材Bとして、上方へ凸となるように湾曲した被貼付面BSを有し、長さ方向における横断面形状が一定であるものを採用した。フィルムFは、薄い膜状のものであれば特に限定されないが、例えば合成樹脂等の高分子成分を薄い膜状に成型したものである。フィルムFの詳細については後述する。
まず、貼付装置1の躯体構成50について説明する。図1〜図3に示すように、貼付装置1は、躯体構成50として、土台部51と、土台部51の上端において略水平に設けられた矩形状の平板部52と、平板部52の四隅から上方に延びる4本の柱部53と、隣り合う柱部53の上端間に架け渡された4本の梁部54と、を備えている。躯体構成50の各構成は、例えばアルミフレームにより構成されている。土台部51は、キャスター51aにより移動可能とされている。平板部52上には、基材Bを載置する矩形状のテーブル41が設けられている。平板部52及びテーブル41の長手方向及び短手方向は一致している。以下、平板部52及びテーブル41の長手方向をX軸方向、短手方向をY軸方向として説明する場合がある。また、X軸方向及びY軸方向と直交する方向であって柱部53が延びる方向をZ軸方向として説明する場合がある。
貼付装置1は、フィルムFを押圧することによりフィルムFを基材Bに貼り付ける貼付機構10(押圧部)と、フィルムFを把持するフィルム把持部30と、フィルムFの張力を調整可能な張力調整部40と、を備えている。これらの貼付機構10及びフィルム把持部30は、上述の躯体構成50中に組み込まれている。なお、図1においては、貼付機構10及びフィルム把持部30の詳細を明確に示すために、紙面手前側に配置される一部の部材(後述のシャフト部17等)を省略して示している。
貼付機構10は、フィルムFを押圧することにより、フィルムFを基材Bにおける第1の方向の一端BE1から他端BE2に向かって貼り付ける貼付部11を有する。第1の方向とは、テーブル41に基材Bが載置された状態における基材Bの延在方向(すなわち水平方向)であって、上述したX軸方向である。以下では、基材Bがテーブル41に載置されていることを前提として説明する。また、フィルムFの説明における各方向は、フィルムFが基材Bに貼り付けられている状態を前提として説明する。
貼付機構10は、上述の貼付部11と、第2の方向における貼付部11によるフィルムFの押圧位置を決定する位置決め機構12と、貼付部11をX軸方向に駆動させる駆動機構13と、貼付部11を支持する支持機構14と、を有している。第2の方向とは、X軸方向に直交すると共に被貼付面BSとフィルムFとが対向する方向であり、上述したZ軸方向である。貼付機構10は、基材Bに対して、X軸方向及びZ軸方向において相対的に移動することによって、フィルムFを押圧する。具体的には、位置決め機構12が貼付部11をZ軸方向に駆動させるとともに、駆動機構13が貼付部11をX軸方向に駆動させることによって、貼付部11により基材Bに対してフィルムFが押圧される。
貼付部11は、フィルムFを押圧することにより、フィルムFを基材Bの被貼付面BSに貼り付ける。フィルムFを押圧するとは、貼付部11と被貼付面BSとの間にフィルムFが挟まれた状態において、貼付部11がフィルムFを被貼付面BSに押し当てることをいう。貼付部11は、支持機構14によってフィルムF及び基材Bよりも上方で支持されており(詳細は後述)、フィルムF及び基材Bよりも上方から、フィルムFを押圧する。貼付部11は、先端11Xがスキージ型の形状とされており、先端11XでフィルムFを押圧する。先端11Xには、クッション材として例えばゴムブレード(図示せず)が設けられる。なお、貼付部11の先端11Xの形状はスキージ型に限定されず、例えばローラ型であってもよい。貼付部11の幅方向の長さは、基材Bの幅方向の長さよりも長い。
貼付部11は、Y軸方向に沿って複数の分割部11a,11b,11cに分割されている。貼付部11は、分割部11aの両脇に分割部11b,11cが配置されており、分割部11aと分割部11b、及び、分割部11aと分割部11cは、それぞれ連結具15により連結されている。本実施形態では、X軸方向から見て、基材B(被貼付面BS)が湾曲形状とされており、Y軸方向における基材Bの中央部分ほど、Z軸方向正側(上方)に凸形状とされている。貼付部11は、先端11Xが基材B(被貼付面BS)の湾曲形状に応じた形状とされている。すなわち、貼付部11は、X軸方向から見て、Y軸方向における先端11Xの中央部分ほど、Z軸方向正側に凹形状とされている。また、貼付部11は、Z軸方向から見て、基材Bの一端BE1から他端BE2に向かって凸形状となるように、湾曲形状に形成されている。連結具15は可動式の連結具であり、分割部11a,11b,11c及びガイドシャフト24の配置に応じて回動する連結具である。
また連結具15は、分割部11a,11b,11cの間に過度な隙間が生じないよう分割部11a,11b,11cの相対的な位置を調整するように機能してもよい。例えば、基材Bの被貼付面BSが大きく湾曲したものであり、Y軸方向における中央部分における突出量が大きい場合、分割部11b,11cが内側に絞られた状態で、連結具15により分割部11b,11cと分割部11aとが連結される。分割部11a,11b,11cは、駆動部12bの駆動力によって、それぞれ独立してZ軸方向へ駆動可能である。なお、駆動部を追加することによって、分割部11a,11b,11cが、それぞれ独立してX軸方向へ駆動可能であってもよい。これによって、Z軸方向から見たときの貼付部11の湾曲形状を基材Bに合わせて調整することができる。このとき、連結具15は、Z軸方向から見たときの分割部11a,11b,11c同士の連結角度を変更可能である。なお、連結具15は必ずしも設けられていなくてもよい。すなわち、分割部11a,11b,11cが互いに連結されたものでなくてもよい。
