以下に、図面に基づいて、MRI装置の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、送信コイル4、送信回路5、受信コイル6、受信回路7、寝台8、入力回路9、ディスプレイ10、記憶回路11、処理回路12〜15、ECGセンサ16、及びECG回路17を備える。
静磁場磁石1は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、内周側に形成される撮像空間に一様な静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、永久磁石や超伝導磁石等によって実現される。
傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、静磁場磁石1の内周側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる3つのコイルを有する。ここで、x軸、y軸及びz軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、x軸の方向は、鉛直方向に設定され、y軸の方向は、水平方向に設定される。また、z軸の方向は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束の方向と同じに設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有する3つのコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。x軸、y軸及びz軸それぞれに沿った傾斜磁場を適宜に発生させることによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。ここで、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
各傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴信号(Magnetic Resonance:MR)に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード用傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
送信コイル4は、中空の略円筒形状(円筒の中心軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成され、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。送信コイル4は、送信回路5から出力されるRF(Radio Frequency)パルスを撮像空間に印加する。
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル4に出力する。例えば、送信回路5は、発振回路、位相選択回路、周波数変換回路、振幅変調回路、及び、RF増幅回路を有する。発振回路は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。位相選択回路は、発振回路から出力されるRFパルスの位相を選択する。周波数変換回路は、位相選択回路から出力されるRFパルスの周波数を変換する。振幅変調回路は、周波数変換回路から出力されるRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。RF増幅回路は、振幅変調回路から出力されるRFパルスを増幅して送信コイル4に出力する。
受信コイル6は、撮像空間に置かれた被検体Sに装着され、送信コイル4によって印加されるRF磁場の影響で被検体Sから放射されるMR信号を受信する。また、受信コイル6は、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、受信コイル6には、撮像対象の部位ごとに専用のコイルが用いられる。ここでいう専用のコイルは、例えば、頭部用の受信コイル、脊椎用の受信コイル、腹部用の受信コイル等である。
受信回路7は、受信コイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路13に出力する。例えば、受信回路7は、選択回路、前段増幅回路、位相検波回路、及び、アナログデジタル変換回路を有する。選択回路は、受信コイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅回路は、選択回路から出力されるMR信号を増幅する。位相検波回路は、前段増幅器から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換回路は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路13に出力する。
なお、ここでは、送信コイル4がRFパルスを印加し、受信コイル6がMR信号を受信する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、送信コイル4が、MR信号を受信する受信機能をさらに有してもよい。また、受信コイル6が、RF磁場を印加する送信機能をさらに有していてもよい。送信コイル4が受信機能を有している場合は、受信回路7は、送信コイル4によって受信されたMR信号からもMR信号データを生成する。また、受信コイル6が送信機能を有している場合は、送信回路5は、受信コイル6にもRFパルスを出力する。
寝台8は、被検体Sが載置される天板8aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の内側に形成される撮像空間へ天板8aを挿入する。例えば、寝台8は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
入力回路9は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。例えば、入力回路9は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。入力回路9は、処理回路15に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路15へ出力する。
ディスプレイ10は、各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ10は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。ディスプレイ10は、処理回路15に接続されており、処理回路15から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。
記憶回路11は、各種データを記憶する。例えば、記憶回路11は、MR信号データや画像データを被検体Sごとに記憶する。例えば、記憶回路11は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路12は、寝台制御機能12aを有する。例えば、処理回路12は、プロセッサによって実現される。寝台制御機能12aは、寝台8に接続されており、制御用の電気信号を寝台8へ出力することで、寝台8の動作を制御する。例えば、寝台制御機能12aは、入力回路9を介して、天板8aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板8aを移動するように、寝台8が有する天板8aの駆動機構を動作させる。
処理回路13は、各種パルスシーケンスを実行する。例えば、処理回路13は、プロセッサによって実現される。具体的には、処理回路13は、処理回路15から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種パルスシーケンスを実行する。
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給される電流の強さ、送信回路5が送信コイル4に供給するRFパルス電流の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
また、処理回路13は、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路11に格納する。なお、処理回路13によって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路11に格納される。
