JP6606869B2 - 燃料電池用膜電極接合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用膜電極接合体の製造方法に関する。
近年、エネルギー、環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。固体高分子形燃料電池の構成は、一般的には、電解質膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を、セパレータで挟持した構造となっている。電解質膜−電極接合体は、高分子電解質膜が一対の電極触媒層およびガス拡散性の電極(ガス拡散層;Gas Diffusion Layer:GDL)により挟持されてなるものである。
上記したような電解質膜−電極接合体を有する固体高分子形燃料電池では、固体高分子電解質膜を挟持する両電極(カソードおよびアノード)において、その極性に応じて以下に記す反応式で示される電極反応を進行させ、電気エネルギーを得ている。まず、アノード(負極)側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒金属により酸化され、プロトンおよび電子となる(2H→4H+4e:反応1)。次に、生成したプロトンは、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している固体高分子電解質膜を通り、カソード(正極)側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成しているカーボン担体、さらに電極触媒層の固体高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する(O+4H+4e→2HO:反応2)。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
ここで、電気化学的反応効率(ゆえにMEAの性能)を促進するという観点から、MEAに反応ガスが速やかに供給される(すなわち、触媒層のガス輸送抵抗が低い)ことが好ましい。たとえば、非特許文献1では、MEAのPt触媒層への(Pt表面積の単位当たりの)ガス輸送抵抗を評価する方法が報告されている。
Hiroshi IDEN, Satoshi TAKAICHI, Yoshihisa FURUYA, Tetsuya MASHIO, Yoshitaka ONO, and Atsushi OHMA, "Relationship between gas transport resistance in the catalyst layer and effective surface are of the catalyst", Journal of Electrochemical Chemistry, 694 (2013), 37-44
ところで、燃料電池の実用化が急ピッチで進められている現在、高性能の燃料電池を大量生産することが求められている。上述したように、性能面では、触媒層のガス輸送抵抗が低いことが電気化学的反応効率(ゆえにMEAの性能)の点で好ましい。しかしながら、ガス輸送抵抗の評価方法はさまざま知られていたが、ガス輸送抵抗とMEAの性能との具体的な関係が明らかではなかった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、触媒層のガス輸送抵抗とMEAの性能との具体的な関係に基づいて、燃料電池のスタックを組む前に高性能のMEAを選択する手段を提供することである。
本発明者は、上記課題について鋭意検討を行った結果、触媒層のガス輸送抵抗とMEAの性能との間の具体的な関係を知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、電解質膜の両面に、それぞれ、カソード触媒層およびカソードガス拡散層ならびにアノード触媒層およびアノードガス拡散層を形成して、燃料電池用膜電極接合体を製造する工程を含む。そしてカソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定し、所定値以下のガス輸送抵抗を示す触媒層を有する膜電極接合体を選別することを有し、前記カソード触媒層および前記アノード触媒層の少なくとも一方における、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗と、を分離し、((前記アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗)/(前記アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗))の値が所定値以下である触媒層を有する膜電極接合体を選別することを有する。
本発明の燃料電池用膜電極接合体の製造方法によれば、触媒層のガス輸送抵抗に基づいて高性能のMEAを選択できるため、高性能の燃料電池を効率よく製造できる。また、燃料電池に触媒層が組み込まれている場合であっても、事後的に触媒層のガス輸送抵抗を測定することによって、燃料電池の性能を簡便な手法により予測することができる。
固体高分子形燃料電池の基本構成を示す概略断面図である。 実施形態の燃料電池用膜電極接合体の製造方法の手順を示す流れ図である。 触媒の構造を説明するための模式図である。 実施形態に係る触媒層のガス輸送抵抗の測定に使用されるMEAを含む実験セットアップシステムの概略図である。 実施形態1におけるMEAのガス輸送に関する等価回路モデルおよび各成分の流れの概略図である。 実施形態2における膜電極接合体(MEA)のガス輸送に関する等価回路モデルおよび各成分の流れの概略図である。 実施形態2におけるアイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗とを分離する方法の手順を示す流れ図である。 カソード側への不活性ガス流の有無による電流密度の測定結果を示すグラフである。 COの部分的酸化後、カソード側への不活性ガス流の有無による電流密度の測定結果を示すグラフである。 ガス輸送抵抗の測定結果を示したグラフである。 ORR活性の測定結果を示したグラフである。 アイオノマーと接触していないPtへのガス輸送抵抗と、アイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗の比の値を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[実施形態1]
本発明の実施形態1における燃料電池用膜電極接合体の製造方法を説明する。実施形態1の燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、電解質膜の両面に、それぞれ、カソード触媒層およびカソードガス拡散層ならびにアノード触媒層およびアノードガス拡散層を形成して、燃料電池用膜電極接合体を製造することを有する。本発明の実施形態1では、カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定し、所定値以下のガス輸送抵抗を示す触媒層を有する膜電極接合体を選別することを特徴とする。なお、上記「膜電極接合体」は、「電解質膜−電極接合体」または単に「MEA」とも称される。
まず、固体高分子形燃料電池の構成について説明する。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特に断りのない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
図1は、燃料電池の一具体例である固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC 1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で膜電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC 1において、MEA 10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図1において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA 10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC 1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図1ではこれらを省略する。
セパレータ(5a、5c)は、たとえば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA 10と接触している。これにより、MEA 10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC 1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(たとえば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(たとえば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC 1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(たとえば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図1に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度、高出力化が可能であるから、高分子電解質形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられることが特に好ましい。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。たとえば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