支持機構14は、基材Bの上方から貼付部11を支持するための機構である。また、支持機構14は、貼付部11のX軸方向への駆動をガイドするガイド機構としても機能する。支持機構14は、X軸方向に延びる一対の梁部54の両端部において該一対の梁部54間に架け渡されるように設けられた一対の取付板16と、一対の取付板16間に架け渡されるように設けられたX軸方向に延びる一対のシャフト部17(なお、図2では、一対のシャフト部17のうち、Y軸方向正側(Y軸方向一端側)のシャフト部17のみ示している)と、一対のシャフト部17それぞれの両端を取付板16に固定するシャフトホルダ18(なお、図2では、シャフトホルダ18のうち、Y軸方向負側(Y軸方向他端側)のシャフトホルダ18のみ示している)と、一対のシャフト部17間においてX軸方向に延びて一対の取付板16に固定された駆動機構取付板19と、一対のシャフト部17それぞれに設けられた一対のリニアベアリング(リニアブッシュ)20と、一対のリニアベアリング20の上面及び駆動機構取付板19に取り付けられるスライダ13b(詳細は後述)に固定されたスライド板21と、スライド板21をZ軸方向に貫通するとともにスライド板21に固定されたガイドシャフト22と、ガイドシャフト22の下端に固定された支持用の箱体23と、を有している。
箱体23は、略水平に設けられZ軸方向で対向する上壁部23a及び下壁部23bと、略垂直に設けられ上壁部23a及び下壁部23bを連結する連結壁部23cとを含んで構成されている。上壁部23aの上面にはZ軸方向負側(下方)に推力を与える位置決め機構12の駆動部12a(詳細は後述)が固定されている。ガイドシャフト22は、駆動部12aが上壁部23aをZ軸方向負側に駆動させることに伴って、Z軸方向に伸縮可能とされている。また、上壁部23aの下面にはZ軸方向負側に推力を与える駆動部12b(詳細は後述)が固定されており、該駆動部12bの下端にガイドシャフト24が固定され、該ガイドシャフト24の下端に貼付部11が固定されている。シャフト部17は例えばアルミ製の円筒軸状部材である。リニアベアリング20は、シャフト部17と組み合わせて使用されるガイド部材であり、スライダ13bの駆動に伴い、シャフト部17の周上を少ない摩擦抵抗でX軸方向に直線運動する。リニアベアリング20は、スライダ13bに固定されたスライド板21のX軸方向の駆動をガイドする。
位置決め機構12は、貼付部11によるフィルムFのZ軸方向における押圧位置を決定する。位置決め機構12は、駆動部12a,12bにより構成されている。駆動部12a,12bとしてエアリンダが採用されており、当該エアシリンダは、空気圧によって貼付部11をZ軸方向負側に駆動させる。駆動部12a,12bに与えられる空気圧は、基材Bの形状に応じて予め設定されている。駆動部12aは、上端がスライド板21に固定されるとともに下端が上壁部23aの上面に固定されている。駆動部12aは、空気圧によって箱体23をZ軸方向負側に駆動させることにより、駆動部12b及びガイドシャフト24を介して貼付部11をZ軸方向負側に駆動させる。すなわち、駆動部12aは、箱体23をZ軸方向負側に駆動させることにより、貼付部11のZ軸方向における大まかな押圧位置を決定する。駆動部12aは、例えばY軸方向に並んで2つ設けられている。
駆動部12bは、空気圧によってガイドシャフト24をZ軸方向負側に駆動させることにより、ガイドシャフト24の下端に固定された貼付部11をZ軸方向負側に駆動させる。駆動部12bは、例えばY軸方向に並んで7つ設けられている。Y軸方向中央に位置する3つの駆動部12b(中央の駆動部12b)はガイドシャフト24を介して貼付部11の分割部11aに固定されている。また、中央の駆動部12bよりもY軸方向正側に位置する2つの駆動部12bはガイドシャフト24を介して分割部11bに固定されており、Y軸方向負側に位置する2つの駆動部12bはガイドシャフト24を介して分割部11cに固定されている。このため、駆動部12bは分割部11a,11b,11cをそれぞれ独立してZ軸方向負側に駆動させることが可能であるが、各駆動部12bが、それぞれ同じ推力で分割部11a,11b,11cをZ軸方向負側に駆動させてもよい。駆動部12bが分割部11a,11b,11cをそれぞれ独立してZ軸方向負側に駆動させる場合には、連結具15が設けられていなくてもよいし、または、分割部11a,11b,11cの独立した動作を阻害しないように連結具15自体にアクチュエータが内蔵されていてもよい。駆動部12bは、駆動部12aによって貼付部11のZ軸方向における大まかな押圧位置が決定された後に、各分割部11a,11b,11cをZ軸方向負側に駆動させることにより貼付部11のZ軸方向における詳細な押圧位置を決定する。駆動部12bによる位置決め後の貼付部11のZ軸方向の位置は、フィルムFを基材Bの被貼付面BSに押圧可能な位置である。
駆動機構13は、支持機構14であるスライド板21をX軸方向に駆動させることにより、支持機構14に支持された貼付部11をX軸方向に駆動させる。駆動機構13は例えば単軸ロボットを採用した駆動機構によって構成される。以下では、駆動機構13が単軸ロボットであるものとして説明する。駆動機構13は、駆動機構取付板19上に固定されたX軸方向に延びるベース部13aと、モータによってベース部13a内をX軸方向に駆動するスライダ13bとを有している。スライダ13bは、その上面においてスライド板21を固定している。駆動機構13は、専用のコントローラ(図示せず)により制御される。コントローラには、例えば、スライダ13bを駆動させる際のスライダ13bの駆動速度及び駆動距離が予め設定されている。なお、コントローラに予め設定された移動速度(駆動速度)は、貼付部11がフィルムFを押圧している状態において可変である。
