JP6604475B2 - 非水系分散剤および非水系分散体組成物 - Google Patents

非水系分散剤および非水系分散体組成物 Download PDF

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Description

本発明は、有機あるいは無機粉体などの分散体の非水系溶媒中への分散に用いられる非水系分散剤、および該非水系分散剤を含有する非水系分散体組成物に関する。さらに詳しくは、少量の添加量にて分散体を高濃度で非水系溶媒中に分散させることができるとともに、優れた分散安定性を付与することのできる非水系分散剤、およびこの非水系分散剤を含有する非水系分散体組成物に関する。
有機粉体あるいは無機粉体などの分散体を非水系溶媒中に分散させた非水系分散体組成物は、種々の産業分野に利用されている。有機粉体としては例えば有機顔料が挙げられ、有機顔料を含有する非水系分散体組成物は塗料、印刷インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用レジスト、および筆記具インキなどに利用されている。また無機粉体としては例えばセラミックス粉体や金属粉体が挙げられ、セラミックス粉体を含有する非水系分散体組成物は、積層セラミックコンデンサの誘電体層、半導体基板、各種センサー、および液晶表示素子などの電子部品の他に、研磨材や耐火材等に利用されている。また金属粉体を含有する非水系分散体組成物は電極を形成する電子材料として、例えば導電ペーストや導電性インクとして、幅広く利用されている。
近年、電子部品用途においては、部品の小型化、高容量化および高効率化などの製品特性の向上が望まれており、これら要求を満たすために、原料であるセラミックス粉体や金属粉体などの分散体の微粒子化や、非水系分散体組成物中の分散体の高濃度化が求められている。非水系分散体組成物を調製する際、有機粉体あるいは無機粉体は単独では分散性が不十分な場合が多いことから、非水系分散体組成物の流動性や貯蔵安定性の向上を目的として、一般的に分散剤が使用されている。この分散剤として、これまで多くの高分子系分散剤、例えばポリアクリル酸やこれらの共重合物、ポリオキシアルキレン誘導体と無水マレイン酸との共重合物などが提案されている。
しかしながら、微粒子化に伴って、従来の高分子系分散剤では、分散剤が粒子間にまたがって吸着する橋掛け凝集が生じやすくなることによって、初期分散性が低下する問題が生じていた。また分散体の表面積が増加するため、分散体の表面自由エネルギーが増大し、分散系が不安定になりやすい。このため、一度分散できても、分散体の見かけの表面積を減少させようと分散体が再度、凝集してしまい、分散状態を安定に保持することが困難であった。分散体の微粒子化に伴う初期分散性および分散安定性の低下により、非水系分散体組成物の増粘や分散体の沈降などの問題が生じる。これら問題が生じた非水系分散体組成物では、生産性、加工特性、およびハンドリング性の低下を招くだけでなく、最終製品の品質低下にもつながる。
そのため、分散剤には、分散体を高濃度に含有し、かつ低粘度の非水系分散体組成物を得ることができるととともに、長時間にわたって分散体を沈降させることなく安定に分散できる性能が要求される。
これらの問題点を解決するために、特許文献1ではポリオキシエチレンモノフェニルエーテルと環式カルボン酸のエステル化物が提案されているが、微粒子分散体を含有する非水系分散体組成物に対する効果は十分に満足できるものではなかった。また、特許文献2では、親油性を高めたポリオキシプロピレンモノメタクリルエーテルと無水トリメリット酸のエステル化物がそれぞれ提案されているが、上記組成物に対する効果は十分に満足できるものではなかった。
特開昭62−106838号公報 特開2007−144402号公報
上記の通り、本発明の目的は、上記課題を解決することであり、詳しくは、粒子径が1μm以下の微粒子分散体を高濃度で非水系溶媒中に分散させることができるとともに、優れた分散安定性を与えることができる非水系分散剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリエーテルとトリカルボン酸無水物からなるポリエーテルエステル化合物が上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記の〔1〕〜〔3〕である。
〔1〕 下記の式(1)で示される非水系分散剤。
Figure 0006604475
(式(1)において、
Rは炭素数1〜22の直鎖あるいは分岐鎖状の炭化水素基である。
Oはオキシエチレン基であり、mはAOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1〜30である。
Oは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、nはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜30である。
mとnは、0.1≦m/n≦10、かつ、5≦m+n≦40の関係を満たす。
aは芳香環の数であり、1〜2である。
Mは水素原子、アンモニウムまたはアルカノールアンモニウムを示す。)
[2] AOが炭素数3のオキシプロピレン基であることを特徴とする、[1]の非水系分散剤。
[3] [1]または[2]の非水系分散剤、非水系溶媒、および前記非水系分散剤によって分散された分散体を含有する、非水系分散体組成物。
本発明によれば、粒子径が1μm以下の有機粉体あるいは無機粉体などの微粒子分散体を高濃度で非水系溶媒中に分散させることができるとともに、優れた分散安定性を付与することができる。
