JP6606204B2 - 車両用軸受装置 - Google Patents
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Description
このため、ハブへの駆動力伝達時に、セレーションガタや、アウターステム弾性ねじれによりハブベアリングとアウターボードの突き当て面には滑りが生じ、スティックスリップ音や摩耗が発生する。
そこで、アウターボードとハブとの突き当て面に、アウターボード内部よりグリスを供給するものが知られている。これは、アウターボードの内部から突き当て面に連通する給脂孔を設け、突き当て面にグリスを供給し、アウターボードとハブとの突き当て面におけるスティックスリップ音の発生を防止するものである(例えば、特許文献1参照)。
そのため、アウターボードとハブとの摩耗を防止するために、等速ジョイント用のグリスを用いることになり、等速ジョイント用のグリスが無駄に消費されてしまう。
また、利用されるグリスは、等速ジョイントの潤滑の維持および等速ジョイントを覆うブーツに対する適正を考慮して選択されるため、等速ジョイント用のグリスと、アウターボードとハブ用のグリスとは、常に同一のグリスが用いられるとは限らない。
そこで、本発明は、等速ジョイントの潤滑を維持しながら、ハブとアウターボードとの突き当て面を適切に潤滑し、ハブとアウターボード間でのスティックスリップ音や突き当て面の摩耗をより抑制することを目的とする。
これにより、ハブ輪側のグリス室と等速ジョイント側のグリス室とが蓋体により仕切られ、それぞれのグリス室に用途に応じたグリスを保持できる。
これにより、放射状溝の凹凸形状により、グリスがハブ輪とアウターボードとの突合せ面との間に保持されるとともに、均一に広がりやすくなる。
これにより、給油孔間におけるグリスの供給量のばらつきを解消して、ハブ輪とアウターボードとの突合せ面に、均一にグリスを供給しやすくなる。
これにより、給油孔間におけるグリスの供給量のばらつきを解消できる。そして、ハブ輪とアウターボードとの突合せ面の広い範囲でグリスを保持し、効率的にグリスを供給できる。
これにより、ハブ輪とアウターボードとの突合せ面に安定的にグリスを供給できる。また、グリスの性状を維持しやすくなる。
[実施形態1]
図1から図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両用軸受装置1を説明する。
図1は、第1実施形態に係る車両用軸受装置の外観を示す一部断面図である。図2は、ハブ輪とアウターボードの接続部を示す断面図である。図3は、アウターボードの軸部側から見た図である。図4は、インナーレースのアウターボード側の面を示す斜視図である。図5は、インナーレースのアウターボードと対向する面を示す正面図である。
ハブ輪4は、円筒状の本体部4aを備え、この本体部4aの一端部には、車両のホイールを取り付けるための円板状のホイール支持面4bが一体に形成されている。ホイール支持面4bは、車両の外側に位置するように配置されている。ハブ輪4の中心部には、嵌合用孔4cがハブ輪4を貫通するように形成されている。
本体部4aの他端部には、本体部4aの厚さを小さくしてなる小径部4dが周方向にわたって形成されている。本体部4aの小径部4dには、環状のインナーレース31が嵌合されており、インナーレース31の外径は、本体部4aの外径と略同一となるように形成されている。
アウターボード5は、ナックル部材2の軸受支持部2bの内径よりわずかに大きい外径を有する本体部5aを備えている。
本体部5aの内側には、略半球状にくり抜いてなるジョイント室53が形成されており、ジョイント室53は、車両の内側に向かって開放されている。ジョイント室53の内周面には、軸方向に延在する複数のトラック溝55が周方向に所定間隔毎に形成されている。
本体部5aの中心部には、車両の外側に向かって延在する軸部51が一体に形成されている。軸部51は、ハブ輪4の嵌合用孔4cに挿入されており、アウターボード5の軸部51と、ハブ輪4の嵌合用孔4cとは、セレーション嵌合により、互いに結合されている。これにより、アウターボード5が回転駆動されると、ハブ輪4も一体となって回転駆動されるように構成されている。
アウターボード5の本体部5aと軸部51との間には、回転軸に対して直交する方向に延在する肩部52が形成されている。
そして、各ボール9をアウターボード5のトラック溝55に係合させることにより、シャフト6の回転力をアウターボード5に伝達するように構成されている。
