JP6610074B2 - インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置 - Google Patents

インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6610074B2
JP6610074B2 JP2015157910A JP2015157910A JP6610074B2 JP 6610074 B2 JP6610074 B2 JP 6610074B2 JP 2015157910 A JP2015157910 A JP 2015157910A JP 2015157910 A JP2015157910 A JP 2015157910A JP 6610074 B2 JP6610074 B2 JP 6610074B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
printing method
nozzle
pressure chamber
ink composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015157910A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016204809A (ja
Inventor
雅幸 村井
正和 大橋
徹 齋藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Seiko Epson Corp filed Critical Seiko Epson Corp
Priority to US15/133,380 priority Critical patent/US10105965B2/en
Priority to CN201610256747.2A priority patent/CN106065533B/zh
Publication of JP2016204809A publication Critical patent/JP2016204809A/ja
Priority to US16/133,926 priority patent/US10525733B2/en
Application granted granted Critical
Publication of JP6610074B2 publication Critical patent/JP6610074B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Treatment Of Fiber Materials (AREA)
  • Coloring (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Description

本発明は、インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置に関する。
従来、織物、編物および不織布等の布帛に対して、画像を記録する捺染方法が知られており、近年、捺染に用いるインクを効率良く使用できるという観点などから、インクジェット記録方式の利用が検討されている。このインクジェット記録方式を利用したインクジェット捺染方法では、ヘッドのノズルから液滴状にしたインクを吐出して布帛に付着させることにより、布帛にインク塗膜の画像を形成する。
このようなインクジェット捺染方法に用いるインクは、例えば、顔料や染料などの色材、分散剤(界面活性剤)および溶媒(水、有機溶剤等)などからなる。ここで、色材に染料を用いると、記録される画像の耐光性等の特性に優れない傾向にあるため、色材として顔料を用いる場合がある。色材として顔料を用いる場合には、顔料を布帛に定着させるために、インクに定着用の樹脂を添加する必要がある。
しかし、色材として顔料を用いた場合に、より高解像度、高画質な画像を得るため、又は乾燥速度をより速めるためにインク滴のインク量を小さくすると、布帛の毛羽立ちにインク滴が残りやすく、凝集ムラや滲みになったり、画像の隠蔽性が悪くなるという問題がある。そこで、例えば、特許文献1には、布帛の汚れが抑制され、得られる画像の隠蔽性及び乾燥速度に優れた顔料捺染インクジェット記録方法として、少なくとも色材として顔料を含む顔料捺染インク組成物を、インク滴のインク量が9ng以下であるインク滴として、ノズル開口から布帛の方向の0.5mm〜1.0mmの距離における平均吐出速度Vが5m/s以上としてノズル開口から吐出し、顔料捺染インク組成物を布帛へ付着させる技術が開示されている。
特開2014−163021号公報
しかしながら、インクの布帛への密着性(洗濯堅牢性)を向上させるために、インクに定着樹脂を多く含有させると、ノズル面からインクの乾燥が進む場合があり、間欠性が課題となる。特に従来の顔料捺染インクジェット記録方法に用いていたインクジェットヘッドは、連通孔を介さずにノズル孔と圧力室とが直接接続された構造となっている。そのため、インク中の定着樹脂量を増量して洗濯堅牢度を上げようとすると、ノズル面からのインクの乾燥が進みやすく、間欠性が大きな課題となっている。
また、インクとしてカラーインク等の非白インクを用いる場合には、白インクと比べて付着量が少ないため、樹脂の付着量が足りず、洗濯堅牢性が低くなる傾向にある。また、非白インクを用いる場合には、絵や文字等の記録に用いるため、滲みが無く、発色性に優れたきれいな画像が必要となる。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、インクジェット方式で布帛に顔料インクが付与される際に、間欠性を損なわず、得られたインク塗膜の洗濯堅牢度に優れるインクジェット捺染物を提供できるインクジェット捺
染方法、ならびにこれを実施するインクジェット捺染装置を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット捺染方法の一態様は、
インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を布帛に付着させるインク付着工程を備え、
前記インク組成物は、樹脂と有機溶剤とを含むことを特徴とする。
適用例1のインクジェット捺染方法によれば、インクジェット方式で布帛に顔料インクが付与される際に、ノズル面からインクの乾燥が進むことを防止することにより間欠性を損わず、得られたインク塗膜の洗濯堅牢度に優れるインクジェット捺染物を提供できる。また、インクとしてカラーインク等の非白インクを用いる場合においても、洗濯堅牢性に優れ、滲みが無く、発色性に優れたインクジェット捺染物を提供できる。
[適用例2]
適用例1のインクジェット捺染方法において、
前記インク組成物は、前記樹脂を固形分として前記インク組成物に対し3質量%以上13質量%以下含み、前記樹脂の固形分の総含有量に対する前記有機溶剤の総含有量の比が0.7以上であり、前記樹脂の固形分の総含有量と前記有機溶剤の総含有量の合計が前記インク組成物に対し35質量%以下であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2のインクジェット捺染方法において、
前記インク付着工程における前記インク組成物の吐出の1インク滴当たりの最大の質量が30ng以下であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、 前記プリントヘッドは、前記圧力室1つ当たりの前記圧力室および前記接続部の容積の合計が4200pl以上6200pl以下であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、
前記圧力室1つ当たりの圧力室の容積が3700pl以下であることができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、
前記プリントヘッドが、前記接続部の一部を構成する連通孔が設けられた連通板を備えることができる。
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、
更に、前記インク組成物の成分を凝集または増粘させる凝集剤を含む反応液を前記布帛
に付着させる反応液付着工程を備えることができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、
前記インク組成物が、非白色顔料を含む非白色インク組成物であることができる。
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、
前記プリントヘッドは前記インク組成物を吐出する複数のノズルを列状に備え、列方向におけるノズル密度が200dpi以上であることができる。
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか一例のインクジェット捺染方法において、
前記布帛への最大のインク付着量が40mg/inch以下であることができる。
[適用例11]
本発明に係るインクジェット捺染装置の一態様は、
適用例1ないし適用例10のいずれか一例のインクジェット捺染方法で捺染を行うことを特徴とする。
実施形態に係るインクジェット捺染装置の概略斜視図。 実施形態に係るヘッドを模式的に示す分解斜視図。 実施形態に係るヘッドの要部の断面の模式図。 比較例で用いたヘッドの要部の断面の模式図。
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット捺染方法
本発明の一実施形態に係るインクジェット捺染方法は、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を布帛に付着させるインク付着工程を備え、前記インク組成物は、樹脂と有機溶剤とを含むことを特徴とする。
以下、本実施形態に係るインクジェット捺染方法について、これを実施可能な装置の構成、インク組成物の順に説明した上で、その工程を詳細に説明する。
1.1.装置構成
本実施形態に係るインクジェット捺染装置は、上述のように、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを備えている。