処理回路14は、画像生成機能14aを有する。例えば、処理回路14は、プロセッサによって実現される。画像生成機能14aは、記憶回路11に格納されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能14aは、処理回路13によって記憶回路11に格納されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能14aは、生成した画像の画像データを記憶回路11に格納する。
処理回路15は、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、処理回路15は、プロセッサによって実現される。例えば、処理回路15は、入力回路9を介して操作者からパルスシーケンスに関する各種のパラメータの入力を受け付け、受け付けたパラメータに基づいてシーケンス実行データを生成する。そして、処理回路15は、生成したシーケンス実行データを処理回路13に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、処理回路15は、操作者から要求された画像の画像データを記憶回路11から読み出し、読み出した画像をディスプレイ10に出力する。
ECG(Electrocardiogram)センサ16は、被検体Sの体表に装着され、被検体Sの心電信号を検出する。そして、ECGセンサ16は、検出した心電信号をECG回路17に出力する。
ECG回路17は、ECGセンサ16から出力される心電信号に基づいて、所定の心電波形を検出する。例えば、ECG回路17は、所定の心電波形として、R波を検出する。そして、ECG回路17は、所定の心電波形を検出したタイミングでトリガ信号を生成し、生成したトリガ信号を処理回路13に出力する。
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、MRI装置100は、被検体の所定の心電波形に同期させてデータ収集を行う撮像法を実行する。また、MRI装置100は、核スピンの縦磁化を負値に転じさせるプリパルスを印加した後に撮像領域のデータを収集する撮像法を実行する。この撮像法によれば、プリパルスが印加された後に所定の組織の縦磁化がゼロ付近まで回復したタイミングでデータ収集を行うことで、その組織の信号値を抑制した画像を得ることができる。
例えば、MRI装置100は、心臓のT2強調画像を撮像する場合に、被検体のR波に同期させてデータ収集を行う。また、例えば、MRI装置100は、心臓のT2強調画像を撮像する場合に、BB(Black Blood)パルスと呼ばれるプリパルスを用いることで、心腔内の血液の信号値を抑制する。
ここで、上述した心電波形に同期した撮像とプリパルスを用いた撮像とが併用される場合には、不整脈等によって心周期の乱れが発生すると、組織の縦磁化がゼロ付近まで回復するタイミングとデータ収集が行われるタイミングとがずれることもあり得る。その場合には、収集されるデータに不適切なデータが混入することになり、生成される画像の画質が低下することもあり得る。
例えば、心臓の撮像では、1回の心拍の間に画像生成に必要な全てのデータを収集することは難しく、そのため、セグメントと呼ばれる複数のグループに分けてデータを収集することが多い。例えば、画像生成に必要なデータの量を100とし、1つのセグメントに含めるデータの量を10とした場合には、10個のセグメントに分けてデータが収集される。そして、例えば、1回目の心拍で1つ目のセグメントが収集され、2回目の心拍で2つ目のセグメントが収集され、・・・10回目の心拍で10個目のセグメントが収集される。
また、一般的に、BBパルスを用いた撮像では、データが収集される時点での血液の信号値は、BBパルスが印加される時点での血液の縦磁化の大きさに影響される。したがって、セグメント間で血液の信号値を均一にするためには、BBパルスが印加されるタイミングで血液の縦磁化の変化が安定した状態となっているように、BBパルスが印加されるまでの間に、血液の縦磁化を十分に回復させておくことが望ましい。そのため、一般的に、心電波形に同期した撮像でBBパルスが用いられる場合には、3〜4心拍ごとに1回のデータ収集が行われる。
図2及び3は、一般的な心臓の撮像におけるデータ収集の一例を示すタイムチャートである。なお、図2及び3は、3心拍ごとにBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われる場合の例を示している。また、図2は、被検体に不整脈が生じなかった場合のタイムチャートを示しており、図3は、不整脈によってR波の間隔が途中から短くなった場合のタイムチャートを示している。
ここで、図2及び3それぞれの上側に示す図は、R波、プリパルス及びデータ収集のタイミングを示している。同図において、横軸tは時間を示している。そして、R1〜R7は、それぞれR波が検出されたタイミングを示し、B1〜B3は、それぞれBBパルスが印加されるタイミングを示し、A1〜A3は、それぞれ撮像領域のデータ収集が行われるタイミングを示している。
また、図2及び3それぞれの下側に示す図は、血液の縦磁化に対応する信号値の変化を示している。同図において、横軸tは上側の図と同じ時間を示し、縦軸Sは信号値を示している。そして、曲線Mbは、血液の縦磁化に対応する信号値の変化を示し、曲線Mb上にある黒丸は、縦磁化に対応する信号値がゼロになったタイミングを示している。
例えば、図2及び3に示すように、3心拍ごとにBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われる場合には、1回目のR波(R1)でBBパルスの印加(B1)及びデータ収集(A1)が行われ、2回目及び3回目のR波(R2、R3)では、BBパルスの印加及びデータ収集は行われない。また、4回目のR波(R4)でBBパルスの印加(B2)及びデータ収集(A2)が行われ、5回目及び6回目のR波(R5、R6)では、BBパルスの印加及びデータ収集は行われない。また、7回目のR波(R7)でも、BBパルスの印加(B3)及びデータ収集(A3)が行われる。
ここで、BBパルスが印加されてからデータ収集が開始されるまでの待ち時間は、血液の縦磁化がBBパルスによって反転されてからゼロ付近に達するまで回復するのにかかる時間とされる。ここでいう待ち時間は、血液に固有の縦緩和時間(T1とも呼ばれる)等に基づいて決められる一定の長さの時間である。
そして、例えば、図2に示すように、被検体に不整脈が生じなかった場合には、略一定の間隔でR波(R1〜R7)が検出される。そのため、BBパルスが印加される時点での血液の縦磁化の回復度合いも略一定となり、予定どおり、血液の縦磁化がゼロ付近となったタイミングでデータ収集(A1〜A3)が行われることになる。
一方、例えば、図3に示すように、被検体に不整脈が生じた場合には、R波の間隔が変化する。図3では、1回目から5回目のR波(R1〜R5)までの間ではR波の間隔が略一定であったが、不整脈によって、5回目から7回目のR波(R5〜R7)までの間でR波の間隔が短くなった場合の例を示している。この場合には、3心拍ごとにBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われると、1回目のBBパルス(B1)が印加されてから2回目のBBパルス(B2)が印加されるまでの時間と比べて、2回目のBBパルス(B2)が印加されてから3回目のBBパルス(B3)が印加されるまでの時間が短くなる。この結果、3回目のBBパルス(B3)が印加される時点での血液の縦時間の回復が不十分になり、反転された直後の血液の縦磁化の大きさが予定よりも小さくなってしまう。そのため、血液の縦磁化が予定よりも早く回復することになり、待ち時間が経過した後に3回目のデータ収集(A3)が行われるタイミングでは(図3に示す白丸)、縦磁化の大きさがゼロよりも大きくなってしまう。これにより、3回目のデータ収集(A3)において、血液の信号値が十分に抑制されていない不適切なデータが混入することになり、生成される画像の画質が低下することがあり得る。
なお、このような不整脈による画質の低下を防ぐための方法として、例えば、不整脈除去法と呼ばれる方法がある。この方法では、連続するR波の間隔に基づいて不整脈が検出され、その検出結果に基づいて、収集されたデータの取捨選択が行われる。ここで、不整脈が検出されたタイミングで収集されたデータについては、画像生成に用いられない無効なデータとされる。そして、無効なデータとされたデータについては、撮像時間を延長して、改めて収集し直されることになる。このため、不整脈除去では、被検体に不整脈が生じた分だけ撮像時間が延長されることになる。例えば、1心拍にかかる時間を1秒とすると、不整脈が検出されるたびに撮像時間が3〜4秒延長されることになる。しかしながら、心臓の撮像では、呼吸による心臓の移動を防ぐために被検体が息止めをした状態で撮像が行われるのが一般的であるが、不整脈によって撮像時間が延長されると、息止めをした状態での撮像が困難になってしまう。