以下、本発明の非水系分散剤および非水系分散体組成物の実施形態について順次説明する。
(非水系分散剤)
本発明の非水系分散剤は、下記の式(1)で示されるポリエーテルとトリカルボン酸無水物からなるポリエーテルエステル化合物を含有する。なお、式(1)で示されるポリエーテルとトリカルボン酸無水物からなるエステル化合物を以下では単に「ポリエーテルエステル系化合物」とも言う。
Figure 0006604475
Rは炭素数1〜22の直鎖あるいは分岐鎖の炭化水素基である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基などの直鎖状飽和炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、イソデシル基、イソステアリル基、2−オクチルデシル基、2−オクチルドデシル基、2−ヘキシルデシル基などの分岐鎖状飽和炭化水素基、アリル基、(メタ)アクリル基、パルミトイル基、オレイル基、リノレイル基などの不飽和炭化水素基などが挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。非水系溶媒への溶解性および初期分散性の観点から、好ましくは炭素数4〜18の直鎖あるいは分岐鎖状飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数4〜18の分岐鎖状飽和炭化水素基である。
OおよびAOは、ポリオキシアルキレン基であり、分散体に吸着した際、立体反発部位として作用することで分散体を良好に分散させるとともに、非水系溶媒中への溶解性を高めることができる。
Oは炭素数2のオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素数3のオキシプロピレン基である。mはオキシエチレン基の平均付加モル数を表し、nは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、mは1〜30、nは1〜30である。
初期分散性および分散安定性の観点から、mは3以上であることが更に好ましく、4以上であることが特に好ましい。また、mは、25以下であることが更に好ましく、20以下であることが特に好ましい。
また、初期分散性および分散安定性の観点から、nは3以上であることが特に好ましい。また、nは、25以下であることが更に好ましく、20以下であることが一層好ましく,15以下であることが特に好ましい。
Oで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数mと、AOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数nとは、0.1≦m/n≦10、かつ、5≦m+n≦40の関係を有する。
m/nは、ポリエーテルエステル系化合物におけるポリエーテル鎖の親水性が強いAOと親油性が強いAOとのバランスを意味する。m/nが0.1未満では親油性が高すぎるため、非水系溶媒中にてポリエーテル鎖が拡張し、ポリエーテル鎖が絡まり易くなることによって、初期分散性や分散安定性が低下するおそれがある。またm/nが10を超えると親水性が高すぎるため、非水系溶媒への溶解性が低下することによって、ポリエーテル鎖が収縮し、立体反発効果が低下するため、初期分散性が低下するおそれがある。
こうした観点からは、m/nは、0.2以上が更に好ましく、0.5以上が一層好ましく、0.7以上が特に好ましい。また、m/nは、8以下が更に好ましく、7以下が特に好ましい。
m+nはポリエーテル鎖長を意味しており、5≦m+n≦40を満たす。m+nが5未満では、十分な立体反発効果が得られ難くなり、また40を超えるとポリエーテル鎖が絡み合い易くなり、初期分散性が低下するおそれがある。m+nは初期分散性および分散安定性の観点から、6以上であることが特に好ましい。また、m+nは、35以下であることが更に好ましく、30以下であることが一層好ましく、25以下であることが特に好ましい。
aは芳香環の数を表し、1〜2である。ポリエーテルエステル系化合物中の芳香環はトリカルボン酸無水物由来のものであり、芳香環に結合しているカルボキシル基は、分散体への吸着部位として機能する。カルボキシル基を同一の芳香環に有することで、より分散体に吸着しやすくなるため、初期分散性の観点から、好ましくはa=1である。
a=1の場合の化学式を式(1A)に示し、a=2の場合の化学式を式(1B)に示す。
Figure 0006604475
Figure 0006604475
Mは水素原子あるいはアンモニウムまたはアルカノールアンモニウムであり、好ましくは水素原子またはアルカノールアンモニウムであり、さらに好ましくは水素原子である。
次に、式(1)で示されるポリエーテルエステル系化合物の製法について説明する。
式(1)で示されるポリエーテルエステル系化合物は、ポリエーテルを製造する第一の工程と第一の工程で得られたポリエーテルとトリカルボン酸無水物を反応させる第二の工程とから製造することができる。
第一の工程に関して説明する。
炭素数が1から22の直鎖あるいは分岐鎖状の炭化水素基を有するアルコールに、アルキレンオキサイドを付加させることによってポリエーテルを製造することができる。
アルキレンオキサイドの付加反応に使用する触媒としては、アルカリ触媒が挙げられ、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、アルコラート、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンを用いることができる。また、上記のアルカリ触媒の他に、三ふっ化ほう素や四塩化錫などのルイス酸触媒を用いることができる。触媒の使用量は付加反応終了後の質量に対して、0.01〜5.0質量%が一般的である。