以下、本実施形態に係るインクジェット捺染装置について、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明するが、本発明に係るインクジェット捺染装置は、オンキャリッジタイプのプリンターであることに限定されるものではなく、インクカートリッジがキャリッジに搭載されないで外部に固定された、オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。
また、以下の説明に用いるプリンターは、所定の方向に移動するキャリッジにプリントヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するシリアルプリンターであるが、本発明に係るインクジェット捺染装置はシリアルプリンターに限定されるものではなく、ヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、プリントヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出するラインプリンターであってもよい。
以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態に係るインクジェット捺染装置の一例であるプリンター200を示す概略斜視図であり、プリンター200は記録媒体としての布帛Pにインクジェット捺染する。
図1に示すように、プリンター200は、プリントヘッド100と、プリントヘッド100を搭載するとともにインクカートリッジ231を着脱可能に装着するキャリッジ232と、キャリッジ232を媒体幅方向に往復移動させる主走査機構235と、記録媒体を媒体送り方向に移送するプラテンローラー236と、を有する。プリンター200は、当該プリンター200全体の動作を制御する制御部(図示せず)を更に有する。ここにおいて、媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)であり、媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
主走査機構235は、キャリッジ232に接続されたタイミングベルト238と、タイミングベルト238を駆動するモーター239と、主走査方向に架設された支持部材であるガイド軸240と、を備える。キャリッジ232は、タイミングベルト238を介してモーター239によって駆動され、ガイド軸240に沿って主走査方向に往復移動するものである。この往復移動の際に、プリントヘッド100から所定のタイミングでインクが吐出され、布帛Pへの印刷が行われる。
ヘッドユニット230は、後述するプリントヘッド100から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」あるいは「プリントヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット230は、さらに、プリントヘッド100にインクを供給するインクカートリッジ231と、プリントヘッド100及びインクカートリッジ231を搭載した運搬部(キャリッジ)232とを備える。
本実施形態では、プリントヘッド100及び布帛Pがいずれも移動しながら印刷が行われる例を示しているが、プリンター200は、プリントヘッド100及び布帛Pが互いに相対的に位置を変えて布帛Pに印刷される機構であればよい。
なお、例示しているプリンター200は、1つのプリントヘッド100を有し、このプリントヘッド100によって、布帛Pに印刷を行うことができるものであるが、複数のプリントヘッドを有してもよい。プリンター200が複数のプリントヘッドを有する場合には、複数のプリントヘッドは、それぞれ独立して上述のように動作されてもよいし、複数のプリントヘッドが互いに連結されて、1つの集合したヘッドとなっていてもよい。この
ような集合となったヘッドとしては、例えば、複数のヘッドのそれぞれのノズルが全体として均一な間隔を有するような、ライン型のヘッドを挙げることができる。
1.1.1.プリントヘッド
図2は、プリンター200におけるプリントヘッド100を模式的に示す分解斜視図であり、図1に示したプリンター200に搭載される状態とは上下を逆に示したものである。図3は、プリントヘッド100の要部の断面の模式図であり、インクの吐出動作の際のインク供給室40からノズル12までのインクの流れを、破線矢印で模式的に示してある。
なお、図2及び図3では、圧電素子32は簡略化して図示されている。また、本実施形態ではプリントヘッド100は連通板110とカバー150を備える構成であるが、図2では省略されている。
図2に示すように、プリントヘッド100は、記録媒体である布帛Pと対向する面に複数のノズル孔12を有するノズルプレート10と、ノズルプレート10に形成された複数のノズル孔12のそれぞれに連通する複数の圧力室20と、複数の圧力室20のそれぞれの容積を変化させる振動板30と、複数の圧力室20にインクを供給するインク供給室40と、筐体130を備える。
ノズルプレート10は、インクを吐出するための複数のノズル孔12を有し、これらの複数のノズル孔12は列状に配列されており、ノズルプレート10表面にノズル面13が形成されている。ノズルプレート10に設けられるノズル孔12の数は、特に限定されない。本実施形態で用いられるプリントヘッド100では、ノズル孔12の列方向におけるノズル密度は、200dpi以上であることが好ましい。すなわち、配列されたノズル孔12の隣り合うノズル孔12の間隔は、127μm以下であることが好ましい。ノズル密度を200dpi以上とすることにより、液滴を微小化した場合であっても、総インク打ち込み量を維持することができ、画像の隠蔽性を維持することができる。より好ましくは、ノズル密度は240dpi以上であり、さらに好ましくは250dpi以上、より好ましくは300dpi以上、さらに好ましくは400dpi以上、もっとも好ましくは500dpi以上である。ノズル密度の上限値は、好ましくは2000dpi以下であり、より好ましくは1000dpi以下である。
ノズルプレート10の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。また、ノズルプレート10の材質としては、鉄(Fe)を主成分(50%以上)として、クロム(Cr)を10.5%以上含む合金であると、剛性や錆び難さを両立できるためより好ましい。ノズルプレート10の厚みは特に限定されないが、例えば、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。
プリントヘッド100は、圧力室20を形成するための圧力室基板120を備え、圧力室基板120の材質としては、例えば、シリコンなどが挙げられる。図3に示すように、圧力室基板120は、ノズルプレート10との間に流路形成基板としての連通板110を備える。連通板110がノズルプレート10と圧力室基板120との間の空間を区画することにより、インク供給室40(液体貯留部)と、インク供給室40と連通する供給口126と、供給口126と連通する圧力室20と、が形成される。すなわち、インク供給室40、供給口126及び圧力室20は、ノズルプレート10、連通板110、圧力室基板120及び振動板30とによって区画されている。
連通板110は、圧力室20からノズル孔12に連通する連通孔127を有する。連通
板110がノズルプレート10と接触する面に形成された連通孔127の端部には、インクの吐出口128が形成されている。吐出口128は、ノズルプレート10に形成されたノズル孔12と連通している。
振動板30は圧力室基板120に接して設けられ、振動板30に接して圧電素子32が形成されている。圧電素子32は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板30は、圧電素子32の動作によって変形し、圧力室20の容積を変化させることで圧力室20の内部圧力を変化させることができる。圧電素子32としては、特に限定されないが、例えば、電圧を印加することによって変形を生じる種の素子(電気機械変換素子)を挙げることができる。このように、本実施形態では、圧電素子32と振動板30とによって圧電アクチュエーター34が構成されている。
なお、この例では、圧力室20は、連通板110、圧力室基板120及び振動板30によって区画されているが、圧力室20は、振動板30の振動によって容積が変化され得る限り、適宜の部材によって形成されることができ、そのための部材の数、形状、材質等は任意である。また、振動板30は、圧電素子32を構成する電極(例えば、Pt等で形成される。)と一体的であってもよい。
本実施形態のプリントヘッド100は、ノズル孔12間の間隔が127μm以下であるため、圧電素子32としては、2つの電極の間に圧電材料が配置された構成であることが好ましい。すなわち、圧電アクチュエーター34は、例えば、振動板30に対して、一方の電極、圧電材料(例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛))の層、及び他方の電極が順次積層された全体として薄膜状の態様であることが好ましい。
振動板30の材質についても特に限定されないが、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO)、炭化ケイ素(SiC)、及びそれらの材質からなる層の積層体等を挙げることができる。振動板30の材質としては、ヤング率が250Gpa以下のものが、変位を大きくできる点、及び破損を生じにくい点でより好ましく、例えば、ZrO(150GPa)、SiO(75GPa)、Si(130GPa)、SUS(199GPa)、Cr(248GPa)を含んで形成されることがより好ましい(括弧内はヤング率)。また、圧電素子32の電極がPtで形成され、振動板30と一体的に積層されている場合には、ヤング率はPtが168GPa、ZrOが150GPaであるため、組み合わせても250GPa以下となるためそのように構成してもよい。
なお、本明細書において、ヤング率とは、静的試験(JIS G0567J等)(機械的試験)で測定されるヤング率を指し、例えば、II−6号試験片を用いて測定される。