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、不整脈等によって心周期が乱れた場合でも、データ収集のやり直しによる撮像時間の延長をすることなく、良質な画像を得ることができるように構成されている。
具体的には、MRI装置100は、被検体の所定の心電波形に同期させて、核スピンの縦磁化を負値に転じさせるプリパルスを印加した後に撮像領域のデータを収集するパルスシーケンスを実行する。また、MRI装置100は、撮像領域と同時にプリパルスが印加される領域であって、撮像領域とは異なる領域であるモニタ領域から収集されるデータの信号値を取得する。そして、MRI装置100は、取得した信号値に基づいて、パルスシーケンスの実行を制御する。
このような構成によれば、撮像領域とは異なるモニタ領域から収集されるデータの信号値に基づいて、プリパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が制御されるので、不整脈が生じているか否かにかかわらず、適切なデータを収集することができる。したがって、不整脈等によって心周期が乱れた場合でも、データ収集のやり直しによる撮像時間の延長をすることなく、良質な画像を得ることができる。また、不整脈除去法を用いる場合と比べて、撮像時間を短縮することができる。なお、ここでいうデータ収集とは、励起用のRFパルスを印加してからMR信号データを収集するまでの一連の処理を行うことである。また、プリパルスとは、データ収集の前に印加されるRFパルスである。
以下では、このようなMRI装置100の構成について、図1に示した処理回路13及び15が有する機能を中心に、より詳細に説明する。
まず、処理回路13は、実行機能13aを有する。なお、実行機能13aは、特許請求の範囲における実行部の一例である。
実行機能13aは、被検体の所定の心位相に同期させて、核スピンの縦磁化を負値に転じさせるプリパルスを印加した後に撮像領域のデータを収集するパルスシーケンスを実行する。また、実行機能13aは、所定の心電波形が発生するごとに、撮像領域と同時にプリパルスが印加される領域であって、撮像領域とは異なる領域であるモニタ領域のデータを収集する。
ここで、撮像領域のデータを収集する方法としては、各種の方法を用いることができる。例えば、FASE(Fast Asymmetric Spin Echo)法、SSFP(Steady State Free Precession)法、FFE(Fast Field Echo)法、FSE(Fast Spin Echo)法等が用いられる。
具体的には、実行機能13aは、処理回路15から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、上述したパルスシーケンスを実行する。
例えば、実行機能13aは、R波に同期させて、心臓のT2強調画像を撮像するためのパルスシーケンスを実行する。T2強調画像は、梗塞や炎症性浮腫の描出に優れた画像である。このとき、例えば、実行機能13aは、撮像領域に流入する血液にBBパルスを印加した後に、その血液の縦磁化がゼロ付近まで回復したタイミングで撮像領域のデータ収集を行うパルスシーケンスを実行することで、心腔内の血液の信号値を抑制する。
ここで、例えば、実行機能13aは、撮像領域に流入する血流の上流部分と、撮像領域とは異なる位置に設定されたモニタ領域とを含む範囲に同時にBBパルスを印加する。例えば、実行機能13aは、領域を非選択な状態でBBパルスを印加する。なお、ここでいう領域を非選択な状態でBBパルスを印加するとは、スライス傾斜磁場を同時に印加せずにBBパルスを印加することである。これにより、MRI装置100によって撮像可能な範囲の全体にBBパルスが印加されることになる。なお、BBパルスとしては、例えば、核スピンの縦磁化を180°反転させるRFパルスが用いられる。
そして、実行機能13aは、ECG回路17から出力されるトリガ信号を検出し、トリガ信号を検出した時点でパルスシーケンスを実行することによって、R波に同期させてパルスシーケンスを実行する。例えば、実行機能13aは、ECG回路17によってR波が検出されるごとに、モニタ領域のデータ収集を行う。
図4は、第1の実施形態に係る実行機能13aによるデータ収集の一例を示すタイムチャートである。ここで、図4の上段に示す図は、R波が検出されるタイミングを示している。同図において、横軸tは時間を示している。そして、Rは、R波が検出されるタイミングを示している。
また、図4の中段に示す図は、プリパルスの印加及びデータ収集のタイミングを示している。同図において、横軸tは上段の図と同じ時間を示している。そして、Amは、モニタ領域のデータ収集が行われるタイミングを示し、Fは、FB(Flip Back)パルスが印加されるタイミングを示している。ここで、FBパルスとは、モニタ領域のデータ収集が行われる際に印加される励起用のRFパルスによって横磁化となった核スピンを縦磁化に戻すためのRFパルスである。また、Bは、BBパルスが印加されるタイミングを示し、Aiは、撮像領域のデータ収集が行われるタイミングを示している。
また、図4の下段に示す図は、血液の縦磁化及びモニタ領域に含まれる組織の縦磁化それぞれに対応する信号値の変化を示している。同図において、横軸tは上段及び中段の図と同じ時間を示し、縦軸Sは信号値を示している。そして、曲線Mbは、血液の縦磁化に対応する信号値の変化を示しており、曲線Mmは、モニタ領域に含まれる組織の縦磁化に対応する信号値の変化を示している。
例えば、図4に示すように、実行機能13aは、R波が検出されてから所定の時間Tbが経過した時点でBBパルス(B)を印加し、その後、待ち時間Tiが経過した時点で撮像領域のデータ収集(Ai)を開始するパルスシーケンスを実行する。
ここで、例えば、所定の時間Tbには、固定の長さの時間が設定される。また、待ち時間Tiには、血液の縦磁化がBBパルス(B)によって反転されてからゼロ付近に達するまで回復するのにかかる時間が設定される。この待ち時間Tiは、血液に固有の縦緩和時間(T1とも呼ばれる)等に基づいて決められる一定の長さの時間である。
そして、例えば、図4に示すように、実行機能13aは、R波が検出された時点から所定の時間Tmが経過した時点で、モニタ領域のデータ収集(Am)を行う。ここで、所定の時間Tmには、固定の長さの時間が設定される。なお、時間Tmには、BBパルス(B)が印加される前にモニタ領域のデータ収集(Am)及びFBパルス(F)の印加が終了するように、時間Tbと比べて十分に短い時間が設定される。
また、実行機能13aは、モニタ領域のデータ収集(Am)を行った直後に、モニタ領域にFBパルス(F)を印加する。例えば、実行機能13aは、励起用のRFパルスとして90°パルスを印加した場合に、FBパルスとして−90°パルスを印加する。これにより、モニタ領域のデータ収集で印加された励起用のRFパルスによって横磁化となった核スピンが縦磁化に戻される。そして、縦磁化に戻された核スピンは、モニタ領域に含まれる組織の縦緩和時間に従って徐々に回復する。この結果、モニタ領域の信号値Sは、FBパルスの影響で若干の変化はあるものの、全体として、概ね、データ収集によるRFパルスの影響を受ける前と同じ縦緩和曲線で回復するとして扱うことができ、モニタ領域に含まれる組織の縦緩和時間に従って回復するようになる。
そして、血液の縦磁化及びモニタ領域に含まれる組織の縦磁化は、例えば、曲線Mb及びMmに示すように、BBパルス(B)が印加されると同時に負値に反転され、その後、それぞれ時間の経過に伴って徐々に回復する。血液の縦磁化及びモニタ領域に含まれる組織の縦磁化は、回復の速さは異なるものの、次にBBパルスが印加されるまでの間は、いずれも類似の推移で回復してゆく。したがって、モニタ領域から収集されたデータの信号値の変化を監視することによって、結果的に、血液の縦磁化の回復度合いを把握することができるようになる。
図1の説明に戻って、処理回路15は、設定機能15a、取得機能15b、及び制御機能15cを有する。なお、設定機能15aは、特許請求の範囲における設定部の一例である。また、取得機能15bは、特許請求の範囲における取得部の一例である。また、制御機能15cは、特許請求の範囲における制御部の一例である。
