以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)構成及び機能
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る擬似走行音発生装置の構成例を説明するための図である。図1に示すように、電気自動車1には、第1の実施の形態に係る擬似走行音発生装置10が搭載される。また、図1には、電気自動車1における擬似走行音発生装置10に関連する構成として、ナビゲーションシステム21、バッテリ22、モータ23、ギア24、車軸25、タイヤ26、アクセル27、及びアクセル開度センサ28が示されている。
まず、図1に示された擬似走行音発生装置10以外の構成について説明する。
ナビゲーションシステム21は、一般的なカーナビゲーションシステムであり、運転者または同乗者の操作によって目的地が設定されると、目的地までの適切な走行経路を決定する。なお本例では、ナビゲーションシステム21は、電気自動車1が出発する前に適切な走行経路を事前決定しているとして説明するが、走行途中で道路の混雑状況等を考慮して適切な走行経路を変更するようにしてもよい。ナビゲーションシステム21は、決定した走行経路を示す情報を最適化演算ユニット12に入力する。
バッテリ22は、電気を蓄える車載用の電池であってモータ23に電気を供給する。モータ23は、バッテリ22から供給された電気で作動することにより、電気自動車1の駆動力を発生させる。モータ23によって発生された駆動力はギア24を介して車軸25に伝達され、車軸25の回転に伴って車軸25に固定されたタイヤ26も回転することで、電気自動車1を走行させることができる。
アクセル27は、電気自動車1を加速させるときに運転者による踏み込み操作が行われるアクセルペダルである。また、アクセル開度センサ28は、アクセル27の踏み込み量(アクセル開度)を検出するセンサである。アクセル開度センサ28が検出したアクセル開度は制御ユニット11に送信され、アクセル開度に基づいて制御ユニット11が電気の供給等を制御する。具体的には例えば、アクセル27が踏み込まれた場合は、アクセル開度に応じた電気がバッテリ22からモータ23に供給されることで、電気自動車1を加速させるための駆動力が得られる。また、アクセル27が離された場合は、タイヤ26の回転に伴ってモータ23を回すようにすることで発電することもできる(所謂、回生)。
次に、擬似走行音発生装置10の各構成について説明する。
図1によれば、擬似走行音発生装置10は、制御ユニット11、最適化演算ユニット12、モータ回転数センサ13、車速センサ14、アンプ15、及びスピーカ16を備えて構成される。なお、擬似走行音発生装置10は、電気自動車1の走行音(具体的には例えばモータ23の回転音)を模擬した擬似走行音を発生させるための装置であるが、電気自動車1における他の機能を備えてもよい。具体的には例えば、制御ユニット11は電気自動車1の全体的な走行制御を行うことができ、車速センサ14が検出した車速は速度計に表示することができ、スピーカ16はクラクションを鳴らすことができる。
制御ユニット11は、最適化演算ユニット12、モータ回転数センサ13、車速センサ14、アンプ15と接続されているほか、擬似走行音発生装置10の外部に設けられたバッテリ22、モータ23、及びアクセル開度センサ28にも接続されている。制御ユニット11は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びメモリによって実現することができ、演算処理装置及び制御装置として機能する。制御ユニット11は、擬似走行音発生装置10における動作全般や電気自動車1の走行制御全般を制御し、具体的には例えば、制御ユニット11は、最適化演算ユニット12によって決定された走行パターンに基づいて、所定のアクセル操作を誘導するための擬似走行音の出力を制御する(詳細は後述する)。また、制御ユニット11は、アクセル開度センサ28の検出結果に基づいてバッテリ22からモータ23への電気の供給を制御したり、モータ回転数センサ13の検出結果に基づいてギア24のギア比を変更するなどの制御を行ったりする。