アルキレンオキサイドの付加反応は、例えばアルゴンや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、50〜200℃、0.02〜1.0MPaにて、アルキレンオキサイドを連続して加圧しながら添加することによって行うことができる。
次に第二の工程に関して説明する。
第二の工程で使用されるトリカルボン酸無水物としてはトリメリット酸無水物、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物の芳香族トリカルボン酸無水物が挙げられる。
第二の工程での反応比率は、モノアルキルポリエーテルの水酸基のモル数を(H)、トリカルボン酸無水物のモル数を(T)としたとき、0.7<(H)/(T)<1.2が好ましく、さらに好ましくは(H)/(T)=1である。
第二の工程では触媒を用いても良い。触媒としては、3級アミン化合物が挙げられ、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
第一の工程、第二の工程ともに無溶剤で行っても良いし、適当な脱水有機溶媒を使用しても良い。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により除去するか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。反応温度は80〜180℃であり、好ましくは90〜160℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。
本発明のポリエーテルエステル系化合物は、アミンにて中和されていても良い。アミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミンなどのアルキルアミンや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
(非水系分散体組成物)
本発明の非水系分散体組成物は、非水系分散剤、分散体、および非水系溶媒を含有する。
ここで、非水系分散剤、分散体および非水系溶媒の合計質量を100質量%とする。
この場合、非水系分散剤の含有量は、0.05〜20質量%が好ましい。非水系分散剤の含有量が0.05質量%未満であると、十分な初期分散性および分散安定性が得られないおそれがあり、含有量が20質量%を超えても含有量に見合う効果が得られないおそれがある。非水系分散剤の含有量は、初期分散性および分散安定性の観点から、好ましくは0.1〜15質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
本発明の非水系分散体組成物に含まれる分散体としては、有機粉体あるいは無機粉体が挙げられる。
有機粉体としては、例えば、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペニレン系、フタロシアニン系、アントラピリジン系、およびジオキサジン系などの有機顔料が挙げられる。
無機粉体としては、例えば、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、亜鉛、タングステン、インジウム、錫、パラジウム、ジルコニウム、チタン、銅、銀、金、白金などの金属粉体、2種類以上の金属または金属と非金属とからなる合金粉体、金属粉体または合金粉体を複合化した複合粉体、2種類以上の無機粉体あるいは無機粉体と他の粉体とを混合した混合粉体が挙げられる。
その他、無機粉体として、ケイ酸塩鉱物、その他のケイ酸化合物、炭酸化合物、硫酸化合物、水酸化化合物、酸化化合物、窒化化合物、炭化化合物、チタン酸化合物などの各粉体が挙げられる。例えば、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ベントナイト、ドロマイト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、カーボンブラック、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(シングルウォールナノチューブ、ダブルウォールナノチューブ、マルチウォールナノチューブ)などの各粉体が挙げられる。
分散体として好ましくは、ニッケル、コバルト、パラジウム、銅、銀、金、白金などの金属粉体、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウムスズなどの酸化化合物の粉体、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムなどのチタン酸化合物の粉体である。
分散体の平均粒子径は、有用性の観点から0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.7μmが更に好ましく、0.01〜0.5μmが特に好ましい。なお分散体の平均粒子径はSEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)を用いる電子顕微鏡法やマイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって測定することができる。
非水系分散剤、分散体および非水系溶媒の合計量を100質量%とした場合、分散体の含有量は、非水系分散体組成中、通常10〜90質量%であり、好ましくは30〜85質量%であり、さらに好ましくは55〜80質量%である。