設定機能15aは、ディスプレイ10に表示された被検体の画像上で範囲を指定する操作を操作者から受け付け、受け付けた範囲に基づいてモニタ領域を設定する。
具体的には、設定機能15aは、撮像に用いるパルスシーケンスを選択する操作や、選択されたパルスシーケンスに関する各種パラメータを入力する操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ10に表示する。そして、設定機能15aは、GUIを介して受け付けられた各種パラメータの入力値に基づいて、選択されたパルスシーケンスを実行するためのシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データを処理回路13に出力する。
例えば、設定機能15aは、被検体の画像を位置決め画像としてGUI上に表示し、位置決め画像上で、撮像領域とする範囲及びモニタ領域とする範囲を指定する操作を操作者から受け付ける。さらに、設定機能15aは、位置決め画像上で、FBパルスの印加領域とする範囲を指定する操作を操作者から受け付ける。そして、設定機能15aは、指定された各範囲に基づいて、撮像領域及びモニタ領域それぞれのデータを収集するためのシーケンス実行データを生成する。
図5及び6は、第1の実施形態に係る設定機能15aによる撮像領域及びモニタ領域の設定の一例を示す図である。例えば、図5に示すように、設定機能15aは、第1の位置決め画像として、GUI上に被検体のアキシャル像を表示する。また、例えば、図6に示すように、設定機能15aは、第2の位置決め画像として、GUI上に被検体のコロナル像を表示する。
そして、設定機能15aは、アキシャル画像及びコロナル画像それぞれの上で、撮像領域とする範囲51を指定する操作を操作者から受け付ける。例えば、心臓のT2強調画像が撮像される場合には、撮像領域は、被検体の心筋(図5及び6に示すH)を含むように設定される。
このとき、撮像領域として設定される範囲は、1つであってもよいし、複数であってもよい。設定機能15aは、1つの範囲が設定された場合には、1つのスライス像を撮像するようにシーケンス実行データを生成する。また、複数の範囲が設定された場合には、設定機能15aは、それぞれの範囲に対応するマルチスライス像が撮像されるようにシーケンス実行データを生成する。
また、設定機能15aは、アキシャル画像及びコロナル画像それぞれの上で、モニタ領域とする範囲を指定する操作を操作者から受け付ける。例えば、設定機能15aは、アキシャル画像及びコロナル画像それぞれの上で、2つの範囲52及び53を設定する操作を受け付け、範囲52及び53が交差した範囲である交差範囲54をモニタ領域として設定する。例えば、モニタ領域は、被検体の脊髄にある脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid:CSF)(図5及び6に示すC)を含むように設定される。
そして、例えば、設定機能15aは、範囲52の領域に励起用のRFパルス(90°パルス)を印加し、範囲53の領域にリフォーカスパルス(180°パルス)を印加するSE(Spin Echo)法のパルスシーケンスを実行するためのシーケンス実行データを生成する。これにより、SE法によって、範囲52及び53が交差した範囲として設定されたモニタ領域のデータが収集されることになる。
なお、ここで説明したモニタ領域の設定法が用いられる場合には、範囲52及び53は、撮像領域となる範囲51に重ならないように設定されるのが望ましい。撮像領域に印加領域が重なってしまうと、縦磁化の回復との関係で画像にアーチファクトが生じてしまう場合があるからである。
また、設定機能15aによるモニタ領域の設定方法は、ここで説明したものに限られない。例えば、設定機能15aは、操作者から範囲の指定を受け付けるのではなく、自動的にモニタ領域を設定してもよい。その場合には、例えば、標準的な体型の被検体の腹部の領域とモニタ領域との位置関係を定義したモデル画像を記憶回路11に記憶させておく。そして、設定機能15aは、記憶回路11からモデル画像を読み出し、読み出したモデル画像と被検体の位置決め画像とをマッチングすることで、位置決め画像上にモニタ領域を設定する。
さらに、設定機能15aは、FBパルスの印加領域を設定する操作を操作者から受け付ける。例えば、設定機能15aは、上述した範囲52及び53を設定する操作と同様に、アキシャル画像及びコロナル画像それぞれの上で範囲55を設定する操作を受け付ける。このとき、設定機能15aは、モニタ領域となる交差範囲54と重なるように範囲55を設定する操作を受け付ける。そして、設定機能15aは、設定された範囲55をFBパルスの印加領域として設定する。なお、FBパルスが印加される領域となる範囲55についても、画像にアーチファクトが生じることを防ぐため、範囲52及び53と同様に、撮像領域となる範囲51に重ならないように設定されるのが望ましい。
取得機能15bは、プリパルスが印加された領域であって、撮像領域とは異なる領域であるモニタ領域から収集されるデータの信号値を取得する。例えば、取得機能15bは、モニタ領域のデータが収集されるごとに、収集されたデータの信号値を取得する。
より具体的には、取得機能15bは、実行機能13aによってモニタ領域のデータが収集されるごとに、収集されたデータを記憶回路11から読み出す。そして、取得機能15bは、記憶回路11から読み出したデータの信号値を取得する。
制御機能15cは、取得機能15bによって取得されたモニタ領域のデータの信号値に基づいて、パルスシーケンスの実行を制御する。例えば、制御機能15cは、取得機能15bによって取得された信号値が所定の閾値以上であった場合は、次の所定の心位相でパルスシーケンスが実行されるように制御し、取得された信号値が前記所定の閾値未満であった場合は、次の所定の心位相でパルスシーケンスが実行されないように制御する。
より具体的には、制御機能15cは、取得機能15bによって信号値が取得されるごとに、取得された信号値と所定の閾値とを比較する。そして、制御機能15cは、信号値が閾値以上であった場合には、次のR波でパルスシーケンスを実行するように実行機能13aを制御する。また、制御機能15cは、信号値が閾値未満であった場合には、次のR波でパルスシーケンスを実行しないように実行機能13aを制御する。
図7は、第1の実施形態に係る制御機能15cによる制御の一例を示すタイムチャートである。ここで、図7の上段に示す図は、図4の上段に示した図と同様に、R波が検出されるタイミングを示している。また、図7の中段に示す図は、図4の中段に示した図と同様に、プリパルスの印加及びデータ収集のタイミングを示している。また、図7の下段に示す図は、図4の下段に示した図と同様に、血液の縦磁化及びモニタ領域に含まれる組織の縦磁化それぞれに対応する信号値の変化を示している。
例えば、図7に示すように、1回目のR波(R1)が検出されると、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによって、モニタ領域のデータ収集(Am1)が行われ、その直後に、モニタ領域にFBパルス(F1)が印加される。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と閾値Thとを比較する。ここで、例えば、図7の黒丸m1に示すように、信号値が閾値Th以上であった場合には、制御機能15cは、1回目のR波(R1)から時間Tbが経過したタイミングでBBパルス(B1)を印加するように実行機能13aを制御する。この結果、1回目のR波(R1)に同期して、BBパルスの印加(B1)及び撮像領域のデータ収集(Ai1)が行われることになる。
さらに、図7に示すように、2回目のR波(R2)が検出されると、1回目のR波(R1)のときと同様に、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによって、モニタ領域のデータ収集(Am2)が行われ、その直後に、モニタ領域にFBパルス(F2)が印加される。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と閾値Thとを比較する。ここで、例えば、図7の黒丸m2に示すように、信号値が閾値未満であった場合には、制御機能15cは、BBパルスを印加しないように実行機能13aを制御する。この結果、2回目のR波(R2)では、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われないことになる。