最適化演算ユニット12は、例えばCPU及びメモリによって実現することができ、演算処理装置として機能する。最適化演算ユニット12は、ナビゲーションシステム21によって決定された目的地までの適切な走行経路が入力された場合に、CPUがメモリから所定のプログラムを読み出して実行することによって、燃費を最適化する走行パターンを決定する。最適化演算ユニット12による演算処理では、例えば道路の混雑具合や信号情報等を考慮して、どのような走行パターンで上記走行経路を走行して目的地に向かうと燃費が良くなるかを導出する。
モータ回転数センサ13は、モータ23に取り付けられてモータ23の回転数を検出するセンサであり、具体的には例えば、レゾルバ、エンコーダ、ホール素子等を用いることができる。モータ回転数センサ13が検出したモータ23の回転数は、制御ユニット11に送信される。
車速センサ14は、車軸25に取り付けられて電気自動車1の走行速度(車速)を検出するセンサであり、例えば一般的な電気自動車に設けられる車速センサを用いる。車速センサ14が検出した電気自動車1の車速は、制御ユニット11に送信される。
アンプ15は、制御ユニット11の制御に従って擬似走行音の出力信号を増幅(または変調)する機能を有する。アンプ15で増幅・変調された出力信号がスピーカ16に送られることによってスピーカ16から擬似走行音が出力(再生)される。なお、擬似走行音の詳細については後述するが、本実施の形態において、制御ユニット11は、最適化演算ユニット12によって決定された走行パターンに基づいて、運転者による所定のアクセル操作を誘導するように、現在のモータの回転数とは異なる回転数を示唆する擬似走行音の出力をアンプ15に指示し、アンプ15は当該指示に沿って擬似走行音の信号を増幅・変調した後、スピーカ16から擬似走行音を出力させる。
以上が本実施の形態に係る擬似走行音発生装置10の構成である。なお、上記例では、機能ごとに別構成を備えるようにして説明を行ったが、擬似走行音発生装置10の各構成は、適宜一体化または分離された構成であってもよい。例えば、制御ユニット11及び最適化演算ユニット12は、いずれもCPU及びメモリを有する演算制御装置として一体化することができる。
(2)燃費を最適化する走行パターン
次に、本実施の形態における燃費を最適化する走行パターン及び当該走行パターンに基づいて出力される擬似走行音の決定について、実際の走行モードを例に挙げて詳しく説明する。
まず、比較のために、従来の走行パターンにおけるエネルギー消費(燃費)を検討し、その検討を踏まえて、本実施の形態における燃費を最適化する走行パターンを説明する。
図2は、10・15走行モードにおける車両速度と要求パワーとの関係例を説明するための図である。10・15走行モードは、「10・15モード」という従来の燃費測定方法で使用されていた走行パターンである。図2において(後述の図3でも同様)、車両速度は電気自動車1の車速を意味し、要求パワーは車速を実現するために要求されるモータ23の駆動力(モータパワー)を意味する。
図2の走行パターンによれば、車両速度が増加する間(すなわち加速時)は、要求されるモータパワーも増加する。車両速度が一定であるとき(すなわち加速度「0」のとき)は、要求されるモータパワーは走行抵抗を補う分だけでよくなる。そして車両速度が低下するとき(すなわち減速時)は、要求されるモータパワーも低下する。なお、図2において要求パワーが0kWを下回ったマイナス値のときは、モータ回生が行われていることを意味する。モータ回生のときは、タイヤ26の回転に伴ってモータ23を回して発電が行われることでバッテリ22に充電されるため、要求パワーがマイナス値になる。
上記のように加速時に要求パワーが増加し減速時に要求パワーが低下することは、全ての走行パターンで言えることであるが、図2の場合、全体的に加減速が多く、かつ加減速時の要求パワーの変化の傾きが急という傾向がみられる。
ここでエネルギーの消費(電力消費)について詳しく検討する。図2に例示された要求パワーのグラフにおいて、0kW以上の部分の面積は、バッテリ22の使用エネルギー(消費電力)に相当する。また、0kW以下の部分の面積は、バッテリ22の回生エネルギー(充電電力)に相当する。そして上記2つの面積の差分が、図2の走行モードにおいてバッテリ22から失われたエネルギーを意味する。
そして図2の場合は、加減速の機会が多く、かつ加減速時の要求パワーの変化の傾きが急であることから、使用エネルギーと回生エネルギーとがともに大きくなる。ここで、使用エネルギーが増加してもその増加分を回生エネルギーが相殺できるのであれば、両者の差分は小さくなるが、回生ブレーキによる発電効率が概ね3割〜5割程度しかないことは広く知られている。したがって、使用エネルギー(消費電力)が増加するほど、回生エネルギーとの差分も大きくなってしまい、エネルギーが無駄に使われる結果となっていた。