ここで、テーブル41には基材Bに加えて拡張部60が設けられている。拡張部60は、X軸方向において基材Bの一端BE1に連続して設けられた第一拡張部60aと、基材Bの他端BE2に連続して設けられた第二拡張部60bとを有している。第一拡張部60a及び第二拡張部60bの上面は、基材Bの被貼付面BSと面一とされている。駆動機構13は、貼付部11をX軸方向に駆動させるに際し、駆動の始点を第一拡張部60aが設けられた位置とするとともに、駆動の終点を第二拡張部60bが設けられた位置とする。なお、図1〜図3には図示していないが、フィルムFは、第一拡張部60aよりもX軸方向負側(X軸方向において基材Bが設けられた側と反対側)であって基材Bの被貼付面BSとZ軸方向の位置が略一致する位置において、フィルム把持部30に把持された側と反対側の端部が把持されているものとする(詳細は後述)。
フィルム把持部30は、X軸方向における他端BE2側のフィルムFの端部FEを把持するとともに、Z軸方向に駆動する。フィルム把持部30は、端部FEを把持する把持部材31a,31b,31cが設けられたY軸方向に延びる把持板31と、X軸方向における他端BE2側で隣り合う柱部53の上端間及び下端間で架け渡された一対の取付板32と、一対の取付板32間に架け渡されるように設けられたZ軸方向に延びる一対のシャフト部33(図3(b)ではY軸方向正側のシャフト部33のみ示している)と、一対のシャフト部33それぞれの両端を取付板32に固定するシャフトホルダ34(図3(b)ではY軸方向負側のシャフトホルダ34のみ示している)と、一対のシャフト部33間においてZ軸方向に延びて一対の取付板32に固定された駆動機構取付板35と、駆動機構取付板35に固定されたZ軸方向に延びる駆動機構36と、一対のシャフト部33それぞれに設けられた一対のリニアベアリング(リニアブッシュ)37と、一対のリニアベアリング37及び駆動機構36のスライダ36bに固定されたスライド板38と、を有している。把持部材31aは把持板31におけるY軸方向中央部分に設けられており、把持部材31b,31cは、把持板31におけるY軸方向両端部分に設けられている。把持部材31a,31b,31cは、それぞれ、把持板31からZ軸方向正側に突起した突起部31xを有している。当該突起部31xにフィルムFの孔部(詳細は後述)が嵌合されることにより、フィルムFがフィルム把持部30に固定される。
駆動機構36は、上述した駆動機構13同様、例えば単軸ロボットを用いた駆動機構によって構成される。駆動機構36は、駆動機構取付板35に固定されたZ軸方向に延びるベース部36aと、モータによってベース部36a内をZ軸方向に駆動するスライダ36bとを有している。スライダ36bはスライド板38、ガイドシャフト39、及び連結板44を介して把持板31と固定されている。よって、把持板31は、スライダ36bのZ軸方向への駆動に伴ってZ軸方向に駆動する。駆動機構36は、専用のコントローラ(図示せず)により制御される。コントローラには、例えば、スライダ36bを駆動させる際のスライダ36bの駆動速度及び駆動距離が予め設定されている。スライダ36bのZ軸方向の駆動速度及び駆動距離は、駆動機構13のコントローラに設定されたスライダ13bのX軸方向の駆動速度及び駆動距離に応じて決まる。本実施形態では、貼付部11によるフィルムFの押圧時において、常に、X軸方向(被貼付面BSの延在方向)と押圧前のフィルムFとがなす角度が略一定角度とされる。そのために、スライダ36bの駆動速度及び駆動距離は、スライダ13bの駆動速度及び駆動距離に応じた値とする必要がある。スライダ13b,36bの駆動速度及び駆動距離は、駆動機構13,36のコントローラにおいて予め対応づけられた値が設定されていてもよい。また、例えば、駆動機構13,36のコントローラ間において、貼付部11による押圧時に、リアルタイムに位置、速度、フィルムに対する押圧力などに関する情報の信号の送受信がなされることで、双方の駆動速度及び駆動距離を調整するものであってもよい。
張力調整部40は、フィルム把持部30に搭載されている。具体的には、張力調整部40は、把持部材31a,31b,31cをX軸方向へ駆動させる駆動部43と、スライド板38をX軸方向に貫通するとともにスライド板38に固定されたガイドシャフト39と、把持板31及びガイドシャフト39を連結する連結板44と、を備えている。駆動部43として、例えばエアシリンダが採用されており、空気圧を制御することによって張力を調整することができる。張力調整部40は、把持板31を介して把持部材31a,31b,31cをX軸方向へ駆動させることができる。なお、張力調整部は、エアシリンダ等の駆動部を用いることに代えて、ロール状の巻取り装置を設け、フィルムの繰出し長さを調整する構造であってもよい。