さらに、図7に示すように、3回目のR波(R3)が検出されると、1回目及び2回目のR波(R1、R2)のときと同様に、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによって、モニタ領域のデータ収集(Am3)が行われ、その直後に、モニタ領域にFBパルス(F3)が印加される。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と閾値Thとを比較する。ここで、例えば、図7の黒丸m3に示すように、信号値が閾値未満であった場合には、制御機能15cは、BBパルスを印加しないように実行機能13aを制御する。この結果、3回目のR波(R3)でも、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われないことになる。
さらに、図7に示すように、4回目のR波(R4)が検出されると、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによって、モニタ領域のデータ収集(Am4)が行われ、その直後に、モニタ領域にFBパルス(F4)が印加される。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と閾値Thとを比較する。ここで、例えば、図7の黒丸m4に示すように、信号値が閾値Th以上であった場合には、制御機能15cは、4回目のR波(R4)から時間Tbが経過したタイミングでBBパルス(B2)を印加するように実行機能13aを制御する。この結果、4回目のR波(R4)に同期して、BBパルスの印加(B2)及び撮像領域のデータ収集(Ai2)が行われることになる。
このように、制御機能15cは、撮像領域とは異なる領域であるモニタ領域のデータの信号値に基づいて、パルスシーケンスの実行を制御する。すなわち、制御機能15cは、モニタ領域から収集されたデータの信号値の変化を監視することによって、血液の縦磁化の回復度合いを把握し、その回復度合いに応じて、次のR波でBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集の実行可否を判定する。
図8は、第1の実施形態に係る制御機能15cによる制御の結果の一例を示すタイムチャートである。また、図9は、第1の実施形態に係る制御機能15cによる制御の結果の他の例を示すタイムチャートである。なお、図8は、不整脈によってR波の間隔が途中から短くなった場合のタイムチャートを示しており、図9は、不整脈によってR波の間隔が途中から長くなった場合の例を示している。
ここで、図8及び9それぞれの上側に示す図は、図2及び3それぞれの上側に示した図と同様に、R波、プリパルス及びデータ収集のタイミングを示している。なお、図8及び9では、実行機能13aによって行われるモニタ領域のデータ収集及びFBパルスの印加については図示を省略している。また、各図に示す下向きの矢印は、それぞれ、制御機能15cによってパルスシーケンスの実行可否が判定されるタイミングを示している。ここで、各矢印の上に示す「○」は、パルスシーケンスの実行が可と判定されたことを示し、「×」は、パルスシーケンスの実行が不可と判定されたことを示している。また、図8及び9ぞれぞれの下側に示す図は、図2及び3それぞれの下側に示した図と同様に、血液の縦磁化に対応する信号値の変化を示している。
そして、図8では、図3に示した例と同様に、1回目から5回目のR波(R1〜R5)までの間ではR波の間隔が略一定であったが、不整脈によって、5回目から7回目のR波(R5〜R7)までの間でR波の間隔が短くなった場合の例を示している。この場合には、例えば、図3に示したように、3心拍ごとに固定でBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われると、1回目、4回目及び7回目のR波(R1、R4及びR7)のそれぞれで、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われることになる。しかし、その場合には、図3に示したように、不整脈によってR波の間隔が短くなった後で収集された3回目のデータ収集(A3)において、血液の信号値が十分に抑制されていない不適切なデータが混入してしまう。
これに対し、上述した制御機能15cによれば、3心拍ごとに固定でBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われるのではなく、モニタ領域のデータの信号値に基づいて、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集を含むパルスシーケンスの実行可否が判定される。したがって、図8に示すように、3回目のBBパルスの印加(B3’)及び撮像領域のデータ収集(A3’)は、モニタ領域のデータの信号値が閾値未満となっている7回目のR波(R7)では行われず、例えば、モニタ領域のデータの信号値が閾値以上となった8回目のR波(R8)で行われるようになる。
一方、図9では、1回目から4回目のR波(R1〜R4)までの間ではR波の間隔が略一定であったが、不整脈によって、4回目から5回目のR波(R4〜R5)までの間でR波の間隔が長くなった場合の例を示している。この場合には、3心拍ごとに固定でBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われると、1回目及び4回目のR波(R1及びR4)のそれぞれでは、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われることになるが、5回目のR波(R5)では、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集は行われないことになる。
これに対し、上述した制御機能15cによれば、3心拍ごとに固定でBBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われるのではなく、モニタ領域のデータの信号値に基づいて、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集を含むパルスシーケンスの実行可否が判定される。したがって、図9に示すように、5回目のR波(R5)で収集されたモニタ領域のデータの信号値が閾値以上となっていれば、3回目のBBパルスの印加(B3’)及び撮像領域のデータ収集(A3’)が行われるようになる。
このように、制御機能15cによれば、R波の間隔ではなく、モニタ領域のデータの信号値に基づいて、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が制御される。したがって、不整脈によってR波の間隔が短くなった場合でも、R波の間隔が長くなった場合でも、適切なタイミングで撮像領域のデータを収集できるようになる。すなわち、不整脈が生じているか否かにかかわらず、適切なデータを収集することができるようになる。
なお、上述した制御機能15cによる制御では、モニタ領域は、プリパルスによって信号値を抑制する対象の組織と比べて縦緩和時間が同じ又は長い組織を含むように設定されるのが望ましい。縦緩和時間が長いほど、縦磁化の変化が安定するまでに時間がかかるため、閾値と比較する際に、縦磁化の回復の度合いを把握しやすいからである。
例えば、信号値を抑制する対象の組織が血液である場合には、前述したように、モニタ領域は、被検体の脊髄にある脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid:CSF)を含むように設定される。脳脊髄液は、成分が水に近いため信号値が高く、かつ、血液等と比べて被検体内での移動が遅いため、信号値を安定して検出することができるからである。
以上、MRI装置100が有する各構成要素について説明した。ここで、例えば、上述した処理回路12〜15が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路11に記憶される。処理回路12〜15は、各プログラムを記憶回路11から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路12〜15は、図1に示した各処理機能を有することとなる。
また、図1では、単一の処理回路12によって、寝台制御機能12aの処理機能が実現され、単一の処理回路13によって、実行機能13aの処理機能が実現され、単一の処理回路14によって、画像生成機能14aの処理機能が実現され、単一の処理回路15によって、設定機能15a、取得機能15b及び制御機能15cの各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路12〜15は、それぞれが複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するのもとしても構わない。また、処理回路12〜15が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路11にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
