JP6610346B2 - 磁気特性解析装置、磁気特性解析方法、及びコンピュータプログラム - Google Patents

磁気特性解析装置、磁気特性解析方法、及びコンピュータプログラム Download PDF

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Description

本発明は、磁気特性解析装置、磁気特性解析方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、内部に応力が生じている磁性材料の磁束密度を解析するために用いて好適なものである。
環境問題に対する意識の高まりにより、受配電に使用される変圧器や、空調機・ハイブリット自動車に使用されるモータ等、軟磁性材料を用いて構成される電気機器に対し、鉄損を低減することの要求が高まっている。軟磁性材料として実用上多く使用されている電磁鋼板は、その圧延方向からの磁束密度の角度や、鋼板内に作用する応力の影響により、磁化特性や鉄損特性といった磁気特性が変化する。このため、変圧器やモータ等の電気機器の性能を高精度に予測するためには、電気機器に使用している軟磁性材料の応力の影響による磁気特性の変化を考慮することが望まれる。
このような応力の影響を考慮して軟磁性材料の磁束密度や鉄損を計算する技術として特許文献1、2に記載の技術がある。
特許文献1に記載の技術では、まず、磁束密度と磁界との関係を表すBH曲線を、応力毎に用意する。そして、応力解析で得られた軟磁性材料の応力ベクトルの絶対値に対応するBH曲線を抽出し、これを用いて、軟磁性材料の磁束密度ベクトルを計算する。
また、特許文献2に記載の技術でも、BH曲線を、応力毎に用意する。そして、応力解析で得られた軟磁性材料の相当応力(磁束密度ベクトルが存在する平面内の応力と、当該平面に直交するせん断応力とに基づき定まる応力)に対応するBH曲線を抽出し、これを用いて、軟磁性材料の磁束密度ベクトルを計算する。
特許第3643334号公報 特開2009−52914号公報
社団法人日本塑性加工学会編、「非線形有限要素法 −線形弾性解析から塑性加工解析まで」、株式会社コロナ社、1994年12月 中田高義、高橋則雄、「電気工学の有限要素法」、第2版、森北出版株式会社、1986年4月 阿波根 明、外1名、「等方性ベクトルプレイモデルを用いた有限要素法によるヒステリシス解析の検討」、電気学会 静止器・回転機合同研究会資料、SA‐09−67、RM−09−73、p.71−p.76、2009年 北尾 純士、外6名、「プレイモデルのヒステリシス磁界解析への適用に関する検討」、電気学会 静止器・回転機合同研究会資料、SA‐12−16、RM−12−16、p.89−p.94、2012年
特許文献1に記載の技術では、軟磁性材料内に分布する応力ベクトルの方向と磁束密度ベクトルの方向との関係を無視し、3次元応力ベクトルの各方向成分の二乗和の平方根(絶対値)に対応するBH曲線を用いて、磁束密度ベクトルの計算を行っている。また、特許文献2に記載の技術では、磁束密度ベクトルが存在する平面内の応力に加え、当該平面に直交するせん断応力も考慮した応力に対応するBH曲線を用いて、磁束密度ベクトルの計算を行っている。
しかしながら、軟磁性材料に作用する応力のうち、磁気特性に影響を及ぼすのは、磁束密度ベクトルに平行な成分のみである。また、圧縮応力は、透磁率を大きく低下させる作用があるのに対し、引張応力は、殆ど磁気特性を変化させることはない。このため、特許文献1、2に記載の技術では、応力の影響を過大に評価して、磁束密度ベクトルを求めることになり、磁束密度ベクトルを高精度に求めることが困難になるという問題点があった。更にこれにより、磁束密度ベクトルから得られる鉄損も精度よく求めることが困難になるという問題点があった。特に、三相交流で励磁される回転機及び変圧器では、磁束密度ベクトルの軌跡が、楕円状の挙動を示す回転磁束になる為、応力ベクトルと磁束密度ベクトルとのなす方向が、頻繁に変化する。よって、以上のような問題点が顕著になる。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、内部に応力が生じている磁性材料の磁束密度ベクトルを従来よりも高精度に求めるようにすることを目的とする。
本発明の磁気特性解析装置は、励磁された磁性材料の磁気特性をコンピュータにより計算する磁気特性解析装置であって、前記磁性材料の計算対象となる領域を複数の微小領域に分割する領域分割手段と、前記磁性材料に生じる応力ベクトルとして、前記微小領域のそれぞれにおける応力ベクトルを記憶する応力記憶手段と、前記磁性材料における磁束密度の大きさと、磁界の大きさとの関係を示すBHデータを、応力の大きさをパラメータとして記憶するBHデータ記憶手段と、前記応力ベクトルから計算される応力の大きさに対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算する磁束密度ベクトル計算手段と、前記応力記憶手段により記憶された応力ベクトルと、前記磁束密度ベクトル計算手段により計算された磁束密度ベクトルとに基づいて、当該応力ベクトルの、当該磁束密度ベクトルに平行な方向の成分である磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさを計算することを、前記微小領域のそれぞれについて行う磁束密度平行方向応力計算手段とを有することを特徴とする。
本発明の磁気特性解析方法は、励磁された磁性材料の磁気特性をコンピュータにより計算する磁気特性解析方法であって、磁性材料の計算対象となる領域を複数の微小領域に分割する領域分割工程と、前記磁性材料に生じる応力ベクトルとして、前記微小領域のそれぞれにおける応力ベクトルを記憶する応力記憶工程と、前記磁性材料における磁束密度の大きさと、磁界の大きさとの関係を示すBHデータを、応力の大きさをパラメータとして記憶するBHデータ記憶工程と、前記応力ベクトルから計算される応力の大きさに対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算する磁束密度ベクトル計算工程と、前記応力記憶工程により記憶された応力ベクトルと、前記磁束密度ベクトル計算工程により計算された磁束密度ベクトルとに基づいて、当該応力ベクトルの、当該磁束密度ベクトルに平行な方向の成分である磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさを計算することを、前記微小領域のそれぞれについて行う磁束密度平行方向応力計算工程とを有することを特徴とする。
本発明のコンピュータプログラムは、前記磁気特性解析装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
本発明によれば、磁性材料に生じる応力の内、磁束密度ベクトルの方向に平行な成分の応力の大きさを計算し、これに対応するBHデータを用いて、磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを計算するようにした。したがって、従来のように、過大な応力の大きさに対応するBHデータを用いることを抑制することができる。よって、内部に応力が生じている磁性材料の磁束密度ベクトルを従来よりも高精度に求めることができる。
磁気特性解析装置の機能的な構成の第1の例を示す図である。 磁束密度計算用微小領域の一例を概念的に示す図である。 磁束密度の異方性を示す説明する図である。 BHデータの第1の例を示す図である。 BWデータの一例を示す図である。 回転磁束と交番磁束を示す図である。 磁気特性解析装置の処理の一例を説明するフローチャートである。 図7のステップS707における磁束密度ベクトル計算処理の詳細について説明するフローチャートである。 発明例の手法で得られた鉄損と、比較例の手法で得られた鉄損と、測定値とを正規化して示す図である。 磁気特性解析装置の機能的な構成の第2の例を示す図である。 BHデータの第2の例を示す図である。 発明例1、2の手法で得られた鉄損と、測定値とを正規化して示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。尚、以下の各実施形態では、モータのステータコア(固定子)の鉄損を計算する場合を例に挙げて説明する。ここで、ステータコアは、電磁鋼板を積層することにより形成されるものであるとする。さらに、ステータコアを固定する方法として焼嵌めを採用するものとし、この焼嵌めによりステータコア内に発生する応力[Pa]の影響を考慮して磁束密度ベクトル[T]及び鉄損[W/kg]を算出するものとする。
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態を説明する。
<磁気特性解析装置100の構成>
図1は、磁気特性解析装置100の機能的な構成の一例を示す図である。磁気特性解析装置100は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、キーボードやマウスからなるユーザインターフェース、及びデータ入出力制御装置等を有しており、例えばPC(Personal Computer)で実現することができる。
(応力計算条件入力部101)
応力計算条件入力部101は、応力計算条件の情報を入力して記憶媒体に記憶する。応力計算条件は、応力計算用微小領域分割部102による領域分割と、応力計算部103による計算に必要な情報である。具体的に、応力計算条件は、例えば、ステータコアの形状、焼嵌めシェルの厚み、ステータコアに使用した電磁鋼板や焼嵌めシェルのヤング率、及び焼嵌め時の温度である。
応力計算条件入力部101は、例えば、CPUが、ユーザインターフェースを介して応力計算条件の情報を取得してHDD等に記憶したり、CPUが、外部装置からデータ入出力制御装置を介して応力計算条件の情報を取得してHDD等に記憶したり、CPUが、可搬型の記憶媒体から応力計算条件の情報を読み出してHDD等に記憶したりすることにより実現することができる。
(応力計算用微小領域分割部102)
応力計算用微小領域分割部102は、応力計算条件(ステータコアの形状)に基づいて、応力の計算対象であるステータコアの領域を、例えば、格子状の複数の応力計算用微小領域(所謂メッシュ)に分割する。一般に、応力計算用微小領域は、後述する磁束密度計算用微小領域分割部105で得られる磁束密度計算用微小領域とは異なるものとなる。
応力計算用微小領域分割部102は、例えば、CPUが、複数の応力計算用微小領域を設定し、その情報(例えば、大きさ・位置・分割の方法等)をRAM等に記憶することにより実現することができる。