次に、図1〜図3に加えて図4及び図5も参照しながら、フィルムFの詳細について説明する。フィルムFは、上述したように、貼付機構10を有する貼付装置1によって基材Bに貼り付けられるフィルムである。図4(a)に示されるように、フィルムFは、矩形状の主要部71と、主要部71の長手方向の一端71x(主要部71におけるX軸方向負側の端部)に連続的に接続された延長部72(第1の延長部)と、主要部71の長手方向の他端71y(主要部71におけるX軸方向正側の端部)に連続的に接続された延長部73(第2の延長部)と、を備えている。延長部72は台形状に形成されている。延長部72のY軸方向の長さは、一端71xとの接続箇所からX軸方向における該接続箇所の反対側の端部72xに向かうにつれて長くなるように形成されている。同様に延長部73も台形状に形成されている。延長部73のY軸方向の長さは、他端71yとの接続箇所からX軸方向における該接続箇所の反対側の端部73xに向かうにつれて長くなるように形成されている。ただし、延長部72,73の形状は特に限定されるものではなく、上述のように端部72x,73xに向かうに従って広がるような台形状でなくともよい。例えば、延長部72,73は、矩形状であってもよく、端部72x,73xに向かうに従って狭まるような台形状であってもよい。
主要部71は、貼付機構10の貼付部11からの押圧を受けて基材Bに押し当てられる。ここで、延長部72,73は、貼付部11からの押圧を受ける点において主要部71と同様であるが、基材Bではなく拡張部60に押し当てられる点において主要部71と異なっている。延長部72は、主要部71に先行して貼付部11からの押圧を受け、第一拡張部60aに押し当てられる。また、延長部73は、主要部71に続いて貼付部11からの押圧を受け、第二拡張部60bに押し当てられる。なお、延長部72,73は、必ずしも拡張部60に押し当てられなくともよい。例えば、基材BがフィルムFの主要部71よりも大きく、基材Bの一部が拡張部としての機能を発揮してよい。あるいは、貼付装置1の機構側で押圧調整がされてもよい。例えば、フィルムFのうち延長部72,73に対応する部分には貼付部11を僅かに当てながら移動させることで、拡張部60に対して延長部72,73が押し当てられない状態としつつ、主要部71に対応する部分では貼付部11を基材Bに押し当ててよい。なお、フィルムFのうち延長部72,73に対応する部分に貼付部11を僅かに当てながら移動させる場合、フィルムFを僅かに持ち上げるように張力調整部40を制御することで、フィルムFに対して作用する貼付部11の圧力が、主要部71に作用する圧力と略一定となるようにしてもよい。
フィルムFのX軸方向における両端部近傍には、突起部31xに嵌合される孔部77が形成されている。すなわち、延長部73の端部73x近傍には、把持板31の突起部31xに嵌合される孔部77yが形成されている。また、延長部72の端部72xには、把持部材91(図5参照)の突起部31xに嵌合される孔部77xが形成されている。なお、把持部材91(図5参照)は、フィルムFにおける、フィルム把持部30に把持された側と反対側の端部(すなわち、延長部72の端部72x)を把持している。フィルムFの貼付作業が行われている状態においては、把持部材91のZ軸方向の位置は固定されている。突起部31xと孔部77とが互いに嵌合されることにより、把持板31及び把持部材91によってフィルムFを強固に把持することができる。また、孔部77を形成した方が、貼付装置の準備が容易で、位置決め精度が高い。また、孔部77は必ずしも必要でなく、貼付装置側にフィルムFを把持する機能、若しくは貼付装置と粘着剤で固定しても良い。
フィルムFの主要部71及び延長部72,73は、図4(b)に示されるように三層構造とされており、基材B(又は拡張部60。以下、基材B等として説明する場合がある)に貼り付け可能な粘着面70xを有したフィルム本体70aと、フィルム本体70aの粘着面70x(下面)に対向するように配置された剥離シート70bと、フィルム本体70aの装飾面70y(上面)に対向するように配置されたアプリケーションフィルム70cと、を含んで構成されている。本明細書では説明のために、3層構造と記載しているが、層数は様々な態様を採用してよい。例えば、フィルム本体に意匠性を高めるため多数の層を積層させてもよい。
フィルム本体70aは、例えば合成樹脂等の高分子成分を薄い膜状に成型したものであり、アクリル系粘着剤やウレタン系粘着剤により構成された粘着面70xと、ポリ塩化ビニルやポリウレタンにより構成された装飾面70yとを有している。粘着面70xは基材B等に貼り付けられる部分である。装飾面70yは基材B等に貼り付けられたフィルム本体70aの表面になる部分である。剥離シート70bは、例えばセルロース系樹脂やシリコーン樹脂により構成されている。剥離シート70bは、フィルム本体70aの粘着面70xに貼付されており、フィルム本体70aを基材B等に貼り付ける直前に粘着面70xから剥離される。アプリケーションフィルム70cは、例えばオレフィン系樹脂やポリウレタンにより構成されている。アプリケーションフィルム70cは、フィルム貼り付け直前までフィルム本体70aを保護するものであり、フィルム本体70aの装飾面70yに貼付されており、フィルム本体70aを基材B等に貼り付けた後に、装飾面70yから分離される。
ここで、延長部72は、延長部72と主要部71との境界領域である一端71xにおいて、主要部71に連続的に接続されている。また、延長部73は、延長部73と主要部71との境界領域である他端71yにおいて、主要部71に連続的に接続されている。具体的には、図4(a)及び図4(b)に示されるように、延長部72と主要部71との境界領域である一端71xには、Y軸方向(フィルムFの面方向における貼付機構10が移動する方向であるX軸方向と交差する方向)に延びるスリット状のスリット部74x(分離部)が形成されている。また、延長部73と主要部71との境界領域である他端71yには、Y軸方向に延びるスリット状のスリット部74y(分離部)が形成されている。スリット部74x,74yは、上述したフィルム本体70a及び剥離シート70bにのみ形成されており、アプリケーションフィルム70cには形成されていない。すなわち、主要部71と延長部72とは、フィルム本体70a及び剥離シート70bにおいてスリット部74xの部分で分離可能とされた状態で、アプリケーションフィルム70cによって接続されている。また、主要部71と延長部73とは、フィルム本体70a及び剥離シート70bにおいてスリット部74yの部分で分離可能とされた状態で、アプリケーションフィルム70cによって接続されている。
