以下、本発明に係る作業機械の駆動装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
[第1実施形態]
本発明に係る駆動装置の第1実施形態は、油圧回路を含む油圧駆動装置100(図2参照)から成り、作業機械、例えば図1に示す油圧ショベル1に搭載される。この油圧ショベル1は、クローラ式の走行装置2Aを含む走行体2と、この走行体2の上側に旋回装置3A(図2参照)を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、この旋回体3の前方に取付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行うフロント作業機4とを備えている。
走行装置2Aは、圧油が供給されて回転駆動する走行モータ(図示せず)を含み、この走行モータの出力によって走行体2のクローラが地面に接地された状態で回動することにより、クローラと地面との摩擦力を利用して車体が移動する。旋回装置3Aは、圧油が供給されて回転駆動する旋回モータ3a(図2参照)を含み、この旋回モータ3aの出力によって旋回体3が走行体2に対して旋回する。
旋回体3は、前部に配置され、フロント作業機4を操作するオペレータが搭乗する運転室5と、後部に配置され、車体が傾倒しないように車体のバランスを保つカウンタウェイト6と、これらの運転室5とカウンタウェイト6との間に配置され、後述のエンジン11や油圧ポンプ12〜15等(図2参照)を内部に収容するエンジンルーム7と、車体の動作全体を制御するコントローラ8(図2参照)とを備えている。
フロント作業機4は、基端が旋回体3に回動可能に取付けられ、車体に対して上下方向へ回動するブーム4Aと、このブーム4Aの先端に回動可能に取付けられ、車体に対して上下方向へ回動するアーム4Bと、このアーム4Bの先端に回動可能に装着され、車体に対して上下方向へ回動するバケット4Cとを含んでいる。
また、フロント作業機4は、旋回体3とブーム4Aとの間に設けられ、伸縮することによりブーム4Aを回動させるブームシリンダ4aと、ブーム4Aとアーム4Bとの間に設けられ、伸縮することによってアーム4Bを回動させるアームシリンダ4bと、アーム4Bとバケット4Cとの間に設けられ、伸縮することによってバケット4Cを回動させるバケットシリンダ4cとを含んでいる。これらのブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、上述の走行モータ、及び旋回モータ3aが油圧アクチュエータをそれぞれ構成している。
図2に示すように、ブームシリンダ4aは、圧油が供給されるシリンダチューブ4a1と、このシリンダチューブ4a1内に摺動自在に収容され、シリンダチューブ4a1内をボトム室4a2とロッド室4a3とに区画するピストン4a4と、シリンダチューブ4a1のロッド室4a3内に一部が収容され、ピストン4a4に基端が連結されたピストンロッド4a5とから構成されている。
このような構成のブームシリンダ4aでは、圧油がシリンダチューブ4a1のボトム室4a2に供給されると、ボトム室4a2内の圧力が上昇してピストン4a4がロッド室4a3側へ押出されることにより、ピストンロッド4a5がシリンダチューブ4a1の外側へ伸長する。一方、圧油がシリンダチューブ4a1のロッド室4a3に供給されると、ロッド室4a3内の圧力が上昇してピストン4a4がボトム室4a2側へ押戻されることにより、ピストンロッド4a5がシリンダチューブ4a1の内側へ縮退する。
アームシリンダ4bは、ブームシリンダ4aと同様に、ボトム室4b2とロッド室4b3を有するシリンダチューブ4b1、ピストン4b4、及びピストンロッド4b5から構成され、圧油により上述のブームシリンダ4aと同様の動作が行われる。バケットシリンダ4cは、ブームシリンダ4aと同様に、ボトム室4c2とロッド室4c3を有するシリンダチューブ4c1、ピストン4c4、及びピストンロッド4c5から構成され、圧油により上述のブームシリンダ4aと同様の動作が行われる。すなわち、これらのブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、及びバケットシリンダ4cはそれぞれ油圧片ロッドシリンダから構成されている。
図1に示す運転室5は、コントローラ8に電気的に接続され、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、及び旋回モータ3aを操作するための操作装置としての一対の操作レバー5A,5B(図2参照)と、コントローラ8に電気的に接続され、走行モータを操作するための走行レバー(図示せず)とを含んでいる。なお、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、走行モータ、及び旋回モータ3aの動作方向及び動作速度は、操作レバー5A,5B及び走行レバーの操作方向及び操作量によって予め設定されている。
操作レバー5Aは、前後方向に操作されると、その操作量XSWに対応して旋回体3を左右に旋回させるように設定されている。また、操作レバー5Aは、左右方向に操作されると、その操作量XAMに対応してアーム4Bを上下方向へ回動させるように設定されている。操作レバー5Bは、前後方向に操作されると、その操作量XBMに対応してブーム4Aを上下方向へ回動させるように設定されている。また、操作レバー5Bは、左右方向に操作されると、その操作量XBKに対応してバケット4Cを上下方向へ回動させるように設定されている。
コントローラ8は、例えば図示されないが、車体の動作全体を制御するための各種の演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置と、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)とを含むハードウェアから構成されている。
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD、もしくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAMに読出され、CPUの制御に従って動作することによりプログラム(ソフトウェア)とハードウェアとが協働して、コントローラ8の機能を実現する機能ブロックが構成される。なお、本発明の第1実施形態の特徴をなすコントローラ8の機能構成の詳細については後述する。
本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置100は、旋回体3の内部に設けられ、運転室5内の操作レバー5A,5B及び走行レバーの操作に応じて、圧油を生成してブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、走行モータ、及び旋回モータ3aを駆動する。以下、これらの油圧アクチュエータ4a〜4c,3aを駆動するための油圧駆動装置100の構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。なお、走行モータについては旋回モータ3aと同様に機能し、この旋回モータ3aと重複するため、走行モータに関する説明を省略する。