アウターボード5のシャフト6を接続した側には、シャフト6を覆うブーツ7が装着されており、このブーツ7により、アウターボード5のジョイント室53が密閉されている。
第1のグリス室54には、アウターボード5の肩部52とインナーレース31との摩擦に適したグリスが貯留され、第2のグリス室54bには、等速ジョイント8の摩擦に適したグリスが貯留される。
なお、蓋体57は、例えば、立上部57bおよびアウターボード5の装着部59にネジ溝をもうけ、アウターボード5に螺装してもよい。または、蓋体57を弾性変形もしくは接着により、アウターボード5に装着してもよい。
給油孔58は、第1のグリス室54から肩部52に向かうにつれてアウターボード5の半径方向外方に向かうように傾斜して形成されている。これにより、アウターボード5が回転駆動されると、第1のグリス室54に貯留されているグリスは、遠心力により、半径方向外方に移動され、肩部52とインナーレース31との間に供給されることになる。これにより、インナーレース31と肩部52との間に均一にグリスを供給できる。
筋目状溝31bは、例えば、インナーレース31の端面31aをロータリー研磨することにより形成される。ロータリー研磨により設けられる筋目状溝31bは、インナーレース31の回転方向に対して、筋目状溝31bの中央部が凸もしくは凹となる弧状に形成される。
なお、図4および図5においては、端面31aに設けられる筋目状溝31bを強調して描いているものであり、実際の筋目状溝31bは研磨等の機械処理による表面処理により形成される微細なものである。
このように、筋目状溝31bを形成することにより、溝目の凹凸形状により、グリスがインナーレース31と肩部52との間の当接面42に保持されるとともに、均一に広がりやすくなる。
通気孔56により、第1のグリス室54内への空気の出入りを確保することができるので、第1のグリス室54内は外気圧に保たれ、第1のグリス室54内と外気との気圧差によるグリスの供給の変動を防止することができる。
また、小径部56bにより、第1のグリス室からのグリスの流出を防止することができる。さらに、通気孔56は、軸部51の回転軸心に沿って設けられているので、遠心力の影響によるグリスの流出を防止することができる。
また、通気孔56より、グリスを第1のグリス室54に供給することも可能であり、小径部56bにより、第1のグリス室54へのグリスの急激な流入を防止して、第1のグリス室54の蓋体57にグリス流入によるかかる負荷を抑制できる。
本実施形態においては、シャフト6の回転駆動により、等速ジョイント8を介してアウターボード5およびハブ輪4が一体に回転駆動される。
この場合において、アウターボード5が回転駆動すると、第1のグリス室54に貯留されたグリスが、遠心力により、給油孔58を介して外周方向に移動し、開口58bから肩部52とインナーレース31との当接面42に供給される。
肩部52とインナーレース31との当接面42に供給されたグリスは、筋目状溝により適正に保持されるとともに、均一に広がる。
このように肩部52とインナーレース31との当接面42に保持されたグリスにより、スティックスリップ音の低減を図ることができるとともに、突き当て面における摩耗を効率的に抑制できる。
これにより、第1のグリス室54からハブ輪4とアウターボード5の突合せ面に適正にグリスを供給することができ、スティックスリップ音、突き当て面における摩耗を効率的に抑制することができる。また、蓋体57により、第1のグリス室54と第2のグリス室54bとを仕切るようにしているので、ハブ輪4とアウターボード5の突合せ面に応じたグリス、ドライブシャフトの等速ジョイント8に用いられるグリスとをそれぞれ別個に使用することができ、それぞれの特性に合ったグリスを使用することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態を示すアウターボードの正面図である。
本実施形態においては、軸受3とアウターボード5間にグリスを貯留するグリス溜まりを設けたものである。
アウターボード5の肩部52には、給油孔58が肩部52の周方向に所定間隔毎に形成されている。また、肩部52には、給油孔58と接続してグリス溜まりとなる溝52bが形成されている。
肩部52において、周方向に8つの給油孔58が形成されており、溝52bは、給油孔58から隣接する給油孔58を1つ飛ばして2つ目の給油孔58と接続されている。これにより、溝52bと溝52bとが交差するものであり、本実施形態においては、2つの給油孔58,58を繋ぐ溝52bが、2つの溝52bと交差している。