以上の結果を鑑みると、電気自動車1において最も燃費の良い走行パターン(燃費を最適化する走行パターン)とは、例えば信号機から信号機までの間で、走行開始後は一定加速度で加速して車速を所定速度まで高め(定加速フェーズ)、その後はエネルギー消費を最低限に抑えた惰性運転を行い(惰行フェーズ)、停止地点が近付くと一定加速度で減速する(定減速フェーズ)こととなる。なお、ブレーキペダルの踏み込みによるブレーキはエネルギーロスに直結するため、できるだけブレーキペダルの操作を行わせないことが好ましい。
そこで、本実施の形態に係る擬似走行音発生装置10では、最適化演算ユニット12が、上記した「燃費を最適化する走行パターン」のポリシーに基づいて、ナビゲーションシステム21が決定した走行経路の走行パターンを決定する。
例えば最適化演算ユニット12は、ナビゲーションシステム21が決定した走行経路について、赤信号等によって停止する地点を想定することによって、走行開始地点から走行停止地点までの複数の走行区間に分ける。想定した各走行区間については、信号機間の距離等を算出することによって、電気自動車1が連続して走行可能な距離を算出することができる。最適化演算ユニット12は、このように想定した各走行区間に対して燃費を最適化する走行パターンのポリシーを適用することによって、各走行区間における走行パターンを決定する。
図3は、本実施の形態による燃費の良い走行パターンにおける車両速度とモータのパワーとの関係例を説明するための図である。
図3の走行パターンには、電気自動車1が時間t1〜t4と時間t5〜t8とで走行する様子が例示されている。図3の例を現実的な走行状況に置き換えると例えば、電気自動車1が、時間t1において出発地から走行を開始し、時間t4のときに赤信号で停車し、時間t5で青信号になって再び走行を開始し、時間t8で目的地に到着したといったことが考えられる。以下では、時間t1〜t4を例にとって走行パターンを詳しくみていく。
まず時間t1で電気自動車1の走行が開始されると、時間t2にかけて一定の加速度で車両速度を上げる走行パターンが計画される。このとき、要求パワーの増加率(傾き)は一定とされ、所定の踏み込み量でアクセル27が踏まれることが求められる。したがって、時間t1〜t2における走行パターンは上述した定加速フェーズに相当する。
そして時間t2になると、時間t3に達するまで現状の車両速度を維持する走行パターンが計画される。このとき、惰性運転のために、現状の車両速度を維持する程度にアクセル27の踏み込み量を小さくすることが求められ、要求パワーはゼロに近い状態が維持される。したがって、時間t2〜t3における走行パターンは上述した惰行フェーズに相当する。惰行フェーズは、定加速フェーズで高められた車速を少ないエネルギー消費で維持することができるため、当該フェーズの期間が長いと燃費の向上に貢献することができる。
そして時間t3になると、時間t4での停止に向けて一定の加速度で車両速度を下げる走行パターンが計画される。このとき、アクセル27の踏み込み量はゼロ(すなわち、アクセル27が踏まれない)が求められる。アクセル27が踏まれないことによって回生ブレーキが作動して発電を行うため、要求パワーは一気にマイナス値になる。回生ブレーキによる発電エネルギーは電気自動車1の車両速度(より厳密には、例えば車軸25の回転数)に比例するため、時間t4に近づくにつれて要求パワーのマイナス値は小さくなる。以上のことから、時間t3〜t4における走行パターンは上述した定減速フェーズに相当する。
また、時間t1〜t4の走行パターンにおけるエネルギー消費(燃費)については、図3の要求パワーのグラフと変位「0」の横軸とがなす面積から確認することができる。すなわち、図3において、時間t1〜t3における斜線部の面積は、当該時間の走行パターンによる消費電力に相当し、時間t3〜t4における網掛け部の面積は、当該時間の走行パターンによる充電電力に相当する。この消費電力と充電電力との差分(すなわち面積の差分)を考察すると、明らかに図2の場合よりも小さいものとなっており、総エネルギー消費が最小化されていることが示される。