図10は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる撮像方法の処理手順を示すフローチャートである。例えば、図10に示すように、MRI装置100では、実行機能13aが、ECG回路17によってR波が検出されると(ステップS101,Yes)、モニタ領域のデータを収集し(ステップS102)、その直後に、モニタ領域にFBパルスを印加する(ステップS103)。ここで、実行機能13aは、R波が検出されるまでの間は、モニタ領域のデータを収集せずに待機する(ステップS101,No)。
そして、実行機能13aによってモニタ領域のデータが収集されると、取得機能15bが、モニタ領域のデータの信号値を取得する(ステップS104)。そして、取得機能15bによってモニタ領域のデータの信号値が取得されると、制御機能15cが、取得機能15bによって取得された信号値と所定の閾値とを比較する(ステップS105)。
ここで、信号値が閾値以上であった場合には(ステップS105,Yes)、制御機能15cは、BBパルスを印加した後に撮像領域のデータを収集するように実行機能13aを制御する(ステップS106、S107)。一方、信号値が閾値未満であった場合には、制御機能15cは、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集を行わないように実行機能13aを制御し、次にモニタ領域のデータの信号値が取得されるまで待機する(ステップS105,No)。
こうして、制御機能15cは、全てのセグメントのデータを収集するまでの間は、繰り返し、撮像領域のデータ収集を行うよう実行機能13aを制御する(ステップS108,No)。そして、制御機能15cによって全てのセグメントのデータが収集されると(ステップS108,Yes)、画像生成機能14aが、収集されたデータに基づいて画像を生成する(ステップS109)。
なお、ステップS101〜S103は、処理回路13が実行機能13aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。また、ステップS104は、処理回路15が取得機能15bに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。また、ステップS105〜S108は、処理回路15が制御機能15cに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。また、ステップS109は、処理回路14が画像生成機能14aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。
上述したように、第1の実施形態では、撮像領域とは異なるモニタ領域から収集されるデータの信号値に基づいて、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が制御されるので、不整脈が生じているか否かにかかわらず、適切なデータを収集することができる。したがって、第1の実施形態によれば、不整脈等によって心周期が乱れた場合でも、データ収集のやり直しによる撮像時間の延長をすることなく、良質な画像を得ることができる。また、不整脈除去法を用いる場合と比べて、撮像時間を短縮することができる。
なお、上述した第1の実施形態に係るMRI装置100は、状況に応じて適宜に変更して実施することも可能である。そこで、以下では、MRI装置100に係る他の実施形態について説明する。なお、以下で説明するMRI装置100の構成は、図1に示したものと同じである。そのため、以下では、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、第1の実施形態とは異なる点を中心に説明する。
(第2の実施形態)
例えば、上述した実施形態では、図4に示したように、R波が検出されてからBBパルスが印加されるまでの時間Tbを固定とした場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、被検体のR波の間隔は、不整脈が生じていない状態でも、多少変化すると考えられる。そこで、第2の実施形態では、R波ごとに、縦磁化の回復度合いに応じて時間Tbを調整するようにした場合の例を説明する。
この場合には、制御機能15cが、取得機能15bによって取得されたモニタ領域のデータの信号値と所定の閾値との差の大きさに応じて、所定の心電波形が検出されてからプリパルスが印加されるまでの時間を設定する。
例えば、制御機能15cは、取得機能15bによって取得された信号値が所定の閾値を超えていた場合に、その信号値と所定の閾値との差を算出する。そして、制御機能15cは、算出した差の大きさに応じて、R波が検出された時点からBBパルスが印加されるまでの時間Tbを設定する。このとき、制御機能15cは、BBパルスが印加される時点での血液の縦磁化の大きさが一定の値となるように時間Tbを設定する。
図11及び12は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われるデータ収集の一例を示すタイムチャートである。例えば、図11に示すように、あるR波において、モニタ領域のデータの信号値と閾値Thとの差の大きさがdであったとする。そして、この場合に、R波が検出されてから信号値が所定値Msに達するまでにかかる時間がTdであったとする。この場合には、制御機能15cは、時間TbをTdに設定する。
これに対し、例えば、図12に示すように、別のR波において、モニタ領域のデータの信号値と閾値Thとの差の大きさがd’であったとする。そして、この場合に、R波が検出されてから信号値が所定値Msに達するまでにかかる時間がTd’であったとする。この場合には、制御機能15cは、時間TbをTd’に設定する。
ここで、例えば、図12に示すように、d’が、図11に示したdより大きい場合には、モニタ領域のデータが収集された時点で、血液の縦磁化が、図11に示した例より大きく回復していることになる。そのため、この場合には、R波が検出されてから信号値が所定値Msに達するまでにかかる時間Td’は、図11に示したTdより短くなる。すなわち、R波が検出されてからBBパルスが印加されるまでの時間Tbが、図11に示した時間Tbより短く設定される。
一方、例えば、図12に示す例とは逆に、d’が、図11に示したdより小さくなる場合もあり得る。その場合には、モニタ領域のデータが収集された時点で、血液の縦磁化が、図11に示した例より小さく回復していることになる。そのため、この場合には、R波が検出されてから信号値が所定値Msに達するまでにかかる時間Td’は、図11に示したTdより長くなる。すなわち、R波が検出されてからBBパルスが印加されるまでの時間Tbが、図11に示した時間Tbより長く設定される。
このように、第2の実施形態では、所定の心電波形ごとに、モニタ領域のデータの信号値と所定の閾値との差の大きさに応じて、所定の心電波形が検出されてからプリパルスが印加されるまでの時間を設定する。したがって、第2の実施形態によれば、データ間及びセグメント間での信号値をより均一にすることが可能になり、生成される画像の画質をさらに向上させることができる。
(第3の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、R波ごとに、モニタ領域のデータの信号値に基づいて、パルスシーケンスの実行可否を判定する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、被検体の心電波形に同期させて、プリパルスを印加した後にモニタ領域及び撮像領域それぞれのデータを収集するシーケンスを実行し、少なくとも1回のデータ収集を行った後に、モニタ領域から収集したデータの信号値に基づいて、撮像領域から収集されたデータの取捨選択を行うようにしてもよい。そこで、以下では、このような場合の例を第3の実施形態として説明する。
この場合には、制御機能15cが、被検体の心電波形に同期させて、プリパルスを印加した後にモニタ領域及び撮像領域それぞれのデータを収集するパルスシーケンスを実行するよう実行機能13aを制御する。例えば、制御機能15cは、ECG回路17によって検出されるR波に同期させて、パルスシーケンスを実行する。このとき、例えば、制御機能15cは、3心拍ごとに、パルスシーケンスを実行する。