給油孔58より流出したグリスは、溝52bに沿って流れ、溝52bに保持される。これにより、肩部52において、グリスを保持できる領域が、軸部51を中心として半径方向に幅広くなる。
そして、溝52bより、肩部52とインナーレース31との間に均一に供給されることになる。また、溝52b同士が交差しており、溝52b間においてグリスの流動が可能となっておおり、溝52b間におけるグリス保持量のばらつきを解消できる。
本実施形態においては、アウターボード5が回転駆動すると、第1のグリス室54に貯留されたグリスが、遠心力により、給油孔58を介して外周方向に移動し、溝52bへと供給される。グリスは溝52bに沿って、溝52bの全域に保持されることとなる。そして、交差する溝52b間において、グリスが流動可能であるため、一部の溝52bにおいてグリスが少なくなったとしても、他の溝52bよりグリスが供給される。
これにより、溝52b間において保持するグリス量のばらつきを抑制できる。そして、肩部52とインナーレース31との当接面42に効率的にグリスを供給できる。
このように肩部52とインナーレース31との当接面42に保持されたグリスにより、スティックスリップ音の低減を図ることができるとともに、突き当て面における摩耗を効率的に抑制できる。
これにより、ハブ輪4とアウターボード5の突合せ面に効率的にグリスを供給することができ、スティックスリップ音、突き当て面における摩耗を効率的に抑制することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態を示すアウターボードの断面図であり、図8は、本発明の第3実施形態を示すアウターボードの正面図である。図9は、アウターボードのグリス溜まり溝との接続部を小さくした給脂孔の構成を示す断面図である。
これにより、給油孔58より流出したグリスが溝52d内に供給され、肩部52において保持可能となっている。なお、溝52dは、肩部52において、インナーレース31と当接する領域(二点鎖線58dと58cの間の領域)に設けられるものである。
そして、溝52dに保持されたグリスが肩部52とインナーレース31との当接面42に供給される。
図9に示すように、給油孔58の溝52dとの接続部58fは、給油孔58の他の部分よりも開口量が小さく構成されている。グリスは給油孔58内において、常に溝52d側に押されるものであり、接続部58fを介して溝52dに流出する。接続部58fは溝52dの底面において開口しており、接続部58fの開口面積は、溝52dの底面の面積に比べて十分に小さく構成されている。これにより、溝52dから給油孔58へのグリスの逆流を防止するものである。
本実施形態においては、アウターボード5が回転駆動すると、第1のグリス室54に貯留されたグリスが、遠心力により、給油孔58を介して外周方向に移動し、環状の溝52dへと供給される。グリスは溝52dに沿って、溝52dの全域に保持されることとなる。これにより、軸部51の周りに隙間なくグリスが保持される。
給油孔58が溝52dにより接続されるため、給油孔58間におけるグリス供給のばらつきを解消できる。
そして、溝52dに保持されたグリスが肩部52とインナーレース31との当接面42に供給され、グリスが当接面42に均一かつ効率的に供給される。
これにより、ハブ輪4とアウターボード5の突合せ面に効率的にグリスを供給することができ、スティックスリップ音、突き当て面における摩耗を効率的に抑制することができる。
また、溝52dを軸部51の同心円上に設けるため、溝52dの形成のための加工が容易であり、製造にかかるコストを低減できる。
溝52d内に保持されたグリスが、振動などを受けた場合においても、グリスが接続部58fに集中することない。また、接続部58fにおいて流動面積が小さくなるため流動抵抗によりグリスが給油孔58に逆流しにくくなる。
これにより、第1のグリス室54に劣化したグリスが流入しにくく、性状の安定したグリスをハブ輪4とアウターボード5の突合せ面に供給できる。
なお、給油孔58の流出側の開口面積を小さくして、グリスの逆流を防ぐ構成は、他の実施形態においても利用できるものである。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図10は、本発明の第4実施形態を示すアウターボードの断面図である。
図10に示すように、本実施形態においては、ハブ輪4の一部であるインナーレース31にグリス溜まりである溝31dを設けたものである。
溝31dは、環状の溝であり、インナーレース31の肩部52と対向する端面31aに沿って設けられている。そして、溝31dは、肩部52における給油孔58の開口位置に合わせて設けられている。