また、燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。上記の膜電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。
以下、本発明による実施形態の燃料電池用膜電極接合体の製造方法について説明する。
図2は、燃料電池用膜電極接合体の製造方法の手順を示す流れ図である。
まず、触媒インクを作製する(S11)。触媒インクの作製は公知の方法であり、特に限定されるものではない。
続いて、出来上がった触媒インクの一部を用いて、試験用セルの組み立てを行う。これには、S11によって作製した触媒インクの一部を取り出し、電解質膜への塗布(転写)し(S12)、ガス拡散層(GDL)を接合して(S13)、単セルを組み立てる(S14)。ここでは、電解質膜の一方の面に、カソード触媒層およびカソードガス拡散層、他方の面にアノード触媒層およびアノードガス拡散層を形成して、燃料電池用膜電極接合体(MEA)を製造する(これを工程(1)とする)。
組み立てた単セルを用いてガス輸送抵抗を測定する(S15)。ここではカソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定するものである。このガス輸送抵抗の測定方法の詳細については後述する。
続いて、ガス輸送抵抗の値に基づいた選別を行う(S16)。この選別は、測定したガス輸送抵抗の値が所定値以下を示す触媒層を有する膜電極接合体を選別するものである。ガス輸送抵抗を測定とその結果による選別を工程(2)とする。
その後選別によって良品(OK)となった触媒インクを用いて燃料電池用膜電極接合体を製造する(S17)。一方、選別によって不良(NG)となった場合は、その触媒インクを用いても所望する性能が得られないので、その触媒インクは廃棄する(Ptをはじめとした原材料の一部(または全部)は回収して再利用する)ことになる(S18)。
なお、本実施形態1においては、触媒インク作製後、試験用のセルを組み立てるのではなく、実際に製品としてスタックに組み上げるセルを組み立てて、それを用いてガス輸送抵抗を測定してもよい。この場合、選別によって良品であれば、その良品を用いて燃料電池のスタックを製造することができる。
(工程(1))
本工程(1)では、電解質膜の両面に、それぞれ、カソード触媒層およびカソードガス拡散層ならびにアノード触媒層およびアノードガス拡散層を形成して、燃料電池用膜電極接合体を製造する。ここで、膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。たとえば、電解質膜の両面にカソード触媒インクおよびアノード触媒インクを塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法がある。またたとえば、電解質膜の両面にカソード触媒層およびアノード触媒層をホットプレスで転写し、ガス拡散層を接合する方法がある。またたとえば、ガス拡散層のマイクロポーラス層側(マイクロポーラス層を含まない場合には、基材層)の片面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法がある。また、触媒インクの塗布、ホットプレスによる接合条件などは、電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パーフルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
以下では、電解質膜の両面にカソード触媒インクおよびアノード触媒インクを塗布し、これを乾燥したもの(CCM)に、ガス拡散層を接合する方法の好ましい形態を説明する。なお、本発明は、下記形態に限定されない。
電解質膜(高分子電解質膜)は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、たとえば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。これらの炭化水素系高分子電解質膜は、原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の利点がある。
なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
電解質膜の厚さは、通常は5〜100μm(実施例:25μm)程度である。
上記電解質膜にカソードおよびアノード触媒層を形成する。ここで、触媒層は、触媒および電解質を含む。
触媒層の形成方法は特に限定されないが、好適には、電極触媒、高分子電解質および溶剤からなる触媒インクを、高分子電解質膜またはガス拡散層表面に塗布することによって、触媒層を形成する方法が挙げられる。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できる。
電極触媒(触媒)は、触媒金属が触媒担体に担持されてなる。ここで、電極触媒を構成する触媒金属は、電気的化学反応の触媒作用をする機能を有する。触媒金属は、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。すなわち、触媒金属は、白金であるまたは白金と白金以外の金属成分を含むことが好ましい。このため、触媒は、白金であるまたは白金および白金以外の金属成分を含む触媒金属が触媒担体に担持されてなることが好ましい。
白金以外の金属成分としては、特に制限はなく公知の触媒金属が同様にして使用でき、具体的には、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、銅、銀、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、亜鉛等の金属などが挙げられる。白金以外の金属成分は1種であっても2種以上であってもよい。なかでも、触媒性能の観点からは、遷移金属であることが好ましい。ここで、遷移金属原子とは、第3族元素から第12族元素を指し、遷移金属原子の種類もまた、特に制限されない。触媒活性の観点から、遷移金属原子は、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛およびジルコニウムからなる群より選択されることが好ましい。
前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、いずれであってもよい。
触媒金属の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒金属と同様の形状および大きさが採用されうる。形状としては、たとえば、粒状、鱗片状、層状などのものが使用できるが、好ましくは粒状(触媒粒子という)である。この際、触媒粒子の平均粒径は、好ましくは1〜30nm、より好ましくは2〜10nm(後述の実施例:カソード=3.5nm、アノード=2.5nm)である。触媒粒子の平均粒径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒金属の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)より調べられる触媒金属の粒子径の平均値として測定されうる。
触媒担体は、上述した触媒金属を担持するための担体、および触媒金属と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。触媒担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
触媒担体のBET比表面積は、触媒金属を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよい。触媒金属担持前の触媒担体前駆体のBET比表面積が700m−1以上であることが好ましく、800m−1以上であることがより好ましく、1200m−1以上であることがさらに好ましく、1300m−1以上(実施例:1753m−1、1346m−1)であることが特に好ましい。比表面積が上記したような範囲であれば、触媒担体への触媒金属および高分子電解質が十分分散して十分な発電性能が得られ、また、触媒金属および高分子電解質を十分有効利用できると共に、ガス輸送抵抗を低く制御しやすい。触媒担体前駆体成分のBET比表面積の上限は、3000m−1以下であることが好ましく、2500m−1以下であることがより好ましい。
上記したような高い比表面積を有する触媒担体前駆体の製造方法としては、特開2010−208887号公報、国際公開第2009/075264号などに記載される方法が好ましく使用される。
なお、本明細書において、「BET比表面積(m−1)」は、窒素吸着法により測定される。詳細には、サンプル(炭素粉末、触媒粉末)約0.04〜0.07gを精秤し、試料管に封入する。この試料管を真空乾燥器で90℃×数時間予備乾燥し、測定用サンプルとする。秤量には、株式会社島津製作所製電子天秤(AW220)を用いる。なお、塗布シートの場合には、これの全重量から、同面積のテフロン(登録商標)(基材)重量を差し引いた塗布層の正味の重量約0.03〜0.04gを試料重量として用いる。次に、下記測定条件にて、BET比表面積を測定する。吸着、脱着等温線の吸着側において、相対圧(P/P0)約0.00〜0.45の範囲から、BETプロットを作成することで、その傾きと切片からBET比表面積を算出する。
<測定条件>
・測定装置:日本ベル株式会社製高精度全自動ガス吸着装置 BELSORP36、
・吸着ガス:N
・死容量測定ガス:He、
・吸着温度:77K(液体窒素温度)、
・測定前処理:90℃真空乾燥数時間(Heパージ後測定ステージにセット)、
