第1の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。図1は本実施形態に係る露光装置8を示す。露光装置8は、露光光(露光ビーム)として電子ビームを用いる電子ビーム露光装置である。露光装置8は、例えば半導体デバイス製造工場のクリーンルーム内に設置されている。
図1において、露光装置8は、電子ビームを露光対象物である半導体ウエハ(以下、単にウエハと称する。)Wに照射してウエハWを露光する電子ビーム照射装置10と、電子ビーム照射装置10の下方に配置されてウエハWを保持して移動するステージ装置WSTと、電子ビーム照射装置10及びステージ装置WSTの動作を制御する制御系6(図3参照)とを備えている。電子ビーム照射装置10は、電子ビームを発生する電子銃14を含む露光ユニット(以下、コラムセルと称する。)11Aと、コラムセル11Aを収容する鏡筒12とを有する。コラムセル11Aからは、ウエハWの表面(ウエハ面又は露光面)で一列に配列された複数の微小なスポットに電子ビームを照射可能である。このようにコラムセル11Aはマルチビーム型である。また、本実施形態では、鏡筒12内に、コラムセル11Aと同じの構成の複数のコラムセル(不図示)が収容されており、これら複数のコラムセルの光軸は互いに平行である。ただし、以下では説明の便宜上、鏡筒12内に一つのコラムセル11Aが収容されているものとして説明する。以下、コラムセル11Aの電子光学系の光軸AXに沿ってZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で、複数のスポットの配列方向に沿ってX軸を取り、X軸に直交する方向に沿ってY軸を取って説明する。本実施形態では、−Z方向が鉛直方向であり、ウエハ面(露光面)は、X軸及びY軸を含む平面(本実施形態では水平面)に平行な面(XY面)とみなすことができる。
まず、本実施形態の鏡筒12は、ウエハW側から+Z方向に向けて順に配置された、それぞれ円筒状の第1分割鏡筒13A、第2分割鏡筒13B、第3分割鏡筒13C、第4分割鏡筒13D、及び第5分割鏡筒13Eを互いに複数のボルト35によって連結し、最上段の第5分割鏡筒13Eの上部開口を円形の平板13Fで覆って構成されている。分割鏡筒13A〜13E及び平板13Fの連結部にはオーリング等の封止部材(不図示)が装着され、鏡筒12の側面及び上部の気密性は高く維持されている。なお、鏡筒12を構成する分割鏡筒13A〜13Eの個数は任意であり、鏡筒12を単一の円筒状部材と、平板13Fとから構成することもできる。鏡筒12の第3分割鏡筒13Cの側面に輪帯の平板状の支持用部材(以下、マウントベースと称する。)34が複数のボルト35によって固定されている。また、露光装置8の設置面上に、鏡筒12の側面から上方にかけて、鏡筒12を支持するためのフレーム機構50が設置されている。フレーム機構50の側面部は、鏡筒12の±Y方向の側面にも配置されている。
図2は、図1の電子ビーム照射装置10を簡略化して示す。図2に示すように、マウントベース34の上面にほぼ等角度間隔で3箇所に、吊り下げ用のワイヤ38が連結され、3本のワイヤ38の上端は、それぞれ防振部材39を介して図1のフレーム機構50に連結されている。本実施形態の鏡筒12は、マウントベース34を介して、フレーム機構50から3本のワイヤ38によって吊り下げて支持されている。このため、鏡筒12には、クリーンルーム内で発生する振動及びいわゆる外乱による振動がほとんど伝わることがない。
また、最下段の第1分割鏡筒13Aの側面には、2つの段差が設けられ、一段目の段差(上側(電子銃側))のXY面に平行な面13Aa(ウエハWの露光面に対向する面)に、輪帯の平板状で外側に下方への段差部が設けられたフランジ部材40がボルト(不図示)によって連結されている。さらに、二段目の段差(下側(ウエハWに近い側))の段差のXY面に平行な面13Abに、計測装置を装着するための輪帯の平板状部材(以下、計測フレームと称する。)42が連結されている。フランジ部材40は、複数箇所(例えば少なくとも3箇所)でロッド状の連結部材44A,44B(他の連結部材は不図示)によってマウントベース34の底面に連結されている。このように、フランジ部材40はマウントベース34に支持されている。
また、フランジ部材40の先端部から鏡筒12の下方の空間を覆うように、上部が開いた箱状の真空チャンバ62が設置され、真空チャンバ62の上部の開口と、フランジ部材40の先端部との間を封止するように、可撓性を持つベローズ63(封止部材)が装着されている。鏡筒12(電子ビーム照射装置10)の下方の真空チャンバ62内の空間である露光室62aにステージ装置WSTが設置されている。真空チャンバ62の側面には、ロードロック室(不図示)及びアンロードロック室(不図示)に通じるウエハWの受け渡し口を開閉するためのシャッタ(不図示)が設けられている。
また、鏡筒12の第5分割鏡筒13Eの側面の上部に対向するようにほぼ等角度間隔で4個の真空排気用の大型のイオンポンプ46A,46B,46C,46Dが配置され(図2参照)、イオンポンプ46A,46B,46C,46Dの吸引口はそれぞれ可撓性を持つベローズ53A,53B等を介して分割鏡筒13E(鏡筒12)の内部の空間12aに連通している。イオンポンプ46A〜46Dは、それぞれロッド状の連結部材47A,47B等を介してマウントベース34の上面に連結されている。
さらに、第5分割鏡筒13Eの側面の中央部に対向するようにほぼ等角度間隔で4個の真空排気用の小型のイオンポンプ48A,48B,48C等が配置され(図2参照、4番目のイオンポンプは不図示)、イオンポンプ48A,48B,48C等の吸引口はそれぞれ可撓性を持つベローズ51A,51B等を介して鏡筒12内の空間12aに連通している。イオンポンプ48A,48B等も、それぞれロッド状の連結部材49A,49B等を介してマウントベース34の上面に連結されている。このように、全部のイオンポンプ46A,48A等はマウントベース34によって支持されている。
本実施形態では、4個のイオンポンプ46A等及び4個のイオンポンプ48A等で常時、鏡筒12内の空間12a内の気体を排気している。このため、一例として空間12aは常時、イオンポンプで10-6〜10-7Pa程度の高真空状態に維持されている。なお、露光室62a内の気体は、不図示のターボポンプで排気し、露光室62aは常時10-2〜10-3Pa程度の真空状態に維持されている。