これにより、給油孔58より流出したグリスを溝31dに保持できるものである。また、グリスを環状の溝31dで保持するので、給油孔58間におけるグリス供給のばらつきを解消できる。そして、溝31dよりインナーレース31の肩部52との間に、均一にグリスを供給できる。
なお、溝31dと給油孔58との位置は、給油孔58からのグリスが溝31dに供給可能であれば良い。例えば、溝31dと給油孔58の開口の一部が重なっており、溝31d内にグリスが流入可能であれば良い。
本実施形態においては、アウターボード5が回転すると、第1のグリス室54に貯留されたグリスが、給油孔58を介して、環状の溝31dへと供給される。グリスは溝31dに沿って、溝31dの全域に保持される。これにより、インナーレース31の端面31aの全周にわたりグリスが保持される。
グリスが環状の溝31dにより接続されるため、給油孔58間におけるグリス供給のばらつきを解消できる。
そして、溝52dに保持されたグリスが肩部52とインナーレース31との当接面42に供給される。これにより、ハブ輪4とアウターボード5の突合せ面に効率的にグリスを供給することができ、スティックスリップ音、突き当て面における摩耗を効率的に抑制することができる。
また、溝31dをハブ輪4より分割可能なインナーレース31に設けるため、溝31dの形成のための加工が容易であり、製造にかかるコストを低減できる。
例えば、第2実施形態の直線状の溝52bを、第3実施形態の環状の溝52dに追加して、溝52bおよび溝52dによるグリス保持量を増大できる。
さらに、各実施形態において、図9し示すごとく、給油孔58の流出側の端部の開口を小さくして、グリスの逆流を防止することも可能である。例えば、第1実施形態において、開口58bの肩部52側を給油孔58よりも小径な孔として、グリスの逆量を防止することも可能である。
蓋体57を変形可能とすることにより、ジョイント室53内の内圧上昇を利用して、グリスをハブ輪4とアウターボード5間に供給できる。
この場合、アウターボードの回転により、第1のグリス室54内の回転軸に対して外側部分にグリスが集まる。この状態においてジョイント室53内の内圧が上昇すると、第1のグリス室54内との圧力差により、蓋体57が変形する。これにより、第1のグリス室54の容積が減少して、グリスが給油孔58内に流入する。そして、ハブ輪4とアウターボード5間グリスが供給されるものである。
5 アウターボード
7 ブーツ
8 等速ジョイント
31 インナーレース
32 アウターレース
52 肩部
52b 溝
52d 溝
54 グリス室
57 蓋体
58 給脂孔
Claims (5)
- ハブ輪と嵌合されるアウターボードと、シャフトの回転を前記アウターボードに伝達する等速ジョイントと、を備えた車両用軸受装置において、
前記アウターボードに、前記ハブ輪側のグリス室と前記等速ジョイント側のグリス室とを仕切る蓋体を設け、前記ハブ輪側のグリス室と前記等速ジョイント側のグリス室とに別個のグリスが貯留され、前記ハブ輪と前記アウターボードとの突合せ面に前記ハブ輪側のグリス室のグリスを供給する給油孔を設けたことを特徴とする車両用軸受装置。 - ハブ輪と嵌合されるアウターボードと、シャフトの回転を前記アウターボードに伝達する等速ジョイントと、を備えた車両用軸受装置において、
前記アウターボードに、前記ハブ輪側のグリス室と前記等速ジョイント側のグリス室とを仕切る蓋体を設け、前記ハブ輪と前記アウターボードとの突合せ面に前記ハブ輪側のグリス室のグリスを供給する給油孔を設け、
前記ハブ輪の前記アウターボードとの突合せ面もしくは、
前記アウターボードの前記ハブ輪との突合せ面に、
前記ハブ輪の回転軸を中心とする放射溝を設けた
ことを特徴とする車両用軸受装置。 - 前記アウターボードの前記ハブ輪との突合せ面に、
給油孔間を接続する環状溝を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用軸受装置。 - 前記アウターボードの前記ハブ輪との突合せ面に、
給油孔間を接続する複数の直線溝を設け、
該直線溝を交差させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用軸受装置。 - 前記給油孔のグリス流出側端の開口面積を、前記給油孔の他の部位よりも小さくし、グリスの逆流を防止することを特徴とする請求項1乃至3に記載の車両用軸受装置。
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