図2と比較したときの図3の特徴をより詳しく述べると、まず、定加速フェーズ(時間t1〜t2)において、過剰な加速(アクセル操作)が行われないことによって、必要な車両速度に達するまでのエネルギーロスが少ない(斜線部の面積増加の抑制)。また、過剰な加速が行われないことから、定減速フェーズ(時間t3〜t4)において急ブレーキを必要とせず、より多くの回生エネルギーを得ることができている(網掛け部の面積の増加)。また、定加速フェーズを経て適切な車速が実現されることから、その後の惰行フェーズ(時間t2〜t3)においては、アクセルを適度に緩めるだけの操作で惰性運転を行うことができ、このアクセルの踏み込み量の抑制によって、消費エネルギーを極小化することができている。
以上のことから、図3に例示した時間t1〜t4の走行パターンは、一定加速度で加速して車速を所定速度まで高め、その後はエネルギー消費を最低限に抑えた惰性運転を行い、停止地点が近付くと一定加速度で減速する、という「燃費を最適化する走行パターン」であることが示される。
また、時間t5〜t8の走行パターンは、時間t1〜t4の走行パターンよりも走行可能な距離が長い走行区間の場合を例示している。走行区間が長いと車両速度を上げたいという運転者の心情等を考慮し、時間t5〜t8の走行パターンでは、最高速度を高めにする走行パターンとなっているが、要求パワーによって描かれるグラフの形状は時間t1〜t4の走行パターンと相似している。したがって、時間t5〜t8の走行パターンも時間t1〜t4の走行パターンと同様に燃費を最適化する走行パターンであることが示される。
このように、最適化演算ユニット12は、ナビゲーションシステム21から得られる走行経路に対して、演算処理を行って図3に例示したような走行パターンを決定することにより、電気自動車1において燃費を最適化する走行パターンを用意することができる。
なお、最適化演算ユニット12は、走行区間の距離だけではなく、走行路の法定速度や混雑状況等も鑑みて、柔軟に走行パターンを決定するようにしてもよい。具体的には例えば、法定速度が時速60kmであっても、渋滞が発生しやすい時間帯の場合は車速の最高速度を時速40kmと想定して走行パターンの演算を行うようにすることによって、現実的な走行パターンを決定することができる。また例えば、目標とする最高速度の下限を設定することにより(例えば時速20km)、燃費だけを重視し過剰に低速な走行パターンが決定されるといった状況を回避し、運転者にストレスを掛け難くすることに期待できる。
また、最適化演算ユニット12は、ナビゲーションシステム21が決定した走行経路から複数の走行区間を想定する際に、走行経路上にある信号機の指示変更タイミング等を考慮することによって、燃費効率の高い走行区間を想定することができる。具体的には例えば、通常は平均時速30kmの車速に基づいて走行区間を想定するとしたとき、時速30kmで走行すると100m先の信号機が赤信号になって停止させられることが予想されたとしても、時速40kmで走行すれば当該信号機が赤信号になる前に通過できると予想できた場合には、定加速フェーズにおける最高速度を通常よりも高く設定することによって、1つの走行区間で走行可能な距離を長くすることができる。走行区間における走行可能な距離が長くなるということは、減速が必要な停止の回数が減ることから、燃費の向上に寄与することができる。
(3)擬似走行音
前章(2)では、最適化演算ユニット12が燃費を最適化する走行パターンを決定することについて説明した。しかしこのような走行パターンによる運転を運転者が無意識に行うことは難しく、特にエンジン車の運転に慣れた運転者の場合は特にストレスを感じてしまうおそれがあった。すなわち従来の電気自動車では、燃費を意識した運転を行おうとすると、運転者の満足や爽快感が低下するおそれがあった。
このような課題を解決するために、本発明の擬似走行音発生装置10では、制御ユニット11が現在のモータ回転数とは異なる回転数を示唆する擬似的なモータ回転音(擬似走行音)を出力させる。このような擬似走行音が出力されることによって、当該擬似走行音からイメージされるモータの回転数(ひいては車速)に基づいて、運転者が無意識に所定のアクセル操作を行うように誘導することができる。その結果、運転者のストレスを抑制しながらも電気自動車1において燃費を最適化する走行パターンによる運転を促進することができる。以下では、擬似走行音発生装置10(主に制御ユニット11)による擬似走行音の具体的な出力制御について説明する。