ここで、鏡筒12内のコラムセル11Aの構成につき説明する。コラムセル11Aは、電子ビームEBを放出する電子銃14と、電子ビームEBでウエハWを露光する電子光学系11Bとを有する。電子光学系11Bにおいて、電子ビームEBを放出する電子銃14の下方(−Z方向)に、光軸AXを中心とする円形の開口16aを有する第1アパーチャ板16、非対称照明光学系18、及び光軸AXを中心とするX方向に細長い長方形のスリット状の開口24aが形成された1次ビーム成形板24が順次配置されている。電子銃14は、円形の平板状の取り付け板15の底面に取り付けられ、取り付け板15は第5分割鏡筒13Eの内面に固定されている。
電子銃14から所定の加速電圧(例えば50keV)で放出された電子ビームEBは、第1アパーチャ板16の開口16aを含む領域に入射し、開口16aを通過した電子ビームEBは、光軸AXの回りに対称な円形の断面に成形されて、非対称照明光学系18内の空間に入射する。非対称照明光学系18は、一例として光軸AXの回りに配置された静電四重極の電極をZ方向に4段重ねて構成された静電四重極レンズ群である。非対称照明光学系18によって光軸AXの近傍に発生する静電四重極場を調整することで、入射する電子ビームの断面形状をX方向に細長い形状にできる。電子ビームEBは、非対称照明光学系18によって、断面形状が一方向(ここではX方向)に長く、他の方向(ここではY方向)に短いほぼ長方形状に成形されて、1次ビーム成形板24の開口24aを含むX方向に細長い照射領域に入射する。
1次ビーム成形板24の下方に、電磁レンズ19A,19Bよりなる等倍の投影系19、複数の開口26aがX方向に一列に形成されたビーム成形アパーチャ板26、開口26aよりもわずかに大きい開口28aがそれぞれ開口26aに対向するようにX方向に一列に形成されたブランカー板28、及び光軸AXを中心とする円形の開口30aが形成された最終アパーチャ板30が順次配置されている。また、ブランカー板28と、ウエハWとの間に、複数の電磁レンズ20A,20B,20C,20Dよりなり、ビーム成形アパーチャ板26の複数の開口26aの縮小像(電子ビームのスポット)をウエハWの表面に投影する縮小投影系20が配置されている。ブランカー板28は、ビーム成形アパーチャ板26に近接して配置されている。
ビーム成形アパーチャ板26及びブランカー板28は、それぞれ第3分割鏡筒13Cの内面に固定されている。本実施形態では、ビーム成形アパーチャ板26が固定されている第3分割鏡筒13Cの内面に対向する側面に、マウントベース34が固定されている。一例として、ビーム成形アパーチャ板26のZ方向の位置と、マウントベース34の第3分割鏡筒13Cに接触している部分の厚さ方向(Z方向)の中心のZ方向の位置とが等しく設定されている。このため、ビーム成形アパーチャ板26の振動が抑制されており、ビーム成形アパーチャ板26の複数の開口26aの縮小像のウエハ面でのX方向、Y方向に対する位置の変動量がきわめて小さくなり、高精度に露光を行うことができる。
さらに、フランジ部材40よりも高い位置にあるマウントベース34で鏡筒12を支持しているため、例えばフランジ部材40によって鏡筒12を支持する場合に比べて、鏡筒12の上部の振動(例えば首振り運動)を減少させることができる。
1次ビーム成形板24のスリット状の開口24aを通過した電子ビームEBは、投影系19によって、ビーム成形アパーチャ板26の一列の開口26aを含むX方向に細長い照射領域(開口24aの像)に照射される。
本実施形態では、非対称照明光学系18及び1次ビーム成形板24を設け、ビーム成形アパーチャ板26の細長い照射領域に電子ビームEBを入射させているため、電子ビームの電流密度を高めることができ、露光工程のスループットを向上できる。さらに、ビーム成形アパーチャ板26に照射される電子ビームの量を減らすことができ、ビーム成形アパーチャ板26の発熱による劣化や損傷を防止できるとともに、鏡筒12の発熱を防止できる。また、結像系19によって、1次ビーム成形板24の開口24aの鮮明な像(照射領域23B)をビーム成形アパーチャ板26上に形成しているため、電子ビームの収差が低減され、ウエハWに高精度にパターンを露光できる。
なお、図1では、5個の開口26aが示されているが、実際には、一つのコラムセル11Aに関して、開口26aの数は数1000個(例えば2000個又は4000個程度等)である。ビーム成形アパーチャ板26の複数の開口26aが配列された方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に、ステージ装置WSTによってウエハWを走査することによって、複数の電子ビームを用いた露光を並列に行うことができる。このため、開口26aの数を増加させるほど、露光工程のスループットを向上できる。ビーム成形アパーチャ板26の複数の開口26aを通過した、開口26aと同じ数の電子ビームEBは、それぞれブランカー板28の対向する位置にある開口28aに入射する。開口28aの数は開口26aの数と同じであるが、開口28aは開口26aよりもわずかに大きく形成されている。
ブランカー板28の底面には、複数の開口28aをそれぞれY方向に挟むように1対のブランキング電極28bが設けられ、ブランキング電極28bは、それぞれ不図示の配線及び不図示の端子を介してブランキング電極駆動部91(図3参照)に接続されている。ブランキング電極28bは、開口28aを通過する電子ビームEBを偏向させるために使用される。なお、説明の便宜上、図1では、ブランキング電極28bは開口28aのX方向の近傍に配置されているように表示されている。
ビーム成形アパーチャ板26に近接してブランカー板28が配置され、ビーム成形アパーチャ板26の開口26aよりもブランカー板28の開口28aの方が大きいため、開口26aを通過した電子ビームEBは開口28aを通過できる。ブランカー板28の1対のブランキング電極28bに電圧を印加しない状態では、開口28aを通過した電子ビームEB4は、最終アパーチャ板30の開口30aを通過し、縮小投影系20によって縮小されて、ウエハ面に照射される。露光面には電子ビームEBによってビーム成形アパーチャ板26の開口26aの縮小像が形成される。開口26aの縮小像の位置をウエハ面での電子ビームEBの照射位置ともいう。その縮小像(電子ビームのスポット)に電子ビームEBが照射されているとき、対応する開口26aを通過する電子ビームEB、又は当該スポットがオン(on)にされているともいう。