本発明の非水系分散体組成物において分散体を分散させる分散媒となる非水系溶媒(有機溶媒)としては、例えば、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、およびγ−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶媒、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルアセテート、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテルアセテート、およびジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶媒、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテートおよびジヒドロターピニルアセテートなどのテルペン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールなどのアルコール系溶媒が挙げられ、これら非水系溶媒から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
非水系溶媒は、分散体の分散性向上、および本発明におけるポリエーテルエステル系化合物との相溶性の観点から、溶解度パラメーター(SP値)が8.5〜12.5(cal/cm1/2であるものが好ましい。なお、非水系溶媒の溶解度パラメーター(SP値)はHansenの式により算出することができ、その詳細は「SP値 基礎・応用と計算方法」(山本秀樹著 情報機構社刊、2006年発行)に記載されており、この記載に基づいて求められる。
溶解度パラメーター(SP値)が上記範囲である非水系溶媒を具体的に例示すると、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテート、イソプロパノール、n−ブタノールが挙げられる。これらの非水系溶媒から選ばれる1種を単独で用いても良く、あるいは2種以上の混合物で用いても良い。
また溶解度パラメーター(SP値)が8.5〜12.5(cal/cm1/2の範囲外の非水系溶媒であっても、2種以上の非水系溶媒を組み合わせることによって、上記範囲にSP値を調整することもできる。
混合溶媒のSP値は、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、各非水系溶媒のモル分率とSP値との積の総和により算出することもできる。本発明の非水系分散体組成物においては、これらの方法によりSP値が調整された混合溶媒を用いることができる。
非水系溶剤の含有量は、非水系分散体組成物中、通常5〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。
本発明の非水系分散体組成物には、その目的が損なわれない範囲で、他の界面活性剤、バインダー、可塑剤、および消泡剤などの各種添加剤を配合させることができる。
本発明の非水系分散体組成物は、公知の非水系分散体組成物の製造方法に準じて製造することができる。例えば、分散体を溶解した非水系溶媒中に分散体を添加した後、室温下にて攪拌し混合する方法、分散体に非水系溶媒および分散剤を添加した後、室温下にて攪拌し混合する方法などが挙げられる。
攪拌、混合、あるいは分散するための分散機器としては、公知の分散機を使用することができる。例えば、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ホモジナイザー、ディスパー、自転公転型ミキサーなどが挙げられる。また超音波発生浴中において分散処理を行うこともできる。
次に、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
(合成例1:ポリエーテルエステル系化合物1の合成)
攪拌機、圧力計、温度計、安全弁、ガス吹き込み管、排気管、冷却用コイル、および蒸気ジャケットを装備したステンレス製の5リットル容の耐圧容器に3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール(商品名:ノナノール、KHネオケム株式会社製)288g(2mol)および水酸化カリウム2gを仕込み、窒素置換後、攪拌しながら120℃に昇温した。攪拌下、120℃、0.05〜0.50MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器からエチレンオキサイド705g(16mol)を、ガス吹き込み管を通して、窒素ガスにより加圧しながら添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた。続いて上記方法にて、プロピレンオキサイド349g(6mol)を添加し、添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた。その後、耐圧容器から反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1270gのポリエーテルを得た。得られたポリエーテルの水酸基価は84であり、水酸基価から求められる分子量は668であった。
次に攪拌装置、温度計、ガス吹き込み管を装備したガラス製の0.5リットル容の反応容器に、上記で得られたポリエーテル267g(0.4mol)および無水トリメリット酸(関東化学(株)製)77g(0.4mol)を仕込み、120℃で4時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し、反応を終了した。これにより、ポリエーテルエステル系化合物1を得た。