更に、プリントヘッド100は、インク流路の一部を形成する部材として、コンプライアンスシート140と、圧電素子32を収容するカバー150を備える。コンプライアンスシート140は、連通板110との間に、インク供給室40と連通する供給口126を形成する。また、コンプライアンスシート140は可撓性の弾性膜であり、インクの吐出や流通のためのダンパーとしての機能や、インクの体積が膨張した場合に、変形することによってプリントヘッド100の破損を抑制する機能を有している。
コンプライアンスシート140は、弾性を有する膜であれば特に限定されないが、例えば、高分子膜、薄膜にした金属、ガラスファイバー、カーボンファイバー等が用いられる。高分子膜の材質としては、特に限定されないが、ポリイミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイト等が挙げられ、ポリフェニレンスルファイトで形成され
ることがより好ましい。また、金属としては、例えば、鉄やアルミニウムを含む材料が挙げられる。
コンプライアンスシート140の厚みは、特に限定されないが、例えば、50μm以下が好ましく、より好ましく20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。コンプライアンスシート140は、薄膜にしすぎるとインク吐出時に振動が大きくなり、残留振動が多く発生する場合がある。
本実施形態では、インク供給室40、供給口126、圧力室20および連通孔127を区別して説明しているが、これらはいずれも液体の流路であって、圧力室20が形成される限り、流路はどのように設計されても構わない。例えば、図示の例では供給口126として、流路の一部が狭窄された形状を有しているが、そのような流路の拡大縮小は、設計にしたがって任意に形成することができ、また必ずしも必須の構成ではない。
上記構成によって形成される圧力室20は、連通板110と、圧力室基板120と、振動板30とによって区画される空間であり、供給口126、連通孔127、吐出口128及びノズル孔12を含まない空間のことをいう。つまり、振動板30、圧力室基板120、連通板110などのインクに圧力を付与する部分(圧力室20の壁の変形や発熱する部分)と対向する空間、および、該空間に隣接し、インクが移動する方向に対する断面の断面積が該空間と等しい空間を圧力室20とし、圧力室20の容積はこの容積である。このように、圧力室20は、振動板30の変位によって容積が変化する空間であり、係る空間に連通する狭窄された流路等を含まない空間と定義する。
上記したように、連通孔127は圧力室20からノズル孔12に連通している。本発明においては、圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの部分、すなわち、図3の例では、連通孔127、ノズル孔12、及びこれらを接続する全ての部分、を接続部132と定義する。したがって、接続部132の距離とは、図3の例では、接続部132が連通板110の厚み方向と平行に貫通するように設けられているので、連通板110の厚み方向の長さd1とノズルプレート10の厚み方向の長さd2の和に等しくなる。
本実施形態では、連通板110の厚み方向の長さd1とノズルプレート10の厚み方向の長さd2の長さの和、つまり、d1+d2が500μm以上である。このように、接続部132の距離が長い構成とすることにより、ノズル面13からインクの乾燥が進むことを防止できる。これにより、インク塗膜の洗濯堅牢度を高めるためにインク中の樹脂の含有量を多くした場合であっても間欠性が損われない。
なお、図3に示す例では、ノズルプレート10と連通板110が積層され、ノズル孔12及び連通孔127が異なる部材により形成されているが、ノズルプレートと連通板が単一の部材で形成されていてもよい。ノズルプレートと連通板が単一の部材で形成されている場合においても、接続部132は、圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの部分となる。この場合においても、接続部の距離が500μm以上であることにより、ノズル面からインクの乾燥が進むことを防止できる。
接続部132の距離は、500μm以上3000μm以下であることが好ましく、700μm以上2500μm以下であることがより好ましく、更には900μm以上1500μm以下であることが好ましい。なお、連通孔がノズルプレート10に対して斜めに伸びている場合にも、連通孔の長さは連通孔に沿った長さであり、この場合には連通板110の厚み方向の長さd1よりも長くなる。つまり、圧力室20と連通孔の境界から連通孔の中を通ってノズル孔12までに到る最短の距離が連通孔の長さとなり、接続部の距離は、
この連通孔の長さに、ノズル孔12及びこれらを接続する全ての部分の長さを足した長さとなる。
圧力室の1つ当たりの圧力室および接続部の容積の合計、つまり、本実施形態において、圧力室20と連通孔127とノズル孔12の容積の合計は、4200pl以上6200pl以下であることが好ましく、4500pl以上5500pl以下であることがより好ましい。この場合には、よりノズル面13からインクの乾燥が進むことを防止することができる。
この場合において、圧力室20の1つ当たりの容積が3700pl以下であることが好ましく、3500pl以下であることがより好ましい。更に好ましくは3300pl以下であり、より好ましくは3000pl以下である。圧力室20の1つ当たりの容積の下限値は、好ましくは1500pl以上であり、より好ましくは2000pl以上である。圧力室20の容積が3700pl以下であることにより、連通孔127の容積を充分に確保することができるため、ノズル面13からインクの乾燥が進むことを効果的に防止することができる。
インク供給室40は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板30に設けられた貫通孔129を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。インク供給室40内のインクは、供給口126を介して、圧力室20に供給されることができる。圧力室20は、振動板30の変形により容積が変化する。圧力室20は連通孔127を介してノズル孔12と連通しており、圧力室20の容積が変化することによって、ノズル孔12からインクが吐出されたり、インク供給室40から圧力室20にインクが導入されたりすることができる。ここで、ノズル孔12のノズル径は、画質を優れたものにする点や、間欠性やミスト低減の点で、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上40μm以下である。
筐体130は、図2に示すように、ノズルプレート10、圧力室基板120及び圧電素子32を収納することができる。筐体130の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。筐体130は、圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有してもよい。また、筐体130には、不活性ガス等が封入されたり、筐体130内が減圧されてもよく、これにより、圧電材料の劣化等を抑制することができる。
カバー150は、筐体130とは別部材として構成されている。カバー150は、振動板30に接して設けられ、圧電素子32を収容する空間を形成し、圧電素子32を当該空間に収納している。カバー150の材質は、上述の筐体130の材質と同様である。上記筐体130は圧電素子32を覆うカバーとなっているが、カバー150は圧電素子32を外部環境から隔てる機能を有し、カバー150によって形成される空間に不活性ガス等が封入されたり、当該空間が減圧されてもよい。これにより、圧電素子32の圧電材料の劣化等を抑制することができる。この場合に、筐体130は、プリントヘッド100の支持体として機能してもよい。
以上例示した本実施形態のプリントヘッド100は、プリンター200に搭載された場合に、ノズルプレート10が布帛Pに向かって配置され、ノズルプレート10が大気(外気)と直接に接することになる。また、本実施形態のプリントヘッド100は、筐体130およびカバー150を有するため、圧電素子32及び振動板30が実質的に外気と接触しない構造である。
ここで、本実施形態のインクジェット捺染装置は、以下に説明するインク組成物を用いてインクジェット捺染方法を行う。
1.2.インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット捺染方法に用いられるインク組成物は、樹脂と有機溶剤とを含むことを特徴とし、インク組成物は、樹脂を固形分としてインク組成物に対し3質量%以上13質量%以下含み、樹脂の固形分の総含有量に対する有機溶剤の総含有量の比が0.7以上であり、樹脂の固形分の総含有量と有機溶剤の総含有量の合計が前記インク組成物に対し35質量%以下であることが好ましい。
以下、本実施形態に係るインクジェット捺染方法に用いるインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)に含まれる成分について詳細に説明する。
1.2.1.顔料
本実施形態に係るインクジェット捺染方法に用いるインクは、顔料を含有する。顔料としては、有機顔料および無機顔料のいずれも使用することができ、いずれの色の顔料も使用できる。
例えば、白色系の顔料としては、以下に限定されないが、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料等が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
白色系の顔料のカラーインデックス(C.I.)としては、以下に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)などが挙げられる。これらの中でも、発色性、隠蔽性、及び視認性(明度)に優れ、かつ、良好な分散粒径が得られるため、酸化チタンが好ましい。
上記酸化チタンの中でも、白色系の顔料として一般的なルチル型の酸化チタンが好ましい。このルチル型の酸化チタンは、自ら製造したものであってもよく、市販されているものであってもよい。ルチル型の酸化チタン(粉末状)を自ら製造する場合の工業的製造方法として、従来公知の硫酸法及び塩素法が挙げられる。ルチル型の酸化チタンの市販品としては、例えば、Tipaque(登録商標) CR−60−2、CR−67、R−980、R−780、R−850、R−980、R−630、R−670、PF−736等のルチル型(以上、石原産業社製、商品名)が挙げられる。