一方、一対のブランキング電極28bに所定の電圧を印加すると、開口28aを通過した電子ビームEBがY方向に大きく曲げられてオフ状態の電子ビームEBFとなる。電子ビームEBFは、点線で示すように、最終アパーチャ板30の開口30aの外側に導かれて、最終アパーチャ板30によって阻止される。この場合には、対応する開口26aの像(スポット)には電子ビームEBが照射されないため、対応する開口26aを通過する電子ビームEB、又は当該スポットがオフ(off)にされているともいう。このように各開口26a及び28aに対応して設けられているブランキング電極28bに対する電圧の印加の制御によって、各開口26aを通過する電子ビームEBのオン又はオフを制御することができる。
また、最終アパーチャ板30とウエハWとの間に、ウエハWを駆動するステージの位置のフィードバック等に基づいて、電子ビームEBの照射位置を調整するための偏向器(ステージフィードバック偏向器)22が設けられている。この偏向器22は、複数の開口26aの配列方向と同じ方向(X方向)に沿って光軸AXを挟むように配置された一対の電極板を有する。駆動部92(図3参照)によって偏向器22の電圧を制御することで、電子ビームEBの照射位置をX方向に微調整できる。例えば露光するパターンのX方向の位置決め精度がY方向の位置決め精度よりも高いような場合には、偏向器22によってX方向の位置決め精度を向上できる。なお、実際には、偏向器22と同様の偏向器(不図示)が光軸AXをY方向に沿って挟むように設けられ、この偏向器を用いて電子ビームEBの照射位置をY方向にも微調整できるように構成されている。
第1アパーチャ板16、非対称照明光学系18、投影系19、縮小投影系20、最終アパーチャ板30、及び偏向器22もそれぞれ不図示の支持部材を介して鏡筒12の内面に取り付けられている。第1アパーチャ板16、非対称照明光学系18、投影系19、ビーム成形アパーチャ板26、ブランカー板28、縮小投影系20、最終アパーチャ板30、及び偏向器22を含んで電子光学系11Bが構成されている。
上述のように、本実施形態の電子ビーム照射装置10は、コラムセル11Aと同じ構成の複数のマルチビーム型のコラムセルを備えている。コラムセル11Aの円形の外形の直径は、一例として数10mm、例えば25〜50mmである。また、複数のコラムセルは、X方向、Y方向に互いに接触するように、かつウエハ面の全面を覆うように配置される。一例として、ウエハWの大きさを直径300mmとして、コラムセル11Aの直径を30mmとすると、ウエハWの全面を覆うために、90個程度のコラムセルが配置される。なお、ウエハWの大きさは任意であり、ウエハWは例えば直径200mm又は450mm等でもよい。ウエハWの大きさに応じてコラムセルの数を増減してもよい。コラムセル11Aと同じ構成のn個(nは2以上の整数)のコラムセルが鏡筒12内に収容されている場合、一例として、取り付け板15には、n個の電子銃14が取り付けられ、ビーム成形アパーチャ板26には、n組の複数の開口26aが形成され、ブランカー板28には、n組の開口28a及びブランキング電極28bが設けられる。
また、マウントベース34の上面の+X方向の領域内のワイヤ38の端部が固定されている部分の近傍に、鏡筒12の中心に対して半径方向、及びZ方向のマウントベース34の加速度をそれぞれ検出する加速度センサ54A,54Bが固定されている。そして、マウントベース34の側面の加速度センサ54A,54Bに近い部分と、フレーム機構50との間に、Z方向及び鏡筒12の中心に対して半径方向にそれぞれマウントベース34に制振用(振動抑制用)の推力を与える非接触方式の制振モータ55A,55Bが設置されている。一例として、制振モータ55Aは、マウントベース34に固定された可動子55Aaとフレーム機構50に固定された固定子55Abとを有するボイスコイルモータ(以下、VCMと称する。)である(図2参照)。制振モータ55Bも同様のVCMである。また、加速度センサ54A,54Bとしては、単一の素子で2方向の加速度を検出できるセンサを使用してもよい。
図2に示すように、マウントベース34の上面の他の2本のワイヤ38が固定されている部分の近傍にも、鏡筒12の中心に対して半径方向、及びZ方向のマウントベース34の加速度をそれぞれ検出する加速度センサ54C,54D及び54E,54Fが固定されている。そして、マウントベース34の側面の加速度センサ54C,54D及び54E,54Fに近い部分と、図1のフレーム機構50との間に、Z方向及び鏡筒12の中心に対して半径方向にそれぞれマウントベース34に制振用の推力を与える非接触方式の制振モータ55C,55D及び55E,55Fが設置されている。制振モータ55C〜55FとしてもVCMが使用できる。なお、加速度センサ54Aでは、鏡筒12の中心に対して円周方向のマウンドベース34の加速度を検出し、制振モータ55Bは、その円周方向の推力をマウンドベース34に与えてもよい。加速度センサ54A〜54Fの加速度の検出方向は、全体としてマウントベース34の6自由度の方向の加速度を検出できるように設定されていればよく、制振モータ55A〜55Fの推力の方向は、全体としてマウントベース34の6自由度の方向の推力を与えるように設定されていればよい。なお、制振モータ55A〜55Fとしては、他の任意の非接触式のモータ又はアクチュエータを使用できる。さらに、図3は、本実施形態の露光装置8の制御系6を示す。図2の6個の加速度センサ54A〜54Fの計測値は、図3の振動計測部87に供給されている。振動計測部87は、その加速度センサ54A〜54Fの計測値から、マウントベース34のX方向、Y方向、及びZ方向の加速度、並びにX軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転方向の加速度(角加速度)を含む6自由度の加速度を算出する。このように算出されたマウントベース34の6自由度の加速度は、マウントベース34で支持される鏡筒12及びビーム成形アパーチャ板26の6自由度の振動の計測値とみなすことができる。
