以下、図面を参照しながら本発明の実施形態のエレベーター故障の遠隔復旧システム100について説明する。図1に示すように、遠隔復旧システム100は、ビル10の昇降路11の中に配置されたエレベーター20の駆動制御を行うエレベーター制御装置200と、エレベーター制御装置200と通信し、エレベーター20に故障の復旧動作を行わせる遠隔復旧装置300とを備えている。遠隔復旧装置300が復旧動作を行わせるエレベーター20は、1台でもよいし複数台であってもよい。また、エレベーター20が複数の場合には、各エレベーター20は同一のビル10に設置されていてもよいし、異なるビル10に設置されていてもよい。
エレベーター制御装置200は、エレベーター20の駆動制御を行う制御盤210と通信装置250とを含んでいる。制御盤210は内部にCPUとメモリとを含むコンピュータである。また、遠隔復旧装置300は、通信装置320と監視盤330を含む遠隔監視センター310と、情報処理装置360と、保守データベース370と、復旧指令データベース380と、緊急度診断データベース390と、技術者診断データベース400とを含んでいる。遠隔監視センター310と情報処理装置360と保守データベース370と復旧指令データベース380とは同じ場所に設置されていてもよいし、別々の場所に設置されてお互いをインターネット回線等によって接続するようにしてもよい。
通信装置250は、制御盤210に接続され、制御盤210からの出力を通信ネットワーク30に発信する。また、通信装置250は、情報処理装置360が復旧指令データベース380を参照して選択した制御盤210に対する指令を通信装置320、通信ネットワーク30を介して受信し、制御盤210に出力する。通信装置320は、制御盤210からの信号を通信装置250、通信ネットワーク30を介して受信し、情報処理装置360に出力する。また、通信装置320は、情報処理装置360が選択した制御盤210に対する指令を通信ネットワーク30に発信する。通信装置250、320は無線通信を行う機器であってもよいし有線通信を行う機器であってもよい。また、通信ネットワーク30は、インターネット通信網であってもよいし、電話回線網であってもよい。
遠隔監視センター310は、情報処理装置360とデータの授受を行い、エレベーター20の運行状況、故障状況を監視する監視盤330が配置されている。監視盤330には、エレベーター20の運行状況、故障状況、情報処理装置360からの通知等が表示されるディスプレイ331と、ディスプレイ331の表示を操作するスイッチ332とが設けられている。また、監視盤330には通信ネットワーク35を介してサービスセンター340との通信を行う電話333が備えられている。サービスセンター340は、遠隔監視センター310からの電話連絡により技術者350を故障の発生したエレベーター20に出動させる。技術者350は、脈拍、体温等の技術者350の身体情報を検出して通信ネットワーク30を介して通信装置320に送信する身体情報センサ351を携帯している。また、監視盤330の電話333は、顧客通話装置500と接続可能で顧客からエレベーター20の故障通報を受けることができる。ここで、身体情報センサ351は、例えば、各種の身体情報を検出するセンサと検出した情報を発信する発信装置とを備えるウェアラブル端末であってもよい。
保守データベース370は、エレベーター20の仕様や検査、保守、修理等の履歴データが格納されている。復旧指令データベース380は、エレベーター20の制御盤210から出力された故障コードに対応する複数の故障要因とその件数および復旧率等のデータが格納されている。緊急度診断データベース390は、顧客から受けたエレベーター20の故障通報の内容と復旧対応の緊急度とを対応づけたデータが格納されている。技術者診断データベース400は、技術者350の身体情報の内容と技術者350の疲労度とを対応づけたデータが格納されている。
情報処理装置360は、内部にCPUとメモリとを含むコンピュータである。情報処理装置360には、エレベーター20に故障が発生した際に制御盤210が出力する故障信号が通信装置250、320、通信ネットワーク30を介して入力される。情報処理装置360は、故障信号が入力されると復旧指令データベース380のデータを参照して故障信号に含まれる故障コードに対応する復旧指令と復旧診断指令を選択する。情報処理装置360は、保守データベース370、復旧指令データベース380、緊急度診断データベース390、技術者診断データベース400を参照し、選択した復旧指令を制御盤210に発信するかどうかを判定する。情報処理装置360は、選択した復旧指令を制御盤210に発信すると判定した場合には、選択した復旧指令と復旧診断指令を制御盤210に発信する。制御盤210は、受信した復旧指令と復旧診断指令に基づいてエレベーター20に復旧動作、復旧診断動作を実行させる。
図2に示すように、保守データベース370には、エレベーター仕様データ371、検査履歴データ372、保守作業履歴データ373、遠隔点検履歴データ374、変調履歴データ375、修理工事履歴データ376、通報履歴データ510、技術者履歴データ410、故障履歴データ377、運転履歴データ378、故障要因別データ379が格納されている。
以下、図3、図4を参照しながら、エレベーター仕様データ371、検査履歴データ372、保守作業履歴データ373、遠隔点検履歴データ374、変調履歴データ375、修理工事履歴データ376、通報履歴データ510、技術者履歴データ410、故障履歴データ377、運転履歴データ378、故障要因別データ379のデータ構造について説明する。
エレベーター仕様データ371は、エレベーター20の管理番号、機種、製造日、製造番号、設置ビルの名称、設置ビルの用途のデータを格納するデータ構造を有している。設置ビルの用途とは、例えば、事務所、一般居住用、飲食店、学校、病院等である。
