JP6610920B2 - プレフィルドシリンジ、プレフィルドシリンジに適用されるガスケットおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このプレフィルドシリンジにおいては、従来の注射器(使用直前にバイアル等他の容器から薬液を吸い上げて使用する注射器)と異なり、長期間薬液と接触する容器としての性能が必要とされる。
この課題に対して、発明者らは検討を加え、ラミネートするフィルムの厚みの制御やフィルムの表面改質などの改善を進めている。
すなわち、ガスケット表面の周方向に微細な溝構造を設けることで、溝周辺部はシリンジバレル内での圧縮応力が高まり内部の薬液の確実な封止を行うことができる。また、ガスケット成型後に、微細な溝構造を周方向に形成することにより、成型されたガスケットを金型から取り出す際に発生してしまった周方向に垂直な傷を埋めることができる。
この発明に係るプレフィルドシリンジに適用されるガスケットは、請求項1〜5に記載の内容である。また、この発明に係るプレフィルドシリンジは、請求項6、7に記載の内容である。さらに、この発明に係るガスケットの製造方法は、請求項8〜10に記載の内容である。
請求項1記載の発明は、弾性材で構成された本体と、この本体の表面に積層されたラミネートフィルムとを含むプレフィルドシリンジに適用されるガスケットであって、前記ラミネートフィルムは、その厚みが20μm以上50μm以下であり、前記ガスケットは、シリンジバレルの内周面に接する円周面部を有し、当該円周面部に配置されたラミネートフィルムには、当該フィルム表面に、周方向に延びる環状の溝および周方向に延びる環状の凸部が形成されており、前記環状の凸部の高さは、1μm以上10μm以下であり、かつ、前記環状の凸部の幅は、3μm以上50μmであることを特徴とする、ガスケットである。
請求項4記載の発明は、前記溝および凸部は、前記円周面部を周回する少なくとも1つの円環状溝および円環状凸部を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のガスケットである。
請求項7記載の発明は、プレフィルドシリンジに適用されるガスケットの製造方法であって、ガスケット成型金型を準備する工程、金型内にて、表面にラミネートフィルムが積層された円周面部を有するガスケットを成型する工程、および金型からガスケットを取り出した後、ガスケットの円周面部に積層されたラミネートフィルムに周方向に延びる環状の溝と周方向に延びる環状の凸部を同時に形成する工程、を含み、前記環状の溝および環状の凸部を同時に形成する工程では、前記環状凸部の高さが1μm以上10μm以下で、かつ、前記環状凸部の幅が3μm以上50μm以下になるように前記環状凸部を形成することを特徴とする、ガスケットの製造方法である。
請求項9記載の発明は、前記溝と凸部を同時に形成する工程において、溝および凸部を、それぞれ2本以上形成することを特徴とする、請求項7または8に記載のガスケットの製造方法である。
また、この発明によれば、封止性に優れ、長期間薬液と接しても薬液の効果や安定性に悪影響を与えないプレフィルドシリンジを得ることができる。
さらに、この発明によれば、封止性に優れたラミネートガスケットの製造方法を提供することができる。
図1は、この発明の一実施形態に係るプレフィルドシリンジを分解状態で示す図である。図1において、シリンジバレル11、先端キャップ30およびガスケット13は、半分が断面で表わされている。
図1を参照して、プレフィルドシリンジ10は、円筒形状のシリンジバレル11と、シリンジバレル11に組み合わされ、シリンジバレル11内を往復移動し得るプランジャ12と、プランジャ12の先端に装着されるガスケット13とを含んでいる。ガスケット13は、弾性材(ゴムまたはエラストマ等)で構成された本体14と、本体14の表面に積層されたラミネートフィルム15とを含むいわゆるラミネートガスケットである。ガスケット13にはシリンジバレル11の内周面16と気密的・液密的に接する円周面部17が備えられている。
ガスケット13は、短軸の略円柱形状で、その先端面は、たとえば軸中心部が突出する
鈍角の山形形状をしている。そして後端面から軸方向に彫り込まれた雌ねじ形状の嵌合凹部21が形成されている。プランジャ12のヘッド部18が、ガスケット13の嵌合凹部21にねじ込まれることにより、プランジャ12の先端にガスケット13が装着される。
図2を参照して、この実施形態に係るガスケット13の構成について、より詳細に説明をする。
図3は、図2のA部分の拡大断面図である。図2および図3を参照して説明する。