また、図3の制振モータ駆動部88が、6個の制振モータ55A〜55Fの推力を個別に制御することによって、マウントベース34及び鏡筒12に、その6自由度の加速度に対応する方向の推力を付与する。一例として、制振モータ駆動部88は、振動計測部87から供給される6自由度の加速度をそれぞれ相殺する推力を発生するように制振モータ55A〜55Fを駆動する。これによって、鏡筒12及びビーム成形アパーチャ板26の6自由度の振動をそれぞれ抑制することができる。このため、ウエハWに微細なパターンを高精度に露光できる。
また、電子銃14が固定されている取り付け板15にもX方向、Y方向、Z方向の加速度を検出するための加速度センサ56が固定され、加速度センサ56の計測値が振動計測部87に供給されている。加速度センサ56の計測値からは、一例として、鏡筒12の内部の部分的な振動を求めることができる。制振モータ55A〜55Fを駆動してマウントベース34を制振しても、加速度センサ56で鏡筒12の内部の振動が検出される場合には、一例として、取り付け板15にX方向、Y方向に移動可能な所定の質量を持つ振動減衰部(マスダンパ)を配置しておき、その加速度センサ56で検出される振動を抑制するようにその振動減衰部の位置を制御するようにしてもよい。
さらに、鏡筒12の+X方向の側面において、マウントベース34の下方及び上方に位置にそれぞれ鏡筒12の伸縮(歪み)を検出するための歪みセンサ(歪みゲージ)58A,58Bが固定され、鏡筒12の−Y方向の側面においても、マウントベース34の下方及び上方に位置にそれぞれ歪みセンサ58C,58Dが固定されている。図3の振動モード検出部89が、歪みセンサ58A〜58Dを用いて鏡筒12の側面の伸縮量を検出し、この検出結果より鏡筒12の振動モード及び振動量を求める。すなわち、歪みセンサ58A〜58Dは、互いに協働することによって、鏡筒の振動を検出する振動センサとして働く。振動モード検出部89は、その鏡筒12の振動量からコラムセル11Aによってウエハ面に投影される開口26aの像のX方向、Y方向への位置ずれ量(シフト量)を求める。
図4は、図1の鏡筒12を簡略化して示す。図4に示すように、鏡筒12がマウントベース34を支点として上部及び下部が同じタイミングで+X方向又は−X方向に変位するような振動モードで振動する場合、この振動はマウントベース34に設けた加速度センサ54A〜54Fの計測値からは検出が困難である。しかしながら、この振動モードでは、歪みセンサ58Aが伸縮すると、歪みセンサ58Bも同じように伸縮するため、振動モード検出部89では、歪みセンサ58A,58Bの伸縮量から図4のような鏡筒12の振動モード及びその振動量を求めることができる。さらに、その振動によってコラムセル11Aの光軸AXは光軸AXBのように変位するため、その計算される光軸AXBの変位(曲がり)より、コラムセル11Aからウエハ面に投影される開口26aの像の位置A1のX方向の位置ずれ量を求めることができる。この場合には、その位置ずれ量を相殺するように偏向器22によって電子ビームEBを矢印A2で示すようにX方向に偏向することによって、鏡筒12が振動していても、開口26aの像の位置の位置ずれを補正できる。
同様に、図2の歪みセンサ58C,58Dによって、鏡筒12がマウントベース34を支点として上部及び下部が同じタイミングで+Y方向又は−Y方向に変位するような振動モード及びその振動量を求めることができる。この振動による開口26aの像の位置の位置ずれは、光軸AXをY方向に挟むように配置された偏向器(不図示)によって補正できる。
また、鏡筒12内のコラムセル11Aに電力及び制御用信号等の用力(ユーティリティ)を供給するための可撓性を有する用力ケーブル52が、フレーム機構50からマウントベース34を介して鏡筒12内に引き込まれている。用力ケーブル52が鏡筒12内に引き込まれる部分は封止されている。このように用力ケーブル52の中央部をマウントベース34で支持することによって、鏡筒12に対する用力ケーブル52の負荷の影響を軽減できる。
次に、図1において、鏡筒12の下方の真空チャンバ62内に設置されたステージ装置WSTは、ベース部材70のXY面に平行な表面に、磁気軸受け等の支持部72を介してX方向、Y方向に移動可能に載置された可動ステージ76と、可動ステージ76をX方向に貫通する中空部(不図示)に挿通されたガイド部78と、ガイド部78のX方向の両端部の底面に連結されてY方向に延びる可動部80A,80Bと、を有する。可動ステージ76は、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの方向(θx、θy、θz方向)にも所定範囲で回転可能である。ガイド部78内の固定子と、可動ステージ76内の可動子とから、ガイド部78に対して可動ステージ76を、X方向に所定ストローク(例えば50mm程度)で駆動可能で、かつX方向、Y方向、Z方向、及びθx、θy、θz方向に所定範囲内で微小駆動可能な、閉磁界型でかつムービングマグネット型の駆動モータ77が構成されている。また、可動部80A,80Bには、ベース部材70に対して可動部80A,80B(及び可動ステージ76)をY方向に所定ストローク(例えば50mm程度)で駆動可能な例えばリニアモータ等の駆動モータ81が設けられている。本実施形態では、コラムセル11Aと同じ構成の複数のコラムセルを介して並行に露光を行うため、可動ステージ76のX方向、Y方向の移動ストロークは、上述のコラムセル11Aの直径よりもわずかに大きい程度であればよい。このため、ステージ装置WSTを小型化できる。
また、ウエハWは、平板状の保持部材である外形が六角形状又は円形状等のシャトル66の上面の凹部内に載置され、シャトル66の外周部の3箇所に、それぞれ板ばねを介して半径方向に移動可能にボール(球体)67が固定されている。3箇所のボール67は、平面視でほぼ正三角形の3つの頂点の位置に設けられている。そして、シャトル66の3箇所のボール67は、それぞれ可動ステージ76の上面に固定された三角錐状溝部材68に係合している。なお、図1では、2箇所のボール67及び三角錐状溝部材68のみを図示している。3箇所の三角錐状溝部材68及びボール67を介して、シャトル66は可動ステージ76にキネマティックカップリング方式で載置されている。