・測定モード:等温での吸着過程および脱着過程、
・測定相対圧P/P:約0〜0.99、
・平衡設定時間:1相対圧につき180sec。
また、触媒担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒径(直径)が5〜200nm、好ましくは10〜100nm(実施例:カソード=100nm、アノード=30〜60nm)程度とするのがよい。
触媒担体に触媒金属が担持された電極触媒において、触媒金属の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%(実施例:30重量%)とするのがよい。触媒金属の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒金属の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒担持率」は、触媒金属を担持する前の担体と、触媒金属を担持させた後の触媒の重量を測定することにより求められる値である。
触媒の製造方法(触媒担体前駆体への金属触媒の担持方法)は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、液相還元法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
液相還元法による触媒の製造方法としては、触媒担体前駆体の表面に触媒金属を析出させた後、熱処理を行う方法などが挙げられる。具体的には、たとえば、触媒金属の前駆体溶液に、触媒担体を浸漬して還元した後、熱処理を行う方法などが挙げられる。
ここで、触媒金属の前駆体としては、特に制限されず、使用される触媒金属の種類によって適宜選択される。具体的には、上記白金等の触媒金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩およびアミン化合物などが例示できる。より具体的には、塩化白金(ヘキサクロロ白金酸六水和物)、塩化パラジウム、塩化ロジウム、塩化ルテニウム、塩化コバルトなどの塩化物、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、硝酸イリジウムなどの硝酸塩、硫酸パラジウム、硫酸ロジウムなどの硫酸塩、酢酸ロジウムなどの酢酸塩、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミンパラジウムなどのアンミン化合物などが好ましく、例示される。また、触媒金属の前駆体溶液の調製に使用される溶媒は、触媒金属の前駆体を溶解できるものであれば特に制限されず、使用される触媒金属の前駆体の種類によって適宜選択される。具体的には、水、酸、アルカリ、有機溶媒などが挙げられる。触媒金属の前駆体溶液中の触媒金属の前駆体の濃度は、特に制限されないが、金属換算で0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%(実施例:4.6重量%)である。
還元剤としては、水素、ヒドラジン、ホウ素化水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、メタノール、エタノール、エチレン、一酸化炭素等が挙げられる。なお、水素などの常温でガス状の物質は、バブリングで供給することもできる。還元剤の量は、上記触媒金属の前駆体を触媒金属に還元できる量であれば特に制限されず、公知の量を同様にして適用できる。
析出条件は、触媒金属が触媒担体に析出できる条件であれば特に制限されない。たとえば、析出温度は、溶媒の沸点付近の温度、より好ましくは室温〜100℃(実施例:沸点)であることが好ましい。また、析出時間は、1〜10時間、より好ましくは2〜8時間(実施例:7時間)であることが好ましい。なお、上記析出工程は、必要であれば、撹拌、混合しながら行ってもよい。これにより、触媒金属の前駆体が触媒金属に還元されて、触媒金属が触媒担体に析出(担持)する。
熱処理条件としては、たとえば、熱処理温度は、300〜1200℃、より好ましくは500〜1150℃、特に好ましくは700〜1000℃(実施例:900℃)であることが好ましい。また、熱処理時間は、0.02〜3時間、より好ましくは0.1〜2時間、特に好ましくは0.2〜1.5時間(実施例:1時間)であることが好ましい。なお、触媒金属前駆体の還元促進効果を考慮すると、熱処理工程は、水素ガスを含む雰囲気下、より好ましくは水素雰囲気で行われることが好ましい。
触媒インクは、上記触媒(電極触媒)に加えて、イオン伝導性の高分子電解質を含む。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。なお、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質の具体的な説明は上記固体高分子電解質膜における説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。これらのうち、高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましい。特に、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
触媒層中の高分子電解質重量(アイオノマー)の含有量は特に限定されるものではないが、電極触媒中の触媒担体に対する高分子電解質の重量の比が0.3〜1.2(実施例:0.9)であることが好ましい。
触媒インクは、上記触媒(電極触媒)、高分子電解質および溶剤に加えて、必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されてもよい。また、触媒インクの調製方法も特に制限されない。たとえば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱、攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め上記他の溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(たとえば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、塗布基材、たとえば高分子電解質膜上に塗布して、各触媒層が形成される。この際、塗布基材上への触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。たとえば、触媒インクを塗布基材上に、乾燥後の厚みが所望の厚みになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布、乾燥工程を繰り返す。
触媒インクの塗布量は特に制限されない。しかし、上述したように、燃料電池の普及を鑑みると、コスト低減のためには、触媒金属としての白金の使用量を低減することが好ましい。上記観点から、触媒層面積当たりの白金の含有量(目付量)(mgcm−2)は、0.15mgcm−2以下(実施例:0.15mgcm−2)であることが好ましい。なお、下限値は発電性能が得られる限り特に制限されず、たとえば、0.01mgcm−2以上である。本明細書において、「触媒層面積当たりの白金の含有量(mgcm−2)」の測定(確認)には、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)を用いる。所望の「触媒層面積当たりの白金の含有量」にせしめる方法も当業者であれば容易に行うことができ、スラリーの組成(触媒濃度)と塗布量を制御することで量を調整することができる。
触媒層(乾燥後)の厚みは、特に制限されないが、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm(実施例:約6μm)である。
次いで、上記にて作製したCCMの両面にガス拡散層を形成して、膜電極接合体(MEA)を作製する。ガス拡散層の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。たとえば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、マイクロポーラス層(MPL層)をガス拡散層基材の触媒層側に有するものであってもよい。マイクロポーラス層は微細孔を多数有する微多孔層を指し、通常カーボン粒子の集合体である。
マイクロポーラス層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られると共に、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
マイクロポーラス層は撥水剤を含んでいることが好ましい。マイクロポーラス層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
マイクロポーラス層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、重量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
ここで触媒の構造を説明する。図3は、触媒の構造を説明するための模式図である。
ここでは図3に示されるように、触媒20は、触媒金属22および担体23からなる。触媒20の担体23は、一次空孔(メソ孔24)を有する触媒を例に説明する。メソ孔24は半径1nm以上の空孔である。また、1nm未満の空孔であるミクロ孔25も存在する。
触媒金属22は、少なくとも一部がメソ孔24の内部に担持されていればよく、一部が担体23表面にされていてもよい。
触媒はアイオノマー(固体プロトン伝導材)26と接触している。アイオノマー26は、担体23のメソ孔24内には侵入しない。このため、担体23表面の触媒金属22はアイオノマー26と接触するが、メソ孔24内部に担持された触媒金属22はアイオノマー26と非接触状態である。メソ孔24内の触媒金属が、アイオノマーと非接触状態で酸素ガスと水との三相界面を形成することにより、触媒金属の反応活性面積を確保できる。