また、本実施形態で用いられるインクは、白色系の顔料以外の顔料を含有してもよい。白色系の顔料以外の顔料とは、上述した白色系の顔料を除く顔料のことをいう。白色系の顔料以外の顔料としては、以下に限定されないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料系、縮合多環系、ニトロ系、及びニトロソ系などの有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等)、コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、及びニッケル等の金属類、金属酸化物及び硫化物、並びにファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、さらには黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
更に詳しくは、ブラック系の顔料として使用できるカーボンブラックとしては、例えば、MCF88、No.2300、2200B、900、33、40、45、52、MA7、8、100等(以上、三菱化学社製、商品名)、Raven 5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上、コロンビアカーボン社製、商品名)、Rega1 400R、330R、660R、Mogul L、Monarch 700、800、880、900、1000、1100、1300、1400等(以上、キャボット社製、商品名)、Color Black FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 35、U、V、140U、Special Black 6、5、4A、4等(以上、デグッサ社製、商品名)等が挙げられる。
イエロー系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
マゼンタ系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、C.I.ピグメントバイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
シアン系の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66等が挙げられる。
マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、C.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグ
メント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38
、40、43、63等が挙げられる。
以上述べた顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態で用いられるインクに含まれる顔料の含有量は、使用する顔料種により異なるものの、良好な発色性を確保することなどから、インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上13質量%以下がさらに好ましい。中でも、インクに含まれる顔料としてカラーインク用の非白色の顔料を用いる場合には、非白色の顔料の含有量は、インクの全質量に対して、0.2質量%以上8質量%以下であることが好ましく、1質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
顔料は、インク中での分散性を高めるという観点から、表面処理を施した顔料であってもよいし、分散剤等を利用した顔料であってもよい。
表面処理を施した顔料とは、物理的処理または化学的処理によって顔料表面に、カルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基を、直接または間接的に結合させて水性溶媒中に分散可能としたものである(以下、「自己分散型の顔料」ともいう。)。
また、分散剤を利用した顔料とは、界面活性剤や樹脂により顔料を分散させたものであり(以下、「ポリマー分散型顔料」ともいう。)、界面活性剤や樹脂としてはいずれも公知の物質を使用することが可能である。また、「ポリマー分散型顔料」の中には、樹脂により被覆された顔料も含まれる。樹脂により被覆された顔料は、酸析法、転相乳化法、及びミニエマルション重合法などにより得ることができる。
1.2.2.樹脂
本実施形態で用いるインクは、樹脂を含有する。樹脂を含有することにより、インクと布帛の密着性を向上できるので、記録される画像の耐擦性を向上できる。
本実施形態で用いるインクは、布帛に対する記録に好適に用いることができる。ここで、布帛は、伸縮しやすい性質を備えるため、記録される画像、すなわちインクにより形成されるインク膜も伸縮しやすい(伸張しやすい)ものであることが好ましい。すなわち、インク膜が布帛の伸縮に追随して伸縮できる伸度を有することにより、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる。こうした観点から、本実施形態に係るインクに含まれる樹脂の皮膜伸度は、400%以上1200%以下であることが好ましく、500%以上1200%以下であることがより好ましく、600%以上1200%以下であることがさらに好ましく、700%以上1200%以下であることが特に好ましい。樹脂の皮膜伸度が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、布帛の伸縮に対して追従性の良好な画像を形成できる。また、樹脂の皮膜伸度が上記範囲内、とりわけ上限を超えずにあることで、インク膜の粘性を適度な範囲に保ち、布帛に対するアンカー効果の低下を抑制できるので、定着性の低下を抑制しつつ、洗濯・摩擦堅牢度(耐擦性)にも良好な画像を形成できる。
樹脂の皮膜伸度は、次のようにして測定したものである。まず、乾燥後の膜厚が500μmになるように、ポリテトラフルオロエチレンシート上に樹脂を塗布し、常温(20℃)・常圧(65%RH)で15時間乾燥し、さらに80℃で6時間、および120℃で20分の乾燥を行った後、シートから剥離して、樹脂フィルムを作成する。そして、引っ張り試験機を用いて、測定温度20℃、測定スピード200mm/minの条件で、得られた樹脂フィルムの皮膜伸度を測定する。皮膜伸度の測定は、樹脂フィルムを伸長させて樹脂フィルムが破断するまでに伸長する長さを測定し、その割合をパーセントで皮膜伸度として表す。なお、引っ張り試験機としては、例えば、テンシロン万能試験機RTC−1225A(商品名、(株)オリエンテック製)や、これに準ずるものを使用できる。
また、樹脂は、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる点で、ガラス転移点(Tg)が、0℃以下が好ましく、−10°以下がより好ましくい。また、ガラス転移点(Tg)の下限は、−80℃以上が好ましい。また、第1インクに含まれる樹脂は、インク膜の破断、ひび割れを防ぎ、洗濯・摩擦堅牢度を確保することができる点で、最低像膜温度(MFT)が、0℃以下が好ましく、−10°以下がより好ましくい。また、最低像膜温度の下限は、−80℃以上が好ましい。
樹脂は、皮膜の耐擦性、密着性、インクの保存安定性を向上できる等の観点から、エマルジョンであることが好ましい。本実施形態に係るインクに含まれる樹脂は、水に安定に分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよいが、後述する前処理剤に含まれる多価金属化合
物との反応を阻害しないという観点から、乳化剤を含まない自己乳化型の分散体(自己乳化型のエマルジョン)であることが好ましい。
樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、設計の自由度が高く、それゆえ所望の皮膜物性(上記の皮膜伸度)を得やすいことから、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ウレタン系樹脂を用いることがより好ましい。
ウレタン系樹脂としては、ウレタン骨格を有し水分散性を有するものであれば特に限定はされず、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D−1060、D−2020、D−4080、D−4200、D−6300、D−6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS−6021、W−512−A−6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、などの市販品を用いてもよい。
また、ウレタン系樹脂は、インクの保存安定性の観点や、後述する前処理剤に多価金属化合物を含む場合にこれとの反応性を向上させるという観点から、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有する、アニオン性のウレタン系樹脂であることが好ましい。上述の市販品のうち、アニオン性のウレタン系樹脂としては、第一工業製薬(株)製のスーパーフレックス460、460s、840等;三井化学ポリウレタン(株)製のタケラックWS−6021、W−512−A−6等が挙げられる。
また、ウレタン系樹脂としては、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂、などを使用できる。これらのウレタン樹脂は、複数種を組み合わせて使用することができる。
アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合体や、アクリル系単量体と他の単量体との共重合体などが使用可能であり、他の単量体としてはスチレンなどのビニル系単量体があげられる。アクリル系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えばモビニール702、7502、7525、7320(日本合成化学株式会社製)などがあげられる。