(応力計算部103)
応力計算部103は、各応力計算用微小領域における応力ベクトルσの各成分(x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、z軸方向の応力σz)を計算する。尚、x軸、y軸、z軸は、3次元直交座標の各軸であり、磁束密度の計算の際にも、応力の計算の際にも、共通の3次元直交座標を用いるものとする。
本実施形態では、計算対象が、モータのステータコアであるので、焼き嵌めにより、ステータコアに加わる応力を計算することになる。そこで、応力計算部103は、応力計算条件(ステータコアの形状、焼嵌めシェルの厚み、ステータコアに使用した電磁鋼板や焼嵌めシェルのヤング率、焼嵌め時の温度)を入力し、例えば、有限要素法を用いて、焼嵌め後のステータコア(の各応力計算用微小領域)にかかる応力を、計算する。応力の計算は、例えば、非特許文献1に示されるように、ヤング率やポアソン比等の物性値を入力条件として、有限要素法で構造解析することにより実現できる。
応力計算部103は、例えば、CPUが、以上の処理を実行して、各応力計算用微小領域における応力ベクトルσの各成分σx、σy、σzを計算し、計算した応力ベクトルσの各成分σx、σy、σzをRAM等に記憶することにより実現される。
(磁束密度計算条件入力部104)
磁束密度計算条件入力部104は、磁束密度計算条件の情報を入力して記憶媒体に記憶する。磁束密度計算条件は、磁束密度計算用微小領域分割部105による領域分割と、応力補間部106による計算と、磁束密度ベクトル計算部108による計算に必要な情報である。具体的に、磁束密度計算条件は、例えば、ステータコアの形状、励磁するときの条件(励磁電流密度J0、周波数)、各種の初期値(A、ν、∂ν/∂B2、θ等)である。尚、ステータコアの形状は、応力計算条件入力部101にも入力されるので、応力計算条件入力部101に入力されたものを流用してもよい。また、励磁するときの条件とは、磁性材料内に、磁束密度及び磁界を発生させる源に関する条件であり、例えば、コイルの電流値もしくは電流密度、コイルに印加される電圧値、永久磁石の磁化強度、がこれに相当する。
磁束密度計算条件入力部104は、例えば、CPUが、ユーザインターフェースを介して磁束密度計算条件の情報を取得してHDD等に記憶したり、CPUが、外部装置からデータ入出力制御装置を介して磁束密度計算条件の情報を取得してHDD等に記憶したり、CPUが、可搬型の記憶媒体から磁束密度計算条件の情報を読み出してHDD等に記憶したりすることにより実現することができる。
(磁束密度計算用微小領域分割部105)
磁束密度計算用微小領域分割部105は、ステータコアの形状に基づいて、磁束密度の計算対象であるステータコアの領域を、例えば格子状の複数の磁束密度計算用微小領域(所謂メッシュ)に分割する。
図2は、磁束密度計算用微小領域の一例を概念的に示す図である。図2に示す例では、電磁鋼板は、1、2、3、・・・、i、i+1、i+2、・・・、j、j+1、j+2、・・・、nの磁束密度計算用微小領域sに分割される。ここで、磁束密度計算用微小領域sの磁束密度が△Bsであるとし、鉄損がΔwsであるとする。また、図3は、磁束密度の異方性を示す説明する図である。図3において、RDは、鋼板の圧延方向(rolled direction)であり、TDは、それに直角な方向(transversal direction)である。θは、磁束密度Bの方向と鋼板の圧延方向RDとの間の角度をθである。
本実施形態では、有限要素法を用いて、各磁束密度計算用微小領域の磁束密度を求める。ここで、図2に示すようにして分割された各磁束密度計算用微小領域の内部においては、透磁率μ[H/m]或いは磁気抵抗率ν(=1/μ)は一定の値であるとする。このようにすれば、有限要素法において、各磁束密度計算用微小領域間の境界では不連続であっても、磁束密度計算用領域内では一様なパラメータをもっていると考えることができる。したがって、応力の影響を受けたり、磁界に対する磁束密度の変化が非線形であったりする電磁鋼板の鉄損の計算においても、予め計算された各磁束密度計算用微小領域の鉄損の総和を求めることによって、計算対象のステータコアの全体の鉄損を容易に計算することができる。すなわち、計算対象のステータコアの全体の鉄損Wは、以下の(1)式で表される。
Figure 0006610346
ここで、wsは、図2に示した磁束密度計算用微小領域s(s=1、2、3、・・・、i、i+1、i+2、・・・、j、j+1、j+2、・・・、n)内の鉄損である。また、図2において、磁束密度計算用微小領域sにおける磁束密度ΔBsの大きさと、磁束密度ベクトルBと電磁鋼板の圧延方向RD(rolling direction)とのなす角度θは、磁束密度計算用微小領域sによって異なる(ただし、同じ場合もあり得る)。鉄損Wは、磁束密度Bの大きさが大きい程、大きな値をとるが、鉄損Wと磁束密度Bとの関係は、必ずしも線形の関係になるわけではない。また、前述したように、磁束密度計算用微小領域sは、有限要素法が適用されることを前提にしたものとしている。しかしながら、有限要素法以外の方法(例えば差分法)を用いても各磁束密度計算用微小領域の磁束密度を求めることができる。
磁束密度計算用微小領域分割部105は、例えば、CPUが、応力計算条件(ステータコアの形状)に基づいて、複数の磁束密度計算用微小領域を設定し、その情報(例えば、大きさ・位置・分割の方法等)をRAM等に記憶することにより実現することができる。尚、以下の説明では、「磁束密度ベクトルBと電磁鋼板の圧延方向RD(rolling direction)とのなす角度θ」を必要に応じて、「磁束密度圧延方向角度θ」と称する。
(応力補間部106)
前述したように、一般に、応力計算用微小領域は、磁束密度計算用微小領域とは異なるものである。そこで、応力補間部106は、応力計算部103で得られた「各応力計算用微小領域における「x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、及びz軸方向の応力σz」」と、磁束密度計算用微小領域分割部105で得られた「磁束密度計算用微小領域s」とに基づいて、各磁束密度計算用微小領域sにおける「x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、及びz軸方向の応力σz」のそれぞれの大きさを、区分線形補間等の補間処理を行うことにより求める。区分線形補間とは、相互に隣接する2つのデータ点の間のそれぞれを、当該2つのデータ点を両端点として線形で補間するものである。これにより、各磁束密度計算用微小領域sにおける応力ベクトルσの初期値が得られる。
応力補間部106は、例えば、CPUが、各磁束密度計算用微小領域における応力σx、σy、σzを計算し、計算した応力σx、σy、σzをRAM等に記憶することにより実現することができる。
(BHデータ記憶部107)
BHデータ記憶部107は、磁束密度の大きさBと、磁界の大きさHとの関係を示すデータであるBHデータを、応力の大きさσ毎・磁束密度圧延方向角度θ毎に記憶している。図4は、BHデータの一例を示す図である。図4におけるプロットは、測定点であり、本実施形態では、この測定点の間を区分線形補間等により補間している。これにより、図4に示すように、磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係を示す曲線(所謂BH曲線)として初磁化特性(初磁化曲線)が、磁束密度圧延方向角度θ毎に得られる。また、図4では図示を省略しているが、同一の磁束密度圧延方向角度θにおいて相互に隣接する2つのBH曲線の間のそれぞれも、区分線形補間等により補間することできる。さらに、相互に隣接する2つの磁束密度圧延方向角度θに対するBH曲線の間のそれぞれも、区分線形補間等により補間することができる。これらの補間を行うことにより、任意の磁束密度圧延方向角度θ、任意の応力の大きさσに対応する「磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係(BHデータ)」を得ることができる。
BHデータ記憶部107は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
(電磁場解析の概要)
本実施形態では、マックスウェルの方程式に基づき、有限要素法を用いて電磁場解析を行う。電磁場解析を行う手法は、非特許文献2等に詳細に記載されているように、一般的な手法である。尚、有限要素法以外の方法(差分法等)を用いて電磁場解析を行ってもよい。
電磁場解析を行うための基礎方程式は、一般に、以下の(2)式〜(5)式で与えられる。(2)式〜(5)式において、→はベクトルであることを表す(このことは、その他の式でも同じである)。
Figure 0006610346
(2)式〜(5)式において、μは、透磁率[H/m]であり、Aは、ベクトルポテンシャル[T・m]であり、σは、導電率[S/m]であり、J0は、励磁電流密度[A/m2]であり、φは、スカラーポテンシャル[V]であり、Jeは、渦電流ベクトル[A/m2]であり、Bは、磁束密度ベクトル[T]である。
(2)式および(3)式を連立して解いて、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルφを求めた後、(4)式、(5)式から、磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeが計算される。
透磁率μが非線形である磁性材料(本実施形態では電磁鋼板)における電磁場を解析する場合のベクトルポテンシャルAおよびスカラーポテンシャルφを未知変数とした解法として、ニュートンラプソン法(Newton-Raphson method)がある。本実施形態においても、ニュートンラプソン法を使用する。
(磁束密度ベクトル計算部108)
磁束密度ベクトル計算部108は、各磁束密度計算用微小領域sにおける磁束密度ベクトルBを計算する。前述したように、本実施形態では、マックスウェルの方程式に基づき、有限要素法を用いて、これらの計算を行う。以下に、磁束密度ベクトル計算部108が行う処理の一例を説明する。
尚、各磁束密度計算用微小領域sにおける磁束密度を計算することができれば、以下に示す以外の方法で計算してもよい。前述したように、有限要素法により電磁場の解析を行う手法は、非特許文献2等に詳細に記載されているように、一般的な手法である。