擬似走行音の出力制御において、制御ユニット11は、ナビゲーションシステム21によって決定された走行経路について最適化演算ユニット12が決定した「燃費を最適化する走行パターン(以下、最適走行パターンとも呼ぶ)」に基づいて、運転者による所定のアクセル操作を誘導するような擬似走行音をスピーカ16から出力させる。したがって、スピーカ16から出力される擬似走行音は、モータ回転数センサ13で検出されたモータ23の回転数に対応するものではない。
例えば電気自動車1の発進直後は、最適走行パターンにおける定加速フェーズ(図3の時刻t1〜t2,t5〜t6参照)に相当し、このとき、電気自動車1を一定加速度で加速するためのモータパワーが要求され、具体的なアクセル操作としては、一定加速度を実現し得る所定の踏み込み量でアクセル27を踏み続けるアクセル操作が求められる。そこで制御ユニット11は、モータ回転数センサ13で検出される実際のモータ23の回転数よりも大きな回転数を示唆する擬似走行音を出力させるように制御する。
このような擬似走行音の出力制御を行うことにより、実際よりも車速が速い状態である(または実際以上に加速している)かのように運転者に感じさせることができるため、運転者がアクセル27を過剰に踏み込まないように抑制することができる。かくして、運転者によるアクセル27の過剰な踏み込みを抑制して、一定加速度を実現し得る所定の踏み込み量による適切なアクセル操作に運転者を自然に誘導することに期待できるため、一定加速度で加速する定加速フェーズによる走行パターンを実現することが促進される。
また例えば、電気自動車1を減速させる定減速フェーズ(図3の時刻t3〜t4,t7〜t8参照)においては、電気自動車1を一定加速度で減速するためのアクセル操作として、アクセル27の踏み込み量ゼロ(アクセル27が踏まれない)が好適となる。そこで制御ユニット11は、モータ回転数センサ13で検出される実際のモータ23の回転数よりも大きな回転数を示唆する擬似走行音を出力させるように制御する。
このような擬似走行音の出力制御を行うことにより、実際よりも車速が速い状態である(または実際よりも減速の度合いが弱い)ように運転者に感じさせることができるため、運転者がアクセル27から足を離すように誘導することが期待できる。結果、ブレーキペダルの踏込等による急減速を抑止し、一定加速度で減速する定減速フェーズによる走行パターンを実現することが促進される。
なお、上述したように、制御ユニット11は、加速時(定加速フェーズ)及び減速時(定減速フェーズ)の何れにおいても実際のモータ回転数よりも大きな回転数を示唆する擬似走行音を出力させるが、最高速度が同一の場合において両者の擬似走行音を比較すると、減速時には加速時よりも大きな擬似走行音を出力するように制御することが好ましい。これは、加速時の擬似走行音は所定の踏み込み量のアクセル操作を誘導するものであるのに対し、減速時は踏み込み量ゼロ(またはほぼゼロ)のアクセル操作を誘導するものであるためで、運転者によるアクセル27の踏込を抑制する効果を強く打ち出すために、減速時のほうでより大きな擬似走行音を出力させるようにする。このようにすることで、減速時には、早期にアクセル27から足を離すように運転者を誘導することができるため、ブレーキペダルを踏むことなく予定の停止位置に電気自動車1を停止させるという理想的な走行パターンの実現に貢献できる。
また、図1に例示した電気自動車1には、電気自動車1の周囲の状況を監視する車載カメラ等が搭載されてもよい。このような場合、制御ユニット11車載カメラによって撮影された画像等に基づいて、周囲状況が安全か否かの判断を行うことができる。そして危険な状況である(安全上問題がある)と判断した場合には、制御ユニット11は、減速時であっても擬似走行音の出力を行わない、または擬似走行音の出力音量を通常よりも小さくする等のような抑制制御を行うことができる。このように周囲状況に応じて擬似走行音の出力を抑制することによって、運転者による危険な状況の認識が擬似走行音によって妨げられるといった事態を回避することができ、電気自動車1の安全性能を担保することができる。なお、制御ユニット11は、危険な状況と判断した場合には、加速時においても同様に擬似走行音の出力を抑制するようにしてもよい。