検査履歴データ372は、エレベーター20の管理番号、技術者350が現地で行った検査の日時、検査項目、検査結果のデータを格納するデータ構造を有している。検査とは、例えば、図1に示すエレベーター20のドア13、26の開閉状態の検査、各階の停止位置の検査(階床12とカゴ22の床27との高さずれ量の点検)、ワイヤ23の検査、走行速度の検査等である。また、検査結果には、検査の結果、異常が発見されたかどうかや、異常は発見されなかったが清掃等の保守作業が必要、あるいは、近々部品交換が必要である等が入力されている。なお、図1において符号14は乗り場押しボタン、符号28は行き先階ボタン、符号25は錘を示す。
保守作業履歴データ373は、エレベーター20の管理番号、技術者350が現場で行ったエレベーター20の保守作業日時、保守作業項目、保守作業結果を格納するデータベース構造を有している。保守作業項目とは、例えば、エレベーター20の運転状態の点検、エレベーター20のドアレールの清掃、図1に示す駆動装置24への給油、エレベーター20のブレーキの調整等である。保守作業結果には、点検、清掃、給油、調整等を実施した実績が入力されている。
遠隔点検履歴データ374は、エレベーター20の管理番号、遠隔点検日時、遠隔点検項目、遠隔点検結果を格納するデータ構造を有している。エレベーター20の遠隔点検は、例えば、一か月に1回等予め設定されたスケジュールに従って、エレベーター20の制御盤210によって実施される。エレベーター20の制御盤210は、図1に示すエレベーター20のカゴ22を所定の階に移動させる。この移動の際にエレベーター20に取り付けられた各種のセンサによって運転性能(加速度、異常音の有無)、ドア開閉、ブレーキ、非常用バッテリ、外部連絡装置等に異常がないかを点検する。その点検結果を通信装置250、320、通信ネットワーク30を介して情報処理装置360から遠隔点検履歴データ374に格納するものである。なお、遠隔点検は、遠隔監視センター310からの指示によって行うようにしてもよい。
変調履歴データ375は、エレベーター20の管理番号、変調発生日時、変調項目、変調対応結果を格納するデータ構造を有している。エレベーター20の変調とは、技術者350による検査、点検、保守作業、あるいは遠隔点検の結果が異常値には達しないが、そのエレベーター20の通常の値よりも変化しているような場合をいう。例えば、走行速度の検査を行った結果、許容値内に入っているが、前回点検の際、あるいはそのエレベーター20の今までの検査結果の値からのずれが大きいような場合に、変調項目の中に「走行速度」と記録される。
修理工事履歴データ376は、エレベーター20の管理番号、修理工事日時、修理工事項目、修理工事結果を格納するデータ構造を有している。修理工事とは、ワイヤ23の交換、ハンガローラ交換、ブレーキパッド交換、制御基板交換、リレー交換等の部品交換による復旧工事である。従って、修理工事項目には、「ワイヤ交換」、「ハンガローラ交換」、「ブレーキパッド交換」等の交換部品の名称が入力され、修理工事結果の欄には、「修理工事終了」、「再修理必要」等の事項が入力される。
通報履歴データ510は、エレベーター20に故障が発生した際に顧客通話装置500を通じて遠隔監視センター310に通報された故障通報の、通報日時、通報者、通報内容のデータが格納されている。
技術者履歴データ410は、技術者350のID番号、身体情報データの計測日時、身体情報センサ351で検出した技術者350の検出項目とそのレベルが格納されている。検出項目には、例えば、脈拍、体温等の項目が格納されている。レベルにはその項目の通常状態から異常状態までの状態に応じて1から3の数字が格納される。例えば、体温の場合、通常の体温の場合にはレベルに1が、高熱の場合には、レベルに3が格納される。
故障履歴データ377は、エレベーター20の管理番号、故障発生日時、故障コード、故障部位情報、故障内容、復旧方法、復旧判定結果を格納するデータ構造を有している。故障コードとは、エレベーター20に故障が発生した際に制御盤210から出力される数字あるいは数字と英文字とを組み合わせたコードである。故障コードの種類は、例えば、1000種類程度である。故障部位情報には、「カゴドア」のように故障が発生した部位の名称等が格納される。故障内容には、例えば、「開不能」、「閉不能」のような故障の状態が格納される。復旧方法の項目には、例えば、技術者350が出動して検査、点検、復旧を行った場合には「技術者出動」のように入力される。また、復旧方法の項目には、例えば、遠隔復旧システム100によって復旧した場合には「遠隔復旧」のように入力される。復旧判定結果の項目には、エレベーター20が復旧して運行再開した場合には、「復旧」のように入力される。また、復旧判定結果の項目には、エレベーター20が復旧に失敗した場合には、「失敗」のように入力される。
運転履歴データ378には、故障の発生直前の日時とエレベーター20の各部の運転状態が格納されている。例えば、故障直前のある運転日時と、その際のカゴ22の位置、移動方向、速度、ドア13、26の開閉状態等が格納されている。
故障要因別データ379は、ある故障コードが制御盤210から出力された際に、技術者350が現場に出動して検査、点検した結果によるその故障コードに対応する故障要因の件数、および、遠隔復旧システム100で復旧した場合のその故障コードに対応する故障要因の件数の合計件数が格納されている。例えば、故障コードがドア13、26に関する故障を示す0001の場合、技術者350が現地で点検した結果、その故障コード「0001」の出力された要因がドア敷居のゴミ詰まり(故障要因1)であったり、ドア開閉装置のスイッチの接触不良(故障要因2)であったり、その他の故障要因3であったりする。そこで、故障要因別データ379は、故障コード「0001」が出力された場合、ドア敷居のゴミ詰まり要因(故障要因1)の場合が100件、ドア開閉装置のスイッチの接触不良が要因(故障要因2)の場合が50件、その他の故障要因3の場合が10件というようなデータ構造で、その件数が多い順にデータが並べられるように構成されている。遠隔復旧システム100による復旧の場合、復旧指令によってエレベーター20の復旧に成功した場合にその復旧指令の基礎となった故障コードに対応する故障要因の件数が全体の故障要因の件数に追加される。