そして、制御機能15cは、パルスシーケンスが1回実行されるごとに、モニタ領域から収集されたデータの信号値に基づいて、撮像領域から収集されたデータの取捨選択を行う。例えば、制御機能15cは、モニタ領域から収集されたデータの信号値が所定の閾値以上であった場合には、撮像領域から収集されたデータを画像生成に用いられる有効データとする。一方、モニタ領域から収集されたデータの信号値が所定の閾値未満であった場合には、制御機能15cは、撮像領域から収集されたデータを画像生成に用いられない無効データとする。そして、制御機能15cは、撮像領域から収集されたデータを無効データと判定した場合には、当該データを再度収集するように実行機能13aを制御する。
なお、制御機能15cは、パルスシーケンスが1回実行されるごとにデータの取捨選択を行うのではなく、パルスシーケンスが2回以上の複数回実行されるごとにデータの取捨選択を行ってもよい。また、制御機能15cは、画像生成に必要なデータ量を収集するだけの回数パルスシーケンスを実行した後に、まとめてデータの取捨選択を行ってもよい。
このように、第3の実施形態では、被検体の心電波形に同期させてデータ収集が行われた後に、モニタ領域から収集したデータの信号値に基づいて、撮像領域から収集されたデータの取捨選択が行われる。これにより、データの収集し直しが生じることもあり得るが、モニタ領域から収集したデータの信号値に基づいて、適切なデータを収集することができる。
(第4の実施形態)
また、例えば、上述した実施形態では、FBパルスを用いて核スピンを縦磁化に戻すことで、モニタ領域の信号値が全体として縦緩和時間に従って回復するようにした場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、FBパルスを用いずに、モニタ領域の信号値の積算に基づいて、撮像領域の信号値の回復度合いを判定するようにしてもよい。そこで、以下では、このような場合の例を第4の実施形態として説明する。
本実施形態では、実行機能13aは、上述した実施形態と同様に、被検体の所定の心位相に同期させて、核スピンの縦磁化を負値に転じさせるプリパルスを印加した後に撮像領域のデータを収集するパルスシーケンスを実行する。また、実行機能13aは、所定の心電波形が発生するごとに、撮像領域と同時にプリパルスが印加される領域であって、撮像領域とは異なる領域であるモニタ領域のデータを収集する。
例えば、実行機能13aは、上述した実施形態と同様に、被検体のR波に同期させて、パルスシーケンスを実行する。また、実行機能13aは、R波が検出されるごとに、モニタ領域のデータ収集を行う。ただし、本実施形態では、実行機能13aは、モニタ領域へのFBパルスの印加は行わない。
そして、本実施形態では、制御機能15cは、取得機能15bによって取得された信号値を積算した値が所定の閾値以上であった場合に、次の所定の心位相でパルスシーケンスが実行されるように制御し、信号値の積算が前記所定の閾値未満であった場合に、次の所定の心位相でパルスシーケンスが実行されないように制御する。
すなわち、本実施形態では、制御機能15cは、上述した実施形態のように「モニタ領域の信号値が閾値に達した場合」ではなく、「モニタ領域の信号値の積算が閾値に達した場合」に、撮像領域の信号値が充分に回復したと判定する。
具体的には、制御機能15cは、取得機能15bによって信号値が取得されるごとに、信号値を積算する。すなわち、制御機能15cは、取得された信号値と、前回までに積算された信号値とを加算する。その後、制御機能13cは、積算した信号値と所定の閾値とを比較する。そして、制御機能15cは、積算された信号値が閾値以上であった場合には、次のR波でパルスシーケンスを実行するように実行機能13aを制御する。また、制御機能15cは、積算された信号値が閾値未満であった場合には、次のR波でパルスシーケンスを実行しないように実行機能13aを制御する。なお、制御機能15cは、次のR波でパルスシーケンスを実行するように実行機能13aを制御した場合には、それまでの信号値の積算をゼロに初期化しておく。
例えば、制御機能15cは、モニタ領域のデータ収集が行われた回数をxとし、各回において取得機能15bによって取得された信号値をSxとした場合に、以下に示す式(1)に基づいて、パルスシーケンスの実行可否を判定する。
Σ|Sx|≧閾値 ・・・(1)
図13は、第4の実施形態に係る制御機能15cによる制御の一例を示すタイムチャートである。ここで、図13の上段に示す図は、図7の上段に示した図と同様に、R波が検出されるタイミングを示している。また、図13の中段に示す図は、図7の中段に示した図と同様に、プリパルスの印加及びデータ収集のタイミングを示している。また、図13の下段に示す図は、図7の下段に示した図と同様に、血液の縦磁化及びモニタ領域に含まれる組織の縦磁化それぞれに対応する信号値の変化を示している。
例えば、図13に示すように、1回目のR波(R1)が検出されると、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによってモニタ領域のデータ収集(Am1)が行われる。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と、前回までに積算された信号値とを加算し、これにより積算された信号値と所定の閾値とを比較する。ここで、例えば、この時点で収集されたデータの信号値をSnとし、Snと、前回までに積算された信号値とを加算した値が閾値以上であったとする。この場合に、制御機能15cは、1回目のR波(R1)から時間Tbが経過したタイミングでBBパルス(B1)を印加するように実行機能13aを制御する。この結果、1回目のR波(R1)に同期して、BBパルスの印加(B1)及び撮像領域のデータ収集(Ai1)が行われることになる。なお、この場合に、制御機能15cは、積算された信号値をゼロに初期化する。
さらに、図13に示すように、2回目のR波(R2)が検出されると、1回目のR波(R1)のときと同様に、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによってモニタ領域のデータ収集(Am2)が行われる。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と、前回までに積算された信号値とを加算し、これにより積算された信号値の積算と所定の閾値とを比較する。ここで、例えば、この時点で収集されたデータの信号値をS1とすると、前回までに積算された信号値は初期化されてゼロとなっているので、算出される値はS1となる。ここで、例えば、S1の値が閾値未満であったとする。この場合には、制御機能15cは、BBパルスを印加しないように実行機能13aを制御する。この結果、2回目のR波(R2)では、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われないことになる。なお、この場合は、制御機能15cは、算出した信号値の積算を初期化しない。
さらに、図13に示すように、3回目のR波(R3)が検出されると、1回目及び2回目のR波(R1、R2)のときと同様に、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによってモニタ領域のデータ収集(Am3)が行われる。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と、前回までに積算された信号値とを加算し、これにより積算された信号値と所定の閾値とを比較する。ここで、例えば、この時点で収集されたデータの信号値をS2とすると、前回までに積算された信号値はS1であるので、算出される値はS1+S2となる。ここで、例えば、S1+S2の値が閾値未満であったとする。この場合には、制御機能15cは、BBパルスを印加しないように実行機能13aを制御する。この結果、3回目のR波(R3)でも、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集が行われないことになる。なお、この場合も、制御機能15cは、算出した信号値の積算を初期化しない。