また、本実施の形態において出力される擬似走行音は、前述したように、実際よりも車速が速い状態であるかのように運転者に感じさせるための音である。したがって、異なるモータ回転数を示唆する擬似走行音の具体的な出力態様としては、例えば、回転数が増加するにつれて擬似走行音の周波数を高くしたり、音量を上げたり、それらを組み合わせたりすることが考えられる。また、実際の走行音については、車速の変化に伴って選択されるギア24も変化することから、示唆したい車速に応じて音質自体を変化させるなど、選択ギアの変化まで考慮した擬似走行音を出力するようにしてもよい。
そして、制御ユニット11が実際とは異なるモータ回転数としてどのような回転数を示唆する擬似走行音を出力させるかについては、例えば、最適化演算ユニット12によって決定された最適走行パターンにおける現時点の予定車速を基準として、予定車速よりも所定の程度だけ速い車速を実現するモータ回転数を示唆するようにすればよい。具体的には例えば、最適走行パターンにおける現時点の予定車速が時速30kmであったとすれば、時速40kmにおけるモータ回転数を示唆する模擬走行音を出力させるようにする。
また、制御ユニット11がどのような回転数を示唆する擬似走行音を出力させるかの別例として、最適走行パターンにおける現時点の予定車速と実際の車速との差分を算出し、その差分に応じて擬似走行音の出力態様を決定するようにしてもよい。このとき例えば、予定車速と実際の車速との差異が比較的大きい場合には、出力させる擬似走行音の音量や周波数をより上昇させるように制御し、予定車速と実際の車速との差異がさほど大きくない場合には、出力させる擬似走行音の音量や周波数をある程度抑制するように制御すればよい。
また、擬似走行音として出力する音は、電気自動車1のモータ23の回転音を模擬したものでなくてもよく、例えばエンジン車におけるエンジン音を模擬したものであってもよい。具体的には例えば、加速時または減速時において電気自動車1の車速が時速30kmである場合に、制御ユニット11は、時速30kmで走行中のエンジン車におけるエンジン音(選択ギアによる音の違いについては割愛する)を擬似走行音として出力するようにしてもよい。一般的にエンジン車のエンジン音は、同程度の車速における電気自動車のモータ音よりも大きいため、同じ時速30kmを示唆する音であったとしても、このような擬似走行音が出力されることにより、運転者に時速30kmよりも速く走行している(または実際以上に加速している)印象を与えることができる。また、擬似走行音は、同じ車速におけるエンジン音に限るものではなく、より大きい車速(例えば時速40km)におけるエンジン音としてもよい。
また本実施の形態において、擬似走行音の出力は、運転者の所定のアクセル操作を誘導し、燃費を最適化する走行パターンによる運転を促進することが目的であるため、擬似走行音は主に車室内の運転者に向けて出力されることが求められる。但し、本発明に係る擬似走行音発生装置10は、スピーカ16からの擬似走行音の出力先を車室内に限定するものではなく、車外でも聞こえるようにしてもよい。具体的には例えば、モータ回転数センサ13で検出されたモータ23の回転数よりも大きな回転数を示唆する擬似走行音を車外にも出力することによって、歩行者の安全を喚起することに利用してもよい。なお、このような安全喚起のための擬似走行音は、最適走行パターンの実現のために出力される擬似走行音とは別に出力されてもよい。すなわち、車室内の運転者に向けて出力される擬似走行音と車外の歩行者等に向けて出力される擬似走行音とが異なるものであってもよい。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、擬似走行音発生装置10の最適化演算ユニット12が、ナビゲーションシステム21を内蔵する構成であってもよい。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実施には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、本発明は、電気自動車に搭載されて擬似走行音を発生させる擬似走行音発生装置に適用して好適なものとしたが、本発明は、電力を動力源とする車両全般に適用することができる。具体的には例えば、所謂プラグインハイブリッド電気自動車やシリーズハイブリッド電気自動車、EV(Electric Vehicle)モードでの走行があるパラレルハイブリッド電気自動車等にも本発明を適用することができ、運転者のストレスを抑制しながらも車両の燃費の向上を促進するという本発明の効果を得ることができる。