また、故障コード「0002」の場合、技術者350が現地で点検した結果、故障コード「0002」の出力された要因が制御盤210内の制御回路の動作不良のある場合(故障要因4)であったり、制御基板に取り付けられているCPUの動作不良の場合(故障要因5)であったり、その他の故障要因6であったりする。故障要因別データ379は、故障コード「0002」の場合、制御回路の動作の不具合が要因(故障要因4)の場合が100件、CPU動作の不具合が要因(故障要因5)の場合が50件、その他の故障要因6の場合が10件というようなデータ構造で、その件数が多い順にデータが並べられるように構成されている。
図5に示すように、復旧指令データベース380は、故障要因別データ379の故障要因の件数の多い順に、復旧指令と復旧診断指令のセットである復旧診断指令セットと、その復旧指令の実行によってエレベーター20の故障が復旧した割合である復旧率(%)が格納されている。復旧指令データベース380は、先に説明した故障要因別データ379に復旧診断指令セットと復旧率とをリンクさせたデータベースである。
以下、図5の符号381に示す、故障コードがドア13、26に関する故障を示す「0001」の場合の復旧指令データベース380のデータ構成について説明する。ドア敷居のゴミ詰まりが要因(故障要因1)の場合、復旧診断データは、故障要因1の件数データに復旧指令として「ドア回路リセット+ドア高トルク開閉」、復旧診断指令として「ドア開閉診断」、の2つの指令のセットである復旧診断指令セットAと、この復旧指令による復旧動作による復旧率a%とをリンクさせたデータ構成となっている。ドア開閉装置のスイッチの接触不良が要因(故障要因2)の場合には、復旧診断データは、故障要因2の件数データに復旧指令として「ドア回路リセット+ドア開閉リトライ」、復旧診断指令として「ドア開閉診断」の2つの指令のセットである復旧診断指令セットBと、この復旧指令による復旧動作の復旧率b%とをリンクさせたデータ構成となっている。同様に、故障要因3の場合には、復旧診断データは、故障要因3の件数データに復旧診断指令セットCと復旧率c%とをリンクさせたデータ構成となっている。このように、復旧指令データベース380は、故障コードと、その故障コードに対応する故障要因と、その故障要因の件数と、復旧指令と復旧診断のセットである復旧診断指令セットと、復旧率とを対応づけてデータベースに格納したものである。なお、本実施形態では、復旧率b%は復旧率a%、c%よりも大きな数値であり、復旧診断指令セットBは復旧診断指令セットA、復旧診断指令セットCよりも復旧率が高くなっている。
次に、図5の符号382に示す、故障コードが制御回路に関する故障を示す「0002」の場合の復旧指令データベース380のデータ構成について説明する。制御回路の動作不良の場合(故障要因4)には、復旧診断データは、故障要因4の件数データに復旧指令として「制御回路リセット」、復旧診断指令として「各階運転診断」、の2つの指令のセットである復旧診断指令セットDと、この復旧診断指令による復旧動作による復旧率d%とをリンクさせたデータ構成となっている。CPUの動作不良の場合(故障要因5)には、復旧診断データは、故障要因5の件数データに復旧指令として「CPUリセット」、復旧診断指令として「各階運転診断」、の2つの指令のセットである復旧診断指令セットEと、この復旧診断指令による復旧動作による復旧率e%とをリンクさせたデータ構成となっている。同様に故障要因6の場合には、復旧診断データは、故障要因6の件数データに復旧診断指令セットFと復旧率f%とをリンクさせたデータ構成となっている。なお、復旧率は、復旧診断指令セットEのe%が最も高くなっている。
緊急度診断データベース390は、顧客から受けたエレベーター20の故障通報の内容と復旧対応の緊急度とを対応づけたデータベースである。図6に示すように、緊急度診断データベース390は、遠隔監視センター310が顧客からエレベーター20の故障通報を受けた際に、その故障通報の中の含まれる可能性のある用語と、故障通報中に含まれたその用語のトーンレベルと、用語とトーンレベルとの組み合わせに対応する復旧対応の緊急度とを関連させて格納したものである。用語の項目には、例えば、「早く」、「急ぐ」等、復旧の緊急度が高い場合に顧客から発せられる可能性の高い文言が格納されている。トーンレベルの項目には、顧客の復旧に対する緊急度に関連するトーンレベルが格納されている。例えば、トーンレベル「3」は、高い声、あるいは、大きな声、怒気を含むような場合のレベルである。トーンレベル「1」は通常の声音の場合のレベルである。また、トーンレベル「2」は、通常の声音と怒気を含むような声音との中間の場合のレベルである。復旧対応の緊急度は、緊急度に応じて0から100の数字が格納されている。図6に示すように、例えば、用語「AAA」でトーンレベル「1」の場合には、復旧対応の緊急度は「10」、用語「AAA」でトーンレベル「2」の場合には、復旧対応の緊急度は「40」、用語「AAA」でトーンレベル「3」の場合には、復旧対応の緊急度は「80」のようにデータが格納されている。
技術者診断データベース400は、技術者350が携帯している身体情報センサ351によって検出した技術者350の身体情報の内容と技術者350の疲労度とを対応づけて格納したものである。図7に示すように、検出項目には、例えば、身体情報センサ351によって検出した脈拍、体温等の身体情報の項目が格納される。レベルには体温が通常状態から高熱状態までの状態に応じて1から3の数字が格納される。また、疲労度には、健常状態から疲労状態までの状態に応じて0から100の数字が格納される。図7に示すように、検出項目がDDDでレベルが1の場合、対応する疲労度は10、検出項目がDDDでレベルが3の場合には対応する疲労度は80となる。