図2に示すように、油圧駆動装置100は、原動機としてのエンジン11と、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、及び旋回モータ3aに対応してそれぞれ設けられ、エンジン11によって駆動される可変容量型の第1ないし第4油圧ポンプ12〜15と、所定のギヤ等を介してエンジン11と第1ないし第4油圧ポンプ12〜15とを接続し、エンジン11の動力を第1ないし第4油圧ポンプ12〜15に伝達する動力伝達装置16と、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15へ供給するための作動油を貯蔵する作動油タンク17とを備えている。
エンジン11には、動力伝達装置16を介してチャージポンプ21が接続されている。このチャージポンプ21の吐出側は管路22に接続され、この管路22はリリーフ弁23を介して作動油タンク17に接続されている。リリーフ弁23は、管路22内の圧力が予め設定された圧力以上になったとき、管路22内の作動油を作動油タンク17へ排出する。
一方、チャージポンプ21の吸入側は作動油タンク17に接続され、チャージポンプ21は作動油タンク17内の作動油を吸入して管路22へ吐出する。また、エンジン11には、このエンジン11の回転数Nengを検出する回転数検出器としての回転数センサ11Aが取付けられており、この回転数センサ11Aは、コントローラ8に電気的に接続されている。
第1油圧ポンプ12は、作動油を吸入又は吐出するための一対の入出力ポート12A,12Bと、これらの入出力ポート12A,12Bの作動油の入出量及び入出方向を調整するための両傾転式の斜板12Cとを含む両傾転斜板機構を備えている。また、第1油圧ポンプ12には、斜板12Cの傾転角を調整するための流量調整部であるレギュレータ12Dが設けられている。
レギュレータ12Dは、信号線24を介してコントローラ8に通信接続されている。第1油圧ポンプ12の各入出力ポート12A,12Bからの作動油の吸吐出流量及び吸吐出方向は、コントローラ8から信号線24を経てレギュレータ12Dに入力される電気的な制御信号によって制御される。
第1油圧ポンプ12の一方の入出力ポート12Aは、一端がブームシリンダ4aのボトム室4a2に接続された管路31Aの他端に接続され、他方の入出力ポート12Bは、一端がブームシリンダ4aのロッド室4a3に接続された管路31Bの他端に接続されている。従って、ブームシリンダ4aは、管路31A,31Bを介して接続され、第1油圧ポンプ12によって直接駆動する。このように、第1油圧ポンプ12、ブームシリンダ4a、管路31A及び管路31Bは第1閉回路32を形成している。
この第1閉回路32において、ブームシリンダ4aは第1油圧ポンプ12から供給される作動油によって伸縮駆動するので、ブームシリンダ4aの伸縮方向、すなわち伸長方向及び縮退方向は、第1油圧ポンプ12の入出力ポート12A,12Bの一方から吐出される作動油の吐出方向に応じて定められる。
ブームシリンダ4aのボトム室4a2及びロッド室4a3の作動油の圧力は、ピストン4a4のボトム室4a2側の受圧面及びロッド室4a3側の受圧面にそれぞれ作用する。そして、ピストン4a4の各受圧面に作用する圧力の差がシリンダチューブ4a1内でピストン4a4を移動させる推力となる。なお、アームシリンダ4b及びバケットシリンダ4cの構成はブームシリンダ4aと同様であるので、アームシリンダ4b及びバケットシリンダ4cの動作原理もブームシリンダ4aと同様である。
また、第1閉回路32には、管路31A,31Bのうち低圧側の管路を管路22に接続し、当該低圧側の管路内の作動油を管路22へ導くフラッシング弁33と、管路31A,31B内の圧力が予め設定された圧力以上になったとき、管路31A,31B内の作動油を管路22へ排出するリリーフ弁34A,34Bと、管路31A,31B内の圧力が予め設定された圧力未満になったとき、チャージポンプ21から吐出される作動油を管路22から管路31A,31Bへ供給するチェック弁35A,35Bとが設けられている。
さらに、第1閉回路32には、管路31A,31Bのうちブームシリンダ4aのボトム室4a2及びロッド室4a3側に取付けられ、ボトム室4a2及びロッド室4a3内の圧力をそれぞれ検出する圧力センサ36A,36Bと、管路31A,31Bのうち第1油圧ポンプ12の入出力ポート12A,12B側に取付けられ、第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1をそれぞれ検出する吐出流量検出器としての流量センサ37A,37Bとが設けられている。これらの圧力センサ36A,36B及び流量センサ37A,37Bはコントローラ8に電気的に接続されている。
第2油圧ポンプ13は、第1油圧ポンプ12と同様に、作動油を吸入又は吐出するための一対の入出力ポート13A,13Bと、これらの入出力ポート13A,13Bの作動油の入出量及び入出方向を調整するための両傾転式の斜板13Cとを含む両傾転斜板機構を備えている。また、第2油圧ポンプ13には、第1油圧ポンプ12と同様に、斜板13Cの傾転角を調整するための流量調整部であるレギュレータ13Dが設けられている。
第2油圧ポンプ13の一方の入出力ポート13Aは、一端がアームシリンダ4bのボトム室4b2に接続された管路41Aの他端に接続され、他方の入出力ポート13Bは、一端がアームシリンダ4bのロッド室4b3に接続された管路41Bの他端に接続されている。従って、アームシリンダ4bは、管路41A,41Bを介して接続され、第2油圧ポンプ13によって直接駆動する。このように、第2油圧ポンプ13、アームシリンダ4b、管路41A及び管路41Bは第2閉回路42を形成している。この第2閉回路42には、第1閉回路32と同様に、フラッシング弁43、リリーフ弁44A,44B、チェック弁45A,45B、圧力センサ46A,46B、及び流量センサ47A,47Bが設けられている。
第3油圧ポンプ14は、第1油圧ポンプ12と同様に、作動油を吸入又は吐出するための一対の入出力ポート14A,14Bと、これらの入出力ポート14A,14Bの作動油の入出量及び入出方向を調整するための両傾転式の斜板14Cとを含む両傾転斜板機構を備えている。また、第3油圧ポンプ14には、第1油圧ポンプ12と同様に、斜板14Cの傾転角を調整するための流量調整部であるレギュレータ14Dが接続されている。
第3油圧ポンプ14の一方の入出力ポート14Aは、一端がバケットシリンダ4cのボトム室4c2に接続された管路51Aの他端に接続され、他方の入出力ポート14Bは、一端がバケットシリンダ4cのロッド室4c3に接続された管路51Bの他端に接続されている。従って、バケットシリンダ4cは、管路51A,51Bを介して接続され、第3油圧ポンプ14によって直接駆動する。このように、第3油圧ポンプ14、バケットシリンダ4c、管路51A及び管路51Bは第3閉回路52を形成している。この第3閉回路52には、第1閉回路32と同様に、フラッシング弁53、リリーフ弁54A,54B、チェック弁55A,55B、圧力センサ56A,56B、及び流量センサ57A,57Bが設けられている。