樹脂の含有量は、インクの全質量に対して、固形分換算で、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上14質量%以下であり、3質量%以上13質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上11質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以上10質量%以下であることがさらにより好ましい。インク中における樹脂の含有量が上記範囲内、とりわけ下限を下回らずにあることで、樹脂がインクの定着性を向上させる効果を十分に発揮できるので、記録される画像の耐擦性が向上し、得られたインク塗膜の洗濯堅牢性が向上する。また、上限を超えずにあることで、樹脂に起因する凝集物の発生が抑制できるので、インクの保存安定性や吐出安定性が優れたものとなる。
また、得られたインク塗膜の洗濯堅牢度を確保する観点から、樹脂の固形分の総含有量に対する有機溶剤の総含有量の比が0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上8.5以下であることがさらに好ましく、1以上6以下
であることがさらにより好ましく、1.5以上5以下であることがより好ましく、1.7以上3以下であることがもっとも好ましい。さらに、得られたインク塗膜の洗濯堅牢度を確保する観点から、樹脂の固形分の総含有量と有機溶剤の総含有量の合計がインク組成物に対し40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、33質量%以下であることがさらに好ましい。下限値は15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、27質量%以上であることがより好ましく、29質量%以上であることがもっとも好ましい。
1.2.3.凝集剤
非白色の布帛へ画像の記録を行う場合、非白色の布帛上での画像の視認性を良くするために、酸化チタン等の白色系の顔料を含む白色インクを用いて記録が行われる。しかし、非白色の布帛は、布帛へインクが浸透した場合のインクの発色性や布帛の隠蔽性の低下が大きく、記録される画像の発色性、布帛の隠蔽性が不十分になる傾向がある。このため、非白色の布帛への画像の形成に用いるインクにより得られる画像の発色性、布帛の隠蔽性を高めるという観点から、インク成分を凝集または増粘させる凝集剤を含む反応液を用いることが好ましい。
凝集剤としては、例えば、塩化カルシウム等の多価金属化合物が使用できる。凝集剤がインクに含まれる樹脂や顔料の成分と反応してインクの成分が凝集体を形成することで、記録される画像の発色性、布帛の隠蔽性を高めることができる。
1.2.4.その他の成分
本実施形態で用いるインクは、水、有機溶剤、界面活性剤、pH調製剤、防腐剤・防かび剤等を含有してもよい。
<水>
水は、インクの主となる媒体であり、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。インクに含まれる水の含有量としては、特に限定されるものではないが、インクの全質量に対して、例えば50質量%以上であることができ、さらには50質量%以上95質量%以下であることができる。
<有機溶剤>
有機溶剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。有機溶剤の含有量は、例えば、インク全質量に対して、好ましくは8質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上23質量%以下であり、もっとも好ましくは18質量%以上23質量%以下であることができる。
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、布帛等の記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、滲みの少ない画像を記録できる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることができる。
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、ヘッドのノズル面におけるインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量が、インクの全質量に対して、2質量%以上20質量%以下であることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテルや、アルキレングリコールジエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
グリコールエーテル類は、記録媒体に対するインクの濡れ性や浸透速度を制御できるため、鮮明な画像を記録することができる。グリコールエーテル類を含有する場合には、インク全質量に対して、0.05質量%以上6質量%以下であることができる。
<界面活性剤>
界面活性剤は、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、5
04、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、BYK社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
<pH調整剤>
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
<防腐剤・防かび剤>
防腐剤・防かび剤としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等が挙げられる。
1.2.5.インク組成物の調製方法
本実施形態で用いるインクは、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.2.6.インク組成物の物性
本実施形態で用いるインクのpHは、画像品質とインクジェット用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/mであることが好ましく、25mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係るインクの20℃における粘度は、3mPa・
s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
次に、本実施形態に係るインクジェット捺染方法における、インク付着工程および反応液付着工程について説明する。
1.3.インク付着工程
本実施形態に係るインク付着工程は、上述したように、インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を布帛に付着させるインク付着工程である。
インク組成物を付着させる布帛としては、特に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛等の天然繊維や、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン等の合成繊維等を原料とする、織物、編み物、不織布等が挙げられる。
インク吐出工程において、インクの吐出の1インク滴当たりの最大の質量が30ng以下であることが好ましい。ここで、吐出の1滴のインク量は、1回(1発)の吐出の質量であって、数発の合計ではない。本実施形態に係るインク付着工程において、インクの吐出の1インク滴当たりの最大の質量が30ng以下であることにより、液滴が微小化され、布帛の裏抜けを抑制することができる。1インク滴当たりの最大の質量は、好ましくは25ng以下であり、より好ましくは20ng以下であり、さらに好ましくは15ng以下であり、もっとも好ましくは10ng以下である。1インク滴当たりの最大の質量の下限値は、好ましくは1ng以上であり、より好ましくは3ng以上であり、さらに好ましくは5ng以上である。
また、インク付着工程において、布帛への最大のインク付着量が40mg/inch以下であることが好ましい。布帛への最大のインク付着量が40mg/inch以下であることにより、布帛の裏抜けを抑制することができる。布帛への最大のインク付着量は、より好ましくは30mg/inch以下であり、さらに好ましくは20mg/inch以下であり、より好ましくは15mg/inch以下であり、もっとも好ましくは10mg/inch以下である。また、布帛への最大のインク付着量の下限値は、好ましくは1mg/inch以上であり、より好ましくは5mg/inch以上である。
また、上述したように、圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分からノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いていることにより、樹脂の固形分を増量した場合であっても、ノズル面からの乾燥が防止されて間欠性に優れたインクジェット捺染方法を得ることが可能となり、また洗濯堅牢性に優れたインクジェット捺染物を得ることが可能となる。
1.4.反応液付着工程
本実施形態に係るインクジェット捺染方法では、インク付着工程の前または後に、インク組成物の成分を凝集または増粘させる凝集剤を含む反応液を布帛に付着させる反応液付着工程を備えることが好ましい。上述したように、例えば、白色系の顔料を含む白色インクを用いて非白色の布帛上にインクジェット捺染を行う場合において、得られる画像の発色性、布帛の隠蔽性を高めるという観点から、インク成分を凝集または増粘させる凝集剤を含む反応液を布帛に付着させることが好ましい。
例えば、インク付着工程の前に反応液付着工程を有する場合には、インクが付着されて画像を形成する布帛の領域に凝集剤を含有する反応液を付着させておくと、インク付着工程においてインクを付着させた際に、反応液に含まれる凝集剤とインクに含まれる樹脂や顔料が反応することで、インクに含まれるこれら成分を凝集させ凝集体とすることができる。これにより、インク付着工程で形成された画像の発色性が向上して、布帛を良好に隠蔽することが可能となる。