なお、主要部71と延長部72,73との境界領域とは、主要部71と延長部72,73との間の境界(本実施形態では一端71xまたは他端71y)及びその近傍を含む領域をいう。分離部(ここではスリット部74x,74y)は、境界の上に形成されてもよいし、境界よりも主要部71側あるいは延長部72,73側に形成されてもよい。
ここで、スリット部74x,74yのスリット幅(スリットのX軸方向の幅)は、スリット部74x,74yにおいて、主要部71及び延長部72,73の少なくともフィルム本体70aが連続しているとみなせる程度に、狭くされている。連続している程度に狭いとは、貼付部11により一端71x及び他端71yが押圧された際に、スリットの影響によりショックラインが生じない程度に狭いことをいう。具体的には、当該スリット幅は、主要部71のフィルム本体70a及び延長部72,73のフィルム本体70aの端面同士が接触し合うか又は接触し合わないものの貼付部11がそのまま通過できる程度(例えば5mm以下)に狭くされている。以上より、延長部72,73が、主要部71に連続的に接続されている状態とは、少なくともフィルム本体70aにおいて延長部72,73と主要部71が(本実施形態のようにスリット部74x,74yにより分断されているか否かに関わらず)連続しており、且つ、いずれかの層(本実施形態ではアプリケーションフィルム70c)で接続されている状態である。
次に、図1〜図5に加えて図6も参照しながら、本実施形態に係る貼付装置1を用いたフィルムFの貼付方法について説明する。貼付装置1を動作させる前準備として、テーブル41に基材B、第一拡張部60a、及び第二拡張部60bをセットする。また、フィルムFの両端部近傍に形成された孔部77と把持板31及び把持部材91の突起部31xとを互いに嵌合させ、把持板31及び把持部材91にフィルムFを把持させる。なお、把持板31及び把持部材91にフィルムFを把持させた状態においては、基材BのZ軸方向正側に主要部71が配置され、第一拡張部60aのZ軸方向正側に延長部72が配置され、第二拡張部60bのZ軸方向正側に延長部73が配置されている。そして、貼付部11が第一拡張部60a及び延長部72のZ軸方向正側に配置されるように、貼付機構10のX軸方向における位置を調整する(図6(a))。最後に、スリット部74xからスリット部74yまでの区間の剥離シート70bを、粘着面70xから剥離する。この状態においては、延長部72,73はフィルム本体70a、剥離シート70b、アプリケーションフィルム70cの三層構造とされ、主要部71はフィルム本体70a、アプリケーションフィルム70cの二層構造とされる。ただし、延長部72,73の剥離シート70bを剥離してもよい。
前準備が完了した状態で、まず、操作者の指示(例えばZ軸方向への駆動を開始させるスタートボタンの押下等)を契機として、駆動部12aが空気圧により貼付部11をZ軸方向負側に駆動させる。これにより貼付部11のZ軸方向における大まかな押圧位置が決定する。続いて、駆動部12bが空気圧により貼付部11をZ軸方向負側に駆動させる。これにより貼付部11のZ軸方向における詳細な押圧位置が決定する。駆動部12bによる位置決め後の貼付部11のZ軸方向における位置は、貼付部11がフィルムFを基材Bに押圧可能な位置である。ここで、上述した前準備において、第一拡張部60a及び延長部72のZ軸方向正側に貼付部11が配置されるように、貼付機構10のX軸方向における位置が調整されている。そのため、押圧開始時においては、貼付部11によって延長部72が押圧され、延長部72が第一拡張部60aに押し当てられる(押圧する工程。図6(b))。
続いて、操作者の指示(例えばX軸方向への駆動を開始させるスタートボタンの押下等)を契機として、駆動機構13のスライダ13bが、X軸方向正側(第一拡張部60aから第二拡張部60bに向かう方向)へ駆動する。これにより、上述した押圧する工程において延長部72を押圧していた貼付部11は、延長部72から主要部71を経て延長部73まで、水平方向(X軸方向正側)に移動する。すなわち、貼付部11によって延長部72が第一拡張部60aに押し当てられている状態から、貼付部11によって主要部71が押圧され主要部71が基材Bに押し当てられている状態に遷移し、更に、貼付部11によって延長部73が押圧され延長部73が第二拡張部60bに押し当てられている状態に遷移する。前準備において主要部71の剥離シート70bが剥離されているため、貼付部11に押圧された主要部71の粘着面70xが基材Bに押し当てられる。その結果、基材Bに対して主要部71が水平方向(X軸方向)に貼り付けられる(貼り付ける工程。図6(c))。なお、前準備においては主要部71のみ剥離シート70bが剥離されており、延長部72,73の剥離シート70bは剥離されていないため、押圧する工程及び貼り付ける工程によっても、延長部72,73は拡張部60に貼り付けられない。ただし、延長部72,73の剥離シート70bを剥離した場合は、延長部72,73の一部が拡張部60a,60bに貼り付けられる。