以下、図2および図8から図10を参照して、エレベーター20から故障信号が発信された場合の遠隔復旧システム100の動作について説明する。以下の説明では、最初にドア13、26に関する故障コード信号「0001」が発信された場合の遠隔復旧動作について説明する。次に、制御盤210の中に組み込まれている制御回路に関する故障コード「0002」が発信された場合の遠隔復旧動作について説明する。なお、遠隔復旧システム100は、上記以外の部分に関する故障コードが発信された場合にも対応可能である。
図2および図8のステップS101に示すように、エレベーター20の制御盤210は、エレベーター20に故障が発生した否かの判定を行う。エレベーター20のドア13、26に関する故障、例えば、ドア開閉不良等の故障が発生した場合、制御盤210は、故障発生日時と故障がドア13、26に関する故障であることを示す故障コード「0001」と、故障部位情報と、故障発生直前のエレベーター20の運転データとを通信装置250に出力する。エレベーター20に故障が発生しない場合には、制御盤210は、ステップS101の最初に戻ってエレベーター20の監視を継続する。
通信装置250は制御盤210から故障コード「0001」、故障部位情報、運転データが入力されると、図2および図8のステップS102に示すように、故障コード「0001」、故障部位情報、故障発生直前の運転データおよびエレベーター20の管理番号および故障発生日時を含む故障信号を通信ネットワーク30に発信する。図2および図8のステップS103に示すように、遠隔監視センター310の通信装置320は、通信ネットワーク30を介して通信装置250が発信した故障信号を受信する。通信装置320は、故障信号を受信すると、故障信号に含まれる故障コード「0001」、故障部位情報、故障発生直前の運転データとエレベーター20の管理番号、および、故障発生日時を情報処理装置360に出力する。情報処理装置360は、入力された故障コード「0001」とエレベーター20の管理番号、故障発生日時を保守データベース370の故障履歴データ377に格納する。また、情報処理装置360は、入力された故障発生直前の運転データを運転履歴データ378に格納する。
そして、情報処理装置360は、図8のステップS104に示すように、故障の発生したエレベーター20が遠隔復旧可能かどうかを判定する。情報処理装置360は、図2および図3に示すように、エレベーター20の管理番号を用いてエレベーター仕様データ371からエレベーター20の機種、製造日、製造番号を取得する。情報処理装置360は、取得した仕様データに基づいて、そのエレベーター20が遠隔復旧装置300からの復旧指令、復旧診断指令によって復旧動作、復旧診断動作が可能な仕様であるかどうか確認する。情報処理装置360は、エレベーター20が遠隔復旧動作の可能な機種である場合には、図8のステップS105に進む。一方、エレベーター20が遠隔復旧動作の不可能な機種である場合には、情報処理装置360は、図8のステップS126に進み、遠隔監視センター310に遠隔復旧不可を通知する信号を出力する。
情報処理装置360は、図8に示すステップS105において、故障コード「0001」に対応する復旧指令と復旧診断指令を選択する。先に、図5を参照して説明したように、復旧指令データベース380は、故障要因別データ379に復旧診断指令セットと復旧率とをリンクさせたデータベースである。以下、故障コードがドア13、26に関する故障を示す「0001」の場合の復旧指令データベース380のデータ構成について再度簡単に説明しておく。ドア敷居のゴミ詰まりが要因(故障要因1)の場合には、復旧診断データは、故障要因1の件数データに復旧指令として「ドア回路リセット+ドア高トルク開閉」、復旧診断指令として「ドア開閉診断」、の2つの指令のセットである復旧診断指令セットAと、この復旧指令による復旧動作による復旧率a%とをリンクさせたデータ構成となっている。同様に、ドア開閉装置のスイッチの接触不良が要因(故障要因2)の場合には、復旧診断データは、故障要因2の件数データに復旧指令として「ドア回路リセット+ドア開閉リトライ」、復旧診断指令として「ドア開閉診断」の2つの指令のセットである復旧診断指令セットBと、この復旧指令による復旧動作の復旧率b%とをリンクさせたデータ構成となっている。同様に故障要因3の場合には、復旧診断データは、故障要因3の件数データに復旧診断指令セットCと復旧率c%とをリンクさせたデータ構成となっている。また、先に説明したように、復旧率a%は復旧率b%、c%よりも大きな数値であり、復旧診断指令セットBは復旧診断指令セットA、復旧診断指令セットCよりも復旧率が高くなっている。
情報処理装置360は、故障コード「0001」に対応する複数の故障要因の内の件数が最も多い故障要因に応じた指令を復旧指令として選択してもよい。また、情報処理装置360は、故障コード「0001」に対応する複数の指令の内の復旧率が最も高い指令を復旧指令として選択してもよい。そして情報処理装置360は、選択した復旧指令に対応する復旧診断指令が選択した復旧指令とセットとなっている復旧診断指令セットを選択する。
まず、情報処理装置360が、故障コード「0001」に対応する複数の故障要因の内で件数が最も多い故障要因に応じた指令を復旧指令として選択する場合について説明する。情報処理装置360は、復旧指令データベース380を参照して、復旧指令として故障コード「0001」の場合に最も件数の多い故障要因を確認する。そして、情報処理装置360は、最も件数の多い故障要因であるドア敷居のゴミ詰まり(故障要因1)に対応する復旧動作を実行させる復旧指令である「ドア回路リセット+ドア高トルク開閉」と、この復旧動作の結果に対応する復旧診断動作を実行させる復旧診断指令である「ドア開閉診断」の2つからなる復旧診断指令セットAを選択する。