第4油圧ポンプ15は、第1油圧ポンプ12と同様に、作動油を吸入又は吐出するための一対の入出力ポート15A,15Bと、これらの入出力ポート15A,15Bの作動油の入出量及び入出方向を調整するための両傾転式の斜板15Cとを含む両傾転斜板機構を備えている。また、第4油圧ポンプ15には、第1油圧ポンプ12と同様に、斜板15Cの傾転角を調整するための流量調整部であるレギュレータ15Dが接続されている。
第4油圧ポンプ15の一方の入出力ポート15Aは、一端が旋回モータ3aの一方の入出力ポート3a1に接続された管路61Aの他端に接続され、他方の入出力ポート15Bは、一端が旋回モータ3aの他方の入出力ポート3a2に接続された管路61Bの他端に接続されている。従って、旋回モータ3aは、管路61A,61Bを介して接続され、第4油圧ポンプ15によって直接駆動する。このように、第4油圧ポンプ15、旋回モータ3a、管路61A及び管路61Bは第4閉回路62を形成している。この第4閉回路62には、第1閉回路32と同様に、フラッシング弁63、リリーフ弁64A,64B、チェック弁65A,65B、圧力センサ66A,66B、及び流量センサ67A,67Bが設けられている。
本発明の第1実施形態に係る第1閉回路32には、管路31A,31Bのうち、ブーム4Aの自重による下げ動作に伴って第1油圧ポンプ12を回生駆動させるブームシリンダ4aからの戻り油が導かれる管路31Aに設けられ、この管路31A内の戻り油の流量QVを調整する流量調整弁としての比例弁38がさらに設けられている。
この比例弁38は、信号線24を介してコントローラ8に通信接続され、コントローラ8によって比例弁38の開度が調整されることにより、管路31Aから作動油タンク17へ向けて比例弁38を通過する作動油の流量QVが制御される。なお、本発明の第1実施形態は、ブームシリンダ4aを有する第1閉回路32に比例弁38を設けた場合について説明したが、この場合に限らず、他の油圧アクチュエータ4b,4c,3aのうち回生することが可能な油圧アクチュエータを有する閉回路、例えば、アームシリンダ4bを有する第2閉回路42に比例弁38を設けてもよい。
次に、本発明の第1実施形態の特徴をなすコントローラ8の機能構成について、図3を参照しながら詳細に説明する。
本発明の第1実施形態に係るコントローラ8は、運転室5内の操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK,XSWに応じて、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を制御するように構成されている。
具体的には、図3に示すように、コントローラ8は、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4の目標値に相当する目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4を算出する目標流量指令値算出部81と、この目標流量指令値算出部81によって算出された目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4を入力し、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の合計出力である合計馬力Ltotalを算出する出力算出部としての馬力算出部82とを含んでいる。
また、コントローラ8は、馬力算出部82によって算出された合計馬力Ltotalに基づいて、エンジン11に対する負荷動力Leを演算する負荷動力演算部83と、この負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leに応じて、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の動作を制御すると共に、目標流量指令値算出部81によって算出された目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4、及び流量センサ37A,37B,47A,47B,57A,57B,67A,67Bによって検出された第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4に基づいて、比例弁38の動作を制御するポンプ・比例弁制御部84とを含んでいる。
目標流量指令値算出部81は、図4に示すように、油圧アクチュエータ4a〜4c,3a毎に予め設定された操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK,XSWと、操作レバー5A,5Bに対応する第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4との第1ないし第4関係81A〜81Dを記憶している。そして、目標流量指令値算出部81は、操作レバー5A,5Bからの操作信号を受信し、操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK,XSWを第1ないし第4関係81A〜81Dにそれぞれ適用することにより、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4を算出する。
図4においては、油圧アクチュエータ4a〜4cを伸長方向へ動作させる操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK、及び油圧アクチュエータ4a〜4cのボトム室4a2〜4c2に流入する作動油の流量qSP1,qSP2,qSP3をそれぞれ正の値とし、油圧アクチュエータ4a〜4cを縮退方向へ動作させる操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK、及び油圧アクチュエータ4a〜4cのロッド室4a3〜4c3に流入する作動油の流量QSP1,QSP2,QSP3をそれぞれ負の値として定義する。
図4に示す例では、操作レバー5Bの操作量XBMがブーム下げの動作に対応する−X1であるため、目標流量指令値算出部81によって算出される目標流量指令値qSP1は−Q1となる。旋回モータ3aに対しては、旋回体3を右旋回させる操作レバー5Aの操作量XSW、及び旋回モータ3aの入出力ポート3a1に流入する作動油の流量QSP4をそれぞれ正の値とし、旋回体3を左旋回させる操作レバー5Aの操作量XSW、及び旋回モータ3aの入出力ポート3a2に流入する作動油の流量QSP4をそれぞれ負の値として定義する。
馬力算出部82は、各第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の出力馬力LSP1〜LSP4を加算することにより、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の合計馬力Ltotalを求めることができる。すなわち、下記の数式(1)が成立する。