なお合成例1における3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを他の化合物に適宜変更し、合成例1に準じて操作を行うことによって、表1のポリエーテルエステル系化合物2〜7および式(2)のポリエーテルエステル系化合物8を合成した。
合成したポリエーテルエステル系化合物1〜7を表1に、化合物8を式(2)に示した。
Figure 0006604475
Figure 0006604475
Rは、炭素数10〜16の直鎖状/分岐鎖状炭化水素基の混合物である。
(実施例1〜5、比較例1〜3)
ポリエーテルエステル系化合物1〜8を分散剤として用いて、下記のとおり、非水系分散体組成物を調製した。
50mLスクリュー管に、チタン酸バリウム粉体(平均粒径:0.05μm、SEMを用いた電子顕微鏡法により測定)20.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.0g、および分散剤1.4gを秤量し、自転公転型ミキサーで5分間攪拌して、予備分散を行った。その後、0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミルで4時間分散することによりスラリー状の非水系分散体組成物を得た。なお、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのSP値は8.7(cal/cm1/2である。
ポリエーテルエステル系化合物1〜5を用いて得られた非水系分散体組成物を実施例1〜5とし、ポリエーテルエステル系化合物6〜8を用いて得られた非水系分散体組成物を比較例1〜3とした。
(分散試験)
実施例1〜5および比較例1〜3の非水系分散体組成物を用いて、分散試験を行った。
各非水系分散体組成物について、動的粘弾性装置(Paar Physica MCR−300、Anton Paar社製)を用いて、温度20℃、せん断速度が0.1〜100(1/s)に対するせん断粘度を測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を表2に示した。
また室温で1週間静置した各非水系分散体組成物のせん断粘度を同一の条件で測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を併せて表2に示した。
Figure 0006604475
本発明に係るポリエーテルエステル系化合物1〜5を添加した実施例1〜5の非水系分散体組成物は、いずれも製造直後において良好な分散性を示しており、1週後においても経時的な粘度変化はほとんど見られなかった。
一方、m/nが範囲外であるポリエーテルエステル系化合物6および7、また本発明に係る式(1)で示されるポリエーテルエステル系化合物におけるアルキレンオキサイドの付加形態が逆になった構造を有するポリエーテルエステル系化合物8を添加した比較例1〜3の非水系分散体組成物は、製造直後のせん断粘度が高いだけでなく、経時的な粘度変化も大きいことから、製造直後の分散性のみならず、分散安定性にも劣ることが分かる。
(実施例6〜9、比較例4〜6)
ポリエーテルエステル系化合物1〜4、6、7、8を分散剤として用いて、下記のとおり、非水系分散体組成物を調製した。なお、ポリエーテルエステル系化合物1〜4を用いて得られた非水系分散体組成物を実施例6〜9とし、ポリエーテルエステル系化合物6〜8を用いて得られた非水系分散体組成物を比較例4〜6とした。
50mLスクリュー管に、チタン酸バリウム粉体(平均粒径:0.05μm、SEMを用いた電子顕微鏡法により測定)20.0g、トルエン/エタノール混合溶媒(1/1、質量比)5.0g、および分散剤1.4gを秤量し、自転公転型ミキサーで5分間攪拌し、予備分散を行った。その後、0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミルで4時間分散させることによりスラリー状の非水系分散体組成物を得た。なお、トルエン/エタノール混合溶媒(1/1、質量比)のSP値は11.4(cal/cm1/2である。
(分散試験)
実施例6〜9および比較例4〜6の非水系分散体組成物を用いて、分散試験を行った。
各非水系分散体組成物について、動的粘弾性装置(Paar Physica MCR−300、Anton Paar社製)を用いて、温度20℃、せん断速度が0.1〜100(1/s)に対するせん断粘度を測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を表3に示した。
また室温で1週間静置した各非水系分散体組成物のせん断粘度を同一の条件で測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を併せて表3に示した。
Figure 0006604475
本発明に係るポリエーテルエステル系化合物1〜4を添加した実施例6〜9の非水系分散体組成物は、いずれも製造直後において良好な分散性を示しており、1週後においても経時的な粘度変化はほとんど見られなかった。
一方、m/nが範囲外であるポリエーテルエステル系化合物6および7、また本発明に係る式(1)で示されるポリエーテルエステル系化合物におけるアルキレンオキサイドの付加形態が逆になった構造を有するポリエーテルエステル系化合物8を添加した比較例4〜6の非水系分散体組成物は、製造直後のせん断粘度が高いだけでなく、経時的な粘度変化も大きいことから、製造直後の分散性のみならず、分散安定性にも劣ることが分かる。
(実施例10〜12、比較例7〜9)
ポリエーテルエステル系化合物1、3、4、6、7、8を分散剤として用いて、下記のとおり、非水系分散体組成物を調製した。なお、ポリエーテルエステル系化合物1、3、4を用いて得られた非水系分散体組成物を実施例10〜12とし、ポリエーテルエステル系化合物6〜8を用いて得られた非水系分散体組成物を比較例7〜9とした。