次に、情報処理装置360が、故障コード「0001」に対応する複数の指令の内の復旧率が最も高い指令を復旧指令として選択する場合について説明する。情報処理装置360は、復旧指令データベース380を参照して、復旧指令として故障コード「0001」に対応する復旧率が最も高い復旧率を確認する。そして、情報処理装置360は、最も高い復旧率b%であるスイッチの接触不良が要因(故障要因2)に対応する復旧動作を実行させる復旧指令である「ドア回路リセット+ドア開閉リトライ」と、この復旧動作の結果に対応する復旧診断動作を実行させる復旧診断指令である「ドア開閉診断」の2つからなる復旧診断指令セットBを選択する。
復旧診断指令セットを選択する場合、故障コード「0001」に対応する最も件数の多い故障要因に基づくか、故障コード「0001」に対応する復旧診断指令セットの復旧率に基づくかの選択は次のように行ってもよい。例えば、最大件数と次の件数との比率(件数比率)と最大復旧率と次の復旧率の比率(復旧率比率)のうち、比率が大きくなっている方、つまり、次の数値に対して最大値が突出している方を選択してもよい。また、例えば、前回の遠隔復旧で失敗した場合には、前回と異なる選択方法をとるようにしてもよい。また、復旧診断指令セットの選択は、例えば、エレベーター20の機種、仕様等によって決定してもよい。
以下の説明では、情報処理装置360が故障コード「0001」に対応する最も件数の多い故障要因1に基づいて復旧診断指令セットAを選択した場合について説明する。
図8のステップS105で復旧診断指令セットAを選択したら、情報処理装置360は、図8のステップS106に進み、選択した復旧診断指令セットAに含まれる復旧指令「ドア回路リセット+ドア高トルク開閉」の復旧率a%が第1閾値未満かどうかを判定する。第1閾値は、例えば、70%あるいは80%のような数値でもよい。また、エレベーター20の機種、設置ビルの用途等によって変化するように設定してもよい。
情報処理装置360は、復旧率a%が第1閾値未満の場合、図8のステップS106でYESと判定して図5のステップS107に進む。また、復旧率a%が第1閾値以上の場合、図8のステップS106でNOと判定して図8のステップS108に進む。
情報処理装置360は、図8のステップS107において、以下の(a)から(c)の3つの要件の内の1つに該当するかどうか判定する。
(a)復旧対応の緊急度が第2閾値を超えている。
(b)技術者350の疲労度が第3閾値を超えている。
(c)エレベーター20またはビル10が予め定めた特定の要件に該当する。
情報処理装置360は、以下のように、(a)から(c)の要件を判定する。
最初に要件(a)の判定について説明する。エレベーター20に故障が発生すると顧客が顧客通話装置500を通じて遠隔監視センター310の電話333に故障通報がある場合がある。ここで、「顧客」とは、エレベーター20の保守契約者であり、例えば、ビル10のオーナー、あるいは、エレベーター20の保守管理会社等である。遠隔監視センター310の監視者334が顧客からの故障通報を受けると、その通報内容は、情報処理装置360を介して保守データベース370の通報履歴データ510に格納される。情報処理装置360は、通報履歴データ510を参照して顧客からの故障通報があったかどうかを確認する。顧客からの故障通報のあった場合、情報処理装置360は通報履歴データ510に格納された通話記録の中から緊急度診断データベース390に格納されている用語と、そのトーンレベルとを抽出する。そして、情報処理装置360は、緊急度診断データベース390を参照して抽出した用語とトーンレベルとから復旧対応の緊急度を取得する。
そして、情報処理装置360は、取得した緊急度が予め定めた第2閾値を超えている場合、要件(a)に該当すると判定する。ここで、第2閾値は、例えば、緊急度が60から70程度の一定値に設定してもよいし、顧客によって変動させるようにしてもよい。
次に要件(b)の判定について説明する。図1に示すように、エレベーター20の復旧を行う技術者350は、脈拍、体温等の身体情報を検出する身体情報センサ351を携帯している。身体情報センサ351の検出した技術者350の身体情報は、通信ネットワーク30、通信装置320を介して保守データベース370の技術者履歴データ410に格納されている。格納されているデータは、数日前、あるいは、1日前までのデータである。情報処理装置360は、エレベーター20に故障が発生すると、故障の発生したエレベーター20に近いサービスセンター340に所属する技術者350の身体情報の検出項目とレベルを技術者履歴データ410から読み出す。そして、情報処理装置360は、技術者診断データベース400を参照して身体情報の検出項目とレベルに基づいて技術者350の疲労度を取得する。
そして、情報処理装置360は、取得した技術者350の疲労度が予め定めた第3閾値を超えている場合、要件(b)に該当すると判定する。ここで、第3閾値は、例えば、疲労度が60から70程度の一定値に設定してもよいし、技術者350の年齢、連続勤務時間等によって変動させるようにしてもよい。
次に、要件(c)の判定について説明する。情報処理装置360は、保守データベース370のエレベーター仕様データ371、故障履歴データ377を参照してエレベーター20、または、エレベーター20の設置されているビル10が予め定めた「特定の要件」に該当しているかどうか判定する。ここで、「特定の要件」とは、例えば、エレベーター20の設置されているビル10の階数が高い、あるいは、エレベーター20の設置されているビル10が病院等である、ビル10のエレベーター20が1台しか設置されていない等がある。このような要件に該当する場合、エレベーター20の停止がビル10の運営に大きな影響を及ぼす可能性があり素早い復旧が求められるためである。また、故障の発生したエレベーター20が過去に何回も故障が発生している場合も特定の要件に該当する。「特定の要件」は上記のような要件に限らず、顧客の要望、保守契約の条件等によって様々に設定することができる。