本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置100の油圧回路は、第1ないし第4閉回路32,42,52,62から構成される油圧閉回路システムであることから、各油圧アクチュエータ4a〜4c,3aと第1ないし第4油圧ポンプ12〜15との間で絞りによる圧力損失はない。よって、各第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出圧と各油圧アクチュエータ4a〜4c,3aに供給される作動油の圧力とが略等しくなる。
第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の馬力LSP1〜LSP4は、油圧アクチュエータ4a〜4c,3aの流入圧と流出圧の差をそれぞれΔPBM,ΔPAM,ΔPBK,ΔPSWとすると、これらの変数を用いて下記の数式(2)〜(5)により表される。
これらの数式(2)〜(5)を数式(1)に代入すると、馬力算出部82によって算出される第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の合計馬力Ltotalは、下記の数式(6)により表される。なお、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15のポンプ効率については無視している。
馬力算出部82は、圧力センサ36A,36B,46A,46B,56A,56Bによって検出された油圧アクチュエータ4a〜4cのボトム室4a2〜4c2内の圧力とロッド室4a3〜4c3内の圧力との差から油圧アクチュエータ4a〜4cの流入圧と流出圧の差ΔPBM,ΔPAM,ΔPBKを算出する。また、馬力算出部82は、圧力センサ66A,66Bによって検出された旋回モータ3aの入出力ポート3a1側の圧力と入出力ポート3a2側の圧力との差から旋回モータ3aの流入圧と流出圧の差ΔPSWを算出する。これらの油圧アクチュエータ4a〜4c,3aの流入圧と流出圧の差ΔPBM,ΔPAM,ΔPBK,ΔPSWの算出は動作方向毎に行われる。
油圧アクチュエータ4a〜4c,3aの動作方向は、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4の極性で判断される。すなわち、ブーム上げの動作の場合には、ブームシリンダ4aの目標流量指令値qSP1は正の値になることから、ブームシリンダ4aの流入圧と流出圧の差ΔPBMは、ボトム室4a2内の圧力からロッド室4a3内の圧力を減算することにより求められる。例えば、ボトム室4a2内の圧力が17MPaであり、ロッド室4a3内の圧力が2MPaであれば、ブームシリンダ4aの流入圧と流出圧の差ΔPBMは15MPaとなる。
一方、ブーム下げの動作の場合には、ブームシリンダ4aの目標流量指令値qSP1は負の値になることから、ブームシリンダ4aの流入圧と流出圧の差ΔPBMは、ロッド室4a3内の圧力からボトム室4a2内の圧力を減算することにより求められる。このブーム下げの動作の場合には、ブーム4Aの自重が付加され、ボトム室4a2内の圧力がロッド室4a3内の圧力よりも大きくなることから、例えば、ボトム室4a2内の圧力が17MPaであり、ロッド室4a3内の圧力が2MPaであれば、ブームシリンダ4aの流入圧と流出圧の差ΔPBMは−15MPaとなり、第1油圧ポンプ12が動力回生に使用できることが把握される。なお、他の油圧アクチュエータ4b,4c,3aについても同様にして求められる。
負荷動力演算部83は、馬力算出部82によって算出された合計馬力Ltotalとエンジン11の摩擦損失動力Lefrcとを加算することにより、エンジン11に対する負荷動力Leを求める。すなわち、下記の数式(7)が成立する。なお、摩擦損失動力Lefrcには、エンジン11自体の摩擦損失の他、オルタネータやエアコン用コンプレッサ等の補機類(図示せず)を駆動する動力も含まれている。
ポンプ・比例弁制御部84は、条件判定部841、吐出流量制御部842、及び開度制御部843を含んで構成されている。条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leが、予め設定された正の閾値として、例えば、エンジン11の出力可能な最大の動力を示す最大許容動力Lemax以下であるかどうかを判定する。なお、この最大許容動力Lemaxは第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を制御するための上記正の閾値の一例であり、例えば、この正の閾値にエンジン11の定格馬力等を用いてもよい。
また、条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leが予め設定された負の閾値Lemin以上であるかどうかを判定する。なお、この負の閾値Leminを設定しているのは、回生動力を最大限に得るためである。つまり、エンジン11に対する負荷動力Leが負になると、エンジン11に対して力行動力を与える必要がないので、エンジン11における燃料の噴射が停止され、エンジン11の燃料消費が0となる。その際、エンジン11の回転数Nengは増加するが、この回転数Nengが許容範囲内に収まるように負の閾値Leminが設定されている。
さらに、条件判定部841は、流量センサ37A,37B,47A,47B,57A,57B,67A,67Bによって検出された第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4が操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK,XSWに対応する目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4よりも少ないかどうかを判定する。また、条件判定部841は、回転数センサ11Aによって検出されたエンジン11の回転数Nengが予め設定された回転数(以下、便宜的に許容回転数と称する)Nlimitを超えているかどうかを判定する。
吐出流量制御部842は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leが、エンジン11の最大許容動力Lemaxと負の閾値Leminとの間の範囲に収まるように、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を制御する。また、吐出流量制御部842は、回転数センサ11Aによって検出されたエンジン11の回転数Nengが許容回転数Nlimitを超えている場合に、負荷動力演算部83によって演算される負荷動力Leが0よりも大きくなるように、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を制御する。