本実施形態に係る触媒層における触媒は、触媒金属がアイオノマーと接触しない場合であっても、水(液体プロトン伝導材)により三相界面を形成することによって、触媒を有効に利用できる。このため、触媒金属をアイオノマーが進入できない空孔(メソ孔)内部に担持する構成をとることによって、触媒活性を向上できる。
一方、触媒金属をアイオノマーが進入できない空孔(メソ孔)内部に担持する場合には、触媒金属と、担体の空孔内壁面との距離が比較的大きく、触媒金属表面に吸着する水の量が多くなる。水は触媒金属に酸化剤として作用し金属酸化物を生成させるため、触媒金属の活性を低下させ、触媒性能が低下してしまう。これに対して、空孔のモード半径を触媒金属の平均粒半径以下とすることにより、触媒金属と担体の空孔内壁面との距離が縮まり、水が存在しうる空間が減少する、すなわち触媒金属表面に吸着する水の量が減る。また、水が空孔内壁面の相互作用を受けることにより、金属酸化物の形成反応が遅くなり、金属酸化物が形成されにくくなる。その結果、触媒金属表面の失活が抑制される。ゆえに、高い触媒活性を発揮できる、すなわち、触媒反応を促進できる。このため、このような触媒を用いた触媒層を有する膜電極接合体および燃料電池は、発電性能に優れる。
本実施形態に係る触媒は、カソード触媒層またはアノード触媒層のいずれに存在していてもよいが、カソード触媒層で使用されることが好ましい。上述したように、本実施形態に係る触媒は、触媒金属がアイオノマーと接触しなくても、水との三相界面を形成することによって、触媒を有効に利用できるが、カソード触媒層では水が形成するからである。
アイオノマーは、燃料極側の触媒活物質周辺で発生したプロトンを伝達する役割を果たすことから、プロトン伝導性高分子とも呼ばれる。
アイオノマーは、特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。アイオノマーは、イオン伝導性の高分子電解質であることが好ましい。アイオノマーは、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。
フッ素系高分子電解質を構成するイオン交換樹脂としては、たとえば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性、耐久性、機械強度に優れるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
プロトンの伝達を担うアイオノマーにおいては、プロトンの伝導度が重要となる。ここで、アイオノマーのEW(Equivalent Weight)が大きすぎる場合には触媒層全体でのイオン伝導性が低下する。したがって、本形態の触媒層は、EWの小さいアイオノマーを含むことが好ましい。具体的には、本形態の触媒層は、好ましくはEWが1500g/eq.以下のアイオノマーを含み、より好ましくは1200g/eq.以下のアイオノマーを含み、特に好ましくは1000g/eq.以下のアイオノマーを含む。
一方、EWが小さすぎる場合には、親水性が高すぎて、水の円滑な移動が困難となる。かような観点から、アイオノマーのEWは600g/eq.以上であることが好ましい。なお、EWは、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥重量であり、「g/eq.」の単位で表される。
また、触媒層は、EWが異なる2種類以上のアイオノマーを発電面内に含み、この際、アイオノマーのうち最もEWが低いアイオノマーが流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いることが好ましい。このような材料配置を採用することにより、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能の向上を図ることができる。流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いるアイオノマー、すなわちEWが最も低いアイオノマーのEWとしては、900g/eq.以下であることが望ましい。これにより、上述の効果がより確実、顕著なものとなる。
さらに、EWが最も低いアイオノマーを冷却水の入口と出口の平均温度よりも高い領域に用いることが望ましい。これによって、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能のさらなる向上を図ることができる。
さらには、燃料電池システムの抵抗値を小さくするとする観点から、EWが最も低いアイオノマーは、流路長に対して燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方のガス供給口から3/5以内の範囲の領域に用いることが望ましい。
本実施形態の触媒層は、触媒金属とアイオノマーとの間に、触媒金属とアイオノマーとをプロトン伝導可能な状態に連結しうる液体プロトン伝導材を含んでいる。液体プロトン伝導材が導入されることによって、触媒金属とアイオノマーとの間に、液体プロトン伝導材を介したプロトン輸送経路が確保され、発電に必要なプロトンを効率的に触媒金属の表面へ輸送することが可能となる。これにより、触媒金属の利用効率が向上するため、発電性能を維持しながら触媒の使用量を低減することが可能となる。この液体プロトン伝導材は触媒金属とアイオノマーとの間に介在していればよく、触媒層内の多孔質担体間の空孔(二次空孔)や多孔質担体内の空孔(ミクロ孔またはメソ孔:一次空孔)内に配置されうる。
液体プロトン伝導材としては、イオン伝導性を有し、触媒とアイオノマーとの間のプロトン輸送経路を形成する機能を発揮しうる限り、特に限定されることはない。具体的には水、プロトン性イオン液体、過塩素酸水溶液、硝酸水溶液、ギ酸水溶液、酢酸水溶液などを挙げることができる。
液体プロトン伝導材として水を使用する場合には、発電を開始する前に少量の液水か加湿ガスにより触媒層を湿らせることによって、触媒層内に液体プロトン伝導材としての水を導入することができる。また、燃料電池の作動時における電気化学反応によって生じた生成水を液体プロトン伝導材として利用することもできる。したがって、燃料電池の運転開始の状態においては、必ずしも液体プロトン伝導材が保持されている必要はない。たとえば、触媒とアイオノマーとの表面距離を、水分子を構成する酸素イオン径である0.28nm以上とすることが望ましい。このような距離を保持することによって、触媒とアイオノマーとの非接触状態を保持しながら、触媒とアイオノマーの間(液体伝導材保持部)に水(液体プロトン伝導材)を介入させることができ、両者間の水によるプロトン輸送経路(プロトンパスともいう)が確保されることになる。
イオン性液体など、水以外のものを液体プロトン伝導材として使用する場合には、触媒インク作製時に、イオン性液体とアイオノマーと触媒とを溶液中に分散させることが望ましいが、触媒を触媒層基材に塗布する際にイオン性液体を添加してもよい。
(工程(2))
本工程(2)では、上記工程(1)において作製した膜電極接合体(MEA)において、カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定する。そして、この触媒層のガス輸送抵抗が所定値以下である触媒層を有する膜電極接合体を選別する。
ここで、ガス輸送抵抗とは、触媒層における反応ガス(たとえば、水素ガス、酸素ガス)の拡散困難性を示すパラメータである。
本工程によると、反応ガス(たとえば、水素ガス、酸素ガス)の量が従来の方法に比して非常に少なく制御できる。たとえば、従来は水素ガスで0.3Acm−2未満および酸素ガスで0.2Acm−2未満に相当する濃度まで希釈しなくてはならないのに対して、クロスオーバーでは、水素ガスで1.6mAcm−2未満および酸素ガスで1.8mAcm−2未満である。このように、限界電流密度が小さいので、低プロトン導電条件に適用できるという利点がある。また、ガス流れの方向が対極側からのガスのクロスオーバーに重要でないため、ガス流れ方向の濃度分布が無視できるという利点もある。
触媒層のガス輸送抵抗は、具体的には、Hiroshi IDEN, Satoshi TAKAICHI, Yoshihisa FURUYA, Tetsuya MASHIO, Yoshitaka ONO, and Atsushi OHMA, "Relationship between gas transport resistance in the catalyst layer and effective surface are of the catalyst", Journal of Electroanalytical Chemistry, 694 (2013), 37-44に記載の方法に従って、ガスクロスリーク速度に基づいて測定される。
上記触媒層のガス輸送抵抗の測定の原理を、図4および5を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る触媒層のガス輸送抵抗の測定に使用されるMEAを含む実験セットアップシステムの概略図である。
また、図5は、実施形態1におけるMEAのガス輸送に関する等価回路モデルおよび各成分の流れの概略図である。
詳細には、水素のクロスオーバーは、通常、作用極に不活性ガスを流して電気化学的に測定してきた。厳密にいうと、カソード側は密閉されていないので、この場合には、水素のクロスオーバーは、カソード側のGDLおよびガスチャンネルを通じて系の出口から排出されうる。しかし、一般的に、ガス拡散層(GDL)は触媒層に比して非常に厚い、換言すると、GDLでのガス輸送抵抗(RGDL)は触媒層でガス輸送抵抗(RCL)に比して非常に大きいため、このようなことは起こらないはずである。また、RCLはPt表面積の関数であるため、厚みおよびPt担持量双方がRCLの重要な因子である。Pt担持量が減少すると、RCLが増加することが見出された。したがって、触媒層で検出されるガスのクロスオーバーの量は、同様の膜およびGDLを使用したとしてもPt担持量が減少すると、減少するはずである。