要件(a)または要件(c)に該当する場合は、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満の場合であっても、エレベーター20の素早い復旧が求められる場合である。このため、情報処理装置360は、要件(a)または要件(c)に該当する場合、図8のステップS107でYESと判定する。そして、図8のステップS108に進み遠隔復旧を開始する。遠隔復旧に成功した場合には、エレベーター20の停止期間を短くすることができ、顧客のニーズに合った復旧対応となる。
要件(b)に該当する場合、技術者350の疲労度が高いため、遠隔復旧により技術者350の負担の低減が求められる場合である。このため、情報処理装置360は、図8のステップS107でYESと判定して図8のステップS108に進んで遠隔復旧を開始する。遠隔復旧に成功した場合には、技術者350を出動させる必要がなくなり、技術者350の負担を低減することができる。
一方、要件(a)から(c)のいずれにも該当せず、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満の場合には、エレベーター20は格別に素早い復旧を求められている状態ではなく、遠隔復旧を実行しても成功する割合が低い故障であり、技術者350の疲労度が高くない状態である。この場合には、遠隔復旧を実行するよりも技術者350を出動させた方が顧客のニーズに合った復旧対応となる。このため、情報処理装置360は、要件(a)から(c)のいずれにも該当しない場合には図8のステップS107でNOと判定し、図8のステップS126に進んで遠隔監視センター310に遠隔復旧不可の通知を出力する。
情報処理装置360から遠隔監視センター310に出力された遠隔復旧不可の通知は、図2に示すように、遠隔監視センター310のディスプレイ331に表示される。監視者334は、この表示を確認したら、図2および図10のステップS127に示すように、エレベーター20の運行休止の指示、および、アナウンス動作を行わせる。そして、監視者334は、電話333によって図2および図10のステップS128に示すように、ビル10近隣のサービスセンター340に技術者350をビル10に派遣するように指示する。
以上説明したように、情報処理装置360は、図8のステップS106でNOと判定した場合、つまり、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値以上の場合、および、図8のステップS107でYESと判定した場合、つまり、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満でも要件(a)から(c)の内のいずれか1つに該当する場合には、図8のステップS108に進み遠隔復旧動作を開始する。
情報処理装置360は、図8のステップS108において、遠隔監視センター310に遠隔復旧開始を通知する。この信号は、遠隔監視センター310のディスプレイ331に表示される。これにより遠隔監視センター310の監視者334にエレベーター20の遠隔復旧が開始されることが通知される。
図8のステップS108に示すように遠隔復旧の開始を通知したら、情報処理装置360は、図2および図9のステップS109に示すように、選択した復旧診断指令セットAを通信装置320から発信する。図2および図9のステップS110に示すように、通信装置250は、通信装置320から復旧診断指令セットAを受信したら、復旧指令と復旧診断指令とを制御盤210に出力する。
制御盤210は、まず、図9のステップS111に示すように、エレベーター20が停止していること、カゴ22の重量センサ、カゴ22内のカメラ、カゴ22内の人物センサ等の出力からカゴ22の中に乗客がいないことを確認する。そして、制御盤210は、エレベーター20が停止していること、カゴ22の中に乗客がいないことを確認したら、カゴ22の中に設置された通話装置のスピーカーから「これから遠隔復旧を開始します。エレベーターのドアが開閉します。」等のアナウンスを行う。
制御盤210は、アナウンスが終了したら、図9のステップS112に進み、復旧指令に従って復旧動作を実行する。いま、受信している復旧指令は、ドア敷居のゴミ詰まり(故障要因1)に対応する復旧動作を実行させる復旧指令である「ドア回路リセット+ドア高トルク開閉」であるから、制御盤210は、まず、制御盤210のドア回路をリセットする。この動作は、ドア回路がドア13またはドア26が開閉不能で、開(または閉)状態、あるいは半開(または半閉)状態を検知している状態をリセットし、ドア13またはドア26を開閉動作可能とする動作である。次に、制御盤210は、ドア13およびドア26の駆動モータのトルクを通常よりも20〜30%高くして通常よりも大きな力でドア13およびドア26を開閉動作させる。この動作は、ドア13または26の敷居に詰まっていたゴミを敷居から移動させ、ドア13、26の開閉動作を通常状態に復旧する動作である。上記動作によってドア13、26の敷居に詰まっていたゴミが移動し、ドア13、26の開閉が復旧したかどうかを確認するため、制御盤210は、図9のステップS113に示すように、復旧診断指令である「ドア開閉診断」を実行する。制御盤210は、通常のトルクでドア13およびドア26の開閉を行い、所定の開閉時間で開閉動作ができているか、ドア13およびドア26の駆動モータの電流が通常よりも大きくなっていないかを確認する。次に制御盤210は、駆動モータのトルクを通常よりも20%程度低くしてドア13およびドア26を開閉し、開閉時間に異常がないかを確認する。
そして、制御盤210は、図9のステップS114に示すように、復旧診断動作によってドア13、26が通常状態に復旧したと判定した場合には、図9のステップS115に進む。ステップS115において、制御盤210は、エレベーター20が復旧したという判定結果信号を出力する。この信号は、通信装置250から通信ネットワーク30に発信される。発信された判定結果信号は、図10のステップS116に示すように通信装置320で受信され、判定結果は情報処理装置360に入力される。また、判定結果は、図10のステップS117に示すように、情報処理装置360から遠隔監視センター310に通知され、その結果が遠隔監視センター310のディスプレイ331に表示される。遠隔監視センター310の監視者334は、この表示を確認したら、図10のステップS118に示すように、エレベーター20の運行再開、および、アナウンス動作を行わせる。また、情報処理装置360は、図10のステップS119、ステップS120に示すように、保守データベース370と、復旧指令データベース380とを更新する。