まず、磁束密度ベクトル計算部108は、時間tを0(ゼロ)に設定する。
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、ベクトルポテンシャル収束計算回数kを1に設定する。また、磁束密度収束計算回数pを1に設定する。尚、以下の各式におけるk、pは、それぞれベクトルポテンシャル収束計算回数、磁束密度収束計算回数を示す。尚、収束計算を開始する前の時点では、ベクトルポテンシャル収束計算回数k、磁束密度収束計算回数pの初期値として0が設定されるものとする。
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、以下の(6)式に示す3つの変数の初期値を設定する。ここで、Aは、磁束密度のベクトルポテンシャルであり、νは、磁気抵抗率であり、Bは、磁束密度である。また、ベクトルポテンシャルAと、∂ν/∂B2の初期値は、時間t=0の場合には、以下の(7)式で表され、時間t>0の場合には、以下の(8)式に示すように、一つ前の時間ステップでの値を、A、∂ν/∂B2として用いる。
Figure 0006610346
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、応力補間部106により得られた「各磁束密度計算用微小領域sにおける「x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、及びz軸方向の応力σz」」(応力ベクトルσの各成分σx、σy、σz)から、以下の(9)式に示すように応力の大きさσの初期値を求める。また、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度圧延方向角度θの初期値として0[°]を設定する。
Figure 0006610346
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、応力の大きさσの初期値と、磁束密度圧延方向角度θの初期値とに対応するBHデータ(BH曲線)をBHデータ記憶部107から抽出する。尚、BHデータ記憶部107に、応力の大きさσの初期値と、磁束密度圧延方向角度θの初期値とに対応するBHデータ(BH曲線)がない場合、磁束密度ベクトル計算部108は、区分線形補間等の補間処理を行って、当該BHデータ(BH曲線)を導出する。
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、以上のようにして得られた「変数A、ν、∂ν/∂B2の初期値と、BHデータと、励磁条件(時間tにおける励磁電流密度J0)」基づいて、剛性マトリクス[K](=[∂2χ/∂Ai∂Aj])と、荷重ベクトル[F](=[∂χ/∂A1,・・・,∂χ/∂Anu])を計算する。そして、磁束密度ベクトル計算部108は、以下の(10)式、(11)式に基づいて、ベクトルポテンシャルの変化分δA(k,p,t)を計算する。
Figure 0006610346
ここで、(10)式について説明する。
まず、マックスウエルの方程式より、励磁電流密度J0[A/m2]を与えた時のベクトルポテンシャルAを表す微分方程式である以下の(12)式が得られる。
Figure 0006610346
磁気抵抗率νをテンソル表示し、(12)式を二次元場の式で表すと、以下の(13)式が得られ、これに対応した汎関数χは以下の(14)式で与えられる。
Figure 0006610346
(13)式及び(14)式において、x、yは、磁束密度ベクトルを計算する3次元直交座標系のx軸とy軸を示すものである。前述したように、この3次元直交座標系は、応力を計算する際に用いた3次元直交座標系と同じである。
電磁場解析における汎関数χは、エネルギーを表す式に等しいので、汎関数χが最小となる条件が実在の物理状態を表すと考えられる。すなわち、実在の物理状態では、汎関数χにおける任意の節点i(磁束密度計算用微小領域sにおける節点)でのベクトルポテンシャルAiの偏微分が0(ゼロ)となる。よって、以下の(15)式が有限要素法で解くべき方程式となる。
Figure 0006610346
(15)式において、nuは、未知節点の総数である。ニュートンラプソン法を適用するために(15)式を書きなおすと、前述した(10)式が得られる。
(10)式、(11)式に基づいて、ベクトルポテンシャルの変化分δA(k,p,t)を計算する。尚、ベクトルポテンシャルの変化分δA(k,p,t)は、前回求めたベクトルポテンシャルA(k-1,p,t)に対する変化分である(ただし、最初にベクトルポテンシャルの変化分δA(1,p,t)を計算する場合には、ベクトルポテンシャルの変化分δA(1,p,t)は、ベクトルポテンシャルAの初期値に対する変化分となる)。
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、以下の(16)式により、収束計算回数がk+1回目での節点iでのベクトルポテンシャルの近似解A(k+1,p,t)を計算する。
Figure 0006610346
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、以下の(17)式により、磁束密度ベクトルB(k,p,t)を求める。
Figure 0006610346
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、以下の(18)式に従うベクトルポテンシャル収束判定条件を満足するか否かを判定する。ここでは、全ての磁束密度計算用微小領域sにおいて、このベクトルポテンシャル収束判定条件を満足するか否かを判定する。
Figure 0006610346
(18)式において、ε1は、予め設定されている定数である。
磁束密度ベクトル計算部108は、(18)式に従うベクトルポテンシャル収束判定条件を満足しない場合、計算した磁束密度ベクトルB(k,p,t)から、以下の(19)式、(20)式により、磁束密度最大値Bmax (k,p,t)と磁束密度圧延方向角度θ(kp,t)とを求める。
Figure 0006610346
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、応力の大きさσの初期値と、磁束密度圧延方向角度θ(k,p,t)とに対応するBHデータ(BH曲線)をBHデータ記憶部107から抽出する。尚、応力の大きさσの初期値と、磁束密度圧延方向角度θ(k,p,t)とに対応するBHデータ(BH曲線)がBHデータ記憶部107に記憶されていない場合、磁束密度ベクトル計算部108は、区分線形補間等の補間処理を行って、当該BHデータを導出する。そして、磁束密度ベクトル計算部108は、得られたBHデータに磁束密度最大値Bmax (k,p,t)を与えて、磁界ベクトルHを求める。
以上により、磁束密度ベクトル計算部108は、次のベクトルポテンシャル収束計算回数k+1におけるν(k+1,p,t)、∂ν/∂B2を計算することができる((21)式)を参照)。これらは、次のベクトルポテンシャル収束計算回数k+1の計算において、剛性マトリクス[K]と荷重ベクトル[F]を求めるのに使用される。そして、磁束密度ベクトル計算部108は、ベクトルポテンシャル収束計算回数kに「1」を加算する。
そして、磁束密度ベクトル計算部108は、磁気抵抗率ν(k+1,p,t)、∂ν/∂B2を用いて剛性マトリクス[K]と荷重ベクトル[F]を求めて、段落[0040]〜[0058]に説明した計算を行い、(18)式に従うベクトルポテンシャル収束判定条件を満足するまで、各磁束密度計算用微小領域における磁束密度ベクトルB(p,t)を繰り返し計算する。
Figure 0006610346
以上のようにして、ベクトルポテンシャル収束判定条件を満足すると、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度ベクトルB(p,t)と、前回の磁束密度収束計算回数p−1の磁束密度ベクトルB(p-1,t)とから、以下の(22)式に従う磁束密度収束判定条件を満足するか否かを判定する。ここでは、全ての磁束密度計算用微小領域sにおいて、この磁束密度収束判定条件を満足するか否かを判定する。
Figure 0006610346
(22)式において、ε2は、予め設定されている定数である。
磁束密度ベクトル計算部108は、(22)式に従うベクトルポテンシャル収束判定条件を満足しない場合、磁束密度ベクトルB(p,t)の単位ベクトルを求め、これと、応力補間部106により得られた「各磁束密度計算用微小領域sにおける応力ベクトルσ」との内積を計算する。これにより、各磁束密度計算用微小領域sにおいて、磁束密度ベクトルB(p,t)に平行な応力ベクトルσの成分の大きさが得られる。尚、以下の説明では、「磁束密度ベクトルB(p,t)に平行な応力ベクトルσの成分の大きさ」を必要に応じて「磁束密度ベクトル平行方向応力σ//」と称する。
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度収束計算回数pに「1」を加算する。
次に、磁束密度ベクトル計算部108は、(6)式に示す3つの変数の初期値を設定し、磁束密度ベクトルB(p,t)から得られる磁束密度圧延方向角度θと、磁束密度ベクトル平行方向応力σ//と、に対応するBHデータ(BH曲線)をBHデータ記憶部107から抽出する。
そして、段落[0040]〜[0061]に説明した計算を行い、(22)式に従う磁束密度収束判定条件を満足するまで、磁束密度ベクトルB(p,t)を繰り返し計算する。磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度収束判定条件を満足したときの「各磁束密度計算用微小領域の磁束密度ベクトルB(p,t)」を、時間tにおける「各磁束密度計算用微小領域の磁束密度ベクトルB(p,t)」として記憶媒体に記憶する。
以上のようにして、磁束密度収束判定条件を満足すると、磁束密度ベクトル計算部108は、予め設定した計算完了時間tmaxまで処理を行ったか否かを判定する。計算完了時間tmaxまで処理を行っていない場合、磁束密度ベクトル計算部108は、時間tを、予め設定した時間Δtだけ進める。また、磁束密度ベクトル計算部108は、励磁条件に従って、時間t+Δtにおける励磁電流密度J0を設定する(すなわち、励磁電流密度J0を変更する)。尚、励磁電流密度J0が変更されると、荷重ベクトル[F]が変わる。