たとえば、図4に示されるように、MEAをセパレータに組み込んで、単セルからなる実験セットアップシステムを作製して、触媒層のガス輸送抵抗を測定する。この実験セットアップシステムは、MEAの一方の側であって、H(またはO)を流す側に対極および参照極(ここでは可逆水素電極(RHE)である。以下同様)、他方の側であってNを流す側に作用極を配置している。各電極の外側にはGDLを配置している。GDLにはガス流路が設けられている。
上記した実験セットアップシステムのMEAの回路モデルおよび各成分の流れの概略図を図5に示す。GDLを通過する流れ(NGDL)、触媒層で消費される流れ(NCL)、触媒層のガス輸送抵抗(RCL)およびGDLのガス輸送抵抗(RGDL)の関係は、下記式(1)のとおりである。
したがって、RGDL、NGDLおよびNCLに基づいて、RCLを得ることが可能である。ここで、NCLは、S.S. Kocha, J.D. Yang, J.S. Yi, AICHE J. 52(5) (2006) 1916に記載される公知の方法によって簡単に測定できる。NGDLは膜を通過する流れ(Ntotal)および上記NCLから得ることが可能である。すなわち、NGDLは、NtotalからNCLを差し引いた値(NGDL=Ntotal−NCL)である。RGDLは、T. Mashio, A. Ohma, S. Yamamoto, and K. Shinohara, ECS Trans., 11(1), 529 (2007).に記載される公知の方法によって測定できる。なお、ガス拡散層がマイクロポーラス層(MPL層、微多孔層または微細多孔層とも呼ばれる)を有さない場合も同様である。
図5において、RCLは、平面方向のガス輸送抵抗から構成される平行回路として表され、これは、触媒層のマクロ孔のガス輸送抵抗(Rmacro)およびPt表面へのガス輸送抵抗、すなわち、アイオノマーを通るガス輸送抵抗(Rmicro)に相当する。RCLは、触媒層領域の100セグメントを有するこのタイプの等価の回路モデルを用いて算出される。RGDLが無限である場合には、全ての反応ガスが触媒層で消費されたことになる。このような条件は、作用極側での入口のバルブおよび出口のバルブを閉めることによって簡単に作ることができる。このようにして、Ntotalは、密閉された作用極側のバルブを用いて対極側から漏れる全ての反応ガスを消費することによって測定される。NCLは、作用極に流れる不活性ガスを用いて測定できる。双方の場合、対極側のバルブは開けられ、一定を維持する。次に、NGDLは、NtotalとNCLとの差から簡単に求められる。
ここで、ガス輸送抵抗は、いずれの種類のガスを使用してもよいが、本発明に係るMEAは燃料電池用であるため、水素ガスまたは酸素ガスを使用することが好ましく、水素ガスを用いることがより好ましい。本明細書において、ガス輸送抵抗は、水素ガスまたは酸素ガスのガス輸送抵抗値に、触媒層の電気化学的表面積(Electrochemical Surface Area:ECA)をかけた値(msm−1−1 Pt)である。
以下、水素ガスおよび酸素ガスのガス輸送抵抗値の測定方法を説明する。
(水素ガス輸送抵抗値(RCLH2)の測定)
水素ガス輸送抵抗値(RCLH2)は、下記表1に示される条件下で電位ステップボルタンメトリー(Potential Step Voltammetry)によって測定される。この測定では、図4に示されるように、純粋な水素および窒素ガスを、80℃で、対極および参照極にならびに作用極にそれぞれ供給する。一定時間後、電位を10分間、カソード側0.95Vvs.RHE(対極および参照極。以下同様)に維持した後、5分間0.9Vに設定する。次に、5分間隔で0.1Vずつ段階的に変化させて0.2Vにする。また、作用極側のバルブを閉じることによって、Ntotalを同様にして測定する。この際、HZ−3000電気化学的測定系(北斗電工、日本)および同じ単セルセットアップを用いて、全ての測定を行う。
この測定で求めているのは、ガスを流通させない場合ではNtotalを、ガス流通させる場合ではNCLをそれぞれ求めている、そしてそれらの比較からNGDLを測定している。またこれらの値と別途測定しておいたRGDLを式(1)に代入することで、RCLを得ている。
(酸素ガス輸送抵抗値(RCLO2)の測定)
酸素ガス輸送抵抗値(RCLO2)は、水素のガス輸送抵抗の測定と同じ条件で測定できる。しかしながら、純粋な酸素を対極に供給すると、参照極として作動しないため、電位ステップボルタンメトリーは酸素では適切でない。このため、RCLO2測定では、直線スイープボルタンメトリー(Linear Sweep Voltammetry)(LSV)を代わりに使用する。まず、純粋な酸素および窒素ガスを、たとえば80℃で、対極および作用極にそれぞれ供給する。次に、一定時間後、電池の電圧(対極:ネガティブ;作用極:ポジティブ)を、1mVs−1のスキャン速度で−0.2V〜−1.8Vまでスキャンする。その後、作用極側のバルブを閉じることによって同様のLSV測定を行う。ここで、水素が発生しすぎることによる差圧からMEAを保護するために、カットオフ電流密度を5.0mAcm−1に設定する。
上記水素または酸素ガス輸送抵抗値の測定方法において、作用極は、アノード触媒層であってもまたはカソード触媒層であってもよい。カソード触媒層が電気化学反応により寄与するため、作用極はカソード側であり、カソード側の触媒層のガス輸送抵抗を測定することが好ましい。すなわち、測定は、水素ガスのガスクロスリーク速度に基づいて行われることが好ましい。
次に、上記のようにして測定された水素または酸素ガス輸送抵抗値に、触媒層の電気化学的表面積(ECA)をかけて、水素または酸素ガス輸送抵抗(msm−1−1 Pt)を、それぞれ、求める。ここで、ECAは下記方法に従ってサイクリックボルタンメトリーによって測定される。なお、ECAは、白金単位表面積を示すものである。このため、ECAは、触媒金属が白金と白金以外の金属成分を含む場合であっても、当該触媒金属中に含まれる白金重量に対する単位表面積を意味する。
(触媒層の電気化学的表面積(ECA)の測定方法)
ECAの測定は、COストリップボルタンメトリーにより行う。これには、まず、アノード側にH、カソード側に1%COを含むN(1%COバランス窒素ガス)を供給して触媒金属にCOを吸着させる。このときの相対湿度および温度は任意であるが、実施例では相対湿度90%、温度30℃で行っている。
その後COストリップボルタンメトリーとして、カソード電位を0.02〜0.95Vvs.RHE、5mVs−1の走査速度で、電位走査を5回行った。これによりCOを酸化した。このCO酸化に起因している電気量QCOを、ボルタモグラムの違いから計算する。そして、触媒層の電気化学的表面積(ECA)は、上記のようにして測定したQCOを420μCcm−2 PtのPt表面積転換率を使って算出する。
算出された触媒層のガス輸送抵抗が所定値以下である触媒層を選択して、膜電極接合体(MEA)の製造に使用する。これにより、燃料電池としてスタックを組む前に、高性能のMEAを選択できうる。このため、高性能の膜電極接合体を製造できる。ここで、ガス輸送抵抗は、MEAの所望の性能を発揮、維持できることなどを考えると、白金であるまたは白金および白金以外の金属成分を含む触媒金属が触媒担体に担持されてなる触媒を使用する場合に、触媒層の30℃における水素ガスのガス輸送抵抗が1.5msm−1−1 Pt以下(実施例:0.234msm−1−1 Pt、0.962msm−1−1 Pt、比較例:1.63msm−1−1 Pt)であることが好ましい。すなわち、触媒層は、白金であるまたは白金と白金以外の金属成分を含む触媒金属が触媒担体に担持されてなる触媒を含み、選別が、触媒層の30℃における水素ガスのガス輸送抵抗が1.5msm−1−1 Pt以下である触媒層を選別することが好ましい。
上記選別(判定)工程は、インラインで全個体について行ってもよいし、抜き取りで測定してもよい。また、燃料電池として組み立てられた後に触媒層を取り出して、上記判定工程を行ってもよい。
[実施形態2]
本発明の実施形態2における燃料電池用膜電極接合体の製造方法を説明する。実施形態2の燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、実施形態1同様に、電解質膜の両面に、それぞれ、カソード触媒層およびカソードガス拡散層ならびにアノード触媒層およびアノードガス拡散層を形成して、燃料電池用膜電極接合体を製造することを有する。また同様に、カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定する。本実施形態2では、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗と、アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗とを分離するのである。そしてそれらのガス輸送抵抗の比、すなわち、((アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗)/(アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗))の値(商)が所定値以下である触媒層を有する膜電極接合体を選別することを特徴とする。
本実施形態2においても、ガスクロスリーク速度に基づいたガス輸送抵抗の測定を利用する。このガス輸送抵抗の測定原理および測定方法は、実施形態1と同様である。また、担体に触媒金属が担持された触媒、触媒層、MEAなどの構成や製造方法も実施形態1と同じである。したがって、ここではこれらの説明は省略し、本実施形態2に特有の、アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗と、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗を分離する方法について説明する。