一方、制御盤210は、復旧診断動作の結果、図9のステップS114でNOと判定した場合には、図9のステップS121に進む。ステップS121において制御盤210は、エレベーター20の復旧に失敗したという判定結果信号を出力する。この信号は、通信装置250から通信ネットワーク30に発信される。発信された判定結果信号は、図10のステップS122に示すように通信装置320で受信され、判定結果は情報処理装置360に入力される。また、判定結果は、図10のステップS123に示すように、情報処理装置360から遠隔監視センター310に通知され、その結果が遠隔監視センター310のディスプレイ331に表示される。監視者334は、この表示を確認したら、図10のステップS124に示すように、エレベーター20の運行休止の指示、および、アナウンス動作を行わせる。また、監視者334は、電話333によって図2および図10のステップS125に示すように、ビル10近隣のサービスセンター340に技術者350をビル10に派遣するように指示する。また、情報処理装置360は、図10のステップS119、ステップS120に示すように、保守データベース370と、復旧指令データベース380とを更新する。
情報処理装置360は、図9のステップS115に示すようなエレベーター20が復旧したという判定信号が入力された場合、次のように、保守データベース370を更新する。
図9のステップS115に示すようなエレベーター20が復旧したという判定信号が入力された場合には、情報処理装置360は、故障履歴データ377の復旧方法の項目に「遠隔復旧」、復旧判定結果の項目に「復旧」を格納する。先に、説明したように、通信装置320が故障信号を受信した際に、情報処理装置360は、通信装置320から入力された故障コード「0001」とエレベーター20の管理番号、故障発生日時を保守データベース370の故障履歴データ377に格納している。従って、今回の復旧方法、復旧判定結果の格納により、故障履歴データ377の全ての項目が更新されることになる。
また、今回の遠隔復旧において情報処理装置360は、復旧指令データベース380を参照して、復旧指令として故障コード「0001」の場合に最も件数の多い故障要因であるドア敷居のゴミ詰まり(故障要因1)に対応する復旧動作を実行させる復旧指令である「ドア回路リセット+ドア開閉リトライ」と、この復旧動作の結果に対応する復旧診断動作を実行させる復旧診断指令である「ドア開閉診断」の2つからなる復旧診断指令セットAを選択して復旧動作および復旧診断動作を実行させている。従って、エレベーター20の復旧に成功した場合には、復旧指令データベース380の故障コード「0001」、故障要因1(ドア敷居のゴミ詰まり)の件数を1件多くし、復旧に成功した分だけ復旧率を高くする。また、情報処理装置360は、故障要因別データ379の故障コード「0001」の故障要因1の件数を1件多くする。
一方、情報処理装置360は、図9のステップS121に示すようなエレベーター20の復旧に失敗したという判定信号が入力された場合、次のように、保守データベース370と復旧指令データベース380を更新する。図9のステップS121に示すようなエレベーター20の復旧に失敗したという判定信号が入力された場合には、情報処理装置360は、故障履歴データ377の復旧方法の項目に「遠隔復旧」、復旧判定結果の項目に「失敗」を格納する。また、復旧指令データベース380の故障コード「0001」、故障要因1(ドア敷居のゴミ詰まり)の件数はそのままとし、復旧に失敗した分だけ復旧率を低下させる。なお、復旧に失敗した場合には、故障要因別データ379の故障コード「0001」の故障要因1の件数は変更されない。
以上の説明では、情報処理装置360が故障コード「0001」に対応する最も件数の多い故障要因に基づいて復旧診断指令セットAを選択した場合について説明した。情報処理装置360が故障コード「0001」に対応する復旧診断指令セットの復旧率に基づいて復旧診断指令セットBを選択した場合には、「ドア高トルク開閉」の復旧動作に代えて、通常のトルクでドア13、26の開閉動作を再度行う「ドア開閉リトライ」の復旧動作を行う点が異なる。その他の動作は復旧診断指令セットAを選択した場合と同様である。
エレベーター20の遠隔復旧に成功すると、それまで、故障コード「0001」の場合に最も件数の多い故障要因であったドア敷居のゴミ詰まり(故障要因1)の件数が多くなる。このため、遠隔復旧システム100が故障コード「0001」に対応する最も件数の多い故障要因に基づいて復旧診断指令セットを選択する場合、次の遠隔復旧の際に故障コード「0001」が入力された際に、情報処理装置360は、再度、復旧診断指令セットAを選択する。また、復旧診断指令セットAの復旧率が復旧診断指令セットBの復旧率よりも高くなった場合には、情報処理装置360が故障コード「0001」に対応する複数の指令の内で復旧率が最も高い指令を復帰指令として選択する場合でも、復旧診断指令セットAを選択する。
一方、エレベーター20の遠隔復旧に失敗すると、故障要因別データ379の故障コード「0001」の故障要因1の件数は変更されないが、復旧診断指令セットAの復旧率が低下する。これにより、復旧診断指令セットBの復旧率が相対的に高くなる。つまり、復旧診断指令セットBの復旧診断指令セットAに対する復旧率比率が高くなる。この復旧率比率が故障要因2の件数に対する故障要因1の件数の比率として計算される件数比率よりも大きくなると、情報処理装置360は、故障コード「0001」に対応する複数の指令の内で復旧率が最も高い指令を復帰指令として選択するようになる。このため、情報処理装置360は、次の遠隔復旧の際に故障コード「0001」が入力された場合には、復旧率が最も高い復旧診断指令セットBを選択する。また、情報処理装置360が前回の遠隔復旧で復旧に失敗した復旧診断指令セットAを選択しない場合には、故障要因1の次に故障コード「0001」に対応する件数の多い故障要因2にリンクした復旧診断指令セットBを選択する。