そして、段落[0034]〜[0063]に説明した計算を行い、計算完了時間tmaxが経過するまで、時間tにおける「各磁束密度計算用微小領域の磁束密度ベクトルB(p,t)」を計算する。ここで、計算完了時間tmaxは、磁束密度ベクトルBの時間変化と最大値を評価できる程度に長く設定する必要がある。よって、少なくとも一周期分の磁束密度ベクトルBが得られるように計算完了時間tmaxを設定するのが好ましい。
以上により、全ての磁束密度計算用微小領域sについて、時間0から時間完了時間tmaxまでの「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」が計算されると、磁束密度ベクトル計算部108は、それらを記憶する。また、磁束密度ベクトル計算部108は、各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)から、一周期の中で大きさが最大値となる磁束密度ベクトルBmaxを、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて抽出する。尚、以下の説明では、「一周期の中で大きさが最大値となる磁束密度ベクトルBmax」の大きさを、必要に応じて「最大磁束密度の大きさBmax」と称する。
磁束密度ベクトル計算部108は、例えば、CPUが、磁束密度ベクトルB(p,t)と、最大磁束密度の大きさBmaxとを計算してRAM等に記憶することにより実現される。
(BWデータ記憶部109)
BWデータ記憶部109は、磁束密度の大きさBと、鉄損(の大きさ)Wとの関係を示すBWデータを、応力の大きさσ毎・磁束密度圧延方向角度θ毎・軸比α毎に記憶している。
図5は、BWデータの一例を示す図である。図5におけるプロットは、測定点であり、本実施形態では、この測定点の間を区分線形補間等により補間している。これにより、図5に示すように、磁束密度の大きさBと鉄損Wとの関係を示す曲線(所謂BW曲線)が、磁束密度圧延方向角度θ毎に得られる。また、図5では図示を省略しているが、同一の磁束密度圧延方向角度θにおいて相互に隣接する2つのBW曲線の間のそれぞれも、区分線形補間等により補間することができる。さらに、相互に隣接する2つの磁束密度圧延方向角度θに対するBW曲線の間のそれぞれも、区分線形補間等により補間することができる。さらに、相互に隣接する2つの軸比αに対するBW曲線の間のそれぞれも、区分線形補間等により補間することができる。これにより、任意の磁束密度圧延方向角度θ、任意の応力の大きさσ、任意の軸比αにおける「磁束密度の大きさBと鉄損Wとの関係(BWデータ)」を得ることができる。
ここで、軸比α[−]について説明する。図6は、回転磁束と交番磁束を示す図である。図6において、x軸は、磁性体の磁化容易軸方向であり、y軸は、磁性体の磁化困難軸方向である。尚、このx軸、y軸は、前述した3次元直交座標系のx軸、y軸と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
磁化容易軸方向と磁化困難軸に垂直方向(図6の紙面に垂直な方向)は、非常に磁化が困難な方向(電磁鋼板の積層方向)であるために、磁束は、磁化容易軸方向と磁化困難軸により定まる平面内に主に流れることになる。交流励磁された磁束密度ベクトルBの大きさ及びその向きは、一周期の間に時々刻々と変化する。そこで、ある点における磁束密度ベクトルBの軌跡を描くと、図6(a)に示すように楕円状に変化する場合もあれば、図6(b)に示すように、直線状に変化する場合もある。
図6(a)に示すものは、磁束密度ベクトルBの向きと大きさが周期的に変化することで生じるもので、回転磁束(回転磁界)といわれている。図6(a)に示すように、回転磁束では、磁束密度ベクトルBの軌跡が一周期で一回転する。一方、図6(b)に示すものは、一周期における磁束密度ベクトルBの向きは変わらないが、大きさが変化する場合で、交番磁束(交番磁界)といわれている。
ここで、回転磁束の軸比αは、以下の(23)式で表される。(23)式において、Bmaxは、一周期における磁束密度の大きさBの最大値(最大磁束密度)であり、Bminは、1周期における磁束密度の大きさBの最小値(最小磁束密度)である。尚、回転磁束の傾角incは、図6(a)に示すように、磁気特性を表す楕円の長軸と磁化容易軸(x軸)とのなす角度(磁束密度の大きさBがBmaxであるときの磁束密度ベクトルBと磁化容易軸とのなす角度)で表される。一方、交番磁束の傾角incは、図6(b)に示すように、磁気特性と磁化容易軸(x軸)とのなす角度で表される。
α=Bmin/Bmax ・・・(23)
BWデータ記憶部109は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
(磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110)
磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損ws(の大きさ)を求める。本実施形態では、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、磁束密度ベクトル計算部108で最終的に得られた「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」から、「磁束密度圧延方向角度θ」を、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて求める。
また、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」が最終的に得られたときに用いた「磁束密度ベクトル平行方向応力σ//」を、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて抽出する。また、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、磁束密度ベクトル計算部108で最終的に得られた「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」から、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて「軸比α」を求める。
そして、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、これら「磁束密度圧延方向角度θ」、「磁束密度ベクトル平行方向応力σ//」、及び「軸比α」に対応するBWデータを導出することを、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて行う。そして、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、「最大磁束密度の大きさBmax」に対応する鉄損を、導出したBWデータから求めることを、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて行う。これにより、磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損wsが求められる。
磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、例えば、CPUが、各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損wsを計算し、計算した鉄損wsの値をRAM等に記憶することにより実現することができる。
(鉄損総和部111)
鉄損総和部111は、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110で得られた「各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損ws」の総和を前述した(1)式に従い求め、計算対象となるステータコアの全体の鉄損W(の大きさ)[W/kg]を求める。
鉄損総和部111は、例えば、CPUが、各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損wsの総和を、ステータコアの全体の鉄損Wとして求め、求めた鉄損Wの値を、RAM等に記憶することにより実現することができる。
(鉄損出力部112)
鉄損出力部112は、鉄損総和部111で求められた「ステータコアの全体の鉄損W」を出力する。例えば、鉄損出力部112は、ステータコアの鉄損Wの情報を記憶媒体に記憶したり、コンピュータディスプレイに表示させたり、外部装置に送信したりする。
鉄損出力部112は、例えば、CPUが、ステータコアの全体の鉄損Wのデータを、HDDや可搬型の記憶媒体に記憶したり、ステータコアの全体の鉄損Wのデータを、コンピュータディスプレイに表示させる処理を行ったり、ステータコアの全体の鉄損Wのデータを、データ入出力制御装置を介して外部装置に送信する処理を行ったりすることにより実現することができる。
<動作フローチャート>
次に、図7のフローチャートを参照しながら、磁気特性解析装置100の処理の一例を説明する。
まず、ステップS701において、応力計算条件入力部101は、応力計算条件の情報を入力して記憶媒体に記憶する。前述したように、応力計算条件は、例えば、ステータコアの形状、焼嵌めシェルの厚み、ステータコアに使用した電磁鋼板や焼嵌めシェルのヤング率、及び焼嵌め時の温度等である。
次に、ステップS702において、応力計算用微小領域分割部102は、ステップS701で入力された応力計算条件(ステータコアの形状)に基づいて、応力の計算対象であるステータコアの領域を、例えば、格子状の複数の応力計算用微小領域に分割する。そして、応力計算用微小領域分割部102は、複数の応力計算用微小領域の情報(例えば、大きさ・位置・分割の方法等)を記憶媒体に記憶する。
次に、ステップS703において、応力計算部103は、ステップS701で入力された応力計算条件(ステータコアの形状、焼嵌めシェルの厚み、ステータコアに使用した電磁鋼板や焼嵌めシェルのヤング率、焼嵌め時の温度)に基づいて、焼嵌め後のステータコアの各応力計算用微小領域にかかる応力ベクトルσの各成分(x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、z軸方向の応力σz)を計算する。前述したように、この計算は、例えば、有限要素法を用いた構造解析により行われる。