なお、反応液付着工程はインク付着工程の後とすることも可能である。この場合には、インク付着工程で付着されたインクが乾燥する前に反応液を付着させることで、インクに含まれる樹脂や顔料などを凝集剤により凝集体とすることができる。これにより、インク付着工程で形成された画像の発色性が向上して、布帛を良好に隠蔽することが可能となる。
2.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
2.1.非白色インク組成物の調製
表1の下段に記載の成分を混合し、マグネチックスターラーで2時間混合拡販した後、さらに孔径5μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、I1〜I11の非白色インク組成物を得た。なお、表1中の数値はインク組成物中の含有量(質量基準%)を表し、表1の上段は、請求項1に対応した各数値を表す。また、表1に示す各成分の略称は以下の通りである。
・イエロー顔料(商品名「CAB−0−JET270」、キャボット社製)
・ブラック顔料商品名「MCF88」、三菱化学社製)
・ウレタン樹脂(商品名「タケラックWS−6021」、三井化学社製)
・界面活性剤(商品名「BYK−306」、BYK社製)
・添加剤(商品名「プロキセルCRL」、ICI社製)
Figure 0006610074
2.2.インクジェット捺染装置の準備
上記で説明した図1〜図3に記載されているプリントヘッドを備えるインクジェット捺染装置として、SC−F2000(セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用意した。ヘッドとしては、表2に示すH1〜H4の3種類のヘッドを用いた。
Figure 0006610074
ここで、ヘッドH1は、図3に示す構造を有しており、圧力室20の底面からノズル面13までの長さ、つまり、接続部132の距離(d1+d2)が1000μmであり、ノズルピッチは300dpi、圧力室20の容積は2900plであり、連通孔127、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は4200plである。
ヘッドH2は、図4に示す構造を有している。つまり、図4に示すプリントヘッドH2は連通孔を備えておらず、圧力室20は、ノズルプレート10と、連通板110と、振動板30とによって区画される空間のことを指し、ノズル孔12及び供給口126を含まない空間のことをいう。ヘッドH2において、圧力室20の底面からノズル面13までの長さ、つまり、接続部132の距離はノズル孔12の長さであり、ノズルプレート10の厚みと等しく100μmである。なお、ノズルピッチは360dpi、圧力室20の容積は2900pl、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は3100plである。
ヘッドH3はヘッドH1と似た構造のヘッドであり、ヘッドH1と比較して圧力室容積
をより大きく、ノズル密度をより低いものとした。つまり、接続部132の距離は1000μmであり、ノズルピッチは180dpi、圧力室20の容積は3700pl、連通孔127、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は5000plである。
ヘッドH4は、ヘッドH1と似た構造のヘッドであり、接続部132の距離がヘッドH1よりも短い500μmであるが、ノズルピッチと圧力室20の容積はヘッドH1と同様である。つまり、ノズルピッチは300dpi、圧力室20の容積は2900plであり、連通孔127、ノズル孔12および圧力室20の容積の合計は、接続部132の距離がヘッドH1よりも短いため3600plである。なお、いずれのヘッドにおいても、ノズル孔12のノズル径は20μmである。
2.3.捺染記録試験
布帛(haines社製ヘビーウェイト、綿100%、白色生地)に対して捺染記録試験を行った。布帛を上記プリンターにセットし、ヘッドからインクを吐出し布帛へインクの付着を行った。1滴当たりのインク質量を表3中の値で、記録領域のインク付着量が15mg/inchとなるよう、ドット解像度を調整して付着させ、画像を記録した。付着させた後、布帛を排出し、170℃で1分間加熱して乾燥し、印捺物とした。ただし、実施例7は実施例6においてインク滴質量を小さくした例としたため、インク付着量は他の例の約22%とした。
2.4.印捺物の評価
2.4.1.画像の発色強度の評価
印捺物の画像のL*値を、測色器(商品名「Gretag Macbeth Spectrolino」、X−RITE社製)で測定し、以下の評価基準で評価した。
(評価基準)
AA:94≦L*
A:91≦L*<94
B:89≦L*<91
C:L*<89
2.4.2.洗濯堅牢性の評価
上記印捺物を洗濯堅牢性試験により評価した。洗濯堅牢性試験は、「AATCC61 2A、3A」に準じて行い、下記評価基準により評価した。なお、下記の「2A」とは、25℃で洗濯したことを示し、「3A」とは、60℃で洗濯したことを示す。Duty100%部は上記捺染記録試験にて作成した画像部であり、Duty50%部は、Duty100%の半分の付着量としたこと以外は同様にして作成した画像部である。
(評価基準)
AA:3A条件において、Duty50%部で被膜の脱落なし
A:3A条件においてDuty50%部で被膜の脱落あり、Duty100%部では被膜の脱落無し。
B:3A条件においてDuty100%部でも被膜の脱落あり、2A条件においてDuty50%部でも被膜の脱落なし。
C:2A条件においてDuty50%部で被膜の脱落あり、Duty100%部では被膜の脱落無し。
D:2A条件において、Duty100%部でも被膜の脱落あり。
2.4.3.間欠性の評価
上記捺染記録試験に用いた装置の記録条件において、長時間使用を想定し、ヘッドからプラテン側方に設けたインク受けにインクの吐出を5分間連続して行い、1分間ヘッドを放置した後、再び5分間連続吐出と1分間放置を、10セット行った。終了後、ノズルの
不吐出検査を行い、使用した全ノズル数に対する不吐出ノズル数を算出し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
AA:1%未満
A:1%以上3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上8%未満
D:8%以上
2.4.4.ミストの評価
上記捺染記録試験に用いた装置の記録条件において、布帛へのインクの付着を5分間連続して行った後、ヘッドのノズルプレートのノズル列の中心から半径7μmの領域において、インク液で被覆している面積の率を測定し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
AA:10%未満
A:10%以上30%未満
B:30%以上50%未満
C:50%以上
2.4.5.発色性(滲み)の評価
捺染記録試験で得た印捺物の画像部を目視で観察した。ここで、上記捺染記録条件の付着量をDuty100%とし、Duty10%、解像度1440×720dpiの条件で、ベタパターンを印捺し、光学顕微鏡15倍で観察して、以下の基準で滲みを評価した。(評価基準)
AA:殆どドットが滲んでいない
A:僅かなドットが滲んでいる
B:半分程度のドットが滲んでいる
C:殆どのドットが滲んでいる
2.5.評価結果
各実施例及び比較例の評価結果を下表3に示す。
Figure 0006610074
表3の結果から明らかなように、圧力室からノズル面までの長さが500μm以上であるプリントヘッドH1、H3およびH4と、インクI1〜I5を組み合わせた実施例1〜5、12では、いずれの評価も満足するものであった。実施例6は、インク組成物の吐出の1インク滴当たりの最大の質量が31ngであったため、画像に滲みが見られた。また、実施例7では、ノズルピッチが小さいため、画像の発色強度が比較的劣る結果となった。
実施例8では、プリントヘッドH1を用いているが、用いたインク組成物に対する樹脂固形分の量が少なかったため、洗濯堅牢性が比較的劣る結果となった。実施例9では、用いたインク組成物に対する樹脂固形分の量が多かったため間欠性が少し劣り、また、ミストが発生したことによりノズル面を汚す結果となった。実施例10では、樹脂の固形分の総含有量に対する有機溶剤の総含有量の比が小さかったため、インクの乾燥が見られ、比較的間欠性に劣る結果となった。実施例11では、樹脂の固形分の総含有量と有機溶剤の総含有量の合計がインク組成物に対し35質量%より多かったため、洗濯堅牢性が少し劣るとともに、ミストが発生したことによりノズル面を汚す結果となった。
これに対し、連通孔を備えておらず、圧力室からノズル面までの長さの短いヘッドH2を用いた比較例1では、ノズル面からインクの乾燥が進み、間欠性に劣る結果となった。また、樹脂を含まないインクを用いた比較例2は洗濯堅牢性に劣り、有機溶剤を含まないインクを用いた比較例3は、ノズル面からインクの乾燥が進んで間欠性に劣るだけでなく、ミストが多く発生したことによりノズル面を汚す結果となった。
このように、本発明に係るインクジェット捺染方法によれば、本発明の範囲に含まれるヘッドを用いることにより、ノズル面からインクの乾燥を防ぎ、吐出信頼性の確保しつつ、インクの布帛への密着性(洗濯堅牢性)を向上させることができ、更に、画像の発色強度を確保しつつ、吐出の際のミストの発生を抑え、インクの滲みの発生も防止できることが明らかとなった。また、本発明の範囲に含まれるヘッドを用い、更に、インクの組成を調整することにより、各効果が更に向上することが明らかとなった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…ノズルプレート、12…ノズル孔、13…ノズル面、20…圧力室、30…振動板、32…圧電素子、34…圧電アクチュエーター、40…インク供給室、100…プリントヘッド、110…連通板、120…圧力室基板、126…供給口、127…連通孔、128…吐出口、130…筐体、132…接続部、140…コンプライアンスシート、150…カバー、200…プリンター、230…ヘッドユニット、231…インクカートリッジ、232…キャリッジ、235…主走査機構、236…プラテンローラー、238…タイミングベルト、240…ガイド軸