開度制御部843は、流量センサ37A,37Bによって検出された第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が操作レバー5Bの操作量XBMに対応する目標流量指令値qSP1よりも少ない場合に、比例弁38を開く制御を行う。その際、開度制御部843は、例えば、流量センサ37A,37Bによって検出された第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1と操作レバー5Bの操作量XBMに対応する目標流量指令値qSP1に基づいて、比例弁38の開度を算出して比例弁38を通過する流量QVを調整する。なお、開度制御部843は、流量センサ37A,37Bの代わりに、圧力センサ36Aによって検出されたブームシリンダ4aのボトム室4a2内の圧力に基づいて、比例弁38を通過する流量QVを調整してもよいし、あるいは比例弁38の代わりに、圧力補償型の比例弁を用いて流量QVを調整してもよい。
次に、本発明の第1実施形態に係るコントローラ8の制御処理について、図5のフローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、本発明の第1実施形態の内容を分かり易くするために、少なくともブーム下げの動作が行われ、第1油圧ポンプ12でのみ回生される場合を示す。
まず、図5に示すように、操作レバー5A,5Bが操作されると、コントローラ8の目標流量指令値算出部81は、操作レバー5A,5Bからの操作信号を受信し((ステップ(以下、Sと記す)501))、操作レバー5A,5Bの操作量XBM,XAM,XBK,XSWを、予め記憶した第1ないし第4関係81A〜81Dに対してそれぞれ適用することにより、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4を算出する(S502)。
次に、コントローラ8の馬力算出部82は、圧力センサ36A,36B,46A,46B,56A,56B,66A,66Bからの検出信号を受信し、上述の数式(1)〜(6)を基に、圧力センサ36A,36B,46A,46B,56A,56B,66A,66Bによって検出された油圧アクチュエータ4a〜4cのボトム室4a2〜4c2内の圧力、ロッド室4a3〜4c3内の圧力、旋回モータ3aの入出力ポート3a1側の圧力、入出力ポート3a2側の圧力、及び目標流量指令値算出部81によって算出された第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4から第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の合計馬力Ltotalを算出する(S503)。
そして、コントローラ8の負荷動力演算部83は、馬力算出部82によって算出された合計馬力Ltotalとエンジン11の摩擦損失動力Lefrcとを加算することにより、エンジン11に対する負荷動力Leを演算する(S504)。次に、コントローラ8におけるポンプ・比例弁制御部84の条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leがエンジン11の最大許容動力Lemax以下であるかどうかを判定する(S505)。
このとき、条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leがエンジン11の最大許容動力Lemaxを超えていると判定すると(S505/No)、ポンプ・比例弁制御部84の吐出流量制御部842は、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15のうち力行している油圧ポンプの斜板の傾転角を減少させる制御信号を、レギュレータ12D,13D,14D,15Dのうち対応するものへ送信し(S506)、S501からの処理が繰り返される。つまり、S506では、エンジン11に対する負荷動力Leを最大許容動力Lemax以下に調整する、いわゆる一般的な馬力制御が行われる。
一方、S505において、条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leがエンジン11の最大許容動力Lemax以下であると判定すると(S505/Yes)、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leが負の閾値Lemim以上であるかどうかを判定する(S507)。
このとき、条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leが負の閾値Lemim未満であると判定すると(S507/No)、吐出流量制御部842は、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15のうち回生している油圧ポンプ12の斜板12Cの傾転角を減少させる制御信号をレギュレータ12Dへ送信する(S508)。これにより、第1油圧ポンプ12の回生動力を減少できるので、エンジン11の回転数Nengの増加を抑制することができる。
その後、条件判定部841は、流量センサ37A,37Bによって検出された第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が操作レバー5Bの操作量XBMに対応する目標流量指令値qSP1よりも少ないかどうかを判定する(S509)。このとき、条件判定部841は、流量センサ37A,37Bによって検出された第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が操作レバー5Bの操作量XBMに対応する目標流量指令値qSP1と等しい、あるいは吐出流量QSP1が目標流量指令値qSP1よりも多いと判定すると(S509/No)、S501からの処理が繰り返される。
S509において、条件判定部841は、流量センサ37A,37Bによって検出された第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が操作レバー5Bの操作量XBMに対応する目標流量指令値qSP1よりも少ないと判定すると(S509/Yes)、ポンプ・比例弁制御部84の開度制御部843は、S508における油圧ポンプ12の斜板12Cの傾転角の減少に伴い、目標流量指令値qSP1に対して第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が低下した分量を管路31Aから排出する比例弁38の開度を算出する。
そして、開度制御部843は、算出した開度を指令する制御信号を比例弁38へ送信し(S510)、S501からの処理が繰り返される。これにより、操作レバー5Bの操作に対して要求通りのブームシリンダ4aの速度VBMを得ることができるので、優れた操作性を実現することができる。
一方、S507において、条件判定部841は、負荷動力演算部83によって演算された負荷動力Leが負の閾値Lemim以上であると判定すると(S507/Yes)、回転数センサ11Aによって検出されたエンジン11の回転数Nengが許容回転数Nlimitを超えているかどうかを判定する(S511)。