次に、ステップS704において、磁束密度計算条件入力部104は、磁束密度計算条件の情報を入力して記憶媒体に記憶する。前述したように、磁束密度計算条件は、例えば、ステータコアの形状、励磁条件(励磁電流密度J0、周波数)、計算初期値(A、ν、∂ν/∂B2、θ等)である。
次に、ステップS705において、磁束密度計算用微小領域分割部105は、ステップS704で入力された磁束密度計算条件(ステータコアの形状)に基づいて、磁束密度の計算対象であるステータコアの領域を、例えば、格子状の複数の磁束密度計算用微小領域sに分割する。そして、磁束密度計算用微小領域分割部105は、複数の磁束密度計算用微小領域sの情報(例えば、大きさ・位置・分割の方法等)を記憶媒体に記憶する。
次に、ステップS706において、応力補間部106は、ステップS703で得られた「各応力計算用微小領域における「x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、及びz軸方向の応力σz」と、ステップS705で得られた「磁束密度計算用微小領域s」とに基づいて、各磁束密度計算用微小領域sにおける「x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、及びz軸方向の応力σz」のそれぞれの大きさを求める。前述したように、この計算は、例えば、区分線形補間等の補間処理により行われる。
次に、ステップS707において、磁束密度ベクトル計算部108は、各磁束密度計算用微小領域sにおける磁束密度ベクトルBを計算する磁束密度ベクトル計算処理を実行する。この磁束密度ベクトル計算処理の詳細については後述する。
次に、ステップS708において、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損ws(の大きさ)を求める。磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、ステップS707で得られた「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」から、「磁束密度圧延方向角度θ」、「磁束密度ベクトル平行方向応力σ//」、及び「軸比α」を得て、これらに対応するBWデータを、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて導出する。
そして、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110は、ステップS707で得られた「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」のそれぞれの一周期における最大値である「最大磁束密度の大きさBmax」に対応する鉄損を、それぞれのBWデータから求めることにより、各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損ws(の大きさ)を求める。
次に、ステップS709において、鉄損総和部111は、ステップS708で得られた「各磁束密度計算用微小領域sにおける鉄損ws」の総和を、計算対象となるステータコアの全体の鉄損W(の大きさ)として求める。
最後に、ステップS710において、鉄損出力部112は、ステップS709で得られた「ステータコアの全体の鉄損W」のデータを出力する。
次に、図8のフローチャートを参照しながら、図7のステップS707における磁束密度ベクトル計算処理の詳細について説明する。
まず、ステップS801において、磁束密度ベクトル計算部108は、時間tを0(ゼロ)に設定する。
次に、ステップS802において、磁束密度ベクトル計算部108は、ベクトルポテンシャル収束計算回数kと、磁束密度収束計算回数pとにそれぞれ「1」を設定する。
次に、ステップS803において、磁束密度ベクトル計算部108は、A(ベクトルポテンシャル)、ν(磁気抵抗率)、∂ν/∂B2の初期値を設定する。
次に、ステップS804において、磁束密度ベクトル計算部108は、ステップS706で得られた「各磁束密度計算用微小領域sにおける「x軸方向の応力σx、y軸方向の応力σy、及びz軸方向の応力σz」から、(9)式の計算を行って、応力の大きさσの初期値を求める。また、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度圧延方向角度θの初期値として0[°]を設定する。磁束密度ベクトル計算部108は、応力の大きさσの初期値と、磁束密度圧延方向角度θの初期値とに対応するBHデータ(BH曲線)をBHデータ記憶部107から導出する。
次に、ステップS805において、磁束密度ベクトル計算部108は、ステップS803で得られた初期値(A、ν、∂ν/∂B2)と、ステップS804で得られたBHデータと、励磁条件(時間tにおける励磁電流密度J0)とに基づいて、剛性マトリクス[K](=[∂2χ/∂Ai∂Aj])と、荷重ベクトル[F](=[∂χ/∂A1,・・・,∂χ/∂Anu])を計算する((10)式、(11)式を参照)。
次に、ステップS806において、磁束密度ベクトル計算部108は、(10)式、(11)式により、ベクトルポテンシャルの変化分δA(k,p,t)を計算する。
次に、ステップS807において、磁束密度ベクトル計算部108は、(16)式により、収束計算回数がk+1回目での節点iでのベクトルポテンシャルの近似解A(k+1,p,t)を計算する。
次に、ステップS808において、磁束密度ベクトル計算部108は、(17)式により、磁束密度ベクトルB(k,p,t)を求める。
次に、ステップS809において、磁束密度ベクトル計算部108は、ベクトルポテンシャル収束判定条件を満足したか否かを判定する((18)式を参照)。この判定の結果、ベクトルポテンシャル収束判定条件を満足していない場合には、ステップS810に進む。
ステップS810に進むと、磁束密度ベクトル計算部108は、ステップS808で得られた磁束密度ベクトルB(k,p,t)から、(19)式、(20)式により、磁束密度最大値Bmax (k,p,t)と磁束密度圧延方向角度θ(kp,t)とを求める。また、磁束密度ベクトル計算部108は、後述するステップS814で得られる磁束密度ベクトル平行方向応力σ//(ただし、p=1のときは、ステップS804で得られた「応力の大きさσの初期値」)と、磁束密度圧延方向角度θ(kp,t)とに対応するBHデータ(BH曲線)をBHデータ記憶部107から抽出する。そして、磁束密度ベクトル計算部108は、得られたBHデータに磁束密度最大値Bmax (k,p,t)を与えて、磁界ベクトルHを求める。
次に、ステップS811において、磁束密度ベクトル計算部108は、ステップS810で得られた情報を用いて、次のベクトルポテンシャル収束計算回数k+1におけるν(k+1,p,t)、∂ν/∂B2を計算する((21)式を参照)。
次に、ステップS812において、磁束密度ベクトル計算部108は、ベクトルポテンシャル収束計算回数kに「1」を加算する。そして、ステップS805の処理に戻り、ベクトルポテンシャル収束条件を満足するまで、ステップS805〜S812の処理を繰り返し実行する。
以上のようにしてベクトルポテンシャル収束判定条件を満足すると、ステップS813に進む。ステップS813に進むと、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度収束判定条件を満足するか否かを判定する((22)式を参照)。この判定の結果、磁束密度収束判定条件を満足していない場合には、ステップS814に進む。
ステップS814に進むと、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度ベクトルB(p,t)の単位ベクトルと、図7のステップS706で得られた「各磁束密度計算用微小領域sにおける応力ベクトルσ」との内積をとって、磁束密度計算用微小領域sのそれぞれについて、磁束密度ベクトル平行方向応力σ//(磁束密度ベクトルB(p,t)に平行な応力ベクトルσの成分の大きさ)を求める。
次に、ステップS815において、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度収束計算回数pに「1」を加算する。そして、ステップS803に戻り、磁束密度収束判定条件を満足するまで、ステップS803〜S813の処理を繰り返し計算する。ここで、ステップS804では、ステップS814で得られた磁束密度ベクトル平行方向応力σ//を用いて、BHデータが抽出される。
以上のようにして磁束密度収束判定条件を満足すると、ステップS816に進む。ステップS816に進むと、磁束密度ベクトル計算部108は、磁束密度収束判定条件を満足したときの磁束密度ベクトルB(p,t)を、時間tにおける「各磁束密度計算用微小領域の磁束密度ベクトルB(p,t)」として記憶する。
次に、ステップS817において、磁束密度ベクトル計算部108は、計算完了時間tmaxまで処理を行ったか否かを判定する。この判定の結果、計算完了時間tmaxまで処理を行っていない場合には、ステップS818に進む。ステップS818に進むと、磁束密度ベクトル計算部108は、時間tを時間Δtだけ進める。
次に、ステップS819において、磁束密度ベクトル計算部108は、励磁条件に従って、時間t+Δtにおける励磁電流密度J0を設定する。そして、ステップS802に戻り、計算完了時間tmaxが経過するまで、ステップS802〜S819の処理を繰り返し行う。
以上のようにして、計算完了時間tmaxまで処理を行うと、ステップS820に進む。ステップS820に進むと、磁束密度ベクトル計算部108は、ステップS816で記憶した「時間0から時間完了時間tmaxまでの「各磁束密度計算用微小領域sの磁束密度ベクトルB(p,t)」」を、ステータコアの全体の鉄損Wを計算するための磁束密度ベクトルBとして設定する。そして、図7のフローチャートに戻る。
<実施例とまとめ>
次に、本実施形態の実施例を説明する。
本実施例では、外径φが115[mm]、内径φが60[mm]、積厚が50[mm]のステータコアに対して、外径φが59[mm]、積厚が50[mm]の4極のロータを挿入したモータについて電磁場解析を行った。このとき、周波数が60[Hz]、実効値が500[ATrms]、波形が正弦波の三相の交流電流(励磁電流)でモータを励磁することを励磁条件として電磁場解析を行った。また、コアが、JIS C 2552-1986で規定される35A440の電磁鋼板で形成される条件で電磁場解析を行った。さらに、JIS G 3101で規定されるSS400製の焼嵌めシェルを用いて、直径で200[μm]の焼嵌め代でステータコアの焼嵌めを行うことによりステータコア内に応力が発生している条件で電磁場解析を行った。