50mLスクリュー管に、チタン酸バリウム粉体(平均粒径:0.1μm、SEMを用いた電子顕微鏡法により測定)20.0g、トルエン/エタノール混合溶媒(3/7、質量比)5.0g、および分散剤0.4gを秤量し、自転公転型ミキサーで5分間攪拌し、予備分散を行った。その後、1.0mmのジルコニアビーズを用いてビーズミルで3時間分散することによりスラリー状の非水系分散体組成物を得た。なお、トルエン/エタノール混合溶媒(3/7、質量比)のSP値は12.0(cal/cm1/2である。
(分散試験)
実施例10〜12および比較例7〜9の非水系分散体組成物を用いて、分散試験を行った。
各非水系分散体組成物について、動的粘弾性装置(Paar Physica MCR−300、Anton Paar社製)を用いて、温度20℃、せん断速度が0.1〜100(1/s)に対するせん断粘度を測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を表4に示した。
また室温で1週間静置した各非水系分散体組成物のせん断粘度を同一の条件で測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を併せて表4に示した。
Figure 0006604475
本発明に係るポリエーテルエステル系化合物1、3および4を添加した実施例10〜12の非水系分散体組成物は、いずれも製造直後において良好な分散性を示しており、1週後においても経時的な粘度変化はほとんど見られなかった。
一方、m/nが範囲外であるポリエーテルエステル系化合物6および7、また本発明に係る式(1)で示されるポリエーテルエステル系化合物におけるアルキレンオキサイドの付加形態が逆になった構造を有するポリエーテルエステル系化合物8を添加した比較例7〜9の非水系分散体組成物は、製造直後のせん断粘度が高いだけでなく、経時的な粘度変化も大きいことから、製造直後の分散性のみならず、分散安定性にも劣ることが分かる。
[実施例13〜15、比較例10〜12]
ポリエーテルエステル系化合物1、3、4、6、7、8を分散剤として用いて、下記のとおり、非水系分散体組成物を調製した。なお、ポリエーテルエステル系化合物1、3、4を用いて得られた非水系分散体組成物を実施例13〜15とし、ポリエーテルエステル系化合物6〜8を用いて得られた非水系分散体組成物を比較例10〜12とした。
50mLスクリュー管に、酸化アルミニウム粉体(平均粒径:0.4μm、レーザー回折法により測定)20.0g、トルエン/エタノール混合溶媒(1/1、質量比)5.0g、および分散剤0.2gを秤量し、自転公転型ミキサーで5分間攪拌し、予備分散を行った。その後、1.0mmのジルコニアビーズを用いてビーズミルで3時間分散することにより、スラリー状の非水系分散体組成物を得た。
[分散試験]
実施例13〜15および比較例10〜12の非水系分散体組成物を用いて、分散試験を行った。
各非水系分散体組成物について、動的粘弾性装置(Paar Physica MCR−300、AntonPaar社製)を用いて、温度20℃、せん断速度が0.1〜100(1/s)に対するせん断粘度を測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を表5に示した。
また室温で1週間静置した各非水系分散体組成物のせん断粘度を同一の条件で測定した。せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を併せて表5に示した。
Figure 0006604475
本発明に係るポリエーテルエステル系化合物1、3および4を添加した実施例13〜15の非水系分散体組成物は、いずれも製造直後において良好な分散性を示しており、1週後においても良好な分散安定性を示した。
一方、m/nが範囲外であるポリエーテルエステル系化合物6および7、また本発明に係る式(1)で示されるポリエーテルエステル系化合物におけるアルキレンオキサイドの付加形態が逆になった構造を有するポリエーテルエステル系化合物8を添加した比較例7〜9の非水系分散体組成物は、製造直後のせん断粘度が高いだけでなく、経時的な粘度変化も大きいことから、製造直後の分散性のみならず、分散安定性にも劣ることが分かる。

Claims (3)

  1. 下記の式(1)で示される非水系分散剤。

    Figure 0006604475
    (式(1)において、
    Rは炭素数1〜22の直鎖あるいは分岐鎖状の炭化水素基である。
    Oはオキシエチレン基であり、mはAOで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1〜30である。
    Oは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、nはAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜30である。
    mとnは、0.1≦m/n≦10、かつ、5≦m+n≦40の関係を満たす。
    aは芳香環の数であり、1〜2である。
    Mは水素原子、アンモニウムまたはアルカノールアンモニウムを示す。)
  2. Oが炭素数3のオキシプロピレン基であることを特徴とする、請求項1記載の非水系分散剤。
  3. 請求項1または2記載の非水系分散剤、非水系溶媒、および前記非水系分散剤によって分散された分散体を含有する、非水系分散体組成物。
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