スライダ13bがX軸方向へ駆動している際には、スライダ13bのX軸方向への駆動に対応して、フィルム把持部30のスライダ36bがZ軸方向負側へ駆動する。これにより、フィルム把持部30の把持部材31a,31b,31cがZ軸方向負側へ駆動する。貼付部11がフィルムFを押圧している状態においては、X軸方向と押圧前のフィルムFとがなす角度が常に略一定角度となるように、スライダ13b,36bの駆動速度等が調整される。すなわち、駆動機構13,36のコントローラにおいて予めスライダ13b,36bの駆動速度が対応付けられて設定されるか、又は、貼付部11による押圧時に駆動機構13,36のコントローラ間でリアルタイムに信号の送受信がなされることで、駆動機構13,36双方の駆動速度等が調整される。また、貼付部11がフィルムFを押圧している状態においては、張力調整部40の駆動部43が把持部材31a,31b,31cをX軸方向へ駆動させることによりフィルムFの張力が調整される。
貼付部11が延長部73まで移動すると(図6(c))、スライダ13bのX軸方向への駆動が終了し貼付部11が停止する。停止後、貼付部11は、駆動部12a,12bにより、押圧する工程が始まる前のZ軸方向における位置に戻され、延長部73から離間する(離間させる工程)。更に、貼付部11は、スライダ13bにより、押圧する工程が始まる前のX軸方向における位置(第一拡張部60aが設けられた位置)に戻される。
最後に、フィルムFのアプリケーションフィルム70cが剥がされるとともに、スリット部74x,74yにおいて、延長部72,73のフィルム本体70aが主要部71のフィルム本体70aから切り離され、基材BへのフィルムF(より詳細には)の貼付作業が完了する。以上が、貼付装置1を用いたフィルムFの貼付方法に係る工程である。
次に、第1実施形態に係るフィルムFの貼付方法、及びフィルムFの作用・効果について説明する。
従来より、所定の基材の表面にフィルムを貼り付ける作業は、先端にゴム板を装着したスキージにより行われることが一般的である。スキージによりフィルムの貼り付け作業を行う際には、スキージによってフィルムを基材の表面に押し当てる必要がある。しかしながら、このような押し当てる作業によって、フィルムにショックラインが生じるおそれがある。特に、フィルムの押圧開始箇所及び押圧終了箇所においては、このようなショックラインが発生しやすい。このため、フィルムの貼り付け品質を向上させることが望まれていた。
本実施形態に係る貼付装置1が行う貼付方法では、貼付機構10の貼付部11によるフィルムFの押圧が、フィルムFの延長部72から開始される。すなわち、延長部72が貼付部11によるフィルムF押圧の始点とされる。また、延長部72から主要部71を経て延長部73まで移動した貼付部11が、延長部73で停止させられる。すなわち、延長部73が貼付部11によるフィルムF押圧の終点とされる。上述したように、工具等によってフィルムを押圧することによりフィルムを基材に貼り付ける際には、当該押圧の始点及び終点においてショックラインが生じ易い。この点、本貼付方法では、延長部72が押圧の始点とされ、延長部73が押圧の終点とされるので、基材Bに主要部71を貼り付け、その他の部分である拡張部60に延長部72,73を押し付ける(または貼り付ける)ことにより、フィルムFの製品化される部分にショックラインが生じることを抑制することができる。以上より、本貼付方法によれば、フィルムFの貼り付け品質を向上させることができる。
また、延長部72,73は、主要部71に連続的に接続されている。本実施形態では、延長部72,73は、フィルム本体70aのスリット部74x,74yをアプリケーションフィルム70cで接続することによって、主要部71に連続的に接続されている。例えばフィルムが連続的に接続されていない場合には、工具等によりフィルムが押圧される際に連続的に接続されていない箇所の周辺においてショックラインが生じ易くなる。この点、延長部72,73と主要部71とが連続的に接続されていることによって、押圧時におけるショックラインの発生を抑制することができる。
また、フィルム本体70aにおける、延長部72,73と主要部71との境界領域である、一端71x及び他端71yにおいて、Y軸方向に延びるスリット部74x,74yが形成されている。このようなスリット部74x,74yが形成されていることにより、フィルムFの本体部分のうち基材Bに貼り付けられる部分と拡張部60に貼り付けられる部分とを容易に切り離すことができる。
また、基材Bは水平方向であるX軸方向に延在しており、基材BにフィルムFを貼り付ける工程においては、貼付部11がX軸方向に移動することにより、基材Bに対して主要部71をX軸方向に貼り付ける。これにより、基材Bを水平な面に載置しながら貼付作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。
(第2実施形態)
図1〜図6に加えて図7も参照しながら、第2実施形態に係るフィルムについて説明する。図7(a)に示されるように、フィルムFXは、第1実施形態に係るフィルムFと同様、矩形状の主要部81と、主要部81の長手方向の一端81x(主要部81におけるX軸方向負側の端部)に連続的に接続された台形状の延長部82(第1の延長部)と、主要部81の長手方向の他端81y(主要部81におけるX軸方向正側の端部)に連続的に接続された台形状の延長部83(第2の延長部)と、を備えている。フィルムFXのX軸方向における両端部近傍には、突起部31xに嵌合される孔部87が形成されている。すなわち、延長部83の端部83x近傍には、把持板31の突起部31xに嵌合される孔部87yが形成されている。また、延長部82の端部82xには、把持部材91(図5参照)の突起部31xに嵌合される孔部87xが形成されている。