なお、図1では、三角錐状溝部材68として、3つの小さい直方体状の部材を放射状に、かつ上部で開くような状態で配置して固定した例が示されている。その三角錐状溝部材68は、ボール67にそれぞれ3点で点接触する三角錐状の溝と同じ役割を有するため、三角錐状溝部材と称している。したがって、三角錐状の溝が形成された単一の部材を、三角錐状溝部材68の代わりに用いても良い。一例として、ウエハWは、シャトル66に保持された状態で可動ステージ76に対するローディング及びアンローディングが行われる。また、ウエハWは、シャトル66に対して静電吸着方式で吸着され、可動ステージ76の上面のZ方向に可動の端子部(不図示)からシャトル66の底面の端子部(不図示)に静電吸着用の電力(電圧)が供給されている。
また、ステージ装置WSTは、レーザビームLB等を可動ステージ76に照射して、可動ステージ76のX方向、Y方向の位置をそれぞれ0.5nm程度の精度で複数箇所で計測する複数軸のレーザ干渉計82を有する。図3のステージ位置計測部93でレーザ干渉計82の計測値を処理することで、可動ステージ76のθz方向の角度も計測できる。図3のステージ駆動部94は、ステージ位置計測部93の計測値を所定のサンプリングレートで継続して取り込み、その計測値に基づいて駆動モータ77,81を駆動する。
なお、シャトル66の上面の複数箇所(例えば3箇所)に、2次元の回折格子(不図示)を設けておき、計測フレーム42の底面にそれらの回折格子に対向して複数の検出ヘッド84(図1では一つの検出ヘッド84のみを図示)を設けておいてもよい。それらの回折格子及び検出ヘッド84からエンコーダ型の計測装置が構成される。検出ヘッド84から対応する回折格子に位置検出用のレーザビームを照射し、その回折格子から発生する複数の回折光を検出し、この検出結果をステージ位置計測部93で処理することで、回折格子(可動ステージ76)の位置をレーザ干渉計82と同程度の分解能で計測できる。このエンコーダ型の計測装置を、レーザ干渉計45と併用してもよい。また、露光中には、エンコーダ型の計測装置を使用し、ウエハW(シャトル66)の交換中にはレーザ干渉計82を使用してもよい。
なお、ステージ装置WSTをZ軸に平行な軸の回りに90°回転して、可動ステージ76をガイド部78に沿ってY方向(走査方向)に駆動し、可動部80A,80BをX方向に駆動するようにしてもよい。
次に、図3の制御系6は、コンピュータのソフトウェア上の機能であって、装置全体の動作を制御する主制御装置86と、オペレータとのインターフェース部(不図示)と、上述の振動計測部87、制振モータ駆動部88、振動モード検出部89、ステージ位置計測部93、及びステージ駆動部94とを有する。さらに、制御系6は、コラムセル11Aの動作を制御する露光制御部90と、露光制御部90の制御のもとでコラムセル11Aのブランカー板28の複数対のブランキング電極28bへの電圧の印加(ビーム成形アパーチャ板26の複数の開口26aを通過する電子ビームEBのオン又はオフ)を個別に制御するブランキング電極制御部91と、露光制御部90の制御のもとで偏向器22の電圧を制御する偏向器制御部92とを有する。露光制御部90は、ウエハ面の複数のショット(ショット領域)に露光すべきパターン、及び可動ステージ76の位置に応じて各電子ビームEBのオン又はオフを制御する。
また、振動モード検出部89から鏡筒12の振動による開口26aの像のウエハ面での位置ずれ量の情報が露光制御部90に供給されてくると、露光制御部90では、その位置ずれ量を相殺するように偏向器制御部92を介して偏向器22を駆動してその像の位置を補正する。さらに、振動計測部87で検出される鏡筒12の振動が制振モータ55A〜55Fで抑制できる範囲を超えている場合、一例として、振動計測部87では、その振動の計測値から制振モータ55A〜55Fで補正可能な振動を除去して得られる振動による開口26aの像のウエハ面での位置ずれ量を求め、この位置ずれ量を露光制御部90に出力する。これに応じて、露光制御部90では、その像の位置ずれ量を相殺するように偏向器制御部92を介して偏向器22を駆動してその像の位置を補正する。これによって、鏡筒12の振動量が大きい場合でも、ウエハ面での投影像の位置の変動を抑制できる。
次に、本実施形態の露光装置8における鏡筒12の振動の抑制方法の一例につき、図5のフローチャートを参照して説明する。この抑制方法は主制御装置86によって制御される。この動作の前提として、露光装置8の製造工程において、電子ビーム照射装置10の鏡筒12のビーム成形アパーチャ板26が配置されている部分の側面がマウントベース34を支持される。そして、電子ビーム照射装置10によるウエハWに対する複数の電子ビームの照射と、可動ステージ76によるウエハWの移動とを行うことによって、ウエハWの露光が行われているものとする。このとき、まず図5のステップ102において、振動計測部87が所定のサンプリングレートでマウントベース34に装着された加速度センサ54A〜54Fの計測値を取り込み、取り込まれた計測値を用いて振動計測部87はマウントベース34で支持される鏡筒12及びビーム成形アパーチャ板26の上述の6自由度の振動(加速度)を算出する(ステップ104)。その6自由度の振動の計測値は制振モータ駆動部88に供給される。制振モータ駆動部88では、その計測された鏡筒12及びビーム成形アパーチャ板26の振動を抑制するように制振モータ55A〜55Fを駆動する(ステップ106)。
ステップ102〜106の動作は、ステップ108で露光終了と判定されるまで、繰り返して実行される。この動作によって、可動ステージ76の駆動、外乱、及びイオンポンプ46A,48A等の作動に起因する鏡筒12の振動が抑制される。そして、ウエハWに対して高精度に露光を行うことができる。