さらに、図13に示すように、4回目のR波(R4)が検出されると、時間Tmが経過した時点で、実行機能13aによってモニタ領域のデータ収集(Am4)が行われる。その後、制御機能15cが、収集されたモニタ領域のデータの信号値と、前回までに積算された信号値とを加算し、これにより積算された信号値と所定の閾値とを比較する。ここで、例えば、この時点で収集されたデータの信号値をS3とすると、前回までに積算された信号値はS1+S2であるので、算出される値はS1+S2+S3となる。ここで、例えば、S1+S2+S3の値が閾値以上であったとする。この場合には、制御機能15cは、4回目のR波(R4)から時間Tbが経過したタイミングでBBパルス(B2)を印加するように実行機能13aを制御する。この結果、4回目のR波(R4)に同期して、BBパルスの印加(B2)及び撮像領域のデータ収集(Ai2)が行われることになる。なお、この場合は、制御機能15cは、積算された信号値をゼロに初期化する。
このように、制御機能15cは、モニタ領域から収集されたデータの信号値の積算に基づいて、パルスシーケンスの実行を制御する。ここで、モニタ領域における核スピンは、データ収集が行われるたびに、励起用のRFパルスによって横磁化となるが、横磁化となった直後から縦磁化が縦緩和時間に従って徐々に回復する。このため、モニタ領域から収集されたデータの信号値の積算を求めることで、上述した実施形態のようにモニタ領域から収集されたデータの信号値の変化を監視する場合と同様に、撮像領域における縦磁化の回復度合いを把握することができるようになる。
図14は、第4の実施形態に係るMRI装置100によって行われる撮像方法の処理手順を示すフローチャートである。例えば、図14に示すように、MRI装置100では、実行機能13aが、ECG回路17によってR波が検出されると(ステップS201,Yes)、モニタ領域のデータを収集する(ステップS202)。ここで、実行機能13aは、R波が検出されるまでの間は、モニタ領域のデータを収集せずに待機する(ステップS201,No)。
そして、実行機能13aによってモニタ領域のデータが収集されると、取得機能15bが、モニタ領域のデータの信号値を取得する(ステップS203)。そして、取得機能15bによってモニタ領域のデータの信号値が取得されると、制御機能15cが、取得機能15bによって取得された信号値を積算し(ステップS204)、積算された信号値と所定の閾値とを比較する(ステップS205)。
ここで、積算された信号値が閾値以上であった場合には(ステップS205,Yes)、制御機能15cは、積算された信号値をゼロに初期化し(ステップS206)、さらに、BBパルスを印加した後に撮像領域のデータを収集するように実行機能13aを制御する(ステップS207、S208)。一方、信号値が閾値未満であった場合には、制御機能15cは、BBパルスの印加及び撮像領域のデータ収集を行わないように実行機能13aを制御し、次にモニタ領域のデータの信号値が取得されるまで待機する(ステップS205,No)。
こうして、制御機能15cは、全てのセグメントのデータを収集するまでの間は、繰り返し、撮像領域のデータ収集を行うよう実行機能13aを制御する(ステップS209,No)。そして、制御機能15cによって全てのセグメントのデータが収集されると(ステップS209,Yes)、画像生成機能14aが、収集されたデータに基づいて画像を生成する(ステップS210)。
なお、ステップS201及びS202は、処理回路13が実行機能13aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。また、ステップS203は、処理回路15が取得機能15bに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。また、ステップS204〜S209は、処理回路15が制御機能15cに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。また、ステップS210は、処理回路14が画像生成機能14aに対応する所定のプログラムを記憶回路11から呼び出して実行することにより実現されるステップである。
このように、第4の実施形態では、モニタ領域から収集されたデータの信号値の積算を求めることで、撮像領域における縦磁化の回復度合いを把握することができる。したがって、上述した実施形態と同様に、不整脈によってR波の間隔が短くなった場合でも、R波の間隔が長くなった場合でも、適切なタイミングで撮像領域のデータを収集できるようになる。すなわち、不整脈が生じているか否かにかかわらず、適切なデータを収集することができるようになる。
(他の実施形態)
なお、例えば、上述した実施形態では、実行機能13aが、所定の心電波形が発生するごとに、モニタ領域のデータを収集する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、実行機能13aは、撮像領域のデータを収集する期間以外のタイミングでモニタ領域のデータを収集すればよい。この場合には、例えば、実行機能13aは、撮像領域のデータを収集する期間以外のタイミングで、処理回路13が有するプロセッサが発生するクロック信号に基づいて、所定の間隔で定期的にモニタ領域のデータを収集する。
また、例えば、上述した実施形態では、実行機能13aが、ECG回路17から出力されるトリガ信号に同期させて、パルスシーケンスを実行する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、実行機能13aは、被検体に装着された脈波計から出力されるトリガ信号に同期させて、パルスシーケンスを実行してもよい。
また、上述した実施形態では、BBパルスと呼ばれるプリパルスを用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、いわゆる反転パルス(Inversion Pulse)や背景抑制用のプリパルスのように、核スピンの縦磁化を負値に転じさせる他の種類のプリパルスが用いられる場合でも、同様の実施形態を適用することが可能である。この場合に、プリパルスとして用いられるRFパルスのフリップ角は、180°に限られず、90°以上かつ180°未満であってもよい。
また、上述した実施形態では、心臓のT2画像を撮像する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、心臓の遅延造影撮像や心臓のT1マップ撮像のように、プリパルスが用いられる他の撮像法が行われる場合でも、同様の実施形態を適用することが可能である。これらの撮像が行われる場合も、例えば、モニタ領域は、被検体の脊髄にある脳脊髄液を含むように設定されるのが望ましい。
また、上述した実施形態において、1回目の心拍に、データ収集を行わないダミーセグメントを設けてもよい。ここでいうダミーセグメントでは、例えば、制御機能15cが、1回目に被検体のR波が検出された際に、モニタ領域のデータを収集することなく、無条件でBBパルスを印加し、かつ、撮像領域のデータ収集を行わないように実行機能13aを制御する。そして、制御機能15cは、2回目以降のR波では、上述した実施形態で説明したように、モニタ領域のデータを収集し、収集したデータの信号値に基づいて、パルスシーケンスの実行を制御する。すなわち、この場合には、2回目以降の心拍で撮像領域から収集されたデータが、画像生成に用いられることになる。
このように、1回目の心拍にダミーセグメントを設けることで、2回目以降の心拍でモニタ領域及び撮像領域それぞれから収集されるデータの信号値の変化を、例えば図7や図13に示したような予め想定されている縦磁化の変化に合わせることができる。これにより、2回目以降の心拍で収集されるデータの信号値を安定させることができ、生成される画像の画質をより向上させることができる。
また、上述した実施形態では、撮像領域とモニタ領域とに同時にプリパルスが印加される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、撮像領域にプリパルスが印加されるタイミングと、モニタ領域にプリパルスが印加されるタイミングとは、どちらも被検体の所定の心電波形に同期していれば、一定の時間だけずれていてもよい。核スピンの縦緩和時間は組織ごとに固定で決まるため、プリパルスが印加されるタイミングがずれたとしても、ずれた時間が一定であれば、撮像領域の信号とモニタ領域の信号との間で一定の相関関係が成立すると考えられる。したがって、撮像領域にプリパルスが印加されるタイミングと、モニタ領域にプリパルスが印加されるタイミングとが一定の時間だけずれていたとしても、モニタ領域から収集されるデータの信号値の変化から、撮像領域における縦磁化の回復度合いを把握することは可能である。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、不整脈等によって心周期が乱れた場合でも、良質な画像を得ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。