このような条件の下で、本実施形態のようにして計算された鉄損(発明例)と、特許文献1に記載のようにして計算された鉄損(比較例)と、測定により得られた鉄損(測定値)とを、測定値を「1」として正規化して示したものが図9である。
前述したように特許文献1では、3次元応力ベクトルの各方向成分の二乗和の平方根(絶対値)に対応するBHデータを用いて、磁束密度ベクトルBを計算している。このため、実際のものよりも過大な応力に対するBHデータを用いることになる。このため、測定値よりも大きな鉄損となり、また、測定値との誤差も大きくなる。
これに対し、本実施形態では、数値解析で得られた応力ベクトルσに基づき、磁束密度ベクトルB(p,t)に平行な応力ベクトルσの成分の大きさ(磁束密度ベクトル平行方向応力σ//)を導出し、導出した磁束密度ベクトル平行方向応力σ//に対応するBHデータを用いて、磁束密度ベクトルB(p,t)を導出することを、前回の磁束密度収束計算回数p−1における磁束密度ベクトルB(p-1,t)と、今回の磁束密度収束計算回数pにおける磁束密度ベクトルB(p,t)との差の絶対値が所定値ε2よりも小さくなるまで繰り返し行うようにした。ここで、所定値ε2は、解析したい磁気特性に必要な精度に即して値を設定すれば良く、10-3に設定されるのが一般的である。モータやトランスでは磁束密度が1〜2[T]の範囲で動作するように設計されており、この場合は、磁気特性を10-3[T]、すなわち10[ガウス]の精度で解析することとなり、実用上十分な精度である。
したがって、従来のようにBHデータを得るための応力(の大きさ)σを過大に見積もってしまうことを抑制することができる。よって、内部に応力が生じている磁性材料の磁束密度ベクトルBを従来よりも高精度に求めることができる。これにより、磁性材料の鉄損も従来よりも高精度に求めることができる。
<変形例>
磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係の変化(角度による磁気異方性)が無視できるほど小さい場合には、磁束密度圧延方向角度θに対応するBHデータ(BH曲線)、BWデータ(BW曲線)を用いる代わりに、磁束密度圧延方向角度θによらないBHデータ(BH曲線)、BWデータ(BW曲線)を用いるようにしてもよい。
また、磁束が交番磁束である場合には、軸比αに対応するBWデータ(BW曲線)を用いる代わりに、軸比αによらないBWデータ(BW曲線)を用いるようにしてもよい。
一方、磁束が回転磁束である場合には、軸比αに加えて、傾き角incに対応するBWデータ(BW曲線)を用いるようにしてもよい。
また、前記磁束密度圧延方向角度θは、磁束密度ベクトルや応力ベクトルの方向を算出する際の基準として、磁化容易軸方向である圧延方向を採用するものであるが、圧延方向の代わりに、板形状である磁性材料の平面内の任意の方向に設定しても、本発明による効果を得ることができる。
また、各磁束密度計算用微小領域における磁束密度ベクトルB(p,t)を求めるようにしていれば、必ずしも鉄損Wを求める必要はない。このようにした場合、例えば、計算対象の磁性材料(本実施形態ではステータコア)における磁束密度の分布の情報を鉄損Wの情報の代わりに出力することができる。尚、鉄損Wの情報と共に磁束密度の分布の情報を出力してもよい。
また、磁束密度計算用微小領域と応力計算用微小領域とは同じであってもよい。この場合には、応力補間部106は不要になる。また、各応力計算用微小領域における応力ベクトルσを、磁気特性解析装置100とは別の情報処理装置で計算しておき、その結果を磁気特性解析装置100のHDD等に記憶するようにしてもよい。このようにした場合には、応力計算条件入力部101、応力計算用微小領域分割部102、及び応力計算部103が少なくとも不要になり、磁束密度計算用微小領域と同じ応力計算用微小領域の応力ベクトルσが得られるのであれば、これらに加えて応力補間部106も不要になる。
この他、磁性材料は、電磁鋼板に限定されるものではなく、例えば、その他の磁性材料(好ましくは軟磁性材料)であってもよい。また、前述した補間の方法は、区分線形補間に限定されるものではない。例えば、データの間を多項式で補間してもよい。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、電磁場解析の際に用いる、磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係が初磁化特性である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、実際の磁性材料の磁気特性は、磁気ヒステリシス特性を有する。このため、複雑な励磁条件で生じる電磁場(例えば、PWM(Pulse Width Modulation)インバータを用いて励磁した場合の電磁場)を解析するためには、磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係として、磁気ヒステリシス特性を考慮した関係を用いることにより、電機機器のコイルに流れる電流の値の計算値の精度を向上させ、鉄損の推定をより高精度に行うことができる。そこで、本実施形態では、電磁場解析の際に用いる、磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係が磁気ヒステリシス特性(磁気ヒステリシス曲線)である場合について説明する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、電磁場解析の際に用いる、磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係が異なることによる構成および処理が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図10は、磁気特性解析装置1000の機能的な構成の一例を示す図である。本実施形態の磁気特性解析装置1000のハードウェアは、第1の実施形態の磁気特性解析装置100のハードウェアと同じもので実現することができる。
図10に示すように、本実施形態の磁気特性解析装置1000では、第1の実施形態の磁気特性解析装置100のBHデータ記憶部107をBHデータ記憶部1002とする。また、本実施形態の磁気特性解析装置1000では、第1の実施形態の磁気特性解析装置100に対し、モデル同定部1002が追加される。以下に、本実施形態の磁気特性解析装置1000の、第1の実施形態の磁気特性解析装置100と異なる部分について説明する。
(BHデータ記憶部1001)
BHデータ記憶部1001は、磁束密度の大きさBと、磁界の大きさHとの履歴の関係を示すデータであるBHデータを、応力の大きさσ毎・磁束密度圧延方向角度θ毎に記憶する。本実施形態では、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板の直流磁気ヒステリシス特性のデータをBHデータとして使用する。直流磁気ヒステリシス特性とは、時間的にゆっくり変化する磁束密度と磁界とに基づく磁気ヒステリシス特性である。本実施形態では、メジャーループに相当する部分の磁気ヒステリシス特性を、直流磁気ヒステリシス特性とする。
図11は、BHデータの一例を示す図である。図11に示すようにBHデータ記憶部1001は、1つの応力の大きさσ及び1つの磁束密度圧延方向角度θに対し、磁束密度の複数の波高値Bmのそれぞれについて直流磁気ヒステリシス特性を記憶する。BHデータ記憶部1001は、このようなBHデータ(直流磁気ヒステリシス特性)を応力の大きさσ毎・磁束密度圧延方向角度θ毎に記憶する。磁束密度の波高値Bmは、例えば、電磁場解析を行う際の励磁条件等に応じて、適宜決定することができる。
尚、第1の実施形態で説明したように、区分線形補間等の補間を行うことにより、任意の磁束密度圧延方向角度θ、任意の応力の大きさσに対応する「磁束密度の大きさBと磁界の大きさHとの関係(BHデータ)」を得ることができる。
BHデータ記憶部1001は、例えば、HDDを用いることにより実現することができる。
(モデル同定部1002)
モデル同定部1002は、BHデータ記憶部1001により記憶された、磁束密度の波高値ごとの直流磁気ヒステリシス特性のデータに基づいて、磁束密度と磁界との関係が定式化されたモデルを同定する。
本実施形態では、かかるモデルとして、非特許文献3、4等に記載されているプレイヒステリシスモデルを利用する。より具体的には、非特許文献3に記載されている等方性ベクトルプレイヒステリシスモデルを利用する。等方性ベクトルプレイヒステリシスモデルを利用して電磁場解析を行う技術については、非特許文献3等に記載されているので、ここでは、その概略のみを説明し、詳細な説明を省略する。
等方性ベクトルプレイヒステリシスモデルでは、磁界ベクトルH[A/m]は、例えば、以下の(24)式、(25)式のように表される。
Figure 0006610346
(25)式において、pζ(|B|)は、磁束密度ベクトルB[T]に対するプレイヒステロンの値[T]である。pζ 0は、1つ前の時刻のプレイヒステロンpζの値である。max(|B−pζ 0|/ζ,1)は、|B−pζ 0|/ζと、1とのうち、大きい方の値を採用することを示す。ζは、プレイヒステロンの幅を与えるパラメータ[T]である。pζ/|pζ|は、プレイヒステロンpζの単位ベクトルである。尚、非特許文献3に記載されているように、(24)式、(25)式において、方向を一方向とすれば、スカラプレイヒステリシスモデルとなるので、(24)式、(25)式は、スカラプレイヒステリシスモデルにも適用できる。
1つ前の時刻の磁束密度ベクトルB0が、現時刻において磁束密度ベクトルBに変化したときに、1つ前の時刻のプレイヒステロンの値pζ 0の先端の点を中心とした半径ζの円内に、現時刻の磁束密度ベクトルBがある場合には、当該円は移動しない。一方、1つ前の時刻の磁束密度ベクトルB0が、現時刻において磁束密度ベクトルBに変化したときに、現時刻の磁束密度ベクトルBが、1つ前の時刻のプレイヒステロンの値pζ 0の先端の点を中心とした半径ζの円の外に位置すると、当該円の中心は、1つ前の時刻のプレイヒステロンの値pζ 0の先端の点から、現時刻の磁束密度ベクトルBの先端の点の方向に移動する。
非特許文献3に示される等方性ベクトルプレイヒステリシスモデルでは、このような性質を有するプレイヒステロンpζを用いて、磁界ベクトルHを(24)式のようにして表現する。