もし、溝22と凸部24の長さがピーク部17全周にわたる長さでない場合、全周にわたって均一な効果を得るために、複数の溝22と凸部24を設け、かつ、ピーク部17全周に対して、各々の溝22と凸部24のうち少なくとも1本は存在することが好ましい。
溝22と凸部24の作成方法としては、ガスケット13の成型後に溝22と凸部24を形成する。ガスケット13の成型と同時に溝22と凸部24を形成した場合、すなわち、金型に予め溝22と凸部24の構造を作り形状を転写する場合には、成型された溝22と凸部24構造が脱型により傷などの損傷を受けることがある。しかし、ガスケットの成型後に溝22と凸部24を形成することで、ガスケット成型時、および、脱型時に生じた傷などを、その後の溝22と凸部24の形成工程によってある程度修復できるためである。
レーザー光の照射による切削の場合、用いるレーザー光の種類・出力等は公知の技術を用いることができる。レーザー光の種類としては、用いるフィルム素材や溝の深さなどにより適宜選択すればよいが、赤外線を利用するレーザー光による加工が産業上取り扱いが容易であり好ましい。照射時間に関しても、切削条件により適宜選択を行えばよいが、特に短いパルスでの照射が切削部周辺部への熱の影響が小さくなるため好ましい。
本発明においては、溝22の形成と凸部24の形成を同時に行うことを特徴としている。すなわち上記の溝加工において積極的にバリ部を発生させることで溝22の側縁に凸部24を形成させる。
形成する凸部24の高さHとしては、1μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上7μm以下がより好ましい。また凸部24の幅Sとしては、3μm以上50μm以下が好ましく、7μm以上25μm以下がより好ましい。本発明において凸部24のみがシリンジバレル11と接触する構成とすることで、ガスケット13とシリンジバレル11の接触圧力を高められる。接触圧を高めるためには、凸部24は小さい程圧力が高まるため好ましい。一方で、必要以上の微細加工は工程上好ましくない。
次に、この実施形態に係るガスケット13の製造方法について説明をする。
この実施形態に係るガスケット13は、以下の製造工程により製造される。
(2)金型内にて、表面にラミネートフィルムが積層されたガスケットを成型する工程、
(3)金型からラミネートガスケットを取り出した後、ラミネートフィルムの表面に円周面部の周方向に延びる溝および凸部を同時に形成する工程、
という工程により製造される。
たとえば、架橋材が混合された加硫前のゴムのシート等にラミネートフィルムが重ね合わされ、成型金型により加硫成型されて、所定の形状のガスケットに加工される。
別の製造方法としては、ラミネートフィルム15の内表面を粗面化せず、ラミネートフィルムの内表面に接着層を塗布し、その上に加硫前のゴム材を重ね、それを金型に入れてガスケットを成型するようにしてもよい。
なお、溝および凸部の同時形成は、レーザー光により加工を行うのが好ましいことは、上述の通りである。
各種フィルムと未加硫ゴムにて、ガスケットを加硫成型した。引き続き周方向の溝構造を形成した物(実施例1〜8、比較例2、3)および、形成しなかった物(比較例1 )を得た。
<製造方法>
フッ素樹脂 PTFEフィルム (日本バルカー株式会社製 バルフロン(登録商標))
変性PTFEフィルム(日本バルカー株式会社製 バルフロンEx1(登録商標))
ETFEフィルム (旭硝子株式会社製、FluonETFE(登録商標)
フィルムの接着処理は、特許第4908617号公報に記載の方法で実施した。フィルムの厚みは表1に記載した。
架橋剤 2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン 三協化成株式会社製、ジスネットDB(登録商標)
製造条件: 加硫温度180℃、加硫時間8分、処理圧力20MPa
製品形状として、ガスケットの最大径φ6.60mmに成形した。
溝の形成は、上記製品形状を得た後に、下記の通りレーザー光による加工で行った。
装置:アライドレーザー株式会社製 多用途マニュアル機
発信器としてハイブリッドレーザーを用いて、波長1064nmのレーザー光を照射した。加工はスポット径10μmにて実施した。繰り返し加工を行うことで、所望の溝の幅を得た。溝の形状、および、凸部の形状は出力を調整することで調整した。
・溝と凸部の寸法測定