次に、本実施形態の露光装置8を用いる露光方法及び投影像の位置の補正方法の一例につき、図6のフローチャートを参照して説明する。この動作は主制御装置86によって制御される。まず、図6のステップ112において、振動モード検出部89が所定のサンプリングレートで歪みセンサ58A〜58Dの計測値を取り込み、取り込まれた計測値を用いて振動モード検出部89は鏡筒12の図4に示すような振動モードの種類、及びその振動モードでの振動量を算出する(ステップ114)。さらに、振動モード検出部89は、鏡筒12の振動によって生じる開口26aの像(投影像)のウエハ面でのX方向、Y方向への位置ずれ量を算出し、算出結果を露光制御部90に出力する(ステップ116)。ステップ112〜116の動作は、ステップ118で露光終了と判定されるまで、繰り返して実行される。
また、ステップ112〜116の動作と並行してステップ122〜132の動作が実行される。まず、ステップ122において、ステージ位置計測部93では、レーザ干渉計82及び/又は検出ヘッド84の計測値を取り込み、可動ステージ76の位置を求める。さらに、ステージ位置計測部93では、可動ステージ76の計測された位置と目標位置とのずれ量を算出し、算出された値をステージ駆動部94に出力する(ステップ124)。そして、ステージ駆動部94では、その位置ずれ量を低減するように駆動モータ77,81を駆動する(ステップ126)。
さらに、ブランキング電極制御部91では、計測された可動ステージ76の位置に応じてブランカー板28の複数対のブランキング電極28bを個別に駆動して、複数の電子ビームのウエハ面でのオン/オフを制御する(ステップ128)。この動作によってウエハ面には目標とするパターンが露光される。また、露光制御部90では、振動モード検出部89から供給される投影像の位置ずれ量、及び必要に応じて振動計測部87から供給される投影像の位置ずれ量を用いて、投影像の位置ずれ量の合計を求め、この合計の位置ずれ量を補正するように偏向系の駆動量を算出する(ステップ130)。そして、ステップ130で算出した偏向系の駆動量を用いて、露光制御部90は、偏向器制御部92を介して偏向器22(Y方向の偏向器を含む)を駆動する(ステップ132)。ステップ122〜132の動作は、ステップ134で露光終了と判定されるまで、繰り返して実行される。
この露光方法によれば、加速度センサ54A〜54Fでは検出されない鏡筒12の振動又は変形に起因する投影像のウエハ面での位置ずれ量を、歪みセンサ58A〜58Dを用いて検出し、その位置ずれ量を偏向器22によって補正している。このため、鏡筒12の振動又は変形に起因する投影像の位置ずれ量を補正して、目標とするパターンを高精度にウエハWに露光できる。
上述のように、本実施形態の露光装置8は、電子ビーム(荷電粒子ビーム)を用いてウエハW(基板)にパターンを露光する露光装置である。そして、露光装置8は、電子ビームEBが通過する開口26aが形成されたビーム成形アパーチャ板26(開口部材)を有する電子光学系11Bと、電子光学系11Bを収容する鏡筒12とを有し、開口26aを介した電子ビームEBでウエハWを露光する電子ビーム照射装置10と、鏡筒12のうちビーム成形アパーチャ板26が配置されている部分(第3分割鏡筒13C)を支持するマウントベース34(第1支持部材)と、マウントベース34の振動(加速度)を検出する加速度センサ54A〜54F(第1振動センサ)と、加速度センサ54A〜54Fの検出結果を用いてマウントベース34の振動を抑制する制振モータ55A〜55F(第1制振装置)と、を備えている。
また、露光装置8を用いる露光方法は、露光装置8の電子ビーム照射装置10の鏡筒12のビーム成形アパーチャ板26が配置されている部分をマウントベース34で支持するステップ(露光装置8の製造工程)と、マウントベース34の加速度(振動)を検出するステップ102と、マウントベース34の振動の検出結果を用いて制振モータ55A〜55Fによってマウントベース34の振動を抑制するステップ106とを有する。
本実施形態によれば、鏡筒12のビーム成形アパーチャ板26が配置されている部分をマウントベース34で支持しているとともに、マウントベース34の振動を制振モータ55A〜55Fで抑制しているため、ビーム成形アパーチャ板26の開口26aの振動が小さくなる。このため、開口26aの像をウエハ面に露光する際に、露光装置8のステージ装置WST及び外乱等に起因する鏡筒12の振動によるその像の振動が抑制され、高精度に露光を行うことができる。さらに、鏡筒12のビーム成形アパーチャ板26が配置されている部分よりも下方の側面を支持する場合に比べて、鏡筒12の上部の揺れ(首振り運動)が小さくなり、鏡筒12を安定に支持できる。このため、外乱等の振動の影響をより抑制できる。
また、電子ビーム照射装置10は、電子ビームEBの照射位置を補正可能な偏向器22を有し、露光装置8は、電子ビーム照射装置10の鏡筒12の歪みを含む振動(鏡筒12のマウントベース34で支持されている部分以外の振動)を検出する歪みセンサ58A〜58D(振動センサ)を備え、歪みセンサ58A〜58Dの検出結果から求められる電子ビームEBの照射位置の変動を偏向系22を用いて補正している(ステップ132)。このため、マウントベース34(又はビーム成形アパーチャ板26)の振動計測のみでは検出できない、図4に示す鏡筒12の倒れ又は歪みのような振動をも検出することができる。そして、その振動に起因する投影像の位置の変位を偏向器22で補正することによって、振動の影響をより軽減して、より高精度に露光を行うことができる。
なお、例えば鏡筒12の剛性が高い場合には、歪みセンサ58A〜58Dを省略してもよい。
また、露光装置8においては、鏡筒12に設けたフランジ部材40に対してウエハWが配置される側の空間(露光室62a)を真空に維持するための真空チャンバ62(真空室)と、真空チャンバ62とフランジ部材40との隙間を気密化するための可撓性を有するベローズ63と、を備えている。このため、真空チャンバ62を小型化でき、真空排気用の設備を小型化でき、露光装置8の製造コストを低減できる。さらに、マウントベース34、加速度センサ54A〜54F、及び制振モータ55A〜55Fを大気圧の雰囲気中に配置することができるため、制振モータ55A〜55Fの調整作業等が容易である。
なお、上述の実施形態では、以下のような変形が可能である。
上述の実施形態では、マウントベース34の加速度を検出しているが、加速度センサ54A〜54Fを図1のビーム成形アパーチャ板26上の点線で示す位置A3,A4等に設け、加速度センサ54A〜54Fでビーム成形アパーチャ板26の加速度(振動)を直接検出してもよい。この場合、加速度センサ54A〜54Fで検出されるビーム成形アパーチャ板26の振動を抑制するように、制振モータ55A〜55Fによってマウントベース34に推力が付与される。これによって、より高精度にビーム成形アパーチャ板26の振動を抑制できる。