(24)式において、f(ζ,pζ(B))は、形状関数[A/(m・T)]である。この形状関数は、プレイヒステロンの幅ζと、プレイヒステロンpζ(B)の関数で表現される。プレイヒステリシスモデルを同定することは、この形状関数を同定することと同義である。
モデル同定部1002は、例えば、BHデータ記憶部1001に記憶された、磁束密度の波高値ごとの直流磁気ヒステリシス特性のデータ(BHデータ)から、作成する磁気ヒステリシス特性(マイナーループ等)に応じて定まる複数のデータを抽出する。そして、モデル同定部1002は、抽出したデータを用いて、(24)式および(25)式に基づく計算を行うことにより、プレイヒステロンpζ(B)の分布の導出と、当該プレイヒステロンpζ(B)の分布による形状関数f(ζ,pζ(B))の同定とを行う。モデル同定部1002は、このようなプレイヒステロンpζ(B)の分布の導出と、当該プレイヒステロンpζ(B)の分布による形状関数f(ζ,pζ(B))の同定とを、応力の大きさσ、磁束密度圧延方向角度θに対応するBHデータを用いて行う。これにより、プレイヒステロンpζ(B)の分布の導出と、当該プレイヒステロンpζ(B)の分布による形状関数f(ζ,pζ(B))の同定とを応力の大きさσ毎・磁束密度圧延方向角度θ毎に行うことができる。
以上のようにして形状関数f(ζ,pζ(B))を同定することにより、直流磁気ヒステリシス特性のデータから得られる磁気ヒステリシス特性よりも、磁界の大きさHの変化に対する磁束密度の大きさBの変化が複雑な磁気ヒステリシス特性であって、電磁場解析に必要となる磁気ヒステリシス特性を導出することができる。この磁気ヒステリシス特性には、例えば、マイナーループを含む直流磁気ヒステリシス特性や、高調波が重畳したメジャーループを含む交流磁気ヒステリシス特性や、マイナーループを含む交流磁気ヒステリシス特性や、ベクトル磁気ヒステリシス特性等が含まれる。
モデル同定部1002は、例えば、CPUが、プレイヒステロンpζ(B)の分布の導出と、当該プレイヒステロンpζ(B)の分布による形状関数f(ζ,pζ(B))の同定とを行い、その結果をRAM等に記憶することにより実現できる。
(磁束密度ベクトル計算部108)
磁束密度ベクトル計算部108は、応力の大きさσと、磁束密度圧延方向角度θ(k,p,t)とに対応するプレイヒステロンpζ(B)の分布の導出と、当該プレイヒステロンpζ(B)の分布による形状関数f(ζ,pζ(B))の同定とをモデル同定部1002に依頼する。磁束密度ベクトル計算部108は、この依頼に基づいてモデル同定部1002により導出された、プレイヒステロンpζ(B)の分布と、当該プレイヒステロンpζ(B)の分布による形状関数f(ζ,pζ(B))(即ち、(24)式および(25)式)に、磁束密度最大値Bmax (k,p,t)を与えて、磁界ベクトルHを求める。尚、ニュートンラプソン法を用いて電磁場解析を行う際のプレイモデルの適用方法は、非特許文献3に記載されているので、ここでは、その詳細な説明を省略する。その他の磁束密度ベクトル計算部108の処理は、第1の実施形態で説明した処理と同じである。
<実施例とまとめ>
次に、本実施形態の実施例を説明する。
本実施例では、外径φが115[mm]、内径φが60[mm]、積厚が50[mm]のステータコアに対して、外径φが59[mm]、積厚が50[mm]の4極のロータを挿入したモータについて電磁場解析を行った。このとき、150[V]の直流電圧をPWMインバータでパルス幅変調(PWM)したインバータ電圧でモータを励磁することを励磁条件として電磁場解析を行った。また、コアが、JIS C 2552-1986で規定される35A440の電磁鋼板で形成される条件で電磁場解析を行った。さらに、JIS G 3101で規定されるSS400製の焼嵌めシェルを用いて、直径で200[μm]の焼嵌め代でステータコアの焼嵌めを行うことによりステータコア内に応力が発生している条件で電磁場解析を行った。
このような条件の下で、第1の実施形態のようにして計算された鉄損(発明例1)と、本実施形態のようにして計算された鉄損(発明例2)と、測定により得られた鉄損(測定値)とを、測定値を「1」として正規化して示したものが図12である。
PWMインバータを用いて励磁する場合、BHデータとして初磁化特性を用いると、モータのコイルに流れる電流の値の計算精度が低下し、鉄損の計算精度も低下する。これに対し、本実施形態のように、BHデータとして磁気ヒステリシス特定を用いると、このような計算精度の低下が抑制され、測定値との誤差が小さくなる。よって、本実施形態では、第1の実施形態で説明した効果に加え、複雑な励磁条件下であっても、磁性材料の鉄損を高精度に求めることができるという効果が得られる。
<変形例>
本実施形態では、第1の実施形態と同様にBWデータ(BW曲線)を用いて鉄損を求めることができる。しかしながら、鉄損を求める際に、必ずしもBWデータを用いる必要はない。すなわち、本実施形態では、磁気ヒステリシス特性が得られるので、以下のようにして鉄損を導出してもよい。
各磁束密度計算用微小領域sについて、磁束密度ベクトルB(p,t)と当該磁束密度ベクトルB(p,t)に対応する磁界ベクトルHの一周期における波形から、磁束密度計算用微小領域sにおける磁気ヒステリシス特性を導出する。そして、以下の(26)式の計算を行って、当該導出した磁気ヒステリシス特性の面積を、各磁束密度計算用微小領域sにおけるヒステリシス損whaとして計算する。
Figure 0006610346
(26)式の計算を全ての磁束密度計算用微小領域sについて行う。
また、各磁束密度計算用微小領域sについて、磁束密度ベクトルB(p,t)を求めることに加え、渦電流ベクトルJeを求め、当該磁束密度計算用微小領域の体積と、電磁鋼板の導電率σに基づいて、以下の(27)式の計算を行って、各磁束密度計算用微小領域sにおける古典的渦電流損we0を導出する。
Figure 0006610346
(27)式において、Tは、渦電流ベクトルJeの周期である。(27)式の計算を全ての磁束密度計算用微小領域sについて行う。
そして、以下の(28)式に示す計算を行って、同一の磁束密度計算用微小領域sにおけるヒステリシス損whaおよび古典的渦電流損we0の和を当該磁束密度計算用微小領域域sの鉄損wsとして導出し、以下の(29)式の計算を行って、全ての磁束密度計算用微小領域sの鉄損wsの総和を、ステータコアの全体の鉄損Wとして導出する。
s=wha+we0 ・・・(28)
W=Σw ・・・(29)
また、本実施形態では、磁気ヒステリシス特性のデータから、磁束密度と磁界との関係が定式化されたモデルとしてプレイヒステリシスモデル(等方性ベクトルプレイヒステリシスモデル)を同定する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、かかるモデルは、プレイヒステリシスモデルに限定されない。例えば、非特許文献3、4に記載されているように、プライザッハモデル等を用いてもよい。
この他、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
<請求項との対応>
以下に、請求項と実施形態との対応関係の一例を説明する。尚、請求項の記載が実施形態の内容に限定されないことは、変形例等に記載した通りである。
(請求項1、7、8)
領域分割手段は、例えば、磁束密度計算用微小領域分割部105を用いることにより実現される。領域分割工程は、例えば、図7のステップS705の処理を行うことにより実現される。微小領域は、例えば、図2に示す磁束密度計算用微小領域sにより実現される。
応力記憶手段は、例えば、応力補間部106を用いることにより実現される。応力記憶工程は、例えば、図7のステップS706の処理を行うことにより実現される。
BHデータ記憶手段は、例えば、BHデータ記憶部107を用いることにより実現される。BHデータ記憶工程は、例えば、BHデータ記憶部107にBHデータ(例えば図4を参照)を記憶する処理を行うことにより実現される。所定の方向が磁化容易軸方向であることは、例えば、磁束密度圧延方向角度θが、磁束密度ベクトルBと電磁鋼板の圧延方向RD(rolling direction)とのなす角度θであることに対応する。
磁束密度ベクトル計算手段は、例えば、磁束密度ベクトル計算部108を用いることにより実現される。磁束密度ベクトル計算工程は、例えば、図8のステップS801〜S812の処理を行うことにより実現される。
磁束密度平行方向応力計算手段は、例えば、磁束密度ベクトル計算部108を用いることにより実現される。磁束密度平行方向応力計算工程は、例えば、図8のステップS814の処理を行うことにより実現される。
(請求項2)
磁束密度ベクトル収束判定手段は、例えば、磁束密度ベクトル計算部108を用いることにより実現される。
「前記磁束密度平行方向応力計算手段により磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさが計算されると、当該磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさに対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算」することは、例えば、図8のステップS814→S815→S803〜S808の処理を行うことにより実現される。
「前記磁束密度ベクトル収束判定手段により収束したと判定されたときに前記磁束密度ベクトル計算手段により計算された、前記微小領域のそれぞれにおける磁束密度ベクトルを、磁束密度ベクトルの計算の結果とする」することは、例えば、図8のステップS816の処理を行うことにより実現される。
(請求項3〜6)
BWデータ記憶手段は、例えば、BWデータ記憶部109を用いることにより実現される(例えば図5を参照)。
微小領域内鉄損計算手段は、例えば、磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部110を用いることにより実現される(図7のステップS708を参照)。
鉄損総和手段は、例えば、鉄損総和部111を用いることにより実現される(図7のステップS709を参照)。
「前記磁束密度ベクトルは、一定の周期で変化する時間周期磁束密度ベクトルであ」ることは、例えば、磁束密度ベクトルBが、図6(a)に示す回転磁束又は図6(b)に示す交番磁界で表されることにより実現される。