溝の形成後の製品をレーザーマイクロ顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK−X100)を用いて、倍率50倍の対物レンズを用いて表面形状の測定を行った。溝の最大深さ部分、および、幅部分を画面より選択し数値を得た。製品上の4箇所を測定し、その算術平均を表した。また凸部の最大高さ部分、および幅部分を画面より選択し同様に測定した。明瞭な凸部が形成されなかった場合、「なし」と記載した。
・薬液の封止性
溝および凸部を形成後の製品をシリンジバレルに挿入後、試験液を充填し、反対側をキャップした。40℃にて1週間静置後、ビデオマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ株式会社製DVM5000)にて対物レンズ50倍で観察し、液漏れの有無を測定した。20個の製品を観察し、試験液がガスケットの最大径部分を越えたものは、液漏れと判定し、その個数を記載した。2以下を良好とした。試験液は水に色素(メチレンブルー シグマアルドリッチジャパン合同会社製)0.2g/L、および界面活性剤(ポリソルベート80 日油株式会社製)1.0g/L加えたものを使用し、シリンジバレルはシクロオレフィン樹脂製 内径φ6.35.mmを使用した。
ガスケットの成型後に溝の形成を実施しなかった比較例1に比べて、実施例1〜8は何れも液漏れ本数が顕著に減少しており好ましい結果となった。明瞭な凸部が形成されなかった比較例2、3においては、比較例1に比べて改善はしたものの、実施例1〜8のような顕著な効果は得られなかった。
11 シリンジバレル
12 プランジャ
13 ガスケット
14 本体
15 ラミネートフィルム
17 内周面部
22 溝
24 凸部
Claims (9)
- 弾性材で構成された本体と、この本体の表面に積層されたラミネートフィルムとを含むプレフィルドシリンジに適用されるガスケットであって、
前記ラミネートフィルムは、その厚みが20μm以上50μm以下であり、
前記ガスケットは、シリンジバレルの内周面に接する円周面部を有し、
当該円周面部に配置されたラミネートフィルムには、当該フィルム表面に、周方向に延びる環状の溝および周方向に延びる環状の凸部が形成されており、
前記環状の凸部の高さは、1μm以上10μm以下であり、かつ、前記環状の凸部の幅は、3μm以上50μmであることを特徴とする、ガスケット。 - 前記溝が形成された部分のラミネートフィルムの厚みは、溝が形成されていない部分の厚みに比べて、1μm以上50μm以下薄くなっており、前記凸部が形成された部分のラミネートフィルムの厚みは、凸部が形成されていない部分の厚みに比べて、1μm以上10μm以下厚くなっていることを特徴とする、請求項1に記載のガスケット。
- 前記溝および凸部は、それぞれ複数本形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスケット。
- 前記環状の溝および環状の凸部は、前記円周面部を周回する少なくとも1つの円環状溝および円環状凸部を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のガスケット。
- 筒状をしたシリンジバレルと、
前記シリンジバレルに組み合わされ、シリンジバレル内を往復移動し得るプランジャと、
前記プランジャの先端に装着された請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスケットと、
を含むことを特徴とする、プレフィルドシリンジ。 - 前記ガスケットの前記凸部が前記シリンジバレルと接触する接触圧が5MPa以上であることを特徴する、請求項5に記載のプレフィルドシリンジ。
- プレフィルドシリンジに適用されるガスケットの製造方法であって、
ガスケット成型金型を準備する工程、
金型内にて、表面にラミネートフィルムが積層された円周面部を有するガスケットを成型する工程、および
金型からガスケットを取り出した後、ガスケットの円周面部に積層されたラミネートフィルムに周方向に延びる環状の溝と周方向に延びる環状の凸部を同時に形成する工程、
を含み、
前記環状の溝および環状の凸部を同時に形成する工程では、
前記環状凸部の高さが1μm以上10μm以下で、かつ、前記環状凸部の幅が3μm以上50μm以下になるように前記環状凸部を形成することを特徴とする、ガスケットの製造方法。 - 前記溝と凸部を同時に形成する工程は、レーザー加工により行うことを特徴とする、請求項7に記載のガスケットの製造方法。
- 前記溝と凸部を同時に形成する工程において、溝および凸部を、それぞれ2本以上形成することを特徴とする、請求項7または8に記載のガスケットの製造方法。
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