フィルムFXでは、主要部81が貼付部11からの押圧を受けて基材Bに押し当てられる。また、延長部82が、主要部81に先行して貼付部11からの押圧を受け第一拡張部60aに押し当てられる。また、延長部83が、主要部81に続いて貼付部11からの押圧を受け第二拡張部60bに押し当てられる。
上述した第1実施形態のフィルムFが三層構造とされていたのに対し、本実施形態のフィルムFXは、アプリケーションフィルムを有さない二層構造である。すなわち、フィルムFXは、基材B等に貼り付け可能な粘着面80xを有したフィルム本体80aと、フィルム本体80aの粘着面80x(下面)に対向するように配置された剥離シート80bと、を含んで構成されている。フィルム本体80aは、アクリル系粘着剤やウレタン系粘着剤により構成された粘着面80xと、ポリ塩化ビニルやシリコーン樹脂により構成された装飾面80yとを有している。
ここで、図7(a)〜図7(c)に示されるように、延長部82と主要部81との境界領域である一端81xには、ミシン目部84x(分離部)が形成されている。同様に、延長部83と主要部81との境界領域である他端81yには、ミシン目部84y(分離部)が形成されている。ミシン目部84x,84yにおいては、Y軸方向に沿って所定間隔の孔が複数形成されている。ミシン目部84x,84yの孔は、フィルム本体80a及び剥離シート80bの双方を貫通するように形成されている。ミシン目部84x,84yに形成された孔の間隔は特に限定されないが、延長部82,83と主要部81とを人の力で分離することができる程度に狭くされることが好ましい。以上より、本実施形態では、分離部としてフィルム本体80aにミシン目部84x,84yが形成されることにより、フィルム本体80aにおいて延長部82,83と主要部81が連続しており、且つ、接続されている。これによって、延長部82,83が、主要部81に連続的に接続されている。なお、ミシン目部84x,84yの孔は、フィルム本体80aのみを貫通するように形成されていてもよい。
また、延長部82にはY軸方向に延びるスリット状のスリット部89xが形成されている。同様に、延長部83にはY軸方向に延びるスリット状のスリット部89yが形成されている。スリット部89x,89yは、剥離シート80bにのみ形成されており、フィルム本体80aには形成されていない。
貼付装置1を用いたフィルムFXの貼付方法については、概ね、第1実施形態において説明したフィルムFの貼付方法と同様である。上述したように、フィルムFXは二層構造である点において、三層構造であるフィルムFと異なる。貼付方法のうち、第1実施形態と異なる工程のみ説明する。
フィルムを押圧する前準備の最終工程として、本実施形態では、スリット部89xからスリット部89yまでの区間の剥離シート80bを、フィルム本体80aの粘着面80xから剥離する。この状態においては、主要部81、延長部82のスリット部89xよりも主要部81寄りの箇所、及び延長部83のスリット部89yよりも主要部81寄りの箇所において、一層構造とされる。また、延長部82のスリット部89xよりも端部82xよりの箇所、及び延長部83のスリット部89yよりも端部83xよりの箇所において、二層構造とされる。また、フィルムFXはアプリケーションフィルムを有してないので、離間させる工程が完了した後においてアプリケーションフィルムを剥がす工程が不要である。そのため、離間させる工程後には、ミシン目部84x,84yにおいて延長部82,83のフィルム本体80aを主要部81のフィルム本体80aから切り離す工程のみが行われる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、上述した実施形態ではテーブル41に載置された基材Bに対してフィルムF,FXを貼り付けるとして説明したがこれに限定されず、図8に示される貼付装置201のように、貼付部211が、テーブルに載置できないサイズの基材、例えば車両Cの屋根部分CR(天井部)に対してフィルムFを貼り付けるものであってもよい。なお、この場合においても、基材である屋根部分CRと押圧前のフィルムFとがなす角度は、押圧開始時(図8(a)参照)から押圧終了時(図8(b)参照)の間、略一定の角度θとされることが好ましい。なお、テーブルに載置できないサイズの基材としては車両の屋根部分に限定されず、飛行機、船舶、建築物の部材等、あらゆる物品が考えられる。
また、フィルムは3層構造又は2層構造であるとして説明したがこれに限定されず、一層構造や、4層構造以上であってもよい。また、分離部としてスリットやミシン目状の例を説明したが、フィルムにおける基材に貼り付けられる部分とその他の部分とを分離することができる構成であればこれに限定されない。また、フィルムに分離部が存在していなくともよい。少なくとも主要部を基材に貼り付けた後、切断器具を用いて延長部を主要部から切断する切断工程を実行してもよい。
また、貼付装置の貼付機構は上述した貼付機構10に限定されず、以下に説明する貼付機構であってもよい。貼付機構のバリエーションについて図9〜図11を参照して説明する。
図9及び図10を参照して、変形例に係る貼付装置の貼付機構100,150について説明する。貼付機構100,150は、基材に対する貼付部111,161の角度を調整可能な調整機構110,160を有する。このような調整機構110,160を用いた場合、被貼付面BSが第2の方向のみならず、第1の方向に沿っても湾曲するような三次元曲面であった場合であっても、筋やしわ等の発生無くフィルムFを貼り付けることができる。