このとき、条件判定部841は、回転数センサ11Aによって検出されたエンジン11の回転数Nengが許容回転数Nlimitを超えていると判定すると(S511/Yes)、S508からの処理が行われる。従って、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の馬力LSP1〜LSP4の算出の精度が低い、あるいは斜板12C,13C,14C,15Cの傾転角の制御の応答が遅い等の原因で、エンジン11の回転数Nengが上昇した場合であっても、エンジン11の回転数Nengを許容回転数Nlimit以下に保つことができる。これにより、エンジン11の過負荷によるエンジンストールの発生を効果的に防止することができる。
S511において、条件判定部841は、回転数センサ11Aによって検出されたエンジン11の回転数Nengが許容回転数Nlimit以下であると判定すると(S511/No)、流量センサ37A,37B,47A,47B,57A,57B,67A,67Bによって検出された第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を、PID制御等により目標流量指令値算出部81によって算出された第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の目標流量指令値qSP1,qSP2,qSP3,qSP4に一致させるように指令する制御信号をレギュレータ12D,13D,14D,15Dへそれぞれ送信し(S512)、S501からの処理が繰り返される。
次に、ブーム上げ及びブーム下げの動作が行われたときの操作レバー5Bの操作量XBMに対する第1油圧ポンプ12、比例弁38、エンジン11、及びブーム4Aの動作応答の時間推移について、図6を参照して本発明と従来技術とを適宜比較しながら詳細に説明する。なお、図6において本発明の挙動は実線で表され、従来技術の挙動は点線で表されている。
また、図6は操作レバー5Bの操作量X1に対する第1油圧ポンプ12の目標流量指令値qSP1をq1とし、第1油圧ポンプ12がこの目標流量指令値q1に従って流量Q1をブームシリンダ4aへ吐出した場合に、ブームシリンダ4aの速度VBMがV1となる関係を示している。
時刻t0では、図6(a)に示すように、ブームシリンダ4aを動作させる操作レバー5Bが操作されず、図6(b)、(c)、(f)に示すように、第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1、比例弁38を通過する作動油の流量QV、及びブームシリンダ4aの速度VBMのそれぞれが0になっている。このとき、図6(d)、(e)に示すように、エンジン11は、摩擦損失動力Lefrcのみが作用し、目標回転数Nrefで略一定に駆動している。
時刻t1において、図6(a)に示すように、ブーム上げの動作を指示する操作レバー5Bの操作が行われると、コントローラ8のポンプ・比例弁制御部84による第1油圧ポンプ12の制御に従って、操作レバー5Bの操作量XBMに比例して第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1(>0)が増加することにより、ブームシリンダ4aの速度VBM(>0)が上昇する。
ブーム4Aが空中で動作しているときには、ブームシリンダ4aの圧力が略一定であるため、図6(b)に示すように、第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1の増加に応じて第1油圧ポンプ12の馬力LSP1が数式(2)の関係で増加し、図6(d)に示すように、第1油圧ポンプ12の馬力LSP1の増加分ほどエンジン11に対する負荷動力Leが増大する。
時刻t2において、図6(d)に示すように、エンジン11に対する負荷動力Leがエンジン11の最大許容動力Lemaxを超えると、ポンプ・比例弁制御部84による第1油圧ポンプ12の制御によって第1油圧ポンプ12の斜板12Cの傾転角が絞られるので、第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が減少する。これにより、エンジン11に対する負荷動力Leがエンジン11の最大許容動力Lemax以下に抑えられるので、エンジンストールの発生を防止すると共に、エンジン11の出力を有効に利用してブームシリンダ4aに対して最適な速度VBMを確保することができる。
時刻t3において、図6(a)に示すように、操作レバー5Bが中立位置に戻されて操作量XBMが0になると、図6(b)、(f)に示すように、第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1が減少して0となり、これに伴ってブームシリンダ4aの速度VBMも0となる。このとき、図6(e)に示すように、エンジン11は、目標回転数Nrefで略一定に駆動する元の負荷状態に戻る。
時刻t4において、ブーム下げの動作を指示する操作レバー5Bの操作が行われると、コントローラ8のポンプ・比例弁制御部84による第1油圧ポンプ12の制御に従って、操作レバー5Bの操作量XBM(<0)に比例して第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1(<0)の絶対値が大きくなり、ブームシリンダ4aの速度VBM(<0)が負の方向へ上昇する。
従って、第1油圧ポンプ12は、ブームシリンダ4aのボトム室4a2側である高圧ライン側の管路31Aから作動油を吸い込んでロッド室4a3側である低圧ライン側の管路31Bへ吐出することにより、ブーム4Aが下方へ回動する。このとき、第1油圧ポンプ12は、油圧モータとして動作することにより、図6(d)に示すように、エンジン11に対する負荷動力Leを下げる方向に作用する。すなわち、第1油圧ポンプ12で回生動作が行われるので、エンジン11に対する負荷動力Leが減少し、より少ない燃料噴射量でエンジン11を目標回転数Nrefに保持することができる。これにより、エンジン11の燃費を向上させることができる。
一般に、ブーム4Aは大きな位置エネルギーを有しており、特にバケット4cに土砂等の積荷が満載の状態においては、この積荷の位置エネルギーが加わるので、ブーム下げの動作時の回生動力がより大きくなる。そのため、積荷の位置エネルギーの全てを第1油圧ポンプ12で回生した場合には、図6(e)中の点線で示すように、エンジン11の回転数Nengを著しく増速させる可能性がある。
そこで、時刻t5において、エンジン11に対する負荷動力Leが負の閾値Leminを下回ったとき、すなわちポンプ・比例弁制御部84の条件判定部841によってエンジン11に対する負荷動力Leが負の閾値Lemin未満であると判定されたとき(Le<Lemin)、コントローラ8は、エンジン11における燃料の噴射を停止させ、エンジン11が惰性で回転するように制御する。