図6は、実施形態2における膜電極接合体(MEA)のガス輸送に関する等価回路モデルおよび各成分の流れの概略図である。
図6において、RCLは、平面方向のガス輸送抵抗から構成される平行回路として表すことができる。ここでも実施形態1同様に、触媒層のマクロ孔のガス輸送抵抗(Rmacro)、および触媒金属(たとえばPt)表面へのガス輸送抵抗(Rmicro)を有する。
macroはマクロ孔での拡散係数から計算される。そして、それはマクロ孔のサイズとセグメントの長さ(平面方向に100分割されている)から等価回路モデルを用いて算出される。たとえば、30℃のRmacroは、3.85×10−2sm−1として計算される。
microは、図6の等価回路モデルを解析することで、RCLとRmacroから得られる。Rmicroは、さらに担体の一次空孔(図3中のメソ孔24)内部に担持された触媒金属へのガス輸送抵抗Rmicro,inと、担体の一次空孔の外部に担持された触媒金属へのガス輸送抵抗Rmicro,outに分解される。ここで一次空孔の内部の触媒金属はアイオノマーと接触していない触媒金属であり、一次空孔外部の触媒金属はアイオノマーと接触している触媒金属である。したがって、この等価回路モデルは、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗とを分離して示したものである。
アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗を分離する方法を説明する。この方法は具体的には、Hiroshi IDEN, Tetsuya MASHIO, and Atsushi OHMA, "Gas transport inside and outside carbon supports of catalyst layers for PEM fuel cells", Journal of Electrochemical Chemistry, 708 (2013), 87-94に記載の方法に従って行っている。
以下、当該文献に従ってアイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗とを分離する方法を説明する。
図7は、実施形態2におけるアイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗とを分離する方法の手順を示す流れ図である。なお、以下の説明では触媒金属としては、Ptが用いられているものとして説明する。
測定には、実施形態1同様の(図4参照)、単セルからなる実験セットアップシステムを使用する。
図7に示すように、まず、ガス輸送抵抗をCO処理しないで、かつ相対湿度90%により測定する(S21)。この測定は実施形態1と同じである。
すなわち、ここでは水素ガス輸送抵抗をRCLとして測定する。RCLは、カソードガス流なしで、アノード側から膜を通して漏れた水素の酸化による、制限的な流れから得られる。この測定は、第1に、純粋なHとNを30℃で、対極(および参照極)、ならびに作用極にそれぞれ供給する。そして一定時間後、HとNを流した状態(すなわち不活性ガス(N)流ありの状態)で、段階的に電位を変えるボルタンメトリー(電位ステップボルタンメトリー)を使用して、電位を10分間、作用極0.95Vvs.RHEに維持した後、5分間、作用極0.9Vvs.RHEに設定する。続いて、5分間隔で、作用極電位を0.9Vから0.2Vまで0.1V単位で変化させ、作用極側の電流密度の測定を行った。その後、作用極側の弁を閉じる。
ここではさらに電位ステップボルタンメトリーを使用して、不活性ガス(N)流なしの状態下においても、不活性ガス流ありの場合と同様に作用極側の電流密度の測定を行った。
図8は、カソード側(図4に示したシステムでは作用極側)への不活性ガス流の有無による電流密度の測定結果を示すグラフである。このグラフのプロットは最後の20秒(または、データが変動する際の停滞領域の20秒)のデータを平均することによって得られた。図8の2本のカーブを比較すると、電位に関係なく、不活性ガス流のない方が不活性ガス流のある方より、電流密度が常に高いことを示している。不活性ガス流なしで得られた電流密度は、水素クロスオーバー電流とみなされうる。なぜなら、水素はシステムから漏れず、水素は全て作用極側に消費されるからである。
続いて、乾燥Hおよび乾燥Nをシステム内に供給して、MEAの水分を除去する(S22)。
続いて、COをカソード側(図4に示したシステムでは作用極側)に供給する。このとき、相対湿度5%で実施する(S23)。
ステップS23において、加湿はアノード側(図4に示したシステムでは対極(および参照極)側)とカソード側両方にそれぞれの相対湿度となるように行う。さらにカソード側には、CO濃度1%となるようにNで希釈したガス(1%COバランス窒素ガス)を供給する。そしてカソード側電位0.05Vvs.RHE(アノード側)を保持して、電流をモニターする。モニターしている電流値が0になるまでCOの供給を続ける(すなわち電流値が0になった時点でCOの供給を止める)。その後、セル部分は別として、システム内(主にシステムを構成するガス配管など)にNを15分間流してCOを除去し、セルのカソード側バルブを閉じる。さらにカソード側にNを供給してセル内の余分なCOを除去する。これにより、触媒内の全てのPt表面全体にCOが吸着して、Ptを失活させる。
続いて、COを部分的に酸化する。このときも相対湿度5%で実施する(S24)。
このステップS24では、アイオノマーと接触していないPtだけを失活させるために、相対湿度5%でCOを部分的に酸化するのである。これには前記のCO吸着後、カソード電位を0.3Vで3分間保持し、さらに1.0Vに上昇させて12分間保持する。これにより、アイオノマーと接触しているPtに吸着されていたCOだけが酸化される。一方、相対湿度5%(乾燥条件)では、プロトン伝導材となる水分がほとんどなく、アイオノマーと接触していない部分では、プロトンパスが形成されない。このため、アイオノマーと接触していないPtには電位がかからないため、COは酸化されず、吸着した状態のままとなる。すなわち、このCOの部分的酸化のステップS24によって、アイオノマーと接触していないPtだけを失活させた状態にすることができるのである。
なお、Pt酸化量は、背景ボルタンメトリーから推定される。一方、CO酸化量(QCO)は、経時アンペログラム(Chronoamperogram)の最後の数分で測定される電流密度から近似される水素酸化量をPt酸化量から引くことによって得られる。
その結果、触媒層の電気化学的表面積(ECA)は、QCOと420μCcm−2 PtのPt表面積転換率を使って、7.05m−1 Ptであると決定される。
続いて、COの部分的酸化後、再びガス輸送抵抗を測定する(S25)。このときの相対湿度は90%において行う。このときの電位は残留するCO(主にPt表面に吸着しているCO)を酸化させないように、0.2から0.4Vまで、5分間隔、0.05V単位で電位を変化させて測定した。
図9は、COの部分的酸化後、カソード側への不活性ガス流の有無による電流密度の測定結果を示すグラフである。
COの部分的酸化後においても、不活性ガス流なしによる電流密度は不活性ガス流ありの電流密度より高い。そして不活性ガス流ありによる電流密度を図8に示したCO処理前と比較すると、図9に示したCO処理後の方が低い。これは、ガス輸送抵抗RCLがCO処理(S23およびS24の両方を実行したことをいう。以下同様)によって増加したことを示している。RCLとRmicroは、CO処理なしの場合と同様に計算する。
続いて、残留するCOを酸化する(S26)。これはガス輸送抵抗の測定の後に実施する。ここでは、システム系内に残留するCOを全て酸化させるために、COストリップボルタンメトリーを、相対湿度90%の下で実行する。これにはカソード電位を0.02〜0.95Vvs.RHE、5mVs−1の走査速度で、電位走査を5回行った。CO酸化に起因している電気量QCOは、ボルタモグラムの違いから計算する。
CO処理の有無によるガス輸送抵抗およびECAの測定結果を表2に示す。
表2を参照して、CO処理の有無による測定結果について説明する。CO処理の有無によるRCLとRmicroを比較すると、両方共CO処理を行っている方が増加している。その理由は、アイオノマーと接触していないPtの表面がCOによって失活しているため、Ptへのガス輸送抵抗の増加をもたらしたのである。担体として多孔質カーボンが使われるときは、CO処理の有無で得られる結果に基づいて、Rmicroは図6で示したように、2つの輸送抵抗に分解される。すなわち、一方はアイオノマーと接触していないPtに向うガス輸送抵抗Rmicro,inに対応し、他方はアイオノマーと接触しているPtへ向うガス輸送抵抗Rmicro,outに対応する。3つのガス輸送抵抗、すなわち、Rmicro、Rmicro,in、Rmicro,outの関係は、下記式(2)として表すことができる。
前記したように、相対湿度5%のCO処理によって、アイオノマーと接触していないPtは吸着されたCOによって失活し、アイオノマーと接触しているPtにだけ活性がある。言い換えると、式(2)中のRmicro,inは相対湿度5%でのCO処理後においては無限大であると考えられることができる。したがって、Rmicro,outは相対湿度5%でのCO処理後においてはRmicroと同じで、2992sm−1であると推定される。
一方、CO処理なしではRmicro,inとRmicro,outの両方共に活性がある。したがって、CO処理なしのRmicroは430sm−1と計算される。そうすると、Rmicro,outは2992sm−1であるから、式(2)を用いて、Rmicro,inは502sm−1となる。