具体的には、図9に示すように、貼付機構100の調整機構110は、X軸方向に対向する一対の貼付部111(貼付部111A,111B)と、貼付部111A,111Bを支持する支持部材112と、可動アーム116と、Z軸方向へ貼付部111を駆動する駆動部114(12bに対応),118(12aに対応)と、を備える。駆動部114として例えばエアシリンダが採用され、駆動部118として単軸ロボットが採用されるが、Z軸方向へ駆動できるものであればよく、これらに限定されない。貼付部111Aは支持部材112に固定されているのに対し、貼付部111Bは駆動部114から駆動力を付与されることで、支持部材112に対して伸縮可能な構成となっている。支持部材112は、軸部113を介して可動アーム116の下端部に連結されている。支持部材112は、軸部113を中心として回動可能に連結されている。
上述のような構成により、調整機構110は、基材の被貼付面BSの形状に応じて、貼付部111A,111Bの基材に対する角度を調整できる。具体的には、調整機構110は、貼付部111A,111Bの両方が、被貼付面BSに(フィルムFを介して)当接する状態が維持されるように調整を行う。すなわち、図9(b)に示すように、被貼付面BSの形状がX軸方向に沿って変化する場合、貼付部111Aが被貼付面BSと当接した状態が維持されるように、駆動部114,118による位置調整が行われる。さらに、Z軸方向へ貼付部111を駆動する駆動部117によって、貼付部111A、111Bが被貼付面BSと当接した状態が維持されるように、伸縮可能な構成であってもよい。駆動部117として単軸ロボットが採用されるが、Z軸方向へ駆動できるものであればよく、これらに限定されない。駆動部118によって貼付部111をZ軸方向負側へ駆動させることにより、貼付部111Aが被貼付面BSと当接した状態で、支持部材112が軸部113周りに回動する。このとき、支持部材112の軸部113周りの回動によるZ軸方向への変位を駆動部117によって微調整してよい。また、駆動部114は、貼付部111Bが被貼付面BSと当接するように、貼付部111Bの位置の微調整を行う。これにより、被貼付面BSの形状がX軸方向に沿って変化する場合であっても、貼付部111A,111Bの基材に対する入射角を略一定にすることができる。このように、基材に対する貼付部111A,111Bの入射角を略一定にすることで、貼付部111A,111Bが押圧するフィルムFと被貼付面BSとの交線の形状を略一定に保つことができる。なお、駆動部117の機能を駆動部118が発揮してもよい。
また、図10に示すように、貼付機構150の調整機構160は、貼付部161と、貼付部161を支持する支持部材162と、貼付部161をZ軸方向へ駆動する駆動部166と、支持部材162に接続された可動アーム167A,167Bと、可動アーム167A,167BをZ軸方向に駆動する駆動部168A,168Bと、駆動部168A,168Bを支持する支持部材169と、支持部材169をZ軸方向へ駆動する駆動部171と、を備える。駆動部168A,168B,171として例えば単軸ロボットが採用され、駆動部166としてエアシリンダが採用されるが、Z軸方向へ駆動できるものであればよく、これらに限定されない。貼付部161は、駆動部166から駆動力を付与されることで、支持部材162に対して伸縮可能な構成となっている。支持部材162は、軸部163を介して可動アーム167Aの下端部に連結されている。支持部材162は、軸部163を中心として回動可能に連結されている。また、支持部材162は、軸部164を介して可動アーム167Bの下端部に連結されている。支持部材162には、軸部163を挿通させる長穴165が形成されている。当該長穴165によって、支持部材162と軸部164との連結位置を補正することができる。
上述のような構成により、調整機構160は、基材の被貼付面BSの形状に応じて、貼付部161の基材に対する角度を調整できる。具体的には、駆動部171及び駆動部168A,168Bは、図示されないコントローラから信号を受信し、支持部材162を介して貼付部161の位置を調整する。このとき、駆動部168Aと駆動部168Bとの間の伸縮量に差がある場合、図10(b)に示すように、支持部材162は軸部163周りに回動する。このとき、軸部164は長穴165に沿ってスライドするため、支持部材162の回動が阻害されない。また、駆動部166は、貼付部161が被貼付面BSと当接するように、当該貼付部161の位置の微調整を行う。これにより、被貼付面BSの形状がX軸方向に沿って変化する場合であっても、貼付部161の基材に対する入射角を略一定にすることで、貼付部161が押圧するフィルムFと被貼付面BSとの交線の形状を略一定に保つことができる。なお、駆動部171は必ずしも設けられていなくてもよく、駆動部168A,168Bが、Z軸方向へ大きく駆動することにより駆動部171の役割を担うものであってもよい。
また、図11に示すように、貼付装置の貼付部181は、Y軸方向に沿って例えば6つの分割部181a,181b,181c,181d,181e,181fに分割されている。貼付部181の分割数が多く、例えば6つ等とされることにより、独立して駆動可能な構成が多くなるため、基材B(被貼付面BS)の形状により対応し易くなる。すなわち、基材BがY軸方向に湾曲している場合において例えば湾曲形状の曲率が大きい場合であっても、分割部181a,181b,181c,181d,181e,181fそれぞれが独立して駆動することにより、貼付部181を基材Bに対応した形状とできる。また、基材BがX軸方向に湾曲している場合においても、分割部181a,181b,181c,181d,181e,181fそれぞれが独立して駆動することにより、貼付部181を基材Bに対応した形状とすることができる。