このとき、エンジン11に対する負荷動力Leは負の値であることから、第1油圧ポンプ12の回生動力によってエンジン11の回転数Nengが上昇し始め、仮に従来技術のように第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1を、操作レバー5Bに対応する目標流量指令値qSP1に一致させるように制御し続けた場合には、図6(e)中の点線で示すように、エンジン11の回転数Nengが許容回転数Nlimitを超えてしまう。
このようなエンジン11の動作状況を考慮し、本発明の第1実施形態に係るコントローラ8の吐出流量制御部842は、条件判定部841によってエンジン11に対する負荷動力Leが負の閾値Lemin未満であると判定されたとき(Le<Lemin)、油圧ポンプ12の斜板12Cの傾転角を減少させる制御を行う。これにより、エンジン11に対する負荷動力Leを略負の閾値Leminに保持できるので、エンジン11の回転数Nengの著しい増加を抑制しつつ、ブームシリンダ4aからの戻り油による動力の回生を効率良く行うことができる。
ところで、コントローラ8の馬力算出部82による第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の馬力LSP1〜LSP4の算出の精度が、作動油の温度変化や第1ないし第4油圧ポンプ12〜15自体の経年変化等で低下したことに伴って、エンジン11の回転数Nengが許容回転数Nlimitを超えた場合であっても、吐出流量制御部842が回生中の油圧ポンプ12の斜板12Cの傾転角を減少させてエンジン11に対する負荷動力Leを高めることにより、エンジン11の回転数Nengを迅速に低下させて許容回転数Nlimit以下に抑えることができる。これにより、エンジン11の動作の安定性を向上させることができる。
さらに、時刻t5において、第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1は−Q2となり、この流量−Q2と操作レバー5Bの操作量X1から要求される流量−Q1(<−Q2)との差分ΔQ(=−Q2−(−Q1))だけ第1油圧ポンプ12からブームシリンダ4aのロッド室4a3へ供給される作動油の流量が減少する。そのため、ブーム下げの動作中のブームシリンダ4aの速度VBMは、図6(f)の一点鎖線で示す操作レバー5Bの操作量X1に対応する−V1よりも遅い速度−V2(>−V1)になることが考えられる。
そこで、本発明の第1実施形態に係るポンプ・比例弁制御部84の開度制御部843は、流量−Q2と流量−Q1との差分ΔQに相当する流量が管路31Aから排出されるように比例弁38を開く制御を行う。これにより、操作レバー5Bの操作に対して要求通りのブームシリンダ12aの速度−V1を得ることができるので、円滑なブーム下げの動作を実現することができる。
このように構成した本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置100によれば、油圧アクチュエータ4a〜4c,3aの動作から得られた回生動力が大きい場合であっても、ポンプ・比例弁制御部84の吐出流量制御部842は、負荷動力演算部83によって演算される負荷動力Leが最大許容動力Lemaxと負の閾値Leminとの間の範囲内に収まるように、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を制御することにより、エンジン11の回転数Nengが大幅に上昇するのを回避できるので、エンジン11にかかる負荷を軽減することができる。
また、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4が適切に調整されることから、オペレータが操作レバー5A,5Bを操作して油圧アクチュエータ4a〜4c,3aを意図した速度で動かすことができる。このように、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置100は、エンジン11の耐久性を向上させると共に、良好な操作性を確保することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、図2に示すように、第1実施形態に係る油圧駆動装置100は、油圧アクチュエータ4a〜4c,3aを第1ないし第4油圧ポンプ12〜15によってそれぞれ直接駆動する第1ないし第4閉回路32,42,52,62を備えたのに対して、図7に示すように、第2実施形態に係る油圧駆動装置100Aは、例えば第3閉回路52及び第4閉回路62の代わりに、油圧アクチュエータ4c,3aを開回路用油圧ポンプ18とコントロールバルブ73A,73Bによってそれぞれ駆動する開回路72を備えたことである。
具体的には、開回路用油圧ポンプ18は、作動油タンク17に貯蔵された作動油を吸入するための入力ポート18Aと、この入力ポート18Aから吸入した作動油を圧油として吐出するための出力ポート18Bと、この出力ポート18Bから吐出される作動油の流量を調整するための片傾転式の斜板18Cとを含む片傾転斜板機構を備えた可変容量型の油圧ポンプから構成されている。
また、開回路用油圧ポンプ18には、斜板18Cの傾転角を調整するための流量調整部であるレギュレータ18Dが設けられている。このレギュレータ18Dは、信号線24を介してコントローラ8に通信接続されている。開回路用油圧ポンプ18の出力ポート18Bからの作動油の流量は、コントローラ8から信号線24を経てレギュレータ18Dに入力される電気的な制御信号によって制御される。
開回路用油圧ポンプ18の出力ポート18Bは、一端がバケットシリンダ4cのボトム室4a2に接続された管路71Aの他端に接続され、作動油タンク17は、一端がバケットシリンダ4cのロッド室4a3に接続された管路71Bの他端に接続されている。これらの管路71A,71B間には、開回路用油圧ポンプ18からバケットシリンダ4cへ吐出された圧油の流れ(方向及び流量)を切換えるコントロールバルブ73Aが設けられている。
管路71Aのうち開回路用油圧ポンプ18とコントロールバルブ73Aとの間には、一端が旋回モータ3aの入出力ポート3a1に接続された管路71Cの他端が接続され、管路71Bのうち開回路用油圧ポンプ18とコントロールバルブ73Aとの間には、一端が旋回モータ3aの入出力ポート3a2に接続された管路71Dの他端が接続されている。これらの管路71C,71D間には、開回路用油圧ポンプ18から旋回モータ3aへ吐出された圧油の流れ(方向及び流量)を切換えるコントロールバルブ73Bが設けられている。
コントロールバルブ73Aは、例えば、4ポート3位置のスプリングセンタ式スプール型切換弁から成り、信号線25を介してコントローラ8に通信接続されている。このコントロールバルブ73Aは、コントローラ8からの制御信号に従って、開回路用油圧ポンプ18とバケットシリンダ4cとの間の流路を遮断する中立位置N、開回路用油圧ポンプ18からの作動油をバケットシリンダ4cのボトム室4c2へ供給し、ロッド室4c3からの戻り油を作動油タンク17へ排出する右位置R、開回路用油圧ポンプ18からの作動油をバケットシリンダ4cのロッド室4c3へ供給し、ボトム室4c2からの戻り油を作動油タンク17へ排出する左位置Lのいずれかに切換えるように構成されている。