これにより、アイオノマーと接触していないPtへのガス輸送抵抗Rmicro,inと、アイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗Rmicro,outが分離された結果を得られる。
本実施形態2では、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗の比、すなわち、Rmicro,out/Rmicro,inが所定値以下である触媒層を良好なものとする。これにより、そのような触媒層を含む膜電極接合体を選別するのである。
所定値、すなわち良好なものと判断する値は、後述する実施例から、触媒層の30℃において、Rmicro,out/Rmicro,inの値が1.2である。また、好ましくは0.6であり、さらに好ましくは0.1である。すなわち、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗(Rmicro,out)がアイオノマーと接触している触媒金属(Rmicro,in)よりも低いものほど発電性能が良くなるのである。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。なお、以下の実施例で用いた担体A、B以外にも、たとえば国際公開第2014/175098号に記載されているように、特開2010−208887などに記載の方法により作成した担体を用いた触媒粉末などにも本発明が適用可能である。すなわち、本実施例に記載した担体A、Bを用いた触媒粉末に本発明の適用が限られるものではない。
実施例1
国際公開第2009/75264号に記載の方法により、担体A(平均粒径(直径)=100nm、BET比表面積=1753m−1)を作製した。この担体Aを用い、これに触媒金属として平均粒径3.5nmの白金(Pt)を担持率が30重量%となるように担持させて、触媒粉末Aを得た。すなわち、白金濃度4.6重量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液を1000g(白金含有量:46g)に担体Aを46g浸漬させ撹拌後、還元剤として100%エタノールを100ml添加した。この溶液を沸点で7時間、撹拌、混合し、白金を担体Aに担持させた。そして、濾過、乾燥することにより、担持率が30重量%の触媒粉末を得た。その後、水素雰囲気において、温度900℃に1時間保持し、平均粒径(直径)が100nmである触媒粉末Aを得た。
このようにして作製した触媒粉末Aと、高分子電解質としてのアイオノマー分散液(Nafion(登録商標)D2020,EW=1100gmol−1、DuPont社製)とをカーボン担体とアイオノマーの重量比が0.9となるよう混合した(混合物1)。別途、水とn−プロピルアルコール(NPA)との混合重量比が60/40である混合溶媒1を調製した。この混合溶媒1を、上記混合物1に、固形分率(Pt+カーボン担体+アイオノマー)が7重量%となるよう添加して、カソード触媒インクを調製した。
担体として、ケッチェンブラック(粒径:30〜60nm)を用い、これに触媒金属として平均粒径2.5nmの白金(Pt)を担持率が50重量%となるように担持させて、触媒粉末を得た。この触媒粉末と、高分子電解質としてのアイオノマー分散液(Nafion(登録商標)D2020,EW=1100gmol−1、DuPont社製)とをカーボン担体とアイオノマーの重量比が0.9となるよう混合した(混合物2)。別途、水とn−プロピルアルコールとの混合重量比が50/50である混合溶媒2を調製した。この混合溶媒2を、上記混合物2に、固形分率(Pt+カーボン担体+アイオノマー)が7重量%となるよう添加して、アノード触媒インクを調製した。
次に、高分子電解質膜(Dupont社製、NAFION NR211、膜厚:25μm)の両面の周囲にガスケット(帝人Dupont社製、テオネックス、膜厚:25μm(接着層:10μm))を配置した。次いで、高分子電解質膜の片面の露出部にカソード触媒インクをスプレー塗布法により、5cm×2cmのサイズに塗布した。スプレー塗布を行うステージを60℃に1分間保つことで触媒インクを乾燥し、カソード触媒層(乾燥膜厚:約6μm)を得た。このときの白金担持量は0.15mgcm−2である。次に、カソード触媒層と同様に電解質膜上にスプレー塗布および熱処理を行うことでアノード触媒層(乾燥膜厚:約2μm)を形成した。
得られた積層体の両面をガス拡散層(アノード側25BC(MPL層付、SGLカーボン社製)、カソード側はTGP H120(MPL層なし、東レ社製))で挟持し、膜電極接合体(1)(MEA(1))を得た。
得られたMEA(1)について、下記方法に従って、カソード触媒層の30℃における水素ガスのガス輸送抵抗を水素ガスのガスクロスリーク速度に基づいて行った結果、0.234msm−1−1 Ptであった。
(実施形態1によるカソード触媒層のガス輸送抵抗の測定方法)
まず、実施形態1に基づき、カソード触媒層のガス輸送抵抗値を測定した。
各MEAのカソードおよびアノードガス拡散層に、セパレータを設けて、図4に示した、単セルからなる実験セットアップシステムを準備する。
次に、この実験セットアップシステムを用いて、下記表2に示される条件下で電位ステップボルタンメトリーによって、カソード触媒層の水素ガス輸送抵抗値(RCLH2)を測定する。この測定では、純粋な水素および窒素ガスを、80℃で、対極および参照極にならびに作用極にそれぞれ供給する。一定時間後、電位を10分間0.95Vvs.RHEに維持した後、5分間0.9Vに設定する。次に0.9Vから、5分間隔で0.1Vずつ段階的に変化させ、0.2Vにした。作用極側のバルブを閉じることによって、Ntotalを同様にして測定する。この際、HZ−3000電気化学的測定系(北斗電工、日本)および同じ単セルセットアップを用いて、全ての測定を行う。
別途、電気化学的表面積(ECA)(m−1)を測定する。ECAは、すでに説明したCOストリッピングボルタンメトリーにより測定した。なお、ここでのECA測定は作用極および対極共に相対湿度5%と90%のそれぞれで測定した。
上記で得られたカソード触媒層のガス輸送抵抗値および電気化学的表面積(ECA)をかける。得られた値を、水素ガスのガスクロスリーク速度に基づいたカソード触媒層の30℃における水素ガス輸送抵抗(msm−1−1 Pt)とする。
実施例2
国際公開第2009/75264号に記載の方法により得られた炭素材料を、アルゴン雰囲気下で、500℃/時間の昇温速度で、1800℃にまで加熱した後、5分間保持することにより、担体B(平均粒径(直径)=100nm、BET比表面積=1346m−1)を作製した。続いて、上記実施例1において、担体Aの代わりに、上記担体Bを用いたこと以外は、実施例1と同様に白金を担持させる操作を行い、平均粒径(直径)が100nmである触媒粉末Bを得た。
実施例1において、触媒粉末Aの代わりに、上記で得られた触媒粉末Bを使用する以外は、実施例1と同様の操作を行い、膜電極接合体(2)(MEA(2))を作製した。
得られたMEA(2)について、上記実施例1に記載の方法と同様にして、カソード触媒層のガス輸送抵抗を水素ガスのガスクロスリーク速度に基づいて行った結果、0.962msm−1−1 Ptであった。
比較例1
H.Iden et.al.,Journal of Electroanalytical Chemistry,708(2013) 87-94の「2.1 Prepataion of MEA」に記載の方法と同様にして、MEA(3)を作製した。
すなわち、Ptブラック触媒粉末を、高分子電解質としてのアイオノマー分散液(Nafion(登録商標)D2020,EW=1100gmol−1、DuPont社製)とを、Ptブラック触媒粉末に対するアイオノマーの重量比が0.17となるよう混合して、アノード触媒インクを調製した。
別途、多孔質カーボン担体に白金が担持した触媒粉末(担持率=45重量%)を、高分子電解質としてのアイオノマー分散液(Nafion(登録商標)D2020,EW=1100gmol−1、DuPont社製)とを、カーボン担体とアイオノマーの重量比が0.9となるよう混合して、カソード触媒インクを調製した。
次に、高分子電解質膜(Dupont社製、NAFION NR211、膜厚:25μm)の両面の周囲にガスケット(帝人Dupont社製、テオネックス、膜厚:25μm(接着層:10μm))を配置した。次いで、高分子電解質膜の片面の露出部にアノード触媒インクをスプレー塗布法により、5cm×2cmのサイズに塗布した。スプレー塗布を行うステージを80℃に30分間保つことで触媒インクを乾燥し、アノード触媒層を得た。次に、アノード触媒層と同様に電解質膜上にスプレー塗布および熱処理を行うことでカソード触媒層を形成した。このときの白金担持量は、アノード触媒層で0.6mgcm−2で、カソード触媒層で0.15mgcm−2であった。
得られた積層体の両面をガス拡散層(アノード側25BC(MPL層付、SGLカーボン社製)、カソード側はTGP H120(MPL層なし、東レ社製))で挟持し、膜電極接合体(3)(MEA(3))を得た。
得られたMEA(3)について、上記実施例1に記載の方法と同様にして、カソード触媒層のガス輸送抵抗を水素ガスのガスクロスリーク速度に基づいて行った結果、1.63msm−1−1 Ptであった。
<酸素還元(ORR)活性の評価>
MEA(1)〜(3)について、それぞれ、下記評価条件下、0.9V時の白金表面積当たりの発電電流(μAcm−2(Pt))を測定した。これにより、酸素還元反応(ORR)活性の評価を行った。
<評価条件>
・温度:80℃、
・ガス成分:水素(アノード側4Lmin−1)/酸素(カソード側8Lmin−1)、
・相対湿度:100%RH/100%RH、
・圧力:50kPa(abs)/50kPa(abs)、
・電位走査方向:10Aの電圧値から0.2Aの電圧値において測定した。