さらに、マウントベース34に加速度センサ54A〜54Fを設けるとともに、ビーム成形アパーチャ板26に6自由度の加速度を検出する別の加速度センサ(不図示)を設けてもよい。この場合、一例として、加速度センサ54A〜54Fで検出されるマウントベース34の振動、及び別の加速度センサで検出されるビーム成形アパーチャ板26の振動の振幅の自乗和が最小になるように、言い換えるとマウントベース34及びビーム成形アパーチャ板26の振動が全体として最小になるように、制振モータ55A〜55Fによってマウントベース34に推力が付与される。これによって、マウントベース34(鏡筒12)及びビーム成形アパーチャ板26の振動を全体として抑制できる。
さらに、マウントベース34(鏡筒12)及びビーム成形アパーチャ板26の少なくとも一方の振動を検出し、マウントベース34(鏡筒12)及びビーム成形アパーチャ板26の少なくとも一方の振動を抑制するように制振モータ55A〜55Fを使用してもよい。
また、上述の実施形態では、ビーム成形アパーチャ板26には一列に開口26aが形成されているが、X方向に配列された一列の複数の矩形の開口26aとともに、X方向に配列された一列の例えばビアパターン形成用の複数の円形の開口(不図示)を形成しておいてもよい。この場合には、対応するブランカー板28においても、開口26aに対応してX方向に配列された一列の複数の矩形の開口28aと並列に、複数の円形の開口に対応してX方向に配列された一列の複数の矩形の開口が形成され、これらの開口にもそれぞれ一対のブランキング電極が設けられる。そして、図1の1次ビーム成形板24とビーム成形アパーチャ板26との間に、電子ビームEBをY方向に偏向する偏向器(不図示)を設け、通常の露光時には、開口26aの列に電子ビームを照射し、ビアパターンの露光時には円形の開口の列の上に電子ビームを照射することで、2種類のパターンの露光を行うことができる。
また、上述の実施形態では、コラムセル11Aは複数設けられているが、露光対象のウエハWが小さい場合には、一つのコラムセル11Aを設けるだけでもよい。
また、コラムセル11Aはシングルビーム方式でもよい。
次に、第2の実施形態につき図7を参照して説明する。上述の実施形態では、マウントベース34によって鏡筒12のビーム成形アパーチャ板26が配置されている部分を支持しているが、本実施形態では、鏡筒12の支持の方法が異なっている。
図7は、本実施形態に係る露光装置8Aを示す。なお、図7において図1に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図7において、露光装置8Aの電子ビーム照射装置10Aの鏡筒12のうちの、電子光学系11Bの電子銃14を支持する取り付け板15が固定されている第5分割鏡筒13Eの内面に対向する側面に、輪帯の平板状の支持用フレーム36(第2支持部材)が複数のボルト35によって固定されている。また、支持用フレーム36の底面(−Z方向の面)は、複数箇所(例えば少なくとも3箇所)でロッド状の連結部材47E,47F(他の連結部材は不図示)によってマウントベース34の上面に連結されている。また、支持用フレーム36の上方の4個のイオンポンプ46A〜46D(図2参照)は、それぞれ高さの低い連結部材46Aa,46Ba(他の連結部材は不図示)を介して支持用フレーム36の上面に連結されている。
支持用フレーム36には、マウントベース34を吊り下げている3本のワイヤ38を通すための3個の貫通穴36h(他の2個の貫通穴は不図示)が形成されている。このため、マウントベース34は、フランジ部材40及び支持用フレーム36を支持した状態で、フレーム機構50から3本のワイヤ38を介して吊り下げて支持されている。露光装置8Aにおいて、一例として、電子銃14のZ方向の位置と、支持用フレーム36の第5分割鏡筒13Eに接触している部分の厚さ方向(Z方向)の中心のZ方向の位置とが等しく設定されている。このため、電子銃14(取り付け板15)の振動が抑制されており、電子銃14から放出される電子ビームEBの振動に起因するウエハ面での電子ビームEBの照度分布の変動等が抑制され、高精度に露光を行うことができる。
また、支持用フレーム36の上面のマウントベース34の加速度センサ54A,54Bが固定されている部分の上方に、鏡筒12の中心に対して半径方向(又は円周方向)、及びZ方向の支持用フレーム36の加速度をそれぞれ検出する加速度センサ60A,60B(第2振動センサ)が固定されている。そして、支持用フレーム36の側面の加速度センサ60A,60Bに近い部分と、フレーム機構50との間に、Z方向及び鏡筒12の中心に対して半径方向(又は円周方向)にそれぞれ支持用フレーム36に制振用の推力を与える非接触方式の制振モータ61A,61B(第2制振装置)が設置されている。制振モータ61A,61Bの構成は制振モータ55Aと同様である。
さらに、支持用フレーム36の上面において、加速度センサ60A,60Bを鏡筒12の中心の回りにほぼ±120°回転した2箇所の位置にもそれぞれ同様の2つの加速度センサ(不図示)が固定されている。また、これらの2箇所の2つの加速度センサが固定されている部分の支持用フレーム36とフレーム機構50との間に、それぞれ制振モータ61A,61Bと同様の2つの制振モータ(不図示)が配置されている。
図7の加速度センサ60A,60Bを含む6個の加速度センサによる支持用フレーム36の加速度の計測値は、図3の振動計測部87に供給される。振動計測部87は、その6個の加速度センサの計測値から、支持用フレーム36のX方向、Y方向、及びZ方向の加速度、並びにX軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転方向の加速度(角加速度)を含む6自由度の加速度を算出する。このように算出された支持用フレーム36の6自由度の加速度は、支持用フレーム36で保持されている部分の鏡筒12及び電子銃14(取り付け板15)の6自由度の振動の計測値とみなすことができる。