また、情報処理装置360が故障コード「0001」に対応する複数の指令の内で復旧率が最も高い復旧診断指令セットBを選択してエレベーター20の復旧に成功した場合には、復旧診断指令セットBの復旧率が高くなる。従って、情報処理装置360は、次の遠隔復旧では、前回と同様、復旧診断指令セットBを選択する。一方、復旧診断指令セットBでエレベーター20の復旧に失敗した場合には復旧診断指令セットBの復旧率が低くなる。そして、復旧診断指令セットBの復旧率が復旧診断指令セットAの復旧率よりも低くなったら、情報処理装置360は、復旧診断指令セットAを選択する。なお、情報処理装置360が前回の遠隔復旧で復旧に失敗した復旧診断指令セットBを選択しない場合には、復旧診断指令セットBの次に故障コード「0001」に対応する復旧率の高い復旧診断指令セットAを選択する。
このように、遠隔復旧システム100は、遠隔復旧に成功すると故障要因の件数、選択した復旧診断指令セットの復旧率を増加させる。また、遠隔復旧システム100は、遠隔復旧に失敗すると故障要因の件数はそのままで、選択した復旧診断指令セットの復旧率を低下させる。このため、遠隔復旧に成功すると、その遠隔復旧で選択した復旧診断指令セットが次の遠隔復旧の際に選択される可能性が高くなる。また、遠隔復旧に失敗するとその遠隔復旧で選択した復旧診断指令セットが次の遠隔復旧の際に選択される可能性が低くなる。このため、遠隔復旧の回数が多くなるに従って、情報処理装置360は、復旧指令データベース380から故障コードに対応した復旧可能性の高い復旧診断指令セットを選択できるようになり、エレベーター20の復旧の確実性を向上させていくことができる。
次に、制御盤210の中に組み込まれている制御回路に関する故障コード「0002」が発信された場合の遠隔復旧動作について説明する。先に説明した故障コード「0001」が発信された場合の遠隔復旧動作と同様の動作については、説明を省略する。
故障コード「0002」が発信された場合、情報処理装置360は、図8のステップS105において、図5の符号382に示す、故障コードが制御回路に関する故障を示す「0002」の場合の復旧指令データベース380を参照して復旧診断指令セットD〜Fの内の1つを選択する。
情報処理装置360は、図8のステップS105で復旧診断指令セットD〜Fの内の1つを選択したら、図8のステップS106に進み、選択した復旧診断指令セットに含まれる復旧指令の復旧率(c%、d%、f%)が第1閾値未満かどうかを判定する。そして、復旧率が第1閾値未満の場合、図8のステップS106でYESと判定して図5のステップS107に進む。また、復旧率が第1閾値以上の場合、図8のステップS106でNOと判定して図8のステップS108に進む。
情報処理装置360は、図9のステップS107において、故障コード「0001」の場合と同様、要件(a)から(c)の1つに該当するか判定し、図8のステップS106でNOと判定した場合、および、図8のステップS107でYESと判定した場合、つまり、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満でも要件(a)から(c)の内のいずれか1つに該当する場合には、図8のステップS108に進み遠隔復旧動作を開始する。
図8のステップS108以下において、復旧診断指令セットD〜Fから選択された1つの復旧診断指令セットに含まれる復旧動作、復旧診断動作を行う。例えば、復旧診断指令セットDを選択した場合、情報処理装置360は、復旧指令として「制御回路リセット」、復旧診断指令として「各階運転診断」を実行する。これ以外の図8のステップS108以降の動作は、故障コード「0001」の場合と同様である。
以上説明したように、本実施形態の遠隔復旧システム100は、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満の場合には、遠隔復旧を禁止してすぐに技術者350を出動させることにより、エレベーター20の停止時間を短くすることができる。また、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満の場合であっても、エレベーター20の素早い復旧が求められる場合には遠隔復旧を実行する。これにより、遠隔復旧に成功した場合には、エレベーター20の停止期間を短くすることができ、顧客のニーズに合った復旧対応を行うことができる。
また、本実施形態の遠隔復旧システム100は、選択した復旧指令の復旧率が第1閾値未満の場合であっても、技術者350の疲労度が高い場合には、遠隔復旧を実行する。これにより、遠隔復旧に成功した場合には、技術者350を出動させる必要がなくなり、技術者350の負担を低減することができる。
また、遠隔復旧システム100は、復旧判定結果に基づいて次回の遠隔復旧の際により復旧可能性が高い復旧診断指令セットを選択することができるように、故障履歴データ377、故障要因別データ379、復旧指令データベース380を更新する。このため、遠隔復旧の回数が多くなるに従って、情報処理装置360は、復旧指令データベース380から故障コードに対応したより適切な復旧診断指令セットを選択できるようになる。これにより、更に、エレベーター20の復旧を確実に行うことができ、復旧にかかる時間を短縮してエレベーター20の運行サービス向上を図ることができる。
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲により規定されている本発明の技術的範囲ないし本質から逸脱することない全ての変更および修正を包含するものである。