同様に、コントロールバルブ73Bは、例えば、4ポート3位置のスプリングセンタ式スプール型切換弁から成り、信号線25を介してコントローラ8に通信接続されている。このコントロールバルブ73Bは、コントローラ8からの制御信号に従って、開回路用油圧ポンプ18と旋回モータ3aとの間の流路を遮断する中立位置N、開回路用油圧ポンプ18からの作動油を旋回モータ3aの入出力ポート3a1へ供給し、入出力ポート3a2からの戻り油を作動油タンク17へ排出する右位置R、開回路用油圧ポンプ18からの作動油を旋回モータ3aの入出力ポート3a2へ供給し、入出力ポート3a1からの戻り油を作動油タンク17へ排出する左位置Lのいずれかに切換えるように構成されている。
開回路72には、管路71A,71Bのうちコントロールバルブ73Aとバケットシリンダ4cとの間の圧力が予め設定された圧力以上になったとき、管路71A,71B内の作動油を、管路71Eを介して作動油タンク17へ排出するリリーフ弁74A,74Bと、管路71Aのうちコントロールバルブ73Aと開回路用油圧ポンプ18との間の圧力が予め設定された圧力以上になったとき、管路71A内の作動油を作動油タンク17へ排出するリリーフ弁74Cとが設けられている。
また、開回路72には、開回路用油圧ポンプ18、コントロールバルブ73A,73Bの他、信号線25を介してコントローラ8に通信接続され、コントローラ8からの制御信号に従って、管路73A内の作動油を作動油タンク17へ導くブリードオフバルブ75と、管路71Aのうち開回路用油圧ポンプ18の出力ポート18B側に取付けられ、開回路用油圧ポンプ18の吐出流量を検出する流量センサ76とが設けられている。その他の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであり、同一又は対応する部分には同一の符号を付している。
このように構成した本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置100Aによれば、油圧アクチュエータ4a〜4c,3aのうちバケットシリンダ4c及び旋回モータ3aと開回路用油圧ポンプ18とを開回路状に接続して開回路72を形成しても、ポンプ・比例弁制御部84の吐出流量制御部842は、負荷動力演算部83によって演算されたエンジン11に対する負荷動力Leに応じて、少なくとも第1閉回路32の第1油圧ポンプ12の傾転角12Cを変更して第1油圧ポンプ12の吐出流量QSP1を制御することにより、エンジン11に対する負荷動力Leを最大許容動力Lemaxと負の閾値Leminとの間の範囲内へ迅速に調整することができる。従って、本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置100Aも上述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、図2に示すように、第1実施形態に係る油圧駆動装置100がエンジン11を備えたのに対して、図8に示すように、第3実施形態に係る油圧駆動装置100Bは、原動機として、例えばエンジン11の代わりに、電動モータ91を備えたことである。その他の第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じであり、同一又は対応する部分には同一の符号を付している。
このように構成した本発明の第3実施形態に係る油圧駆動装置100Bによれば、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15を、動力伝達装置16を介して電動モータ91の動力で駆動するように構成しても、ポンプ・比例弁制御部84の吐出流量制御部842は、負荷動力演算部83によって演算された電動モータ91に対する負荷動力LMに応じて、第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の傾転角12C〜15Cを変更して第1ないし第4油圧ポンプ12〜15の吐出流量QSP1,QSP2,QSP3,QSP4を制御することにより、電動モータ91に対する負荷動力LMを予め設定された最大許容動力LMmaxと負の閾値LMminとの間の範囲内へ迅速に調整することができる。従って、本発明の第3実施形態に係る油圧駆動装置100Bも上述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、上述した本発明の各実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
また、本発明の各実施形態は、油圧駆動装置100,100A,100Bが搭載される作業機械の一例として、油圧ショベル1を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、油圧駆動装置100,100A,100Bによって駆動される油圧アクチュエータを備えていれば、油圧式クレーンやホイールローダ等の油圧ショベル1以外の作業機械であってもよい。
さらに、本発明の第1実施形態では、第1閉回路32において、第1油圧ポンプ12をブーム下げの動作中に回生駆動させるブームシリンダ4aからの戻り油が導かれる管路31Aに比例弁38を設け、この比例弁38によって管路31A内の戻り油の流量を調整した場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。
例えば、第2ないし第4閉回路42,52,62において、第2ないし第4油圧ポンプ13〜15を回生駆動させる油圧アクチュエータ4b,4c,3aからの戻り油が導かれる管路41A,51A,61Aに比例弁をそれぞれ設け、これらの比例弁によって各管路41A,51A,61A内の戻り油の流量を調整してもよい。これにより、第2ないし第4油圧ポンプ13〜15の回生動力が大きくても、油圧アクチュエータ4b,4c,3aの速度VAM,VBK,VSWを維持できるので、優れた操作性を実現することができる。
また、本発明の第1、第3実施形態では、油圧アクチュエータ4a〜4c,3aと第1ないし第4油圧ポンプ12〜15とを閉回路状に接続して第1ないし第4閉回路32,42,52,62を形成し、本発明の第2実施形態では、油圧アクチュエータ4a,4bと第1及び第2油圧ポンプ12,13とを閉回路状に接続して第1及び第2閉回路32,42を形成し、油圧アクチュエータ4c,3aと第3及び第4油圧ポンプ14,15とを開回路状に接続して開回路72を形成した場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。具体的には、油圧アクチュエータ4a〜4c,3aのうちいずれか1つと第1ないし第4油圧ポンプ12〜15のうち対応する油圧ポンプが接続された閉回路を備えた油圧駆動装置であれば、上述した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。