ガス輸送抵抗およびORR活性の測定結果を表4に示す。また、図10はガス輸送抵抗の測定結果を示したグラフである。縦軸にPt担持量当たりの水素輸送抵抗(msm−1−1 Pt)を示している。なお、このPt担持量当たりの水素輸送抵抗はPt担持量で規格化した値である。また、図11はORR活性の測定結果を示したグラフである。縦軸にORR活性を示している。なお、このORR活性はPt表面積で規格化した値である。Pt担持量当たりの水素輸送抵抗(msm−1−1 Pt)を示している。
表4、図10および図11の結果より、触媒層のガス輸送抵抗という簡便な手法により、燃料電池の性能(ORR活性)を判断することができることがわかる。特に、触媒層のガス輸送抵抗が1.5msm−1−1 Pt以下である場合に、触媒層が優れたORR活性を発揮できることがわかる。また、より好ましくは、1.2msm−1−1 Pt以下、さらに好ましくは1.0msm−1−1 Pt以下である。したがって、選別する際にはたとえば、3段階の閾値を用いて選別するようにしてもよい。すなわち、第1の閾値1.5msm−1−1 Pt、第2の閾値1.2msm−1−1 Pt、第3の閾値1.0msm−1−1 Pt等とすることができる。
(実施形態2による、アイオノマーと接触していないPtと接触しているPtそれぞれへのカソード触媒層のガス輸送抵抗の比を求める方法)
次に、実施形態2に基づき、アイオノマーに接触していないPtと接触しているPtのそれぞれへのカソード触媒層のガス輸送抵抗の比を求めた。実験セットアップシステム、およびガス輸送抵抗の測定装置は、前述した実施形態1に基づく測定と同様である。
測定は実施形態2に基づき行った。すなわちステップS21は、アノード側、カソード側共に相対湿度90%、30℃(他のステップでもすべて同じ温度とした)で、純粋なHとNをアノード側(対極及び参照極)、ならびにカソード側(作用極)にそれぞれ供給した。電位ステップボルタンメトリーによって、電位を10分間、作用極0.95Vvs.RHEに維持した後、5分間、作用極0.9Vvs.RHE、その後、作用極側の弁を閉じる。その後、5分間隔で、作用極電位を0.9Vから0.2Vまで0.1V単位で変化させた。
続いてステップS22により、MEAから水分を除去した。
続いてステップS23は、アノード側、カソード側共に相対湿度5%にして、カソード側に1%COバランス窒素ガスを供給する。カソード側電位0.05Vvs.RHEを保持して、電流値が0になるまでCOを供給した。その後システム内にNを15分間流してCOを除去し、セルのカソード側バルブを閉じて、さらにカソード側にNを供給した。
続いてステップS24は、相対湿度5%となるように湿度調整した純粋なHとNをアノード側およびカソード側に供給して、カソード電位を0.3Vで3分間保持し、さらに1.0Vに上昇させて12分間保持した。これにより、担体の一次空孔外部に担持されているPtoutに吸着されていたCOだけを酸化した。
続いてステップS25は、相対湿度90%となるように湿度調整した純粋なHとNをアノード側およびカソード側に供給して、電位ステップボルタンメトリーにより0.2から0.4Vまで、5分間隔、0.05V単位で電位を増加させて、ガス輸送抵抗を測定した。
その後、ステップS26として、システム内に残留するCOを全て酸化させて除去した。
これにより、アイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗となるRmicro,outと、アイオノマーと接触していないPtへのガス輸送抵抗となるRmicro,inが得られた。
そしてアイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗と接触していないPtへのガス輸送抵抗の比、すなわち(Rmicro,out/Rmicro,in)を求めた。
結果を表5に示す。また図12はアイオノマーと接触していないPtへのガス輸送抵抗と、アイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗の比((アイオノマー非接触触媒金属ガス輸送抵抗)/(アイオノマー接触触媒金属ガス輸送抵抗))の値を示すグラフである。
表5および図12の結果、ならびに先に説明した図11のORR活性の結果より、アイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗と接触していないPtへのガス輸送抵抗の比が低いほど燃料電池の性能(ORR活性)が高い傾向であることがわかる。これはすなわち、アイオノマーと接触していないPtへのガス輸送抵抗がアイオノマーと接触しているPtへのガス輸送抵抗よりも低いものほど、ORR活性が高いことを示している。
そして、この比が、1.2以下である場合に、触媒層が優れたORR活性を発揮できることがわかる。また、より好ましくは、0.6以下、さらに好ましくは0.1以下である。したがって、選別する際にはたとえば、3段階の閾値を用いて選別するようにしてもよい。すなわち、第1の閾値1.2、第2の閾値0.6、第3の閾値0.1等とすることができる。
以上説明した実施形態および実施例によれば、以下の効果を奏する。
(1)実施形態1および実施例によれば、カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定したので、簡便にガス輸送抵抗の評価ができる。このため、測定したガス輸送抵抗の値によって膜電極接合体を選別することで効率よく発電性能の高い燃料電池が作製できる。
(2)実施形態1、2および実施例によれば、水素ガスのガスクロスリーク速度を測定しているだけであるので対極に対するダメージがなく、簡便にガス輸送抵抗評価ができる。このため、効率よく発電性能の高い燃料電池が作製できる。
(3)実施形態1および実施例によれば、対極に対するダメージなく、簡便に、所望のガス輸送抵抗を有する触媒層を選別できるため、効率よく発電性能の高い燃料電池が作製できる。
(4)実施形態2および実施例によれば、アイオノマーと接触している触媒金属と接触していない触媒金属のそれぞれへのガス輸送抵抗を分離することとしたので、詳細なガス輸送抵抗評価ができる。このため、より効率よく発電性能の高い燃料電池が作製できる。
(5)実施形態2および実施例によれば、ガスクロスリーク速度を測定しているだけであるため、対極に対するダメージなく、詳細なガス輸送抵抗評価ができ、所望のガス輸送抵抗比を有する触媒層を選別できる。このため、より効率よく発電性能の高い燃料電池が作製できる。
以上本発明を適用した実施形態および実施例について説明したが、本発明は上述した実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術思想に基づいてさまざまな形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇である。
1…固体高分子形燃料電池(PEFC)、
2…固体高分子電解質膜、
3…触媒層、
3a…アノード触媒層、
3c…カソード触媒層、
4a…アノードガス拡散層、
4c…カソードガス拡散層、
5a…アノードセパレータ、
5c…カソードセパレータ、
6a…アノードガス流路、
6c…カソードガス流路、
7…冷媒流路、
10…膜電極接合体(電解質膜−電極接合体)(MEA)、
20…触媒、
22…触媒金属、
23…担体、
24…メソ孔(一次空孔)、
26…アイオノマー(固体プロトン伝導材)。

Claims (3)

  1. 電解質膜の両面に、それぞれ、カソード触媒層およびカソードガス拡散層ならびにアノード触媒層およびアノードガス拡散層を形成して、燃料電池用膜電極接合体を製造し、
    前記カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方のガス輸送抵抗をガスクロスリーク速度に基づいて測定し、所定値以下のガス輸送抵抗を示す触媒層を有する膜電極接合体を選別することを有し、
    前記カソード触媒層および前記アノード触媒層の少なくとも一方における、アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗とアイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗と、を分離し、
    ((前記アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗)/(前記アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗))の値が所定値以下である触媒層を有する膜電極接合体を選別することを有する、燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
  2. 前記測定は、水素ガスのガスクロスリーク速度に基づいて行われる、請求項1に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
  3. 前記触媒層は、白金であるまたは白金と白金以外の金属成分を含む触媒金属が触媒担体に担持されてなる触媒を含み、
    前記選別は、触媒層の30℃における水素ガスのガス輸送抵抗から前記アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗と前記アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗を分離し、((前記アイオノマーと接触していない触媒金属へのガス輸送抵抗)/(前記アイオノマーと接触している触媒金属へのガス輸送抵抗))の値が1.2以下である触媒層を選別することによって行われる、請求項に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
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