「前記周期を複数に分割した各時間ステップの磁束密度ベクトルを計算することにより、前記時間周期磁束密度ベクトルを少なくとも一周期について計算すること」は、例えば、図8のステップS802〜S819のループの中にステップS803〜S813のループが存在することに対応する。
「前記時間ステップのそれぞれにおいて、前記磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさに対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算すること」は、例えば、ステップS817でYesとなるまでステップS802〜S819を繰り返し行うことに対応する。
(請求項9)
BHデータが初磁化特性のデータであることは、例えば、BHデータ記憶部107に初磁化特性のデータが記憶されることにより実現される。
(請求項10)
BHデータが磁気ヒステリシス特性のデータであることは、例えば、BHデータ記憶部1001に磁気ヒステリシス特性のデータが記憶されることにより実現される。
(請求項11)
モデル同定手段は、例えば、モデル同定部1002を用いることにより実現される。数式は、例えば、(24)式および(25)式を用いることにより実現される。
100、1000:磁気特性解析装置、101:応力計算条件入力部、102:応力計算用微小領域分割部、103:応力計算部、104:磁束密度計算条件入力部、105:磁束密度計算用微小領域分割部、106:応力補間部、107、1001:BHデータ記憶部、108:磁束密度ベクトル計算部、109:BWデータ記憶部、110:磁束密度計算用微小領域内鉄損計算部、111:鉄損総和部、112:鉄損出力部、1002:モデル同定部

Claims (13)

  1. 励磁された磁性材料の磁気特性をコンピュータにより計算する磁気特性解析装置であって、
    前記磁性材料の計算対象となる領域を複数の微小領域に分割する領域分割手段と、
    前記磁性材料に生じる応力ベクトルとして、前記微小領域のそれぞれにおける応力ベクトルを記憶する応力記憶手段と、
    前記磁性材料における磁束密度の大きさと、磁界の大きさとの関係を示すBHデータを、応力の大きさをパラメータとして記憶するBHデータ記憶手段と、
    前記応力ベクトルから計算される応力の大きさに対応する前記BHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算する磁束密度ベクトル計算手段と、
    前記応力記憶手段により記憶された応力ベクトルと、前記磁束密度ベクトル計算手段により計算された磁束密度ベクトルとに基づいて、当該応力ベクトルの、当該磁束密度ベクトルに平行な方向の成分である磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさを計算することを、前記微小領域のそれぞれについて行う磁束密度平行方向応力計算手段とを有することを特徴とする磁気特性解析装置。
  2. 前記磁束密度ベクトル計算手段により計算された磁束密度ベクトルが収束したか否かを判定する磁束密度ベクトル収束判定手段を更に有し、
    前記磁束密度平行方向応力計算手段は、前記磁束密度ベクトル収束判定手段により、前記磁束密度ベクトル計算手段により計算された磁束密度ベクトルが収束していないと判定されると、前記応力記憶手段により記憶された応力ベクトルの、当該磁束密度ベクトルに平行な方向の成分である磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさを計算し、
    前記磁束密度ベクトル計算手段は、前記磁束密度平行方向応力計算手段により磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさが計算されると、当該磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさに対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算し、
    前記磁束密度ベクトル収束判定手段により収束したと判定されたときに前記磁束密度ベクトル計算手段により計算された、前記微小領域のそれぞれにおける磁束密度ベクトルを、磁束密度ベクトルの計算の結果とすることを特徴とする請求項1に記載の磁気特性解析装置。
  3. 前記磁性材料における磁束密度の大きさと、鉄損の大きさとの関係を示すBWデータを、応力の大きさをパラメータとして記憶するBWデータ記憶手段と、
    前記計算の結果である磁束密度ベクトルと、当該磁束密度ベクトルが計算された際に前記磁束密度ベクトル計算手段により使用された前記磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさに対応するBWデータと、に基づいて、前記微小領域のそれぞれにおける鉄損を計算する微小領域内鉄損計算手段と、
    前記微小領域内鉄損計算手段により計算された、前記微小領域のそれぞれにおける鉄損の総和を計算する鉄損総和手段と、を有し、
    前記磁束密度ベクトルは、一定の周期で変化する時間周期磁束密度ベクトルであり、
    前記磁束密度ベクトル計算手段は、前記周期を複数に分割した各時間ステップの磁束密度ベクトルを計算することにより、前記時間周期磁束密度ベクトルを少なくとも一周期について計算し、
    前記磁束密度ベクトル計算手段は、前記時間ステップのそれぞれにおいて、前記磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさに対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気特性解析装置。
  4. 前記時間周期磁束密度ベクトルは、交番磁束であることを特徴とする請求項3に記載の磁気特性解析装置。
  5. 前記時間周期磁束密度ベクトルは、回転磁束であることを特徴とする請求項3に記載の磁気特性解析装置。
  6. 前記BWデータ記憶手段は、前記磁性材料における磁束密度の大きさと、鉄損の大きさとの関係を示すBWデータを、磁束密度の方向と前記磁性材料の所定の方向とのなす角度と、前記回転磁束における最大磁束密度と最小磁束密度との比である軸比と、応力の大きさと、をパラメータとして記憶し、
    前記微小領域内鉄損計算手段は、前記計算の結果である磁束密度ベクトルと、当該磁束密度ベクトルが計算された際に前記磁束密度ベクトル計算手段により使用された前記磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさ、当該磁束密度ベクトルと前記所定の方向とのなす角度、及び当該磁束密度ベクトルに基づく軸比、に対応するBWデータと、に基づいて、前記微小領域のそれぞれにおける鉄損を計算することを特徴とする請求項5に記載の磁気特性解析装置。
  7. 前記BHデータ記憶手段は、前記磁性材料における磁束密度の大きさと、磁界の大きさとの関係を示すBHデータを、磁束密度の方向と前記磁性材料の所定の方向とのなす角度と、応力の大きさと、をパラメータとして記憶し、
    前記磁束密度ベクトル計算手段は、前記磁束密度平行方向応力計算手段により磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさが計算されると、当該磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさと、当該磁束密度ベクトルと前記所定の方向とのなす角度と、に対応するBHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の磁気特性解析装置。
  8. 前記所定の方向は、前記磁性材料の磁化容易軸方向であることを特徴とする請求項6又は7に記載の磁気特性解析装置。
  9. 前記BHデータは、前記磁性材料における初磁化特性のデータであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気特性解析装置。
  10. 前記BHデータは、前記磁性材料における磁気ヒステリシス特性のデータであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気特性解析装置。
  11. 磁界の大きさに対する磁束密度の大きさの変化が、前記BHデータ記憶手段により記憶された磁気ヒステリシス特性よりも複雑な磁気ヒステリシス特性における、磁束密度の大きさと、磁界の大きさとの関係を示す数式を、前記BHデータ記憶手段により記憶されたBHデータを用いて同定するモデル同定手段を更に有し、
    前記磁束密度ベクトル計算手段は、前記応力ベクトルから計算される応力の大きさに対応する前記BHデータに代えて、前記モデル同定手段により同定された前記数式を用いて、前記磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算することを特徴とする請求項10に記載の磁気特性解析装置。
  12. 励磁された磁性材料の磁気特性をコンピュータにより計算する磁気特性解析方法であって、
    磁性材料の計算対象となる領域を複数の微小領域に分割する領域分割工程と、
    前記磁性材料に生じる応力ベクトルとして、前記微小領域のそれぞれにおける応力ベクトルを記憶する応力記憶工程と、
    前記磁性材料における磁束密度の大きさと、磁界の大きさとの関係を示すBHデータを、応力の大きさをパラメータとして記憶するBHデータ記憶工程と、
    前記応力ベクトルから計算される応力の大きさに対応する前記BHデータと、前記磁性材料を励磁するときの条件と、を用いて、マックスウェルの方程式に基づき、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルを、前記微小領域のそれぞれについて計算する磁束密度ベクトル計算工程と、
    前記応力記憶工程により記憶された応力ベクトルと、前記磁束密度ベクトル計算工程により計算された磁束密度ベクトルとに基づいて、当該応力ベクトルの、当該磁束密度ベクトルに平行な方向の成分である磁束密度ベクトル平行方向応力の大きさを計算することを、前記微小領域のそれぞれについて行う磁束密度平行方向応力計算工程とを有することを特徴とする磁気特性解析方法。
  13. 請求項1〜11の何れか1項に記載の磁気特性解析装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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