Claims (11)

  1. インク組成物を吐出するノズルと、前記インク組成物に圧力を付与して前記ノズルから吐出させる圧力室と、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続部と、を備え、前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が500μm以上であるプリントヘッドを用いて、前記インク組成物を布帛に付着させるインク付着工程を備え、
    前記インク組成物は、樹脂と有機溶剤とを含
    前記インク組成物は、前記樹脂を固形分として前記インク組成物に対し3質量%以上13質量%以下含み、前記樹脂の固形分の総含有量に対する前記有機溶剤の総含有量の比が0.7以上であり、前記樹脂の固形分の総含有量と前記有機溶剤の総含有量の合計が前記インク組成物に対し20質量%以上35質量%以下である、
    インクジェット捺染方法。
  2. 請求項1に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記インク付着工程における前記インク組成物の吐出の1インク滴当たりの最大の質量が30ng以下である、インクジェット捺染方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記プリントヘッドは、前記圧力室1つ当たりの前記圧力室および前記接続部の容積の合計が4200pl以上6200pl以下である、インクジェット捺染方法。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記圧力室1つ当たりの圧力室の容積が3700pl以下である、インクジェット捺染方法。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記プリントヘッドが、前記接続部の一部を構成する連通孔が設けられた連通板を備える、インクジェット捺染方法。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    更に、前記インク組成物の成分を凝集または増粘させる凝集剤を含む反応液を前記布帛に付着させる反応液付着工程を備える、インクジェット捺染方法。
  7. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記インク組成物が、非白色顔料を含む非白色インク組成物である、インクジェット捺染方法。
  8. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記プリントヘッドは前記インク組成物を吐出する複数のノズルを列状に備え、列方向におけるノズル密度が200dpi以上である、インクジェット捺染方法。
  9. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記布帛への最大のインク付着量が40mg/inch以下である、インクジェット捺染方法。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法において、
    前記圧力室の圧力室からノズル側へインクが流出する部分から前記ノズルまでの接続部の距離が900μm以上1500μm以下であるプリントヘッドを用いる、インクジェット捺染方法。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法で捺染を行う、インクジェット捺染装置。
JP2015157910A 2015-04-23 2015-08-10 インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置 Active JP6610074B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US15/133,380 US10105965B2 (en) 2015-04-23 2016-04-20 Ink jet printing method and ink jet printing apparatus
CN201610256747.2A CN106065533B (zh) 2015-04-23 2016-04-22 喷墨印染方法及喷墨印染装置
US16/133,926 US10525733B2 (en) 2015-04-23 2018-09-18 Ink jet printing method and ink jet printing apparatus