また、図3の制振モータ駆動部88が、図7の制振モータ61A,61Bを含む6個の制振モータの推力を個別に制御することによって、支持用フレーム36に、その6自由度の加速度に対応する方向の推力を付与する。一例として、制振モータ駆動部88は、支持用フレーム36に関して計測された6自由度の加速度をそれぞれ相殺する推力を発生するように制振モータ61A,61B等を駆動する。これによって、支持用フレーム36及び電子銃14の6自由度の振動をそれぞれ抑制することができる。このため、電子銃14の振動が低減されて、ウエハWに微細なパターンを高精度に露光できる。この他の構成は、図1の実施形態と同様である。
本実施形態の露光装置8A又は露光装置8Aを用いる露光方法によれば、制振モータ55A,55B等によってマウントベース34の6自由度の振動を抑制すると同時に、制振モータ61A,61B等によって支持用フレーム36の6自由度の振動を抑制することができる。このため、鏡筒12のマウントベース34で支持されている部分を中心とする、例えば図4に示すような鏡筒12の変形(鏡筒12の倒れ)を伴う振動を抑制することができる。そのため、より高精度に露光を行うことができる。
なお、本実施形態において、支持用フレーム36を3本のワイヤ38によってフレーム機構50から吊り下げて支持し、マウントベース34を支持用フレーム36で支持してもよい。さらに、マウントベース34を省略し、支持用フレーム36を3本のワイヤ38によってフレーム機構50から吊り下げて支持してもよい。この場合には、イオンポンプ48A,48B等も支持用フレーム36に連結され、フランジ部材40も支持用フレーム36に連結される。このように支持用フレーム36を吊り下げて支持する場合、又はマウントベース34を省略する場合には、露光装置8Aは、電子銃14と、電子銃14から射出される電子ビームEBをウエハWに導く電子光学系11Bと、電子銃14と電子光学系11Bとを収容する鏡筒12を有する電子ビーム照射装置10Aと、鏡筒12のうち、電子銃14が配置されている部分(第5分割鏡筒13E)を支持する支持用フレーム36(支持部材)と、支持用フレーム36の振動を検出する加速度センサ60A,60B(振動センサ)と、加速度センサ60A,60Bの検出結果を用いて、支持用フレーム36の振動を抑制する制振モータ61A,61B(制振装置)と、を備えている。
また、露光装置8Aを用いる露光方法は、電子銃14と、電子銃14から射出される電子ビームEBをウエハWに導く電子光学系11Bと、電子銃14と電子光学系11Bとを収容する鏡筒12を有する電子ビーム照射装置10Aの鏡筒12のうち、電子銃14が配置されている部分を支持用フレーム36で支持するステップ(製造工程)と、支持用フレーム36の振動を検出するステップと、この振動の検出結果を用いて、支持用フレーム36の振動を抑制するステップと、を有する。
この露光装置8A又は露光方法によれば、電子銃14(取り付け板15)の振動を抑制できるため、電子銃14から放出される電子ビームEBの振動に起因するウエハ面での電子ビームEBの照度分布の変動等が抑制され、高精度に露光を行うことができる。さらに、鏡筒12の下方を支持する場合に比べて、鏡筒12の上部の振動(例えば首振り運動)を低減できる。
なお、加速度センサ60A,60Bを含む6個の加速度センサの代わりに、電子銃14が設けられた取り付け板15に固定された加速度センサ56を使用してもよい。この場合には、加速度センサ56は、取り付け板15の6自由度の加速度を計測する。または、支持用フレーム36に加速度センサ60A,60B等を設けておき、電子銃14の取り付け板15に設けられた加速度センサ56では取り付け板15の6自由度の加速度を計測するようにしてもよい。この場合、加速度センサ60A,60B等又は加速度センサ56で検出される電子銃14の振動を抑制するように制振モータ61A,61B等で支持用フレーム36に推力を付与してもよい。これによって、電子銃14の振動をより抑制できる。
さらに、支持用フレーム36(鏡筒12)及び電子銃14の少なくとも一方の振動を検出し、支持用フレーム36(鏡筒12)及び電子銃14の少なくとも一方の振動を抑制するように制振モータ60A,60B等を使用してもよい。
なお、上述の実施形態では、マウントベース34(ビーム成形アパーチャ板26)、及び/又は支持用フレーム36(電子銃14)の振動を検出するために加速度センサ54A〜54F等が使用されているが、加速度センサ54A〜54Fの代わりに例えば速度センサ又は変位センサ(リニアエンコーダ等)を使用してもよい。この場合、速度センサ又は変位センサの計測値を振動とみなしてもよいが、例えば速度センサの計測値の微分、又は変位センサの計測値の2階微分を振動とみなしてもよい。
また、上述の実施形態では、ウエハWはシャトル66に保持されて可動ステージ76に支持されているが、シャトル66を使用することなく、ウエハWを直接に可動ステージ76に載置してもよい。
また、上記の実施形態の露光システム又は露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造する場合、この電子デバイスは、図8に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)又は電子ビームによる露光パターンを製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造するステップ223、前述した実施形態の露光装置又は露光方法によりマスク又は露光パターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
言い替えると、上記のデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置又は露光方法を用いて、所定のパターンを介して基板(ウエハW)に形成する工程と、その所定のパターンを介して基板を加工する工程と、を含んでいる。
このデバイス製造方法によれば、露光工程で高精度にパターンを露光できるため、電子デバイスを高精度に製造できる。
なお、上記実施形態では、ターゲットが半導体素子製造用のウエハである場合について説明したが、上述の実施形態は、ガラス基板上に微細なパターンを形成して各種デバイスを製造する際にも好適に適用できる。