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015088120 2015-04-23
JP2015088120 2015-04-23

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016204809A JP2016204809A (ja) 2016-12-08
JP6610074B2 true JP6610074B2 (ja) 2019-11-27

Family

ID=57489000

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015157910A Active JP6610074B2 (ja) 2015-04-23 2015-08-10 インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6610074B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6651731B2 (ja) * 2015-04-23 2020-02-19 セイコーエプソン株式会社 インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置
US10105965B2 (en) 2015-04-23 2018-10-23 Seiko Epson Corporation Ink jet printing method and ink jet printing apparatus
JP7206293B2 (ja) * 2018-10-31 2023-01-17 理想科学工業株式会社 インクジェット用水性インク、印刷物の製造方法、及びインクセット
JP7314675B2 (ja) * 2019-07-19 2023-07-26 セイコーエプソン株式会社 記録方法および記録装置

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5232640B2 (ja) * 2006-03-29 2013-07-10 京セラ株式会社 液体吐出装置
JP2009233941A (ja) * 2008-03-26 2009-10-15 Kyocera Corp 液体吐出ヘッド
JP5454016B2 (ja) * 2009-08-31 2014-03-26 コニカミノルタ株式会社 インクジェットヘッド
JP5700989B2 (ja) * 2009-09-28 2015-04-15 キヤノン株式会社 液体吐出ヘッドの駆動方法および液体吐出装置
JP2013141787A (ja) * 2012-01-11 2013-07-22 Seiko Epson Corp 転写媒体及びその製造方法、並びに転写物
JP5930382B2 (ja) * 2012-03-22 2016-06-08 セイコーエプソン株式会社 インク組成物と洗浄液の組み合わせ
JP6048211B2 (ja) * 2013-02-27 2016-12-21 セイコーエプソン株式会社 顔料捺染インクジェット記録方法
JP6171548B2 (ja) * 2013-05-14 2017-08-02 セイコーエプソン株式会社 インクジェット記録装置、およびインクジェット記録方法
JP2015033799A (ja) * 2013-08-09 2015-02-19 セイコーエプソン株式会社 液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置
JP2015071771A (ja) * 2014-11-12 2015-04-16 セイコーエプソン株式会社 インク組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016204809A (ja) 2016-12-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10525733B2 (en) Ink jet printing method and ink jet printing apparatus
JP6825221B2 (ja) 画像形成方法
JP5435194B2 (ja) インクジェット記録方式の印刷方法および水性インク組成物
JP7140233B2 (ja) インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
JP6102289B2 (ja) インクジェット捺染用のインク、インクジェット捺染方法およびインクジェット捺染装置
JP2010090271A (ja) インクジェット記録方式の印刷方法
JP2010090270A (ja) インクジェット記録方式の印刷方法
JP6776770B2 (ja) インクジェット記録方法、インクジェット記録装置の制御方法
JP2012206488A (ja) インクジェット記録方法
JP2018134801A (ja) インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置の制御方法
JP6610074B2 (ja) インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置
JP2017132946A (ja) 捺染インクジェットインクセット及びインクジェット捺染記録方法
JP2010089370A (ja) インクジェット記録方式の印刷方法
JP2020200372A (ja) インクジェット記録用インク組成物、及びインクジェット記録方法
JP2017186472A (ja) 水系インクジェットインク組成物及びインクジェット方法
JP6651731B2 (ja) インクジェット捺染方法及びインクジェット捺染装置
US10647865B2 (en) Ink composition
JP2018001467A (ja) インクジェット記録方法、インクジェット記録装置の制御方法
JP6102290B2 (ja) インクジェット記録用のインク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法
JP2018165313A (ja) インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置の制御方法
JP5811323B2 (ja) インクジェット記録装置およびインク組成物
EP3375830B1 (en) Ink composition
JP2017025239A (ja) 白色非水系インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法
JP2019155851A (ja) インクジェット記録方法およびインクセット
JP2016040088A (ja) インクジェット記録装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180625

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190610

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190618

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190815

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191001

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191014

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6610074

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150